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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157553
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】頭部保護具
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/32 20060101AFI20231019BHJP
   A42B 3/14 20060101ALI20231019BHJP
   A42B 1/201 20210101ALI20231019BHJP
【FI】
A42B3/32
A42B3/14
A42B1/201 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067533
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】595047651
【氏名又は名称】株式会社イエロー
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 法勝
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107BA04
3B107CA02
3B107DA05
3B107DA06
3B107DA07
3B107DA18
(57)【要約】
【課題】災害から避難する装着者の頭部に固定された状態で装着できると共に、装着者の避難後の座姿勢を快適にさせることができる頭部保護具を提供する。
【解決手段】装着者の少なくとも頭部を覆う形状としての展開状態と、展開状態よりも小さく折り畳まれた折畳み状態とに形状を変化させることができる防災ずきん10Aは、軟質のクッション性を有する部材で形成されて、装着者の少なくとも頭部を被覆する被覆部12と、被覆部12の内側に設けられた、被覆部12を装着者の頭部に固定して装着させる内装材13とを備え、内装材13は、折畳み状態においてそれぞれ扁平な形状に変形して防災ずきん10Aを装着者が座ることのできる形状に形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の少なくとも頭部を覆う形状としての展開状態と、該展開状態よりも小さく折り畳まれた折畳み状態とに形状を変化させることができる頭部保護具であって、
軟質のクッション性を有する部材で形成されて、前記装着者の少なくとも頭部を被覆する被覆部と、
該被覆部の内側に設けられた、前記被覆部を前記装着者の頭部に固定して装着させる内装材とを備え、
該内装材は、前記折畳み状態においてそれぞれ扁平な形状に変形して前記頭部保護具を前記装着者が座ることのできる形状に形成することを特徴とする頭部保護具。
【請求項2】
前記内装材は、装着時に前記装着者の額部から側頭部にかけて当接するヘッドバンドを備えたことを特徴とする請求項1に記載の頭部保護具。
【請求項3】
前記内装材は、前記装着者の顎部に位置して設けられた一対の顎紐と、
該一対の顎紐に設けられた、それぞれの前記顎紐を前記装着者の顎部に締結される顎紐固定部とを備え、
前記顎紐は、
基端側が前記装着者の頭部を覆う被覆部の内側に配設されると共に、
先端側が前記被覆部を貫通して該被覆部の外側に配設され、
前記顎紐の前記被覆部の外側に配設された部分に前記顎紐固定部が設けられて、該顎紐固定部を前記顎紐の先端側から基端側に引き寄せることで前記顎紐を前記装着者の前記顎部に固定させることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護具。
【請求項4】
前記被覆部よりも硬質の部材で形成されて前記装着者の少なくとも頭頂部に対向する位置に設けられる頭頂保護部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護具。
【請求項5】
前記頭頂保護部は、細長い柱状、又は、細長い板状に形成された頭頂保護本体部を備え、該頭頂保護本体部は前記装着者の頭頂部を含む前後方向、又は、前記頭頂部を含む左右方向に配設されることを特徴とする請求項4に記載の頭部保護具。
【請求項6】
前記内装材は、装着時に前記装着者の頭頂部又は頭頂部近傍に当接するハンモックを備えたことを特徴とする請求項5に記載の頭部保護具。
【請求項7】
該ハンモックは、前記装着者の頭頂部又は頭頂部近傍に一対設けられて、それぞれが、前記展開状態と前記折畳み状態とにおける前記被覆部の形状の変化に依存して回動可能に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の頭部保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時は人体頭部に被ることのできる展開状態となり、不使用時は折り畳んだ折り畳み状態となるように構成された、例えば防災ずきん等の頭部保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震や火災等の災害に遭遇した被災者が避難をする際に頭部に被り、被った装着者(以下「装着者」と称する。本明細書において同じ。)の頭部を落下物や飛来物等から保護するための、防災ずきん等の頭部保護具が知られている。
【0003】
この頭部保護具としては、たとえば、第1折目線によって折り返された平板から構成される外側部材と、第2折目線によって折り返された平板から構成され、第2折目線を第1折目線と同一側にして自身の第2折目線の部分と外側部材の第1折目線の部分の間に隙間を設けた状態で外側部材の内側に挟み込まれ、第2折目線の両側における第2折目線から離隔した部分が外側部材にそれぞれ固定される内側部材とを備えた防災頭巾が知られている(たとえば、特許文献1参照。)。この、特許文献1に記載された防災ずきんは、シンプルな構成ゆえ、大人のみならず、多くの乳幼児や子供にも利用され、保育園、幼稚園、小学校等においても多く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-20026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明に係る防災ずきんは、頭部を覆う布製の被覆部に顎紐が設けられたのみの構成である。そして、装着者が頭部に被って使用する際は、被覆部を頭部に被り、顎部に顎紐を締結するのみである。そのため、この防災ずきんは装着者の動作に伴って装着状態のずれが生じやすく、装着者の避難時に頭部から脱げてしまったり、目を覆って視界を遮ってしまったりして、装着者を落下物や飛来物から守ることができなくなる場合があるという問題がある。一方、災害から避難した装着者は、避難所に長時間滞在することも多いが、このときに装着者は避難所に座って長時間滞在することになる。しかし、避難所の床は板材やコンクリートのような硬質の部材によって形成されていたり、砂利などの不整地になっている場合もある。このような場所に装着者が長時間座っていると不快感や痛感を感じることになるが、特許文献1に記載の発明は、このような避難所での装着者の不快感や痛感を軽減させるための機能は設けられておらず、装着者の避難先での不便さを軽減できないという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、災害から避難する装着者の頭部に固定された状態で装着できると共に、装着者の避難後の座姿勢を快適にさせることができる頭部保護具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、装着者の少なくとも頭部を覆う形状としての展開状態と、該展開状態よりも小さく折り畳まれた折畳み状態とに形状を変化させることができる頭部保護具であって、軟質のクッション性を有する部材で形成されて、前記装着者の少なくとも頭部を被覆する被覆部と、該被覆部の内側に設けられた、前記被覆部を前記装着者の頭部に固定して装着させる内装材とを備え、該内装材は、前記折畳み状態においてそれぞれ扁平な形状に変形して前記頭部保護具を前記装着者が座ることのできる形状に形成することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記内装材は、装着時に前記装着者の額部から側頭部にかけて当接するヘッドバンドを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