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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157496
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20231019BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067440
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 憲昭
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA09
2E139AC19
2E139AC20
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 水位の上昇に応じて止水高さを高くする。
【解決手段】 水の流れに交差するように設けられる主止水板11と、主止水板11に対し上方移動可能に設けられた補助止水板12とを備え、補助止水板12が、浮力により上方移動して主止水板11による止水高さを高くするようにしたことを特徴とする止水装置。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の流れに交差するように設けられる主止水板と、
前記主止水板に対し上方移動可能に設けられた補助止水板とを備え、
前記補助止水板が、浮力により上方移動して前記主止水板による止水高さを高くするようにしたことを特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記補助止水板は、浮力により上方へ回動するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項3】
前記補助止水板は、浮力により上方へスライドするように設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項4】
前記主止水板には、上方を開口した貫通状の切欠部が設けられ、
前記補助止水板は、前記切欠部を開放した下側位置から前記切欠部を閉鎖した上側位置まで上方移動することを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項5】
前記補助止水板は、前記主止水板の横幅方向の全長にわたって設けられ、前記主止水板の上端以下である下側位置から、前記主止水板の上端よりも上方へ突出した上側位置まで上方移動することを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項6】
前記補助止水板は、前記主止水板の表面側と裏面側の両方にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項7】
前記補助止水板を所定位置にて上下移動不能に保持する保持機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項8】
前記補助止水板の浮力による上方移動を補助して、前記補助止水板を上方へ付勢する付勢機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項9】
前記補助止水板の上方移動の初動をアシストするアシスト機構が設けられていることを特徴とする請求項1~8何れか1項記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増水時等に建物や地下道などの開口部に水が浸入するのを阻む止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台風や集中豪雨などによる増水した水が建物や地下道などの開口部に侵入すると、甚大な被害を及ぼすおそれがある。そこで、このような事態に備えて、予め建物や地下道などの開口部の両側に溝付きの支柱を対向させて立設しておくとともに、この支柱の近傍に止水板を格納しておき、増水が発生したときには、止水板を前記支柱の溝内へ差し込み、開口部を閉鎖して水の侵入を阻むようにしたものが従来知られている(特許文献1参照)。
ところで、このような従来技術によれば、前記止水板により止水可能な高さよりも水位が高くなり、増加した水が前記止水板を乗り越えてしてしまうおそれがある。そこで、このような増水を見込んで、予め止水板を高めに設定しておくことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-2644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、予め止水板を高めに設定した場合、例えば、避難者等が止水板を跨いで通行することができなくなる等、支障が生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
