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  • 特開-電動車両の走行制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157513
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】電動車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20231019BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20231019BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231019BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20231019BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20231019BHJP
   B60W 20/14 20160101ALI20231019BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L7/14
B60L3/00 H
B60K6/48 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067464
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏康
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB15
3D202CC05
3D202DD01
3D202DD05
3D202DD11
3D202DD24
3D202FF06
3D202FF13
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CB02
5H125EE42
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】アクセル開度の減少時のドライバの意図しない車速の急減少を防止でき、操作性を損なうことなくドライバが車両を走行させることができる電動車両の走行制御装置を提供すること。
【解決手段】ECUは、車速が規定車速より大きく、かつ、アクセル開度の変化率が規定変化率より小さい場合(ステップS5でYES)は、車速が緩やかに減少する非ワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータに発生させる(ステップS9)。ECUは、アクセル開度が減少した場合にワンペダルドライブ制動トルクを発生させる駆動領域と、アクセル開度が減少した場合に非ワンペダルドライブ制動トルクを発生させる制動領域と、を有し、駆動領域内でアクセル開度が減少し、車速が規定車速より大きく、かつ、アクセル開度の変化率が規定変化率より小さい場合、非ワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータに発生させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動モータを備える電動車両に搭載され、
アクセルペダルのアクセル開度が減少した場合に、第1の減少率で車速が減少する第1の制動トルクを前記駆動モータに発生させる制御部を備える電動車両の走行制御装置であって、
前記制御部は、
前記車速が規定車速より大きく、かつ、前記アクセル開度の変化率が規定変化率より小さい場合は、前記第1の減少率より小さい第2の減少率で前記車速が減少する第2の制動トルクを前記駆動モータに発生させることを特徴とする電動車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記アクセル開度の領域として、
アクセル開度に応じて駆動トルクを発生させる第1の領域と、
前記第1の領域よりも前記アクセル開度の小さい領域であって、アクセル開度に応じて制動トルクを発生させる第2の領域と、を有し、
前記第2の領域内で前記アクセル開度が減少した場合、前記車速が前記規定車速より大きく、かつ、前記アクセル開度の変化率が前記規定変化率より小さい場合は、前記第2の制動トルクを前記駆動モータに発生させることを継続することを特徴とする請求項1に記載の電動車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2の領域から前記第1の領域に前記アクセル開度が増加した場合、前記第2の制動トルクを前記駆動モータに発生させることを解除することを特徴とする請求項2に記載の電動車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1の領域から前記第2の領域に前記アクセル開度が減少した場合、前記第1の制動トルクを前記駆動モータに発生させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電動車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アクセルオフ時に、駆動モータの回転方向とは逆方向の駆動力(回生方向の駆動力)を駆動モータに発生させるようにした技術が記載されている。