(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157548
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】浴槽洗浄システム
(51)【国際特許分類】
A47K 3/00 20060101AFI20231019BHJP
F24H 15/196 20220101ALI20231019BHJP
【FI】
A47K3/00 Q
F24H15/196 301L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067520
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修司
【テーマコード(参考)】
3L024
【Fターム(参考)】
3L024CC03
3L024DD16
3L024DD22
3L024DD35
3L024GG12
3L024HH38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】洗剤消費量を低減すると共に給湯通路への低温の湯水の供給を防止することができる浴槽洗浄システムを提供すること。
【解決手段】浴槽洗浄システムは、給湯通路に上水を加熱して供給する燃焼式の給湯装置と、その湯水を使用して浴槽洗浄運転を行う浴槽洗浄装置を有し、浴槽洗浄装置が湯水タンク、洗浄ノズル、給湯通路と湯水タンクを接続する第1湯水通路、湯水タンクの底部から洗浄ノズルに接続された第2湯水通路、湯水タンクの湯水を洗浄ノズルから噴射するためのポンプ、洗浄ノズルから噴射する洗浄液生成のために第2湯水通路の湯水に洗剤を混合する洗剤供給部、浴槽洗浄運転を制御する制御部、第1湯水通路を開閉する湯水弁、及び湯水タンクの水位検知手段を有し、洗浄液を間欠的に複数回噴射する際には、湯水弁の閉止状態から湯水タンクの水位が第1水位未満になるまで制御部が湯水弁の閉止を維持する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯栓を有する給湯通路に上水を加熱して供給する燃焼式の給湯装置と、前記給湯通路を介して供給される湯水を使用して浴槽洗浄運転を行う浴槽洗浄装置とを有する浴槽洗浄システムであって、前記浴槽洗浄装置が、湯水を貯留する湯水タンクと、浴槽に配設された洗浄ノズルと、前記給湯通路と前記湯水タンクを接続する第1湯水通路と、前記湯水タンクの底部から前記洗浄ノズルに接続された第2湯水通路と、前記湯水タンクの湯水を前記洗浄ノズルから噴射するために前記第2湯水通路に配設されたポンプと、前記ポンプを駆動して前記洗浄ノズルから噴射する洗浄液を生成するために前記第2湯水通路の湯水に洗剤を混合する洗剤供給部と、前記浴槽洗浄運転を制御する制御部を備えた浴槽洗浄システムにおいて、
前記第1湯水通路は、この第1湯水通路を開閉する湯水弁を有し、
前記湯水タンクは、貯留されている湯水の水位を検知する水位検知手段を有し、
前記制御部は、前記洗浄ノズルから洗浄液を間欠的に複数回噴射する洗浄液噴射では、前記湯水弁を閉止した状態から前記水位検知手段の検知水位が予め設定された第1水位未満になるまで、前記湯水弁の閉止状態を維持することを特徴とする浴槽洗浄システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記水位検知手段の検知水位が予め設定された第1水位未満になった場合に前記湯水弁を開け、前記水位検知手段の検知水位が前記第1水位よりも高水位に設定された第2水位に到達した場合に前記湯水弁を閉止することを特徴とする請求項1に記載の浴槽洗浄システム。
【請求項3】
前記洗浄液噴射の噴射1回当たりの噴射時間が、前記湯水弁を開けてから前記給湯装置の燃焼が開始されるまでに要する遅延時間以下に設定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の浴槽洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置から供給される湯水を使用して浴槽を自動的に洗浄する浴槽洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴槽を自動洗浄するために、給湯栓等を備えた給湯通路に給湯装置で加熱されて供給される湯水を使用して、浴槽洗浄運転を行う浴槽洗浄システムが利用されている。例えば特許文献1のように、上水の供給圧を利用して、浴槽に配設された洗浄ノズルから湯水と洗浄液を噴射する浴槽洗浄装置が知られている。給湯装置で加熱された湯水を使用して浴槽を洗浄することによって、低温の上水を使用する場合よりも洗浄液の洗浄能力が発揮され易くなる。