水の流れに交差するように設けられる主止水板と、前記主止水板に対し上方移動可能に設けられた補助止水板とを備え、前記補助止水板が、浮力により上方移動して前記主止水板による止水高さを高くするようにしたことを特徴とする止水装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、水位の上昇に応じて止水高さを高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る止水装置の一例について、補助止水板が上方移動する前の状態を示す斜視図である。
図2】同止水装置において補助止水板が上方移動した後の状態を示す斜視図である。
図3】同止水装置において水密材を外した状態を示す要部斜視図である。
図4】同止水装置において補助止水板が浮力により上方移動している途中の状態を示す縦断面図である。
図5】本発明に係る止水装置の他例について、補助止水板が上方移動する前の状態を示す斜視図である。
図6】同止水装置において補助止水板が上方移動した後の状態を示す斜視図である。
図7】本発明に係る止水装置の他例について、補助止水板が上方移動する前の状態を示す斜視図である。
図8】同止水装置において補助止水板が上方移動した後の状態を示す斜視図である。
図9】本発明に係る止水装置の他例について、一方の補助止水板が上方移動した後の状態を示す縦断面図である。
図10】本発明に係る止水装置の他例について、補助止水板が浮力により上方移動している状態を示す縦断面図である。
図11】本発明に係る止水装置の他例について、補助止水板が浮力により上方移動している状態を示す縦断面図である。
図12】本発明に係る止水装置の他例を示す縦断面図であり、(a)は補助止水板が初期位置にある状態を示し、(b)は補助止水板の上方移動の初動がアシスト機構によりアシストされている状態を示す。
図13】本発明に係る止水装置の他例を示す縦断面図であり、(a)は補助止水板が初期位置にある状態を示し、(b)は補助止水板の上方移動の初動がアシスト機構によりアシストされている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<第一の実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
止水装置1は、水の流れに交差するように設けられる止水板10と、この止水板10を両側で支持する左右の止水体支持部20,20とを備え、建物等の開口部を塞ぐようにして、床面等の不動面上に設置される。
なお、前記一方側と前記他方側は、図示例によれば、それぞれ、屋外側と屋内側である。なお、他例としては、前記一方側を屋内側、前記他方側を屋外側とすることも可能である。
また、図示例によれば、屋外側が水の流れの上流側、屋内側が下流側であるが、他例としては、止水板10を逆向きに設置して、屋内側を上流側、屋外側を下流側とすることが可能である。
【0010】
止水板10は、左右の止水体支持部20,20間にわたる主止水板11と、主止水板11に相対し、浮力により上方移動(図示例によれば上方に回動)して止水高さを高くする補助止水板12とを備える。
また、これら主止水板11と補助止水板12の間には、必要に応じて、補助止水板12を所定位置にて上下移動不能に保持する保持機構35が設けられている。
【0011】
主止水板11は、横長矩形板状の部材であり、両側の止水体支持部20,20に対し屋外側(上流側)から脱着可能に装着される。
この主止水板11は、上辺側に、厚さ方向へ貫通する正面視凹状の切欠部11aを有し、上端部には、手持ち部11bを有する。
この主止水板11は、例えば金属材料等の硬質材料から、中実状、又は水抜き構造等を有する中空状に構成される。
【0012】
切欠部11aは、上方を開口した正面視凹状を呈し、主止水板11を厚さ方向へ貫通している。
この切欠部11aの内面における屋内側の端部寄りには、切欠部11aの内側の空間へ向かって突出するように、突片部11a1が設けられる。
【0013】
この切欠部11aの内面には、上側位置(止水位置)にある補助止水板12との間に挟まれて圧縮されるように、水密材31,32,33が設けられる。
これら水密材31,32,33は、それぞれ、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から形成される。
