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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015758
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/02 20060101AFI20230125BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20230125BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20230125BHJP
   B28D 7/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C03B33/02
C03B17/06
B28D5/00 Z
B28D7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119718
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】奥本 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】山鹿 祐弥
【テーマコード(参考)】
3C069
4G015
【Fターム(参考)】
3C069AA03
3C069BA01
3C069CA11
3C069EA01
4G015FA01
4G015FA03
4G015FA04
4G015FB01
4G015FC01
4G015FC04
4G015FC10
4G015FC14
(57)【要約】
【課題】第一切断工程から第二切断工程への切り替えを円滑に行う。
【解決手段】ガラス板の製造方法につき、成形されつつ搬送されるガラスリボンGを第一切断装置2により切断してガラス板を切り出す第一切断工程と、第一切断装置2の非稼働時にガラスリボンGを第二切断装置3により切断する第二切断工程と、第一センサ30によりガラスリボンGの有無を検出する第一検出工程と、を備え、第一検出工程での検出結果に基づいて、第一切断工程を第二切断工程に切り替えるための切り替え工程を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形されつつ搬送されるガラスリボンを第一切断装置により切断してガラス板を切り出す第一切断工程と、前記第一切断装置の非稼働時に前記ガラスリボンを第二切断装置により切断する第二切断工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、
センサによりガラスリボンの有無を検出する第一検出工程を備え、前記第一検出工程での検出結果に基づいて、前記第一切断工程を前記第二切断工程に切り替えるための切り替え工程を行うことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記センサは、前記ガラスリボンの幅方向複数箇所にそれぞれ対応して設置される請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記センサは、前記ガラスリボンの少なくとも幅方向両端部及び幅方向中間部にそれぞれ対応して設置され、前記第一検出工程での検出結果から、ガラスリボンの幅方向両端部の何れか一方が成形されつつ搬送されている第一の状態と、ガラスリボンの幅方向両端部の何れか一方及び幅方向中間部が成形されつつ搬送されている第二の状態と、ガラスリボンの幅方向両端部が成形されつつ搬送されている第三の状態と、ガラスリボンの幅方向全部が成形されつつ搬送されている第四の状態とが識別可能である請求項1または2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記第一検出工程では、前記センサが前記第一切断装置及び前記第二切断装置よりも搬送方向の上流側でガラスリボンの有無を検出する請求項1~3の何れかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記切り替え工程では、前記第一検出工程での検出結果に基づいて、前記第二切断装置の構成要素を退避エリアから切断エリアに進出させる請求項1~4の何れかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記第二切断装置の構成要素は、前記第二切断装置の全ての構成要素の中の一部の構成要素であり且つ前記第二切断装置による切断処理を開始する際に前記全ての構成要素の中で最も早期に進出する構成要素である請求項5に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記センサは、前記ガラスリボンの少なくとも幅方向両端部にそれぞれ対応して設置され、前記最も早期に進出する構成要素は、前記第二切断工程での切断時に前記ガラスリボンの幅方向両端部をそれぞれ保持するために用いる保持部材の何れか一方または双方であり、前記センサにより有ることが検出されたガラスリボンの幅方向端部に対応する保持部材を進出させ、前記センサにより無いことが検出されたガラスリボンの幅方向端部に対応する保持部材を進出させない請求項5又は6に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記第一検出工程で用いるセンサよりも搬送方向の下流側の位置で、前記ガラスリボンの少なくとも幅方向両端部にそれぞれ対応して設置されたセンサによりガラスリボンの有無を検出する第二検出工程をさらに備え、それらセンサの検出結果に基づいて、前記切り替え工程で進出させた前記第二切断装置の構成要素を用いたガラスリボンの切断処理を行う請求項5~7の何れかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項9】
前記第二切断装置の構成要素は、ガラスリボンの切断に用いる切断刃を含み、前記第二検出工程での検出結果に基づいて、前記切断刃のガラスリボンへの押し付けを行わせる請求項8に記載のガラス板の製造方法。
【請求項10】
前記第二切断装置の構成要素は、ガラスリボンに応力を付与する押圧部材を含み、前記第二検出工程での検出結果に基づいて、前記押圧部材によるガラスリボンへの応力の付与を行わせる請求項9に記載のガラス板の製造方法。
【請求項11】
成形されつつ搬送されるガラスリボンを切断してガラス板を切り出す第一切断装置と、前記第一切断装置の非稼働時に前記ガラスリボンを切断する第二切断装置と、を備えるガラス板の製造装置であって、
