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  • 特開-溶接装置 図1
  • 特開-溶接装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157542
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/10 20060101AFI20231019BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B23K9/10 Z
B23K9/12 301A
B23K9/12 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067512
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 友也
(72)【発明者】
【氏名】馬塲 勇人
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA01
4E082EA03
4E082EB01
4E082EF16
(57)【要約】
【課題】溶接開始を良好にするために、溶接終了後に溶接ワイヤを少しだけ送給する調整送給を行うときに、作業の安全性を確保し、かつ、作業性を良好にすることができる溶接装置を提供すること。
【解決手段】溶接装置は溶接モード及びインチングモードを設定するモード設定部MRを備え、モード設定部MRは、溶接モードであるときにトーチスイッチONがクリック操作されるとインチングモードに切り換えられ、インチングモードであるときにトーチスイッチONがクリック操作されると溶接モードに切り換えられ、溶接電源PSはインチングモードであるときはトーチスイッチONがオン状態になっても溶接電圧Vwの出力を禁止し、送給機WFはインチングモードであるときはトーチスイッチONがオン状態になるとシールドガス4の流出を禁止し、溶接ワイヤ1の送給を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電圧を出力する溶接電源と、
溶接ワイヤを送給し、ガスボンベからのシールドガスの流出を制御する送給機と、
前記溶接電圧、前記溶接ワイヤ及び前記シールドガスをアーク発生部に供給する溶接トーチと、
前記溶接トーチに装着されたトーチスイッチと、を備え、
前記トーチスイッチがオン状態になると前記溶接電源は前記溶接電圧を出力し、前記送給機は前記シールドガスの流出及び前記溶接ワイヤの送給を開始してアーク溶接を行う溶接装置において、
溶接モード及びインチングモードを設定するモード設定部を備え、
前記モード設定部は、前記溶接モードであるときに前記トーチスイッチがクリック操作されると前記インチングモードに切り換えられ、前記インチングモードであるときに前記トーチスイッチが前記クリック操作されると前記溶接モードに切り換えられ、
前記溶接電源は、前記溶接モードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になると前記溶接電圧を出力し、前記インチングモードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になっても前記溶接電圧の出力を禁止し、
前記送給機は、前記溶接モードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になると前記シールドガスの流出及び前記溶接ワイヤの送給を行い、前記インチングモードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になると前記シールドガスの流出を禁止し、前記溶接ワイヤの送給を行う、
ことを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
前記送給機は、前記溶接モードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になると前記シールドガスの流出及び前記溶接ワイヤの送給を行い、前記インチングモードであるときは前記トーチスイッチのオン又はオフ状態とは関係なく前記シールドガスの流出を禁止し、前記溶接ワイヤを送給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記送給機は、前記溶接モードであるときと前記インチングモードであるときとで送給速度を異なる値にする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤを送給してアーク溶接を行う溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接電圧を出力する溶接電源と、溶接ワイヤを送給し、ガスボンベからのシールドガスの流出を制御する送給機と、溶接電圧、溶接ワイヤ及びシールドガスをアーク発生部に供給する溶接トーチと、溶接トーチに装着されたトーチスイッチと、を備え、トーチスイッチがオン状態になると溶接電源は溶接電圧を出力し、送給機はシールドガスの流出及び溶接ワイヤの送給を開始してアーク溶接を行う溶接装置が広く使用されている。
【0003】
送給機にワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤを新たに装着したときは、溶接ワイヤを溶接トーチの先端まで送給する必要がある。この作業のために、溶接電源にはインチングボタンが設けられている。通常、インチングボタンは、溶接電源と有線で接続されたリモコンに設けられている。インチングボタンをオン状態にすると、溶接電源は溶接電圧を出力することなく、送給機はシールドガスを流出しないで溶接ワイヤを送給する。したがって、溶接作業者は、溶接ワイヤを新たに送給機に装着したときは、インチングボタンをオン状態にして、溶接ワイヤを溶接トーチの先端まで送給する。 特許文献1の発明では、このインチング中の溶接ワイヤの送給量を可視化して表示するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6851950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手動溶接において、溶接終了後に次の溶接開始を良好にするために溶接ワイヤを少し送給して、溶接ワイヤの先端を切断する場合がある。同様に、溶接終了後に次の溶接開始を良好にするために、溶接ワイヤを少し送給して、ワイヤ突き出し長さを調整する場合もある。このような溶接終了後の調整送給では、インチングボタンを使用して行うのは手間であるので、トーチスイッチをオン状態にして行うのが通常である。しかし、トーチスイッチをオン状態にすると、溶接電源は溶接電圧を出力し、送給機はシールドガスを流出する。このために、溶接ワイヤには80V程度の無負荷電圧が印加するので、感電のおそれがある。また、シールドガスが流出されるので、シールドガスが無駄になる。
