(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157494
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】インバート型枠製造装置、インバート施工システムおよびインバート施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
E21D11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067437
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 快尚
(72)【発明者】
【氏名】丸山 修
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】木ノ村 幸士
(72)【発明者】
【氏名】臼井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊成
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA06
2D155BB02
2D155CA08
2D155DA01
(57)【要約】
【課題】トンネルのインバートの施工に関し、施工の手間を低減し、かつ、施工に要する人員の削減を可能とした、インバート型枠製造装置、インバート施工システムおよびインバート施工方法を提案する。
【解決手段】トンネル床付け面の上方に間隔をあけて設けられた一対の固定梁21,21と、一対の固定梁21,21に沿って移動可能に横架された可動梁22と、可動梁22に沿って移動可能に設けられたノズル23と、ノズル23に固化材を供給する固化材供給手段24とを備えるインバート型枠製造装置2を利用してインバート用の型枠を製造する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル床付け面に固化材を吐出してインバート用の型枠を製造するインバート型枠製造装置であって、
前記トンネル床付け面の上方に間隔をあけて設けられた一対の固定梁と、
前記一対の固定梁に沿って移動可能に横架された可動梁と、
前記可動梁に沿って移動可能に設けられたノズルと、
前記ノズルに固化材を供給する固化材供給手段と、を備えていることを特徴とする、インバート型枠製造装置。
【請求項2】
前記可動梁に沿って移動可能に設けられた3Dスキャナをさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載のインバート型枠製造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインバート型枠製造装置と、
前記型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設装置と、を備えるインバート施工システムであって、
前記コンクリート打設装置は、
前記一対の固定梁に沿って移動可能に横架された打設可動梁と、
前記打設可動梁に設けられた複数の打設ホースと、
前記打設ホースにコンクリートを供給するコンクリート供給手段と、
を備えていることを特徴とする、インバート施工システム。
【請求項4】
請求項1に記載のインバート型枠製造装置を利用したインバートの施工方法であって、
トンネル底部を掘削して床付けを行う工程と、
前記インバート型枠製造装置を設置する工程と、
前記インバート型枠製造装置を利用して、前記固化材を吐出して、横断型枠および縦断型枠を形成する工程と、
前記横断型枠および前記縦断型枠に囲まれた空間にコンクリートを打設する工程と、を備えていることを特徴とする、インバートの施工方法。
【請求項5】
請求項2に記載のインバート型枠製造装置を利用したインバートの施工方法であって、
トンネル底部を掘削して床付けを行う工程と、
前記インバート型枠製造装置を設置する工程と、
前記3Dスキャナを利用して、前記トンネル床付け面のスキャニングを行う工程と、
前記トンネル床付け面の形状と設計断面との差異を計算する工程と、
前記インバート型枠製造装置を利用して、前記差異に応じて前記固化材を吐出して、横断型枠および縦断型枠を形成する工程と、
