(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001575
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】異常検出方法及び異常検出装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20221226BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20221226BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102384
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼森 康之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊兵
(72)【発明者】
【氏名】井上 博登
(72)【発明者】
【氏名】佐原 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴郁
【テーマコード(参考)】
2G024
5H501
【Fターム(参考)】
2G024AA21
2G024BA27
2G024CA18
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
5H501AA05
5H501AA09
5H501CC02
5H501CC04
5H501DD08
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5H501JJ16
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5H501LL51
5H501MM09
5H501PP10
(57)【要約】
【課題】動力伝達装置の異常を判定できる異常検出方法及び異常検出装置を提供すること。
【解決手段】異常検出方法は、モータと、モータにより駆動する駆動軸と、駆動軸によって回転する従動軸とを有する動力伝達装置の異常を検出する。モータは少なくともN相(Nは1以上の整数)のコイルを有し、異常検出方法は、モータの回転に同期してコイルに流れる電流値を検出し、検出した電流値をフーリエ変換し、電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置の異常を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータにより駆動する駆動軸と、前記駆動軸によって回転する従動軸とを有する動力伝達装置の異常を検出する異常検出方法であって、
前記モータは少なくともN相(Nは1以上の整数)のコイルを有し、
前記異常検出方法は、
前記モータの回転に同期して前記コイルに流れる電流値を検出し、
検出した前記電流値をフーリエ変換し、
前記電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、前記動力伝達装置の異常を判定する、
異常検出方法。
【請求項2】
前記電流値は、N相の内、少なくとも1相の前記モータの回転に同期した値である、請求項1に記載の異常検出方法。
【請求項3】
前記電流値をフーリエ変換した結果が閾値以上である場合に、前記動力伝達装置が異常であると判定する、請求項1又は請求項2に記載の異常検出方法。
【請求項4】
検出される前記電流値は、特定次数成分である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項5】
前記動力伝達装置は、前記駆動軸と前記従動軸との間で、非接触で動力を伝達する動力伝達手段を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項6】
前記動力伝達手段はマグネットカップリングであり、前記マグネットカップリングの極対数と同じ次数成分によって異常を判定している、請求項5に記載の異常検出方法。
【請求項7】
前記動力伝達手段は磁気ギアであり、前記磁気ギアの駆動軸側に接続された磁石の極数による次数成分と同じ次数成分によって異常を判定している、請求項5に記載の異常検出方法。
【請求項8】
前記従動軸は、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒を減圧膨張させる膨張弁を駆動させる、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項9】
前記従動軸は、流体の流量を調整する流量調整弁を駆動させる、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項10】
前記従動軸は、流体を流動させるポンプのインペラに接続されている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項11】
モータと、前記モータにより駆動する駆動軸と、前記駆動軸によって回転する従動軸とを有する動力伝達装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記モータは少なくともN相(Nは1以上の整数)のコイルを有し、
前記異常検出装置は、
前記モータの回転に同期して前記コイルに流れる電流値を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記電流値をフーリエ変換するフーリエ解析部と、
前記電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、前記動力伝達装置の異常を判定する判定部と
