(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157493
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】廃水処置装置及び廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20231019BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20231019BHJP
B01D 21/08 20060101ALI20231019BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20231019BHJP
B01F 27/70 20220101ALI20231019BHJP
B01F 27/61 20220101ALI20231019BHJP
B01F 27/113 20220101ALI20231019BHJP
B01F 27/191 20220101ALI20231019BHJP
B01F 35/53 20220101ALI20231019BHJP
B01F 27/71 20220101ALI20231019BHJP
【FI】
B01D21/01 H
B01D21/01 D
B01D21/02 Q
B01D21/02 S
B01D21/08 D
C02F1/52 Z
B01F27/70
B01F27/61
B01F27/113
B01F27/191
B01F35/53
B01F27/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067436
(22)【出願日】2022-04-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ピュアループの内覧会のチラシ 内覧会開催日;令和4年4月20日~22日 公開日:令和4年4月 1日
(71)【出願人】
【識別番号】521450403
【氏名又は名称】岡本商店株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】柳生 良司
(72)【発明者】
【氏名】岩田 一夫
【テーマコード(参考)】
4D015
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4D015BA22
4D015BA25
4D015CA04
4D015CA08
4D015CA17
4D015CA20
4D015DA31
4D015EA07
4D015EA35
4G037DA30
4G037EA02
4G078AA03
4G078AB20
4G078BA03
4G078BA09
4G078CA08
4G078DA01
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】撹拌による凝集を速めてフロックの形成を短時間で効率よく行うことにより、凝集が不十分な処理水が後工程の濾過装置等へ送られてしまうことを抑制して、凝集より後の工程の濾過装置等に対する負荷を低減し、その機能性を長く維持して、原水に含まれる溶解性有機物等の、より効率的な除去を可能とした廃水処理装置を提供する。
【解決手段】廃水処理装置A1は、原水に凝集剤を添加した処理水を高速で撹拌し、凝集させてフロックを生成する高速撹拌槽1と、高速撹拌槽1で処理した処理水を低速で撹拌し、フロックを成長させる低速撹拌槽2と、低速撹拌槽2で処理したフロックを含む処理水からフロックを沈殿させる沈殿槽3と、沈殿槽3で処理した処理水を濾過して清澄化する濾過槽4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水に凝集剤を添加した処理水を高速で撹拌し、凝集させてフロックを生成する高速撹拌槽と、
該高速撹拌槽で処理した処理水を低速で撹拌し、フロックを成長させる低速撹拌槽と、
該低速撹拌槽で処理したフロックを含む処理水からフロックを沈殿させる沈殿槽と、
該沈殿槽で処理した処理水を濾過して清澄化する濾過槽とを備える
廃水処理装置。
【請求項2】
前記高速撹拌槽と前記低速撹拌槽を一組とした複数組を前記沈殿槽に直列に接続した
請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記高速撹拌槽と前記低速撹拌槽の間で、処理水を循環させる循環装置を備える
請求項1又は2記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記高速撹拌槽と前記低速撹拌槽の一方又は双方が、撹拌羽根をモーターで回転させる撹拌機を有し、前記撹拌羽根が取り付けてある回転軸の軸線方向が、前記高速撹拌槽と前記低速撹拌槽の一方又は双方の中心線に対して所定の角度で傾斜している
請求項1、2又は3記載の廃水処理装置。
【請求項5】
前記沈殿槽が、処理水の流れ方向に、底面から立ち上がった所定の高さの堰板を介して区画されており、前記堰板の上辺部は水平方向に連設された山形に形成され、かつ各山部の凸端部同士及び各谷部の凹端部同士は、互いに同じ高さに形成してある