【0003】
また、例えば特許文献2のように、給湯装置から供給される湯水を湯水タンクに貯留し、この湯水タンクの湯水をポンプによって洗浄ノズルに供給して噴射するように構成された浴槽洗浄装置が知られている。このような浴槽洗浄装置は、ポンプを駆動して所定の噴射流量で噴射することができるので、特に上水の供給圧が低い場合に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-89744号公報
【特許文献2】特開2022-22110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の浴槽洗浄装置は湯水弁を有し、この湯水弁を開けて給湯装置から給湯通路を介して湯水が供給されている状態で、洗浄ノズルから湯水又は洗浄液を噴射する。給湯装置は、加熱部に導入した上水を燃焼熱によって加熱して給湯する燃焼式の給湯装置であり、湯水弁が開けられて、例えば加熱部に供給される上水の流量が予め設定された燃焼開始流量以上になった場合に、バーナに点火して加熱を開始する。
【0006】
浴槽洗浄装置は、洗浄液を噴射する場合には、噴射させる湯水に洗剤を混合して洗浄液を生成する。浴槽の汚れは主に人体由来の皮脂汚れであり、洗浄液の温度がある程度高い方が洗浄能力を向上させることができるので、加熱された湯水を使用して洗浄液を生成する。浴槽内に噴射された洗浄液はその内壁部を伝って浴槽の底部に流れ落ちるので、洗浄液を複数回噴射することによって汚れに対して洗浄液の接触機会を増やして洗浄能力を向上させることができるが、洗剤の消費量が増加してしまい好ましくない。
【0007】
それ故、複数回噴射する洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間を短時間にして、洗浄能力の向上と洗剤消費量の低減を両立させることが検討されている。しかし、浴槽洗浄装置の湯水弁を開けてから給湯装置の燃焼が開始されるまでに、ある程度の時間(遅延時間)を要する。それ故、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間が短くなると、従来の浴槽洗浄装置では、給湯装置の燃焼開始直後に燃焼停止する又は燃焼が開始されない事態が発生する。このような場合、加熱不足の湯水又は非加熱の低温の湯水が給湯通路に供給され、給湯通路において、洗浄液噴射前に十分に加熱されて滞留している湯水の上流側に低温の湯水が滞留した状態になる。
【0008】
この状態で給湯栓が開けられると、給湯栓から十分に加熱された湯水が給湯された後で温度が大きく低下するので、安定した給湯ができない。また、複数回の洗浄液の噴射において、加熱不足又は非加熱の低温の湯水が浴槽洗浄装置に供給されて、洗浄液による洗浄能力が低下する虞がある。そのため、本発明の目的は、洗剤消費量を低減すると共に給湯通路への低温の湯水の供給を防止することができる浴槽洗浄システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の浴槽洗浄装置は、給湯栓を有する給湯通路に上水を加熱して供給する燃焼式の給湯装置と、前記給湯通路を介して供給される湯水を使用して浴槽洗浄運転を行う浴槽洗浄装置とを有する浴槽洗浄システムであって、前記浴槽洗浄装置が、湯水を貯留する湯水タンクと、浴槽に配設された洗浄ノズルと、前記給湯通路と前記湯水タンクを接続する第1湯水通路と、前記湯水タンクの底部から前記洗浄ノズルに接続された第2湯水通路と、前記湯水タンクの湯水を前記洗浄ノズルから噴射するために前記第2湯水通路に配設されたポンプと、前記ポンプを駆動して前記洗浄ノズルから噴射する洗浄液を生成するために前記第2湯水通路の湯水に洗