ガラスリボンの有無を検出するセンサを備え、前記センサの検出結果に基づいて、前記第一切断装置の稼働を前記第二切断装置の稼働に切り替えるための切り替え処理を行うように構成したことを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造技術に係り、詳しくは、成形されつつ搬送されるガラスリボンを切断してガラス板を切り出す第一切断と、第一切断を行わない時にそのガラスリボンを切断する第二切断とを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板製造の分野では、成形ゾーンで成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンを所定長さ毎に幅方向に切断することでガラス板を順々に切り出す第一切断工程を行うことが公知となっている。この場合、ガラス板製造設備の溶融炉等は連続稼働されるのが通例であるため、第一切断工程を行うための装置がメンテナンス時などで使用できなくても、ガラスリボンは成形され続けることが一般的である、そのため、第一切断工程を行わない場合でも、成形され続けるガラスリボンを切断して回収する必要がある。
【0003】
このような要請に応じるため、例えば特許文献1には、第一切断工程を行わない場合に、当該工程での装置とは構成が異なる装置を使用してガラスリボンを切断する第二切断工程を行うことが開示されている。この第二切断工程で使用される装置は、ガラスリボンを保持する保持部材と、ガラスリボンを保持部材により保持した状態で該ガラスリボンに応力を付与する押圧部材と、ガラスリボンの応力の付与部にけがき線を刻設するけがき部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国実用新案公告第205493369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のガラス板の製造方法では、例えば、第一切断工程でガラスリボンを切断する際に、切断不良等が発生すると、クラックが搬送方向に伸展してガラスリボンが破損する場合がある。また、ガラスリボンを搬送するローラによってガラスリボンが傷付き、ガラスリボンが破損する場合がある。これらの破損の中には、成形されて搬送されているガラスリボンが完全に割れて無くなってしまう割れが存在する。ガラスリボンが破損した場合には、第一切断工程を中断し、第二切断工程を開始可能な状態とする。ガラスリボンが破損した後にガラスリボンの成形が再開された場合には、第二切断工程を開始する。このような第一切断工程から第二切断工程への切り替えは、従来、作業者が介入して行っていた。そのため、円滑な切り替えを行うことが困難であった。
【0006】
以上の観点から、本発明は、第一切断工程から第二切断工程への切り替えを円滑に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、成形されつつ搬送されるガラスリボンを第一切断装置により切断してガラス板を切り出す第一切断工程と、前記第一切断装置の非稼働時に前記ガラスリボンを第二切断装置により切断する第二切断工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、センサによりガラスリボンの有無を検出する第一検出工程を備え、前記第一検出工程での検出結果に基づいて、前記第一切断工程を前記第二切断工程に切り替えるための切り替え工程を行うことに特徴づけられる。
【0008】
このような構成によれば、第一切断工程を第二切断工程に切り替えるための切り替え工程が、ガラスリボンの有無を検出するセンサの検出結果に基づいて行われるため、その切り替えを円滑に行うことができる。また、センサによりガラスリボンの有無を検出することで、例えばガラスリボンの成形の再開を正確に知得でき、第二切断工程を適切な時期に開始できる。
【0009】
この構成において、前記センサは、前記ガラスリボンの幅方向複数箇所にそれぞれ対応して設置されるようにしてもよい。
【0010】
このようにすれば、複数個のセンサによって幅方向複数箇所でガラスリボンの有無を検出できるため、破損時のガラスリボンの形状や、破損後の成形再開時におけるガラスリボンの成形状態などを緻密に把握できる。
【0011】
以上の構成において、前記センサは、前記ガラスリボンの少なくとも幅方向両端部及び幅方向中間部にそれぞれ対応して設置され、前記第一検出工程での検出結果から、ガラスリボンの幅方向両端部の何れか一方が成形されつつ搬送されている第一の状態と、ガラスリボンの幅方向両端部の何れか一方及び幅方向中間部が成形されつつ搬送されている第二の状態と、ガラスリボンの幅方向両端部が成形されつつ搬送されている第三の状態と、ガラスリボンの幅方向全部が成形されつつ搬送されている第四の状態とが識別可能であってもよい。
【0012】
このようにすれば、破損後の成形再開時におけるガラスリボンの成形過程及び搬送過程を、上記列挙した四種の状態に区別して知得できるため、切り替え工程や第二切断工程を四種の状態に対応させて適切に行うことができる。
【0013】
以上の構成において、前記第一検出工程では、前記センサが前記第一切断装置及び前記第二切断装置よりも搬送方向の上流側でガラスリボンの有無を検出するようにしてもよい。
【0014】
このようにすれば、破損によってガラス片などが落下することをセンサにより確認した上で、第一切断装置及び第二切断装置に対して適切な対策を講じることができる。また、破損後の成形再開時におけるガラスリボンの成形状態などを確認した上で、切り替え工程や第二切断工程を適正に行うことができる。
【0015】
この構成において、前記切り替え工程では、前記第一検出工程での検出結果に基づいて、前記第二切断装置の構成要素を退避エリアから切断エリアに進出させるようにしてもよい。
【0016】
ここで、上記の「切断エリア」とは、第二切断装置がガラスリボンの切断処理を行うエリアを意味する。また、上記の「退避エリア」とは、第二切断装置が切断エリアから退避したエリア(例えば、ガラスリボンの搬送経路から500mm~2000mmだけ離間したエリア)を意味する。さらに、上記の「第二切断装置の構成要素」とは、第二切断装置の全ての構成要素であってもよく、一部の構成要素であってもよい。
【0017】
このようにすれば、ガラスリボンの破損後、切断エリアにガラス片などが落下しなくなったことを確認した上で、第二切断装置の構成要素を退避エリアから切断エリアに進出させることができる。これにより、第二切断装置によってガラスリボンの切断処理を開始する時に、第二切断装置の構成要素にガラス片などが衝突する等の不具合を回避できる。したがって、退避エリアは、上述のガラス片などが落下してこないエリアであることが好ましい。また、ここでの構成によれば、破損後の成形再開時におけるガラスリボンの成形状態などを確認した上で、第二切断装置の構成要素を適切に進出させることができる。
【0018】
この構成において、前記第二切断装置の構成要素は、前記第二切断装置の全ての構成要素の中の一部の構成要素であり且つ第二切断装置による切断処理を開始する際に前記全ての構成要素の中で最も早期に進出する構成要素であってもよい。
