(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157560
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】排水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/02 20230101AFI20231019BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20231019BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20231019BHJP
【FI】
C02F1/02 B
C02F1/04 D
C02F1/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067543
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D034
4D624
【Fターム(参考)】
4D034AA26
4D034CA04
4D034CA12
4D624AA10
4D624AB02
4D624AB04
4D624BA02
4D624BA16
4D624BA17
4D624DA07
4D624DB06
(57)【要約】
【課題】従来のような微妙な調整が不要な排水処理装置を提供しようとするもの。
【解決手段】排水Wを注入する流動性加熱媒体1を有する熱分解槽2と、前記熱分解槽2で蒸発した成分を回収する液化槽3とを具備し、前記熱分解槽2で排水中の有機成分を熱分解すると共に水分を蒸発させるようにした。前記液化槽3で回収した成分を電解水と活性炭Cにより浄化するようにしてもよい。前記熱分解槽2で蒸発した固形成分を濾別して液化槽3に回収するようにしてもよい。前記活性炭Cを熱分解槽2で再生するようにしてもよい。前記排水を汚れ成分吸着媒体に含水させて熱分解槽2に供給するようにしてもよい。前記液化槽3からの揮発成分と熱分解槽2の熱源の燃焼ガスとを合流させるようにしてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水(W)を注入する流動性加熱媒体(1)を有する熱分解槽(2)と、前記熱分解槽(2)で蒸発した成分を回収する液化槽(3)とを具備し、前記熱分解槽(2)で排水中の有機成分を熱分解すると共に水分を蒸発させるようにしたことを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記液化槽(3)で回収した成分を電解水と活性炭(C)により浄化するようにした請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記熱分解槽(2)で蒸発した固形成分を濾別して液化槽(3)に回収するようにした請求項1又は2記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記活性炭を熱分解槽(2)で再生するようにした請求項2又は3記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記排水を汚れ成分吸着媒体に含水させて熱分解槽(2)に供給するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記液化槽(3)からの揮発成分と熱分解槽(2)の熱源の燃焼ガスとを合流させるようにした請求項1乃至5のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記流動性加熱媒体(1)に排水が接触した際に発生する水蒸気の体積膨張作用で熱分解槽(2)を攪拌するようにした請求項1乃至6のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記流動性加熱媒体(1)の拡散阻止手段を設けるようにした請求項1乃至7のいずれかに記載の排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、従来のような微妙な調整が不要な排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物理化学的に処理を行う排水処理方法に関する提案があった(特許文献1)。
この排水処理方法は、排水の汚れ成分の濃度を自己処理放流水により平準化して吸着剤槽に通す吸着濾過工程を有し、前記吸着濾過工程では排水の濃度を適正処理可能な濃度域になるように自己処理放流水をフィードバックして排水原水側に混合し、自己処理放流水の濃度が放流基準値の濃度に上昇するまでの時間帯と吸着剤を賦活再生する時間帯とが重複しないようにしており、吸着剤の量をできるだけ少ない量に最適化して処理することができるので、従来よりも適正処理をすることができる、というものである。
これに対し、微妙な調整が不要である排水処理装置に対する要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来のような微妙な調整が不要な排水処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の排水処理装置は、排水を注入する流動性加熱媒体を有する熱分解槽と、前記熱分解槽で蒸発した成分を回収する液化槽とを具備し、前記熱分解槽で排水中の有機成分を熱分解すると共に水分を蒸発させるようにしたことを特徴とする。