請求項1、2、3又は4記載の廃水処理装置。
【請求項6】
前記高速撹拌槽、前記低速撹拌槽、前記沈殿槽、及び前記濾過槽が、平面視で二列となるように配置してある
請求項1、2、3、4又は5記載の廃水処理装置。
【請求項7】
原水に凝集剤を添加した処理水を、撹拌槽を使用して高速で撹拌し、凝集させてフロックを生成する高速撹拌工程と、
該高速撹拌工程で処理した処理水を、前記高速撹拌工程で使用した前記撹拌槽とは異なる撹拌槽を使用して低速で撹拌し、フロックを成長させる低速撹拌工程と、
該低速撹拌工程で処理したフロックを含む処理水からフロックを沈殿させる沈殿工程と、
該沈殿工程で処理した処理水の残液を濾過する濾過工程を備える
廃水処理方法。
【請求項8】
前記低速撹拌工程の後、処理水に含まれる溶解性有機物及び無機物等の凝集とフロック化が充分でない場合は、処理水を前記高速撹拌工程へ戻し、前記低速撹拌工程後のフロック化が充分に行われるまで、前記高速撹拌工程による高速撹拌と前記低速撹拌工程による低速撹拌を行う処理を繰り返し行うようにする
請求項7記載の廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理装置及び廃水処理方法に関するものである。詳しくは、凝集が不十分な処理水が後工程の濾過装置等へ送られてしまうことを抑制して、凝集より後の工程の濾過装置等に対する負荷を低減することにより、その機能性を長く維持して、原水に含まれる溶解性有機物等の、より効率的な除去を可能とした廃水処理装置及び廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理設備において、原水に含まれる固体粒子分や溶解性有機物等の不純物を除去する固液分離手段としては、撹拌機を備える撹拌槽、溶解性有機物等を凝集させる凝集槽、及び凝集槽で生じたフロックを沈殿させる沈殿槽等が知られている。
【0003】
このような装置構成で、原水中の固体粒子分や溶解性有機物等を効果的に除去できる廃水処理装置としては、例えば、特許文献1に記載の水処理システムが提案されている。
この水処理システムは、不純物として少なくとも溶解性マンガンを含有する、pH中性領域の水を処理し、高い除去率で溶解性マンガンを除去することが可能な水処理システムである。
【0004】
システムを構成する装置としては、工程順に〔1〕生物処理装置、〔2〕撹拌機と、処理水を1次塩素酸化するための二酸化塩素を添加する手段と処理水中の不溶性成分を1次凝集するための凝集剤を添加する手段を有する凝集装置、〔3〕加圧浮上分離装置、及び〔4〕処理水中の非溶解性成分を濾過分離する濾過材、処理水中のマンガンを接触酸化分離するマンガン系濾過材、及び濾過砂利が積層された濾過槽を有する濾過装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の水処理システムには次のような課題があった。
すなわち、処理される廃水には様々な種類があり、中には原水に適合する凝集剤を混合して撹拌しても凝集しにくいものもある。
【0007】
この場合は、凝集が遅くなってフロック(floc)の形成に長い時間を要することも多く、凝集が不十分な処理水が、後工程の加圧浮上分離装置や濾過装置等へ送られてしまう傾向があった。このため、これら各装置に対する負荷が大きくなって、その機能性を長く維持することができなくなり、結果的に原水に含まれる溶解性有機物等を効率的に除去することが難しくなっていた。
【0008】
本発明は、上記の点を鑑みて創案されたものであり、撹拌による凝集を速めてフロックの形成を短時間で効率よく行うことにより、凝集が不十分な処理水が後工程の濾過装置等へ送られてしまうことを抑制して、凝集より後の工程の濾過装置等に対する負荷を低減し、その機能性を長く維持して、原水に含まれる溶解性有機物及び無機物等(以下、溶解性有機物等という。なお、有機物及び無機物は、溶解性でないものが含まれる場合がある。)の、より効率的な除去を可能とした廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔1〕上記の目的を達成するために本発明は、原水に凝集剤を添加した処理水を高速で撹拌し、凝集させてフロックを生成する高速撹拌槽と、該高速撹拌槽で処理した処理水を低速で撹拌し、フロックを成長させる低速撹拌槽と、該低速撹拌槽で処理したフロックを含む処理水からフロックを沈殿させる沈殿槽と、該沈殿槽で処理した処理水を濾過して清澄化する濾過槽とを備える廃水処理装置である。
【0010】
本発明の廃水処理装置では、高速撹拌槽により、廃水の原水に凝集剤を添加した処理水を高速で撹拌することができ、これにより原水に含まれる溶解性有機物等の不純物を凝集させてフロックを生成することができる。続いて低速撹拌槽によれば、高速撹拌槽で処理した処理水を低速(又は緩速)で撹拌することにより、高速撹拌槽で生成したフロックを粒径、量とも大きく成長させることができる。
【0011】