前記横断型枠および前記縦断型枠に囲まれた空間にコンクリートを打設する工程と、を備えていることを特徴とする、インバートの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバート型枠製造装置、インバート施工システムおよびインバート施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル(NATM等)では、地山等級に応じて、標準支保パターンが変化し、インバートが有る区間と、インバートが無い区間とが生じる。
図1にインバートを有するトンネルTを示す。
インバートが有る区間では、覆工コンクリートC1とインバートコンクリートC2との接合部(ハンチ部C3)が断面曲線状に形成されているのが一般的である。このような断面曲線状のハンチ部C3(インバートの上端部)は、表面(コンクリート側の面)が曲面状に形成されたインバート用型枠を使用して施工する(例えば特許文献1参照)。また、インバートの施工は、坑口から切羽までの通路を確保するために、左右半断面ずつ施工を行うのが一般的である。
そのため、インバートの施工は、掘削により形成された床付け面Tsに、褄型枠、縦断型枠およびインバート用型枠等の型枠を組み立てた後、コンクリートを打設することにより行う。このようなインバートの施工には、複数の作業員が必要である。また、型枠の組立は、手作業により行うのが一般的で、手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような観点から、本発明は、トンネルのインバートの施工に関し、施工の手間を低減し、かつ、施工に要する人員の削減を可能とした、インバート型枠製造装置、インバート施工システムおよびインバート施工方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明のインバート型枠製造装置は、トンネル床付け面に固化材を吐出してインバート用の型枠を製造するものであって、前記トンネル床付け面の上方に間隔をあけて設けられた一対の固定梁と、前記一対の固定梁に沿って移動可能に横架された可動梁と、前記可動梁に沿って移動可能に設けられたノズルと、前記ノズルに固化材を供給する固化材供給手段とを備えている。
また、本発明のインバートの施工方法は、トンネル底部を掘削して床付けを行う工程と、前記インバート型枠製造装置を設置する工程と、前記インバート型枠製造装置を利用して、前記固化材を吐出して、横断型枠および縦断型枠を形成する工程と、前記横断型枠および前記縦断型枠に囲まれた空間にコンクリートを打設する工程とを備えている。
このようなインバートの施工方法では、前記インバート型枠製造装置に加え、前記一対の固定梁に沿って移動可能に横架された打設可動梁と、前記打設可動梁に設けられた複数の打設ホースと、前記打設ホースにコンクリートを供給するコンクリート供給手段とを有するコンクリート打設装置を備えるインバート施工システムを使用するのが望ましい。
【0006】
かかるインバート型枠製造装置およびインバート施工方法によれば、前後左右に移動するノズルから固化材を吐出して型枠を形成するため、手作業により型枠を組み立てる場合に比べて、簡易である。そのため、作業員の省人化が可能となる。
なお、前記インバート型枠製造装置は、前記可動梁に沿って移動可能に設けられた3Dスキャナをさらに備えていてもよい。前記インバート型枠製造装置が3Dスキャナを備えている場合には、前記3Dスキャナを利用して前記トンネル床付け面のスキャニングを行う工程と、前記トンネル床付け面の形状と設計断面との差異を計算する工程とを行い、前記差異に応じて前記固化材を吐出して、横断型枠および縦断型枠を形成すればよい。こうすることで、現地の形状に応じた型枠を簡易に形成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインバート型枠製造装置、インバート施工システムおよびインバート施工方法によれば、トンネルのインバートの施工において、施工の手間を低減し、かつ、施工に要する人員を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】インバートを有するトンネルを示す断面図である。