記内装材は、前記装着者の顎部に位置して設けられた一対の顎紐と、該一対の顎紐に設けられた、それぞれの前記顎紐を前記装着者の顎部に締結される顎紐固定部とを備え、前記顎紐は、基端側が前記装着者の頭部を覆う被覆部の内側に配設されると共に、先端側が前記被覆部を貫通して該被覆部の外側に配設され、前記顎紐の前記被覆部の外側に配設された部分に前記顎紐固定部が設けられて、該顎紐固定部を前記顎紐の先端側から基端側に引き寄せることで前記顎紐を前記装着者の前記顎部に固定させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記被覆部よりも硬質の部材で形成されて前記装着者の少なくとも頭頂部に対向する位置に設けられる頭頂保護部を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記頭頂保護部は、細長い柱状、又は、細長い板状に形成された頭頂保護本体部を備え、該頭頂保護本体部は前記装着者の頭頂部を含む前後方向、又は、前記頭頂部を含む左右方向に配設されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記内装材は、装着時に前記装着者の頭頂部又は頭頂部近傍に当接するハンモックを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の構成に加え、前記ハンモックは、前記装着者の頭頂部又は頭頂部近傍に一対設けられて、それぞれが、前記展開状態と前記折畳み状態とにおける前記被覆部の形状の変化に依存して回動可能に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、軟質のクッション性を有する部材で形成されて、頭頂保護部よりも下方側に延伸した状態を形成して装着者の少なくとも頭部を被覆する被覆部と、被覆部の内側に設けられた、被覆部を装着者の頭部に固定して装着させる内装材とを備えたことにより、災害避難時などにおいて、展開状態で装着者が頭部保護具を被った際に、展開状態で装着者が頭部保護具を被った際に、装着者の頭部全体を飛来物や熱から防ぐ被覆部を、内装材によって装着者の頭部に固定して、装着者の身体や頭が動くことで被覆部がずれてしまい、装着者の頭部から脱げてしまったり、装着者の目を覆って視界を遮ってしまったりするような事態を抑止して、装着者の安全を継続的に確保できる。また、内装材は、折畳み状態においてそれぞれ扁平な形状に変形して頭部保護具を装着者が座ることのできる形状に形成することにより、災害避難の避難先などにおいて、装着者が頭部保護具を折り畳んで敷物として使用することで、床面の硬さや凹凸の有無等にかかわらず、快適に座り続けることができる。これにより、頭部保護具を災害から避難する装着者の頭部に固定された状態で装着できると共に、装着者の避難後の座姿勢を快適にさせることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、内装材は、装着時に装着者の額部から側頭部にかけて当接するヘッドバンドを備えたことにより、頭部保護具を装着者の額部から側頭部にかけてかけて締結させて、頭部保護具を装着者の頭部に固定された状態で装着することができる。これにより、頭部保護具を災害から避難する装着者の頭部に強固に固定された状態で装着することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、内装材は、装着者の顎部に位置して設けられた一対の顎紐と、一対の顎紐に設けられた、それぞれの顎紐を装着者の顎部に締結される顎紐固定部とを備えたことにより、顎紐固定部を用いて顎紐を装着者の顎部に容易に締結することが可能となり、頭部保護具の簡易で迅速な着脱を実現できる。また、顎紐は、基端側が装着者の頭部を覆う被覆部の内側に配設されると共に、先端側が被覆部を貫通して被覆部の外側に配設され、顎紐の被覆部の外側に配設された部分に顎紐固定部が設けられて、顎紐固定部を顎紐の先端側から基端側に引き寄せることで顎紐を装着者の顎部に固定させることにより、顎紐固定部を被覆部の外側において顎紐の先端側から基端側に引き寄せて、顎部近傍の被覆部を装着者の顎部周辺に密着させた状態で固定させると共に、内装材を装着者の頭部に固定させて頭部保護具を装着者の頭部に固定させることができる。これにより、災害から避難する装着者の顎部周辺の安全性を高めつつ、頭部に固定された状態で装着させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、被覆部よりも硬質の部材で形成されて装着者の少なくとも頭頂部に対向する位置に設けられる頭頂保護部を備えたことにより、頭頂保護部によって装着者の頭頂部を落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐことができる。これにより、災害から避難する装着者の頭部の安全性をより高めることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、頭頂保護部は、細長い柱状、又は、細長い板状に形成された頭頂保護本体部を備え、頭頂保護本体部は装着者の頭頂部を含む前後方向、又は、頭頂部を含む左右方向に配設されることにより、装着者の頭頂部とその前後、又は、装着者の頭頂部とその左右に対応する位置に頭頂保護本体部を装着することで、装着者の頭頂部とその周辺部分を落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐことができ、装着者の頭部を一層確実に守ることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、内装材は、装着時に装着者の頭頂部又は頭頂部近傍に当接するハンモックを備えたことにより、頭部保護具を装着者の頭頂部分に確実に固定させることができて、装着者の頭頂部の安全性を一層高めることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、ハンモックは、装着者の頭頂部又は頭頂部近傍に一対設けられて、それぞれが、展開状態と折畳み状態とにおける被覆部の形状の変化に依存して回動可能に形成されていることにより、展開状態と折畳み状態のそれぞれにおいて、頭部保護具全体におけるハンモックの位置を、それぞれの状態の目的に応じた位置に変化させることができる。これにより、頭部保護具を災害から避難する装着者の頭部に固定された状態で装着できると共に、装着者の避難後の座姿勢を快適にさせることのできる頭部保護具を、具体的な構成に基づいて実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の実施の形態1の防災ずきんの展開状態を底面方向から見た斜視図である。
図2】同上防災ずきんの展開状態を正面方向から見た斜視図である。
図3】同上防災ずきんの被覆部を取り除いた構成の展開状態を底面方向から見た斜視図である。
図4】同上防災ずきんの頭頂保護部を構成する頭頂保護本体部と周辺保護部のA-A断面図(周辺保護部の移動状態の模式的な表示も含む)である。
図5】同上防災ずきんの頭頂保護部の右側面方向から見た図である。
図6】同上防災ずきんの頭頂保護部を平面方向から見た斜視図である。
図7】同上防災ずきんの上側部分を正面方向から見た端面図である。
図8】同上防災ずきんのヘッドバンドを構成する左側部材の展開図である(仮に側頭当接部が仮想下方縁部を有していた場合を模式的に示す図も含む。)。
図9】同上防災ずきんのヘッドバンドを構成する右側部材と前側連結紐の部分拡大図である。
図10】同上防災ずきんの紐部の全体図である。
図11】同上防災ずきんを装着者が頭部に被った状態を模式的に示す図である。
図12】同上防災ずきんを装着者が頭部に被って連結部材を連結された状態を模式的に示す図である。
図13】同上防災ずきんを装着者が頭部に被って連結された連結部材を移動させる状態を模式的に示す図である。
図14】同上防災ずきんについて、(a)仮に側頭当接部が仮想下方縁部を有していた場合に装着者の頭部に装着させた状態を模式的に示す図である。(b)側頭当接部が下方縁部を有している場合に装着者の頭部に装着させた状態を模式的に示す図である。
図15】この発明の実施の形態2の防災ずきんの展開状態を底面方向から見た斜視図である。
図16】同上防災ずきんの展開状態を正面方向から見た斜視図である。
図17】同上防災ずきんの被覆部を取り除いた構成の展開状態を底面方向から見た斜視図である。