このように、まず、高速撹拌槽により高速で撹拌をし、次に低速撹拌槽により低速で撹拌することにより、それぞれの撹拌を上記のように作用的にはっきりと特徴付けた形で行うことができる。これにより、例えば中速程度で一定速度の撹拌を行う場合と比較して、より効果的であり、撹拌による凝集が早まり、高効率でのフロックの生成が可能になる。
【0012】
また、沈殿槽によれば、低速撹拌槽で処理したフロックを含む処理水からフロックを沈殿させることができ、フロックを残りの処理水と略分離することができる。更に、濾過槽によれば、沈殿槽で処理してフロックと略分離した処理水を濾過して清澄化することができ、河川等、自然環境への放出も可能になる。
【0013】
また、本発明の廃水処理装置によれば、撹拌による凝集を速めてフロックの形成を短時間で効率よく行うことにより、凝集が不十分な処理水が濾過装置等へ送られてしまうことを抑制することができる。そして、凝集より後の工程の濾過装置等に対する負荷を低減することにより、その機能性が長く維持できるようになり、結果的に原水に含まれる溶解性有機物等の、より効率的な除去が可能となる。
【0014】
なお、本発明にいう「高速撹拌」とは、例えば原水に凝集剤を適量添加した後に撹拌して、比較的短時間のうちに凝集(又はフロック化)させることができる、使用する撹拌機の撹拌羽根の回転数でいえば、例えば400rpmをいう。
【0015】
また、同じく「低速撹拌」とは、高速撹拌を行って凝集とフロック化が進んだ処理水を、高速撹拌より低速でゆっくり(緩速で)撹拌して、フロックを大きく成長させることができる、使用する撹拌機の撹拌羽根の回転数でいえば、例えば200rpmをいう。なお、この回転数は、槽体の大きさや撹拌羽根の形状等にも影響を受けるため、限定はされない。
【0016】
〔2〕本発明に係る廃水処理装置は、前記高速撹拌槽と前記低速撹拌槽を一組とした複数組を前記沈殿槽に直列に接続した構成とすることもできる。
【0017】
この場合は、高速撹拌槽により高速で撹拌をし、次に低速撹拌槽により低速で撹拌するというそれぞれの撹拌を作用的にはっきりと特徴付けた形で行うことができる処理を複数回段階的に行うことができる。これにより、例えばクーラント廃液等の凝集しにくい廃水を処理する場合にも、比較的容易に凝集させることができる。なお、複数組とは、例えば二組が通常であるが、三組以上を設けることもできる。
【0018】
〔3〕本発明に係る廃水処理装置は、前記高速撹拌槽と前記低速撹拌槽の間で、処理水を循環させる循環装置を備える構成とすることもできる。
【0019】
この場合は、循環装置により、高速撹拌槽と低速撹拌槽の間で、処理水を循環させることができる。すなわち、高速撹拌槽で高速撹拌処理した処理水を低速撹拌槽に移して低速撹拌処理をし、ここでフロック化が充分でない場合は、循環装置により処理水を高速撹拌槽へ戻して、高速撹拌槽による高速撹拌処理を行い、更に低速撹拌槽による低速撹拌処理を行うことができる。
【0020】
このようにして、低速撹拌処理後の処理水に含まれる溶解性有機物等のフロック化が充分に行われるまで、上記循環による撹拌処理を繰り返し行うことが可能になる。なお、高速撹拌槽と低速撹拌槽の間で、処理水を循環させる際には、フロック化を良好に行う上では低速撹拌槽から次工程への移動を一旦止めるのが好ましいが、これに限定するものではない。
【0021】
〔4〕本発明に係る廃水処理装置は、前記高速撹拌槽と前記低速撹拌槽の一方又は双方が、撹拌羽根をモーターで回転させる撹拌機を有し、前記撹拌羽根が取り付けてある回転軸の軸線方向が、前記高速撹拌槽と前記低速撹拌槽の一方又は双方の中心線に対して所定の角度で傾斜している構成とすることもできる。
【0022】
この場合は、撹拌羽根は、撹拌機の回転軸の中心線に対して直角な平面上、又は平面に沿って回転するので、撹拌羽根の回転により生じる水流と各撹拌槽の側壁(槽壁)との距離には、近い所と遠い所があり、これにより撹拌時の水流又は渦流は大きく乱れて乱流となるので、撹拌効果が高く、撹拌による処理水の凝集もしやすくなる。
【0023】
〔5〕本発明に係る廃水処理装置は、前記沈殿槽が、処理水の流れ方向に、底面から立ち上がった所定の高さの堰板を介して区画されており、前記堰板の上辺部は水平方向に連設された山形に形成され、かつ各山部の凸端部同士及び各谷部の凹端部同士は、互いに同じ高さに形成してある構成としてもよい。
【0024】
この場合は、上流側の区画部に入ったフロックを含む処理水は、この区画部内で溜まって水位が上がり、堰板の上辺部を越えて越水する。このとき、まず上辺部の各谷部から処理水が越水を始めるが、板の形状は各谷部の凹端部へ向け徐々に狭まり、かつ各山部の凸端部へ向けて尖るように立ち上がっている。
【0025】
これにより、処理水に含まれるフロックは、極小さなフロッックは除いて、例えば比較的大きなフロックであれば止められて、堰板を乗り越えにくい。また、極小さなフロックを含み、或いは含まずに堰板を乗り越えた処理水は、下流側の区画部に溜まり、次の濾過槽へ送られる。
【0026】
