(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157581
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20231019BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231019BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20231019BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20231019BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01M50/46
H01M10/056
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067573
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】荻田 香
(72)【発明者】
【氏名】高橋 辰義
(72)【発明者】
【氏名】栗城 和貴
(72)【発明者】
【氏名】村椿 将太郎
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE11
5H021EE21
5H029AJ15
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM13
5H029AM16
(57)【要約】
【課題】新たな電解質層を有するリチウムイオン電池を提供する。
【解決手段】負極層と正極層との間に位置する、電解質層を有し、電解質層は、ゲルと、固体材料とを有し、ゲルは、高分子鎖を有する、リチウムイオン電池である。固体材料として固体電解質を用いるとよく、酸化物材料を用いてもよい。ゲルの溶媒にはイオン液体をもちいるとよい。さらにゲルにおいて高分子鎖が三次元網目状構造体をなすとよい。液漏れが抑制されたリチウムイオン電池となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極層と正極層との間に位置する、電解質層を有し、
前記電解質層は、ゲルと、固体材料とを有し、
前記ゲルは、高分子鎖を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項2】
負極層と正極層との間に位置する、電解質層を有し、
前記電解質層は、ゲルと、固体電解質とを有し、
前記ゲルは、高分子鎖を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項3】
請求項2において、
前記固体電解質は、LLZAOを有する、
リチウムイオン電池。
【請求項4】
負極層と正極層との間に位置する、電解質層を有し、
前記電解質層は、ゲルと、酸化物材料とを有し、
前記ゲルは、高分子鎖を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項5】
請求項4において、
前記酸化物材料は、酸化マグネシウムを有する、
リチウムイオン電池。
【請求項6】
請求項1、2、及び4のいずれか一において、
前記電解質層はシート状を有する、リチウムイオン電池。
【請求項7】
請求項1、2、及び4のいずれか一において、
前記ゲルは、前記高分子鎖と、溶媒とを有し、
前記溶媒は、イオン液体を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項8】
請求項1、2、及び4のいずれか一において、
前記ゲルは、前記高分子鎖と、溶媒とを有し、
前記溶媒は、リチウム塩が溶解したイオン液体を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項9】
請求項1、2、及び4のいずれか一において、
前記ゲルは、前記高分子鎖と、溶媒とを有し、
前記溶媒は、LiFSIが溶解したEMI-FSIを有する、
リチウムイオン電池。
【請求項10】
請求項1、2、及び4のいずれか一において、
前記ゲルにおいて、前記高分子鎖が三次元網目状構造体をなす、
リチウムイオン電池。
【請求項11】
負極層と正極層との間に位置する、半固体電解質層を有し、
前記半固体電解質層は、固体材料を有し、
前記半固体電解質層は、高分子鎖を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項12】
負極層と正極層との間に位置する、半固体電解質層を有し、
前記半固体電解質層は、固体電解質を有し、
前記半固体電解質層は、高分子鎖を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項13】
請求項12において、
前記固体電解質は、LLZAOを有する、
リチウムイオン電池。
【請求項14】
負極層と正極層との間に位置する、半固体電解質層を有し、
前記半固体電解質層は、酸化物材料を有し、
前記半固体電解質層は、高分子鎖を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項15】
請求項14において、
前記酸化物材料は、酸化マグネシウムを有する、
リチウムイオン電池。
【請求項16】
請求項11、12、及び14のいずれか一において、
前記半固体電解質層はシート状を有する、リチウムイオン電池。
【請求項17】
請求項11、12、及び14のいずれか一において、
前記半固体電解質層は、前記高分子鎖と、溶媒とを有し、
前記溶媒は、イオン液体を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項18】
請求項11、12、及び14のいずれか一において、
前記半固体電解質層は、前記高分子鎖と、溶媒とを有し、
前記溶媒は、リチウム塩が溶解したイオン液体を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項19】
請求項11、12、及び14のいずれか一において、
前記半固体電解質層は、前記高分子鎖と、溶媒とを有し、
前記溶媒は、LiFSIが溶解したEMI-FSIを有する、
リチウムイオン電池。
【請求項20】
請求項11、12及び14のいずれか一において、
前記半固体電解質層において、前記高分子鎖が三次元網目状構造体をなす、
リチウムイオン電池。
【請求項21】
請求項11、12及び14のいずれか一において、
前記正極層と前記負極層との間にセパレータを有し、
前記半固体電解質層は、前記セパレータと前記正極層との間、又は前記セパレータと前記負極層との間に位置する、
リチウムイオン電池。
【請求項22】
請求項1、2、4、11、12及び14のいずれか一において、
前記正極層と前記負極層との間に、セパレータを有し、曲げた形態をなす、
リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に関する。
【0002】
また、本発明は上記分野に限定されず、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置、電子機器、車両及びこれらの製造方法に関する。上述の半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置、電子機器、及び車両は、必要な電源として、本発明のリチウムイオン電池を適用することができる。例えば上述の電子機器には、リチウムイオン電池を搭載した情報端末装置などが含まれる。さらに上述の蓄電装置には据置型の蓄電装置などが含まれる。
【0003】
リチウムイオン電池(リチウムイオン二次電池と記すことがある)とはキャリアイオンにリチウムイオンを用いた電池を指すが、本発明のキャリアイオンはリチウムイオンに限定されない。例えば本発明のキャリアイオンとしてアルカリ金属イオン、又はアルカリ土類金属イオンを用いることができ、具体的にはナトリウムイオン、又はマグネシウムイオン等を適用することができる。この場合、リチウムイオンをナトリウムイオン又はマグネシウムイオン等と読み替えることができる。
【背景技術】
【0004】
リチウムイオン電池にはリチウムイオンの伝導率が高い有機溶媒が電解液として用いられるが、当該有機溶媒がリチウムイオン電池から漏れ出るなどして発火又は引火が生じることがある。このような電解液の液漏れに関する課題を解決するために鋭意検討されている。
【0005】
例えば特許文献1には電解液含有ゲル層を用いることで電解液がゲルマトリックス中に保持され、電解液の液漏れが抑制されると記載されている。
【0006】
特許文献2では、半固体電解質層が開示されるが、半固体電解液の粘度を下げるために低粘度有機溶媒を加えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第00/13252号パンフレット
【特許文献2】特開2019-212576公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の電解液含有ゲル層は、電解液が活物質層へ十分に浸み込まないため、活物質層上にゾル状態の電解液含有ゲル層を塗工する方法を提案している。さらにゾル状態とするため、ゲル電解質組成物には熱可逆性ゲルが用いられ、当該ゾル化のための加熱温度が35~95℃であると記載されている。しかしながら、リチウムイオン電池が高温に曝される可能性を考慮すると、熱可逆性ゲルは不向きであった。
【0009】
特許文献2では、低粘度有機溶媒を加えるなどして半固体電解液の粘度を低くしているため、液漏れに関する課題は解決されなかった。さらに特許文献2では、バインダとしてPDVFを混合しており、抵抗成分になり得るバインダにより容量の低下が懸念された。
【0010】
上記を鑑み本発明では、液漏れが抑制された新たなリチウムイオン電池を提供することを課題の一とする。
【0011】
なお、上述した課題は、他の課題の存在を妨げるものではない。また、上述した課題は互いに独立したものと考えられ、本発明の一態様により、上述した課題の全てを解決する必要はない。さらに明細書、図面、及び請求項(これらを「本明細書等」と記す)の記載から、上述以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明の一態様は、負極層と正極層との間に位置する、電解質層を有し、電解質層は、ゲルと、固体材料とを有し、ゲルは、高分子鎖を有する、リチウムイオン電池である。
【0013】
本発明の別の一態様は、負極層と正極層との間に位置する、電解質層を有し、電解質層は、ゲルと、固体電解質とを有し、ゲルは、高分子鎖を有する、リチウムイオン電池であり、固体電解質は、LLZAOを有するとよい。
【0014】
本発明の別の一態様は、負極層と正極層との間に位置する、電解質層を有し、電解質層は、ゲルと、酸化物材料とを有し、ゲルは、高分子鎖を有する、リチウムイオン電池であり、酸化物材料は、酸化マグネシウムを有するとよい。
【0015】
本発明の一態様の電解質層はシート状を有すると好ましい。
【0016】
本発明の一態様のゲルは、高分子鎖と、溶媒とを有し、溶媒は、イオン液体を有すると好ましい。
【0017】
本発明の一態様のゲルは、高分子鎖と、溶媒とを有し、溶媒は、リチウム塩が溶解したイオン液体を有すると好ましい。
【0018】
本発明の一態様のゲルは、高分子鎖と、溶媒とを有し、溶媒は、LiFSIが溶解したEMI-FSIを有すると好ましい。
【0019】
本発明の一態様のゲルにおいて、高分子鎖が三次元網目状構造体をなすと好ましい。
【0020】
本発明の別の一態様は、負極層と正極層との間に位置する、半固体電解質層を有し、半固体電解質層は、固体材料を有し、半固体電解質層は、高分子鎖を有する、リチウムイオン電池である。
【0021】
本発明の別の一態様は、負極層と正極層との間に位置する、半固体電解質層を有し、半固体電解質層は、固体電解質を有し、半固体電解質層は、高分子鎖を有する、リチウムイオン電池であり、固体電解質は、LLZAOを有すると好ましい。
【0022】
本発明の別の一態様は、負極層と正極層との間に位置する、半固体電解質層を有し、半固体電解質層は、酸化物材料を有し、半固体電解質層は、高分子鎖を有する、リチウムイオン電池であり、酸化物材料は、酸化マグネシウムを有すると好ましい。
【0023】
本発明の一態様の半固体電解質層はシート状を有すると好ましい。
【0024】
本発明の一態様の半固体電解質層は、高分子鎖と、溶媒とを有し、溶媒は、イオン液体を有すると好ましい。
【0025】
本発明の一態様の半固体電解質層は、高分子鎖と、溶媒とを有し、溶媒は、リチウム塩が溶解したイオン液体を有すると好ましい。
【0026】
本発明の一態様の半固体電解質層は、高分子鎖と、溶媒とを有し、溶媒は、LiFSIが溶解したEMI-FSIを有すると好ましい。
【0027】
本発明の一態様のゲルにおいて、高分子鎖が三次元網目状構造体をなすと好ましい。
【0028】
本発明の別の一態様において、正極層と負極層との間にセパレータを有し、半固体電解質層は、セパレータと正極層との間、又はセパレータと負極層との間に位置すると好ましい。
【0029】
本発明の別の一態様において、正正極層と負極層との間に、セパレータを有し、曲げた形態をなす、リチウムイオン電池であると好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一態様により、液漏れが抑制されたリチウムイオン電池を提供することができる。
【0031】
なお、上述した効果は、他の効果の存在を妨げるものではない。また、上述した効果は互いに独立したものと考えられ、本発明の一態様は、上述した効果の全てを奏する必要はない。さらに本明細書等の記載から、上述以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1(A)乃至
図1(C)は本発明の一態様のリチウムイオン電池を説明する図である。
【
図2】
図2は本発明の一態様のリチウムイオン電池を説明する図である。
【
図3】
図3は本発明の一態様のリチウムイオン電池を説明する図である。
【
図4】
図4は本発明の一態様のリチウムイオン電池の製造装置を説明する図である。
【
図5】
図5(A)及び
図5(B)は本発明の一態様のラミネート型のリチウムイオン電池を説明する図である。
【
図6】
図6(A)乃至
図6(C)は本発明の一態様のコイン型のリチウムイオン電池を説明する図である。
【
図7】
図7(A)乃至
図7(D)は本発明の一態様の円筒型のリチウムイオン電池及び蓄電システムを説明する図である。
【
図8】
図8(A)乃至
図8(C)は本発明の一態様のリチウムイオン電池を説明する図である。
【
図9】
図9(A)乃至
図9(C)は本発明の一態様のリチウムイオン電池を説明する図である。
【
図15】
図15(A)乃至
図15(D)は本発明の一態様の曲げた形態のリチウムイオン電池について説明する図である。
【
図16】
図16は本発明の一態様のリチウムイオン電池を説明する図である。
【
図17】
図17(A)及び
図17(B)は本発明の一態様の飛行体の一例を示す斜視図である。
図17(C)は、本発明の一態様の飛行体の一例を示す断面図である。
【
図18】
図18(A)及び
図18(B)は、本発明の一態様の飛行体の一例を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、核磁気共鳴法(
1H NMR)のチャートである。
【
図21】
図21は、サンプル1乃至サンプル3の放電容量を示すグラフである。
【
図22】
図22は、サンプル3及びサンプル4の放電容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その説明の繰り返しは省略することがある。
【0034】
本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順又は積層順などの順番又は順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲において異なる序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
【0035】
本明細書等において、「A及び/又はB」と記載することがあるが、これはAのみ、Bのみ、又はA及びBを包含するときの一記載例である。
【0036】
本明細書等において、「高温」とは25℃より高い温度を指し、「室温」とは0℃より高く25℃以下の温度を指す。
【0037】
本明細書等において、「電解質層」とは電池として十分なイオン伝導性を示し、少なくとも液体が除かれる。イオン伝導性は、代表的にはリチウムイオン伝導性が含まれる。さらにリチウム塩を有する電解質層の場合、リチウム塩の陰イオンのイオン伝導性もイオン伝導性に含むことがある。
【0038】
本明細書等において、「半固体」とは室温、例えば25℃で液体と固体の中間状態を指す。別言すると「半固体」とは室温、例えば25℃で体積変化が小さいといった固体の性質を有しつつも、柔軟性を有する等の液体に近い性質も一部持ち合わせた状態を指す。ただしキャリアイオンの挿入脱離に伴い、体積変化の小さな半固体であっても膨張収縮が生じることがある。また高温にすることで、体積変化の小さな半固体であっても体積膨張が生じることがある。この状態を満たせば、半固体は一種の材料から構成されても、複数の材料から構成されてもよい。複数の材料から構成された半固体には、多孔質の固体に液体を浸み込ませたものがある。
【0039】
さらに本明細書等において半固体は「ゲル」を含む。本明細書等において「ゲル」には「物理ゲル」と「化学ゲル」とが含まれる。「物理ゲル」は結合エネルギーが熱エネルギー等の弱い結合で架橋されたものを指す。結合が弱いため、物理ゲルはゾルゲル転移が可能であり、三次元網目状構造体が確認されないことが多い。一方「化学ゲル」は三次元網目状構造体をなす高分子鎖が共有結合又は配位結合等で結合されており、ゾルゲル転移は不可となることが多い。三次元網目状構造体をなす高分子鎖の一部には、架橋剤が存在してもよい。勿論、架橋剤が存在しなくとも三次元網目状構造体をなす高分子鎖となることはできる。本明細書等において「架橋剤」とは、高分子同士を連結する機能を有する材料を指す。
【0040】
さらに本明細書等において「ゲル」は、溶媒に不溶の三次元網目状構造を持つ高分子、及びその膨潤体であると好ましい。本発明の一態様である電解質層には、高分子として分子量が5000、好ましくは10000を超える高分子化合物を用いるとよい。上記高分子は、三次元網目状構造体をなす高分子鎖を有するといってよい。また三次元網目状構造は架橋構造と呼ばれることもあり、三次元網目状構造を持つ高分子は架橋高分子と呼ばれることがある。
【0041】