【0019】
このようにすれば、前記最も早期に進出する構成要素をガラス片の落下などから保護することで、これに遅れて進出する他の構成要素も確実に保護することができる。また、ここでの構成によれば、破損後の成形再開時におけるガラスリボンの成形状態などを確認した上で、前記最も早期に進出する構成要素を適切に動作させることができる。
【0020】
この構成において、前記センサは、前記ガラスリボンの少なくとも幅方向両端部にそれぞれ対応して設置され、前記最も早期に進出する構成要素は、前記第二切断工程での切断時に前記ガラスリボンの幅方向両端部をそれぞれ保持するために用いる保持部材の何れか一方または双方であり、前記センサにより有ることが検出されたガラスリボンの
+幅方向端部に対応する保持部材を進出させ、前記センサにより無いことが検出されたガラスリボンの幅方向端部に対応する保持部材を進出させないようにしてもよい。
【0021】
このようにすれば、ガラスリボンの少なくとも幅方向両端部にそれぞれ対応してセンサが設置されるため、一のセンサによりガラスリボンの一方の幅方向端部の有無が検出され、他のセンサによりガラスリボンの他方の幅方向端部の有無が検出される。そして、有ることが検出されたガラスリボンの幅方向端部に対応する箇所では、破損によるガラス片などの落下が生じないため、当該幅方向端部に対応する保持部材を進出させても、ガラス片などがその保持部材に衝突する等の不具合は生じない。一方、無いことが検出されたガラスリボンの幅方向端部に対応する箇所では、破損によるガラス片などの落下が生じるため、当該幅方向端部に対応する保持部材を進出させないことで、ガラス片などがその保持部材に衝突する等の不具合を回避できる。また、ここでの構成によれば、有ることが検出されたガラスリボンの幅方向端部は、継続して成形されつつ搬送されるため、その幅方向端部を切断しておく必要がある。そこで、当該幅方向端部に対応する保持部材を進出させることで、当該幅方向端部を適正な長さに切断することができる。一方、無いことが検出されたガラスリボンの幅方向端部は、その後に成形されて有ることが検出されるまで放置しておけばよいため、当該幅方向端部に対応する保持部材を進出させなくて済む。
【0022】
前述の構成において、前記第一検出工程で用いるセンサよりも搬送方向の下流側の位置で、前記ガラスリボンの少なくとも幅方向両端部にそれぞれ対応して設置されたセンサによりガラスリボンの有無を検出する第二検出工程をさらに備え、それらセンサの検出結果に基づいて、前記切り替え工程で進出させた前記第二切断装置の構成要素を用いたガラスリボンの切断処理を行うようにしてもよい。
【0023】
このようにすれば、第二切断装置の構成要素(上述の保持部材を含む)を用いたガラスリボンの切断処理が、既述の第一検出工程での検出結果に加え、第二検出工程での検出結果も取り入れて的確に行われる。
【0024】
この構成において、前記第二切断装置の構成要素は、ガラスリボンの切断に用いる切断刃を含み、前記第二検出工程での検出結果に基づいて、前記切断刃のガラスリボンへの押し付けを行わせるようにしてもよい。
【0025】
このようにすれば、切断刃と上述の保持部材等とを用いてガラスリボンの切断処理をより一層的確に行うことができる。
【0026】
この構成において、前記第二切断装置の構成要素は、ガラスリボンに応力を付与する押圧部材を含み、前記第二検出工程での検出結果に基づいて、前記押圧部材によるガラスリボンへの応力の付与を行わせるようにしてもよい。
【0027】
このようにすれば、切断刃と押圧部材と上述の保持部材等とを用いてガラスリボンの切断処理をさらに一層的確に行うことができる。
【0028】
上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、成形されつつ搬送されるガラスリボンを切断してガラス板を切り出す第一切断装置と、前記第一切断装置の非稼働時に前記ガラスリボンを切断する第二切断装置と、を備えるガラス板の製造装置であって、ガラスリボンの有無を検出するセンサを備え、前記センサの検出結果に基づいて、前記第一切断装置の稼働を前記第二切断装置の稼働に切り替えるための切り替え処理を行うように構成したことに特徴づけられる。
【0029】
これによれば、この製造装置と実質的に構成が同一である既述の製造方法と同一の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、第一切断工程から第二切断工程への切り替えを円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置の全体構成を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置の要部を示す概略正面図である。
図3】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置における第一切断装置の作用を示す概略側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置における第二切断装置を示す拡大概略平面図である。
図5】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置における第二切断装置を示す拡大概略平面図である。
図6】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置における第二切断装置を示す拡大側面図である。
図7】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置における第二切断装置の作用を示す拡大概略側面図である。
図8】本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の態様を示す要部概略正面図である。
図9】本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の態様を示す要部概略正面図である。
図10図10(a)、(b)、(c)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置を使用してガラスリボンを切断する態様を示す概略正面図である。
図11図11(a)、(b)、(c)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置を使用してガラスリボンを切断する態様を示す概略正面図である。
図12図12(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置を使用してガラスリボンを切断する態様を示す概略正面図である。