また、堰板の上辺部には、山形のジグザグ形状によりフロックが引っ掛かりやすいので、フロックの偏りを緩和又は抑制することができ、上辺部の全幅にわたり略ムラのない越水が行われる。上記越水が行われているうちに、多くのフロックは徐々に沈降し、上流側の区画部の底部に溜まり、処理水の水分とは層状に分かれる。なお、このフロックは、必要に応じて、例えば底部から排出して取り除かれる。
【0027】
〔6〕本発明に係る廃水処理装置は、前記高速撹拌槽、前記低速撹拌槽、前記沈殿槽、及び前記濾過槽が、平面視で二列となるように配置してある構成とすることもできる。
【0028】
この場合は、高速撹拌槽、低速撹拌槽、沈殿槽、及び濾過槽が、平面視で二列となるように、すなわち2つの装置の二列、又は1つの装置と3つの装置の二列で配置してあることにより、四つの装置を一列として配置する場合と比較して、幅は広くなるが廃水処理装置の全体としての長さを略50%又は略25%短くすることができる。これにより、様々な設置スペースの形や広さに、より柔軟に合わせることができるので、設置場所について選択の幅を広げることができる。
【0029】
〔7〕上記の目的を達成するために本発明は、原水に凝集剤を添加した処理水を、撹拌槽を使用して高速で撹拌し、凝集させてフロックを生成する高速撹拌工程と、該高速撹拌工程で処理した処理水を、前記高速撹拌工程で使用した前記撹拌槽とは異なる撹拌槽を使用して低速で撹拌し、フロックを成長させる低速撹拌工程と、該低速撹拌工程で処理したフロックを含む処理水からフロックを沈殿させる沈殿工程と、該沈殿工程で処理した処理水の残液を濾過する濾過工程を備える廃水処理方法である。
【0030】
本発明の廃水処理方法によれば、廃水の原水に凝集剤を添加した処理水を高速撹拌工程で、撹拌槽を使用して高速で撹拌することができ、これにより原水に含まれる溶解性有機物等の不純物を凝集させてフロックを生成することができる。続いて高速撹拌処理した処理水を、前記高速撹拌工程で使用した前記撹拌槽とは異なる撹拌槽を使用して低速撹拌工程で低速(又は緩速)で撹拌することにより、高速撹拌により生成したフロックを粒径、量とも大きく成長させることができる。
【0031】
このように、まず、高速で処理水の撹拌をし、次に低速で撹拌することにより、それぞれの撹拌を上記のように作用的にはっきりと特徴付けた形で行うことができる。これにより、例えば中速程度で一定速度の撹拌を行う場合と比較して、より効果的であり、撹拌による凝集が早まり、高効率での凝集によるフロックの生成が可能になる。
【0032】
また、沈殿工程により、低速撹拌処理をしたフロックを含む処理水からフロックを沈殿させることができ、フロックを残りの処理水と略分離することができる。更に、濾過工程により、沈殿処理をしてフロックと略分離した処理水を濾過して清澄化することができ、河川等、自然環境下への放出も可能になる。
【0033】
このように、本発明の廃水処理方法によれば、撹拌による凝集を速めてフロックの形成を短時間で効率よく行うことができ、凝集が不十分な処理水が濾過装置等へ送られてしまうことを抑制することができる。そして、凝集より後の工程の濾過装置等に対する負荷を低減することにより、その機能性が長く維持できるようになり、結果的に原水に含まれる溶解性有機物等の、より効率的な除去が可能となる。
【0034】
(8)本発明に係る廃水処理方法は、低速撹拌工程の後、処理水に含まれる溶解性有機物及び無機物等の凝集とフロック化が充分でない場合は、処理水を高速撹拌工程へ戻し、低速撹拌工程後のフロック化が充分に行われるまで、高速撹拌工程による高速撹拌と低速撹拌工程による低速撹拌を行う処理を繰り返し行うようにする構成とすることもできる。
【0035】
この場合は、高速撹拌工程と低速撹拌工程の間で、処理水を循環させることができる。すなわち、高速撹拌工程で高速撹拌処理した処理水を低速撹拌工程で低速撹拌処理をし、ここでフロック化が充分でない場合は、処理水を高速撹拌工程へ戻して高速撹拌処理を行い、更に低速撹拌工程による低速撹拌処理を行うことができる。
【0036】
このようにして、低速撹拌処理後の処理水に含まれる溶解性有機物等のフロック化が充分に行われるまで、上記循環による撹拌処理を繰り返し行うことが可能になる。なお、高速撹拌工程と低速撹拌工程の間で、処理水を循環させる際には、フロック化を良好に行う上では低速撹拌工程から次工程へ送ることを一旦止めるのが好ましいが、これに限定はしない。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、撹拌による凝集を速めてフロックの形成を短時間で効率よく行うことにより、凝集が不十分な廃水が後工程の濾過装置等へ送られてしまうことを抑制して、凝集より後の工程の濾過装置等に対する負荷を低減することにより、その機能性が長く維持できるようになり、結果的に原水に含まれる溶解性有機物等の、より効率的な除去が可能な廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に係る廃水処置装置の第1実施の形態を示す正面視説明図である。
【
図2】
図1に示す廃水処理装置の平面視説明図である。
【
図3】本発明に係る廃水処置装置の第2実施の形態を示す正面視説明図である。
【
図4】
図3に示す廃水処理装置の平面視説明図である。
【