剤を混合する洗剤供給部と、前記浴槽洗浄運転を制御する制御部を備えた浴槽洗浄システムにおいて、前記第1湯水通路は、この第1湯水通路を開閉する湯水弁を有し、前記湯水タンクは、貯留されている湯水の水位を検知する水位検知手段を有し、前記制御部は、前記洗浄ノズルから洗浄液を間欠的に複数回噴射する洗浄液噴射では、前記湯水弁を閉止した状態から前記水位検知手段の検知水位が予め設定された第1水位未満になるまで、前記湯水弁の閉止状態を維持することを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、洗浄液を間欠的に複数回噴射する際には、ポンプによって湯水タンクから第2湯水通路を介して洗浄ノズルに供給される湯水に、洗剤が混ぜられて洗浄液が生成され、この洗浄液が洗浄ノズルから浴槽内に噴射される。このとき湯水弁が閉止状態の場合には、給湯装置から給湯通路と第1湯水通路を介して湯水タンクに加熱された湯水が供給されないので、湯水タンクの水位が低下する。この水位が予め設定された第1水位未満になるまで湯水弁の閉止を維持する。洗浄液の噴射に給湯装置の燃焼を連動させないので、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間が短時間の場合でも、加熱不足又は非加熱の低温の湯水が給湯通路に供給されることを防止できる。それ故、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間を短時間にして洗剤消費量を低減すると共に、給湯通路への低温の湯水の供給を防止することができる。また、洗浄液噴射のときに給湯栓からの給湯使用があった場合に、洗浄運転のために加熱された湯水が給湯された後に加熱不足又は非加熱の低温の湯水が給湯されること、即ち給湯使用中に湯水の温度が大きく低下することを防止でき、安定した給湯をすることができる。
【0011】
請求項2の発明の浴槽洗浄システムは、請求項1の発明において、前記制御部は、前記水位検知手段の検知水位が予め設定された第1水位未満になった場合に前記湯水弁を開け、前記水位検知手段の検知水位が前記第1水位よりも高水位に設定された第2水位に到達した場合に前記湯水弁を閉止することを特徴としている。
上記構成によれば、洗浄液の噴射によって湯水タンクの水位が第1水位未満になった場合に湯水弁を開けて湯水の貯留を開始し、湯水タンクの水位が第1水位よりも高水位に設定された第2水位に到達した場合に湯水弁を閉止して湯水の貯留を停止する。湯水タンクの水位に基づいて湯水弁を開閉するので、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間が短時間の場合でも、第1水位になってから第2水位になるまで給湯装置の燃焼時間を確保することができる。それ故、十分に加熱された湯水が給湯通路に供給され、給湯装置から加熱不足又は非加熱の低温の湯水が給湯通路に供給されることを防止できる。
【0012】
請求項3の発明の浴槽洗浄装置は、請求項1又は2の発明において、前記洗浄液噴射の噴射1回当たりの噴射時間が、前記湯水弁を開けてから前記給湯装置の燃焼が開始されるまでに要する遅延時間以下に設定されたことを特徴としている。
上記構成によれば、洗剤消費量低減のために洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間が遅延時間以下の短時間に設定される。噴射1回当たりの噴射時間では給湯装置の燃焼が開始されないような場合でも、給湯装置から加熱不足又は非加熱の低温の湯水が給湯通路に供給されることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の浴槽洗浄システムによれば、洗剤消費量を低減すると共に給湯通路への低温の湯水の供給を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係る浴槽洗浄システムの構成図である。
【
図3】実施例に係る浴槽洗浄システムの浴槽洗浄運転のフローチャートである。
【
図4】実施例に係る予備洗浄及びすすぎ洗浄における電磁弁制御のフローチャートである。
【
図5】実施例に係る洗浄液噴射を説明するためのタイムチャートの1例である。