特許文献1に記載の技術によれば、ブレーキの操作が無くても車両を停止に至らしめ且つ車両を停止状態に保持することができる。このような機能は、車両の加速、減速および停止をアクセルペダルの操作だけで調整できるようにするものであり、ワンペダルドライブと呼ばれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-19559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、一定速度以上での走行中にドライバがアクセルペダルの踏み込みを緩めた場合に、ドライバの意図に反して車両が急減速してしまい、このような車両挙動は、アクセルペダルを解放すると緩やかな減速を伴う惰性走行(コースト走行)を行う一般的な車両とは大きく異なるため、操作性を損なうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明では、アクセル開度の減少時のドライバの意図しない車速の急減少を防止でき、操作性を損なうことなくドライバが車両を走行させることができる電動車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、走行用の駆動モータを備える電動車両に搭載され、アクセルペダルのアクセル開度が減少した場合に、第1の減少率で車速が減少する第1の制動トルクを前記駆動モータに発生させる制御部を備える電動車両の走行制御装置であって、前記制御部は、前記車速が規定車速より大きく、かつ、前記アクセル開度の変化率が規定変化率より小さい場合は、前記第1の減少率より小さい第2の減少率で前記車速が減少する第2の制動トルクを前記駆動モータに発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、アクセル開度の減少時のドライバの意図しない車速の急減少を防止でき、操作性を損なうことなくドライバが車両を走行させることができる電動車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例に係る電動車両の構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る電動車両の走行制御装置によるワンペダルドライブ切り替え動作の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係る電動車両の走行制御装置によるワンペダルドライブ保留条件判定処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係る電動車両の走行制御装置によるワンペダルドライブ切り替え動作の実行時の車両状態の推移を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る電動車両の走行制御装置は、走行用の駆動モータを備える電動車両に搭載され、アクセルペダルのアクセル開度が減少した場合に、第1の減少率で車速が減少する第1の制動トルクを駆動モータに発生させる制御部を備える電動車両の走行制御装置であって、制御部は、車速が規定車速より大きく、かつ、アクセル開度の変化率が規定変化率より小さい場合は、第1の減少率より小さい第2の減少率で車速が減少する第2の制動トルクを駆動モータに発生させることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る電動車両の走行制御装置は、アクセル開度の減少時のドライバの意図しない車速の急減少を防止でき、操作性を損なうことなくドライバが車両を走行させることができる。
【実施例0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る走行制御装置を搭載した電動車両について詳細に説明する。
【0011】
図1において、本発明の一実施例に係る車両1は、エンジン2と、トランスミッション3と、クラッチ26と、走行用の駆動モータ4と、駆動輪5と、車両1を総合的に制御する制御部としてのECU(Electronic Control Unit)10と、を含んで構成される。
【0012】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0013】
エンジン2には、オルタネータ20と、エアコンコンプレッサ21とが連結されている。オルタネータ20およびエアコンコンプレッサ21は、ベルト22を介してエンジン2のクランクシャフト2Aに連結されており、エンジン2の動力により作動する。オルタネータ20は、交流電力を発電する。エアコンコンプレッサ21は、空調用の冷媒を圧縮する。