図5】廃水処理装置に使用する撹拌機の他の例を示す説明図である。
【
図6】本発明に係る廃水処置装置の更に他の実施の形態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1ないし
図6を参照して、以下、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。なお、
図2及び
図4では、便宜上、各撹拌機の図示を省略している。
【0040】
図1及び
図2を参照する。
廃水処置装置A1は、フレームで形成された基台5を備えている。基台5の水平な高床部(符号省略)には、原水に凝集剤を添加した処理水を高速で撹拌し、凝集させてフロックを生成する高速撹拌槽1を備えている(
図1、
図2参照)。
【0041】
また、高速撹拌槽1の下流側には、高速撹拌槽1で処理した処理水を低速で撹拌し、フロックを成長させる低速撹拌槽2と、低速撹拌槽2で処理したフロックを含む処理水からフロックを沈殿させる沈殿槽3とを備えている。また、基台5の一端側の低床部(符号省略)には、沈殿槽3で処理した処理水を濾過して清澄化する濾過槽4を備えている。
【0042】
(高速撹拌槽1)
上記高速撹拌槽1は、所定の径及び長さを有する有底円筒形状で、上部が開口した槽体19を有している。槽体19は、基台5に対し下部の四箇所で固定用アングル13により固定されている。また、槽体19の内周壁部には、固定羽板100が周方向へ等間隔で四箇所に、鉛直に取り付けてある。
【0043】
各固定羽板100は、所定長さ(本実施の形態では、槽体19の高さの7割程度)で細長い長方形の板体であり、撹拌時の水流を邪魔して処理水の撹拌を助ける。なお、槽体19のサイズは、本実施の形態では、外径267mm、長さ(高さ)1000mmに設定されているが、これに限定せず、適宜設定が可能であるが、適宜径小とすることで、高速での撹拌を可能としている。
【0044】
また、槽体19には、高速撹拌機10が取り付けてある。撹拌機10のモーターMの回転軸11の先端部と中間部には、回転軸11を中心として複数枚となる撹拌羽根12が取り付けてある。なお、撹拌機10は、回転軸11が槽体19の中心線(通常は、設置状態で鉛直線)に対して所定角度で傾斜するように、槽体19の上部に固定されている。この回転軸11の傾斜角度は、本実施の形態では中心線に対して約5°であるが、これに限定せず、適宜設定が可能である。
【0045】
槽体19には、上流側の上部壁を貫通して、原水(対象廃水)を導入する原水導入管16が接続されている。槽体19の下流側の壁部の下段部と中段部には、後述する槽体29に接続される連通管14、15が貫通して設けてある。連通管14、15には、流路開閉用のバルブ(本実施の形態ではボールバルブを使用)140、150が設けてある。
【0046】
また、槽体19の槽底部には、開閉可能な排水部110が設けてある。なお、槽体19の側(そば)には、図示しない凝集剤供給機が配備され、凝集剤供給機は槽体19の上部の開口部から凝集剤を適宜バッチ的に、或いは連続的に投入するようにしてある。
【0047】
(低速撹拌槽2)
上記低速撹拌槽2は、高速撹拌槽1の下流側に配置してあり、所定の径及び長さを有する有底円筒形状の上部が開口した槽体29を有している。槽体29は、基台5に対し下部の四箇所で固定用アングル23により固定されている。槽体29の内周壁部には、固定羽板200が周方向へ等間隔で二箇所に取り付けてある。
【0048】
各固定羽板200は、所定長さ(本実施の形態では、槽体29の高さの6割程度)で細長い長方形の板体であり、上記固定羽板100と同様、撹拌時の水流を邪魔して処理水の撹拌を助ける。なお、槽体29のサイズは、上記高速撹拌槽1の槽体19のサイズと比べて、より径大で、かつ短く形成されている。本実施の形態では、外径356mm、長さ(高さ)700mmに設定されているが、これに限定せず、適宜設定が可能であるが、適宜径大とすることで、緩速での撹拌に適するようにしている。
【0049】
また、槽体29には、低速撹拌機20が取り付けてある。低速撹拌機20のモーターMの回転軸21の先端部と中間部には、回転軸21を中心として複数枚となる撹拌羽根22が取り付けてある。なお、低速撹拌機20は、回転軸21が槽体29の中心線に対して所定角度で傾斜するように、槽体29の上部に固定されている。
【0050】
この傾斜角度は、本実施の形態では中心線に対して約10°であるが、これに限定せず、適宜設定が可能である。なお、この槽体の中心線に対する回転軸の傾斜は、本実施の形態のように、高速撹拌槽19及び低速撹拌槽29の両方で設定してもよいし、何れか一方のみの設定でもよく、適宜選択できる。
【0051】
槽体29の上流側の側壁の下部寄りと上部寄りには、上記槽体19から延出された連通管14、15が接続してある。また、槽体29の下流側の側壁の下部寄りと上部寄りには、後述する沈殿槽3の槽体39に接続された連通管24と、先端部が槽体39の第1沈殿部31の開口部に位置する連通管25が接続されている。連通管24、25には、それぞれ流路開閉用のバルブ240、250が設けてある。また、槽体29の槽底部には、開閉可能な排水部210が設けてある。