【0006】
この排水処理装置は、排水を注入する流動性加熱媒体を有する熱分解槽と、前記熱分解槽で蒸発した成分を回収する液化槽とを具備するので、熱分解槽の流動性加熱媒体に排水を注入して、ここで蒸発した成分を液化槽で回収することができる。
そして、前記熱分解槽で排水中の有機成分を熱分解すると共に水分を蒸発させるようにしたので、液化槽には熱分解された有機成分と蒸発した水分とを回収することができる。
【0007】
ここで、熱分解槽において排水中の有機成分は熱分解され分子鎖が分断されて微細化処理されることとなるので、一般的な排水処理のように排水毎に変動するCOD値に対応して酸化剤(次亜塩素酸等)の適正量を計算するような必要はない。
また、排水のCOD濃度がかなり高くても処理が可能であり、例えばCOD 80,000~100,000ppm のような高濃度な排水でも流動性があればよい。
【0008】
さらに、熱分解槽では排水を流動性加熱媒体に注入することにより加熱するようにしたので、流動性加熱媒体が疑似ヒーターのように機能して、空気(気体)などを介さずに直接 排水に接触し熱伝導し加熱し昇温することができる。よって、流動性加熱媒体という空気(酸素)が存しない状況下において、排水(被処理物)を(酸化を伴うことなく有機物からCO2が生成することなしに)熱分解することができる。
前記排水として、COD濃度が高い廃液(例えば COD 20,000ppm 以上)を例示することができる。COD成分としてベンゼン、トルエン、キシレン、スチレンなどを例示することができる。
【0009】
前記流動性加熱媒体として、溶融した液状金属を例示することができる。具体的には、流動性加熱媒体として、低融点合金・金属(液状金属)、溶融食塩(ソルトバス)、オイルバスなどを例示することが出来る。低融点金属として、錫(熱伝導率 64W/mK、融点232℃、沸点2,063℃、密度7.3g/cm3)、鉛(熱伝導率 31W/mK、融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(熱伝導率 82W/mK、融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(熱伝導率 88W/mK、融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)、ビスマス(熱伝導率 8W/mK、融点272℃、沸点1,564℃、密度10g/cm3)などを例示することができる。
【0010】
排水を流動性加熱媒体に注入する態様として、流動性加熱媒体の内部に注入する態様や、流動性加熱媒体の表面に注入する態様を例示することができる。流動性加熱媒体の内部に注入すると、排水粒子(被処理物)の外面の全面(四方八方)から熱を及ぼすことができる。
前記熱分解槽の温度として、450~900℃を例示することができる。このうち、例えば650℃に設定することができる。熱分解槽の熱源としてLNGバーナーを例示することができる。
前記排水中の有機成分を熱分解した成分として、メタン(選択的に回収してエネルギー利用してもよい)、水(H2O)、窒素(N2)を例示することができる。
前記液化槽として、(電解)スクラバー槽を例示することができる。
【0011】
(2)前記液化槽で回収した成分を電解水と活性炭により浄化するようにしてもよい。
このように、液化槽(例えば電解スクラバー槽)で回収した成分を電解水と活性炭により浄化するようにすると、熱分解槽において熱分解され分子鎖が分断された排水中の有機成分を、電解水による酸化分解や活性炭による濾過吸着によりさらに清浄化(例えばCODの低減)することができる。
【0012】
また、一般的な排水処理では高濃度排水(COD 20,000ppm等)に対する活性炭などの負担が大きいが、当初の排水が高濃度のものであっても、熱分解槽において熱分解されCOD値が低減しており、液化槽における(活性炭などの)処理の負担が大きく軽減しているものである。
前記電解水として、オゾン(O3)の共存下で電気分解して生成した酸素ラジカル(・O)含有水を例示することができる。
【0013】
(3)前記熱分解槽で蒸発した固形成分を濾別して液化槽に回収するようにしてもよい。
このように、熱分解槽で蒸発した固形成分を(フィルターで)濾別して液化槽に回収するようにすると、有機成分の炭化物や無機成分やss成分などの固形成分を除去した状態で液化槽に回収することができる。
【0014】
(4)前記活性炭を熱分解槽で再生するようにしてもよい。
このように、活性炭を熱分解槽で再生するようにすると、使用後の吸着平衡が立った活性炭を熱分解槽で賦活・再生(例えば約900℃×3時間)することができる。
【0015】
(5)前記排水を汚れ成分吸着媒体に含水させて熱分解槽に供給するようにしてもよい。
このように、排水を汚れ成分吸着媒体(例えば活性炭)に含水させて熱分解槽に供給するようにすると、汚れ成分吸着媒体により汚れ成分(例えばCOD)密度を高め水分率を減らした状態で(熱)効率良く汚れ成分を熱分解することができる。