上記膨潤体とは溶媒が膨潤されたゲルを指し、本明細書等において「膨潤ゲル」と呼ぶことがある。膨潤ゲルの膨張性は有限であり、高分子が溶媒中に分散した状態とは異なる。さらに、膨潤ゲルは粘性のある液体から固体に近いかたさを示すことができ、本発明の一形態の電解質層に好適である。本明細書等において特に断りがない限り「ゲル」には膨潤ゲルも含まれる。
【0042】
本明細書等において、粘性の大きさを表す値を「粘度」と呼ぶ。本発明の一態様である電解質層として半固体電解質層を用いた場合、半固体電解質層の粘度は、室温、例えば25℃で1mPaS以上80mPaS以下、好ましくは5mPaS以上70mPaS以下、さらに好ましくは10mPaS以上60mPaS以下を満たすとよい。ただしこれらは一例であって、リチウムイオン電池からの液漏れが抑制される限りにおいて上記粘度を満たす必要はない。
【0043】
本発明の一態様である電解質層が有する、イオン液体、有機溶媒、固体電解質、及び半固体電解質から選ばれた一、又は二以上の材料は、電池として十分なイオン伝導性を示すとよい。具体的にはイオン液体、有機溶媒、固体電解質、及び半固体電解質から選ばれた一又は二以上は、室温、例えば25℃で、0.1mS/cm以上20mS/cm以下、好ましくは1mS/cm以上15mS/cm以下、さらに好ましくは5mS/cm以上10mS/cm以下のイオン伝導率を示すとよい。イオン液体、及び有機溶媒のイオン伝導率は、導電率計により測定することができる。導電率計では、キャリアイオン以外にリチウム塩の陰イオンを含めた測定が可能である。また固体電解質、及び半固体電解質のイオン伝導率は、交流インピーダンス法から求めることができる。半固体電解質のイオン伝導率にはリチウム塩の陰イオンのイオン伝導率も含めて求めることができる。ただしこれらは一例であって、リチウムイオン電池として充放電できる限りにおいて、上記値を満たす必要はない。
【0044】
本明細書等において「正極層」には正極集電体と、正極活物質を有する層が含まれ、「負極層」には負極集電体と、負極活物質を有する層が含まれる。本明細書等において正極活物質を有する層を「正極活物質層」と記し、負極活物質を有する層を「負極活物質層」と記し、それぞれ正極層及び負極層と区別することがある。本発明の一態様である電解質層により、リチウムイオン電池からの液漏れを抑制できうるため、電解質層以外、たとえば正極層及び/又は負極層は、本明細書等に開示された構成に限定されることはない。
【0045】
本発明の一態様の電解質層は、絶縁性を示すとよい。絶縁性を示す場合リチウムイオン電池において正極層と負極層とのショートを抑制できるため、セパレータを不要とすることができる。上述したイオン液体、有機溶媒、固体電解質、及び半固体電解質から選ばれた一又は二以上は、絶縁性を示すことができる。また絶縁性を示す電解質層とするべく、固体材料として無機材料を用いるとよい。
【0046】
(実施の形態1)
上記を踏まえて、実施の形態1では、本発明の一態様であるリチウムイオン電池について図面を用いて説明する。なお本実施の形態で示すリチウムイオン電池の図面において、電解質層と正極層との境界、及び電解質層と負極層との境界等に直線を使用するが、実際のリチウムイオン電池では直線は確認されない。また上記図面において、正極集電体と正極活物質層との境界、及び負極集電体と負極活物質層との境界等にも直線を使用するが、実際のリチウムオン電池では直線は確認されない。
【0047】
図1(A)には、リチウムイオン電池100の斜視図を示す。リチウムイオン電池100は、負極層106と、正極層107と、これらの間に位置した電解質層103とを有する。負極層106は負極集電体101と負極活物質層102を有し、正極層107は正極集電体105と正極活物質層104を有する。電解質層103は
図1(A)のようなシート状をなすと好ましい。負極層106及び/又は正極層107も同様なシート状をなすと好ましい。本明細書等において「シート状」とは、厚さ、幅、及び長さ等を何ら限定するものではなく、任意の厚みを有する任意の形状をなす。すなわち、負極層106、正極層107、及び電解質層103において、互い層の厚さ、幅、及び長さ等は
図1(A)のように一致している必要はない。後述する製造工程中等において、シート状の電解質層103は、負極層106及び正極層107と同様にハンドリングしやすく好ましい。なお、電解質層103は室温、例えば25℃でシート状を有すればよい。そのため電解質層103は、高温、例えば45℃ではシート状を維持していなくともよい。シート状をなすため電解質層は、「半固体」の状態を有すると好ましい。半固体の状態を有する電解質層103を「半固体電解質層」と呼ぶことがある。
【0048】
シート状をなす電解質層103はゲル115と、固体材料113とを有する。ゲル115は、
図1(B)に示すように、三次元網目状構造体をなす高分子鎖114を用いると好ましいが、三次元網目状構造体をなさなくともよい。さらにゲル115は高分子鎖114に加えて、溶媒111を有するものである。三次元網目状構造体をなす場合、溶媒111は高分子鎖114の間に位置するともいえる。ここで膨潤ゲルを踏まえると、溶媒111は高分子鎖114の間に位置するだけでなく、高分子鎖114の周囲に位置していてもよい。そのため高分子鎖114の間に位置し、かつ高分子鎖114の周囲に位置する溶媒111の様子を、高分子鎖114の周囲に溶媒111が分散していると記すことがある。
【0049】
ゲル115は粘着性を発現することがある。そのため電解質層103にバインダを混合しなくても互いが結着し、シート状に加工することができ好ましい。
【0050】
溶媒111は任意の液体(液体材料と記すこともある)を用いることができる。また電池として十分なイオン伝導性を有することが望まれる場合、溶媒111にはイオン液体、及び/又は有機溶媒を用いるとよい。イオン液体、及び有機溶媒のイオン伝導率はそれぞれ、25℃で測定した値を参考にすればよい。さらに、リチウム塩を要するイオン液体の場合、溶媒111はリチウム塩が溶解されたイオン液体を用いればよい、またリチウム塩を要する有機溶媒の場合、溶媒111はリチウム塩が溶解された有機溶媒を用いればよい。なお本明細書等において「リチウム塩」とは、イオン液体又は有機溶媒中で、陽イオンであるキャリアイオンと、陰イオンとに電離する物質を指す。キャリアイオンは代表的にはリチウムイオンである。
【0051】
固体材料113は任意の固体材料を用いることができる。また電池として十分なイオン伝導性を有することが望まれる場合、固体材料113には、固体電解質を用いるとよい。固体電解質のイオン伝導率は、25℃で測定した値を参考にすればよい。リチウム塩を要さない固体電解質は、固体材料113として好適である。また固体材料113のイオン伝導率が高い場合、上述の溶媒111にイオン液体、及び有機溶媒以外の液体を適用しやすくなる。
【0052】
上記固体電解質に代えて、又は固体電解質に加えて、電解質層103に半固体電解質を用いてもよい。リチウム塩を要する半固体電解質の場合、リチウム塩が溶解された半固体電解質を用いればよい。
【0053】
さらに、固体材料113として無機材料を用いることもできる。無機材料としては酸化物材料が挙げられ、例えば酸化マグネシウム、酸化チタンなどを用いるとよい。無機材料は粉末状、代表的には粒子状として、ゲルへ混合するとよい。
【0054】
固体材料113は粉末状、代表的には粒子状として、電解質層103へ混合するとよい。上述した固体材料113は、電解質層103の粘性を高めることができ好ましい。特に固体材料は高温下でも状態変化しづらいため、リチウムイオン電池100を高温に曝した場合であっても電解質層の粘性低下を抑制することができ好ましい。
【0055】
ここで、溶媒111のイオン伝導率と固体材料113のイオン伝導率とについて検討する。例えば、電解質層103において、溶媒111のイオン伝導率が、固体材料113のリチウムイオン導電率より高いと好ましい。上記溶媒111はゲル115を構成する。ゲル115は、固体材料113と比べて、正極層、及び/又は負極層との接触面積が広いことは明らかである。正極層、及び負極層はそれぞれ、正極活物質、負極活物質を含んでいるため、上記接触面積を考慮すべき境界にて、ゲル115は正極活物質、負極活物質との接触面積が広い。このように接触面積が広いゲル115に、イオン伝導率の高い溶媒111を用いると、上記境界に生じる抵抗を低くすることができ好ましい。さらにまた溶媒111のイオン伝導率が十分高い場合に、固体材料113として無機材料を適用しやすくなる。
【0056】
次に、電解質層103における溶媒111と固体材料113の割合について検討する。例えば、電解質層103において、固体材料113の割合が溶媒111の割合よりも高いと、電解質層103の粘性を低くすることができ好ましい。一方、電解質層103において、溶媒111の割合が固体材料113の割合より高いと、イオン伝導性が高くなり好ましい。割合とは、重量比、又は体積比で表すことができる。
【0057】
上述したイオン液体、有機溶媒、固体電解質、半固体電解質、及び無機材料は絶縁性を示す。このため、イオン液体、有機溶媒、固体電解質、半固体電解質、及び無機材料から選ばれた一又は二以上を有する電解質層103も絶縁性を示すことができる。絶縁性を示す、シート状の電解質層103を備えたリチウムイオン電池100は、
図1(A)のようにセパレータを不要とすることができるため好ましい。セパレータを不要にすることで、リチウムイオン電池100の薄膜化、及び/又は軽量化を達成でき、容量の向上も期待される。
【0058】
勿論、
図1(C)に示すように、リチウムイオン電池100にセパレータ110を配置してもよい。セパレータ110により、負極層106と正極層107とのショートを抑制できる。たとえばリチウムイオン電池100を可動させる、具体的に曲げた形態とさせる場合には、上記ショート抑制効果を高めるためにセパレータ110を配置するとよい。
【0059】
図1(C)における電解質層103,負極層106、及び正極層107の構成はそれぞれ、
図1(A)と同様である。ただし、
図1(C)に示すリチウムイオン電池100では、セパレータ110を挟んで、2つの電解質層を配置した構成例としたため、これらを区別し、負極層106側に位置したものを第1の電解質層103_1、正極層107側に位置したものを第2の電解質層103_2とする。
【0060】
第1の電解質層103_1及び第2の電解質層103_2の詳細は、
図1(A)の電解質層103と同様とすることができる。すなわち、第1の電解質層103_1及び第2の電解質層103_2はそれぞれ、
図1(B)に示すゲル115と、
図1(A)に示す固体材料113を有することができる。
【0061】
さらに第1の電解質層103_1は第2の電解質層103_2と異なる構成としてもよい。例えば第1の電解質層103_1を、
図1(A)の電解質層103と同様の構成とする場合、第2の電解質層103_2のゲル、及び/又は固体材料を
図1(A)の電解質層103と異ならせてもよい。勿論、第2の電解質層103_2を、
図1(A)の電解質層103と同様の構成として、第1の電解質層103_1のゲル、及び/又は固体材料を
図1(A)の電解質層103と異ならせてもよい。
【0062】
図1(C)に示したセパレータ110は、公知材料を適用することができるが、
図1(A)の電解質層103と同様にゲルを有してもよい。ゲルの溶媒には、イオン液体及び/又は有機溶媒を用いることができる。さらにセパレータ110は
図1(A)の電解質層103と同様に固体材料を有してもよい。固体材料には、固体電解質及び/又は無機材料を用いることができる。セパレータ110は高い絶縁性を示すとよいため、無機材料を用いるとよく、無機材料は、ゲルより高い割合で混合されるとよい。
【0063】
セパレータ110と、第1の電解質層103_1、及び/又は第2の電解質層103_2とで共通した材料を用いると、互いの境界で共通材料が溶解することがある。溶解すると境界がなくなるため、界面抵抗が抑制され好ましい。この場合、
図1(C)に示したセパレータ110と、第1の電解質層103_1及び第2の電解質層103_2とが一体物となり、セパレータの機能と電解質層の機能を奏することができる。リチウムイオン電池100の小型化を達成できる。
【0064】
次にセパレータ110の厚みについて検討する。たとえばセパレータ110の厚みが第1の電解質層103_1及び/又は第2の電解質層103_2の厚みより小さいと、リチウムイオン電池100を曲げやすく好ましい。また、セパレータ110の厚みが、第1の電解質層103_1及び/又は第2の電解質層103_2の厚みより大きいと、正極層107と負極層106のショートを抑制でき好ましい。
【0065】
新たな構成例として、
図1(C)から第1の電解質層103_1を省略したリチウムイオン電池100がある。また
図1(C)から第2の電解質層103_2を省略したリチウムイオン電池100もある。すなわち
図1(C)の電解質層の一方を省略することもでき、リチウムイオン電池100の薄膜化、及び/又は軽量化を達成できる。
【0066】
次に、
図2を用いて、
図1(A)又は
図1(C)に示したリチウムイオン電池100の正極活物質層104の構成を説明する。
図2では断面図を用いる。
【0067】
図2に示す正極活物質層104は、正極活物質117、バインダ(「結着剤」と記すこともある)、及び/又は導電材(「導電付与剤」、又は「導電助剤」と記すこともある)等を有する。これらには公知材料を適用することができるが、好ましい材料等については後述する。
【0068】
さらに電池として十分なイオン伝導性を示すために、正極活物質層104はイオン液体、有機溶媒、固体電解質、及び半固体電解質から選ばれた一又は二以上を有するとよい。イオン液体、有機溶媒、固体電解質、及び半固体電解質をまとめて、本明細書等では「電解質」と記すことがある。電解質とは電池として十分なイオン伝導性を示す物質を示すものであって、当該物質の状態(液体状、固体状、又は半固体状)については何ら限定されない概念である。
【0069】
正極活物質層104の電解質として、25℃で液体材料であるイオン液体、及び/又は有機溶媒を用いた場合であっても、
図1(A)又は
図1(C)を用いて説明した電解質層103によりリチウムイオン電池100からの液漏れは十分に抑制できる。
【0070】
さらに正極活物質層104の電解質として、イオン液体、及び/又は有機溶媒を溶媒に用いたゲルを有してもよい。さらに正極活物質層104はゲルに加えて、固体材料を有してもよい。イオン液体、及び/又は有機溶は電解質層103の溶媒111と共通材料を用いることができる。固体材料は電解質層103の固体材料113と共通材料とすることができる。共通材料を用いる場合、正極活物質層104と電解質層103との境界で共通材料が溶解することがある。溶解すると境界がなくなるため、界面抵抗が抑制され好ましい。
【0071】
さらにゲルは粘着性を発現するため、正極活物質117及び/又は導電材を結着させることができる。すなわちゲルを正極活物質層104に用いると、バインダを不要にすることができ好ましい。リチウムイオン電池100の薄膜化、及び/又は軽量化を達成できる。
【0072】
次に、
図3を用いて、
図1(A)又は
図1(C)に示したリチウムイオン電池100の負極活物質層102の構成を説明する。
図3では断面図を用いる。
【0073】
図3に示す負極活物質層102は、負極活物質119、バインダ、及び/又は導電材等を有する。これらには公知材料を適用することができるが、好ましい材料等については後述する。
【0074】
さらに電池として十分なイオン伝導性を示すために、負極活物質層102はイオン液体、有機溶媒、固体電解質、及び半固体電解質から選ばれた一又は二以上を有するとよい。
【0075】
負極活物質層102の電解質として、25℃で液体材料であるイオン液体、及び/又は有機溶媒を用いた場合であっても、
図1(A)又は
図1(C)を用いて説明した電解質層103によりリチウムイオン電池100からの液漏れは十分に抑制できる。
【0076】
さらに負極活物質層102の電解質として、イオン液体、及び/又は有機溶媒を溶媒に用いたゲルを有してもよい。さらに負極活物質層102はゲルに加えて、固体材料を有してもよい。イオン液体、及び/又は有機溶は電解質層103の溶媒111と共通材料を用いることができる。固体材料は電解質層103の固体材料113と共通材料とすることができる。共通材料を用いる場合、負極活物質層102と電解質層103との境界で共通材料が溶解することがある。溶解すると境界がなくなるため、界面抵抗が抑制され好ましい。
【0077】
さらにゲルは粘着性を発現するため、負極活物質119及び/又は導電材を結着させることができる。すなわちゲルを負極活物質層102に用いると、負極活物質層102に適用した場合、バインダを不要にすることができ好ましい。リチウムイオン電池100の薄膜化、及び/又は軽量化を達成できる。
【0078】
<イオン液体>
イオン液体について説明する。イオン液体は、常温溶融塩と記すこともあり、カチオンとアニオンを有する。
【0079】
<アニオン>
アニオンについて説明する。アニオンは、ハロゲン化物イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、またはビス(フルオロスルホニル)イミド等がある。
【0080】
本発明の一態様のイオン液体のアニオンには、一価のアミド系アニオン、一価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオンパーフルオロアルキルホスフェートアニオン、またはテトラフルオロボレートアニオン等の一以上を用いることができる。
【0081】
一価のアミド系アニオンは、一般式(CnF2n+1SO2)2N-(nは0以上3以下)で表される。
【0082】
上記一般式においてnが0のとき、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンであり、構造式(H11)で表される。ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンの略称はFSIまたはFSAである。
【0083】
【0084】
上記一般式においてnが1のとき、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンであり、構造式(H12)で表される。ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンの略称はTFSIまたはTFSAである。
【0085】
【0086】
また一価の環状のアミド系アニオンの一つに、4,4,5,5-テトラフルオロ-1,3,2-ジチアゾリジンテトラオキシドアニオンがあり、構造式(H13)で表される。
【0087】
【0088】
一価のメチド系アニオンは、一般式(CnF2n+1SO2)3C-(nは0以上3以下)で表される。
【0089】