図18】同上防災ずきんの頭頂保護部を平面方向から見た斜視図である。
図19】同上防災ずきんの上側部分を正面方向から見た端面図である。
図20】同上防災ずきんのハンモックの展開図である。
図21】この発明の実施の形態3の防災ずきんの展開状態を底面方向から見た斜視図である。
図22】同上防災ずきんの展開状態を正面方向から見た斜視図である。
図23】同上防災ずきんの頭頂保護部の折畳み状態を平面方向から見た図である。
図24】同上防災ずきんの頭頂保護部の展開状態を平面方向から見た図である。
図25】同上防災ずきんの頭頂保護本体部の開口部を開口させた状態を正面方向から見た部分拡大図である。
図26】同上防災ずきんの頭頂保護本体部の開口部を閉じた状態を正面方向から見た部分拡大図である。
図27】同上防災ずきんの頭頂保護部の頭頂保護本体部と周辺保護部のB-B断面図(周辺保護部の移動状態の模式的な表示も含む)である。
図28】この発明の実施の形態4の防災ずきんの展開状態の被覆部と頭頂保護部を平面方向から見た斜視図である。
図29】同上防災ずきんの、(a)被覆部を側面方向から見た図である。(b)マチ部を含む背面側の部分拡大図である。
図30】この発明の実施の形態5の防災ずきんを展開状態で装着者が頭部に被った状態における、頭頂保護部と被覆部を平面方向から見た概略図である。
図31】同上防災ずきんの、(a)展開状態で装着者の頭部に被った状態の被覆部と頭頂保護部の位置関係を示す、平面方向から見た概略図である。(b)展開状態から折畳み状態に変化させる際の被覆部と頭頂保護部の位置関係を示す、平面方向から見た概略図である。(c)折畳み状態にする際の頭頂保護部と被覆部の位置関係を示す、右側面方向から見た概略図である。
図32】この発明の実施の形態6の防災ずきんを展開状態で装着者が頭部に被った状態における、頭頂保護部と被覆部を平面方向から見た概略図である。
図33】同上防災ずきんの、(a)展開状態で装着者の頭部に被った状態の被覆部と頭頂保護部の位置関係を示す、平面方向から見た概略図である。(b)折畳み状態にする際の頭頂保護部と被覆部の位置関係を示す、右側面方向から見た概略図である。
図34】この発明の実施の形態6の防災ずきんの展開状態における周辺保護部とハンモックとの位置関係を示す、底面方向から見た部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
[発明の実施の形態1]
図1乃至図14は、この発明の実施の形態1を示す。
【0024】
[全体構成]
まず、構成を簡単に説明すると、図1乃至図3に示す、この実施の形態1の「頭部保護具」としての防災ずきん10Aは子供用の防災ずきんであり、園児、学童等の子供が頭に被るのに適した大きさに形成されている。但し、防災ずきん10Aは平均的な大人が頭に被るのに適した大きさに形成されていてもよい。
【0025】
[展開状態と折畳み状態]
この実施の形態1の防災ずきん10Aは、図1及び図2に示すような、装着者100(図11乃至図14参照。)の少なくとも頭部を覆う形状としての展開状態(以下単に「展開状態」と記載する。)に形成できる。一方、防災ずきん10Aは、この展開状態よりも小さく折り畳まれた折畳み状態(以下単に「折畳み状態」と記載する。)に形状を変化させることができる。折畳み状態においては、防災ずきん10Aは、たとえば平面視略矩形の扁平な略板状の形状することができる(図31の(c)参照。)。後述するが、折畳み状態の防災ずきん10Aは、装着者100が座るためのクッションとして使用できる。
【0026】
図1及び図2に示すように、この実施の形態1の防災ずきん10Aは、大きくは頭頂保護部11と被覆部12と内装材13とを備えている。
【0027】
[頭頂保護部]
図4乃至図7に示す、頭頂保護部11は主として硬質の部材によって形成されている。頭頂保護部11は、防災ずきん10Aを頭部に装着した装着者100の頭頂部と頭頂部近傍を、落下物の衝突による衝撃や飛来した突起物の衝突による貫通や衝撃から防御する。
【0028】
図3図5図6に示すように、頭頂保護部11は、平面視において細長い略矩形の板状に形成されている。
【0029】
頭頂保護部11は、防災ずきん10Aを装着者100の頭部に装着した際、長手方向が装着者100の頭頂部を含む頭部の前後方向に沿う位置に設けられる。これにより、装着者100の頭頂部を含む広い範囲を落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐことができる。
【0030】
なお、頭頂保護部11は、装着者100の頭頂部を含む広い範囲を保護できるものであれば、どのような形状であってもよいし、どのような位置に設けられていてもよい。例えば、頭頂保護部11は、細長い略矩形の柱状に形成されていてもよい。また、頭頂保護部11は、装着者100の頭頂部を含む頭部の左右方向に沿う位置に設けられてもよいし、頭頂部を含む頭部の斜め方向に設けられてもよい。また、頭頂保護部11は、装着者100の頭頂部を含む前方向のみ、後ろ方向のみ、左方向のみ、右方向のみ等の位置に設けられてもよいし、細長い略矩形以外の形状、例えば平面視楕円形や平面視六角形や平面視八角形等の形状であってもよい。
【0031】
図4図5図6に示すとおり、頭頂保護部11は、頭頂保護本体部14と、当接部15と、周辺保護部16とを備えている。後述するとおり、周辺保護部16は「頭頂保護部」の機能と「ハンモック」の機能とを奏する。
【0032】
頭頂保護本体部14は、ポリプロピレン等、剛性の高い硬質の部材によって形成されている。
【0033】
頭頂保護本体部14は、装着者100の頭部の直径に略等しい長さの略板状に形成されている。ただし、装着者100の頭頂部近傍を保護できるものであれば、頭頂保護本体部14の長さは装着者100の頭部の直径より長くても短くてもよい。また、装着者100の頭頂部近傍を保護できる剛性を確保できれば、頭頂保護本体部14の幅や厚さはどのような大きさでもよい。
【0034】
図5図6に示すように、頭頂保護本体部14の両端には、ビス14a,14aが設けられている。図7に示すように、頭頂保護部11と被覆部12とは、ビス14a,14aによって固着される。
【0035】
図5図6に示すように、頭頂保護本体部14の下側には、下方に向けて延伸した一対の係止部17が設けられている。係止部17の先端には楔型の係止用突起18が設けられている。また、頭頂保護本体部14の長手方向両側部には、周辺保護部16,16が設けられている。この実施の形態1において、周辺保護部16,16は長手方向中央部よりも前側寄り(図5における左側寄り)に設けられ、図5に示す長さL1よりも長さL2の方が長くなっている。これにより、装着者100が防災ずきん10Aを被ったとき、前方側から装着者100の顔が表出した状態で、頭頂部に対応する位置に周辺保護部16が配設できる。ただし、頭頂保護本体部14に対する周辺保護部16,16の配設位置は、防災ずきん10Aをかぶった装着者100の頭部の安全と良好な視界を確保できればどの位置に配設されてもよい。
【0036】
図4図5に示すように、当接部15は、頭頂保護本体部14の下方に配設される。当接部15は、頭頂保護本体部14よりも軟質の部材、例えば発砲スチロール等によって形成されている。ただし、当接部15は、頭頂保護本体部14に落下物や突起物が衝突した際の頭頂保護本体部14の変形や破断を抑止しつつ装着者100の頭部に加わる衝撃を緩和できる程度の剛性を有することが望ましい。
【0037】
図4に示すように、当接部15は、平面視において頭頂保護本体部14と同様に、平面視において細長い略矩形であるが、図5に示すように、頭頂保護本体部14よりも長さが短い。また、図4図5に示すように、当接部15は、正面視の略中央部が下方に突出した下方突出部19を形成している。この下方突出部19は、装着者100が装着した際に装着者100の頭頂部及び頭頂部近傍に当接する。なお、当接部15の長さや下方突出部19の位置及び大きさは、頭頂保護部11に外部から衝撃が加わった際の頭頂保護本体部14の変形や破断を防止し、装着者100の頭頂部に加わる衝撃を緩和できる位置や大きさを確保できるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0038】
図2図5に示すように、当接部15の、係止部17に対応する位置には、一対の孔部20が貫通形成されている。図5に示すように、この孔部20には、係止部17の係止用突起18が係止される。これにより、頭頂保護本体部14に当接部15が係止された状態が形成される。
【0039】
[周辺保護部]
