(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157520
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】タッピングマシン
(51)【国際特許分類】
B23G 1/18 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
B23G1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067478
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 和興
(57)【要約】
【課題】ナット素材へのタッピングと並行して、タッピングされたナットからバリを除去することができ、タッピング作業を安価かつ容易なものとすることが可能なタッピングマシンを提供する。
【解決手段】タッピングマシン1は、回転可能に保持されたベントタップ2の基端側のタップ部2aと隣接した部分に、タッピングされたナットN,N・・のバリを取り除くためのバリ除去部材であるブラシ7が設けられている。当該ブラシ7は、所謂ワイヤーブラシであり、ベントタップ2に固着させた軸部7aに、同一長さの多数の刷毛7b,7b・・が放射方向を向くように植設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸を中心として回転可能に保持された長尺な棒状のベントタップと、そのベントタップの基端のタップ部を挿入させた状態で保持する筒状部を設けたガイド部材と、積み重ねた状態で収納したナット素材を前記ベントタップのタップ部と隣接した位置に順次案内するための収納部と、駆動装置により前後動することによって前記収納部により案内されたナット素材を前記ベントタップのタップ部に押し付ける押止部材とを備えたタッピングマシンであって、
前記ベントタップに、タッピングされたナットからバリを取り除くためのバリ除去部材が取り付けられていることを特徴とするタッピングマシン。
【請求項2】
前記バリ除去部材が、前記ベントタップに固着させた軸部に、同一長さの多数の毛を放射方向を向くように植設したブラシであることを特徴とする請求項1に記載のタッピングマシン。
【請求項3】
前記バリ除去部材が、前記ベントタップの基端側のタップ部と隣接した部分に設けられていることを特徴とする請求項1、または2に記載のタッピングマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット素材を押止部材によってベントタップのタップ部に押し付けることによってタッピング(ねじ立て)するためのタッピングマシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナットを形成するためのナット素材(扁平な六角柱状体等)の中心の貫通孔にねじ溝を螺刻する(タッピングする)ためのタッピングマシンとしては、特許文献1の如く、長尺な棒状に形成されており水平軸を中心として回転可能に保持されたベントタップと、そのベントタップの基端のタップ部(ねじ溝形成部)にナット素材を押し付けるために往復動自在に設けられた押止部材と、その押止部材を往復動させるための駆動装置とを備えたものが知られている。
【0003】
当該タッピングマシンにおいては、上下方向に積み重ねられたナット素材が、順次、押止部材の前方へ案内され、押止部材によって、回転しているベントタップの基端のタップ部に押し付けられてねじ溝が形成された後に、ベントタップの回転に伴って前方へ押し出され、ベントタップの先端のベント部から外部に放出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のタッピングマシンでは、タッピングされたナットに、予定していないバリ(出っ張り、かえり等)が形成されてしまうことがある。そして、そのような不具合を解消するためには、タッピングされたすべてのナットを目視等によって検査してバリ付きのものを取り除いたり、再度タッピングしたりしなければならず、手間が掛かったり、コスト高になったりしていた。
【0006】
本発明の目的は、上記従来のタッピングマシンにおける問題点を解消し、ナット素材へのタッピングと並行して、タッピングされたナットからバリを除去することができ、タッピング作業を安価で容易なものとすることが可能なタッピングマシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、水平軸を中心として回転可能に保持された長尺な棒状のベントタップと、そのベントタップの基端のタップ部を挿入させた状態で保持する筒状部を設けたガイド部材と、積み重ねた状態で収納したナット素材を前記ベントタップのタップ部と隣接した位置に順次案内するための収納部と、駆動装置により前後動することによって前記収納部により案内されたナット素材を前記ベントタップのタップ部に押し付ける押止部材とを備えたタッピングマシンであって、前記ベントタップに、タッピングされたナットからバリを取り除くためのバリ除去部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記バリ除去部材が、前記ベントタップに固着させた軸部に、同一長さの多数の毛を放射方向を向くように植設したブラシであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または2に記載された発明において、前記バリ除去部材が、前記ベントタップの基端側のタップ部と隣接した部分に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載のタッピングマシンは、ベントタップにタッピングされたナットのバリを取り除くためのバリ除去部材が設けられているため、ナット素材へのタッピングと同時に(並行して)タッピングされたナットからバリを除去することができるので、タッピング作業を安価かつ容易なものとすることができる。
【0011】
請求項2に記載のタッピングマシンは、バリ除去部材がベントタップのシャンク部に固着させた軸部に同一長さの多数の毛を放射方向を向くように植設したブラシであるため、タッピングされたナットから非常に効率良くバリを除去することができる。
【0012】
請求項3に記載のタッピングマシンは、バリ除去部材がベントタップの基端側のタップ部と隣接した部分に設けられているため、タッピングされた直後のナットから柔軟な状態のバリを効率的に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】タッピングマシンを示す説明図(側面図)である(aは、タッピングマシン全体を示したものであり、bは、ベントタップを示したものである)。
【
図2】ベントタップの先端のブラシの取付部分を示す説明図(
図1におけるA部分を拡大した側面図)である。
【
図3】ベントタップの先端のブラシの取付部分を示す説明図(
図2におけるB-B線断面図)である。
【
図4】タッピングマシンの変更例を示す説明図(ブラシを取り付けたベントタップの側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るタッピングマシンの一実施形態について、図面に基いて詳細に説明する。
【0015】
<タッピングマシンの構造>
図1(a)は、タッピングマシンを簡略化して示したものであり、タッピングマシン1は、ベントタップ2、ガイド部材3、収納部4、押止部材5、案内部材6、バリ除去部材として機能するブラシ7等によって構成されている。
【0016】
図1(b)は、ベントタップ2を示したものであり、ベントタップ2は、金属によって長尺な棒状に形成されており、基端に、ナット素材(ねじ溝を螺刻する前のナット、扁平な六角柱状体の中心に円柱状の貫通孔を穿設したもの)N,N・・にねじ溝を形成するためのタップ部2aが形成されており、先端に、円弧状に屈曲可能なベント部2bが設けられている。なお、当該ベント部2bは、タップ部2aの最小径部分(ナット素材Nの内壁面にねじ山の頂点を形成する部分)よりも小径になっている。そして、ベントタップ2の基端側のタップ部2aと隣接した部分(隣接した先端側の部分)には、ナット素材N,N・・にねじ溝を螺刻した際に(すなわち、タッピングした際に)ナットN,N・・の内面に形成されるバリ(出っ張り、かえり等)を除去するためのバリ除去部材であるブラシ7が取り付けられている(ブラシ7の構造については後述する)。かかるベントタップ2は、支持部材(図示せず)によって支持された状態で、回転駆動装置(図示せず)によって長手方向に沿った水平軸を中心に回転可能になっている。
【0017】
また、ガイド部材3は、前側に、ナット素材N,N・・を挿通可能な六角柱状の空洞部を有する筒状部3aが設けられており、その筒状部3aの内部には、ベントタップ2の基端側のタップ部2aが、筒状部3aの軸中心に位置した状態で保持されている。一方、ガイド部材3の後側には、筒状部3aと軸方向を同じくするように挿通孔3bが穿設されており、当該挿通孔3bの内部には、長尺な円柱状の押止部材5が、並進駆動装置(図示せず)によって前後動可能に挿通されている。さらに、ガイド部材3の先端側には、筒状部3aと同様な六角柱状の空洞部を有する筒状の案内部材6が設置されている。
【0018】
一方、収納部4は、扁平で中空の四角柱状に形成されており、ガイド部材3の略中央(ガイド部材3の内部のベントタップ2のタップ部2aと隣接した後方)の上部に、鉛直上向きに?設されている。また、当該収納部4の内部は、ガイド部材3の筒状部3aの内部と連通した状態になっている。かかる収納部4は、複数のナット素材N,N・・を積み重ねた状態で収納することができ、それらのナット素材N,N・・を、ガイド部材3の内部のベントタップ2のタップ部2aと隣接した位置に、順次案内することができるようになっている。
【0019】
<バリ除去部材の構造>