一価の環状のメチド系アニオンの一つに、4,4,5,5-テトラフルオロ-2-[(トリフルオロメチル)スルホニル]-1,3-ジチオランテトラオキシドアニオンがあり、構造式(H14)で表される。
【0090】
【0091】
フルオロアルキルスルホン酸アニオンは、一般式(CmF2m+1SO3)-(mは0以上4以下)で表される。
【0092】
上記一般式においてmが0の場合は、フルオロスルホン酸アニオンであり、mが1,2,3,4の場合は、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオンである。
【0093】
フルオロアルキルボレートアニオンは、一般式{BFn(CmHkF2m+1-k)4-n}-(nは0以上3以下、mが1以上4以下、kが0以上2m以下)で表される。
【0094】
フルオロアルキルホスフェートアニオンは、一般式{PFn(CmHkF2m+1-k)6-n}-(nは0以上5以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)で表される。
【0095】
これらアニオンを一または複数用いることができる。
【0096】
<カチオン>
カチオンについて説明する。カチオンの基本骨格はイミダゾリウム系、アンモニウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、ピリジニウム系またはホスホニウム系を有する。カチオンの基本骨格がイミダゾリウム系のイオン液体はアンモニウム系のイオン液体に比べて低粘度を示す。粘度が低いとイオン伝導性が高まる傾向にある。さらにカチオンの側鎖のアルキル基等により、粘度等の物性を制御することができる。
【0097】
本発明の一態様のイオン液体は、一般式(G1)で表されるイミダゾリウム系のカチオンを有する。なお一般式(G1)において、A-は上述したアニオンのいずれか一を示す。
【0098】
【0099】
上記一般式(G1)において、R1は炭素数が1以上10以下のアルキル基を表し、R2乃至R4はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R5は炭素数が1以上6以下のアルキル基、またはC、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を有するエーテル基、チオエーテル基、またはシロキサンを表す。上記一般式(G1)において、A-は、FSIアニオンまたはTFSIアニオンであるとよい。
【0100】
本発明の一態様のイオン液体は、一般式(G2)で表されるピリジニウム系のカチオンを有する。なお一般式(G2)、A-は上述したアニオンのいずれか一を示す。
【0101】
【0102】
上記一般式(G2)において、R6は、炭素数が1以上6以下のアルキル基、またはC、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を有する。R7乃至R11は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表す。またR8またはR9は水酸基を表すことがある。上記一般式(G2)において、A-はFSIアニオンまたはTFSIアニオンであるとよい。
【0103】
本発明の一態様のイオン液体は、四級アンモニウムカチオンを有する。たとえば一般式(G3)で表される四級アンモニウムカチオンを有する。なお一般式(G3)において、A-は上述したアニオンのいずれか一を示す。
【0104】
【0105】
上記一般式(G3)中、R28乃至R31は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表す。上記一般式(G3)において、A-はFSIアニオンまたはTFSIアニオンであるとよい。
【0106】
本発明の一態様のイオン液体は、一般式(G4)で表されるカチオンを有する。なお一般式(G4)において、A-は上述したアニオンのいずれか一を示す。
【0107】
【0108】
上記一般式(G4)中、R12およびR17は、それぞれ独立に、炭素数が1以上3以下のアルキル基を表す。R13乃至R16は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基のいずれかを表す。上記一般式(G4)において、A-はFSIアニオンまたはTFSIアニオンであるとよい。
【0109】
本発明の一態様のイオン液体は、一般式(G5)で表されるカチオンを有する。なお一般式(G5)において、A-は上述したアニオンのいずれか一を示す。
【0110】
【0111】
上記一般式(G5)中、R18およびR24は、それぞれ独立に、炭素数が1以上3以下のアルキル基を表す。R19乃至R23は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表す。上記一般式(G5)において、A-はFSIアニオンまたはTFSIアニオンであるとよい。
【0112】
本発明の一態様のイオン液体は、一般式(G6)で表されるカチオンを有する。なお一般式(G6)において、A-は上述したアニオンを示す。
【0113】
【0114】
上記一般式(G6)中、nおよびmは1以上3以下であり、αは0以上6以下であり、βは0以上6以下であり、XまたはYは、置換基として炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、または炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。上記一般式(G6)において、A-はFSIアニオンまたはTFSIアニオンであるとよい。
【0115】
本発明の一態様のイオン液体は、一般式(G7)で表される三級スルホニウムカチオンを有する。なお一般式(G7)において、A-は上述したアニオンを示す。
【0116】
【0117】
上記一般式(G7)中、R25乃至R27は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数が1以上4以下のアルキル基、フェニル基を表す。またR25乃至R27は、それぞれ独立に、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を有する。一般式(G7)において、A-はFSIアニオンまたはTFSIアニオンであるとよい。
【0118】
本発明の一態様のイオン液体は、下記一般式(G8)で表される四級ホスホニウムカチオンを有する。なお一般式(G8)において、A-は上述したアニオンを示す。
【0119】
【0120】
上記一般式(G8)中、R32乃至R35は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数が1以上4以下のアルキル基、またはフェニル基を表す。またR32乃至R35は、それぞれ独立に、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を有する。一般式(G8)において、A-はFSIアニオンまたはTFSIアニオンであるとよい。
【0121】
上記一般式(G1)のカチオンの具体例として、たとえば構造式(111)乃至構造式(174)が挙げられる。構造式(111)は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンであり、略称をEMIである。構造式(113)は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンであり、略称はBMIである。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
上記一般式(G2)のカチオンの具体例として、たとえば構造式(701)乃至構造式(719)が挙げられる。
【0129】
【0130】
【0131】
上記一般式(G4)のカチオンの具体例として、たとえば構造式(501)乃至構造式(520)が挙げられる。
【0132】
【0133】
上記一般式(G5)のカチオンの具体例として、たとえば構造式(601)乃至構造式(630)が挙げられる。
【0134】
【0135】
【0136】
上記一般式(G6)のカチオンの具体例として、たとえば構造式(301)乃至構造式(309)、および構造式(401)乃至構造式(419)が挙げられる。
【0137】
【0138】
【0139】
また、構造式(301)乃至構造式(309)、および構造式(401)乃至構造式(419)には、一般式(G6)において、mが1の例を示すが、構造式(301)乃至構造式(309)、および構造式(401)乃至構造式(419)において、mを2、あるいは3に替えても構わない。
【0140】
また、上記一般式(G7)のカチオンの具体例として、たとえば構造式(201)乃至構造式(215)が挙げられる。
【0141】
【0142】
このようなイオン液体は、イオンのみからなる液体であるため、静電的な相互作用が強く、不揮発性、熱安定性を示し、ガス発生が少なく、さらに耐熱性が高い。当該イオン液体を用いたリチウムイオン電池は、高温にさらされた場合でも引火することがなく安全性に優れる。
【0143】
<有機溶媒>
有機溶媒について説明する。有機溶媒として、非プロトン性有機溶媒を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等から選ばれた一又は二以上を用いることができる。
【0144】
本明細書等において、「カーボネート」とは、分子構造に炭酸エステルを少なくとも一つ有する化合物を指し、特に断りがない限り、「環状カーボネート」及び「鎖状カーボネート」が含まれる。また、「鎖状」とは、直鎖状または分岐鎖状の両方が含まれる。
【0145】
さらに有機溶媒は、フッ化炭酸エステル、又は炭酸エステル等を用いてもよい。フッ化炭酸エステルの例としてフッ化環状カーボネート(フッ素化環状カーボネートと記すこともある)、又はフッ化鎖状カーボネートがある。フッ化環状カーボネート、又はフッ化鎖状カーボネート(フッ素化鎖状カーボネートと記すこともある)はリチウムイオン電池を低温環境下(具体的には0℃以下の氷点下)で動作させる際、粘度が低くなり好ましいと考えられる。
【0146】
フッ化環状カーボネート、又はフッ化鎖状カーボネートを上述したイオン液体と混合することで、リチウムイオン電池の動作環境温度を幅広くすることができると考えられる。
【0147】
フッ化環状カーボネートとして、フッ化エチレンカーボネート、たとえば、モノフルオロエチレンカーボネート(炭酸フルオロエチレン、FEC、F1EC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC、F2EC)、トリフルオロエチレンカーボネート(F3EC)、またはテトラフルオロエチレンカーボネート(F4EC)等を用いることができる。なお、DFECには、シス-4,5、トランス-4,5等の異性体がある。
【0148】
フッ化環状カーボネートとして、フッ化エチレンカーボネート、たとえば、フルオロエチレンカーボネート(炭酸フルオロエチレン、FEC、F1EC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC、F2EC)、トリフルオロエチレンカーボネート(F3EC)、またはテトラフルオロエチレンカーボネート(F4EC)等を用いることができる。なお、DFECには、シス-4,5、トランス-4,5等の異性体がある。いずれのフッ化環状カーボネートも電子求引性を示す置換基を有するため、リチウムイオンの溶媒和エネルギーが低いと考えられる。
【0149】
下記構造式(H10)は、FECの構造式である。
【0150】
【0151】
フッ化鎖状カーボネートとして、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルがある。下記構造式(H22)は3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルの構造式である。3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルの略称は、「MTFP」である。MTFPも電子求引性を示す置換基を有するため、リチウムイオンの溶媒和エネルギーが低いと考えられる。
【0152】
【0153】
フッ化鎖状カーボネートとして、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸トリフルオロメチルがある。下記構造式(H23)は3,3,3-トリフルオロプロピオン酸トリフルオロメチルの構造式である。3,3,3-トリフルオロプロピオン酸トリフルオロメチルも電子求引性を示す置換基を有するため、リチウムイオンの溶媒和エネルギーが低いと考えられる。
【0154】
【0155】
フッ化鎖状カーボネートとして、プロピオン酸トリフルオロメチルがある。下記構造式(H24)はプロピオン酸トリフルオロメチルの構造式である。プロピオン酸トリフルオロメチルも電子求引性を示す置換基を有するため、リチウムイオンの溶媒和エネルギーが低いと考えられる。
【0156】
【0157】
フッ化鎖状カーボネートとして、2,2-ジフルオロプロピオン酸メチルがある。下記構造式(H25)は2,2-ジフルオロプロピオン酸メチルの構造式である。2,2-ジフルオロプロピオン酸メチルも電子求引性を示す置換基を有するため、リチウムイオンの溶媒和エネルギーが低いと考えられる。
【0158】
【0159】
本発明の一態様である電解質の有機溶媒として、上述したフッ化環状カーボネート、及びフッ化鎖状カーボネートから選ばれた二以上を含むとよく、たとえばFECと、MTFPとを含むとよい。リチウムイオン電池を0℃より低い氷点下に曝した場合であっても、FECと、MTFPとを含むことで、溶媒和エネルギーが低いため活物質と電解質との界面抵抗が高くなりすぎることがない。上記活物質は正極活物質、又は負極活物質のいずれでもよい。
【0160】
<固体電解質>
固体電解質について説明する。固体電解質には酸化物系、硫化物系、又はハロゲン化物系の材料があり、これらを混合した混合材料を用いることもできる。
【0161】
酸化物系の固体電解質として、ペロブスカイト型結晶構造を有する材料、NASICON型結晶構造を有する材料、ガーネット型結晶構造を有する材料、LISICON型結晶構造を有する材料、又は酸化物ガラス若しくは酸化物結晶化ガラス等の材料が挙げられる。ペロブスカイト型結晶構造を有する材料にはLa2/3-xLi3xTiO3(LLTOと記すことがあり、たとえばx=0.1を満たす)等がある。また微細化処理を経ると、LLTOの粒子径を150nm以上500nm以下、好ましくは200nm以上300nm以上とすることができる。LLTOの粒子径が小さいと、電解質層103を薄膜化しやすく好ましい。LLTOのリチウムイオン伝導率は10-3S/cm程度である。NASICON型結晶構造を有する材料にはLi1+XAlXTi2-X(PO4)3(LATPと記すことがあり、たとえばx=0.3を満たす)、Li1+XAlXGe2-X(PO4)3(LAGPと記すことがあり、たとえばx=0.5を満たす)等がある。LATP、又はLAGPのリチウムイオン伝導率は10-4S/cm程度である。ガーネット型結晶構造を有する材料にはLi7La3Zr2O12(LLZOと記すことがある)、Li6.25La3Zr2Al0.25O12(LLZAOと記すことがある)等がある。LLZO、又はLLZAOのリチウムイオン伝導率は10-4S/cm程度である。LISICON型結晶構造を有する材料にはLi14ZnGe4O16等がある。酸化物ガラスにはLi3PO4-Li4SiO4、50Li4SiO4・50Li3BO3等があり、酸化物結晶化ガラスにはLi1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3等)等がある。上述した酸化物系の固体電解質は、大気中で安定であるといった利点がある。
【0162】
硫化物系固体電解質として、チオリシコン系、硫化物ガラス、又は硫化物結晶化ガラス等がある。チオリシコン系の材料には、Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4等がある。硫化物ガラスには、70Li2S・30P2S5、30Li2S・26B2S3・44LiI、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、50Li2S・50GeS2等がある。硫化物結晶化ガラスには、Li7P3S11、Li3.25P0.95S4等がある。硫化物系固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する材料がある。
【0163】
ハロゲン化物系固体電解質として、LiAlCl4、Li3InBr6、LiF、LiCl、LiBr、LiI等が挙げられる。
【0164】
<半固体電解質>
半固体電解質について説明する。半固体電解質としてリチウムイオン導電性ポリマーが挙げられる。本明細書等において「リチウムイオン導電性ポリマー」とは、リチウム等のカチオンの導電性を有するポリマーを指す。具体的にはリチウムイオン導電性ポリマーとは、カチオンが配位できる極性基を有する高分子化合物である。極性基としては、エーテル基、エステル基、ニトリル基、カルボニル基、シロキサン等を有していることが好ましい。
【0165】
リチウムイオン導電性ポリマーとしてはたとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、主鎖としてポリエチレンオキシドを有する誘導体、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリシロキサン、ポリフォスファゼン等を用いることができる。
【0166】
リチウムイオン導電性ポリマーは、分岐していてもよく、架橋していてもよい。また共重合体であってもよい。リチウムイオン導電性ポリマーの分子量はたとえば1万以上であることが好ましく、10万以上であることがより好ましい。
【0167】
リチウムイオン導電性ポリマーはポリマー鎖の部分運動(セグメント運動ともいう)により相互作用する極性基を変えながらリチウムイオンが移動していく。たとえばPEOならば、エーテル鎖のセグメント運動により相互作用する酸素を変えながらリチウムイオンが移動する。温度がリチウムイオン導電性ポリマーの融点または軟化点に近いか、それより高いときは結晶領域が溶解して非晶質領域が増大し、またエーテル鎖の運動が活発になるため、イオン伝導度が高くなる。そのためリチウムイオン導電性ポリマーとしてPEOを使用する場合は60℃以上で充放電を行うことが好ましい。
【0168】
<無機材料>
無機材料について説明する。無機材料として酸化物材料を用いるとよく、酸化物材料には酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化シリコン等がある。また無機材料は、固体電解質及び/又は半固体電解質と混合して、電解質層に用いてもよい。例えばポーラス酸化アルミニウム又はポーラスシリカの細孔に上記固体電解質が充填された混合物を電解質層103に適用してもよい。