図3乃至図6に示すように、頭頂保護部11は一対の周辺保護部16,16を備えている。
【0040】
図4に示すように、それぞれの周辺保護部16は、頭頂保護本体部14の略中央部分の両側側にヒンジ21によって連結されている。周辺保護部16は、装着者100が防災ずきん10Aを被った際に装着者100の頭頂部近傍に当接するように設けられている。なお、周辺保護部16は、装着者100が被った際に装着者100の頭頂部に当接するように構成されてもよい。
【0041】
図4乃至図7に示すように、周辺保護部16は、周辺保護本体部22と衝撃吸収部23とを備えている。
【0042】
それぞれの周辺保護本体部22は、頭頂保護本体部14と同じ、ポリプロピレン等の剛性の高い硬質の部材によって平面視略半円形に形成されている。周辺保護本体部22の上端部近傍にはヒンジ21が設けられている。周辺保護本体部22のヒンジ21よりも上端側は、外部からの飛来物や突起物がヒンジ21に衝突するのを防ぐためのヒンジ保護部24を形成している。
【0043】
頭頂保護本体部14と周辺保護本体部22とヒンジ21と、後述する前側保持部45aと後側保持部45bとは、樹脂成形によって一体形成されている。ただし、頭頂保護本体部14と周辺保護本体部22とヒンジ21とは、別部材が組み立てられて構成されていてもよい。
【0044】
衝撃吸収部23は、周辺保護本体部22よりも柔らかく、外部からの衝撃が加わると弾性変形することで衝撃を吸収する部材、例えば発砲スチロールによって形成される。図4図5に示すように、衝撃吸収部23は、周辺保護本体部22の端部側(周辺保護部16をヒンジ21で折り畳んで折畳み状態とした際に当接部15に当接しない位置)と同じ平面視形状の略半円形に形成されている。
【0045】
図4に示すように、ヒンジ21は、頭頂保護本体部14と周辺保護本体部22とよりも薄肉であって頭頂保護本体部14と周辺保護本体部22とを連結する。周辺保護本体部22を含む周辺保護部16は、ヒンジ21において、頭頂保護本体部14の長手方向に沿って回動される。そして、それぞれの周辺保護部16は、防災ずきん10Aの展開状態と折畳み状態とにおける被覆部12の形状の変化に依存して、頭頂保護本体部14に対して回動可能に形成される。
【0046】
[被覆部]
図1図2図7に示すように、この実施の形態1の防災ずきん10Aは被覆部12を備える。被覆部12は、頭頂保護部11の上側から両側側と後側のほぼ全体を覆うとともに、頭頂保護部11よりも下方側に延伸した状態を形成する。これにより、被覆部12は装着者100の頭部から首筋を経て両肩の部分を被覆する。なお、被覆部12は装着者100の頭部よりも下方のどの部分までを被覆してもよい。
【0047】
被覆部12は、略矩形の右側部材25と略矩形の左側部材26との一端側(上側)と一側側(後側)が縫合されて形成されている。被覆部12は、頭頂保護部11よりも軟質でクッション性を有し、かつ、難燃性の素材や難燃性加工がされた略矩形の布地(例えば難燃性ポリエステルや、アルミニウム蒸着加工がされた綿やポリエステルなどが相当する。)で形成されている。
【0048】
図1図2に示すように、被覆部12の両側部の前方側下方には、顎紐47を挿通させる顎紐挿通孔27が貫通形成されている。また、被覆部12の両側部の略中央部には、装着者100が外部の音を聴取するための聴取孔28が貫通形成されている。
【0049】
被覆部12は、上側部分12aと下側部分12bとを折り畳んで略矩形の敷物を形成できるように構成されている。具体的には、例えば、右側部材25と左側部材26とを接合させて扁平な形状にしたのちに図1図2に示す右側部材25の上側部分12aと下側部分12bとの境界を谷折りし、左側部材26の上側部分12aと下側部分12bを山折りして、防災ずきん10Aを略矩形の敷物として形成させる(図31の(c)参照。)。
【0050】
[内装材]
図3に示すように、この実施の形態1の内装材13は、ヘッドバンド30と、ハンモック31と、紐部32とを備えている。ヘッドバンド30は主として装着者100の額から側頭部を経て後頭部までに装着され、ハンモック31は主として装着者100の頭頂部近傍に装着され、紐部32は主として装着者100の耳周辺から顎にかけて装着される。
【0051】
[ヘッドバンド]
図3に示すように、ヘッドバンド30は、右側部材33と、左側部材34とを備えている。右側部材33、左側部材34は、柔軟性と剛性とを有し、繰り返しの使用や長期間の使用によっても伸びや剛性の低下が生じにくい合成樹脂、例えばポリエチレン、もしくはポリプロピレン等からなる。但し同様の性質を有するものであればどのような材質で形成されていてもよい。
【0052】
図8に示すように、左側部材34には、帯状の側頭当接部35が設けられている。この側頭当接部35は、使用状態において長手方向が略水平方向に沿った状態となり、右側の側頭部に当接する。
【0053】
図8に示すように、側頭当接部35の上方側の縁である上方縁部35aは略水平なのに対し、下方側の縁である下方縁部35bは両端側から中央に向けてそれぞれ上方に弧を描く形状を呈している。そのため、側頭当接部35の中央部の幅WAは、両側部の幅WBよりも狭くなっている。なお参考までに、図8に、仮に下方の縁が略水平であった場合の仮想下方縁部35cも示す。仮想下方縁部35cが存在した場合の作用効果は後述する([(2)ヘッドバンドの形状に基づく作用効果]参照。)。
【0054】
側頭当接部35には、前側接合片部36、後側接合片部37が上方に突設されている。前側接合片部36、後側接合片部37の上端側にはハンモック保持孔38が開口形成されている。
【0055】
なお、前側接合片部36よりも後側接合片部37の方が長く形成されている。これにより、側頭当接部35を後側が下方に傾斜した態様で装着者100の頭部に装着させて、安定した装着感を得られるようになっている。
【0056】
右側部材33の前端側には上下一対の耳紐挿通孔39,39、連結紐挿通孔40が開口形成されている。左側部材34の後端側には上下一対の耳紐挿通孔41,41、連結紐挿通孔42が開口形成されている。上下一対の耳紐挿通孔39,39,41,41は、装着者100の頭の大きさ等によって上下どちらに耳紐46を挿通させてもよいように構成されている。
【0057】
図8に図示しないが、右側部材33は、左側部材34と左右対称に構成されている。
【0058】
右側部材33、左側部材34のそれぞれの前側の連結紐挿通孔40には前側連結紐43が挿通されて連結され、それぞれの後側の連結紐挿通孔42には後側連結紐44が挿通されて連結される(図9参照)。前側連結紐43、後側連結紐44は、弾性を有する細長い部材、たとえばゴムひも等によって形成されている。図9に示すように、前側連結紐43の端部には長さ調節可能なコードストッパ43aが装着されている。図2に示すとおり、後側連結紐44の端部にも同様のコードストッパ43aが装着されている。前側連結紐43、後側連結紐44は、防災ずきん10Aが装着者100の頭部に装着された際の張力によってヘッドバンド30を装着者100の頭部に固定させる。
【0059】
図2図3図9に示すように、ヘッドバンド30の前側の、前側連結紐43よりも内側には、帯状の額当て45が配設されている。額当て45は、柔軟性と吸湿性のある布地で形成され、装着者100の額部分に前側連結紐43が直接当接する不快感と、額部分の汗が顔に垂れる不快感を緩和する。
【0060】
[ハンモック]
図3図5図6に示すように、この実施の形態1のそれぞれの周辺保護部16には、それぞれ帯状の前側保持部45a、後側保持部45bが平面方向に延伸して設けられている。周辺保護部16、前側保持部45a、後側保持部45bは、この実施の形態1のハンモック31を構成する。
【0061】
ハンモック31は装着者100の頭頂部や頭頂部近傍に当接し、内装材13を装着者100の頭頂部に固定すると共に、落下物や飛来物が衝突した際に頭頂部に加わる衝撃を緩和する。
【0062】
[紐部]
図3に示すように、内装材13の紐部32は、装着者100の耳部に位置して設けられた一対の耳紐46,46と、装着者100の顎部に位置して設けられた一対の顎紐47,47とを備える。耳紐46も顎紐47も、剛性の高い材質、たとえばポリプロピレン等の合成繊維によって帯状に形成されている。耳紐46は、両端部側が折り返されて環状となった状態で取付ビス47aで取付られて固定されている。顎紐47の基端部側は、端部側が折り返されて環状となった状態で取付ビス47bで耳紐46に取付られている。
【0063】