を備える、異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出方法及び異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、石油化学工場などのプラントでは、配管内を流れる水や蒸気など流体の流れを制御するため、数多くの電動バルブアクチュエータが使用される。電動バルブアクチュエータは、一旦設置されると数十年間にわたって使用されるものが多い。電動バルブアクチュエータを長期間にわたって使用する場合、定期的に劣化程度や異常の有無を診断して健全性を確保する必要がある。
【0003】
電動バルブアクチュエータの回転部品の異常を検出する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術は、電動バルブアクチュエータによりバルブを駆動し、バルブの中間開度領域におけるモータ電流を検出し、モータ電流に含まれる周波数成分を解析し、回転部品の異常を診断する。また、周波数成分の中から回転部品に起因する特定周波数を抽出し、正常時のスペクトルと比較することにより、回転部品の異常を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した電動バルブアクチュエータの回転部品などの動力伝達装置の異常を検出する技術は、データ量が多くなるため、処理時間が長く、高度な処理能力を有するマイコンが必要である。
また、異常検出に使用する値は、アクチュエータ駆動用モータの製造バラツキによって影響を受ける。
本発明の目的は、動力伝達装置の異常を判定できる異常検出方法及び異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の異常検出方法は、モータと、前記モータにより駆動する駆動軸と、前記駆動軸によって回転する従動軸とを有する動力伝達装置の異常を検出する異常検出方法であって、前記モータは少なくともN相(Nは1以上の整数)のコイルを有し、前記異常検出方法は、前記モータの回転に同期して前記コイルに流れる電流値を検出し、検出した前記電流値をフーリエ変換し、前記電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、前記動力伝達装置の異常を判定する。
この発明によれば、異常検出方法は、モータと、モータにより駆動する駆動軸と、駆動軸によって回転する従動軸とを有する動力伝達装置の異常を検出する。異常検出方法は、モータの回転に同期してモータの有するコイルに流れる電流値を検出する。このように構成することによって、モータに流れる電流(モータ電流)を検出できる。異常検出方法は、検出した電流値をフーリエ変換する。このように構成することによって、電流値の周波数成分を抽出できる。異常検出方法は、電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置の異常を判定する。このように構成することによって、動力伝達装置において、電流値をフーリエ変換した結果は、異常である場合と正常である場合とで異なるため、動力伝達装置に空転(脱調)などの異常が発生したことを検出できる。
【0007】
また、上記の異常検出方法において、前記電流値は、N相の内、少なくとも1相の前記モータの回転に同期した値であってもよい。
この発明によれば、異常検出方法において、電流値は、N相の内、少なくとも1相のモータの回転に同期した値とすることができる。仮に、N相ブラシレスモータの場合、各相の機械的精度と、電流を検出するセンサーの位相精度とがモータに流れる電流に影響を及ぼすことがあり、精度を高くできない。このように構成することによって、モータの各層、電流値を検出するセンサーの位相精度のバラツキを無視できるため、精度を高くできる。少ないデータ量で動力伝達装置の異常検出が可能となることで、処理速度の向上および安価なマイコンの使用が可能となる。また、駆動用モータのバラツキによる影響を軽減することが可能となる。
【0008】
また、上記の異常検出方法において、前記電流値をフーリエ変換した結果が閾値以上である場合に、前記動力伝達装置が異常であると判定してもよい。
この発明によれば、異常検出方法において、電流値をフーリエ変換した結果が閾値以上である場合に、動力伝達装置が異常であると判定できる。動力伝達装置において、電流値をフーリエ変換した結果は、異常である場合は、正常である場合と比較して上昇する。このように構成することによって、異常検出方法は、電流値をフーリエ変換した結果が閾値以上であることを検出した場合に、異常であると判定できる。
【0009】
また、上記の異常検出方法において、検出される前記電流値は、特定次数成分であってもよい。
この発明によれば、異常検出方法において、検出される前記電流値は、特定次数成分とすることができる。異常が検出される場合には、モータの次数成分のトルクリップルとして検出される。このように構成することによって、特定次数成分を検出できるため、動力伝達装置に空転(脱調)などの異常が発生したことを検出できる。異常検出方法において、空転と外乱とを区別して判断できる。
【0010】
また、上記の異常検出方法において、前記動力伝達装置は、前記駆動軸と前記従動軸との間で、非接触で動力を伝達する動力伝達手段を備えてもよい。
この発明によれば、異常検出方法において、動力伝達装置は、駆動軸と従動軸との間で、非接触で動力を伝達する動力伝達手段を備えることができる。このように構成することによって、従動軸を、モータと同期して動作させることができるため、モータの回転に同期してモータの有するコイルに流れる電流値を検出し、検出した電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置の異常を判定できる。