【0169】
<高分子>
高分子(高分子材料とも記す)には、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)(これをPDMAEMAと記す)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(六フッ化リン酸ピリジニウム-1、4-ジイルイミノカルボニル-1、4-フェニレンメチレン)(PICPM-PF6)、ポリ(塩化ピリジニウム-1、4-ジイルイミノカルボニル-1、4-フェニレンメチレン)(PICPM-Cl)、ポリ(ヨウ化ピリジニウム-1、4-ジイルイミノカルボニル-1、4-フェニレンメチレン)(PICPM-I)、ポリ(チオシアン酸ピリジニウム-1、4-ジイルイミノカルボニル-1、4-フェニレンメチレン)(PICPM-SCN)、ポリ(テトラフルオロホウ酸ピリジニウム-1、4-ジイルイミノカルボニル-1、4-フェニレンメチレン)(PICPM-BF4)、ポリ[ピリジニウム-1、4-ジイルイミノカルボニル-1、4-フェニレンメチレンビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド](PICPM-TFSA)、ポリ(トリフルオロメチルスルホニルピリジニウム-1、4-ジイルイミノカルボニル-1、4-フェニレンメチレン)(PICPM-OTf)、を用いることができる。
【0170】
<架橋剤>
架橋剤を用いて高分子を架橋させる場合、架橋剤にはN,N,N’,N’-テトラ(トリフルオロメタンスルホニル)-ドデカン-1,12-ジアミン(これをC12TFSAと記す)、N、N、N’、N’-テトラ(トリフルオロメタンスルホニル)-ヘキサン-1、6-ジアミンを用いることができる。上記架橋剤と高分子との混合液を、75℃以上110℃以下、好ましくは80℃以上100℃以下で加熱するとゲルを得ることができる。なおゲルを得るために架橋剤は任意に用いればよい。
【0171】
上記加熱を真空雰囲気で行う場合、真空乾燥炉を用いることができる。真空乾燥炉とは乾燥炉に接続された真空ポンプを有するものである。真空乾燥炉をグローブボックスなどに隣接させると、混合液の合成後、大気に出すことなく加熱処理を実施できる。真空乾燥炉が有する真空ポンプには、ドライポンプ、ターボ分子ポンプ、油回転ポンプ、クライオポンプ又はメカニカルブースタ-ポンプを用いることができる。真空乾燥炉における真空雰囲気は、各装置が有する差圧計が、-80kPa以上-120kPa以下となるように減圧した雰囲気が含まれる。また真空乾燥炉に代えて、内部を真空に排気できる容器(ベルジャーと記す)と、ベルジャーに接続された真空ポンプとを有するベルジャー型真空装置を用いることもできる。
【0172】
本加熱工程により、混合液から不純物を除去することもできる。不純物には、トルエンなどの有機溶媒などがある。トルエンの沸点は110℃であるが、トルエンを真空雰囲気下で加熱すれば、110℃以下の加熱でも除去が可能となる。すなわち、上述した温度範囲が不純物の沸点以下であっても、当該不純物等を除去できる。
【0173】
このようにしてゲル化した液体材料、具体的にはゲル化したイオン液体及び/又はゲル化した有機溶媒を得ることができる。なお加熱処理は、液体材料に固体材料を混合する前に実施してもよいし、混合後に実施してもよい。
【0174】
<リチウム塩>
リチウム塩について説明する。リチウム塩はイオン液体、有機溶媒、及び半固体電解質を用いる際、電解質層に添加する。リチウム塩には、例えば、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(FSO2)2(これをLiFSIと記す)、LiN(CF3SO2)2(これをLiTFSIと記す)、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2、及びリチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)から選ばれた一又は二以上を用いることができる。リチウム塩は、イオン液体、有機溶媒、及び半固体電解質といった溶媒に対して0.5mol/L以上3mol/L以下の濃度となるように混合するとよい。
【0175】
<添加剤>
添加剤について説明する。安全性向上等を目的として、電極(正極活物質層または負極活物質層)と電解質との界面に被膜(Solid Electrolyte Interphase:SEI膜)を形成するため、電解質層103に、ビニレンカーボネート(VC)、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、またはスクシノニトリルもしくはアジポニトリルのジニトリル化合物の添加剤を有してもよい。
【0176】
<正極活物質>
正極活物質について説明する。本明細書等において、正極活物質とは、キャリアイオンの挿入脱離が可能な、遷移金属及び酸素を有する化合物をいう。化合物は、酸化物又は複合酸化物と呼ぶことがある。キャリアイオンは代表的にはリチウムイオンを用いるが、ナトリウムイオン、又はマグネシウムイオン等を適用してもよい。正極活物質の作製後に吸着した炭酸、及びヒドロキシ基等は、正極活物質に含まないとする。また正極活物質に付着した電解質、有機溶媒、バインダ、導電材、またはこれら由来の化合物も正極活物質に含まないとする。
【0177】
本明細書等において、正極活物質粒子等に用いる「粒子」は、球形(断面形状が円)のみを指すことに限定されない。例えば粒子には、断面形状が楕円形、非対称の形状などが含まれ、さらに個々の粒子が揃っている必要はなく、互いに不定形となっていてもよい。
【0178】
本明細書等において、空間群は国際表記(またはHermann-Mauguin記号)のShort notationを用いて表記する。また、ミラー指数を用いて結晶面及び結晶方向を表記する。結晶面を示す個別面は( )を用いて表記する。空間群、結晶面、および結晶方向の表記は、結晶学上、数字の上にバーを付すが、本明細書等では書式の制約上、数字の上にバーを付す代わりに、数字の前に-(マイナス符号)を付して表現する場合がある。また、結晶内の方向を示す個別方位は[ ]で、等価な方向全てを示す集合方位は< >で、結晶面を示す個別面は( )で、等価な対称性を有する集合面は{ }でそれぞれ表記する。また、空間群R-3mで表される三方晶は、構造の理解のしやすさのため、一般に六方晶の複合六方格子で表記されることがあり、本明細書等においても空間群R-3mで表される三方晶を六方晶の複合六方格子で表記することがある。
【0179】
また、結晶構造の空間群は、X線回折(X-ray Diffraction;XRD)、電子線回折、中性子線回折等によって同定されるものである。そのため、本明細書等において、ある空間群に帰属する、ある空間群に属する、またはある空間群であるとは、ある空間群に同定されると言い換えることができる。
【0180】
本明細書等において、「岩塩型の結晶構造」とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構造をいう。なお、「岩塩型の結晶構造」では、陽イオンまたは陰イオンの欠損を有していてもよい。
【0181】
本明細書等において、「層状岩塩型の結晶構造」とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する層状岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属とリチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能である結晶構造をいう。なお「層状岩塩型の結晶構造」では、陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥を有していてもよい。また、上記「層状岩塩の型結晶構造」とは、厳密に言えば、「岩塩型の結晶構造」の格子が歪んだ構造となっている場合がある。
【0182】
<LiNixCoyMnzO2>
正極活物質は、ニッケル、コバルト、マンガンの3種を用いて得られた複合酸化物を用いることができ、これをニッケルコバルトマンガン複合酸化物と記すことがある。ニッケルコバルトマンガン複合酸化物はリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の前駆体と言え、リチウムを混合する前を指す。またリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物をNCMと記し、これは化学式でLiNixCoyMnzO2(x>0、y>0、0.8<x+y+z<1.2)と表すことができる。NCMにおいて、リチウムは充放電により変化するため、上記化学式に基づきLiが1に限定されるものではない。上記LiNixCoyMnzO2において、x、y及びzが取りうる範囲は、例えば、0.1x<y<8xかつ0.1x<z<8xを満たすとよい。具体例として、x、y及びzは、x:y:z=1:1:1又はその近傍の値を満たすことが好ましい。また別の具体例として、x、y及びzは、x:y:z=5:2:3又はその近傍の値を満たすことが好ましい。また別の具体例として、x、y及びzは、x:y:z=8:1:1又はその近傍の値を満たすことが好ましい。また別の具体例として、x、y及びzは、x:y:z=9:0.5:0.5又はその近傍の値を満たすことが好ましい。また別の具体例として、x、y及びzは、x:y:z=6:2:2又はその近傍の値を満たすことが好ましい。また別の具体例として、x、y及びzは、x:y:z=1:4:1又はその近傍の値を満たすことが好ましい。上記x、y及びzをニッケル、コバルト、マンガンの混合比と記すことがあり、上記x、y及びzとして述べた混合比を満たすと層状岩塩型の結晶構造をとりうる。
【0183】
NCMは例示した元素以外の元素(添加元素と呼ぶ)をさらに含んでいてもよい。添加元素はニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、塩素、フッ素、アルミニウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、イットリウム、バナジウム、鉄、クロム、ニオブ、ランタン、ハフニウム、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン、ホウ素、及びヒ素の中から選ばれた一または二以上を用いることができる。
【0184】
添加元素は一次粒子と一次粒子の界面に位置すると好ましい。本明細書等において、「一次粒子」とは、SEM(走査電子顕微鏡)などにより例えば2万倍で観察した際に確認される最小単位の粒子(塊)を指す。つまり一次粒子は最小単位の粒子である。また本明細書等において、「二次粒子」とは、上記一次粒子が、上記粒界(一次粒子の外周等)の一部を共有するように凝集し、容易には分離しない粒子(他と独立した粒子)を指す。
【0185】
遷移金属のうちニッケルの占める割合が高ければ、安価な正極活物質を提供でき、さらに、高電位又は高容量な正極活物質とすることができるため好ましい。たとえば正極活物質が有するニッケルと、コバルトと、マンガンの原子数の和を100としたとき、ニッケルの原子数が33以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、80以上であるとさらに好ましい。しかしニッケルの占める割合が高すぎると、化学安定性および耐熱性が下がるおそれがある。そのため正極活物質が有するニッケルと、コバルトと、マンガンの原子数の和を100としたとき、ニッケルの原子数が95以下であることが好ましい。
【0186】
遷移金属としてコバルトを有すると、平均放電電圧が高く、またコバルトが層状岩塩型の構造を安定化に寄与するためサイクル特性が向上した、又は信頼性の高いリチウムイオン電池とすることができ好ましい。しかしコバルトは価格がニッケルおよびマンガンよりも高く、不安定であるため、コバルトの占める割合が高すぎると、製造コストが増大するおそれがある。そのためたとえば正極活物質が有するニッケルと、コバルトと、マンガンの原子数の和を100としたとき、コバルトの原子数が2.5以上34以下であることが好ましい。
【0187】
遷移金属としてマンガンを有すると、耐熱性および化学安定性が向上するため好ましい。しかしマンガンの占める割合が高すぎると、放電電圧および放電容量が低下する傾向がある。そのためたとえば正極活物質が有するニッケルと、コバルトと、マンガンの原子数の和を100としたとき、マンガンの原子数が2.5以上33以下であることが好ましい。
【0188】
<LixCoO2>
正極活物質は、コバルト酸リチウムを用いることができる。コバルト酸リチウムは、LixCoO2で表され、LixCoO2中のxが1のとき、コバルト酸リチウムは空間群R-3mに帰属する層状岩塩型の結晶構造を有し、LixCoO2中のxが0.1<x≦0.24の充電状態のとき、コバルト酸リチウムは空間群P2/m、格子定数a=0.488±0.001(nm)、格子定数b=0.282±0.001(nm)、格子定数c=0.484±0.001(nm)、α=90°、β=109.58±0.01°、γ=90°の結晶構造を有するとよい。
【0189】
さらにLixCoO2中のxが0.1<x≦0.24の充電状態のとき、コバルト酸リチウムをX線回折で分析すると、少なくとも2θ=19.37°以上19.57°以下と、2θ=45.57°以上45.67°以下と、に回折ピークを有するとよい。
【0190】
コバルト酸リチウムのメディアン径(D50)は、10μm以上14μmであるとよい。またコバルト酸リチウムのメディアン径(D50)は、5μm以上9μm以下であるとよい。2つ以上のメディアン径(D50)を有するコバルト酸リチウムを混合して正極活物質に用いてもよい。
【0191】
コバルト酸リチウムは、リチウムの挿入脱離が可能なコバルトと酸素を有する複合酸化物であるため、リチウムの挿入脱離に伴い酸化還元するコバルトが存在する領域と、存在しない領域の界面を、正極活物質の「表面」とすることができる。
【0192】
コバルト酸リチウムにおいて、表層部とは、例えば、表面から内部に向かって50nm以内、より好ましくは35nm以内、さらに好ましくは20nm以内、最も好ましくは10nm以内の領域である。または表層部は、表面近傍、表面近傍領域またはシェルと言い換えてもよい。なお面から内部に向かって50nm以内、より好ましくは35nm以内、さらに好ましくは20nm以内、最も好ましくは10nm以内の領域は、表面から垂直または略垂直に沿った深さ方向の距離を指す。表面における垂直または略垂直とは表面における接線となす角度が80°以上100°以下の方向を指す。またバルク部は表層部より深い領域を指す。バルク部は、内部と呼ぶことがあり、さらにコアと言い換えてもよい。バルク部には正極活物質の中央部が含まれることがある。
【0193】
コバルト酸リチウムは例示した元素以外の元素(添加元素と記す)を有してもよい。添加元素はニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、塩素、フッ素、アルミニウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、イットリウム、バナジウム、鉄、クロム、ニオブ、ランタン、ハフニウム、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン、ホウ素、及びヒ素の中から選ばれた一または二以上を用いることができる。
【0194】
表層部に位置する添加元素は、マグネシウム及び/又はアルミニウムが好ましい。バルク部に位置する添加元素は、ニッケルが好ましい。
【0195】
マグネシウム及び/又はアルミニウムを有するコバルト酸リチウムは、高い充電電圧(以下、「高充電電圧」とも記す)での充放電を可能とする。なお、本明細書等において特に言及しない場合、「充電電圧」はリチウム金属の電位を基準として表すものとする。また、本明細書等において、コバルト酸リチウムを正極に用いた場合の「高充電電圧」とは、例えば4.6V以上の充電電圧とし、好ましくは4.65以上とし、さらに好ましくは4.7V以上とする。
【0196】
<LiMPO4>
オリビン型の結晶構造を有するリチウム複合酸化物は、LiMPO4(ここでM=Fe,Mn,Ni,Coのいずれか一以上を有する)と表される。Fe及びMnは熱安定性にも優れていることから、MとしてFe、若しくはMnを用いる、又はMとしてFe及びMnを用いると正極活物質として好適である。MとしてFeを用いた場合、LiFePO4と表され、これをリン酸鉄リチウム、又はLFPと記すことがある。LFPはリチウム、鉄及び燐を有する複合酸化物と記すことがある。
【0197】
リン酸鉄リチウムは例示した元素以外の元素(添加元素と記す)を有してもよい。添加元素はニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、塩素、フッ素、アルミニウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、イットリウム、バナジウム、鉄、クロム、ニオブ、ランタン、ハフニウム、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン、ホウ素、及びヒ素の中から選ばれた一または二以上を用いることができる。
【0198】
<負極活物質>
負極活物質について説明する。本明細書等において、負極活物質はキャリアイオンとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。キャリアイオンは代表的にはリチウムイオンを用いるが、ナトリウムイオン、又はマグネシウムイオン等を適用してもよい。
【0199】
本明細書等において、負極活物質粒子等に用いる「粒子」は、球形(断面形状が円)のみを指すことに限定されない。例えば粒子には、断面形状が楕円形、非対称の形状などが含まれ、さらに個々の粒子が揃っている必要はなく、互いに不定形となっていてもよい。
【0200】
負極活物質は、例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等から選ばれた一又は二以上の材料を用いることができる。このような元素は容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高く好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。
【0201】