【0052】
(沈殿槽3)
上記沈殿槽3は、低速撹拌槽2の下流側に配置してあり、上部が開口した四角形の升状の槽体39を有している。槽体39は、基台5に対し下部の四箇所で固定用アングル33により固定されている。槽体39の内部は、処理水の流れ方向の中間部に、流れ方向と直角方向に設けられた堰板30により、上流側の第1沈殿部31と下流側の第2沈殿部32に区画されている。
【0053】
また、堰板30の上辺部は、水平方向に連設された、谷部の凹端部301と山部の凸端部302からなる山形部(符号省略)が、全長にわたり設けられており、各谷部の凹端部同士及び各山部の凸端部同士は、互いに同じ高さに形成してある(
図1の部分拡大図参照)。また、第1沈殿部31と第2沈殿部の底部には、開閉可能な排水部310、320が設けてある。
【0054】
槽体39の上流側の側壁の下部には、第1沈殿部31に貫通して上記連通管24が接続してあり。また、槽体39の下流側の壁部の下部には、連通管34が貫通して設けられ、連通管34の先端部は、後述する槽体49の開口部の上方に位置している。
【0055】
(濾過槽4)
濾過槽4は、上部が開口した四角形の升状の槽体49を有している。槽体49の内部の上流側には、所定の網目を有するフィルター40が配置してある。フィルター40は、連通管34の先端部(排水部)の下方にあり、連通管34から排出される処理液を受けて濾過することができる。
【0056】
また、フィルター40は、内側が不織布製のフィルターで、外側はステンレス製のパンチングメタルで作製されたフィルターである。そして、槽体49の下流側の下部寄りには、排水管41が接続されている。排水管41は、設置場所により自在型(フレキシブル型)を使用し、排出方向の調整を可能にするものであるが、用途によっては、ストレーナ又はスクリーンを使用する場合もある。
【0057】
(作用)
図1、
図2を参照し、廃水処理装置A1の作用を説明する。
廃水処理装置A1は、例えばそのまま自然界や下水に放流することができない特定の有機物等が混入した廃水の有機物等の凝集剤によるフロック化を行う廃水処理を連続的に行うものである。
【0058】
処理対象となる廃水としては、例えば水性塗料洗浄廃水、レジスト廃水、セラミック研磨廃水、重金属研磨クーラント廃水、焼却炉高圧洗浄時のダイオキシン含有廃水、コンプレッサードレン廃水、ガラス研磨廃水、アスベスト洗浄廃水、食品加工廃水、食品洗浄廃水、畜産廃水、湖、沼等のヘドロ水、アオコ水、赤土等流出泥水、井戸水の重金属廃水等々であるが、これらに限定はされない。
【0059】
まず、廃水処理装置A1の連通管14、15のバルブ140、150と連通管24、25のバルブ240、250は閉じておく。なお、連通管34のバルブ340は開けておいてよい。そして、導入管16から高速撹拌槽1の槽体19内部に原水を導入する。
【0060】
(1) 槽体19に、原水が所定の量(例えば容積の8割程度)溜まったところで、高速撹拌機10を作動させ、原水を高速(400rpm)で攪拌する。更に、凝集剤供給機(粉体供給機)により、槽体29の上部の開口部から適宜量の凝集剤を投入するが、凝集剤の投入後に撹拌することもできる。
【0061】
ここで使用する凝集剤は、例えば無機質系浄化剤とシラス混合物が適宜割合で配合されたもの(環境適応型天然無機質系凝集剤:EMフロック)であり、比重が0.95、pHが0.1%液で7.2、水には不溶で、無臭である。なお、凝集剤は、これに限定するものではなく、原水の種類に合わせて適宜選択が可能である。
【0062】
(2) 凝集剤を混合した原水は、高速撹拌機10により高速で撹拌され、徐々にフロックが生じてくる。なお、高速撹拌機10の回転軸11は、上記のように鉛直に立っている槽体19に対し傾斜しているため、撹拌羽根12で起こる水流は乱流となり、効果的な撹拌が可能である。
【0063】
(3) 目視で所定量のフロックが確認できたら、連通管15のバルブ150を開け、フロックを含む処理水(フロックも含んでいる)を低速撹拌槽2の槽体29に移す。なお、廃水処理の初期では、槽体29に所定の量(少なくとも撹拌ができる程度)溜まるまでは、高速撹拌機10による上記処理を行い、槽体29に移すようにする。以降は、槽体19、29の水位を見ながら、バルブ150、250を手動で調整する等して、流量、すなわち処理量を調整する。
【0064】
(4) 槽体29の処理水が所定の量になったら、低速撹拌機20を作動させ、処理水を低速(200rpm)で撹拌する。このように、ゆっくり撹拌(緩速撹拌ともいう)することにより、不純物のフロック化が更に進み、フロックが大きくなる。なお、槽体29では、フロックの一部は沈殿する。
【0065】
このように、高速撹拌槽1により高速で撹拌をし、次に低速撹拌槽2により低速で撹拌することにより、それぞれの撹拌を作用的にはっきりと特徴付けた形で行うことができる。これにより、例えば中速程度で一定速度の撹拌を行う場合と比較して、より効果的であり、撹拌による凝集が早まり、高効率でのフロックの生成が可能になる。
【0066】