【0011】
また、上記の異常検出方法において、前記動力伝達手段はマグネットカップリングであり、前記マグネットカップリングの極対数と同じ次数成分によって異常を判定してもよい。
この発明によれば、異常検出方法において、動力伝達手段はマグネットカップリングとすることができる。このように構成することによって、マグネットカップリングの極対数と同じ次数成分によって異常を判定することができる。
【0012】
また、上記の異常検出方法において、前記動力伝達手段は磁気ギアであり、前記磁気ギアの駆動軸側に接続された磁石の極数による次数成分と同じ次数成分によって異常を判定してもよい。
この発明によれば、異常検出方法において、動力伝達手段は磁気ギアとすることができる。このように構成することによって、磁気ギアの駆動軸側に接続された磁石の極数による次数成分と同じ次数成分の電流値を検出することができる。
【0013】
また、上記の異常検出方法において、前記従動軸は、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒を減圧膨張させる膨張弁を駆動させてもよい。
この発明によれば、異常検出方法において、従動軸は、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒を減圧膨張させる膨張弁を駆動させることができる。このように構成することによって、従動軸によって、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒を減圧膨張させることができる。
【0014】
また、上記の異常検出方法において、前記従動軸は、流体の流量を調整する流量調整弁を駆動させてもよい。
この発明によれば、異常検出方法において、従動軸は、流体の流量を調整する流量調整弁の弁体を駆動させることができる。このように構成することによって、従動軸によって、流体の流量を調整することができる。
【0015】
また、上記の異常検出方法において、前記従動軸は、流体を流動させるポンプのインペラに接続されてもよい。
この発明によれば、異常検出方法において、従動軸は、流体を流動させるポンプのインペラに接続させることができる。このように構成することによって、従動軸によって、流体を流動させることができる。
【0016】
本発明の異常検出装置は、モータと、前記モータにより駆動する駆動軸と、前記駆動軸によって回転する従動軸とを有する動力伝達装置の異常を検出する異常検出装置であって、前記モータは少なくともN相(Nは1以上の整数)のコイルを有し、前記異常検出装置は、前記モータの回転に同期して前記コイルに流れる電流値を検出する検出部と、前記検出部が検出した前記電流値をフーリエ変換するフーリエ解析部と、前記電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、前記動力伝達装置の異常を判定する判定部とを備える。
この発明によれば、異常検出装置は、モータと、モータにより駆動する駆動軸と、駆動軸によって回転する従動軸とを有する動力伝達装置の異常を検出する。異常検出装置は、モータの回転に同期してモータの有するコイルに流れる電流値を検出する。このように構成することによって、モータに流れる電流(モータ電流)を検出できる。異常検出装置は、検出した電流値をフーリエ変換する。このように構成することによって、電流値の周波数成分を抽出できる。異常検出装置は、電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置の異常を判定する。このように構成することによって、動力伝達装置において、電流値をフーリエ変換した結果は、異常である場合と正常である場合とで異なるため、移動力伝達装置に空転(脱調)などの異常が発生したことを検出できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、動力伝達装置の異常を判定できる異常検出方法及び異常検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る異常検出装置の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る動力伝達装置に含まれるモータと動力伝達手段とを示す模式図である。
【
図3A】本実施形態に係る動力伝達装置に含まれるモータと動力伝達手段との動作を示す模式図である。
【
図3B】本実施形態に係る動力伝達装置に含まれるモータと動力伝達手段との動作を示す模式図である。
【
図4】本実施形態に係る異常検出装置の動作の例1を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る異常検出装置の動作の例2を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る異常検出装置の動作の例3を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る異常検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本実施形態の異常検出方法及び異常検出装置を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0020】
(実施形態)
(異常検出装置)
図1は、本発明の実施形態に係る異常検出装置の一例を示す図である。本実施形態に係る異常検出装置20は、動力伝達装置1の異常を検出する。
動力伝達装置1は、モータ2と、従動軸4と、動力伝達手段5と、駆動軸7と、インバータ8と、電源9と、電源ケーブル10とを備える。
【0021】