本明細書等において、「SiO」は例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOxと表すこともできる。ここでxは1または1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下が好ましい。
【0202】
上記材料にはリチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、及び該元素を有する化合物等が含まれるが、これらを本明細書等において、「合金材料」と呼ぶ場合がある。
【0203】
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム-黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等から選ばれた一又は二以上の酸化物を用いることができる。
【0204】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3-xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
【0205】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させておくことで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0206】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。コンバージョン反応が生じる材料は例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等であり、これらはリチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物であるが負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
【0207】
また、負極活物質は、例えば、炭素材料を用いてもよい。炭素材料は、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、炭素繊維(カーボンナノチューブ)、グラフェン、カーボンブラック等から選ばれた一又は二以上を用いればよい。
【0208】
黒鉛は、人造黒鉛または天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては、例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
【0209】
黒鉛は、リチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/Li+)。これにより、黒鉛を用いたリチウムイオン電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0210】
<集電体>
集電体について説明する。正極集電体及び負極集電体はそれぞれ、ステンレス、金、白金、アルミニウム、銅、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料を用いることができる。また正極集電体に用いる材料は、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状、シート状、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。またアンダーコートとしてカーボンブラック又はグラフェンの層を有していてもよい。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。なお箔状とは厚みが1μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上30μm以下であることを言う。
【0211】
また、特にリチウム塩としてLiFSIを用いる場合は、正極集電体105及び負極集電体101はLiFSIによって腐食されにくい材料であることが好ましい。例えばチタン及びチタン化合物は腐食されにくく好ましい。またチタン、チタン化合物又はアルミニウムにカーボンコートをしたものも同様に好ましい。
【0212】
<セパレータ>
正極層と負極層との間にセパレータを配置してもよい。セパレータについて説明する。セパレータは、ゲルを有してもよい。またセパレータは、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリプロピレン(PPと記す)、ポリイミド(PIと記す)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータは膜厚の空隙率は35%以上90%以下、好ましくは60%以上85%以下とすることができる。ポリプロピレンを用いたセパレータは空隙率を35%以上45%以下とすることができる。ポリイミドを用いたセパレータは空隙率を75%以上85%以下とすることができる。セパレータの膜厚は10μm以上80μm以下が好ましく、20μm以上60μm以下がより好ましい。ポリイミドを用いたセパレータは高い空隙率を有することができ、厚膜化(代表的には膜厚を50μm以上60μm以下)することができ好ましい。
【0213】
セパレータは袋状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
【0214】
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミック系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
【0215】
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くてもリチウムイオン電池の安全性を保つことができるため、リチウムイオン電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0216】
<外装体>
外装体について説明する。外装体としては、例えばアルミニウムなどの金属材料又は樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としてゴム材料などがある。ゴムには天然ゴムと合成ゴムがある。合成ゴムには、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料がある。
【0217】
またリチウムイオン電池が有する外装体は、フィルム形状であるとよい。フィルム形状を可能とする外装体は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料を有するとよい。またフィルム形状を可能とする外装体は、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を用いるとよい。
【0218】
さらに、フィルム形状を可能とする外装体は、積層構造を有してもよい。第1の層には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料を有し、第2の層には、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を有するとよい。
【0219】
さらに外装体の外面は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性の合成樹脂膜を設けるとよい。当該外面の構成を上記第1の層及び第2の層の積層構造に適用すると、三層構造のフィルムを用いることができる。
【0220】
本発明の一態様の電解質層を有するリチウムイオン電池は、曲げやすく好ましい。上述した絶縁性の合成樹脂膜を用いた外装体は、曲がったリチウムイオン電池、又は曲げた状態と伸ばした状態とに変化するリチウムイオン電池に好適である。
【0221】
<バインダ>
正極層及び負極層はバインダを有してもよい。さらに電解質層もバインダを有してもよい。バインダについて説明する。バインダは、ゲルを有してもよい。またバインダは、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとして、フッ素ゴムを用いることができる。
【0222】
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体、及び澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用すると、さらに好ましい。
【0223】
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等から選ばれた一以上を用いることが好ましい。
【0224】
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
【0225】
<導電材>
正極層及び/又は負極層は導電材を有してもよい。導電材について説明する。導電材は、炭素材料を用いることができる。複数の活物質の間に導電材を付着させることで複数の活物質同士が電気的に接続され、導電性が高まる。なお、本明細書等において「付着」とは、活物質と導電材が物理的に密着していることのみを指しているのではなく、共有結合が生じる場合、ファンデルワールス力により結合する場合、活物質の表面の一部を導電材が覆う場合、活物質の表面凹凸に導電材がはまりこむ場合、互いに接していなくとも電気的に接続される場合などを含む概念とする。
【0226】
導電材として用いることができる炭素材料の具体例は、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、黒鉛など)グラフェン、グラフェン化合物、又は炭素繊維を用いることができる。
【0227】
<グラフェン、及びグラフェン化合物>
本明細書等においてグラフェンは炭素を有し、平板状、シート状等の形状を有し、炭素6員環で形成された二次元的構造を有するものであり、グラフェン以外に多層グラフェン、マルチグラフェン等が含まれる。またグラフェンは、丸まってカーボンナノファイバーのようになっていてもよい。またグラフェンを該炭素6員環で形成された二次元的構造は炭素シートといってもよい。
【0228】
本明細書等においてグラフェン化合物は平板状、シート状等の形状を有し、酸化グラフェン、多層酸化グラフェン、マルチ酸化グラフェン、還元された酸化グラフェン、還元された多層酸化グラフェン、還元されたマルチ酸化グラフェン、グラフェン量子ドット等が含まれる。またグラフェン化合物は丸まってナノファイバーのようになっていてもよい。さらにグラフェン化合物は官能基を有してもよく、当該官能基としてエポキシ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基が好ましい。
【0229】
本明細書等において還元された酸化グラフェン、還元された多層酸化グラフェン、又は還元されたマルチ酸化グラフェンとは、炭素の濃度が80atomic%より大きく、酸素の濃度が2atomic%以上15atomic%以下である部分を有することが好ましい。このような炭素濃度および酸素濃度とすることで、少量でも導電性の高い導電材として機能することができる。また還元された酸化グラフェン、還元された多層酸化グラフェン、還元されたマルチ酸化グラフェンは、ラマンスペクトルにおけるGバンドとDバンドの強度比G/Dが1以上であることが好ましい。このような強度比とすることで、少量でも導電性の高い導電材として機能することができる。さらに酸化グラフェン、多層酸化グラフェン、マルチ酸化グラフェンを還元することにより、グラフェン化合物に孔を設けることができる場合がある。
【0230】
本実施の形態は、他の実施の形態と組み合わせて用いることができる。
【0231】
(実施の形態2)
上述した作製工程は、ロールツーロール方式の製造装置などによって連続的に行うことが望ましい。本実施の形態では、
図4に示す製造装置を用いた作製工程を説明する。
【0232】
図4に示す製造装置を用いて、少なくとも正極集電体105上にスラリーを塗布する工程310と、スラリーを乾燥させて正極活物質層104を形成する工程320と、正極活物質層104上に電解質層103を重ね合わせる工程330と、正極活物質層104が形成された正極集電体105を電解質層103とともに一対の加圧ロール(第1の加圧ロール325、第2の加圧ロール326)の間を通過させる工程340と、を実施することができる。
【0233】
上記工程310について説明する。
図4に示すように製造装置は送り出し機構311(アンワインダーともいう)を有し、当該送り出し機構311に、正極集電体105が巻かれた第1のボビン312を設置する。ローラ313の回転を利用して正極集電体105を移動させ、第1のスラリー付着手段314aによって、正極集電体105の一方の面上にスラリーを塗布する。ローラ313は対になっており、間を通過する際に塗布されたスラリー等をプレスするも可能である。
【0234】
工程310におけるスラリーとは、正極活物質層の出発材料を有するものであり、正極活物質、導電材、バインダなどを有する。さらに各材料はスラリー中で適度に分散させておくとよいため、スラリーに分散剤を含ませておくとよい。また正極活物質層の電解質に液体材料を用いる場合は、スラリーに含ませることなく、工程320の前、又は工程330の前に、正極活物質層へ滴下しておくとよい。電解質にゲルを用いる場合も、スラリーに含ませることなく、工程320の前、又は工程330の前に、正極活物質層へ滴下しておくとよい。架橋反応が必要なゲルを用いたときは、工程320の前に電解質層への滴下を済ましておき、工程320を用いて、架橋反応に必要な熱処理を実施してもよい。さらにまた、電解質に固体材料を用いる場合は、スラリーに含ませておくとよい。
【0235】
第1のスラリー付着手段314aとしては、例えば、スロットダイコータ、リップコータ、ブレードコータ、リバースコータ、グラビアコータなどを用いることができる。なお、用いるコータの種類によって、正極集電体105を反転させるためのローラを増やしてもよい。また、第1のスラリー付着手段314aとして、ディップ法又はスプレー法などの手法を用いることもできる。また、用いる材料によっては第1のスラリー付着手段314aを加熱しながらスラリーを塗布する。すなわち、加熱されたスラリーを塗布してもよい。
【0236】
工程320では、吸気口322、排気口323、及び乾燥手段324を有する加熱室321aにおいて、正極集電体105上に塗布されたスラリーを乾燥させる。スラリーを乾燥させることにより、正極集電体105上に、正極活物質層104を形成することができる。吸気口322、排気口323は加熱室321aの天井(上面とも記す)に設置すると好ましいが、これらは加熱室321aの壁面(側面とも記す)又は床面(底面とも記す)に設置してもよい。乾燥手段324としては、温風加熱、ランプ加熱、誘導加熱、送風などから選ばれた一又は二以上組み合わせた方法を用いることができる。
【0237】
工程320では、スラリーの乾燥後に自然冷却させる例を示しており冷却手段は設置していないが、強制的に冷却するために加熱室321a内又はその近傍に冷却手段を設置してもよい。
【0238】
工程330では、正極活物質層104上に、付着手段314bによって電解質層103を設ける。電解質層103はシート状をなすため、工程330でのハンドリングがしやすく好ましい。さらに電解質層103は粘着性を発現することがあり、正極活物質層104に付着させやすい。またさらに電解質層103と正極活物質層104とに共通材料を用いた場合、付着後、又はリチウムイオン電池を充放電した後の加熱がきっかけとなり、共通材料が溶解することがある。共通材料が溶解すると、正極活物質層104と電解質層103との境界がなくなるため、界面抵抗を抑制できる。
【0239】
また、正極集電体105の処理と並行して、負極集電体101の処理も行う。負極集電体101が巻かれた第2のボビン405を送り出し機構315に設置し、ローラ316の回転を利用して、第2のスラリー付着手段314cによって、負極集電体101の一方の面上にスラリーを塗布する。ローラ316は対になっており、間を通過する際に塗布されたスラリーをプレスすることも可能である。
【0240】
負極層におけるスラリーとは、負極活物質層の出発材料を有するものであり、負極活物質、導電材、バインダなどを有する。さらに各材料はスラリー中で適度に分散させておくとよいため、スラリーに分散剤を含ませておくとよい。また負極活物質層の電解質に液体材料を用いる場合は、スラリーに含ませることなく加熱室321bへ搬入される前、又は工程340の前に、負極活物質層へ滴下しておくとよい。電解質にゲルを用いる場合も、スラリーに含ませることなく、加熱室321bへ搬入される前、又は工程340の前に、負極活物質層へ滴下しておくとよい。架橋反応が必要なゲルを用いたときは、加熱室321bへ搬入される前に電解質層への滴下を済ましておき、加熱室321bを用いて、架橋反応に必要な熱処理を実施してもよい。さらにまた、電解質に固体材料を用いる場合は、スラリーに含ませておくとよい。
【0241】
第2のスラリー付着手段314cとしては、例えば、スロットダイコータ、リップコータ、ブレードコータ、リバースコータ、グラビアコータなどを用いることができる。なお、用いるコータの種類によって、負極集電体101を反転させるためのローラを増やしてもよい。また第2のスラリー付着手段314cとして、ディップ法又はスプレー法などの手法を用いることもできる。また、用いる材料によっては第2のスラリー付着手段314cを加熱しながらスラリーを塗布する。スラリーは加熱された状態で塗布されるとよい。
【0242】
次いで、加熱室321bにおいて、負極集電体101上に塗布されたスラリーを乾燥させる。加熱室321bは加熱室321aと同様の構成を有すればよい。スラリーを乾燥させることにより、負極集電体101上に負極活物質層102を形成することができる。そして、スラリーの乾燥後に自然冷却させてもよいし、冷却手段を加熱室321b内又はその近傍に設置して強制的に冷却してもよい。
【0243】
工程340では、一対の加圧ロール(第1の加圧ロール325、第2の加圧ロール326)の回転を利用して、正極集電体105を負極集電体101と重ねあわせてプレスを行う。プレスの際に加熱してもよい。電解液を注入する工程を有さないため、ガスが発生した場合であっても放出することができる。
【0244】
最後に、巻き取り機構327(ワインダーともいう)に設置された第2のボビン328に、積層体を巻き取る。そして、図示していないレーザーカット又はカッターなどの切断手段により、所望の形状に切断する。巻き取られる際、電解質層103は半固体の状態を有するため、液漏れを抑制でき好ましい。
【0245】
また、
図4では積層体を巻き取る例を示したが、巻き取らずに図示していないレーザーカット、又はカッターなどの切断手段により、所望の形状に切断してもよい。
【0246】
以上の工程により、リチウムイオン電池を作製することができる。
【0247】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0248】
(実施の形態3)
本実施の形態では、リチウムイオン電池の形態例について説明する。
【0249】
[ラミネート型リチウムイオン電池]
ラミネート型のリチウムイオン電池100の形態例について、
図5(A)及び
図5(B)に示す。
図5(A)及び
図5(B)は外観図であり、リチウムイオン電池100は上記実施の形態で説明した電解質層(
図5では図示せず)、負極層106、及び正極層107等を有する。リチウムイオン電池100において、負極層106は正極層107よりも大きな面積を有するとよい。
【0250】
電解質層、負極層106、及び正極層107は外装体509に収容され、負極リード電極510の一部、及び正極リード電極511の一部は外装体509から突出している。負極リード電極510は負極層106と電気的に接続され、正極リード電極511は正極層107と電気的に接続されている。外装体509の外周に沿って、接着領域508を有する。
図5(A)は負極リード電極510、及び正極リード電極511が外装体509の同じ辺から突出した形態例であり、接着領域508は、少なくとも各リード電極が突出した辺と、当該辺に隣接した二辺とに位置する。また
図5(B)は負極リード電極510が外装体509から突出した辺と、正極リード電極511が外装体509から突出した辺とが対向している形態例であり、接着領域508は少なくとも各リード電極が突出した二辺と、当該二辺に挟まれた一辺とに位置する。
図5(A)及び
図5(B)において外装体509の一辺は折り曲げられた辺に対応し、当該折り曲げられた辺には接着領域は不要である。
【0251】
ラミネート型のリチウムイオン電池100に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。ラミネート型のリチウムイオン電池100の製造工程は、外装体を接着した後に電解液を注入する工程を有さない。外装体を最後に接着することができるため、製造工程の途中でガスが発生しても放出できる。
【0252】
[コイン型リチウムイオン電池]
コイン型(単層偏平型)のリチウムイオン電池の一例について説明する。コイン型のリチウムイオン電池は主に小型の電子機器に用いられるものであり、本明細書等において、コイン型電池にはボタン型電池が含まれる。
図6(A)はコイン型のリチウムイオン電池の外観図であり、
図6(B)は、コイン型のリチウムイオン電池の断面図であり、
図6(C)はコイン型のリチウムイオン電池の分解斜視図である。
図6(B)と
図6(C)は完全に一致する対応図ではないが、
図6(C)により部材の重なり(上下関係、及び位置関係)を詳述する。
【0253】
図6(A)では、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着した、コイン形のリチウムイオン電池300を示す。ガスケットを絶縁パッキンと呼ぶことがある。ガスケット303により負極缶302と、正極缶301とが絶縁される。そのためガスケット303は、ポリプロピレン等の絶縁材料を用いるとよい。正極缶301、負極缶302にはそれぞれ、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金、及びこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いるとよく、正極缶301、負極缶302はそれぞれ集電体としての機能を奏することもできる。正極缶301、負極缶302はそれぞれ端子を兼ねることもできる。
【0254】
図6(B)では、コイン型のリチウムイオン電池300の断面図を示し、正極缶301側に正極層304が位置する。また負極缶302側に負極層307が位置する。正極層304と負極層との間には、電解質層319が位置する。正極層304は正極集電体305と、正極活物質層306とを有する。負極層307は、負極集電体308と、負極活物質層309とを有する。また正極層304及び負極層307では、それぞれ活物質層は集電体の片面のみに形成すればよい。またさらに、負極層307は、積層構造に限定されず、リチウム金属箔又はリチウムとアルミニウムの合金箔を用いることもできる。正極活物質層306は、電解質層103を介して、負極活物質層309が向かい合うように配置される。またガスケット303はコイン型のリチウムイオン電池300の外周に沿って配置し、負極缶302と、正極缶301とを絶縁している。コイン型のリチウムイオン電池300に空隙333が配置してもよい。空隙333へ電解質層319等の溶質を放出してもよい。
【0255】
図6(C)ではガスケットを図示しないが、正極缶301に収容された正極層304を示し、正極層304上に電解質層319が重なり、電解質層319上に負極層307が重なり、負極層307上に負極缶302が重なる状態を示す。電解質層319を重ねる前に正極層304へ電解質を滴下してもよい。また負極缶302に負極層307を収容した状態で、電解質を滴下し、その後正極缶301と圧着するとよい。
【0256】
図示しなかったが、コイン型のリチウムイオン電池は、ワッシャー及び/又はスペーサを有してもよい。
【0257】
コイン型のリチウムイオン電池100に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0258】
[円筒型リチウムイオン電池]
円筒型のリチウムイオン電池の例について
図7(A)を参照して説明する。円筒型のリチウムイオン電池616は、
図7(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット610によって絶縁されている。
【0259】
図7(B)は、円筒型のリチウムイオン電池の断面を模式的に示した図である。
図7(B)に示す円筒型のリチウムイオン電池は、上述したが上面に正極キャップ601を有し、側面及び底面に電池缶602を有している。電池缶602は中空円柱状を有し、その内側には、正極層604と、負極層606とが、電解質層605を間に挟んで捲回された状態で設けられている。捲回された状態を電池素子と呼んでもよい。正極層604、負極層606、及び電解質層605は帯状をなす。帯状とはシート状に含まれるが、長辺が短辺の3倍以上のものを指す。電池缶602は、底面となる一面は閉じられ、底面に対向する上面が開いている。電池缶602には、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金、及びこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、ニッケル及びアルミニウム等を電池缶602の内側に被覆してもよい。電池缶602の内側で、電池素子は、上面側に位置する絶縁板608と、底面側に位置する絶縁板609により挟まれている。
【0260】
円筒型のリチウムイオン電池に用いる正極層及び負極層は、上述したように捲回されるものであり、それぞれ集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。なお
図7(A)乃至
図7(D)では円筒の直径よりも円筒の高さの方が大きいリチウムイオン電池616を図示したが、これに限らない。円筒の直径が、円筒の高さよりも大きいリチウムイオン電池としてもよい。円筒の形状によって、リチウムイオン電池の小型化を図ることができる。
【0261】
正極層604には正極端子(正極集電リードとも呼ぶ)603が接続され、正極端子603は上面側に位置する。負極層606には負極端子(負極集電リードとも呼ぶ)607が接続され、負極端子607は底面側に位置する。正極端子603及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。
【0262】
正極端子603は安全弁機構613に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構613は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構613はリチウムイオン電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極層604との電気的な接続を切断する機能を有する。また、PTC素子611はリチウムイオン電池の温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子611には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミックス材料等を用いることができる。
【0263】
図7(C)は蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数のリチウムイオン電池616を有し、バッテリーパックと呼ばれることもある。複数のリチウムイオン電池間で正極端子を接続させないために、絶縁体625が配置され、当該絶縁体625で分離された導電体624にそれぞれの正極端子を接触させる。
図7(C)の蓄電システムは複数のリチウムイオン電池が並列に接続されたものであり、大きな容量を確保できる。
【0264】
また導電体624は配線623を介して、制御回路620に電気的に接続されている。複数のリチウムイオン電池の負極端子は導電体614に接触され、導電体614は配線626を介して制御回路620に電気的に接続されている。制御回路620として、過充電又は過放電を防止する保護回路等を適用することができる。
【0265】
複数のリチウムイオン電池616は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後さらに直列に接続されていてもよい。複数のリチウムイオン電池616を有する蓄電システム615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。このような蓄電システム615として、
図7(D)には、
図7(C)の並列の接続関係に加えて、直列の接続関係を満たす複数のリチウムイオン電池616等を示す。
【0266】
制御回路620に接続された配線622は、導電体614bと電気的に接続され、導電体614bに複数の負極端子が接触するように、複数のリチウムイオン電池616aを配置する。当該複数のリチウムイオン電池616aの正極端子627は導電体628bに接触する。導電体628bは隣接した、複数のリチウムイオン電池616bの正極端子とも接触している。複数のリチウムイオン電池616bの負極端子は、導電体614aに接触している。導電体614aは、さらに隣接した、複数のリチウムイオン電池616cの負極端子とも接触する。複数のリチウムイオン電池616cの正極端子は、導電体628aと接触する。導電体628aは、配線621を介して制御回路620と電気的に接続されている。
【0267】
このような構成により並列の接続関係に加えて、直列の接続関係を満たす複数のリチウムイオン電池となり、大きな電力を取り出すことができる。
【0268】
複数のリチウムイオン電池616a乃至616cの隙間に温度制御装置を有していてもよい。複数のリチウムイオン電池616a乃至616cが過熱されたときは、温度制御装置により冷却し、複数のリチウムイオン電池616a乃至616cが冷えすぎているときは温度制御装置により加熱することができる。温度制御装置により、蓄電システム615の性能が外気温に影響されにくくなり好ましい。
【0269】
また、制御回路620として、過充電又は過放電を防止する保護回路等を適用することができる。
【0270】
円筒型のリチウムイオン電池616に本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0271】
[リチウムイオン電池の他の構造例]
リチウムイオン電池の構造例について
図8及び
図9を用いて説明する。
【0272】
図8(A)に示すリチウムイオン電池913は、角型の筐体930に収容された捲回体950を有する。捲回体950には負極端子951と、正極端子952とが位置し、これらが筐体930の外側へ延在するため、筐体930の上面には開口部が設けられている。正極端子952は、筐体930に接し、負極端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していないように開口部を形成する。なお、
図8(A)では、筐体930を分離して図示しているが、実際のリチウムイオン電池913では、捲回体950が筐体930に覆われており、負極端子951及び正極端子952が筐体930の外に延在している形態となる。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)を用いることができるが、金属材料に代えて樹脂材料を用いてもよい。
【0273】
なお、
図8(B)に示すように、筐体930を複数の部品に分けてもよい。例えば、
図8(B)に示すリチウムイオン電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
【0274】
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、リチウムイオン電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
【0275】
さらに、捲回体950の構造について
図8(C)に示す。捲回体950は、負極層931と、正極層932と、電解質層933と、を有する。捲回体950は、電解質層933を挟んで負極層931と、正極層932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極層931と、正極層932と、電解質層933と、の積層構造を、さらに複数用意して重ねてもよい。
【0276】
また、
図9(A)乃至
図9(C)に示すような捲回体950aを有するリチウムイオン電池913としてもよい。
図9(A)に示す捲回体950aは、負極層931と、正極層932と、電解質層933と、を有する。負極層931は負極活物質層931aを有する。正極層932は正極活物質層932aを有する。
【0277】
電解質層933は、負極活物質層931a及び正極活物質層932aよりも広い幅を有し、負極活物質層931a及び正極活物質層932aと重畳するように捲回されているとよい。また正極活物質層932aよりも負極活物質層931aの幅が広い構成は、安全性の点で好ましい。またこのような形状の捲回体950aは生産性がよく好ましい。
【0278】
図9(B)に示すように、負極層931は負極端子951と電気的に接続される。負極端子951は端子911aと電気的に接続される。また正極層932は正極端子952と電気的に接続される。正極端子952は端子911bと電気的に接続される。
【0279】
図9(C)に示すように、筐体930により捲回体950aが覆われ、リチウムイオン電池913となる。筐体930には安全弁、過電流保護素子等を設けることが好ましい。安全弁は、電池破裂を防止するため、筐体930の内部が所定の内圧で開放する弁である。なお本発明の一形態の電解質層を有するリチウムイオン電池は、ガスの発生が抑制されるため、安全弁を省略することもできる。
【0280】
図9(B)に示すようにリチウムイオン電池913は複数の捲回体950aを有していてもよい。複数の捲回体950aを用いることで、より容量の大きなリチウムイオン電池913とすることができる。
図9(A)及び(B)に示すリチウムイオン電池913の他の要素は、
図8(A)乃至
図8(C)に示すリチウムイオン電池913の記載を参酌することができる。
【0281】
捲回体を有するリチウムイオン電池913に本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0282】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と適宜組み合わせることができる。
【0283】
(実施の形態4)
本実施の形態では、
図10を用いて電気自動車(EV)に適用する例を示す。
【0284】
図10(A)に示すように電気自動車には、メインの駆動用のリチウムイオン電池として第1のバッテリ1301a、1301bと、モータ1304を始動させるインバータ1312に電力を供給する第2のバッテリ1311が設置されている。第1のバッテリ1301a、1301bに本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0285】
第2のバッテリ1311はクランキングバッテリー(スターターバッテリーとも呼ばれる)とも呼ばれる。第2のバッテリ1311は高出力できればよく、大容量はそれほど必要とされず、第2のバッテリ1311の容量は第1のバッテリ1301a、1301bと比較して小さい。
【0286】
第1のバッテリ1301aの内部構造は、捲回型であってもよいし、積層型であってもよい。
【0287】
本実施の形態では、第1のバッテリ1301a、1301bを2つ並列に接続させている例を示しているが3つ以上並列に接続させてもよい。また、第1のバッテリ1301aで十分な電力を貯蔵できるのであれば、第1のバッテリ1301bはなくてもよい。複数のリチウムイオン電池を有する電池パックを構成することで、大きな電力を取り出すことができる。複数のリチウムイオン電池は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後、さらに直列に接続されていてもよい。複数のリチウムイオン電池を組電池とも呼ぶ。
【0288】
また、車載用のリチウムイオン電池において、複数のリチウムイオン電池からの電力を遮断するため、工具を使わずに高電圧を遮断できるサービスプラグ又はサーキットブレーカを有しており、第1のバッテリ1301aに設けられる。
【0289】
また、第1のバッテリ1301a、1301bの電力は、主にモータ1304を回転させることに使用されるが、DCDC回路1306を介して42V系の車載部品(電動パワステ1307、ヒーター1308、デフォッガ1309など)に電力を供給する。後輪にリアモータ1317を有している場合にも、第1のバッテリ1301aがリアモータ1317を回転させることに使用される。
【0290】
また、第2のバッテリ1311は、DCDC回路1310を介して14V系の車載部品(オーディオ1313、パワーウィンドウ1314、ランプ類1315など)に電力を供給する。
【0291】
また、第1のバッテリ1301aについて、
図10(B)を用いて説明する。
【0292】