(5) 目視で所定のフロック化が確認できたら、連通管25のバルブ250を開けて、フロックを含む処理水を沈殿槽3の第1沈殿部31に移す。なお、槽体29における撹拌処理で沈殿したフロックがある場合は、清掃の際等に適宜排水部210から残液と共に、外部へ取り出すようにする。
【0067】
(6) 沈殿槽3の第1沈殿部31に処理水がたまり水位が上がって一杯になると、処理水は堰板30の上辺部から越水を始める。上流側の第1沈殿部31に入ったフロックを含む処理水は、第1沈殿部31内で溜まって水位が上がり、堰板の上辺部を越えて越水する。このとき、まず上辺部の各谷部301から処理水が越水するが、板の形状は各谷部301へ向け徐々に狭まり、かつ各山部302へ向けて尖るように立ち上がっている。
【0068】
これにより、上澄み液が上辺部を乗り越えるときにフロックが引っかかることにより、処理水が一度に流れないようになっている。また、乗り越えるフロックを極小さくする作用もある。処理水に含まれるフロックは、極小さなフロッックは除いて、例えば比較的大きなフロックであれば止められて、堰板30を乗り越えにくい。また、極小さなフロックを含む、堰板を乗り越えた処理水は、下流側の第2沈殿部32に溜まり、次の濾過槽4へ送られる。
【0069】
また、堰板30の上辺部には、その形状によりフロックが引っ掛かりやすいので、上辺部でのフロックの偏りを緩和又は抑制することができ、上辺部の全幅にわたり略ムラのない越水が行われる。越水が行われているうちに、多くのフロックは徐々に沈降し、第1沈殿部31の底部に溜まり、処理水の水分とは層状に分かれる。
【0070】
(7) 沈殿槽3の第2沈殿部32の水位が上昇すると、連通管34から処理水が排出されて、濾過槽4のフィルター40に落ちる。これにより、処理水はフィルター40により濾過されて清澄化する。清澄化した処理水は、排水管41から自然環境下に排出される。
【0071】
(8) 上記(1)~(7)の処理を繰り返し行い、また、これに伴って各槽体19、29、39に溜まるフロックを適宜取り出して適正に廃棄処理を行うことにより、廃水処理(原水の処理)を連続的に行うことができる。なお、下段の連通管14、24は、槽体19、29の内部を掃除する際に、例えば水位を下げることができるようにすると共に、必要に応じて、沈殿槽4まで残った廃水を流せるようにしたものである。
【0072】
廃水処理装置A1によれば、撹拌による凝集を速めてフロックの形成を短時間で効率よく行うことにより、凝集が不十分な処理水が濾過装置等へ送られてしまうことを抑制することができる。そして、凝集より後の工程の濾過装置等に対する負荷を低減することにより、その機能性が長く維持できるようになり、結果的に原水に含まれる溶解性有機物等(溶解性有機物及び溶解性無機物、或いは溶解性でない有機物及び無機物を含む場合がある)の、より効率的な除去が可能となる。
【0073】
なお、本発明の廃水処理装置A1は、廃水を一連の流れで導入し、例えばバッチ処理により廃水処理を行う従来のものより、処理スピードは向上しており、例えば、0.5トンの廃水の処理が、1時間程度で可能である。なお、条件によっては、5トン程度までの処理も可能になる。また、高速撹拌槽1、低速撹拌槽2、沈殿槽3及び濾過層4の他、pH調整タンク、スクリーン型脱水装置、などを自由に配列を変更することで、様々な廃水の処理に対応できる廃水処理装置をつくることができる利点もある。
【0074】
なお、上記構成の廃水処理装置A1は、簡易な構造で小型化されており、基台5、高速撹拌槽1、低速撹拌槽2、沈殿槽3及び濾過槽4が分解組み立て可能であるので、比較的容易に設置場所を移動することができる。
【0075】
図3及び
図4を参照する。
廃水処理装置A2は、基本的な構成が、上記廃水処理装置A1と同様であり、
図3、
図4においては、廃水処理装置A1と同等箇所に同一の符号を付して示している。
【0076】
また、廃水処理装置A2の高速撹拌槽1、低速撹拌槽2、沈殿槽3及び濾過槽4aの配置は、廃水処理装置A1のそれとは異なり、処理の方向が直線的でなく「コ」字状となる配置である。すなわち、各装置の配置が実質的に二列となっている。
【0077】
なお、濾過槽4aは、沈殿槽3の連通管34からの排水を受ける受け槽49を有し、受け槽49の内部にはネットフィルター40aが設けてある。また、受け槽49の下流側には、受け槽49の排水管41aの下に受け升490が配置され、排水管41aに取り付けてある濾し袋410が収容されている。
【0078】
濾過槽4aによる濾過は、パンチングメタル製のフィルター40aと不織布製の濾し袋410による二段階で行われるので、排水管42から排出される排水の清澄度が、上記濾過層4より更に高い。
【0079】
(作用)
廃水処理装置A2による処理の流れについては、濾過槽4aを除き、廃水処理装置A1と略同等であるので、説明は省略する。
【0080】
また、高速撹拌槽1、低速撹拌槽2、沈殿槽3及び濾過槽4aが、平面視で二列となるように、すなわち2つの装置の二列で配置してあることにより、四つの装置を一列として配置する場合と比較して、幅は広くなるが廃水処理装置の全体としての長さを略50%短くすることができる。