図2に示すように、それぞれの耳紐46は、被覆部12の内側に設けられている。耳紐46の一端部と他端部とは、右側部材33の耳紐挿通孔39,41、左側部材34の耳紐挿通孔39,41にそれぞれ挿通された状態で固定されている。
【0064】
図2に示すように、顎紐47は被覆部12の顎紐挿通孔27に挿通されて先端側が被覆部12の外側に配設されている。
【0065】
図10に示すように、被覆部12の外側に位置する顎紐47の途中には、「顎紐固定部」としての連結部材48が設けられている。この連結部材48は略円盤状に形成され、一方面は面ファスナーが配設された結合面49を形成している。それぞれの連結部材48は、顎紐47を先端側から基端側までスライド可能であり、顎紐47上の所望の部分で固定させることが可能に形成されている。
【0066】
なお、連結部材48はそれぞれの顎紐47,47に別個に設けられている必要はなく、一の連結部材48に一対の顎紐47,47が挿通され、それぞれの顎紐47,47上を移動可能なコードストッパとして構成されてもよいし、顎紐47,47に直接面ファスナー等の係止部材が設けられ、顎紐47,47同士を所望の位置で直接結合させてもよい。また、連結部材48の結合面49には、面ファスナー以外の結合部材、たとえばフックやクリップ等が設けられていてもよい。
【0067】
[使用状態]
まず、この実施の形態1の防災ずきん10Aを、装着者100の頭部を保護するために使用する場合について下記(1)~(3)に説明する。
【0068】
[(1)展開状態の形成と頭部への装着]
装着者100は、折畳み状態の防災ずきん10Aの被覆部12を上下方向に広げる。具体的には、谷折りされた右側部材25の上側部分12aと下側部分12b、山折りされた左側部材26の上側部分12aと下側部分12bとを展開し、右側部材25も左側部材26も表出して平板状になった状態とする(図31の(c)参照。)さらに、装着者100は、被覆部12の右側部材25と左側部材26とを左右方向に展開する(図1図2参照)。このとき、被覆部12にビス97で固定されたハンモック31、ハンモック31にビス96で固定されたヘッドバンド30も左右に広がる。これにより、防災ずきん10Aは、図1図2に示すような展開状態となる。
【0069】
この状態で、図11に示すように、装着者100は防災ずきん10Aを頭部に被る。そして、図12に示すように装着者100は一対の顎紐47,47の連結部材48,48の結合面49,49同士を結合させる。さらに、図13に示すように連結部材48,48を基端側(図13の矢印C側)に引き上げる。これにより、顎紐47,47が装着者100の顎に締結される。そして、防災ずきん10Aのヘッドバンド30が装着者100の額部から側頭部を経て後頭部までに固定され、ハンモック31が装着者100の頭頂部近傍に固定される。
【0070】
これにより、防災ずきん10Aが装着者100の頭部に位置ずれや脱落が起きにくい状態で強固に固定される。そして、装着者100の頭部の頭頂部から前後方向にかけては頭頂保護本体部14が、頭頂部の周辺には周辺保護部16それぞれが配設されて、頭頂部とその周辺部に落下物が衝突した際の衝撃を緩和したり、突起物が衝突した際の頭部への貫通を防ぐ。
【0071】
なお、図11に示すように、頭頂保護本体部14の両側部には間隙部49aが形成されるが、間隙部49aの大きさ(装着者100の頭部から被覆部12の内側までの距離)は、周辺保護部16の厚さ49b以上となっているので、間隙部49aに突起物が衝突して貫通した場合も、その突起物が装着者100の頭部に到達する事態を抑止できる。
【0072】
[(2)ヘッドバンドの形状に基づく作用効果]
ここで、ヘッドバンド30の側頭当接部35の形状による装着時の作用効果を説明する。
【0073】
仮に、側頭当接部35の下側が図8に示す仮想下方縁部35cのように略水平であった場合は、側頭当接部35の中央部の幅WA2は、両側側の幅WBと略同一で剛性が高いので、側頭当接部35の板面に沿った方向に力を加えた場合、中央部を大きく湾曲させることが難しい。そのため、側頭当接部35の中央部を装着者100の頭部に沿って湾曲させた場合は、頭部の曲面に近い形状で湾曲させることが難しくなり、装着者100は良好なフィット感を得にくくなる。
【0074】
また、側頭当接部35の中央部が大きく湾曲しないことにより、図14の(a)に示すように、側頭当接部35の上方縁部35aが装着者100の側頭部に当接する。つまり、側頭当接部35は装着者100の頭部の上方側に当接する。これでは、ヘッドバンド30を深く被った感覚が得られにくいので、装着者100は良好なフィット感を得にくくなる。
【0075】
さらに、側頭当接部35の仮想下方縁部35cは装着者100の側頭部よりも大きく外側にはみ出てしまって仮想下方縁部35cと装着者100の側頭部との間には大きな隙間WC2が形成される。この状態で側頭当接部35を強く下方に引き下ろすと、大きな隙間WC2の外側の仮想下方縁部35cが装着者100の耳たぶに当たってしまい、装着者100が耳に痛みを感じてしまう。
【0076】
一方、図8に示すように、この実施の形態1のヘッドバンド30は側頭当接部35の下方縁部35bは両端側から中央に向けてそれぞれ上方に弧を描く形状を呈している。そして、側頭当接部35の中央部の幅WA1が両側側の幅WBよりも狭い。そのため、側頭当接部35の板面に沿った方向に力を加えた場合の湾曲の度合いは、幅WBを有する両側部よりも幅WA1の中央部の方が大きくなる。そして、側頭当接部35の中央部を曲面に沿って湾曲させた場合は、その曲面に近い形状で湾曲させることが容易である。
【0077】
そのため、側頭当接部35を装着者100の側頭部に沿って湾曲させた場合、図14の(b)に示すように、側頭当接部35の中央部は装着者100の側頭部の湾曲に近い形状に湾曲する。それゆえ、装着者100に良好なフィット感を与えることができる。
【0078】
また、側頭当接部35の中央部が大きく湾曲することにより、図14の(b)に示すように、側頭当接部35の上方縁部35aよりも下方が装着者100の側頭部に当接する。つまり、側頭当接部35は装着者100の頭部の下方側に当接する。それゆえ、ヘッドバンド30を深く被った感覚が得やすくなり、装着者100は良好なフィット感を得ることができる。
【0079】
さらに、図14の(b)に示すように、側頭当接部35の下方縁部35bと装着者100の側頭部との隙間WC1は隙間WC2(図14の(a)参照)よりも小さくなる。そのため、側頭当接部35を強く下方に引き下ろしても、隙間WC1が小さいので、下方縁部35bが装着者100の耳たぶに当たることはなく、装着者100が耳に痛みを感じる事態を抑止できる。一方、図8に示すように、側頭当接部35の両側側の幅WBは中央部の幅WA1より大きく形成されているので、側頭当接部35全体の剛性は確保できる。
【0080】
なお、右側部材33や左側部材34の側頭当接部35は、中央部が装着者100の頭部の湾曲に近い形状に容易に湾曲し、装着者100に良好なフィット感を与えられるものであれば、図8に図示する形状以外のどのような形状に構成されてもよい。例えば、側頭当接部35の下方縁部35bの中央部が上方に向けて凸状の段差状に形成されていたり、上方に向けて逆V字状に形成されていてもよい。また、側頭当接部35の板面の中央部にスリット等の孔が開口形成されていてもよい。あるいは、側頭当接部35の上方縁部35aの中央部が下方に弧を描く形状や、下方に向けて凸状の段差状や、下方に向けてV字状に形成されていてもよい。また、上記の目的を達成し得るものであれば、上記に例示した以外のどのような構成であってもよい。
【0081】
[(3)折畳み状態の形成と敷物としての使用]
次に、装着者100が被った防災ずきん10Aを敷物として使用する場合を説明する。
【0082】
装着者100は、図13に示すように連結部材48,48を先端側(図13の矢印D側)に引き下げて、防災ずきん10Aを頭から脱ぐ。次に、装着者100は、その防災ずきん10Aの内装材13と被覆部12の右側部材25と左側部材26とを左右方向に狭めて折り畳む。さらに、装着者100はこの防災ずきん10Aの被覆部12を上下方向に折り畳む。具体的には、右側部材25の上側部分12aと下側部分12bの境界部分を谷折りし、左側部材26の上側部分12aと下側部分12bの境界部分を山折りして折り畳む(図31の(c)参照。)。これにより、防災ずきん10Aは平面視略矩形の扁平な折畳み状態となる。この状態で、装着者100は防災ずきん10Aを床などに敷いて座ることができる。このとき、防災ずきん10Aは、被覆部12の柔軟性により装着者100が快適に座れる敷物としての機能を奏する。