【0014】
トランスミッション3は、エンジン2から出力された回転を変速し、ドライブシャフト6を介して駆動輪5を駆動するようになっている。
【0015】
クラッチ26は、エンジン2のクランクシャフト2Aとトランスミッション3の入力軸3Aとの間に設けられている。クラッチ26は、エンジン2とトランスミッション3との間で動力伝達を行う係合状態と、エンジン2とトランスミッション3との間で動力伝達を行わない開放状態と、に切り替えられる。
【0016】
駆動モータ4は、トランスミッション3の出力軸3Bとドライブシャフト6との間に設けられている。駆動モータ4は、エンジン2の動力によりオルタネータ20で発電した電力、または図示しないバッテリに蓄電された電力によって駆動する。駆動モータ4は、モータジェネレータからなり、車両1の減速エネルギーによって回生発電を行なう発電機としても機能する。
【0017】
車両1は、エンジン2と駆動モータ4の少なくとも一方の動力を用いて走行可能なハイブリッドシステムを構成している。したがって、車両1は、駆動モータ4のモータトルクによって走行可能な電動車両である。
【0018】
ECU10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0019】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU10として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0020】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるECU10として機能する。
【0021】
ECU10の入力ポートには、アクセル開度センサ51と、車速センサ52と、切替えスイッチ53等の各種センサ類が接続されている。アクセル開度センサ51は、アクセルペダル50の踏み込み量(操作量)をアクセル開度として検出し、検出信号をECU10に出力する。車速センサ52は、駆動輪5の回転速度などから車両1の車両速度(以下、車速ともいう)を検出し、検出信号をECU10に出力する。切替えスイッチ53は、ドライバがワンペダルドライブモードをONまたはOFFに切替えるスイッチであり、検出信号をECU10に出力する。
【0022】
ECU10は、アクセルペダル50のアクセル開度が減少した場合に、第1の減少率で車速が減少する第1のモータトルクとしてのワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータ4に発生させる。ワンペダルドライブ制動トルクは、駆動モータ4で発生させる制動トルクである。このように、ECU10は、図示しないブレーキペダルを操作することなく車両1を大きく減速させることが可能な、いわゆるワンペダルドライブの機能を実現する。このワンペダルドライブ機能により、ドライバは、アクセルペダル50の操作(以下、アクセル操作ともいう)だけで車両1を加速および減速させることができる。なお、ECU10は、ワンペダルドライブ制動トルクにより車両1が減速するだけでなく、減速後に車両1が停止に至るように制御してもよい。
【0023】
ECU10は、アクセル開度が減少した場合であっても、車速が規定車速より大きく、かつ、アクセル開度の変化率が規定変化率より小さい場合は、第1の減少率より小さい第2の減少率で車速が緩やかに減少する第2のモータトルクとしての非ワンペダルドライブ制動トルク(コースト走行トルク)を駆動モータ4に発生させる。非ワンペダルドライブ制動トルクとは、ワンペダルドライブ仕様を備えていない一般的な車両においてアクセルペダルの踏込みを緩めた操作状態のように、緩やかな車速の減少を伴う惰性走行(コースト走行)を実現するモータトルクである。したがって、本実施例の車両1は、ドライバがアクセルペダル50を素早く解放した場合は、ブレーキ操作を行ったときと同様に車速が減少し、車速が規定車速より大きいときにドライバがアクセルペダル50を緩やかに解放した場合は、コースト走行を行う。ワンペダルドライブ制動トルクの発生による第1の減少率、および非ワンペダルドライブ制動トルクの発生による第2の減少率は、車両1に作用する抗力(空気抵抗等)やアクセル開度の減少量等によって変化する値である。
【0024】
図4に示すように、ECU10は、アクセル開度の領域として、アクセル開度に応じた駆動トルクを発生させる第1の領域としての駆動領域と、駆動領域よりもアクセル開度の小さい領域であって、アクセル開度に応じた制動トルクを発生させる第2の領域としての制動領域と、を有している。駆動領域と制動領域とは、境界開度により区切られている。これにより、駆動領域内でアクセル開度が減少した場合は、駆動トルクの減少に伴って車速が減少し、制動領域内でアクセル開度が減少した場合は、ワンペダルドライブモードの制動トルクと非ワンペダルドライブモードの制動トルクを設定し、設定された制動トルクに応じて減速する。
【0025】