【0006】
そこで、本発明では、溶接終了後の調整送給を行う場合において、作業の安全性を確保し、かつ、作業性を良好にすることができる溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
溶接電圧を出力する溶接電源と、
溶接ワイヤを送給し、ガスボンベからのシールドガスの流出を制御する送給機と、
前記溶接電圧、前記溶接ワイヤ及び前記シールドガスをアーク発生部に供給する溶接トーチと、
前記溶接トーチに装着されたトーチスイッチと、を備え、
前記トーチスイッチがオン状態になると前記溶接電源は前記溶接電圧を出力し、前記送給機は前記シールドガスの流出及び前記溶接ワイヤの送給を開始してアーク溶接を行う溶接装置において、
溶接モード及びインチングモードを設定するモード設定部を備え、
前記モード設定部は、前記溶接モードであるときに前記トーチスイッチがクリック操作されると前記インチングモードに切り換えられ、前記インチングモードであるときに前記トーチスイッチが前記クリック操作されると前記溶接モードに切り換えられ、
前記溶接電源は、前記溶接モードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になると前記溶接電圧を出力し、前記インチングモードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になっても前記溶接電圧の出力を禁止し、
前記送給機は、前記溶接モードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になると前記シールドガスの流出及び前記溶接ワイヤの送給を行い、前記インチングモードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になると前記シールドガスの流出を禁止し、前記溶接ワイヤの送給を行う、
ことを特徴とする溶接装置である。
【0008】
請求項2の発明は、
前記送給機は、前記溶接モードであるときは前記トーチスイッチがオン状態になると前記シールドガスの流出及び前記溶接ワイヤの送給を行い、前記インチングモードであるときは前記トーチスイッチのオン又はオフ状態とは関係なく前記シールドガスの流出を禁止し、前記溶接ワイヤを送給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接装置である。
【0009】
請求項3の発明は、
前記送給機は、前記溶接モードであるときと前記インチングモードであるときとで送給速度を異なる値にする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る溶接装置によれば、溶接終了後の調整送給を行う場合において、作業の安全性を確保し、かつ、作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る溶接装置のブロック図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る図1の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。
図3】本発明の実施の形態2に係る図1の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る溶接装置のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0014】
トーチスイッチONは、後述する溶接トーチATに装着されており、溶接作業者によってオン状態になるとHighレベルとなり、オフ状態になるとLowレベルとなるトーチスイッチ信号Onを出力する。
【0015】
モード設定回路MRは、上記のトーチスイッチ信号Onを入力として、
モード設定信号MrがLowレベル(溶接モード)であるときに、トーチスイッチ信号Onがクリック操作された信号であると判別するとモード設定信号MrをHighレベル(インチングモード)に切り換え、
モード設定信号MrがHighレベル(インチングモード)であるときに、トーチスイッチ信号Onがクリック操作された信号であると判別するとモード設定信号MrをLowレベル(溶接モード)に切り換える。
上記のクリック操作された信号とは、予め定めた判定時間内に1回以上Highレベル・Lowレベルが繰り返される状態である。すなわち、溶接作業者が判定時間内にトーチスイッチONを1回以上オン・オフ操作する状態である。判定時間は、例えば1秒に設定される。
【0016】
送給速度設定回路FRは、上記のモード設定信号Mrを入力として、モード設定信号MrがLowレベル(溶接モード)であるときは予め定めた溶接送給速度となり、モード設定信号MrがHighレベル(インチングモード)であるときは予め定めたインチング送給速度となる送給速度設定信号Frを出力する。
【0017】
溶接電源PSは、上記のトーチスイッチ信号On及び上記のモード設定信号Mrを入力として、
モード設定信号MrがLowレベル(溶接モード)であるときに、トーチスイッチ信号Onが判定時間以上のオン状態になると、溶接電流Iw及び溶接電圧Vwを出力し、
モード設定信号MrがHighレベル(インチングモード)であるときに、トーチスイッチ信号Onが判定時間以上のオン状態になっても溶接電流Iw及び溶接電圧Vwの出力を禁止する。