【0014】
水密材31は、切欠部11aの内面の左側部分に重なり合う板状に形成される(図3参照)。
この水密材31における屋外側の端部には、補助止水板12を切欠部11a内へ導くように、屋外側から屋内側へ向かうとともに徐々に切欠部11a内側へ傾斜するように、ガイド傾斜面31aが上下方向へわたって形成される。このガイド傾斜面31aは、補助止水板12が切欠部11a内へ滑らかに嵌り合うようにするものである。
また、水密材31における屋内側の端部には、切欠部11aの突片部11a1に当接するように、突部31bが上下方向へわたって形成される。この突部31bは、補助止水板12が切欠部11a内に嵌り合った際に、補助止水板12と突片部11a1との間に挟まれ圧縮されて、これらの間の隙間を水密に塞ぐ。
【0015】
水密材32は、水密材31と左右対称に形成され、ガイド傾斜面32a及び突部32b等を有する。
【0016】
水密材33は、切欠部11aの底側の内面に接する矩形平板状に形成される。なお、他例としては、この水密材33を水密材31,32と同じ断面形状にすることも可能である。
この水密材33は、補助止水板12が上側位置(図2参照)になった際に、補助止水板12の下端面と、切欠部11aの内側底面との間に挟まれ圧縮されて、これらの間の隙間を水密に塞ぐ。
【0017】
補助止水板12は、例えば、中空状の金属材料や発泡材等により矩形板状に形成され、この補助止水板12自体が、水の中で上方移動するための浮力を有する。
補助止水板12の材質の他例としては、木材や、浮力を有する合成樹脂材料等、比重の小さい物質とすることが可能である。
この補助止水板12は、全体として浮力を有していればよく、全体が水に浮き易い材質・材料により構成された態様や、浮力を有しない材質・材料と浮力を有する材質・材料により構成された態様等とすることが可能である。
また、この補助止水板12の好ましい態様としては、形状的に浮力を受けやすい部分を有したものでもよい(例えば、図10参照)。
【0018】
この補助止水板12は、主止水板11に対しヒンジ13を介して回動可能に支持され、周囲に水のない初期状態では切欠部11aを開放した下側位置(図1参照)にあり、周囲に水がある状態では、浮力により上方移動して、切欠部11aを水密に閉鎖した上側位置(図2参照)になる。
【0019】
より具体的に説明すれば、この補助止水板12は、浮力により一端部側を上方へ回動するように、逆端側が、単数又は複数のヒンジ13を介して、主止水板11に枢支されている。ヒンジ13は、図示例によれば、回転軸を切欠部11aの底辺に沿わせるようにして、主止水板11と補助止水板12の屋外側面間に装着される。
【0020】
保持機構35は、補助止水板12を上下移動経路の所定位置にて上下移動不能に保持したりこの保持状態を所定の操作により解除したりする機構であればよい。
図示例の保持機構35は、主止水板11に固定されたマグネット35aと、このマグネット35aに吸着されるように補助止水板12に固定された磁性部材35bとを備える。この保持機構35は、補助止水板12が切欠部11aに嵌り合った際に、マグネット35aが磁性部材35bを磁力により吸着し、手動操作等により補助止水板12が逆方向へ動かされることで前記吸着を解除する。
なお、前記保持状態を解除するための所定の操作は、前記のように手動による解除操作とすればよいが、好ましい他の一例としては、増水した水を利用した自動解除とすることも可能である。
【0021】
次に上記構成の止水装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
屋外側に水のない初期状態では、図1に示すように、補助止水板12が下側位置にあり、切欠部11aは開放されている。
このため、この初期状態においては、止水板10による止水高さH1は、主止水板11の最大高さから切欠部11aの高さを除いた寸法になる。
切欠部11aは、人が跨ぐ等するために利用することができる。
【0022】
屋外側が増水した場合には、主止水板11を切欠部11aの部分で乗り越えようと増加する水に、補助止水板12が浮かぶ。このため、補助止水板12は、ヒンジ13を回転中心にして上方へ回動し、水密材31,31,32間に対し、下の方から上の方へ次第に嵌り合ってゆく(図4参照)。この回動中は、補助止水板12の下部側が、水密材31,31,32間に対し、部分的に嵌り合うことで、水の通過が阻止される。
【0023】
そして、補助止水板12は、切欠部11aの全体を水密に閉鎖した上側位置(図2に示す閉鎖状態)となる。特に保持機構35を具備した場合には(図1参照)、補助止水板12を保持機構35の磁力によりスムーズに前記閉鎖状態にすることができ、その上、この閉鎖状態を安定的に保持することができる。