【
図6】実施例に係る洗浄液噴射を説明するためのタイムチャートの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0016】
最初に、本発明の浴槽洗浄システム1について、
図1に基づいて説明する。
浴槽洗浄システム1は、矢印Wのように供給される上水を加熱して給湯栓Fを有する給湯通路2に供給する燃焼式の給湯装置10と、浴槽3の自動洗浄のために給湯装置10から給湯通路2を介して供給される湯水を使用して浴槽洗浄運転を行う浴槽洗浄装置20を有する。給湯装置10は、浴槽3の湯張りと追焚きのために湯張り追焚き通路4と循環アダプタ3aを介して浴槽3に接続され、例えば給湯運転等の設定操作、湯張り開始操作、追焚き開始操作等を行うための浴室リモコン10a、台所リモコン10bを備えている。
【0017】
浴槽3の底部には、矢印Dのように湯水を排水するための例えば電動式の排水栓5と、浴槽3に湯水及び洗浄液を噴射する洗浄ノズル21が配設されている。浴槽3の近傍には、浴槽3の自動洗浄用の洗剤を貯留する洗剤タンク22と、排水栓5の開栓操作、閉栓操作を行うための排水スイッチ6が配設されている。
【0018】
浴槽洗浄装置20は、洗浄ノズル21と、湯水を貯留する湯水タンク23と、給湯通路2と湯水タンク23を接続する第1湯水通路24と、湯水タンク23の底部から洗浄ノズル21に接続された第2湯水通路25を有する。そして、湯水タンク23の湯水を洗浄ノズル21から噴射するために、第2湯水通路25にはポンプ26が配設されている。このポンプ26を駆動して洗浄ノズル21から噴射する洗浄液を生成するために、浴槽洗浄装置20は、第2湯水通路25の湯水に洗剤を混合する洗剤供給部27を有する。
【0019】
第2湯水通路25は、ポンプ26よりも下流側に洗浄温度センサ28、洗浄流量センサ29、ベンチュリ30等を備えている。洗剤供給部27は、洗剤タンク22と、第2湯水通路25を流動する湯水に洗剤を混合するためのベンチュリ30と、洗剤タンク22からベンチュリ30に洗剤を供給する洗剤通路31と、洗剤通路31を開閉する電磁弁(洗剤弁32)を有する。
【0020】
第1湯水通路24は、この第1湯水通路24を開閉する湯水弁を有する。第1湯水通路24は、2つに分岐されて湯水タンク23に接続されている。この分岐された第1湯水通路24の2つの分岐通路部24a,24bのうち、分岐通路部24aには湯水弁として第1電磁弁24cと定流量弁24dが配設され、分岐通路部24bには湯水弁として第2電磁弁24eと定流量弁24fが配設されている。定流量弁24d,24fは分岐通路部24a、24bの湯水流量を例えば夫々5L/分に夫々制限する。これにより第1湯水通路24の湯水流量は最大で10L/分になる。また、第1湯水通路24は、異物を捕集するフィルタ24gを備えている。
【0021】
湯水タンク23は、給湯通路2から第1湯水通路24を介して供給される湯水を貯留する。また、この湯水タンク23は、貯留されている湯水の水位(湯水タンク23の水位)を検知するために、水位検知手段として例えばフロートスイッチ23aを有する。湯水タンク23には第1水位Lと、第1水位Lよりも高水位の第2水位Hが予め設定され、フロートスイッチ23aが少なくともこれら第1水位Lと第2水位Hを検知可能なように構成されている。尚、水位検知手段は、湯水に浸った電極間を流れる電流によって水位を検知する複数の電極によって構成されていてもよい。
【0022】
湯水タンク23の容量は例えば0.4L程度であり、フロートスイッチ23aの検知水位が第1水位Lの場合に貯留されている湯水が例えば0.1L程度、第2水位Hの場合には貯留されている湯水が例えば0.3L程度となるように設定されている。湯水タンク23に貯留される湯水のうち、第2水位Hを超えた湯水はオーバーフロー口23bから浴槽パンに流れ出て、図示外の浴室の排水口から排水される。
【0023】
浴槽洗浄装置20は、浴槽洗浄運転を制御する洗浄制御部33(制御部)を備えている。洗浄制御部33は、例えばポンプ26、第1,第2電磁弁24c,24e等の浴槽洗浄装置20の構成部品に駆動用電力を供給する電源部34と共に、被水し難い例えば浴室の天井裏に配設されている。尚、洗浄制御部33(電源部34)と構成部品とを接続する破線は通信線を表し、通信線が電力線を兼ねていてもよい。