【
図2】本実施形態のインバート型枠製造装置を示す平面図である。
【
図3】インバート型枠製造装置を示す横断図である。
【
図4】インバート型枠製造装置を示す縦断図である。
【
図8】本実施形態のインバートの施工方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、インバートを有するトンネルTにおけるインバートの施工方法について説明する(
図1参照)。本実施形態では、インバート施工システム1を利用して、インバート用の型枠を形成し、この型枠内にコンクリートを打設することによりインバートを形成する。型枠は、いわゆる3Dプリンタを利用して形成する。
インバート施工システム1は、インバート型枠製造装置2(
図2~
図4)とコンクリート打設装置3(
図5~
図7)とを備えている。
インバート型枠製造装置2は、トンネル床付け面Tsに固化材を吐出することで、床付け面にインバート用の型枠を製造する装置である。
図2~
図4にインバート型枠製造装置2の概要を示す。
図2に示すように、インバート型枠製造装置2は、一対の固定梁21,21と、可動梁22と、ノズル23と、固化材供給手段24と、3Dスキャナ25とを備えている。
【0010】
一対の固定梁21,21は、
図2および
図3に示すように、トンネル床付け面Tsの上方において左右に間隔をあけて設けられている。一対の固定梁21,21は、ノズル23および3Dスキャナ25を支持するための架台の一部を構成している。本実施形態では、トンネル軸方向(Y方向)に沿って、トンネル側部とトンネル中央部にそれぞれ固定梁21を設けている。固定梁21は、鋼材(本実施形態ではH形鋼)により構成されている。トンネル中央部に設けられた固定梁21は、
図3および
図4に示すように、トンネル床付け面Tsに立設された鋼材(例えば、H形鋼や溝型鋼)からなる支柱21a,21aにより支持されている。本実施形態では、固定梁21の両端部にそれぞれ支柱21aが設けられている。トンネル軸方向の端部に配設された支柱21a,21aには、支持部材(ブラケット)21bとして、鋼材(例えばチャンネル材)が固定されていて、固定梁21は、支持部材21b上に固定されている。また、トンネル側部(
図3において右側)に設けられた固定梁21は、支保工に固定された支持部材(ブラケット)21c(例えば、チャンネル鋼)により支持されている。
図3に示すように、左右に設けられた固定梁21,21は、同じ高さになるように設けられている。また、左右に配設された固定梁21,21は、両端部において横架された鋼材(例えばアングル材)からなる繋ぎ材21d、21dにより連結されている。すなわち、固定梁21,支柱21a、支持部材21b,21cおよび繋ぎ材21d、21dを組み合わせることにより架台が形成されている。
【0011】
可動梁22は、
図3に示すように、一対の固定梁21,21に横架されている。可動梁22は、一対の固定梁21,21に沿って移動可能である。すなわち、可動梁22は、トンネル軸方向(Y方向)に沿って移動可能である。可動梁22は、H形鋼等の鋼材からなり、固定梁21,21を走行する走行車輪やローラー等の移動手段(図示せず)を介して固定梁21,21に横架されている。本実施形態では、固定梁21の上下のフランジの間に可動梁22の端部が移動手段とともに挿入されている。可動梁22のトンネル軸方向への移動は、制御手段(図示せず)により制御する。
【0012】
ノズル23は、可動梁22に設けられている。ノズル23は、可動梁22に沿って移動可能である。すなわち、ノズル23は、可動梁22に沿ってトンネル横断方向(X方向)に移動するとともに、可動梁22とともにトンネル軸方向(Y方向)に沿って移動することで、平面視で施工範囲全体に移動可能である。また、ノズル23は、可動梁22に対して上下方向(Z方向)に移動可能に設けられている。本実施形態のノズル23は、可動梁22のフランジに沿って走行する走行車輪やローラー等の移動手段(図示せず)により移動可能に構成されている。なお、ノズル23のトンネル横断方向への移動(可動梁22に沿った移動)および上下方向への移動は、制御手段(図示せず)により制御する。ノズル23には、固化材供給手段24から延設された固化材ホース26が接続されている。ノズル23は、固化材ホース26を介して輸送された固化材を床付け面に向けて吐出する。