前記汚れ成分吸着媒体として、活性炭が好ましいが、発泡ウレタン材、スポンジ体、布材なども例示することができる。
【0016】
(6)前記液化槽からの揮発成分と熱分解槽の熱源の燃焼ガスとを合流させるようにしてもよい。
このように、液化槽からの揮発成分と熱分解槽の熱源の燃焼ガスとを合流させるようにすると、高温の燃焼ガスにより揮発成分の水蒸気をドライなものとすることができる。
【0017】
(7)前記流動性加熱媒体(1)に排水が接触した際に発生する水蒸気の体積膨張作用で熱分解槽(2)を攪拌するようにしてもよい。
このように、流動性加熱媒体に排水が接触した際に発生する水蒸気の体積膨張作用で熱分解槽を攪拌するようにすると、高温下での水分の気化の膨張エネルギーを熱分解槽の攪拌に利用することができる。
【0018】
(8)前記流動性加熱媒体(1)の拡散阻止手段を設けるようにしてもよい。
このように、流動性加熱媒体の拡散阻止手段を設けるようにすると、高温下での水分の気化の膨張エネルギーによる流動性加熱媒体の飛散を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
一般的な排水処理のように排水毎に変動するCOD値に対応して酸化剤(次亜塩素酸等)の適正量を計算するような必要はないので、従来のような微妙な調整が不要な排水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の排水処理装置の実施形態を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態の排水処理装置は、排水Wを注入する流動性加熱媒体1を有する熱分解槽2と、前記熱分解槽2で蒸発した成分を回収する液化槽3とを具備し、前記熱分解槽2で排水中の有機成分を熱分解すると共に水分を蒸発させるようにした。
【0022】
前記排水Wとして、COD濃度が高い廃液(COD 24,800ppm)を処理した。COD成分としてベンゼン、トルエン、キシレン、スチレンが含有されていた。
前記流動性加熱媒体1として、溶融した低融点金属の錫(熱伝導率 64W/mK、融点232℃、沸点2,063℃、密度7.3g/cm3)を用いた。
【0023】
排水Wを流動性加熱媒体1に注入する態様として、流動性加熱媒体1の内部に注入するようにし、排水粒子の外面の全面の四方八方から熱を及ぼすことができた。
前記熱分解槽2の温度として650℃に設定した。熱分解槽2の熱源としてLNGバーナーBを用いた。前記液化槽3として電解スクラバー槽を用いた。
【0024】
前記液化槽3(電解スクラバー槽)で回収した成分を電解水と活性炭Cにより浄化するようにした。したがって、熱分解槽2において熱分解され分子鎖が分断された排水中の有機成分を、電解水による酸化分解や活性炭による濾過吸着によりさらに清浄化(CODの低減)することができた。
また、当初の排水が高濃度のであっても、熱分解槽2において熱分解されCOD値が低減しており、液化槽3における活性炭の処理の負担が大きく軽減した。
【0025】
前記電解水として、電解機構Eによりオゾン(O3)の共存下で電気分解して生成した酸素ラジカル(・O)含有水を用いた。酸素ラジカル(・O)含有水は、液化槽3と電解機構Eとの間を循環するようにしている。
熱分解槽2の流動性加熱媒体1上に溜まった有機成分の炭化物や無機成分やss成分などの固形成分は、サイクロン4によりに回収するようにした。
【0026】
次に、この実施形態の排水処理装置の使用状態を説明する。
この排水処理装置は、排水Wを注入する流動性加熱媒体1を有する熱分解槽2と、前記熱分解槽2で蒸発した成分を回収する液化槽3とを具備するので、熱分解槽2の流動性加熱媒体1に排水を注入して、ここで蒸発した成分を液化槽3で回収することができた。
そして、前記熱分解槽2で排水中の有機成分を熱分解すると共に水分を蒸発させるようにしたので、液化槽3には熱分解された有機成分と蒸発した水分とを回収することができた。
【0027】
熱分解槽2において排水中の有機成分は熱分解され分子鎖が分断されて微細化処理されることとなるので、一般的な排水処理のように排水毎に変動するCOD値に対応して酸化剤の適正量を計算するような必要はなく、従来のような微妙な調整が不要であった。
さらに、熱分解槽2では排水Wを流動性加熱媒体1に注入することにより加熱するようにしたので、流動性加熱媒体1が疑似ヒーターのように機能して、空気(気体)などを介さずに直接 排水に接触し熱伝導し加熱し昇温することができる。よって、流動性加熱媒体1という空気(酸素)が存しない状況下において、排水(被処理物)を酸化を伴うことなく有機物からCO2が生成することなしに熱分解することができた。
【実施例0028】
使用済みの活性炭を熱分解槽で再生するようにした。したがって、使用後の吸着平衡が立った活性炭を熱分解槽で賦活・再生(約900℃×3時間)することができた。
排水としてCOD濃度が高い廃液(COD 26,400ppm)を汚れ成分吸着媒体(活性炭)に含水させて熱分解槽に供給するようにした。したがって、汚れ成分吸着媒体により汚れ成分(COD)密度を高め水分率を減らした状態で熱効率良く汚れ成分を熱分解することができた。