電源9は、電源ケーブル10を介して動力伝達装置1に電力を供給する。電源9の一例は直流電源である。電源9の代わりに、ニッケルカドミウム電池、リチウムイオン電池などの二次電池を使用してもよいし、乾電池などの一次電池を使用してもよい。
インバータ8は、電源9から供給される電力をモータ2に供給することにより、モータ2が備えるロータを回転させる。インバータ8は、交流電力をモータ2に供給する。
モータ2は、駆動コイルに供給される電流によって生じる磁力と、ロータが備える永久磁石の磁力とによる吸引力又は反発力によって、ロータを回転させる。モータ2の一例は、三相ブラシレスモータである。
【0022】
モータ2の回転軸を中心とする円周上には、120度毎に位置センサが備えられる。3個の位置センサの各々は、ロータの電気角などの回転位置を検出する。位置センサの一例は、ホール素子などの磁気センサを備えている。位置センサは、モータ2の回転位置を検出し、検出した回転位置を示す回転位置情報を各々生成する。3個の位置センサは、3つの回転位置情報の組である回転位置信号を生成し、生成した回転位置信号をインバータ8と異常検出装置20とに供給する。
【0023】
インバータ8は、位置センサから回転位置信号を取得する。インバータ8は、取得した回転位置信号に基づいて動作する。インバータ8は、操作部(図示なし)から目標回転速度TRを取得する。ここで目標回転速度TRは、モータ2を単位時間に何回転させるように制御するか示す値である。インバータ8は、回転位置信号と、目標回転速度TRとに基づいて動作する。インバータ8は、パルス幅制御を行うことによってロータを回転させる。インバータ8は、パルス数制御を行うことによってロータを回転させてもよい。
【0024】
ロータが回転することによって、ロータの駆動軸7が回転する。駆動軸7の回転力は、動力伝達手段5に伝達される。動力伝達手段5の一例はマグネットカップリングであり、モータ2と同期して動作する。駆動軸7によって伝達された回転力によって、動力伝達手段5の従動軸4が回転する。
【0025】
図2は、本実施形態に係る動力伝達装置に含まれるモータと動力伝達手段とを示す模式図である。
図2に示されるように、モータ2は、ロータ2-1と、モータ軸2-2とを備える。また、動力伝達手段5は、偏心カム5-1と、マグネットカップリング5-2と、プレート5-3と、マグネットカップリング5-4と、ハウジング5-5と、ねじ5-6と、出力シャフト5-7とを備える。
モータ2は、駆動コイルに供給される電流によって生じる磁力と、ロータ2-1が備える永久磁石の磁力とによる吸引力又は反発力によって、ロータ2-1を回転させる。ロータ2-1が回転することによって、ロータ2-1のモータ軸2-2が回転し、モータ軸が回転することによってマグネットカップリング5-4が回転する。マグネットカップリング5-4は、サイクロイドギアを兼ねている。
【0026】
マグネットカップリング5-4が回転することによって、その回転力が、プレート5-3を介して動力伝達手段5に伝達される。
動力伝達手段5において、ねじ5-6と、出力シャフト5-7とは、ハウジング5-5によって覆われて保護されている。動力伝達手段5において、マグネットカップリング5-4は、マグネットカップリング5-2から伝達される回転力によって回転する。マグネットカップリング5-2の回転力は、ねじ5-6に伝達される。ねじ5-6は、マグネットカップリング5-4によって伝達された回転力によって、Z軸方向の推力を生み出す。ねじ5-6が生み出したZ軸方向の推力は、出力シャフト5-7に伝達される。出力シャフト5-7は、ねじ5-6によって伝達された推力によって、Z軸方向に作動する。
【0027】
動力伝達手段5が駆動しているときに、出力シャフト5-7が突き当たること、プレート5-3とマグネットカップリング5-4との間に異物が挟まることなどの異常が発生した場合に、マグネットカップリングが脱調する場合がある。
図3Aと
図3Bとは、本実施形態に係る動力伝達装置に含まれるモータと動力伝達手段との動作を示す模式図である。
図3Aは正常時を示し、
図3Bは異常時を示す。
図3Bに示される例では、出力シャフト5-7が突き当てられた場合を示す。
図1に戻り説明を続ける。
【0028】
異常検出装置20は、モータ2と同期して動作する動力伝達手段5などの機構の空転(脱調)を検出する。その機構の空転(脱調)が生じる原因の一例は、出力シャフト5-7の突き当て、機構に異物などが挟まることである。
異常検出装置20は、モータ2に取り付けられる位置センサから回転位置情報を取得する。異常検出装置20は、取得した回転位置情報に基づいて、モータ2の回転と同期する所定のタイミングで、電源ケーブル10から電流を取り込む。
モータ2の回転と同期する所定のタイミングで電源ケーブル10から電流を取り込むことによって、異常検出装置20は、必要なデータ量を少なくしながらも故障判定に必要な次数成分を含んだ電流値を取り込むことができる。異常検出装置20は、取り込んだ電流値をフーリエ変換する。異常検出装置20は、電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置1の異常を判定する。
以下、異常検出装置20について詳細に説明する。
【0029】
異常検出装置20は、電流センサ21と、A/D変換部22と、ホールセンサ23と、AND回路24と、記憶部25と、フーリエ解析部26と、判定部27と、出力部28とを備える。
電流センサ21の一例はクランプメータである。電流センサ21は、電源ケーブル10の一本をクランプで挟むことにより、モータ2に供給される電流を非接触で検出する。
A/D変換部22は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。具体的には、A/D変換部22は、電流センサ21が検出した電流値を取得し、取得した電流値をデジタルデータへ変換する。A/D変換部22は、電流値をデジタルデータに変換した結果を、AND回路24へ出力する。