ECU10は、駆動領域内でアクセル開度が減少した場合、車速が規定車速より大きく、かつ、アクセル開度の変化率が規定変化率より小さい場合は、ワンペダルドライブ保留条件を設定し、アクセル開度に応じた駆動トルクを駆動モータ4に発生させる。
【0026】
そして、ECU10は、非ワンペダルドライブ制動トルクが設定されている状態で、駆動領域から制動領域にアクセル開度が減少した場合は、非ワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータ4に発生させる。
【0027】
ECU10は、制動領域から駆動領域にアクセル開度が増加した場合、非ワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータ4に発生させることを解除する。
【0028】
ECU10は、アクセルペダル50の解放により駆動領域から規定変化率より大きい変化率でアクセル開度が減少した場合、ワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータ4に発生させる。
【0029】
図2を参照し、本実施例に係る走行制御装置によるワンペダルドライブ切り替え動作について説明する。なお、このワンペダルドライブ切り替え動作は、ECU10が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。また、以下の説明において、ワンペダルドライブモードとは、ドライバによるワンペダルドライブモードの切替えスイッチ53の選択状態がON状態であり、アクセル開度が制動領域内で駆動モータ4に所定の制動トルクを発生させる制動トルクのモードである。ワンペダルドライブ保留とは、ドライバがワンペダルドライブモードの切替えスイッチ53をON状態に選択している場合であっても、駆動モータ4にワンペダルドライブ制動トルクを発生させず、例外的に非ワンペダルドライブ制動トルクを発生させる状態である。ワンペダルドライブ保留条件とは、駆動モータ4に例外的に非ワンペダルドライブ制動トルクを発生させるための条件である。ワンペダルドライブ保留要求とは、駆動モータ4に例外的に非ワンペダルドライブ制動トルクを発生させるための要求である。
【0030】
ECU10は、ステップS1で、ドライバによるワンペダルドライブモードの切替えスイッチ53(図中、スイッチをSWと記す)の状態がONか否かを判定する。
【0031】
ECU10は、ステップS1で切替えスイッチ53の状態がONであると判定した場合、ステップS2で、ワンペダルドライブ保留が設定されているか否かを判定する。
【0032】
ECU10は、ステップS2でワンペダルドライブ保留が設定されていないと判定した場合、ステップS3で、ワンペダルドライブ保留条件が設定されているか否かを判定する。このステップS3では、後述するワンペダルドライブ保留条件判定処理(図3参照)が実行される。ワンペダルドライブ保留条件の設定とは、この条件の成立を表し、ワンペダルドライブ保留条件の解除とは、この条件の非成立を表している。
【0033】
ECU10は、ステップS3でワンペダルドライブ保留条件が設定されていると判定した場合、ステップS4で、アクセル開度の変化率が減速方向か否かを判定する。
【0034】
ECU10は、ステップS4でアクセル開度の変化率が減速方向であると判定した場合、ステップS5で、アクセル開度の変化率が規定変化率より小さいか否かを判定する。
【0035】
ECU10は、ステップS5でアクセル開度の変化率が規定変化率より小さいと判定した場合、ステップS6で、ワンペダルドライブ保留要求を設定する。
【0036】
その後、ECU10は、ステップS7で、アクセル開度が制動領域内にあるか否かを判定する。
【0037】
ECU10は、ステップS7でアクセル開度が制動領域内であると判定した場合、ステップS8で、ワンペダルドライブ保留を設定する。
【0038】
その後、ECU10は、ステップS9で、非ワンペダルドライブ制動トルクを設定し(制動トルクを非ワンペダルトルクに切り替え)、今回の動作を終了する。
【0039】
ECU10は、ステップS7でアクセル開度が制動領域内ではないと判定した場合、ステップS9で、非ワンペダルドライブ制動トルクを設定し、今回の動作を終了する。
【0040】
ECU10は、ステップS3でワンペダルドライブ保留条件が設定されていないと判定した場合、またはステップS4でアクセル開度の変化率が減速方向ではないと判定した場合、またはステップS5でアクセル開度の変化率が規定変化率より小さくないと判定した場合、ステップS10で、ワンペダルドライブ保留要求を解除する。
【0041】
その後、ECU10は、ステップS11で、ワンペダルドライブ制動トルクを設定し(制動トルクをワンペダルドライブに切り替え)、今回の動作を終了する。
【0042】
ECU10は、ステップS2でワンペダルドライブ保留が設定されていると判定した場合、ステップS12で、アクセル開度が駆動領域内であるか否かを判定する。
【0043】