【0013】
固化材供給手段24は、固化材ホース26を介してノズル23に固化材を供給する。固化材は、例えば、モルタルやコンクリート等の水硬性材料からなる。固化材供給手段24は、ホッパー24aとコンクリートポンプ24bとを備えている。アジデーター車を介して輸送されてホッパー24aに投入された固化材を、コンクリートポンプ24bにより固化材ホース26を介してノズル23に圧送する。なお、本実施形態の固化材ホース26は、トンネルの上部に設けられた滑車26aを介して、トンネル上部においてトンネル軸方向(Y方向)に延設されて後、ノズル23に接続されている。
【0014】
3Dスキャナ25は、可動梁22に沿って移動可能となるように、可動梁22に設けられている。本実施形態の3Dスキャナ25は、ノズル23と一体またはノズル23に添設されていて、ノズル23とともに、可動梁22に沿ってトンネル横断方向(X方向)に移動可能であり、かつ、可動梁22とともにトンネル軸方向(Y方向)に沿って移動可能である。3Dスキャナ25による測定結果は、コンピュータ、タブレット、スマートホン等の端末(図示せず)に送信される。
【0015】
コンクリート打設装置3は、インバート型枠製造装置2により形成された型枠内にコンクリートを打設する。
図5~
図7にコンクリート打設装置3を示す。コンクリート打設装置3は、
図5に示すように、打設可動梁31と、打設ホース32と、コンクリート供給手段33と、バイブレータ34とを備えている。
打設可動梁31は、
図5および
図6に示すように、一対の固定梁21,21に沿って移動可能となるように、一対の固定梁21,21に横架されている。すなわち、打設可動梁31は、トンネル軸方向(Y方向)に沿って移動可能である。打設可動梁31は、H形鋼等の鋼材からなり、固定梁21,21を走行する走行車輪やローラー等の移動手段(図示せず)を介して固定梁21,21に横架されている。本実施形態では、固定梁21の上下のフランジの間に打設可動梁31の端部が挿入されている。打設可動梁31のトンネル軸方向への移動は、制御手段を介して自動的に行ってもよいし、人力により行ってもよい。本実施形態の打設可動梁31は、型枠構築用の可動梁22とは別に設けられており、可動梁22の坑口側に配設されているが、打設可動梁31は可動梁22の切羽側に設けてもよい。
【0016】
打設ホース32は、
図5および
図6に示すように、打設可動梁31に設けられている。本実施形態では、複数の打設ホース32,32,…が任意の間隔をあけて打設可動梁31に設けられている。打設ホース32は、打設可動梁31から吊架されている。打設ホース32には、コンクリート供給手段33から延設されたコンクリートホース35が接続されている。また、本実施形態では、打設可動梁31に複数のバイブレータ34,34,…が設けられている。
【0017】
コンクリート供給手段33は、
図5および
図7に示すように、アジテータ―車等により輸送されたコンクリートを、コンクリートホース35を介して複数の打設ホース32,32,…に供給する。コンクリート供給手段33は、コンクリートポンプからなる。トンネル坑内に輸送されたコンクリートは、コンクリート供給手段33(コンクリートポンプ)によりコンクリートホース35を介して打設ホース32に圧送されて、型枠4内(横断型枠41と縦断型枠42に囲まれた空間)に流し込まれる。コンクリートホース35は、バルブ(図示せず)を介して打設ホース32に接続されている。
【0018】
次に、インバート施工システム1を利用したインバートの施工方法について説明する。
図8にインバートの施工方法の手順を示す。
図8に示すように、インバートの施工方法は、床付け工程S1と、装置設置工程S2と、スキャニング工程S3と、誤差算出工程S4と、型枠形成工程S5と、打設工程S6と、ハンチ部造成工程S7とを備えている。本実施形態では、インバートの施工を、トンネル断面視で片側ずつ行うものとし、トンネル軸方向で10.5mを1区間として施工を行う。
図9に床付け工程S1を示す。床付け工程S1は、