【0030】
ホールセンサ23は、モータ2に取り付けられる位置センサから回転位置信号を取得する。ホールセンサ23は、取得した回転位置信号に基づいて、回転位置信号に含まれる回転位置情報の組に含まれる回転位置情報の所定のタイミングを検出し、所定のタイミングを検出したことを特定する情報をAND回路24へ出力する。
AND回路24は、A/D変換部22によってデジタルデータに変換された電流値と、ホールセンサ23が出力した所定のタイミングを検出したことを特定する情報との論理積を導出する。このように構成することによって、AND回路24は、デジタルデータに変換された電流値に故障判定に必要な特定の次数を含みつつデータ容量を低減できる。AND回路24は、導出した論理積を記憶部25に記憶させる。
【0031】
図4は、本実施形態に係る異常検出装置の動作の例1を示す図である。
図4において、上図は電流センサ21で検出される電流波形の一例を示す。
図4の上図には、U相とV相とW相との各々の電流波形を示す。電流波形の一例によれば、同じ周波数で同じ電圧のU相とV層とW相との3組の単相交流が、周期が1/3(位相が120度)ずつずれているのが分かる。電流波形の一例によれば、各相の電圧の合計が零になるのが分かる。
図4において、下図はホールセンサ23が取得する回転位置信号の一例を示す。
図4の下図に示すように、回転位置情報は、1回転360度(電気角)内で、U相について120度毎に0又は1に変化し、V相について120度毎に0又は1に変化し、W相について120度毎に0又は1に変化する。したがって、U相の回転位置情報とV相の回転位置情報とW相の回転位置情報とを合成した場合に、1回転360度(電気角)内で、60度毎に0又は1に変化する。
【0032】
ホールセンサ23は、U相の回転位置情報とV相の回転位置情報とW相の回転位置情報とを含む回転位置情報の組を取得する。ホールセンサ23は、取得したU相の回転位置情報とV相の回転位置情報とW相の回転位置情報とのいずれかの回転位置情報に基づいて、回転位置情報の所定のタイミングを検出する。このように、U相とV相とW相との三相のうち、1相の回転位置情報の所定のタイミングを検出することによって、1相のモータ2の回転に同期したタイミング(値)を取得できる。
上記タイミングで取得することにより、一般的なフーリエ解析と比べて、サンプリング数を軽減させることができる。一般的なフーリエ解析では、モータ回転数の揺らぎなど考慮し、広範囲な周波数を想定してサンプルリング数を設定する必要がある。例えば、モータ回転数が10%変動する事を想定した場合、本実施形態に対してサンプリング係数Rは、R=1/(10%)+1となり、11倍となる。
本実施形態において、サンプリング数は、モータの極対数Pと、空転(脱調)が発生する周波数fsとモータ回転周波数fmとの比(fs/fm)をNとした場合、P×Nとなる。例えば、Nの値が大きくなった場合、それに比例してサンプリング数が多くなってしまうが、空転(脱調)が発生する周波数fmを再現できるデータ数まで周期的にサンプリングを間引くことにより、サンプル数を減らすことが可能である。 本実施形態では、一例として、ホールセンサ23が、U相の回転位置情報のエッジのタイミングを検出する場合について説明を続ける。
図1に戻り説明を続ける。
記憶部25は、AND回路24によって導出されたA/D変換部22によってデジタルデータに変換された電流値と、ホールセンサ23が出力した所定のタイミングを検出したことを特定する情報との論理積、つまり特定の次数に制限された電流値を記憶する。記憶部25は、特定に次数に制限された電流値を、取得日時と関連付けて記憶してもよい。
【0033】
図5は、本実施形態に係る異常検出装置の動作の例2を示す図である。
図5は、記憶部25に記憶される特定の次数に制限された電流値の一例を示す。
図5において、横軸は時間[sec]であり、縦軸は電流[A]である。
図1に戻り説明を続ける。
フーリエ解析部26は、記憶部25に記憶された電流値を取得し、取得した電流値をフーリエ変換する。
判定部27は、フーリエ解析部26から電流値をフーリエ変換した結果を取得する。判定部27は、取得した電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置1の異常を判定する。
【0034】
図6は、本実施形態に係る異常検出装置の動作の例3を示す図である。
図6は、電流値をフーリエ変換することによって得られる特定の次数成分の時間変化の一例を示す。
図6において、横軸はU相のエッジカウント数である。
図6によれば、動力伝達装置1が正常である場合には閾値未満であるが、動力伝達装置1が異常である場合には閾値以上となることが分かる。
図1に戻り説明を続ける。ここで、閾値の一例は、0.4などとすることが可能である。
判定部27は、電流値をフーリエ変換した結果が閾値以上である場合には動力伝達装置1が異常であると判定し、閾値未満である場合には動力伝達装置1が正常であると判定する。
出力部28は、判定部27から動力伝達装置1が正常であるか異常であるかの判定結果を取得する。出力部28は、取得した判定結果に基づいて、判定結果を特定する情報を出力する。出力部28は、判定結果を特定する情報を音声で出力してもよいし、表示部(図示なし)に出力してもよい。
【0035】
(異常検出装置の動作)
図7は、本実施形態に係る異常検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図7を参照して異常検出装置20の動作について説明する。
(ステップS1)
異常検出装置20において、電流センサ21は、モータ2に供給される電流を検出する。