【0024】
洗浄制御部33は、例えば演算装置と記憶装置と入出力装置等を備えたコンピュータであり、記憶装置に格納された制御プログラム等に基づいて、浴槽洗浄運転を制御する。洗浄制御部33には、例えば浴槽洗浄運転の開始操作、洗浄液の噴射回数及び噴射1回当たりの噴射時間を含む各種設定操作を行うための洗浄リモコン20aが接続されている。
【0025】
浴槽洗浄運転では、フロートスイッチ23aの検知水位、洗浄流量センサ29の検知流量等に基づいて、ポンプ26の回転数、第1,第2電磁弁24c,24eの開閉等を制御する。また、洗浄制御部33は、排水スイッチ6の操作を検知して排水栓5を閉栓又は開栓する。排水栓5の開閉状態は、次の排水スイッチ6の操作又は洗浄制御部33の指令があるまで維持される。
【0026】
次に給湯装置10について説明する。
図2に示すように、給湯装置10は、上水又は湯水を加熱する加熱部11と、加熱部11に上水を供給する給水通路12を有し、加熱部11で加熱した湯水を給湯通路2に供給する。また、給湯装置10は、給水通路12に配設された分配弁13から加熱部11をバイパスするように分岐されて給湯通路2に接続されたバイパス通路14を有し、給湯通路2の湯水に上水を混合可能である。
【0027】
加熱部11は、燃料供給部11aからバーナ11bに供給される燃料ガスを、燃焼ファン11cから供給される空気を使用して燃焼させ、この燃焼熱を利用して熱交換部11dで給水通路12から供給される上水を加熱して給湯通路2に供給する。このとき、加熱部11側とバイパス通路14側に上水を分配する分配弁13の分配比調整によって、例えば台所リモコン10bから設定された給湯目標温度に調整された湯水が、給湯通路2を介して例えば給湯栓Fに供給される。
【0028】
また、浴槽3の湯水の追焚きのために、加熱部11は追焚きバーナ11eと追焚き熱交換部11fを有する。湯張り追焚き通路4に配設されたふろポンプ16の駆動によって浴槽3と追焚き熱交換部11fの間を循環する湯水は、燃料供給部11aから追焚きバーナ11eに供給される燃料ガスの燃焼熱を利用して熱交換部11fで加熱される。湯張り追焚き通路4には、注湯電磁弁17aを有し且つ給湯通路2から分岐された注湯通路17が接続されている。加熱部11の熱交換部11dで加熱された湯水は、注湯通路17と湯張り追焚き通路4を介して浴槽3に供給(湯張り)可能である。
【0029】
給湯装置10は例えば給湯目標温度の湯水を供給する給湯運転、浴槽3の湯張り運転及び追焚き運転を制御する給湯制御部18を有する。また、給水通路12の分配弁13よりも下流側には給水流量センサ12aが配設されている。給湯制御部18は、例えば給湯栓Fが開けられて給湯通路2の湯水が流動すると共に給水通路12から熱交換部11dに上水が供給されることにより、給水流量センサ12aが所定の加熱開始流量以上の流量を検知すると、バーナ11bに点火して燃焼を開始させる。
【0030】
給湯装置10は、例えば給湯栓Fを開けてからバーナ11bに点火して燃焼を開始するまで、ある程度の遅延時間を要する。この遅延時間は、一般的には1秒程度であるが、例えば給湯装置10の設置環境等によって1秒よりも長い場合がある。一方、給湯栓Fが閉止されて給水流量センサ12aの検知流量が所定の加熱停止流量以下になると、給湯制御部18はバーナ11bでの燃焼を停止させる。
【0031】
浴槽洗浄装置20の洗浄制御部33は、排水栓5を開け、第1,第2電磁弁24c,24e(湯水弁)、洗剤弁32等の開閉、ポンプ26の駆動等を制御して、浴槽洗浄運転を行う。この浴槽洗浄運転について、
図3のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0032】
最初にS1において、排水栓5を開けてS2に進む。そしてS2において、浴槽3内に洗浄ノズル21から湯水を所定の予備洗浄時間(例えば40秒)だけ噴射する予備洗浄を行う。予備洗浄では、給湯装置10から給湯通路2と第1湯水通路24を介して供給される湯水を湯水タンク23に貯留しながら、洗浄流量センサ29が検知する流量が予め設定された流量(例えば7L/分)となるようにポンプ26を駆動して湯水を噴射する。このとき、湯水タンク23の水位が第1水位Lと第2水位Hの間となるように、第1,第2電磁弁24c,24eについて電磁弁制御を行う。