前記上側位置(閉鎖状態)においては、止水板10全体により止水可能な止水高さH2は、主止水板11の最大高さと略同じ寸法になる(図2参照)。
【0024】
このように、止水装置1によれば、水位が上昇するのに応じて、止水高さを徐々に高くすることができる。
【0025】
<第二の実施態様>
次に、本発明に係る他の実施態様について説明する。なお、以下に示す実施態様は、上述した止水装置1に対し一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、重複する詳細説明を省略する。
【0026】
図5及び図6に示す止水装置2は、上記止水装置1において、主止水板11、補助止水板12、ヒンジ13及び水密材31,32,33を、それぞれ、主止水板11’、補助止水板14、左右のレール15,15及び水密材34に置換したものである。
【0027】
主止水板11’は、図示例によれば、上記主止水板11から突片部11a1を省いたものである。なお、この主止水板11’は、主止水板11をそのまま用いることも可能である。
【0028】
補助止水板14は、上記補助止水板12と同様に、中空状の金属材料や発泡材等により矩形板状に形成され、浮力を有する。
補助止水板14の材質の他例としては、木材や、浮力を有する合成樹脂材料等、比重の小さい物質とすることが可能である。
この補助止水板14は、全体として浮力を有していればよく、全体が水に浮き易い材質・材料により構成された態様や、浮力を有しない材質・材料と浮力を有する材質・材料により構成された態様等とすることが可能である。
また、この補助止水板14の好ましい態様としては、形状的に浮力を受けやすい部分を有したものでもよい(例えば、図11参照)。
【0029】
この補助止水板14は、切欠部11aを屋外側から覆うようにして、水密材34に重なり合う大きさを有する。
【0030】
左右のレール15,15は、切欠部11aを間に置くようにして、主止水板11の屋外側面に固定される。
各レール15は、補助止水板14を左右両側で上下方向へ導くものであり、図示例によれば、補助止水板14の左端部又は右端部に遊嵌する略L字状の横断面を、上下方向へ連続している。
また、各レール15の下端側には、補助止水板14を所定の下側位置(図5に例示する下限位置)に保持する図示しない係止部が設けられる。
【0031】
水密材34は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から平板状等の適宜形状に形成される。この水密材34は、図示例によれば、主止水板11’の屋外側面に、切欠部11aに沿う平面視凹状に接着固定される。
なお、他例としては、補助止水板14の屋内側の面に、前記同様の水密材を設けるようにしてもよい。
【0032】
よって、上記構成の止水装置2によれば、屋外側に水のない初期状態では、補助止水板12が下側位置にあり、切欠部11aは開放され、止水板10による止水高さH1は、主止水板11’の最大高さから切欠部11aの高さを除いた寸法になる。この初期状態では、人等が、切欠部11aを跨ぐようにして通行可能である。
【0033】
屋外側が増水した場合には、補助止水板14が浮力により上方へスライドし、切欠部11aを水密に閉鎖した上側位置となる(図6参照)。
この上側位置においては、止水板10による止水高さH2は、主止水板11’の最大高さと略同じ寸法になる。
【0034】
このように、止水装置2によれば、水位が上昇するのに応じて、止水高さを自動的に高くすることができる。さらに、この止水装置2によれば、水位が下降した場合には、補助止水板12が自重により下降するため、止水高さを自動的に低くすることができる。
【0035】
<第三の実施態様>
図7及び図8に示す止水装置3は、止水装置1において、止水板10を止水板40に置換したものである。
【0036】
止水板40は、水の流れに交差するように設けられる主止水板41と、主止水板41に対し浮力により上方移動(図示例によれば上方に回動)して止水高さを高くする補助止水板42とを備える。
【0037】
主止水板41は、横長矩形板状の部材であり、両側の止水体支持部20,20における下半部側に対し、屋外側から脱着可能に装着される。
この主止水板41の上端部は、凹凸のない略水平な面である。この面には、水密材41aが横幅方向の略全長にわたり連続的に設けられる。この水密材41aは、補助止水板42が上方へ回動した際に、この補助止水板42と主止水板41の間に挟まれて水密性を保持する。
【0038】
補助止水板42は、例えば、中空状の金属材料や発泡材等により、主止水板41の横方向の全長と略同じ横幅寸法を有する矩形板状に形成され、浮力を有する。