(ステップS2)
異常検出装置20において、A/D変換部22は、電流センサ21が検出した電流値を取得し、取得した電流値をデジタルデータへ変換する。A/D変換部22は、電流値をデジタルデータに変換した結果を、AND回路24へ出力する。
(ステップS3)
異常検出装置20において、ホールセンサ23は、モータ2に取り付けられる位置センサから回転位置信号を取得する。
【0036】
(ステップS4)
異常検出装置20において、ホールセンサ23は、取得した回転位置信号に含まれる回転位置情報の組に含まれる回転位置情報に基づいて、回転位置情報の所定のタイミングを検出し、所定のタイミングを検出したことを特定する情報をAND回路24へ出力する。
(ステップS5)
異常検出装置20において、AND回路24は、A/D変換部22によってデジタルデータに変換された電流値と、ホールセンサ23が出力した所定のタイミングを検出したことを特定する情報との論理積を導出することによって、モータ2のホールセンサ23が出力した所定のタイミングでの電流値を取得する。AND回路24は、取得したモータ2の電流値を特定する情報を記憶部25に記憶させる。
(ステップS6)
異常検出装置20において、フーリエ解析部26は、記憶部25に記憶されたモータ2の電流値を特定する情報を取得し、取得したモータ2の電流値を特定する情報をフーリエ変換する。
(ステップS7)
異常検出装置20において、判定部27は、フーリエ解析部26からモータ2の電流値をフーリエ変換した特定の次数成分の結果を取得する。判定部27は、取得したモータ2の電流値をフーリエ変換した特定の次数成分の結果に基づいて、動力伝達装置1の異常を判定する。
図7に示すフローチャートにおいて、ステップS1-S2と、ステップS3-S4とは並行して実行されてもよい。
【0037】
前述した実施形態では、一例として、U相についての回転位置情報のエッジのタイミングを検出する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、V相とW相とのいずれかの回転位置のエッジのタイミングを検出してもよいし、U相とV相とW相とうち、2相の回転位置のエッジのタイミングを検出してもよいし、U相とV相とW相との回転位置のエッジのタイミングを検出してもよい。また、エッジのタイミングは、エッジの立ち上がりのタイミングであってもよいし、立ち下がりのタイミングであってもよいし、それ以外のタイミングであってもよい。
前述した実施形態では、モータ2の一例として、三相ブラシレスモータを適用した場合について説明したがこの例に限られない。例えば、N相(Nは1以上の整数)のコイルを有するモータ2を適用してもよい。この場合、ホールセンサ23は、N相のうち、少なくとも1相の回転位置情報の所定のタイミングを検出するようにしてもよい。このように構成ことによって、N相のモータ2の回転に同期したタイミング(値)を取得できる。また、例えば、ブラシ付きモータを適用してもよい。
【0038】
前述した実施形態では、一例として、動力伝達手段5がマグネットカップリングであり、異常検出装置20は、マグネットカップリングの極対数と同じ次数成分の電流値を検出し、検出した電流値に基づいてマグネットカップリングの異常を検出する場合について説明したが、この例に限られない。
例えば、動力伝達手段5が磁気ギアであり、異常検出装置20は、磁気ギアの駆動軸側に接続された磁石の極数による次数成分と同じ次数成分の電流値を検出し、検出した電流値に基づいて磁気ギアの異常を検出するようにしてもよい。
また、例えば、動力伝達手段5が蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒を減圧膨張させる膨張弁であり、異常検出装置20は、膨張弁の異常を検出するようにしてもよい。
図8は、膨張弁の一例を示す図である。
図8において、下図は、モータの回転軸に垂直な方向から見た膨張弁の一側面の断面を示す。
図8において、上図は、下図のA-Aの断面を示す。
図8に示されるように、膨張弁ユニット100は、ケース101と、モータ102と、動力伝達部103と、従動軸104と、膨張弁105と、送りねじ106と、銅球107と、回転防止部108と、バネ109と、弁体110と、多極磁石111と、磁性体112と、非磁性体113と、少極磁石114とを備える。
異常検出装置20は、モータ102に電力を供給する電源ケーブル(図示なし)から、モータ102の回転と同期する所定のタイミングで、電流を取り込むことによって、膨張弁ユニット100の異常を検出する。
【0039】
また、例えば、動力伝達手段5が流体の流量を調整する流量調整弁であり、異常検出装置20が流調弁の異常を検出するようにしてもよい。
図9は、膨張弁の一例を示す図である。
図9に示されるように、流量調整弁ユニット200は、ケース201と、モータ202と、動力伝達部203と、従動軸204と、流量調整弁205と、Oリング206と、ボール弁体207とを備える。
図9に示されるように、従動軸204は、流体の流量を調整する流量調整弁205のボール弁体207に接続されている。
異常検出装置20は、モータ202に電力を供給する電源ケーブル(図示なし)から、モータ202の回転と同期する所定のタイミングで、電流を取り込むことによって、流量調整弁ユニット200の異常を検出する。
【0040】
また、例えば、動力伝達手段5が流体を流動させるポンプであり、異常検出装置20がポンプの異常を検出するようにしてもよい。
図10は、ポンプの一例を示す図である。
図10において、左図は、モータの回転軸に垂直な方向から見たポンプの一側面の断面を示す。
図10において、右図は、左図のA-Aの断面を示す。