【0033】
電磁弁制御では、例えば
図4のように、S11において第1,第2電磁弁24c,24eの両方を開けてS12に進み、S12において湯水タンク23の水位が第2水位Hに到達したか否か判定する。S12の判定がNoの場合は第1,第2電磁弁24c,24eを開けたままS12に戻る。S12の判定がYesの場合はS13に進む。
【0034】
S13において、例えば第1電磁弁24cを開けたまま第2電磁弁24eを閉めてS14に進み、S14において湯水タンク23の水位が第1水位L未満に低下したか否か判定する。S14の判定がNoの場合は第1,第2電磁弁24c,24eの開閉状態を維持したままS14に戻る。S14の判定がYesの場合はリターンして、この電磁弁制御を最初から始める。尚、S13では、毎回同じ電磁弁を閉めるようにしてもよく、前回と異なる電磁弁を閉めるようにしてもよい。予備洗浄の終了時には、第1,第2電磁弁24c,24eを閉めて電磁弁制御を終了する。このとき給湯通路2から第1湯水通路24まで、予備洗浄時に加熱された湯水が滞留している。
【0035】
図3のS2の予備洗浄が終わるとS3に進み、S3において間欠的に洗浄液を複数回噴射する洗浄液噴射を行って汚れを浮かせる。この洗浄液噴射では、ポンプ26の駆動によって第2湯水通路25を所定の流量(例えば6L/分)で流動する湯水に、洗剤弁32を開けてベンチュリ30において洗剤を混合して、洗浄液が生成される。この洗浄液は、洗浄ノズル21から、設定された噴射時間(例えば1秒)だけ噴射される。洗浄液の噴射後には、所定の待機時間(例えば40秒)だけ待機する。この洗浄液の噴射と待機を設定された回数(例えば6回)だけ繰り返し行う。
【0036】
洗浄液噴射では、噴射1回当たりの噴射時間が短時間であるため、
図4の電磁弁制御を行わずに、短時間の噴射に適した第1,第2電磁弁24c,24eの制御を行う。例えば
図5に示すように、時刻t1以前の予備洗浄後の湯水タンク23の水位は第1水位Lと第2水位Hの間にある。
【0037】
時刻t1で例えば第1電磁弁24cを開け、ポンプ26を駆動し、洗剤弁32を開いて洗浄液噴射の1回目の噴射を開始する。第1湯水通路24の2つの分岐通路部24a,24bのうちの片側だけ開けるので、洗浄液の噴射中に湯水タンク23の水位が低下する。給湯装置10の燃焼開始までは、湯水タンク23には予備洗浄時に十分に加熱されて第1湯水通路24から給湯通路2に滞留している湯水が供給され、給湯通路2には熱交換部11dに滞留している加熱された湯水が供給され、熱交換部11dには上水が供給される。
【0038】
時刻t1から噴射時間が経過した時刻t2で、ポンプ26を停止すると共に洗剤弁32を閉めて1回目の噴射を終了するが、第1電磁弁24cを開けたままにする。これにより湯水タンク23に湯水が供給され続けるので水位が上昇すると共に、例えば第1電磁弁24cを開けた時刻t1から遅延時間の経過後に給湯装置10の燃焼が開始され、熱交換部11dで加熱された湯水が給湯通路2に供給される。
【0039】
そして、時刻t3で湯水タンク23の水位が第2水位Hに到達すると、第1電磁弁24cを閉める。これにより上水の供給が止まるので、時刻t3から僅かに遅れて給湯装置10が燃焼を停止する。第1水位L未満から第2水位Hになるまで、給湯装置10の燃焼時間を確保して熱交換部11dで上水を十分に加熱することができるので、洗浄液噴射において給湯装置10の燃焼と停止が繰り返される場合でも、給湯通路2に加熱した湯水を供給することができる。
【0040】
時刻t2から待機時間が経過した時刻t4の2回目の噴射開始時には、第1,第2電磁弁24c,24eの閉止状態を維持したままポンプ26を駆動して洗剤弁32を開け、噴射時間だけ洗浄液を噴射してからポンプ26を停止すると共に洗剤弁32を閉める。このとき湯水タンク23の水位は低下するが、噴射時間が短いので第1水位L未満にはならない。
【0041】