ECU10は、ステップS12でアクセル開度が駆動領域内であると判定した場合、ステップS13で、ワンペダルドライブ保留要求を解除し、ステップS14で、ワンペダルドライブ保留を解除する。
【0044】
その後、ECU10は、ステップS11で、ワンペダルドライブ制動トルクを設定し(制動トルクをワンペダルドライブに切り替え)、今回の動作を終了する。
【0045】
ECU10は、ステップS1で切替えスイッチ53の状態がONではないと判定した場合、またはステップS12でアクセル開度が駆動領域内ではないと判定した場合、ステップS9で、非ワンペダルドライブ制動トルクを設定し(制動トルクを非ワンペダルトルクに切り替え)、今回の動作を終了する。
【0046】
図3を参照し、本実施例に係る走行制御装置によるワンペダルドライブ保留条件判定処理について説明する。
【0047】
ECU10は、ステップS21で、ドライバによるワンペダルドライブモードの切替えスイッチ53(図中、スイッチをSWと記す)の状態がONか否かを判定する。
【0048】
ECU10は、ステップS21で切替えスイッチ53の状態がONであると判定した場合、ステップS22で、アクセル開度が駆動領域内の規定開度より大きいか否かを判定する。
【0049】
ECU10は、ステップS22でアクセル開度が駆動領域内の規定開度より大きいと判定した場合、ステップS23で、車速が規定車速より大きいか否かを判定する。
【0050】
ECU10は、ステップS23で車速が規定車速より大きいと判定した場合、ステップS24で、車速変化率が規定変化率より小さいか否かを判定する。
【0051】
ECU10は、ステップS24で車速変化率が規定変化率より小さいと判定した場合、ステップS25で、アクセル開度、車速および車速変化率に関するこれらの状態が規定時間継続したか否かを判定する。
【0052】
ECU10は、ステップS25で規定時間継続したと判定した場合、ステップS26でワンペダルドライブ保留条件を設定し、今回の動作を終了する。
【0053】
ECU10は、ステップS22でアクセル開度が駆動領域内の規定開度より大きくないと判定した場合、またはステップS23で車速が規定車速より大きくないと判定した場合、またはステップS24で車速変化率が規定変化率より小さくないと判定した場合、またはステップS25で規定時間継続していないと判定した場合、ステップS27で、ワンペダルドライブ保留要求が設定されているか否かを判定する。
【0054】
ECU10は、ステップS27でワンペダルドライブ保留要求が設定されていると判定した場合、今回の動作を終了する。
【0055】
ECU10は、ステップS27でワンペダルドライブ保留要求が設定されていないと判定した場合、またはステップS21で切替えスイッチ53の状態がONではないと判定した場合、ステップS28でワンペダルドライブ保留条件を解除し、今回の動作を終了する。
【0056】
図4を参照し、ワンペダルドライブ切り替え動作の実行時の車両状態の推移について説明する。図4において、縦軸は、ドライバによるワンペダルドライブモードの切替えスイッチ53の選択状態、車速、アクセル開度、ワンペダルドライブ保留条件の設定または解除、ワンペダルドライブ保留要求の設定または解除、ワンペダルドライブ保留の設定または解除、制動トルクのモードを表し、横軸は時間を表している。
【0057】
時刻t0において、アクセル開度は駆動領域内で一定に保たれており、車両1は一定速度を維持して走行している。この状態では、ワンペダルドライブ保留条件、ワンペダルドライブ保留要求およびワンペダルドライブ保留はそれぞれ解除されている。また、制動トルクはワンペダルドライブに設定されている。
【0058】
時刻t1において、ワンペダルドライブ保留条件が設定される。ここでは、アクセル開度が駆動領域内の規定開度より大きく、車速が規定車速より大きく、車速変化率が規定変化率より小さく、これらの状態が規定時間継続したことに応じて、ワンペダルドライブ保留条件が設定される。
【0059】
その後、時刻t2において、アクセル開度が緩やかに減少し始める。ここでは、ワンペダルドライブ保留条件が設定されており、アクセル開度の変化率が減速方向であり、アクセル開度の変化率が規定変化率より小さいことに応じて、ワンペダルドライブ保留要求が設定される。また、アクセル開度が制動領域内にはなく駆動領域内にあるため、制動トルクが非ワンペダルドライブに切り替えられる。
【0060】
その後、時刻t3において、ワンペダルドライブ保留が設定される。ここでは、アクセル開度が制動領域内に低下したことに応じて、ワンペダルドライブ保留が設定される。また、アクセル開度は減少を続け、時刻t3の後にアクセル開度がゼロ(アクセルペダル50が解放された状態)になる。
【0061】
その後、時刻t4において、制動領域内を維持したまま、アクセル開度が増加する。ここでは、アクセル開度が制動領域内にあるため、車速が減少を続ける。
【0062】
その後、時刻t5において、アクセルペダル50が再び解放され、アクセル開度がゼロまで減少する。