図10に示されるように、ポンプユニット300は、ケース301と、モータ302と、動力伝達部303と、従動軸304と、ポンプ305と、インペラ306と、軸受307と、逆流防止部308と、吐出口309と、吸入口310とを備える。
図10に示されるように、従動軸304は、流体を流動させるポンプ305のインペラ306に接続されている。
異常検出装置20は、モータ302に電力を供給する電源ケーブル(図示なし)から、モータ302の回転と同期する所定のタイミングで、電流を取り込むことによって、ポンプユニット300の異常を検出する。
【0041】
前述した実施形態に係る異常検出装置20において、ホールセンサ23が回転位置信号を取得するサンプリング周期に基づいて異常であるか否かを判定してもよい。サンプリング周期よりも異常が発生したことによる変動周期が2倍以上長いためサンプリング周期を満足する。
ホールセンサ23の使用に代えて、モータ2をベクトル制御で駆動し、角度センサ(レゾルバ、エンコーダ)を使うようにしてもよい。レゾルバを使用する場合に、レゾルバ電圧信号ゼロクロス点とU相電流のピークを合わせるように組付けて利用する。エンコーダを使用する場合に、パルスカウンタ数を利用する。具体的には、10パルス毎などとすることができる。
また、モータ2をベクトル制御で駆動し、センサレスとした場合に、回転角に依存する巻き線インダクタンスを利用してもよい。この場合、線間電圧V-Wの+ゼロクロスでU相電流ピークを推定する。また、相電流VがWとなる点(マイナス側)でのU相電流ピークを推定する。
【0042】
前述した実施形態において、異常検出装置20は、A/D変換部22が、電流値をデジタルデータに変換した結果から、特定の次数の電流値を、以下に基づいて演算するようにしてもよい。
x(t)を収取したデータとし、nを次数とし、Tを演算の周期とし、f
0を回転1次の周波数(f
0=1/T)とする。以下の式(1)が成り立つ。
【数1】
次数が2である場合には(n=2)、以下の式(2)が成り立つ。
x
n=2=a
n=2×cos(2×2πf
0×t)+b
n=2×sin(2×2πf
0×t) (2)
【数2】
異常検出装置20は、x
n=2(t)の最大値で異常を検出できる。
【0043】
前述した実施形態において、異常検出装置20は、A/D変換部22が、電流値をデジタルデータに変換した結果から、特定の次数の電流値を、以下に基づいて演算するようにしてもよい。
Xn(D)を取得して電流値とし、kを次数とし、Dをデータ取得間隔(電気角周期1次)とし、f
0を回転1次の周波数(f
0=1/T)とし、TをNDとする。以下の式(3)が成り立つ。
【数3】
一例として、サンプリング数を32(N=32)、検出する次数2(k=2)とした場合は、以下の式(4)となる。
【数4】
オイラー公式より、式(5)、式(6)、式(7)が成り立つ。
An=x(0・D)・cos(2・0π/32)+x(1・D)・cos(2・1π/32)+・・・+x(n・D)・cos(2・nπ/32) (5)
Bn=x(0・D)・sin(2・0π/32)+x(1・D)・sin(2・1π/32)+・・・+x(n・D)・sin(2・nπ/32) (6)
|Xn(2・f
0)|=√(An^2+Bn^2) (7)
Xn(2・f
0)の振幅は、式(7)より得られる。異常検出装置20は、式(7)に基づいて異常を検出する。
モータの極数とマグネットカップリング、磁気ギアの極数が異なる場合にも適用できる。
【0044】
本実施形態の異常検出方法によれば、異常検出方法は、モータ2と、モータ2により駆動する駆動軸7と、駆動軸7によって回転する従動軸4とを有する動力伝達装置1の異常を検出する。モータ2は少なくともN相(Nは1以上の整数)のコイルを有する。異常検出方法は、モータ2の回転に同期してコイルに流れる電流値を検出し、検出した電流値をフーリエ変換し、電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置1の異常を判定する。
このように構成することによって、異常検出方法は、電流値の周波数成分を抽出できる。異常検出方法は、電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置1の異常を判定する。電流値をフーリエ変換した結果は、異常である場合と正常である場合とで異なるため、動力伝達装置1に空転(脱調)などの異常が発生したことを検出できる。
【0045】
また、上記の異常検出方法において、電流値は、N相の内、少なくとも1相のモータ2の回転に同期した値であってもよい。仮に、N相ブラシレスモータの場合、各相の機械的精度と、電流を検出するセンサの位相精度がモータに流れる電流に影響を及ぼすことがあり、精度を高くできない。このように構成することによって、モータ2の各層、電流値を検出する電流センサ21の位相精度のバラツキを無視できるため、精度を高くできる。少ないデータ量で動力伝達装置の異常検出が可能となることで、処理速度の向上および安価なマイコンの使用が可能となる。また、駆動用モータのバラツキによる影響を軽減することが可能となる。
また、上記の異常検出方法において、電流値をフーリエ変換した結果が閾値以上である場合に、動力伝達装置1が異常であると判定してもよい。動力伝達装置1において、電流値をフーリエ変換した結果は、異常である場合は、正常である場合と比較して上昇する。このように構成することによって、異常検出方法は、電流値をフーリエ変換した結果が閾値以上であることを検出した場合に、異常であると判定できる。
【0046】
また、上記の異常検出方法において、検出される電流値は、特定次数成分であってもよい。異常が検出される場合には、モータ2の次数成分のトルクリップルとして検出される。このように構成することによって、特定次数成分を検出できるため、動力伝達装置1に空転(脱調)などの異常が発生したことを検出できる。異常検出方法において、空転と外乱とを区別して判断できる。