図10(B)では9個の角型リチウムイオン電池1300を一つの電池パック1415としている例を示している。また、9個の角型リチウムイオン電池1300を直列接続し、一方の電極を絶縁体からなる固定部1413で固定し、もう一方の電極を絶縁体からなる固定部1414で固定している。本実施の形態では固定部1413、1414で固定する例を示しているが電池収容ボックス(筐体とも呼ぶ)に収納させる構成としてもよい。車両は外部(路面など)から振動又は揺れが加えられることを想定されているため、固定部1413、1414及び電池収容ボックスなどで複数のリチウムイオン電池を固定することが好ましい。また、一方の電極は配線1421によって制御回路部1320に電気的に接続されている。他方の電極は配線1422によって制御回路部1320に電気的に接続されている。
【0293】
また、制御回路部1320は、酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いてもよい。酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を有する充電制御回路、又は電池制御システムを、BTOS(Battery operating system、又はBattery oxide semiconductor)と呼称する場合がある。
【0294】
酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムから選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(C-Axis Aligned Crystal Oxide Semiconductor)、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)であることが好ましい。また、酸化物として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。CAAC-OSは、複数の結晶領域を有し、当該複数の結晶領域はc軸が特定の方向に配向している酸化物半導体である。なお、特定の方向とは、CAAC-OS膜の厚さ方向、CAAC-OS膜の被形成面の法線方向、又はCAAC-OS膜の表面の法線方向である。また、結晶領域とは、原子配列に周期性を有する領域である。なお、原子配列を格子配列とみなすと、結晶領域とは、格子配列の揃った領域でもある。さらに、CAAC-OSは、a-b面方向において複数の結晶領域が連結する領域を有し、当該領域は歪みを有する場合がある。なお、歪みとは、複数の結晶領域が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。つまり、CAAC-OSは、c軸配向し、a-b面方向には明らかな配向をしていない酸化物半導体である。また、CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5Nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、又はその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つ又は複数の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5Nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、又はその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、又はパッチ状ともいう。
【0295】
また、低温環境下で使用可能であるため、制御回路部1320は酸化物半導体を用いるトランジスタを用いることが好ましい。プロセスを簡略なものとするため、制御回路部1320は単極性のトランジスタを用いて形成してもよい。半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタは、動作周囲温度が単結晶Siよりも広く-40℃以上150℃以下であり、リチウムイオン電池が加熱しても特性変化が単結晶に比べて小さい。酸化物半導体を用いるトランジスタのオフ電流は、150℃であっても温度によらず測定下限以下であるが、単結晶Siトランジスタのオフ電流特性は、温度依存性が大きい。例えば、150℃では、単結晶Siトランジスタはオフ電流が上昇し、電流オン/オフ比が十分に大きくならない。制御回路部1320は、安全性を向上することができる。
【0296】
酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いた制御回路部1320は、マイクロショート等の10項目の不安定性の原因に対し、リチウムイオン電池の自動制御装置として機能させることもできる。10項目の不安定性の原因を解消する機能としては、過充電の防止、過電流の防止、充電時過熱制御、組電池でのセルバランス、過放電の防止、残量計、温度に応じた充電電圧及び電流量自動制御、劣化度に応じた充電電流量制御、マイクロショート異常挙動検知、マイクロショートに関する異常予測などが挙げられ、そのうちの少なくとも一つの機能を制御回路部1320が有する。また、リチウムイオン電池の自動制御装置の超小型化が可能である。
【0297】
また、マイクロショートとは、リチウムイオン電池の内部の微小な短絡のことを指しており、リチウムイオン電池の正極と負極が短絡して充放電不可能の状態になるというほどではなく、微小な短絡部でわずかに短絡電流が流れてしまう現象を指している。比較的短時間、且つ、わずかな箇所であっても大きな電圧変化が生じるため、その異常な電圧値がその後の推定に影響を与える恐れがある。
【0298】
マイクロショートの原因の一つは、充放電が複数回行われることによって、正極活物質の不均一な分布により、正極の一部と負極の一部で局所的な電流の集中が生じ、又は副反応による副反応物の発生によりミクロな短絡が生じていると言われている。
【0299】
また、マイクロショートの検知だけでなく、制御回路部1320は、リチウムイオン電池の端子電圧を検知し、リチウムイオン電池の充放電状態を管理するとも言える。例えば、過充電を防ぐために充電回路の出力トランジスタと遮断用スイッチの両方をほぼ同時にオフ状態とすることができる。
【0300】
また、
図10(B)に示す電池パック1415のブロック図の一例を
図10(C)に示す。
【0301】
制御回路部1320は、少なくとも過充電を防止するスイッチと、過放電を防止するスイッチを含むスイッチ部1324と、スイッチ部1324を制御する制御回路1322と、第1のバッテリ1301aの電圧測定部と、を有する。制御回路部1320は、使用するリチウムイオン電池の上限電圧と下限電圧が設定されており、外部からの電流上限、及び外部への出力電流の上限などを制限している。リチウムイオン電池の下限電圧以上上限電圧以下の範囲内は、使用が推奨されている電圧範囲内であり、その範囲外となるとスイッチ部1324が作動し、保護回路として機能する。また、制御回路部1320は、スイッチ部1324を制御して過放電及び過充電を防止するため、保護回路とも呼べる。例えば、過充電となりそうな電圧を制御回路1322で検知した場合にスイッチ部1324のスイッチをオフ状態とすることで電流を遮断する。さらに充放電経路中にPTC素子を設けて温度の上昇に応じて電流を遮断する機能を設けてもよい。また、制御回路部1320は、外部端子1325(+IN)と、外部端子1326(-IN)とを有している。
【0302】
スイッチ部1324は、nチャネル型のトランジスタ及びpチャネル型のトランジスタを組み合わせて構成することができる。スイッチ部1324は、単結晶シリコンを用いるSiトランジスタを有するスイッチに限定されず、例えば、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)、InP(リン化インジウム)、SiC(シリコンカーバイド)、ZnSe(セレン化亜鉛)、GaN(窒化ガリウム)、GaOx(酸化ガリウム;xは0より大きい実数)などを有するパワートランジスタでスイッチ部1324を形成してもよい。また、OSトランジスタを用いた記憶素子は、Siトランジスタを用いた回路上などに積層することで自由に配置可能であるため、集積化を容易に行うことができる。またOSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置を用いて作製することが可能であるため、低コストで作製可能である。即ち、スイッチ部1324上にOSトランジスタを用いた制御回路部1320を積層し、集積化することで1チップとすることもできる。制御回路部1320の占有体積を小さくすることができるため、小型化が可能となる。
【0303】
第1のバッテリ1301a、1301bは、主に42V系(高電圧系)の車載機器に電力を供給し、第2のバッテリ1311は14V系(低電圧系)の車載機器に電力を供給する。第2のバッテリ1311は鉛蓄電池がコスト上有利のため採用されることが多い。鉛蓄電池はリチウムイオン電池と比べて自己放電が大きく、サルフェーションとよばれる現象により劣化しやすい欠点がある。第2のバッテリ1311をリチウムイオン電池とすることでメンテナンスフリーとするメリットがあるが、長期間の使用、例えば3年以上となると、製造時には判別できない異常発生が生じる恐れがある。特にインバータを起動する第2のバッテリ1311が動作不能となると、第1のバッテリ1301a、1301bに残容量があってもモータを起動させることができなくなることを防ぐため、第2のバッテリ1311が鉛蓄電池の場合は、第1のバッテリから第2のバッテリに電力を供給し、常に満充電状態を維持するように充電されている。
【0304】
本実施の形態では、第1のバッテリ1301aと第2のバッテリ1311の両方にリチウムイオン電池を用いる一例を示す。第2のバッテリ1311は鉛蓄電池、全固体電池、又は電気二重層キャパシタを用いてもよい。例えば、実施の形態5の全固体電池を用いてもよい。第2のバッテリ1311に実施の形態5の全固体電池を用いることで高容量とすることができ、小型化、軽量化することができる。
【0305】
また、タイヤ1316の回転による回生エネルギーは、ギア1305を介してモータ1304に送られ、モータコントローラ1303及びバッテリーコントローラ1302から制御回路部1321を介して第2のバッテリ1311に充電される。又はバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301aに充電される。又はバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301bに充電される。回生エネルギーを効率よく充電するためには、第1のバッテリ1301a、1301bが急速充電可能であることが望ましい。
【0306】
バッテリーコントローラ1302は第1のバッテリ1301a、1301bの充電電圧及び充電電流などを設定することができる。バッテリーコントローラ1302は、用いるリチウムイオン電池の充電特性に合わせて充電条件を設定し、急速充電することができる。
【0307】
また、図示していないが、外部の充電器と接続させる場合、充電器のコンセント又は充電器の接続ケーブルは、バッテリーコントローラ1302に電気的に接続される。外部の充電器から供給された電力はバッテリーコントローラ1302を介して第1のバッテリ1301a、1301bに充電する。また、充電器によっては、制御回路が設けられており、バッテリーコントローラ1302の機能を用いない場合もあるが、過充電を防ぐため制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301a、1301bを充電することが好ましい。また、接続ケーブル又は充電器の接続ケーブルに制御回路を備えている場合もある。制御回路部1320は、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれることもある。ECUは、電動車両に設けられたCAN(Controller Area Network)に接続される。CANは、車内LANとして用いられるシリアル通信規格の一つである。また、ECUは、マイクロコンピュータを含む。また、ECUは、CPU又はGPUを用いる。
【0308】
充電スタンドなどに設置されている外部の充電器は、100Vコンセント、200Vコンセント、3相200V且つ50kWなどがある。また、非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することもできる。
【0309】
急速充電を行う場合、短時間での充電を行うためには、高電圧での充電に耐えうるリチウムイオン電池が望まれている。
【0310】
次に、本発明の一態様であるリチウムイオン電池を車両、代表的には輸送用車両に実装する例について説明する。
【0311】
また、リチウムイオン電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。また、農業機械、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、電動カート、小型又は大型船舶、潜水艦、固定翼機及び回転翼機等の航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機、惑星探査機、宇宙船などの輸送用車両にリチウムイオン電池を搭載することもできる。本発明の一態様のリチウムイオン電池は高容量のリチウムイオン電池とすることができる。そのため本発明の一態様のリチウムイオン電池は、小型化、軽量化に適しており、輸送用車両に好適に用いることができる。
【0312】
図11(A)乃至
図11(D)において、本発明の一態様を用いた輸送用車両を例示する。
図11(A)に示す自動車2001は、走行のための動力源として電気モータを用いる電気自動車である。又は、走行のための動力源として電気モータとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。リチウムイオン電池を車両に搭載する場合、上記実施の形態で示したリチウムイオン電池の一例を一箇所又は複数個所に設置する。車両に搭載するリチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0313】
図11(A)に示す自動車2001は、電池パック2200を有し、電池パックは、複数のリチウムイオン電池を接続させたリチウムイオン電池モジュールを有する。さらにリチウムイオン電池モジュールに電気的に接続する充電制御装置を有すると好ましい。
【0314】
また、自動車2001は、自動車2001が有するリチウムイオン電池にプラグイン方式及び非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。充電に際しては、充電方法及びコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)又はコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。リチウムイオン電池は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車2001に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0315】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路又は外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、2台の車両どうしで電力の送受電を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時及び走行時にリチウムイオン電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式を用いることができる。
【0316】
図11(B)は、輸送用車両の一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車2002を示している。輸送車2002のリチウムイオン電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下のリチウムイオン電池を4個セルユニットとし、48セルを直列に接続した170Vの最大電圧とする。電池パック2201のリチウムイオン電池モジュールを構成するリチウムイオン電池の数などが違う以外は、
図10(B)と同様な機能を備えているので説明は省略する。電池パック2201のリチウムイオン電池に本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0317】
図11(C)は、一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車両2003を示している。輸送車両2003のリチウムイオン電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下のリチウムイオン電池を百個以上直列に接続した600Vの最大電圧とするまた、電池パック2202のリチウムイオン電池モジュールを構成するリチウムイオン電池の数などが違う以外は、
図10(B)と同様な機能を備えているので説明は省略する。モジュールが有するリチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0318】
図11(D)は、一例として燃料を燃焼するエンジンを有した航空機2004を示している。
図11(D)に示す航空機2004は、離着陸用の車輪を有しているため、輸送車両の一部とも言え、複数のリチウムイオン電池を接続させてリチウムイオン電池モジュールを構成し、リチウムイオン電池モジュールと充電制御装置とを含む電池パック2203を有している。
【0319】
航空機2004のリチウムイオン電池モジュールは、例えば4Vのリチウムイオン電池を8個直列に接続した32Vの最大電圧とする。電池パック2203のリチウムイオン電池モジュールを構成するリチウムイオン電池の数などが違う以外は、
図10(B)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
【0320】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と適宜組み合わせることができる。
【0321】
(実施の形態5)
本実施の形態では、二輪車、自転車等の車両に本発明の一態様であるリチウムイオン電池を搭載する例を示す。
【0322】
図12(A)は、本発明の一態様のリチウムイオン電池を用いた電動自転車の一例である。
図12(A)に示す電動自転車8700に、本発明の一態様のリチウムイオン電池を適用することができる。本発明の一態様のリチウムイオン電池は保護回路を有してもよい。