洗浄液噴射の途中の例えば時刻t5で給湯栓Fが開けられると、既に加熱された給湯通路2の湯水が給湯されている間に給湯装置10の燃焼が開始されるので、給湯中に温度が大きく低下することはない。給湯栓Fでの給湯使用の有無によらず、洗浄液の噴射があっても湯水タンク23の水位が第1水位L未満になるまで湯水弁の閉止状態を維持して、洗浄液の噴射に給湯装置10の燃焼を連動させない。
【0042】
例えば4回目の噴射中の時刻t7で湯水タンク23の水位が第1水位L未満に低下したら第2電磁弁24eを開け、湯水タンク23への湯水の供給を開始する。噴射時間が短いので、第1,第2電磁弁24c,24eの一方が開いた状態では湯水タンク23の湯水が空になる前に洗浄液の噴射が終わり、既に加熱された湯水が供給されて湯水タンク23の水位が上昇し始める。
【0043】
時刻t7から遅延時間経過後に給湯装置10で燃焼が開始され、加熱された湯水が給湯通路2に供給される。そして、時刻t8で第2水位Hに到達すると第2電磁弁24eを閉め、上水の流量が検知されなくなったため給湯装置10が燃焼を停止する。洗浄液の噴射と待機を繰り返して、最後(6回目)の噴射後の待機時間が経過した時刻t9で、
図3のS3の洗浄液噴射が終了する。尚、時刻t9以降は、
図3のS4のすすぎ洗浄の状態を示している。
【0044】
このように、浴槽洗浄装置20は、短時間の洗浄液の噴射に連動させずに、湯水タンク23の水位に基づいて湯水弁である第1,第2電磁弁24c,24eの一方を開閉する。これにより、湯水タンク23の水位が第1水位L未満から第2水位Hになるまで、給湯装置10の燃焼時間を確保し、十分に加熱された湯水が給湯通路2に供給されるので、給湯通路2及び第1湯水通路24に加熱不足又は非加熱の湯水が滞留することが防止される。
【0045】
このとき、湯水弁である第1,第2電磁弁24c,24eのうちの一方を開けて湯水を貯留するので、両方を開ける場合よりも湯水タンク23の水位の上昇が緩やかになり、給湯装置10の燃焼時間を長くすることができる。尚、1回目の噴射開始時に湯水弁を開けずに、湯水タンク23の水位が第1水位L未満になってから湯水弁を開けるようにすることもできる。
【0046】
給湯通路2及び第1湯水通路24に低温の湯水が滞留しないので、洗浄液噴射の際に給湯栓Fが開けられても加熱された湯水を給湯することができ、給湯使用中に温度が大きく低下しない快適な給湯を行うことができる。そして、低温の湯水が洗浄液の噴射に使用されないので、洗浄能力の低下が防止される。また、燃焼開始直後の燃焼停止が繰り返されることを防止できるので、ユーザが給湯装置の故障を疑うようなことがなく、給湯装置の劣化進行を促進させることもない。
【0047】
例えば
図6のように、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間が2秒程度の短時間であって遅延時間よりも長い場合でも、湯水タンク23の検知水位に基づいて第1,第2電磁弁24c,24eのうちの一方を開閉するように制御する。例えば洗浄液噴射が開始される時刻t1’でポンプ26を駆動し、洗剤弁32を開け、第1電磁弁24cを開けると、遅延時間経過後に給湯装置10の燃焼が開始される。その後、時刻t2’でポンプ26を停止し、洗剤弁32を閉めても、給湯装置10の燃焼を継続し、時刻t3’で湯水タンク23の水位が第2水位Hに到達後に給湯装置10の燃焼を停止する。
【0048】
洗浄液の噴射中の時刻t7’で湯水タンク23の水位が第1水位L未満になって第2電磁弁24eを開け、噴射が止まって時刻t8’で湯水タンク23の水位が第2水位Hに到達したら第2電磁弁24eを閉止する。洗浄制御部33は、以降の噴射中に第1水位L未満になった場合にも同様に、湯水タンク23の水位に基づいて湯水弁を開閉制御する。
【0049】
従って、湯水タンク23の水位が第1水位L未満から第2水位Hになるまで、給湯装置10の燃焼時間を確保して十分に加熱し、給湯通路2に低温の湯水が供給されることを防止することができる。それ故、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間を短時間に設定して洗剤の使用量を抑制すると共に、加熱された湯水を洗浄液の噴射に使用して洗浄能力の低下を防止することができる。尚、時刻t9以降は、
図3のS4のすすぎ洗浄の状態を示している。
【0050】