【0083】
[作用効果]
以上示したとおり、この実施の形態1においては、硬質の部材で形成されて装着者100の少なくとも頭頂部に対向する位置に設けられる頭頂保護部11と、被覆部12とを備えたことにより、災害避難時などにおいて、展開状態で装着者100が防災ずきん10Aを被った際に、頭頂保護部11が装着者100の頭頂部を落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐと共に、被覆部12が装着者100の頭部全体を飛来物や熱から防ぐことができる。また、折畳み状態において、クッション性を有する被覆部12が敷物として使用可能な状態を形成することにより、災害避難の避難先などにおいて、装着者100が防災ずきん10Aを折り畳んで敷物として使用することで、床面の硬さや凹凸の有無等にかかわらず、快適に座り続けることができる。これにより、災害から避難する装着者100の頭部を守ると共に、装着者100の避難後の座姿勢を快適にさせることができる。
【0084】
この実施の形態1においては、被覆部12は、頭頂保護部11を覆って頭頂部全体を覆うように構成されたことにより、展開状態において、装着者100の頭頂部よりも下方全体を被覆部12で覆った状態を形成し、頭頂保護部11が装着者100の頭頂部を落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐと共に、被覆部12が装着者100の頭部全体を飛来物や熱から防ぐ状態を確実に形成できる。
【0085】
この実施の形態1においては、頭頂保護部11は、細長い柱状、又は、細長い板状に形成された頭頂保護本体部14を備え、頭頂保護本体部14は装着者100の頭頂部を含む前後方向に配設されることにより、装着者100の頭頂部とその前後に対応する位置に頭頂保護本体部14を装着することで、装着者100の頭頂部とその周辺部分を落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐことができ、装着者100の頭部を一層確実に守ることができる。
【0086】
この実施の形態1においては、頭頂保護部11は、頭頂保護本体部14の側方の装着者100の頭頂部の周辺部分に対向する位置に、頭頂保護本体部14に対して回動自在に設けられた周辺保護部16を備えたことにより、装着者100の頭頂部周辺の広い範囲に周辺保護部16を配置し、装着者100の頭頂部周辺の広い範囲を落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐことができ、装着者100の頭部を一層確実に守ることができる。また、周辺保護部16は、頭頂保護本体部14に対して回動自在に設けられることにより、展開状態において装着者100の頭頂部周辺の広い部分に位置するように展開すると共に、折畳み状態において敷物として使用可能な小さく折り畳まれた形状を容易に形成し、状態に応じた形状の変化を容易に行わせることができる。
【0087】
この実施の形態1においては、周辺保護部16は、頭頂保護本体部14に対して一対対向して設けられたことにより、装着者100の頭頂部周辺の、落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐ重要性の高い部分に周辺保護部16を配設し、装着者100の頭頂部周辺の広い範囲を落下物の衝撃や突起物の貫通からより確実に防ぐことができる。
【0088】
この実施の形態1においては、頭頂保護本体部14の下側には、装着者100の頭部に当接する位置に、頭頂保護本体部14よりも軟質の部材で形成された当接部15が設けられたことにより、外部から衝撃が加わった際の装着者100の頭部に加わる衝撃を当接部15の変形によって吸収し、装着者100の頭部を落下物の衝撃等からより高い確実性で保護することができる。
【0089】
[発明の実施の形態2]
図15乃至図20に、この発明の実施の形態2を示す。
【0090】
この実施の形態2の防災ずきん10Bは、頭頂保護部11、被覆部12、内装材13の構成が実施の形態1の防災ずきん10Aの頭頂保護部11、被覆部12、内装材13と相違する。
【0091】
[頭頂保護部、周辺保護部]
図17図18に示すように、頭頂保護部11は、頭頂保護本体部14と、当接部15と、周辺保護部16とを備えている。頭頂保護本体部14、当接部15は、実施の形態1の頭頂保護本体部14、当接部15と同じ構成である。図18に示すように、周辺保護部16は、前側保持部45a、後側保持部45bが設けられていない点が実施の形態1の周辺保護部16と相違する。
【0092】
この実施の形態2の周辺保護部16は、前側保持部45a、後側保持部45bが設けられていないため、「頭頂保護部」としての構成は備えているが、「ハンモック」としての構成を備えていない点が実施の形態1と相違する。
【0093】
[被覆部]
図15図16図19に示すように、この実施の形態2の被覆部12は、内側に略半円形のポケット90が設けられている。このポケット90は、右側部材25や左側部材26と同様の軟質の部材で形成されている。ポケット90は、周辺保護部16とほぼ同じ形状および大きさの略半円形に形成されており、内部に周辺保護部16が収容される。
【0094】
ポケット90に周辺保護部16を収容することにより、防災ずきん10Bを展開状態、折畳み状態のそれぞれに形状を変化させた際に、周辺保護部16の面部分を被覆部12の面部分に沿った位置に維持できる。また、装着者100が防災ずきん10Bを頭部に被った際に装着者100の頭部にはポケット90が当接することとなり、周辺保護部16の全体が硬質の部材で形成されている場合でも、周辺保護部16が頭部に直接当接して装着者100が違和感を覚える事態を防ぐことができる。
【0095】
[ハンモック]
この実施の形態2の防災ずきん10Bは、ハンモック31を備える。
【0096】
図20は、この実施の形態2のハンモック31の展開状態の図である。同図に示すように、ハンモックは、環状のハンモック本体部91と、ハンモック本体部91から前方側(前頭部側)に延伸した一対の帯状の前側保持部92,92と、ハンモック本体部91から後方側(後頭部側)に延伸した一対の帯状の後側保持部93,93とを備える。
【0097】
前側保持部92,92、後側保持部93,93には、それぞれ、略中央部のヘッドバンド保持孔94と、略先端側の被覆部保持孔95を備える。ヘッドバンド保持孔94はヘッドバンド30のハンモック保持孔38とあわせてビス96で締結され、被覆部保持孔95は、被覆部12のハンモック保持孔(図示せず)においてビス97で締結される。
【0098】
[ヘッドバンド]
ヘッドバンド30の構成は、実施の形態1と同じである。ただし、前側接合片部36、後側接合片部37が上方に突設されている。前側接合片部36、後側接合片部37のハンモック保持孔38はハンモック31のヘッドバンド保持孔94とあわせてビス96で締結される。
【0099】
上記以外の構成は、実施の形態1と同じである。
【0100】
[使用状態]
この実施の形態2の防災ずきん10Bは、被覆部12を左右に広げて折畳み状態から展開状態にすると、被覆部12のポケット90に収容された周辺保護部16が被覆部12と共に左右に広げられる。さらに、被覆部12にビス97で固定されたハンモック31と、ハンモック31にビス96で固定されたヘッドバンド30とが左右に広げられる(図15図16参照。)。また、防災ずきん10Bの展開状態の被覆部12を左右に折り畳むことで、ヘッドバンド30とハンモック31とが折り畳まれる。これにより、防災ずきん10Bは、装着者100が被覆部12の右側部材25と左側部材26とを左右方向に広げたり狭めたりするだけで簡単に展開状態や折畳み状態が形成される。また、この実施の形態2の防災ずきん10Bも、実施の形態1の防災ずきん10Aと同様に、折畳み状態において、被覆部12の柔軟性がクッションの機能を奏し、装着者100に快適な座り心地を与えることができる。
【0101】
[発明の実施の形態3]
図21乃至図27に、この実施の形態3を示す。
【0102】
図21図22図25図26に示すように、この実施の形態3の防災ずきん10Cにおいて、頭頂保護部50の頭頂保護本体部51は、端面が、上辺より下辺の大きい略台形の略柱状に構成されている。頭頂保護本体部51は、端面の周囲略全域に設けられた、ポリプロピレン等の硬質の部材で形成された周囲部材52と、周囲部材52の内部に設けられた、周囲部材52よりも軟質で弾性のある、発砲スチロール等の部材で形成された衝撃吸収部材53を有する。図25図26に示すように、周囲部材52は、開口部54と開口部54を開口させるヒンジ55とを有し、開口部54から内部に衝撃吸収部材53を充填できる。