図3は、バリ除去部材であるブラシ7のベントタップ2への取付部分を示したものである。ブラシ7は、所謂、ワイヤーブラシであり、円筒状の軸部7aに、多数の毛(刷毛)7b,7b・・が、軸部7aの中心から放射方向を向くように植設されている。また、ベントタップ2のブラシ7の取付部分は、ベント部2bの他の部分(一定径部分2β)よりも小径に形成されており(小径部分2α)、その小径部分2αに、ブラシ7の軸部7aが嵌め込み装着されている。さらに、ブラシ7の軸部7aは、ベントタップ2のベント部2bの一定径部分2βと略同一径になっている。そして、ブラシ7の毛(刷毛)の先端が、ベントタップ2のタップ部2aの最大径部分(ナット素材Nの内壁面にねじ溝の最深点を形成する部分)よりもわずかに(タップ部2aの最大径部分の直径の1~10%程度)外側に突出した状態になっている(
図2参照)。
【0020】
<タッピングマシンの作用>
上記したタッピングマシン1によりナット素材N,N・・にタッピングする際には、収納部4内に積み重ねた状態で収納されているナット素材N,N・・が、順次、ガイド部材3の内部のベントタップ2のタップ部2aと隣接した後方に案内される。そのように、ナット素材Nが案内されると、後方に退入していた押止部材5が、並進駆動装置(図示せず)によって前方へ移動し、案内されたナット素材Nを、回転駆動装置(図示せず)によって回転しているベントタップ2のタップ部2aの基端に押し付ける。そのようにナット素材Nがベントタップ2のタップ部2bに押し付けられることによって、ナット素材Nの貫通孔の周面に、ねじ溝が形成される(すなわち、ナット素材Nがタッピングされる)。
【0021】
さらに、上記の如く、ねじ溝が形成されたナットN,N・・は、ベントタップ2の回転に伴って、ガイド部材3の筒状部3aおよび案内部材6の内部を基端側から先端側に移動した後に、ベントタップ2の先端のベント部2bから外れて回収される。そして、そのようにタッピングされたナットN,N・・がベントタップ2の先端際を移動する際に、各ナットN,N・・のタップ面(内周面)が、バリ除去部材であるブラシ7によって刷き取られ、その際に、タップ面あるいはその前後にバリ(出っ張り、かえり等)が形成されている場合でも、それらのバリは、ブラシ7によって剥ぎ取られる。
【0022】
<タッピングマシンの効果>
タッピングマシン1は、上記の如く、ベントタップ2に、タッピングされたナットN,N・・からバリを取り除くためのバリ除去部材であるブラシ7が取り付けられているため、ナット素材N,N・・へのタッピングと同時に(並行して)タッピングされたナットN,N・・からバリを除去することができるので、タッピング作業を安価かつ容易なものとすることができる。
【0023】
また、タッピングマシン1は、バリ除去部材がベントタップ2に固着させた軸部7aに同一長さの多数の毛7b,7b・・を放射方向を向くように植設したブラシ7であるため、タッピングされたナットN,N・・から非常に効率良くバリを除去することができる。
【0024】
さらに、タッピングマシン1は、バリ除去部材であるブラシ7がベントタップ2の基端側のタップ部2aと隣接した部分に設けられているため、タッピングされた直後のナットN,N・・から柔軟な状態のバリを効率的に取り除くことができる。
【0025】
<タッピングマシンの変更例>
本発明に係るタッピングマシンは、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、ベントタップ、ガイド部材、押止部材、収納部、バリ除去部材(ブラシ)の材質、形状、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0026】
たとえば、本発明に係るタッピングマシンは、上記実施形態の如く、バリ除去部材がブラシであるものに限定されず、嵩高なスチールウールをベントタップに捲回させることによってバリ除去部材が形成されたもの等でも良い。また、バリ除去部材をブラシとする場合には、当該ブラシは、上記実施形態の如く、金属製のものに限定されず、剛性率の高い合成樹脂からなるもの等でも良い。
【0027】
また、本発明に係るタッピングマシンは、上記実施形態の如く、バリ除去部材をベントタップの基端側のタップ部と隣接した部分(隣接した先端側の部分)に設けたものに限定されず、
図4の如く、バリ除去部材をベントタップのベント部の先端際に設けたものでも良い。かかる構成を採用した場合には、タッピングマシンは、タッピングされたナットから取り除かれたバリを容易に回収することができるものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係るタッピングマシンは、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、ナット素材にタッピングを施すための機械として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1・・タッピングマシン
2・・ベントタップ
2a・・タップ部
3・・ガイド部材
3a・・筒状部
3b・・挿通孔
4・・収納部
5・・押止部材
6・・案内部材
7・・ブラシ(バリ除去部材)
7a・・軸部
7b・・毛