図13図13(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置を使用してガラスリボンを切断する態様を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係るガラス板の製造装置の全体構成を示す側面図である。同図に示すように、ガラス板の製造装置は、主たる構成要素として、ガラスリボンGの処理装置1と、第一切断装置2と、第二切断装置3と、を備えている。なお、以下の説明では、ガラスリボンGの第二主面Gb側(図1の矢印X1側)を「前側」とし、第一主面Ga側(図1の矢印Y1側)を「後側」とする。また、本実施形態では、ガラスリボンGの搬送方向の下流側が「下方(好ましくは鉛直下方)」になり、上流側が「上方(好ましくは鉛直上方)」になる。
【0034】
処理装置1は、ガラスリボンGを連続成形する成形ゾーン11と、ガラスリボンGを熱処理(徐冷)する熱処理ゾーン12と、ガラスリボンGを室温付近まで冷却する冷却ゾーン13と、成形ゾーン11、熱処理ゾーン12及び冷却ゾーン13のそれぞれに上下複数段に設けられたローラ対Rからなる搬送装置14と、を備えている。
【0035】
成形ゾーン11及び熱処理ゾーン12は、ガラスリボンGの搬送経路の周囲が壁部で囲まれた炉により構成されており、ガラスリボンGの温度を調整するヒータ等の加熱装置が炉内の適所に配置されている。一方、冷却ゾーン13は、ガラスリボンGの搬送経路の周囲が壁部に囲まれることなく常温の外部雰囲気に開放されており、ヒータ等の加熱装置は配置されていない。
【0036】
成形ゾーン11の内部空間には、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスGmからガラスリボンGを成形する成形体15が配置されている。成形体15に供給された溶融ガラスGmは、成形体15の頂部15aに形成された溝部(図示略)から溢れ出る。この溢れ出た溶融ガラスGmは、成形体15の断面楔状を呈する両側面15bを伝って下端で合流する。これにより、板状のガラスリボンGが連続成形される。この連続成形されるガラスリボンGは、縦姿勢(好ましくは鉛直姿勢)で下方に送られる。
【0037】
熱処理ゾーン12の内部空間は、下方に向かって所定の温度勾配を有している。縦姿勢のガラスリボンGは、熱処理ゾーン12の内部空間を下方に向かって移動するに連れて、温度が低くなるように熱処理(徐冷)される。この熱処理により、ガラスリボンGの内部歪が低減される。熱処理ゾーン12の内部空間の温度勾配は、例えば熱処理ゾーン12の壁部内面に設けた加熱装置により調整される。
【0038】
搬送装置14を構成する複数のローラ対Rは、縦姿勢のガラスリボンGの幅方向両端部を表裏両側から挟持する。成形ゾーン11に配置された最上部のローラ対Rは、冷却ローラである。なお、熱処理ゾーン12の内部空間などでは、複数のローラ対Rの中に、ガラスリボンGの幅方向端部を挟持しないものが含まれていてもよい。つまり、ローラ対Rの対向間隔をガラスリボンGの幅方向両端部の厚みよりも大きくし、ローラ対Rの間をガラスリボンGが通過するようにしてもよい。
【0039】
本実施形態では、処理装置1によって製造されたガラスリボンGの幅方向両端部は、成形過程の収縮等の影響により、幅方向中央部に比べて厚みが大きい部分(以下、「耳部」ともいう)を有する。
【0040】
第一切断装置2は、処理装置1の下方で縦姿勢のガラスリボンGを所定の長さ毎に幅方向に切断することにより、ガラスリボンGからガラス板を順々に切り出すように構成されている。ガラス板は、後の工程で耳部が除去されて1枚又は複数枚の製品ガラス板が採取されるガラス原板(マザーガラス板)となる。ここで、幅方向は、ガラスリボンGの長手方向(搬送方向)と直交する方向であり、本実施形態では実質的に水平方向と一致する。なお、以下の説明では、図2に示すようにガラスリボンGを後側から視た場合、同図の矢印X2側を幅方向における左側とし、同図の矢印Y2側を幅方向における右側とする。
【0041】
図1及び図2に示すように、第一切断装置2は、折割装置22を備えている。この折割装置22は、スクライブ線形成位置P1の下方に設けられた折割位置P2で、スクライブ線Sに沿ってガラスリボンGを折り割ってガラス板を切り出す装置である。本実施形態では、折割装置22は、スクライブ線Sが形成された領域に第二主面Gb側から当接する折割部材23と、折割位置P2よりも下方でガラスリボンGの下部領域を把持する把持機構24と、を備えている。
【0042】
折割部材23は、ガラスリボンGの幅方向の全域又は一部と接触する接触面(側面視が円弧状をなす)を有する板状体(定盤)から構成されている。折割部材23の接触面は、平面視が幅方向で湾曲した曲面であってもよい。
【0043】
把持機構24は、ガラスリボンGの幅方向両端部における上下方向の複数箇所に配設されたチャック25と、それら複数のチャック25を幅方向両端部でそれぞれ保持するアーム26(図2参照)とを備えている。なお、チャック25は、ガラスリボンGを負圧吸着によって保持するなどの他の保持形態に変更してもよい。
【0044】
第一切断装置2の上方には、スクライブ線形成装置27が配備されている。このスクライブ線形成装置27は、スクライブ線形成位置P1で、処理装置1から降下してきた縦姿勢のガラスリボンGの第一主面Gaにスクライブ線Sを形成する装置である。本実施形態では、スクライブ線形成装置27は、ガラスリボンGの第一主面Gaにその幅方向に沿ってスクライブ線Sを形成するホイールカッター28と、ホイールカッター28に対応する位置でガラスリボンGの第二主面(第一主面Gaの反対側の面)Gbを支持する支持部材29(例えば支持バーや支持ローラ)と、を備えている。なお、スクライブ線Sは、レーザーの照射等によって形成してもよい。
【0045】
図3に示すように、第一切断装置2及びスクライブ線形成装置27は、ガラスリボンGの搬送経路GSを含む切断エリアE1(以下、第一切断エリアE1という)と、ガラスリボンGの搬送経路GSから前後両方にそれぞれ離間した退避エリアF1(以下、第一退避エリアF1という)との間を移動する構成とされている。ここで、第一退避エリアF1は、ガラスリボンGの搬送経路GSから前後両方にそれぞれ所定距離Laだけ離間している。この所定距離Laは、例えば200~1000mmであり、好ましくは300~600mmである。本実施形態では、第一切断装置2は、折割部材23及び把持機構24の何れもが第一切断エリアE1から前方の第一退避エリアF1に対してのみ移動する構成である。また、スクライブ線形成装置27は、支持部材29が第一切断エリアE1から前方の第一退避エリアF1に対して移動し、ホイールカッター28が第一切断エリアE1から後方の第一退避エリアF1に対して移動する構成である。
【0046】