【0018】
送給機WFは、上記のトーチスイッチ信号On、上記のモード設定信号Mr及び上記の送給速度設定信号Frを入力として、以下の処理を行う。
1)モード設定信号MrがLowレベル(溶接モード)であるときに、トーチスイッチ信号Onが判定時間以上のオン状態になると、ガスボンベ5からのシールドガス4の流量Gwでの流出を行い、ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤ1を送給速度設定信号Frによって設定された送給速度Fwで送給する。
2)モード設定信号MrがHighレベル(インチングモード)であるときに、トーチスイッチ信号Onが判定時間以上のオン状態になると、ガスボンベ5からのシールドガス4の流出を禁止し、ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤ1を送給速度設定信号Frによって設定された送給速度Fwで送給する。
【0019】
溶接トーチATは、上記の溶接電流Iw及び溶接電圧Vwを溶接ワイヤ1に給電し、シールドガス4をアーク3の発生部に噴出してアーク溶接を行う。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態1に係る図1の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。同図(A)はトーチスイッチ信号Onの時間変化を示し、同図(B)はモード設定信号Mrの時間変化を示し、同図(C)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(D)はシールドガスの流量Gwの時間変化を示し、同図(E)は送給速度Fwの時間変化を示す。以下、同図を参照して各信号の動作について説明する。
【0021】
同図において、時刻t1以前の期間では、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号Onはオフ状態であるのでLowレベルである。同図(B)に示すように、モード設定信号MrはLowレベルであり、溶接モードとなっている。同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは0Vとなっている。同図(D)に示すように、シールドガスの流量Gwは0であるので、Lowレベルとなっている。同図(E)に示すように、送給速度Fwは0であり、送給は停止している。
【0022】
時刻t1~t2の予め定めた判定時間の間に、トーチスイッチのクリック操作が行われると、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号Onは判定時間中にHighレベルとなった後にLowレベルとなる。これに応動して、時刻t2において、同図(B)に示すように、モード設定信号MrはHighレベルに変化して、インチングモードに切り換わる。時刻t3において、トーチスイッチをオン状態にすると、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号OnはHighレベルとなる。時刻t3から判定時間が経過した時刻t4において、同図(E)に示すように、送給速度Fwは予め定めたインチング送給速度となり、溶接ワイヤが送給される。しかし、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwの出力は禁止されているので0Vのままである。同様に、同図(D)に示すように、シールドガスの流出は禁止されているので、流量Gwは0のままである。そして、時刻t5において、トーチスイッチがオフ状態になると、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号OnはLowレベルとなる。これに応動して、同図(E)に示すように、送給速度Fwは0となり、送給は停止する。同図(B)に示すように、モード設定信号MrはHighレベルのインチングモードのままである。
【0023】
時刻t6~t7の判定時間の間に、トーチスイッチのクリック操作が行われると、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号Onは判定時間中にHighレベルとなった後にLowレベルとなる。これに応動して、時刻t7において、同図(B)に示すように、モード設定信号MrはLowレベルに変化して、溶接モードに切り換わる。時刻t8において、トーチスイッチをオン状態にすると、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号OnはHighレベルとなる。時刻t8から判定時間が経過した時刻t9において、同図(E)に示すように、送給速度Fwは予め定めた溶接送給速度となり、溶接ワイヤが送給される。同時に、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwが出力され、同図(D)に示すように、シールドガスの流出が開始されてHighレベルとなる。このようにして、溶接モードで溶接施工が行われる。そして、時刻t10において、トーチスイッチがオフ状態になると、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号OnはLowレベルとなる。これに応動して、同図(E)に示すように、送給速度Fwは0となり、送給は停止する。同様に、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwの出力は停止し、同図(D)に示すように、シールドガスの流量Gwは0となる。同図(B)に示すように、モード設定信号MrはLowレベルの溶接モードのままである。
【0024】