図9に示すように、トンネル底部を掘削して床付けを行う(トンネル床付け面Tsを形成する)工程である。トンネル底部の掘削は、バックホウ等の掘削機を利用して行う。掘削により発生した残土は、トラックやベルトコンベヤ等の輸送手段を利用して搬出する。施工範囲(掘削範囲)の端部には所定に勾配による法面Sを形成する。
【0019】
装置設置工程S2は、インバート施工システム1を設置する工程である(
図2~
図4参照)。まず、固定梁21,21を設置する。装置設置工程S2では、まず、トンネル中央部に支柱21aを立設するとともに、支柱21aおよびトンネル側部に支持部材21b,21cを設置する。次に、支持部材21b,21cに固定梁21を固定する。
続いて、固定梁21,21に、可動梁22を横架するとともに、可動梁22にノズル23および3Dスキャナ25を設置する。また、固定梁21,21に打設可動梁31を横架するとともに、打設ホース32,32,…を打設可動梁31に設置する。
【0020】
スキャニング工程S3は、トンネル床付け面のスキャニングを行う工程である。トンネル床付け面のスキャニングは、インバート型枠製造装置2の3Dスキャナ25により行う。3Dスキャナ25を可動梁22に沿って移動させることでトンネル横断方向に移動させるとともに、可動梁22を固定梁21,21に沿って移動させることにより3Dスキャナ25をトンネル縦断方向に移動させる。こうすることで、インバートの施工範囲全体の測定(スキャン)を行う。測定結果は、コンピュータ等に送信される。このとき、打設可動梁31は、固定梁21の坑口側端部に配置しておく。
誤差算出工程S4は、現地状況に応じた型枠形状を再設計する工程である。再設計工程では、3Dスキャナ25により測定したトンネル床付け面の形状と設計断面との差異(施工誤差)を計算し、現地状況に応じた固化材の吐出量(型枠の高さ)を算出する。その後、設計上のインバートの上面の位置に応じた型枠が成形できるように、ノズル23の移動ルート(XYZ座標)の設定を行う。
【0021】
型枠形成工程S5は、床付け面に型枠4を形成する工程である。型枠の形成には、インバート型枠製造装置2を利用する。本実施形態では、複数の横断型枠(褄型枠も含む)41,41,…をトンネル縦断方向に間隔をあけて形成するとともに、複数の縦断型枠42,42,…をトンネル横断方向に間隔をあけて形成することで、格子状の型枠4を造成する。横断型枠41の造成は、所定の位置に可動梁22を配置してから、可動梁22に沿ってノズル23を移動させながら、固化材を吐出することにより行う。ノズル23を複数回往復させることにより、固化材を所定の高さまで積層する。横断型枠41のトンネル壁側端部は、インバートの側部の形状に応じて、曲面状を呈している。縦断型枠42の造成は、可動梁22の所定の位置にノズル23を配置した状態で、可動梁22を固定梁21に沿って移動させながら、固化材を吐出することにより行う。可動梁22(ノズル23)を複数回往復させることにより、固化材を所定の高さまで積層する。横断型枠41および縦断型枠42を造成したら、所定の強度が発現するまで養生する。
【0022】
打設工程S6は、横断型枠41および縦断型枠42に囲まれた空間にコンクリートを打設する工程である(
図5~
図7参照)。コンクリートの打設には、コンクリート打設装置3を利用する。コンクリートの打設は、隣り合う横断型枠41同士の中間付近に打設可動梁31を配置した状態で、打設ホース32,32,…からコンクリートを流し込むことにより行う。このとき、型枠構築用の可動梁22は、固定梁21の切羽側端部に配置しておく。コンクリートの流し込みに伴い、バイブレータ34を利用して打設コンクリートを締め固める。なお、打設ホース32およびバイブレータ34は、隣り合う縦断型枠42同士の間に対応する位置に配置されている。所定の高さまでコンクリートを流し込み、締め固めたら、打設可動梁31を移動させて、再度コンクリートを流し込む。型枠4内に所定量のコンクリートを流し込んだら、型枠4の上面に沿ってコンクリートの表面を均すことで、インバートの表面を仕上げる。
【0023】
ハンチ部造成工程S7は、曲面状を呈したインバートの壁側端部(ハンチ部5)の施工を行う工程である。
図10にハンチ部造成工程S7を示す。