さらに、第一切断装置2の上方には、ガラスリボンGの有無(状態)を検出する第一センサ30が一定位置に配備されている(図1及び図2参照)。図例では、第一センサ30は、ガラスリボンGの搬送経路GSの後方に配置されているが、当該搬送経路GSの前方に配置されていてもよい。また、第一センサ30は、スクライブ線形成装置27よりも上方に配置されているが、第一切断装置2とスクライブ線形成装置27との間に配置されていてもよい。
【0047】
この場合、第一センサ30は、図2に示すように、ガラスリボンGの幅方向複数箇所に対応して複数個が設置されている。本実施形態では、ガラスリボンGの幅方向両端部に対応する箇所と幅方向中央部に対応する箇所とに計三個の第一センサ30が設置されている。これらの第一センサ30は、幅方向に一直線に沿うように図外の設置部材に固定されている。第一センサ30としては、レーザーセンサ、超音波センサ、またはサーモセンサなどが使用される。なお、第一センサ30は、ガラスリボンGの有無を常時検出するものである。
【0048】
第二切断装置3は、図1及び図2に示すように、第一切断装置2の下方に配置され、第一切断装置2の非稼働時(例えばメンテナンス時やガラスリボンGの成形再開時)に、成形ゾーン11で成形されつつ下方に搬送されるガラスリボンGを切断するものである。
【0049】
第二切断装置3は、ガラスリボンGの後方に配備された枠組体からなる本体フレーム31を備えている。本体フレーム31の前端部には、上方から順に、一対の保持装置32と、一対の切り込み装置33と、応力付与装置34とが取り付けられている。
【0050】
一対の保持装置32は、ガラスリボンGの幅方向両端部にそれぞれ対応して配置された保持部材36を備え、この一対の保持部材36はそれぞれ、回転軸37(図4及び図5参照)の廻りに回動可能とされている。したがって、一対の保持部材36はそれぞれ、図4に示すようにガラスリボンG幅方向両端部から外側に離間して前後方向に延びた状態(図6に実線で示す状態)と、図5に示すようにガラスリボンGの第二主面Gbを保持するために左右方向に延びた状態(図6に一点鎖線で示す状態)とに変化可能である。
【0051】
さらに、一対の保持部材36はそれぞれ、図6に示すように、前後方向に長尺なスライドアーム36aの前端に回転軸37を介して連結されている。この一対のスライドアーム36aは、本体フレーム31の上端部にそれぞれ固定されたガイド部材36b上に前後方向にスライド可能に保持されている。そして、一対の保持部材36はそれぞれ、図7に示すように、ガラスリボンGの搬送経路GSを含む切断エリアE2(以下、第二切断エリアE2という)と、ガラスリボンGの搬送経路GSから後方に離間した退避エリアF2(以下、第二退避エリアF2という)との間を移動する構成とされている。ここで、第二退避エリアF2は、ガラスリボンGの搬送経路GSから後方に所定距離Lbだけ離間している。この所定距離Lbは、例えば500~2000mmであり、好ましくは700~1500mmであって、上述の所定距離Laよりも長くなっている。これらの保持部材36は、同一高さ位置に保持され、各々が独立して移動することが可能である。この場合、個々の保持部材36の第二退避エリアF2から第二切断エリアE2への進出は、第一センサ30の検出結果に基づいて行われる。また、個々の保持部材36の第二切断エリアE2から第二退避エリアF2への退避も、第一センサ30の検出結果に基づいて行われる。なお、本実施形態では、個々の保持部材36(個々のスライドアーム)の前後方向の移動は、図外の駆動手段(例えばエアシリンダやボールねじ機構など)の動作によって行われ、駆動手段の動作は、第一センサ30からの信号に基づいて制御される。
【0052】
一対の切り込み装置33は、ガラスリボンGの幅方向両端部にそれぞれ対応して配置された回転刃38を備え、この一対の回転刃38はそれぞれ、前後方向(前方に向かって上方に傾斜する方向)に移動可能とされている(図2及び図6参照)。さらに、一対の回転刃38はそれぞれ、図4に示すようにガラスリボンGから後方に退避した状態(図6に実線で示す状態)と、図5に示すようにガラスリボンGの幅方向両端部を押し付ける状態(図6に一点鎖線で示す状態)とに変化可能である。また、一対の回転刃38はそれぞれ、左右方向にも移動可能である。そして、一対の回転刃38は、同一高さ位置に保持され、各々が独立して移動及び動作することが可能である。個々の回転刃38がガラスリボンGに押し付けられている時には、ガラスリボンGの幅方向端部にけがき線を刻設する処理と、ガラスリボンGの幅方向端部を切断する処理とを行うことが可能である。
【0053】
応力付与装置34は、支持軸39の廻りに揺動可能な一対の揺動アーム40の先端に装着された押圧部材41を有する(図2及び図6参照)。押圧部材41は、幅方向に延びるローラ状の部材であり、ガラスリボンGの幅方向長さよりも長尺である。さらに、押圧部材41は、図4に示すようにガラスリボンGから後方に退避した状態(図6に実線で示す状態)と、図5に示すようにガラスリボンGを押す状態(図6に一点鎖線で示す状態)とに変化可能である。押圧部材41がガラスリボンGを押している時には、ガラスリボンGに曲げ応力が付与される(詳細は後述する)。
【0054】
さらに、第二切断装置3は、図6に示すように、ガラスリボンGの有無を検出する第二センサ35を備えている。図例では、第二センサ35は、本体フレーム31に固定されることでガラスリボンGの搬送経路の後方に配置されている。また、第二センサ35は、応力付与装置34の上端の支持軸39と下端の押圧部材41との中間の高さ位置に配置されている。この場合、第二センサ35は、図2に示すように、ガラスリボンGの幅方向複数箇所に対応して複数個が設置されている。本実施形態では、ガラスリボンGの幅方向両端部に対応する箇所と幅方向中央部に対応する箇所とに計三個の第二センサ35が設置されている。これらの第二センサ35は、幅方向に一直線に沿うように本体フレーム31の前端部に固定され、一定位置に保持されている。第二センサ35としては、レーザーセンサ、超音波センサ、またはサーモセンサなどが使用される。なお、第二センサ35は、ガラスリボンGの有無を常時検出するものである。
【0055】
この製造装置は、第一切断装置2の稼働を第二切断装置3の稼働に切り替えるための切り替え処理を行うようになっている。本実施形態では、前後方向に延びた状態にある保持部材36を第二退避エリアF2から第二切断エリアE2に進出させることが切り替え処理に相当する。切り替え処理が行われた後は、保持部材36が第二切断エリアE2に留まった状態で、第二切断装置3によるガラスリボンGの切断処理が行われる。
【0056】