補助止水板42の材質の他例としては、木材や、浮力を有する合成樹脂材料等、比重の小さい物質とすることが可能である。
この補助止水板42は、全体として浮力を有していればよく、全体が水に浮き易い材質・材料により構成された態様や、浮力を有しない材質・材料と浮力を有する材質・材料により構成された態様等とすることが可能である。
また、この補助止水板42の好ましい態様としては、形状的に浮力を受けやすい部分を有したものでもよい。
【0039】
この補助止水板42は、主止水板41の上端以下である下側位置(図7参照)から、主止水板41の上端よりも上方へ突出した上側位置(図8参照)まで、上方へ回動するように、複数のヒンジ13を介して主止水板41に支持される。
【0040】
よって、上記構成の止水装置3によれば、屋外側に水のない初期状態では、補助止水板42が主止水板41の上端よりも下方側に位置し、止水高さH1は、主止水板11の下端から上端までの高さになる(図7参照)。
【0041】
また、屋外側が増水した状態では、補助止水板42が、浮力により上方へ回動して、主止水板41の上方側の空間を閉鎖する。このため、止水高さH2は、主止水板11の下端から、上側位置にある補助止水板42の上端までの高さになる(図8参照)
【0042】
すなわち、上記構成の止水装置3によっても、水位が上昇するのに応じて、止水高さを自動的に高くすることができる。
【0043】
なお、止水装置3の他例としては、補助止水板42を、止水装置2(図5及び図6参照)と同様にして、上下方向へスライドするように設けることが可能である。このようにした場合には、水位の昇降に応じて、止水高さを自動的に変化させることができる。
【0044】
<第四の実施態様>
また、図9に示す止水装置4は、上記止水装置2において、主止水板11’の表面側と裏面側の両方に、補助止水板14、レール15、水密材34等を設けたものである。
この止水装置4における主止水板11’は、その表面側と裏面側のうち、何れであっても止水体支持部20に対し装着可能となるように構成される。
【0045】
よって、上記構成の止水装置4によれば、止水体支持部20に対し止水板10を装着する作業において、作業者等が止水体支持部20に対する装着面を意識する必要がなく、その作業性が良好である。
そして、屋外側又は屋内側で増水した場合には、その増水のあった上流側の補助止水板14を自動的に昇降させることができる。
【0046】
<第五の実施態様>
図10に示す止水装置5は、上記止水装置1において、上記構成の補助止水板12に、浮部12aを加えたものである。
浮部12aは、補助止水板12の上方回動の初期段階で受ける浮力を増大するように、補助止水板12の先端側で補助止水板12の表面から突出し、水に接する部分の表面積や体積を大きくしている。
この浮部12aは、好ましくは補助止水板12よりも浮力の大きい材料から形成されるが、補助止水板12と同材料により一体成形することも可能である。
浮部12aの形状は、図10に示す一例によれば、補助止水板12の横幅方向にわたる横向き四角柱状である。この形状は、後述する浮部14a(図11参照)や、その他の形状にすることが可能である。
【0047】
よって、図10に示す止水装置5によれば、浮部12aを浮力によって補助止水板12をよりスムーズに上方回動させることができる。
【0048】
<第六の実施態様>
図11に示す止水装置6は、上記止水装置2において、上記構成の補助止水板14に、浮部14aを加えたものである。
浮部14aは、補助止水板14が受ける浮力を増大するように、補助止水板14の下端側で補助止水板14の表面から突出し、水に接する部分の表面積や体積を大きくしている。
この浮部14aは、好ましくは補助止水板14よりも浮力の大きい材料から形成されるが、補助止水板14と同材料により一体成形することも可能である。
浮部14aの形状は、図11に示す一例によれば、補助止水板14の横幅方向にわたる横向き三角柱状である。この形状は、上述した浮部12a(図10参照)や、その他の形状にすることが可能である。
【0049】
よって、図11に示す止水装置6によれば、浮部14aを浮力によって補助止水板14をよりスムーズに上方へスライドさせることができる。
【0050】
<第七の実施態様>
図12(a)(b)に示す止水装置7は、上記止水装置1において、補助止水板12の上方移動の初動をアシストするアシスト機構50を設けたものである。
アシスト機構50は、主止水板11と補助止水板12間へ向かって上方へ延設された板状の一片部51と、この一片部51の下端から下方斜め上流側へ一片部51よりも長く延設された板状の他片部52とから一体の断面略く字状に構成され、一片部51と他片部52の境目部分が止水板10に対し回転自在に枢支される。