また、上記の異常検出方法において、動力伝達装置1は、駆動軸7と従動軸4との間で、非接触で動力を伝達する動力伝達手段5を備えてもよい。このように構成することによって、従動軸4を、モータ2と同期して動作させることができるため、モータ2の回転に同期してモータ2の有するコイルに流れる電流値を検出し、検出した電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置1の異常を判定できる。
【0047】
また、上記の異常検出方法において、動力伝達手段はマグネットカップリングであり、検出される前記電流値は、前記マグネットカップリングの極対数と同じ次数成分であってもよい。このように構成することによって、異常検出方法は、マグネットカップリングの極対数と同じ次数成分の電流値を検出し、検出した電流値に基づいて動力伝達手段の異常を検出することができる。
また、上記の異常検出方法において、動力伝達手段は磁気ギアであり、検出される電流値は、磁気ギアの駆動軸側に接続された磁石の極数による次数成分と同じ次数成分であってもよい。このように構成することによって、異常検出方法は、磁気ギアの駆動軸側に接続された磁石の極数による次数成分と同じ次数成分の電流値を検出し、検出した電流値に基づいて動力伝達手段の異常を検出することができる。
【0048】
また、上記の異常検出方法において、従動軸4は、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒を減圧膨張させる膨張弁105を駆動させてもよい。このように構成することによって、異常検出方法は、従動軸によって、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒を減圧膨張させる膨張弁105に空転(脱調)などの異常が発生したことを検出することができる。空転は、バルブの圧力の変化などの外乱による負荷変動と区別しなければならない。
また、上記の異常検出方法において、従動軸4は、流体の流量を調整する流量調整弁205の弁体に接続されている膨張弁を駆動させてもよい。このように構成することによって、異常検出方法は、従動軸4によって、流体の流量を調整する流量調整弁205の弁体に接続されている膨張弁の異常を検出することができる。
また、上記の異常検出方法において、従動軸4は、流体を流動させるポンプ305のインペラに接続されてもよい。このように構成することによって、異常検出方法は、従動軸4によって、流体を流動させるポンプユニット300の異常を検出することができる。
【0049】
本発明の異常検出装置20によれば、異常検出装置20は、モータ2と、モータ2により駆動する駆動軸7と、駆動軸7によって回転する従動軸4とを有する動力伝達装置1の異常を検出する。モータ2は少なくともN相(Nは1以上の整数)のコイルを有する。異常検出装置20は、モータ2の回転に同期してコイルに流れる電流値を検出する電流センサ21としての検出部と、検出部が検出した電流値をフーリエ変換するフーリエ解析部26と、電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置1の異常を判定する判定部27とを備える。
このように構成することによって、モータ2に流れる電流(モータ電流)を検出できる。異常検出装置20は、検出した電流値をフーリエ変換する。このように構成することによって、電流値の周波数成分を抽出できる。異常検出装置20は、電流値をフーリエ変換した結果に基づいて、動力伝達装置1の異常を判定する。このように構成することによって、動力伝達装置1において、電流値をフーリエ変換した結果は、異常である場合と正常である場合とで異なるため、動力伝達装置1の異常を検出できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した異常検出装置20の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0051】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してコンピュータプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0052】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0053】
1…動力伝達装置、2-1…ロータ、2-2…モータ軸、4…従動軸、5…動力伝達手段、5-1…偏心カム、5-2…マグネットカップリング、5-3…プレート、5-4…マグネットカップリング、5-5…ハウジング、5-6…ねじ、5-7…出力シャフト、7…駆動軸、8…インバータ、9…電源、10…電源ケーブル、11…クランプ、20…異常検出装置、21…電流センサ、22…A/D変換部、23…ホールセンサ、24…AND回路、25…記憶部、26…フーリエ解析部、27…判定部、100…膨張弁ユニット、101…ケース、102…モータ、103…動力伝達部、104…従動軸、105…膨張弁、106…送りねじ、107…銅球、108…回転防止部、109…バネ、110…弁体、111…多極磁石、112…磁性体、113…非磁性体、114…少極磁石、200…流量調整弁ユニット、201…ケース、202…モータ、203…動力伝達部、204…従動軸、205…流量調整弁、206…Oリング、207…ボール弁体、300…ポンプユニット、301…ケース、302…モータ、303…動力伝達部、304…従動軸、305…ポンプ、306…インペラ、307…軸受、308逆流防止部、309…吐出口、310…吸入口