ここで、第二切断装置3が行う基本的な切断処理(以下、第一処理という)について説明する。第一処理を行う際には、先ず、ガラスリボンGが図6に実線で示すように下方に連続して搬送されている途中で、一対の保持部材36が前後方向に延びた状態から回転軸37の廻りに回転する。これにより、一対の保持部材36は、同図に一点鎖線で示すように左右方向に延びた状態となって、ガラスリボンGの第二主面Gbを保持することが可能になる。次に、この状態の下で押圧部材41が前方に向かって揺動する。これにより、押圧部材41は、同図に一点鎖線で示すようにガラスリボンGを押し、ガラスリボンGの切断されるべき領域Gxの周辺に曲げ応力を付与する。このとき、一対の保持部材36は、上記切断されるべき領域Gxの上方でガラスリボンGの第二主面Gbを保持し、ガラスリボンGの前方への変位を阻止する。さらに、この状態の下で一対の回転刃38が前方に移動する。これにより、一対の回転刃38が、同図に一点鎖線で示すようにガラスリボンGの第一主面Gaを押し付け、ガラスリボンGにけがき線(初期クラック)を刻設する。初期クラックは、一対の回転刃38によってガラスリボンGの幅方向両端部にそれぞれ同時に刻設される。なお、ガラスリボンGの切断されるべき領域Gxの周辺に幅方向全長に亘る十分な曲げ応力が付与される場合は、一方の回転刃38によってガラスリボンGの幅方向一端部のみに初期クラックを刻設するようにしてもよい。初期クラックの刻設位置は、ガラスリボンGの耳部を含む位置であってもよく、耳部を含まない位置であってもよい。そして、初期クラックがガラスリボンGの幅方向に沿って進展することで、ガラスリボンGが切断される。切断後のガラスは、不要ガラスGyとなって下方に落下し、回収エリア42で回収される。この後、保持部材36は、再び前後方向に延びた状態になって、後続の切断処理にそなえる。なお、第二切断装置3が搭載されている床壁43には、切断後のガラスを回収エリア42に落下させるための開口部44が形成されている。
【0057】
ガラスリボンGに破損がない状態で第二切断装置3が稼働している間は、この第一処理が繰り返し行われる。なお、第二切断装置3の非稼働時には、保持部材36は、前後方向に延びた状態で第二退避エリアF2に退避している。
【0058】
第二切断装置3は、切断処理として上述の第一処理以外に、以下に示す第二処理を行うことができる。なお、第二処理は、例えば、破損後の成形再開時にガラスリボンGの幅方向一端部のみが成形された場合に行う切断処理である。第二処理を行う際には、先ず、図8に示すように、ガラスリボンGの幅方向一端部(図例では左端部)G1のみが第二切断エリアE2に搬送されてきた場合に、その幅方向一端部G1に対応する保持部材36のみが前後方向に延びた状態から回転して左右方向に延びた状態になる。このとき、ガラスリボンGの幅方向他端部(図例では右端部)に対応する保持部材36は動作しない。次に、ガラスリボンGの幅方向一端部G1に対応する回転刃38が、その幅方向一端部G1を押し付け且つ左右方向に移動する。これにより、当該幅方向一端部G1は、同図に符号L1で示す線(直線)に沿って切断される。このとき、ガラスリボンGの幅方向他端部(図例では右端部)に対応する回転刃38は動作しない。なお、同図では、ガラスリボンGの幅方向右端部G1のみの切断動作を例示したが、ガラスリボンGの幅方向左端部のみの切断動作も同様にして行うことができる。この第二処理を行う際には、押圧部材41によりガラスリボンGに曲げ応力を付与する動作は行われない。
【0059】
さらに、第二切断装置3は、切断処理として上述の第一処理及び第二処理以外に、以下に示す第三処理を行うことができる。なお、第三処理は、例えば、破損後の成形再開時にガラスリボンGの幅方向中央部が成形されることなく、幅方向両端部のみが成形された場合に行う切断処理である。第三処理を行う際には、先ず、図9に示すように、ガラスリボンGの幅方向両端部G1、G2のみが第二切断エリアE2に搬送されてきた場合に、一対の保持部材36がそれぞれ前後方向に延びた状態から回転して左右方向に延びた状態になる。次に、一対の回転刃38がその幅方向両端部G1、G2をそれぞれ押し付け且つそれぞれ左右方向に移動する。これにより、当該幅方向両端部G1、G2は、同図に符号L1、L2で示す線(直線)に沿って切断される。この第三処理を行う際には、押圧部材41によりガラスリボンGに曲げ応力を付与する動作は行われない。
【0060】
本実施形態では、個々の保持部材36の回転動は、第二センサ35の検出結果に基づいて行われる。詳しくは、個々の保持部材36の回転動は、図外の駆動手段(例えばモータなど)の動作によって行われ、この駆動手段の動作は、第二センサ35からの信号に基づいて制御される。また、個々の回転刃38の前後方向の移動及び左右方向の移動も、第二センサ35の検出結果に基づいて行われる。詳しくは、個々の回転刃38の前後方向の移動及び左右方向の移動はそれぞれ、図外の駆動手段(例えばエアシリンダやボールねじ機構など)の動作によって行われ、この駆動手段の動作は、第二センサ35からの信号に基づいて制御される。さらに、押圧部材41の移動も、第二センサ35の検出結果に基づいて行われる。詳しくは、押圧部材41の移動は、図外の駆動手段(例えばモータなど)の動作によって行われ、この駆動手段の動作も、第二センサ35からの信号に基づいて制御される。
【0061】
次に、以上のような構成を備えたガラス板の製造装置を用いたガラス板の製造方法について説明する。
【0062】
本実施形態に係るガラス板の製造方法は、成形工程と、搬送工程と、第一切断工程と、第一検出工程と、第二切断工程と、第二検出工程と、切り替え工程と、を備えている。
【0063】
成形工程は、成形ゾーン11でガラスリボンGを成形する工程である。
【0064】
搬送工程は、成形されたガラスリボンGを搬送装置14のローラ対Rで搬送する工程である。なお、搬送工程は、熱処理工程と、冷却工程と、を含んでいる。
【0065】
熱処理工程は、熱処理ゾーン12で成形工程を経たガラスリボンGを搬送しながら、ガラスリボンGに対して熱処理を行う工程である。
【0066】
冷却工程は、冷却ゾーン13で熱処理工程を経たガラスリボンGを搬送しながら冷却する工程である。
【0067】
第一切断工程は、冷却工程を経たガラスリボンGを搬送しながら、第一切断装置2によりガラスリボンGを幅方向に切断してガラス板を得る工程である。
【0068】
詳述すると、図1及び図2に示すように、第一切断工程では、先ず、ホイールカッター28及び支持部材29が、下方に連続して移動するガラスリボンGに追従して移動しつつ、ガラスリボンGの幅方向の全域又は一部にスクライブ線Sを形成する。本実施形態では、相対的に厚みが大きい耳部にもスクライブ線Sが形成される。次いで、複数のチャック25がガラスリボンGを把持した後、アーム26が、複数のチャック25をガラスリボンGに追従して移動させる。この時、折割部材23も、ガラスリボンGに追従して移動する。これらの移動が行われている間に、アーム26が、折割部材23を支点としてガラスリボンGを湾曲させるための動作(図1に示すB方向の動作)を行う。これにより、スクライブ線S及びその近傍に曲げ応力を付与し、ガラスリボンGをスクライブ線Sに沿って幅方向に折り割る。この折り割りによる切断の結果、ガラスリボンGからガラス板が切り出される。
【0069】
第一検出工程は、三個の第一センサ30によりガラスリボンGの有無をそれぞれ検出する工程である。
【0070】
第二切断工程は、第一切断装置2の非稼働時に、第二切断装置3を使用してガラスリボンGを切断する工程である。
【0071】
第二検出工程は、三個の第二センサ35によりガラスリボンGの有無をそれぞれ検出する工程である。
【0072】
切り替え工程は、第一検出工程での検出結果に基づいて、第一切断工程を第二切断工程に切り替えるための工程である。この切り替え工程は、第一切断工程が中断してから第二切断工程が開始するまでの間に行われる工程である。
【0073】
詳述すると、第一切断工程が行われている間、つまり第一切断装置2が稼働している間は、第二切断装置3の構成要素である保持部材36、回転刃38及び押圧部材41が、図7に示す第二退避エリアF2に留まっている。一方、第二切断工程が行われている間、つまり第二切断装置3が稼働している間は、保持部材36が、図7に示す第二切断エリアE2に留まっている。
【0074】
そして、第一切断工程の実行中に破損によってガラスリボンGが無いことが第一検出工程で検出された時には、第一切断装置2が第一切断エリアE1から第一退避エリアF1に退避する。そして、この後の第一検出工程での検出結果に基づいて切り替え工程が行われる。具体的に、切り替え工程では、前後方向に延びた状態にある保持部材36を第二退避エリアF2から第二切断エリアE2に進出させることが行われる。そして、この切り替え工程の後に、第二切断工程が行われる。したがって、破損に伴って第一切断工程が中断し、この後に保持部材36が進出し、然る後、第二切断工程が行われる。本実施形態では、切り替え工程が、作業者の介入を軽減して又は不要として、自動化によって円滑に行われる。
【0075】
ガラスリボンGが破損した場合には、第二切断エリアE2にガラス片などが落下してくるが、保持部材36は、第二退避エリアF2に留まっている。また、回転刃38及び押圧部材41も第二退避エリアF2に留まっている。保持部材36は、回転刃38及び押圧部材41よりも早期に第二退避エリアF2から第二切断エリアE2に進出するものである。換言すれば、保持部材36は、第二切断装置3の構成要素の中で最も早期に第二退避エリアF2から第二切断エリアE2に進出するものである。
【0076】
次に、第一切断工程の実行中にガラスリボンGが破損してから第二切断工程でガラスリボンGが切断されるまでの過程を、図10図13に基づいて説明する。なお、これらの図中、第一切断装置2の上方位置に配列された三つの○印は、三個の第一センサ30の検出領域30aであり、第二切断装置3の上下方向中間位置に配列された三つの○印は、三個の第二センサ35の検出領域35aである。また、以下の説明では、第一、第二センサ30、35によってガラスリボンGが有ることが検出された場合を「ON」と記述し、ガラスリボンGが無いことが検出された場合を「OFF」と記述する。
【0077】
図10は、上記の過程の第一例を図示している。この第一例は、第一切断工程の実行中にガラスリボンGが破損した後に成形を再開することで、同図に示すようにガラスリボンGの幅方向両端部及び幅方向中央部が成形されつつ搬送される場合の処理を例示している。この場合は、ガラスリボンGが成形されつつ搬送されることで、三個の第一センサ30が図10(a)に示すOFFの状態から図10(b)に示すONの状態に切り替わる。この切り替わりの後、所定の短時間(例えば0.3~0.8秒、好ましくは0.5秒)が経過した時点で、一対の保持部材36を第二切断エリアE2に進出させる。ここで、上記所定の短時間は、第一センサ30がОNに切り替わった後においても、成形されつつ搬送されるガラスリボンGが破損することなく継続して第一センサ30により検出されていることを確認するために必要な時間である。したがって、この時点で一対の保持部材36を第二切断エリアE2に進出させても、破損により落下するガラス片などがそれら保持部材36に衝突する等の事態は生じない。
【0078】
ガラスリボンGがさらに成形されつつ搬送されて、図10(c)に示すように三個の第二センサ35がОFFからONに切り替わった場合には、次に示す動作が行われる。すなわち、三個の第二センサ35がONに切り替わった時から、例えば予め設定された設定時間が経過した時点で、第二切断装置3による既述の第一処理によってガラスリボンGが切断される。なお、ここでの設定時間は、第二センサ35がONに切り替わってからガラスリボンGの下端Gz全域が押圧部材41よりも所定距離だけ下方に搬送されるまでに要する時間として設定されるものである。
【0079】
図11は、上記の過程の第二例を図示している。この第二例は、第一切断工程の実行中にガラスリボンGに割れ等が発生した後に成形を再開することで、同図に示すようにガラスリボンGの幅方向左端部及び幅方向中央部が先に成形されつつ搬送され且つ幅方向右端部がこれに遅れて成形されつつ搬送される場合の処理を例示している。この場合は、ガラスリボンGが成形されつつ搬送されることで、先ず図11(a)に示すように、左端と中央の第一センサ30がONになり、右端の第一センサ30がOFFになる。このように二個の第一センサ30がONになった時点で、左側の保持部材36のみを第二切断エリアE2に進出させる。図11(a)に示すようなガラスリボンGの成形状態であると、ガラスリボンGの下端Gzの右側部に存する欠落部Gwの上下方向長さが図示のように短いのが通例である。したがって、この場合には、図11(b)に示すように、やがて三個の第一センサ30がONになる。この時点で、右側の保持部材36を第二切断エリアE2に進出させる。この場合も、左側の保持部材36を進出させた後、ONとなった第一センサ30が再びOFFになった場合には、上記第一例の場合と同様の対策を講じる。そして、ガラスリボンGがさらに成形されつつ下方に搬送されることで、図11(c)に示すように三個の第二センサ35がОFFからONに切り替わった場合には、上記予め設定された設定時間が経過した時点で、第二切断装置3による既述の第一処理によってガラスリボンGが切断される。なお、ここでのガラスリボンGの成形再開時に、ガラスリボンGの幅方向右端部と幅方向中央部とが先に成形されつつ搬送され且つ幅方向左端部がこれに遅れて成形されつつ搬送される場合であっても、同様の手順でガラスリボンGを切断できる。
【0080】
上記第二例では、二個の第一センサ30がONになった時点で、片側の保持部材36のみを第二切断エリアE2に進出させたが、二個の第一センサ30がONになった時点で、片側の保持部材36を第二切断エリアE2に進出させることなく、三個の第一センサ30がONになった時点で、両側の保持部材36を第二切断エリアE2に進出させてもよい。
【0081】