【0081】
これにより、廃水処理装置A2の上記各部の配置形状が、いわゆるキューブ型(立方体形状)となり、廃水処理装置Aと比較してもより小型化することができる。また、様々な設置スペースの形や広さに、より柔軟に合わせることができるので、設置場所について選択の幅を広げることができる。
【0082】
ここで、
図5(a)、(b)を参照して、各撹拌機の撹拌羽根の他の例について説明する。高速撹拌機10及び低速撹拌機20の各回転軸11、21に取り付けてある撹拌羽根12a、22aを有する。撹拌羽根12a、22aは、それぞれ回転軸の軸周方向へ等間隔で設けられた三枚の三日月形の刃板(符号省略)を有する。
【0083】
撹拌羽根12a、22aは、この構造により、回転することによって処理水に乱流を起こしやすく、上記各撹拌機10、20の撹拌羽根12、22と比較して、より撹拌効果が高い。
【0084】
図6(a)を参照する。
廃水処理装置A3は、基本的な構成が、上記廃水処理装置A1と同様であり、
図6(a)においては、廃水処理装置A1と同等箇所の要所に同一の符号を付して示している。
【0085】
廃水処理装置A3は、高速撹拌槽1と低速撹拌槽2を二組有し、これらを直列に配置している。また、二組目の低速撹拌槽2の下流側に接続される沈殿槽3と濾過層4は廃水処理装置A1と同等である。
【0086】
(作用)
廃水処理装置A3による処理の流れについては、二組の高速撹拌槽1と低速撹拌槽2を除き、廃水処理装置A1と略同等であるので、全体の説明は省略する。
【0087】
廃水処理装置A3は、高速撹拌槽1により高速で撹拌をし、次に低速撹拌槽2により低速で撹拌するという、それぞれの撹拌を作用的にはっきりと特徴付けた形で行うことができる処理を二回段階的に行うことができる。これにより、例えばクーラント廃液等の凝集しにくい廃水を処理する場合にも、比較的容易に凝集させることができる。
【0088】
図6(b)を参照する。
廃水処理装置A4は、基本的な構成が、上記廃水処理装置A1と同様であり、
図6(b)においては、廃水処理装置A1と同等箇所の要所に同一の符号を付して示している。
【0089】
廃水処理装置A4は、高速撹拌槽1と低速撹拌槽2の間に循環装置6を備えている。循環装置6は、槽体19の上部の側壁と槽体29の下部の側壁をつなぐ接続流路管61を有している。接続流路管61の経路中には、ポンプ62が設けられている。
【0090】
ポンプ62による処理水の送り方向は、低速撹拌槽2から高速撹拌槽1へ向かう方向(返送方向)である。これにより、連通管15のバルブ150を開けることで、高速撹拌槽1と低速撹拌槽2の間に、それらをつなぐ処理水の循環経路をつくることができる。
【0091】
なお、より確実な循環経路をつくるために、上記とは別の接続流路管(図示省略)を設けて、ポンプ(図示省略)で高速撹拌槽1から低速撹拌槽2へ送ることができる上記とは逆の流路を設けてもよい。
【0092】
(作用)
廃水処理装置A4による処理の流れについては、循環装置6を備える高速撹拌槽1と低速撹拌槽2を除き、廃水処理装置A1と略同等であるので、全体の説明は省略する。
【0093】
廃水処理装置A4は、循環装置6により、高速撹拌槽1と低速撹拌槽2の間で、処理水を循環させることができる。すなわち、高速撹拌槽1で高速撹拌処理した処理水を低速撹拌槽2に移して低速撹拌処理をしたときに、フロック化が充分でなかった場合は、循環装置6により処理水を一旦高速撹拌槽1へ戻して、高速撹拌槽1による高速撹拌処理を再度行い、更に低速撹拌槽2による低速撹拌処理を行うことができる。
【0094】
このようにして、低速撹拌処理後の処理水に含まれる溶解性有機物等のフロック化が充分に行われるまで、上記循環装置6を使用した撹拌処理を繰り返し行うことが可能になる。なお、高速撹拌槽と低速撹拌槽の間で、処理水を循環させる際には、フロック化を良好に行う上では、低速撹拌槽2から次工程の沈殿槽3へ送ることを一旦止めるのが好ましいが、限定はしない。
【0095】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0096】
A1 廃水処置装置
1 高速撹拌槽
19 槽体
100 固定羽板
10 高速撹拌機
M モーター
11 回転軸
12 撹拌羽根
13 固定用アングル
14 連通管
140 バルブ
15 連通管
150 バルブ
110 排水部
16 原水導入管
2 低速撹拌槽
29 槽体
23 固定用アングル
200 固定羽板
20 低速撹拌機
21 回転軸
22 撹拌羽根
24 連通管
240 バルブ
25 連通管
250 バルブ
210 排水部
3 沈殿槽
39 槽体
33 固定用アングル
30 堰板
31 第1沈殿部
32 第2沈殿部
301 谷部の凹端部
302 山部の凸端部
310 排水部
320 排水部
34 連通管
4 濾過槽
49 槽体
40 フィルター
41 排水管
5 基台
A2 廃水処理装置
4a 濾過槽
40a ネットフィルター
41a 排水管
410 濾し袋
49 受け槽
490 受け升
A3 廃水処理装置
A4 廃水処理装置
6 循環装置
61 接続流路管
62 ポンプ