図10に示すように、本実施形態では、インバート型枠製造装置2を利用してハンチ部5を造成する。ハンチ部5の造成は、可動梁22の所定の位置(ハンチ部5に対応する位置)にノズル23を配置した状態で、可動梁22を固定梁21に沿って移動させながら、もしくは、可動梁22に沿ってノズル23を移動させながら、ノズル23から固化材を吐出することにより行う。ノズル23を複数回往復させることにより、固化材を所定の高さまで積層する。所定の高さまで固化材を積層したら、ノズル23をずらして、同様の作業を行う。複数回同作業を繰り返すことにより、曲面状(断面視三角形状)のハンチ部5を造成する。
コンクリートの養生後、打ち継ぎ目処理を行い、インバートを埋め戻す。
以上、床付け工程S1~ハンチ部造成工程S7を1サイクルとし、これをトンネル軸方向に沿って繰り返すことにより対象区間のインバートを構築する。
【0024】
本実施形態のインバート施工システム1およびインバート施工方法によれば、前後左右に移動するノズル23から固化材を吐出して型枠を自動的に形成するため、手作業により型枠を組み立てる場合に比べて、簡易である。そのため、作業員の省人化が可能となる。
また、3Dスキャナ25によりトンネル床付け面のスキャニングを行うことで、現地状況に応じた型枠4を3Dプリンタにより造成できる。
また、インバート側部(ハンチ部)の曲面部分に関しても3Dプリンタを利用して曲面状に造成できる。そのため、曲面型枠を必要とせず、コンクリートの打設状況を目視で確認することができ、ジャンカやあばたなどの品質不良が生じ難い。
3Dプリントを使用する範囲を限定することで、インバート全体を3Dプリントにより施工する場合に比べて、コスト低減化と工期短縮化を図ることができる。
大掛かりな装置を必要としないため、トンネル坑内の限られたスペースでも採用可能である。
また、詳細な施工記録をデジタルデータとして残すことができる。
【0025】
本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、可動梁22および打設可動梁31を支持する架台の構成は前記実施形態で示した構造に限定させるものではない。例えば、前記実施形態では、側部に配設された固定梁21を支保工によって支持するものとしたが、側部の固定梁21を支柱で支持してもよい。
また、前記実施形態では、インバートの施工を片側ずつ行うものとしたが、トンネルの断面形状が小さい場合には、全幅を同時に施工してもよい。
また、コンクリート打設装置は、必要に応じて使用すればよい。すなわち、コンクリートの打設は、従来工法と同様の方法により行ってもよい。高流動コンクリートを用いる場合にはバイブレータによる締固めを省略できる。
前記実施形態では、インバート型枠製造装置2が3Dスキャナ25を備えている場合について説明したが、3Dスキャナ25は省略してもよい。この場合には、スキャニング工程S3および再設計工程S4は省略する。なお、スキャニング工程S3に代えて、光波測距儀等による測量を行ってもよい。
3Dスキャナ25による床付け面の計測は、横断型枠41および縦断型枠42の形成箇所のみに対して行ってもよい。
また、3Dスキャナ25に代えて、レーザー距離計を使用してもよい。レーザー距離計を使用する場合には、レーザー距離計から床付け面Tsまたは固化材上面までの距離を測定し、測定結果に応じて、固化材の吐出を行えばよい。なお、固化材の吐出方法は問わない。硬練りの自立性がある材料を繰り返し厚みのある層を積み重ねる方法や、吹付けコンクリートのような柔らかい材料を圧力をかけながら薄く積み重ねる方法でもよい。
前記実施形態では、3Dプリンタを利用してハンチ部を造成するものとしたが、ハンチ部の形成方法は一般部(インバートのハンチ部以外の部分)と同様に、型枠4内にコンクリートを打設することにより形成してもよい。このとき、横断型枠41のトンネル側壁側端部をハンチ部の形状に応じて曲面を有した状態で形成しておく。そして、曲面状を呈したトンネル側壁側端部の横断型枠41の上面に沿ってコンクリート表面を均すことで、インバートの側端部(ハンチ部)を曲面状に成型すればよい。
【符号の説明】
【0026】
1 インバート施工システム
2 インバート型枠製造装置
21 固定梁
22 可動梁
23 ノズル
24 固化材供給手段
25 3Dスキャナ
3 コンクリート打設装置
31 打設可動梁
32 打設ホース
33 コンクリート供給手段
4 型枠
41 横断型枠
42 縦断型枠