図12は、上記の過程の第三例を図示している。この第三例は、第一切断工程の実行中にガラスリボンGが破損した後に成形を再開することで、同図に示すようにガラスリボンGの幅方向左端部G1のみが成形されつつ搬送される場合の処理を例示している。この場合は、ガラスリボンGの幅方向左端部G1が成形されつつ搬送されることで、先ず図12(a)に示すように、左端の第一センサ30がONになり、中央と右端の第一センサ30がOFFになる。このように左端の第一センサ30がONになった時点で、左側の保持部材36のみを第二切断エリアE2に進出させる。この場合も、左側の保持部材36を進出させた後、左端の第一センサ30が再びOFFになった場合には、上記第一例の場合と同様の要領で、左側の保持部材36を退避及び進出させる。そして、このガラスリボンGの幅方向左端部G1がさらに成形されつつ下方に搬送されて、図12(b)に示すように左端の第二センサ35がОFFからONに切り替わった場合には、上記予め設定された設定時間が経過した時点で、第二切断装置3による既述の第二処理によってガラスリボンGの左端部G1が切断される。なお、ここでのガラスリボンGの成形再開時に、ガラスリボンGの幅方向右端部のみが成形されつつ搬送される場合であっても、右側の保持部材36を用いて同様の手順でガラスリボンGの幅方向右端部を切断できる。
【0082】
図13は、上記の過程の第四例を図示している。この第四例は、第一切断工程の実行中にガラスリボンGが破損した後に成形を再開することで、同図に示すようにガラスリボンGの幅方向左端部G1及び幅方向右端部G2が成形されつつ搬送される場合の処理を例示している。この場合は、ガラスリボンGの幅方向両端部G1、G2が成形されつつ搬送されることで、先ず図13(a)に示すように、左端と右端の第一センサ30がONになり、中央の第一センサ30がOFFになる。このように左端と右端の第一センサ30がONになった時点で、一対の保持部材36を第二切断エリアE2に進出させる。この場合も、一対の保持部材36を進出させた後、左端の第一センサ30及び右端の第一センサ30の少なくとも一方が再びOFFになった場合には、上記第一例の場合と同様の要領で、それに対応する保持部材36を退避及び進出させる。そして、このガラスリボンGの幅方向左端部G1及び幅方向右端部G2がさらに成形されつつ下方に搬送されて、図13(b)に示すように左端と右端の第二センサ35がОFFからONに切り替わった場合には、上記予め設定された設定時間が経過した時点で、第二切断装置3による既述の第三処理によってガラスリボンGの幅方向左端部G1及び幅方向右端部G2が切断される。
【0083】
以上の第一例~第四例において、三個の第一センサ30は、ガラスリボンGの有無を常時検出している。したがって、第一検出工程での第一センサ30による検出結果に基づいて、ガラスリボンGの幅方向両端部の何れか一方が成形されつつ搬送されている第一の状態と、ガラスリボンGの幅方向両端部の何れか一方及び幅方向中央部が成形されつつ搬送されている第二の状態と、ガラスリボンGの幅方向両端部が成形されつつ搬送されている第三の状態と、ガラスリボンGの幅方向全部が成形されつつ搬送されている第四の状態とが識別可能である。
【0084】
以上の第一例~第四例は、三個の第一センサ30及び三個の第二センサ35を用いてガラスリボンGを切断する場合を例示したが、二個の第一センサ30及び二個の第二センサ35を用いてガラスリボンGを切断することもできる。この場合、三個の第一センサ30及び三個の第二センサ35の何れについても、中央のセンサ30、35をなくして、左端と右端のセンサ30、35をそれぞれ使用するようにしてもよい。この場合、第一センサ30については三個を使用し且つ第二センサ35については左端と右端を使用するようにしてもよく、或いは、第一センサ30については左端と右端を使用し且つ第二センサ35については三個を使用するようにしてもよい。
【0085】
以上、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置及びその製造方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0086】
上記実施形態では、ガラスリボンGをオーバーフローダウンドロー法により成形したが、スロットダウンドロー法やリドロー法などの他のダウンドロー法などにより成形してもよい。
【0087】
上記実施形態では、第一切断工程で、ガラスリボンGをスクライブ線Sに沿う折り割りで切断するようにしたが、レーザー割断やレーザー溶断などの他の方法により切断してもよい。
【0088】
上記実施形態では、第一切断装置2の下方に第二切断装置3を配置したが、この両装置2、3の一部又は全部が上下方向で重複する位置になるように並列に配置してもよい。このようにする場合には、第二切断装置3の本体フレーム31を一定位置に保持しておき、第一切断装置2の使用時に、保持部材36、回転刃38及び押圧部材41を、第一切断装置2の動作を妨げない位置まで退避させておけばよい。また、第一切断装置2と第二切断装置3とを、同一の床壁23上に搭載(設置)してもよい。
【0089】
上記実施形態では、第二切断装置3の本体フレーム31を移動させずに、保持部材36、回転刃38及び押圧部材41を進出及び退避させたが、本体フレーム31を前後方向に移動させつつ、それら36、38、41を進出及び退避させてもよい。
【0090】
上記実施形態では、ガラスリボンGの切断を行うために回転刃38を使用したが、切れ刃を有するものであれば、他の切断刃であってもよい。
【0091】
上記実施形態では、幅方向に二個または三個の第一、第二センサ30、35を配列させたが、幅方向に四個以上の第一、第二センサ30、35を配列させてもよい。
【0092】
上記実施形態では、切り替え工程で、保持部材36を進出させたが、第二切断装置6の構成が上記実施形態と異なる場合には、第二切断装置の他の構成要素(特に、最も早期に第二退避エリアF2から第二切断エリアE1に進出する構成要素)を進出させてもよい。さらに、第一切断工程を第二切断工程に切り替えるための手段が、第二切断装置6の構成要素を進出させる手段ではない場合には、切り替え工程で、当該進出させる動作を伴わない手段によって切り替えを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 ガラスリボンの処理装置
2 第一切断装置
3 第二切断装置
11 成形ゾーン
30 第一センサ
31 本体フレーム
32 保持装置
34 応力付与装置
35 第二センサ
36 保持部材
38 回転刃(切断刃)
41 押圧部材
E1 第一切断エリア
E2 第二切断エリア
F1 第一退避エリア
F2 第二退避エリア
G ガラスリボン
GS ガラスリボンの搬送経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13