上述した本実施の形態1に係る溶接装置によれば、溶接モード及びインチングモードを設定するモード設定部と、モード設定部は、溶接モードであるときにトーチスイッチがクリック操作されるとインチングモードに切り換えられ、インチングモードであるときにトーチスイッチがクリック操作されると溶接モードに切り換えられ、溶接電源は、溶接モードであるときはトーチスイッチがオン状態になると溶接電圧を出力し、インチングモードであるときはトーチスイッチがオン状態になっても溶接電圧の出力を禁止し、送給機は、溶接モードであるときはトーチスイッチがオン状態になるとシールドガスの流出及び溶接ワイヤの送給を行い、インチングモードであるときはトーチスイッチがオン状態になるとシールドガスの流出を禁止し、溶接ワイヤの送給を行う。本実施の形態では、次の溶接開始を良好にするために、溶接終了後に溶接ワイヤを少しだけ送給する調整送給を行うときに、トーチスイッチをクリック操作するだけでインチングモードに切り換えることができる。インチングモードになると、トーチスイッチをオン状態にしても、溶接ワイヤの送給だけが行われ、溶接電圧の出力及びシールドガスの流出が禁止される。このために、感電のおそれがなく、シールドガスを無駄に放流する必要もない。この結果、本実施の形態では、溶接終了後の調整送給を行う場合において、作業の安全性を確保し、かつ、作業性を良好にすることができる。
【0025】
さらに好ましくは、本実施の形態によれば、送給機は、溶接モードであるときとインチングモードであるときとで送給速度を異なる値に設定することができる。すなわち、溶接モードであるときは予め定めた溶接送給速度となり、インチングモードであるときは予め定めたインチング送給速度となる。このように、溶接を行うときとは独立してインチングモードのときの送給速度を設定することができるので、調整送給の作業性をさらに向上させることができる。
【0026】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る溶接装置は、上述した図1において、送給機WFの動作を以下のように変更したものである。これ以外のブロックについては、同一の動作であるので、説明は繰り返さない。
送給機WFは、上記のトーチスイッチ信号On、上記のモード設定信号Mr及び上記の送給速度設定信号Frを入力として、以下の処理を行う。
1)モード設定信号MrがLowレベル(溶接モード)であるときに、トーチスイッチ信号Onが判定時間以上のオン状態になると、ガスボンベ5からのシールドガス4の流量Gwでの流出を行い、ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤ1を送給速度設定信号Frによって設定された送給速度Fwで送給する。
2)モード設定信号MrがHighレベル(インチングモード)であるときは、トーチスイッチ信号Onのオン又はオフ状態とは関係なくガスボンベ5からのシールドガス4の流出を禁止し、ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤ1を送給速度設定信号Frによって設定された送給速度Fwで送給する。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態2に係る図1の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。同図(A)はトーチスイッチ信号Onの時間変化を示し、同図(B)はモード設定信号Mrの時間変化を示し、同図(C)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(D)はシールドガスの流量Gwの時間変化を示し、同図(E)は送給速度Fwの時間変化を示す。以下、同図を参照して各信号の動作について説明する。
【0028】
同図において、上述した図2と同一の動作についての説明は繰り返さない。同図は、図2とは、インチングモードのときの動作が異なり、溶接モードのときの動作は同一である。また、モードの切り換え操作についても同一である。
【0029】
時刻t1~t2の予め定めた判定時間の間に、トーチスイッチのクリック操作が行われると、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号Onは判定時間中にHighレベルとなった後にLowレベルとなる。これに応動して、時刻t2において、同図(B)に示すように、モード設定信号MrはHighレベルに変化して、インチングモードに切り換わる。時刻t2においてインチングモードになると、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号OnがLowレベル又はHighレベルであっても(同図ではLowレベルの場合である)、同図(E)に示すように、送給速度Fwは予め定めたインチング送給速度となり、溶接ワイヤが送給される。しかし、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwの出力は禁止されているので0Vのままである。同様に、同図(D)に示すように、シールドガスの流出は禁止されているので、流量Gwは0のままである。
【0030】
時刻t6~t7の判定時間の間に、トーチスイッチのクリック操作が行われると、同図(A)に示すように、トーチスイッチ信号Onは判定時間中にHighレベルとなった後にLowレベルとなる。これに応動して、時刻t7において、同図(B)に示すように、モード設定信号MrはLowレベルに変化して、溶接モードに切り換わる。これに応動して、同図(E)に示すように、送給速度Fwは0となり、送給は停止する。時刻t8以降の動作については、図2と同一であるので、説明は省略する。
【0031】
上述した本実施の形態2に係る溶接装置によれば、送給機は、溶接モードであるときはトーチスイッチがオン状態になるとシールドガスの流出及び前記溶接ワイヤの送給を行い、インチングモードであるときはトーチスイッチのオン又はオフ状態とは関係なくシールドガスの流出を禁止し、溶接ワイヤを送給する。このようにすると、インチングモードのときの操作性をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 シールドガス
5 ガスボンベ
AT 溶接トーチ
Iw 溶接電流
MR モード設定回路
Mr モード設定信号
ON トーチスイッチ
On トーチスイッチ信号
PS 溶接電源
Vw 溶接電圧
WF 送給機
図1
図2
図3