【0103】
図23図26に示すように、頭頂保護本体部51の中央部下方には当接部56が設けられる。図26に示すように、防災ずきん10Cの当接部56は、端面が、上端が長く下端が短い略台形に形成されている。これにより、防災ずきん10Cを装着者100の頭部に装着した際の装着者100の頭部への衝撃を緩和しつつ、防災ずきん10Cを折畳み状態としたときに内装材13を収容するスペースを大きく確保できる。
【0104】
図22図24図27に示すように、防災ずきん10Cの周辺保護部57は、周辺保護本体部22に、下方に突出した平面視格子状の補強部58が設けられ、この補強部58の内側に、実施の形態1の衝撃吸収部23と同様の衝撃吸収部59が設けられている。補強部58により、周辺保護部57の飛来物による衝撃への耐性と突起物による貫通への耐性を高めることができる。
【0105】
また、図22図26に示すように、防災ずきん10Cの周辺保護部57は、頭頂保護本体部51の上方(図26に示すように、当接部56よりも上方)にヒンジ60によって回動可能に接合されている。周辺保護部57を頭頂保護本体部51の上方に接合したことにより、周辺保護部57と装着者100の頭部との距離を大きくし、突起物が貫通した際にその突起物が装着者100の頭部に到達する可能性を低減させることができる。
【0106】
なお、図22に示すように、この実施の形態3の防災ずきん10Cの被覆部12には、実施の形態2の防災ずきん10Bに存在する、周辺保護部16を収容するポケット90(図19参照)は設けられていない。防災ずきん10Cの上記以外の構成は、実施の形態2の防災ずきん10Bと同じである。
【0107】
以上示したとおり、この実施の形態3の防災ずきん10Cは、頭頂保護本体部51の全体を周囲部材52で覆い、周辺保護部57に補強部58を設け、周辺保護部57を頭頂保護本体部51の上方に配設したことにより、飛来した落下物等への衝撃耐性を高めることができ、飛来した突起物が貫通した際に突起物が頭部に到達する可能性を低減できる。
【0108】
[発明の実施の形態4]
図28及び図29にこの発明の実施の形態4を示す。なお、図28及び図29は、説明を簡略化するため、頭頂保護部61と被覆部63のみを記載し、他の構成の記載を省略してある。
【0109】
図28に示すように、この実施の形態4の防災ずきん10Dは、頭頂保護部61が防災ずきん10Dの上端において外部に露出し、この頭頂保護本体部62の下方に被覆部63が設けられている点が実施の形態1乃至3の防災ずきん10A,10B,10Cと相違する。
【0110】
頭頂保護部61の頭頂保護本体部62は、実施の形態3の頭頂保護本体部51と同様の構成である。一方、頭頂保護本体部62の下側に、一対の周辺保護部64が設けられている点は実施の形態3の頭頂保護本体部51と相違する。この周辺保護部64は、ポリプロピレン等、剛性の高い硬質の部材によって平面視略矩形に形成され、頭頂保護本体部62の前端から後端にわたって配設されている。周辺保護部64は、ヒンジ64aによって頭頂保護部61の下側に回動可能に取付けられている。周辺保護部64の下側には端面視略凹状の固定部65が形成され、この固定部65に被覆部63の上端側が挿入された状態で固定されている。
【0111】
図29に示すように、被覆部63の後側(装着者100の後頭部に対向する側)には端面視略V字形に折り返されたマチ部66が形成されている。このマチ部66は固定部65で固定されていない状態となっている。防災ずきん10Dの上記以外の構成は、実施の形態1乃至3の防災ずきん10A,10B,10Cと同じである。
【0112】
この実施の形態4の防災ずきん10Dは、頭頂保護部61が外部に露出していることにより、装着者100の頭頂部を落下物や突起物の飛来から高い強度で保護することができる。また、この実施の形態4の防災ずきん10Dは、周辺保護部64が頭頂保護本体部62の前端から後端にわたって配設されていることにより、装着者100の頭頂部周辺の広い範囲を落下物や突起物の飛来から保護することができる。また、この実施の形態の防災ずきん10Dは、被覆部63の後側にマチ部66が形成されていることにより、被覆部12の後側を左右方向に大きく開いて装着者100の頭部に装着できるので、装着者100の後頭部に対向する部分が開き切らずに装着の不具合が生じる事態を防ぎ、防災ずきん10Dを装着者100の頭部にフィットさせた状態で装着させることができる。
【0113】
[発明の実施の形態5]
図30及び図31にこの発明の実施の形態5を示す。なお、図30及び図31は、説明を簡略化するため、頭頂保護部71と被覆部12のみを記載し、他の構成の記載を省略してある。
【0114】
図30に示すように、この実施の形態5の防災ずきん10Eは、頭頂保護部71の頭頂保護本体部72の長手方向が装着者100の頭頂部の左右方向に延びた状態で装着者100の頭部に装着されている。
【0115】
この実施の形態5の防災ずきん10Eは、頭頂保護部71の上側略中央部と被覆部12の上側略中央部とが軸73を中心に回動可能に軸支されている。それ以外の構成は、この実施の形態1の防災ずきん10Aや実施の形態2の防災ずきん10Bと同様である。
【0116】
図30に示すように、この実施の形態5の防災ずきん10Eは、展開状態においては頭頂保護部71の頭頂保護本体部72が装着者100の頭部の左右方向に沿って対向するように装着される。一方、図31に示すように、折畳み状態においては、軸73を中心に頭頂保護部71を矢印R方向に90°回転させて(図31の(a))、頭頂保護本体部72が被覆部12の右側部材25と左側部材26の接合部に沿う位置にくるようにして(図31の(b))、被覆部12の右側部材25と左側部材26とを扁平な形状にする(図31の(c))。そして、被覆部12の右側部材25を上側部分12aと下側部分12bの境界で谷折りにし、左側部材26を上側部分12aと下側部分12bの境界で谷折りにして折り畳む(図31の(c))。これにより、折畳み状態を形成する。
【0117】
[発明の実施の形態6]
図32及び図33にこの発明の実施の形態6を示す。なお、図32及び図33は、説明を簡略化するため、頭頂保護部71と被覆部75のみを記載し、他の構成の記載を省略してある。
【0118】
図32に示すように、この実施の形態6の防災ずきん10Fは、頭頂保護部71の頭頂保護本体部72の長手方向が装着者100の頭頂部の左右方向に延びた状態で装着者100の頭部に装着される。ただし、この実施の形態6の頭頂保護部71は、実施の形態5とは異なり、被覆部75に対して回動させるための軸73(図31参照)を備えていない。
【0119】
図32に示すように、この実施の形態6の被覆部75は、前側部材76と後側部材77とを備える。前側部材76は比較的短い長さに形成され、後側部材77は比較的長い長さに形成されている。それ以外の構成は、この実施の形態1の防災ずきん10Aや実施の形態2の防災ずきん10Bと同様である。
【0120】
図33に示すように、この実施の形態6の防災ずきん10Fは、展開状態においては被覆部75の前側部材76が装着者100の頭頂部から額にかけてを覆い、後側部材77が装着者100の頭頂部から首の後ろまでを覆うように装着される(図33の(a))。
【0121】
一方、図33に示すように、折畳み状態においては、被覆部75の前側部材76と後側部材77とを閉じて平板状にして折り畳み、折畳み状態を形成する(図33の(b))。
【0122】
[発明の実施の形態7]
図34にこの発明の実施の形態7を示す。なお、図34は、説明を簡略化するため、防災ずきんの周辺保護部とハンモックとハンモック本体部のみに符号を付し、他の構成の符号の記載を省略してある。
【0123】
図34に示すとおり、この実施の形態7の防災ずきん10Gは、ハンモック31のハンモック本体部91の内側の直径L1が実施の形態2のハンモック31のハンモック本体部91の内側の直径よりも大きく形成されている。図34に示す、このハンモック本体部91の展開状態における内側の直径L1は、周辺保護部16の展開状態における両側部大きさL2よりも大きく形成されている。それ以外の構成は、この実施の形態2の防災ずきん10Bと同じである。
【0124】