【0063】
その後、時刻t6において、駆動領域までアクセル開度が増加する。これにより、ワンペダルドライブ保留要求が解除され、ワンペダルドライブ保留が解除され、ワンペダル保留条件が解除される。そのため、制動トルクがワンペダルドライブに切り替えられる。
【0064】
その後、時刻t7において、制動領域までアクセル開度が急激に減少する。ここでは、アクセル開度変化率が規定変化率より大きいため、制動トルクがワンペダルドライブに維持され、ブレーキ操作を行ったときと同様に車速が減少し始める。時刻t7の後、車速は規定車速より小さい値に減少する。
【0065】
その後、時刻t8において、駆動領域内までアクセル開度が増加する。そのため、車速が増加する。
【0066】
このように、本実施例では、ECU10は、アクセルペダル50のアクセル開度が減少した場合に、第1の減少率で車速が減少するワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータ4に発生させる。また、ECU10は、車速が規定車速より大きく、かつ、アクセル開度の変化率が規定変化率より小さい場合は、第1の減少率より小さい第2の減少率で車速が減少する非ワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータ4に発生させる。
【0067】
これにより、低車速の場合やアクセルペダル50の踏み込みが素早く解放された場合は、ワンペダルドライブ制動トルクの発生により車速が第1の減少率で減少するので、ドライバは、ブレーキ操作を行わなくてもアクセル操作だけで車速を調整することができる。
【0068】
一方、車速が規定車速より大きいコースト走行状態で、アクセルペダル50の踏み込みが緩やかに解放された場合は、非ワンペダルドライブ制動トルクの発生により車速が第2の減少率で緩やかに減少するので、ドライバは、車両1をコースト走行させることができる。
【0069】
この結果、アクセル開度の減少時のドライバの意図しない車速の急減少を防止でき、操作性を損なうことなくドライバが車両1を走行させることができる。
【0070】
また、本実施例では、ECU10は、アクセル開度の領域として、アクセル開度が減少した場合にアクセル開度に応じた駆動トルクを発生させる駆動領域と、駆動領域よりもアクセル開度の小さい領域であって、アクセル開度が減少した場合にワンペダルドライブモードの制動トルクと、非ワンペダルドライブモードの制動トルクと、を選択して発生させる制動領域と、を有している。
【0071】
ECU10は、駆動領域内でアクセル開度が減少した場合、車速が規定車速より大きく、かつ、アクセル開度の変化率が規定変化率より小さい場合は、アクセル開度に応じた駆動トルクを駆動モータ4に発生させる。
【0072】
そして、ECU10は、非ワンペダルドライブ制動トルクが選択されている状態で、駆動領域から制動領域にアクセル開度が更に減少した場合は、非ワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータ4に発生させる。
【0073】
これにより、例えば、コースト走行中にアクセル開度が減少して制動領域に至った場合、非ワンペダルドライブモードの制動トルクが発生し、車両1にコースト走行を継続させることができる。このため、アクセル開度の減少時の車速の急減少を抑制でき、操作性を損なうことなくドライバが車両1を走行させることができる。
【0074】
また、本実施例では、ECU10は、制動領域から駆動領域にアクセル開度が増加した場合、非ワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータ4に発生させることを解除する。
【0075】
これにより、アクセル開度が制動領域から駆動領域に増加した場合には、コースト走行のための非ワンペダルドライブ制動トルクの発生が解除されるので、操作性を損なうことなくドライバが車両1を走行させることができる。
【0076】
また、本実施例では、ECU10は、アクセルペダル50の解放により駆動領域から規定変化率より大きい変化率でアクセル開度が減少した場合、ワンペダルドライブ制動トルクを駆動モータ4に発生させる。
【0077】
これにより、アクセルペダル50が素早く解放された場合はワンペダルドライブ制動トルクの発生により車速が減少するので、ドライバは、アクセルペダル50の解放操作の速さを調整することで、ブレーキ操作を行ったときと同様に車速を減少させることができるワンペダルドライブ制動トルクと、車両1をコースト走行させることができる非ワンペダルドライブ制動トルクとを切り替えて車両1を走行させることができる。このため、操作性を損なうことなくドライバが車両1を走行させることができる。
【0078】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0079】
1 車両(電動車両)
4 駆動モータ
10 ECU(制御部)
50 アクセルペダル
図1
図2
図3
図4