【0051】
この止水装置7によれば、水のない状態では、一片部51が補助止水板12の下端側と主止水板11の間に挟まれるようにして位置し、他片部52が下方斜め上流側へ傾斜している。
増水等による水が止水板10へ向かって流れると、この水の流れに他片部52が押されて下流側へ回動するとともに、一片部51が上流側へ回動する。
このため、補助止水板12が、一片部51に押されて若干上方回動し、下端側を上流側へ傾ける。このため、更に水位が上がり、補助止水板12の下端側まで増水した際には、補助止水板12が浮力によりスムーズに上方回動する。
【0052】
よって、図12に示す止水装置7によれば、補助止水板12の初動をスムーズにすることができる。
【0053】
<第八の実施態様>
図13(a)(b)に示す止水装置8は、上記止水装置1において、補助止水板12の上方移動の初動をアシストするアシスト機構60を設けたものである。
アシスト機構60は、主止水板11に形成された上下方向の溝状の案内部61と、案内部61に沿って上昇可能な浮部材62とを備える。
浮部材62は、補助止水板12よりも浮力が大きくなるように、材料や、表面積、体積、形状等が適宜に調整されている。この浮部材62の上端側は、補助止水板12の下端側と主止水板11の間に入り込むように縦断面略くさび状に形成される。
【0054】
この止水装置8によれば、水のない状態では、浮部材62が、補助止水板12よりも下方側で、床面等の上に位置する。
周囲の水の水位が上がると、この水に浮部材62が浮き、浮部材62上端側のくさび状部分が補助止水板12と主止水板11の間に入り込み、前記くさび状部分の傾斜面により補助止水板12が上流側へ押される。
このため、補助止水板12が、若干上方へ回動して、下端側を上流側へ傾ける。そして、更に水位が上がり、補助止水板12の下端側まで増水した際には、補助止水板12は、浮力によりスムーズに上方回動する。
【0055】
よって、図13に示す止水装置8によっても、補助止水板12の初動をスムーズにすることができる。
【0056】
<その他の変形例>
上記実施態様では、一例として保持機構35(図1参照)が補助止水板12を上側位置(止水位置)に保持するようにしたが、上記保持機構の他例としては、上記補助止水板を下側位置にて保持する態様や、上記補助止水板を上側位置と下側位置とでそれぞれ保持する態様、上記補助止水板を上下移動方向の途中位置で保持する態様等とすることも可能である。
そして、このように補助止水板を所定位置で保持するようにすれば、使用中や運搬時等に、補助止水板の微動やがたつき等に起因して不具合が生じるのを防ぐことができる。
【0057】
また、上記実施態様では、保持機構35をマグネット35aと磁性部材35bにより構成したが、この保持機構の他例としては、補助止水板12自体を磁性材から形成してマグネット35aに磁着するようにしてもよい。
さらに、前記保持機構の他例としては、ローラキャッチャー等と呼称される係脱機構や、その他の係合構造や嵌合構造等により構成することも可能である。
【0058】
また、上記実施態様によれば、上記補助止水板を回動又はスライドにより上方移動させるようにしたが、他例としては、上記補助止水板を、回動とスライドの両方の動作により上方移動させることも可能である。具体的に説明すれば、補助止水板が浮力により上方へスライドした後に回動して上側位置(止水位置)になる態様や、補助止水板が浮力により上方へ回動した後にスライドして上側位置になる態様、補助止水板が浮力により上方へスライドしながら回動して上側位置になる態様等とすることが可能である。
【0059】
また、上記止水装置1,2によれば、主止水板11に対し切欠部11aを単数設けたが、他例としては、主止水板11に対し横幅方向に間隔を置いて複数の切欠部を設けることも可能である。
この場合、複数の切欠部を、横方向に長尺な単数の補助止水板によってまとめて閉鎖するようにしてもよいし、複数の切欠部を、複数の補助止水板によってそれぞれ閉鎖するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施態様によれば、単数の上記切欠部を、単数の補助止水板により塞ぐようにしたが、他例としては、単数の上記切欠部を、横幅方向に並ぶ複数の補助止水板により塞ぐことも可能である。
【0061】
また、上記止水装置4によれば、上方へスライドする補助止水板14を表面側と裏面側の両方に設けたが、図示例以外の他例としては、上方へ回動する補助止水板12を表面側と裏面側の両方に設けることも可能である。この場合、表面側と裏面側の補助止水板12,12は、それぞれ、切欠部内にて厚さ方向における片半部側と他半部側に嵌り合うようにすればよい。