図34に示すとおり、この実施の形態の防災ずきん10Gは、ハンモック本体部91の直径L1が周辺保護部16の両側部大きさL2よりも大きく、折畳み状態にしたときに環状のハンモック本体部91の内部に周辺保護部16が配置され、ハンモック本体部91と周辺保護部16が重なることがない。そのため、折畳み状態の防災ずきん10Gを薄く凹凸の少ない状態に構成し、嵩張りを低減させ座り心地の良さを提供することができる。
【0125】
[その他]
上記実施の形態1~実施の形態7のそれぞれの構成は、適宜複合させたり置換させたりすることができ、また、他の構成を追加させることもできる。
【0126】
上記実施の形態1~実施の形態7のそれぞれに示す防災ずきん10A,10B,10C,10D,10E,10F,10Gは、頭頂保護部11,50,61,71を備えていない態様で構成されていてもよい。
【0127】
上記各実施の形態においては、頭部保護具は防災ずきん10A~10Gとしたが、これに限定されず、例えば防火フード、防毒用フードや防塵用フード、工事用、スポーツ用、乗車用、警察用、消防用等各種用途用のヘルメット帽体等であってもよい。
【0128】
上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態に限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0129】
10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G・・・防災ずきん(頭部保護具)
11,50,61,71・・・頭頂保護部
12,63,75・・・被覆部
13・・・内装材
14,51,62,72・・・頭頂保護本体部
15,56・・・当接部
16・・・周辺保護部(ハンモック)
30・・・ヘッドバンド
31・・・ハンモック
45a・・・前側保持部(ハンモック)
45b・・・後側保持部(ハンモック)
47・・・顎紐
48・・・結合部材(顎紐固定部)
100・・・装着者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
【手続補正書】
【提出日】2022-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0083】
[作用効果]
以上示したとおり、この実施の形態1においては、軟質のクッション性を有する部材で形成されて、頭頂保護部11よりも下方側に延伸した状態を形成して装着者100の少なくとも頭部を被覆する被覆部12と、被覆部12の内側に設けられた、被覆部12を装着者100の頭部に固定して装着させる内装材13とを備えたことにより、災害避難時などにおいて、展開状態で装着者100が防災ずきん10Aを被った際に、展開状態で装着者100が防災ずきん10Aを被った際に、装着者100の頭部全体を飛来物や熱から防ぐ被覆部12を、内装材13によって装着者100の頭部に固定して、装着者100の身体や頭が動くことで被覆部12がずれてしまい、装着者100の頭部から脱げてしまったり、装着者100の目を覆って視界を遮ってしまったりするような事態を抑止して、装着者100の安全を継続的に確保できる。また、内装材13は、折畳み状態においてそれぞれ扁平な形状に変形して防災ずきん10Aを装着者100が座ることのできる形状に形成することにより、災害避難の避難先などにおいて、装着者100が防災ずきん10Aを折り畳んで敷物として使用することで、床面の硬さや凹凸の有無等にかかわらず、快適に座り続けることができる。これにより、防災ずきん10Aを災害から避難する装着者100の頭部に固定された状態で装着できると共に、装着者100の避難後の座姿勢を快適にさせることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
この実施の形態1においては、内装材13は、装着時に装着者100の額部から側頭部にかけて当接するヘッドバンド30を備えたことにより、防災ずきん10Aを装着者100の額部から側頭部にかけて締結させて、防災ずきん10Aを装着者100の頭部に固定された状態で装着することができる。これにより、防災ずきん10Aを災害から避難する装着者100の頭部に強固に固定された状態で装着することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
この実施の形態1においては、内装材13は、装着者100の顎部に位置して設けられた一対の顎紐47,47と、一対の顎紐47,47に設けられた、それぞれの顎紐47を装着者100の顎部に締結させる連結部材48とを備えたことにより、連結部材48を用いて顎紐47を装着者100の顎部に容易に締結することが可能となり、防災ずきん10Aの簡易で迅速な着脱を実現できる。また、顎紐47は、基端側が装着者100の頭部を覆う被覆部12の内側に配設されると共に、先端側が被覆部12を貫通して被覆部12の外側に配設され、顎紐47の被覆部12の外側に配設された部分に連結部材48が設けられて、連結部材48を顎紐47の先端側から基端側に引き寄せることで顎紐47を装着者100の顎部に固定させることにより、連結部材48を被覆部12の外側において顎紐47の先端側から基端側に引き寄せて、顎部近傍の被覆部12を装着者100の顎部周辺に密着させた状態で固定させると共に、内装材13を装着者100の頭部に固定させて防災ずきん10Aを固定させることができる。これにより、災害から避難する装着者100の顎部周辺の安全性を高めつつ、頭部に固定された状態で装着させることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
この実施の形態1においては、被覆部12よりも硬質の部材で形成されて装着者100の少なくとも頭頂部に対向する位置に設けられる頭頂保護部11を備えたことにより、頭頂保護部11によって装着者100の頭頂部を落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐことができる。これにより、災害から避難する装着者100の頭部の安全性をより高めることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
この実施の形態1においては、頭頂保護部11は、細長い柱状、又は、細長い板状に形成された頭頂保護本体部14を備え、頭頂保護本体部14は装着者100の頭頂部を含む前後方向、又は、頭頂部を含む左右方向に配設されることにより、装着者100の頭頂部とその前後、又は、装着者100の頭頂部とその左右に対応する位置に頭頂保護本体部14を装着することで、装着者100の頭頂部とその周辺部分を落下物の衝撃や突起物の貫通から防ぐことができ、装着者100の頭部を一層確実に守ることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
この実施の形態1においては、内装材13は、装着時に装着者100の頭頂部又は頭頂部近傍に当接するハンモック31を備えたことにより、防災ずきん10Aを装着者100の頭頂部分に確実に固定させることができて、装着者100の頭頂部の安全性を一層高めることができる。
この実施の形態1においては、ハンモック31は、装着者100の頭頂部又は頭頂部近傍に一対設けられて、それぞれが、展開状態と折畳み状態とにおける被覆部12の形状の変化に依存して回動可能に形成されていることにより、展開状態と折畳み状態のそれぞれにおいて、防災ずきん10A全体におけるハンモック31の位置を、それぞれの状態の目的に応じた位置に変化させることができる。これにより、防災ずきん10Aを災害から避難する装着者100の頭部に固定された状態で装着できると共に、装着者100の避難後の座姿勢を快適にさせることのできる防災ずきん10Aを、具体的な構成に基づいて実現できる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0129
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0129】
10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G・・・防災ずきん(頭部保護具)
11,50,61,71・・・頭頂保護部
12,63,75・・・被覆部
13・・・内装材
14,51,62,72・・・頭頂保護本体部
15,56・・・当接部
16・・・周辺保護部(ハンモック)
30・・・ヘッドバンド
31・・・ハンモック
45a・・・前側保持部(ハンモック)
45b・・・後側保持部(ハンモック)
47・・・顎紐
48・・・連結部材(顎紐固定部)
100・・・装着者