図3のS3の洗浄液噴射が終わるとS4に進み、S4においてすすぎ洗浄を行う。このすすぎ洗浄は、S2の予備洗浄と同様の電磁弁制御を行いながら、設定された流量で湯水を所定のすすぎ時間(例えば60秒)だけ噴射して、洗浄液と共に汚れを洗い流す。S4のすすぎ洗浄が終わるとS5に進み、S5において第1,第2電磁弁24c,24eを閉めて湯水タンク23が空になるまでポンプ26を駆動するタンク排水を行い、このタンク排水が終了したら浴槽洗浄運転を終了する。
【0051】
上記の浴槽洗浄システム1の作用、効果について説明する。
洗浄液を間欠的に複数回噴射する際には、湯水タンク23の湯水がポンプ26によって第2湯水通路25に供給され、この第2湯水通路25を流動する湯水に洗剤を混ぜて生成された洗浄液が、洗浄ノズル21から浴槽3内に噴射される。このとき、湯水弁である第1,第2電磁弁24c,24eを閉止している場合には、給湯装置10から給湯通路2と第1湯水通路24を介して湯水タンク23に加熱された湯水が供給されないので、湯水タンク23の水位が低下する。
【0052】
この湯水タンク23の水位が予め設定された第1水位L未満になるまで第1,第2電磁弁24c,24eの閉止が維持される。洗浄液の噴射に給湯装置10の燃焼を連動させないので、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間が短時間の場合でも、加熱不足又は未加熱の低温の湯水が給湯通路2に供給されることを防止できる。従って、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間を短時間にして洗剤消費量を低減すると共に、給湯通路2への低温の湯水の供給を防止することができる。また、洗浄液噴射のときに給湯栓Fからの給湯使用があった場合に、洗浄運転のために加熱された湯水の後に加熱不足又は非加熱の低温の湯水が給湯されること、即ち給湯使用中に湯水の温度が大きく低下することを防止でき、安定した給湯をすることができる。
【0053】
洗浄液の噴射によって湯水タンク23の水位が第1水位L未満になった場合に湯水弁である第1電磁弁24c又は第2電磁弁24eを開けて湯水の貯留を開始し、湯水タンク23の水位が第2水位Hに到達した場合に開いている湯水弁を閉止して湯水の貯留を停止する。湯水タンク23の水位に基づいて湯水弁を開閉するので、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間が短時間の場合でも、第1水位L未満から第2水位Hになるまで給湯装置10の燃焼時間を確保でき、加熱された湯水が給湯通路2に供給される。従って、給湯装置10から加熱不足又は非加熱の低温の湯水が給湯通路2に供給されることを防止できる。
【0054】
洗剤消費量低減のために、洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間が遅延時間以下に設定され、従来の浴槽洗浄システムにおいてはこの噴射時間では給湯装置の燃焼が開始されなかったような場合でも、上記実施例のように構成したことによって上水を十分に加熱可能な給湯装置10の燃焼時間を確保することができる。それ故、給湯装置10から加熱不足又は非加熱の低温の湯水が給湯通路2に供給されることを防止できる。
【0055】
洗浄液の噴射時の所定の流量となるようにポンプ26の回転数を調整するため、洗浄液の1回目の噴射の噴射時間は2回目以降の噴射時間よりも長くてもよい。洗浄液の噴射1回当たりの噴射時間は、ポンプ26を駆動して洗浄液を十分に噴射可能且つ湯水弁を開けた状態で湯水タンク23の水位が第1水位Lから空にならない程度の短時間に設定されればよい。
【0056】
湯水タンク23の水位が第1水位L未満になったときに第1,第2電磁弁24c,24eの両方を開け、第2水位Hに到達したらその両方を閉止するようにすることもできる。湯水タンクに湯水を供給するための湯水弁が1つだけの浴槽洗浄装置を有する浴槽洗浄システムにおいても、上記のように短時間の噴射を複数回行う際に湯水タンクの水位に基づき湯水弁の開閉の制御を行うことが可能である。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。