【0062】
また、上記主止水板の表面側と裏面側との両方にそれぞれ上記補助止水板を設ける場合、これら補助止水板は、両方とも同じタイプ(例えば、両方ともスライドタイプ、又は両方とも回動タイプ)でもよく、それぞれ異なるタイプ(例えば、一方の面側がスライドタイプで、他方の面側が回動タイプ)でもよい。
【0063】
また、上記実施態様によれば、上記補助止水板が浮力等により自動的に上方移動するようにしたが、上記補助止水板は、浮力等により自動的に上方移動するのを待たずに、手動で上方移動させて予め止水高さを大きくしておくことが可能である。
【0064】
また、上記実施態様によれば、上記補助止水板を浮力のみにより上方移動させたが、他の好ましい態様としては、上記補助止水板の浮力による上方移動を補助するように、前記補助止水板を上方へ付勢する付勢機構を設けるようにしてもよい。
この付勢機構は、例えば、上述した回動タイプの止水装置1,3,5,7,8について、ヒンジ13に、上記補助止水板を上方へ付勢するねじりバネを付加すればよい。すなわち、ヒンジ13をバネ入り蝶番等に置換すればよい。
また、上述したスライドタイプの止水装置2,4,6については、例えば、圧縮スプリングや引張スプリングにより上記補助止水板を上方へ付勢すればよい。
さらに、前記付勢機構は、上記以外の構成のバネや、油圧機構、空気圧機構、電動機構等により構成することも可能である。
そして、前記付勢機構を付加した止水装置によれば、上記補助止水板を浮力と付勢機構の付勢力によって短時間で自動的に上方移動させ、切欠部11aを閉鎖することができる。
【0065】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0066】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)水の流れに交差するように設けられる主止水板と、前記主止水板に対し上方移動可能に設けられた補助止水板とを備え、前記補助止水板が、浮力により上方移動して前記主止水板による止水高さを高くするようにしたことを特徴とする止水装置(図1図8参照)。
ここで、前記止水高さとは、水が前記主止水板及び前記補助止水板を乗り越えて流れるのを防ぐことが可能な高さを意味する。この止水高さは、前記補助止水板が上方移動する前の状態よりも、前記補助止水板が上方移動した後の状態の方が高くなる。
(2)前記補助止水板は、浮力により上方へ回動するように設けられていることを特徴とする(1)に記載の止水装置(図1図4図7図8参照)。
(3)前記補助止水板は、浮力により上方へスライドするように設けられていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の止水装置(図5及び図6図9)。
(4)前記主止水板には、上方を開口した貫通状の切欠部が設けられ、
前記補助止水板は、前記切欠部を開放した下側位置から前記切欠部を閉鎖した上側位置まで上方移動することを特徴とする(1)~(3)の何れかに記載の止水装置(図1図6参照)。
(5)前記補助止水板は、前記主止水板の横幅方向の全長にわたって設けられ、前記主止水板の上端以下である下側位置から、前記主止水板の上端よりも上方へ突出した上側位置まで上方移動することを特徴とする(1)~(3)の何れかに記載の止水装置(図7及び図8参照)。
(6)前記補助止水板は、前記主止水板の表面側と裏面側の両方にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項(1)~(5)の何れかに記載の止水装置(図9参照)。
(7)前記補助止水板を所定位置にて上下移動不能に保持する保持機構が設けられていることを特徴とする(1)~(6)の何れかに記載の止水装置。
(8)前記補助止水板の浮力による上方移動を補助して、前記補助止水板を上方へ付勢する付勢機構が設けられていることを特徴とする請求項(1)~(7)の何れかに記載の止水装置。
(9)前記補助止水板の上方移動の初動をアシストするアシスト機構が設けられていることを特徴とする(1)~(8)の何れかに記載の止水装置。
【符号の説明】
【0067】
1,2,3,4,5,6,7,8:止水装置
10,40:止水板
11,11’,41:主止水板
12,14,42:補助止水板
12a,14a:浮部
13:ヒンジ
20:止水体支持部
31,32,33,34:水密材
50,60:アシスト機構
H1,H2:止水高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図13