【0323】
電動自転車8700は、蓄電装置8702を備える。蓄電装置8702は、運転者をアシストするモータに電気を供給することができる。また、蓄電装置8702は、持ち運びができ、
図12(B)に自転車から取り外した状態を示している。また、蓄電装置8702は、本発明の一態様のリチウムイオン電池8701が複数内蔵されており、そのバッテリ残量などを表示部8703で表示できるようにしている。リチウムイオン電池8701に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0324】
また蓄電装置8702は、実施の形態7に一例を示したリチウムイオン電池の充電制御又は異常検知が可能な制御回路8704を有する。制御回路8704は、リチウムイオン電池8701の正極及び負極と電気的に接続されている。リチウムイオン電池による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
【0325】
図12(C)は、本発明の一態様のリチウムイオン電池を用いた二輪車の一例である。
図12(C)に示すスクータ8600は、蓄電装置8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。蓄電装置8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。リチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0326】
図12(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、蓄電装置8602を収納することができる。蓄電装置8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
【0327】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態内容と適宜組み合わせることができる。
【0328】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様であるリチウムイオン電池を電子機器に実装する例について説明する。リチウムイオン電池を実装する電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。携帯情報端末としてはノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、電子書籍端末、携帯電話機などがある。
【0329】
図13(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機2100は、筐体2101に組み込まれた表示部2102の他、操作ボタン2103、外部接続ポート2104、スピーカ2105、マイク2106などを備えている。なお、携帯電話機2100は、リチウムイオン電池2107を有している。リチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0330】
携帯電話機2100は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0331】
操作ボタン2103は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯電話機2100に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン2103の機能を自由に設定することもできる。
【0332】
また、携帯電話機2100は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0333】
また、携帯電話機2100は外部接続ポート2104を備え、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また外部接続ポート2104を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は外部接続ポート2104を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0334】
携帯電話機2100はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサ、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
【0335】
図13(B)は複数のローター2302を有する無人航空機2300である。無人航空機2300はドローンと呼ばれることもある。無人航空機2300は、本発明の一態様であるリチウムイオン電池2301と、カメラ2303と、アンテナ(図示しない)を有する。無人航空機2300はアンテナを介して遠隔操作することができる。リチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0336】
図13(C)は、ロボットの一例を示している。
図13(C)に示すロボット6400は、リチウムイオン電池6409、照度センサ6401、マイクロフォン6402、上部カメラ6403、スピーカ6404、表示部6405、下部カメラ6406及び障害物センサ6407、移動機構6408、演算装置等を備える。
【0337】
マイクロフォン6402は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ6404は、音声を発する機能を有する。ロボット6400は、マイクロフォン6402及びスピーカ6404を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0338】
表示部6405は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット6400は、使用者の望みの情報を表示部6405に表示することが可能である。表示部6405は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、表示部6405は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット6400の定位置に設置することで、充電及びデータの受け渡しを可能とする。
【0339】
上部カメラ6403及び下部カメラ6406は、ロボット6400の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ6407は、移動機構6408を用いてロボット6400が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット6400は、上部カメラ6403、下部カメラ6406及び障害物センサ6407を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
【0340】
ロボット6400は、その内部領域に本発明の一態様に係るリチウムイオン電池6409と、半導体装置又は電子部品を備える。リチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0341】
図13(D)は、掃除ロボットの一例を示している。掃除ロボット6300は、筐体6301上面に配置された表示部6302、側面に配置された複数のカメラ6303、ブラシ6304、操作ボタン6305、リチウムイオン電池6306、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット6300には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット6300は自走し、ゴミ6310を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0342】
例えば、掃除ロボット6300は、カメラ6303が撮影した画像を解析し、壁、家具又は段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ6304に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ6304の回転を止めることができる。掃除ロボット6300は、その内部領域に本発明の一態様に係るリチウムイオン電池6306と、半導体装置又は電子部品を備える。リチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0343】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0344】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様であるリチウムイオン電池を宇宙用機器に実装する例について説明する。
【0345】
図14(A)には、宇宙用機器の一例として、人工衛星6800を示している。人工衛星6800は、機体6801と、ソーラーパネル6802と、アンテナ6803と、リチウムイオン電池6805と、を有する。ソーラーパネルは、太陽電池モジュールと呼ばれる場合がある。
【0346】
ソーラーパネル6802に太陽光が照射されることにより、人工衛星6800が動作するために必要な電力が生成される。しかしながら、たとえばソーラーパネルに太陽光が照射されない状況、またはソーラーパネルに照射される太陽光の光量が少ない状況では、生成される電力が少なくなる。よって、人工衛星6800が動作するために必要な電力が生成されない可能性がある。生成される電力が少ない状況下であっても人工衛星6800を動作させるために、人工衛星6800にリチウムイオン電池6805を設けるとよい。リチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。
【0347】
人工衛星6800は、信号を生成することができる。当該信号は、アンテナ6803を介して送信され、たとえば地上に設けられた受信機、または他の人工衛星が信号を受信することができる。人工衛星6800が送信した信号を受信することにより、たとえば当該信号を受信した受信機の位置を測定することができる。以上より、人工衛星6800は、たとえば衛星測位システムを構成することができる。
【0348】
または、人工衛星6800は、センサを有する構成とすることができる。たとえば、可視光センサを有する構成とすることにより、人工衛星6800は、地上に設けられている物体に当たって反射された太陽光を検出する機能を有することができる。または、熱赤外センサを有する構成とすることにより、人工衛星6800は、地表から放出される熱赤外線を検出する機能を有することができる。以上より、人工衛星6800は、たとえば地球観測衛星としての機能を有することができる。
【0349】
図14(B)には、宇宙用機器の一例として、ソーラーセイル(太陽帆ともいう)を有する探査機6900を示している。探査機6900は、機体6901と、ソーラーセイル6902と、リチウムイオン電池6905と、を有する。リチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。太陽から発せられる光子がソーラーセイル6902の表面に当たるとき、ソーラーセイル6902に運動量が伝達される。そのため、ソーラーセイル6902の表面は、高反射率の薄膜を有するとよく、さらに太陽の方向に面することが好ましい。
【0350】
またソーラーセイル6902は大気圏外に出るまで、小さく折り畳まれた状態であり、地球の大気圏外(宇宙空間)では
図14(B)に示すように大きなシート状に展開されるように設計してもよい。
【0351】
図14(C)には、宇宙用機器の一例として、宇宙船6910を示している。宇宙船6910は、機体6911と、ソーラーパネル6912と、リチウムイオン電池6913と、を有する。リチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。機体6911はたとえば与圧室と非与圧室を有することができる。与圧室は乗員が乗り込める仕様としてもよい。ソーラーパネル6912に太陽光が照射されることで生じた電力は、リチウムイオン電池6913に充電することができる。
【0352】
図14(D)には、宇宙用機器の一例として、探査車6920を示している。探査車6920は、機体6921と、リチウムイオン電池6923と、を有する。リチウムイオン電池に、本発明の一態様である電解質層を適用することで液漏れを抑制できる。探査車6920は、ソーラーパネル6922を有していてもよい。
【0353】
探査車6920は乗員が乗り込める仕様としてもよい。ソーラーパネル6912に太陽光が照射されることで生じた電力をリチウムイオン電池6923に充電してもよいし、その他の動力源、たとえば燃料電池、放射性同位体熱電気転換器等により生成した電力をリチウムイオン電池6923に充電してもよい。
【0354】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態内容と適宜組み合わせることができる。
【0355】
(実施の形態8)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明したリチウムイオン電池の形態例について説明する。
【0356】
例えば上述したラミネート型のリチウムイオン電池100とした後に、曲げることができる。すなわちリチウムイオン電池100は可撓性を有する。
【0357】
図15(A)に、曲げた形態のリチウムイオン電池100を示す。
図15(A)には正極層107、電解質層103、及び負極層106を有するリチウムイオン電池100が、正極層107側に曲がった形態を示す。勿論、リチウムイオン電池100は負極層106側に曲がった形態を有することができる。曲がった形態のリチウムイオン電池100に、本発明の一態様である電解質層103を適用すると液漏れが抑制されるため好ましい。なお曲がった形態とは、リチウムイオン電池100の一断面において、円弧状となる部分を有する形状が含まれる。
【0358】
リチウムイオン電池を構成する最小単位を電池ユニットと記し、電池ユニットは正極層107、電解質層103、及び負極層106を有するものとする。本発明の一態様のリチウムイオン電池100は、当該電池ユニットは複数有してもよい。すなわちリチウムイオン電池100は当該電池ユニットが複数積層された構成を有してもよい。曲がった形態のリチウムイオン電池100に、本発明の一態様である電解質層103を適用すると液漏れが抑制されるため、ユニットを積層する場合に好適である。
【0359】
図15(A)では一の電池ユニットを図示したが、電池ユニットが複数積層された構成であってもよい。
【0360】
なお、リチウムイオン電池100は外装体なども有するが、上記実施の形態で説明した外装体であれば、曲がった電池ユニットに追従することができる。よって、
図15(A)では外装体を図示しない。
【0361】
次に曲がった状態について詳述する。
図15(A)に示すようにリチウムイオン電池100は、曲率中心1800に近い側の層、例えば正極層107の曲率半径1802は、曲率中心1800から遠い側の層、例えば負極層106の曲率半径1804よりも小さくなる。曲げやすくするために、曲率半径が小さくなる層、例えば正極層107は、負極層106より厚みを小さくするとよい。
【0362】
図15(B)に示すが、
図15(A)のとおりにリチウムイオン電池100を曲げると、矢印で示すように、正極層107の表面には圧縮応力がかかり、負極層106の表面には引っ張り応力がかかる。圧縮応力を緩和するために、曲率半径が小さくなる層、例えば正極層107は、負極層106より厚みを大きくしてもよい。
【0363】
上述した圧縮応力及び引っ張り応力を緩和させる一形態として、外装体に凹部と凸部を設けた構成を、
図16を用いて説明する。
【0364】
凹部と凸部は外装体509の表面に形成されるものであり、模様のようなものとなる。なお、外装体509の一断面で確認することができるが、外装体に凸部を設けると、凹部も同時に形成され、外装体に凹部を設けると、凸部も同時に形成される。すなわち外装体に凹部と凸部をともに形成する必要はなく、いずれか一方を設けることで他方は同時に形成される。
【0365】
外装体509により、上述した圧縮応力及び引っ張り応力を緩和させることができる。すなわちリチウムイオン電池100は曲率中心に近い側の外装体の曲率半径が30mm以上好ましくは10mm以上となる範囲で変形することができる。
【0366】
図16に示した外装体509の端部は、接着領域1807を有する。接着領域1807では熱圧着等により外装体509が接着された領域である。接着領域1807において、外装体509の間には、接着層1803が位置するとよい。
【0367】
接着領域1807では、外装体509の上下に設けられた凹部同士又は凸部同士が重なるとよい。凹部同士又は凸部同士が重なるために、外装体の接着時に改めて凹部又は凸部を外装体509に形成してもよい。このような構成により接着強度を高めることができる。
【0368】
図16では外装体509の端部であって、接着領域1807ではない領域1808は空間1810を有するリチウムイオン電池100を示す。
【0369】
曲がった形態のリチウムイオン電池100の形状は、断面視において単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状でもよい。例えば
図15(C)に示す形状、又は
図15(D)に示す波状、又はS字形状などとすることもできる。
図15(C)及び
図15(D)に示したリチウムイオン電池100にも上述した凹部又は凸部を有する外装体を適用でき、複数積層された電池ユニットを適用することができる。
【0370】
図15(C)又は
図15(D)に示すように、リチウムイオン電池100の曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、曲率中心に最も近い外装体の曲率半径が、10mm以上好ましくは30mm以上となる範囲でリチウムイオン電池を曲げることができる。
【0371】
本実施の形態は、他の実施の形態と組み合わせ用いることができる。
【0372】
(実施の形態9)
本実施の形態では、リチウムイオン電池の応用例について説明する。
【0373】
図17(A)は、飛行体の一例を示す斜視図である。また、
図17(B)は、
図17(A)の主翼部の内部を説明する斜視図である。
【0374】
図17(A)に示す飛行体8900は、主翼部8901と、プロペラ8902と、垂直尾翼部8903と、水平尾翼部8904と、制御装置8905と、ソーラーパネル8906と、を有する。ソーラーパネルは、太陽電池モジュールと呼ばれる場合がある。
【0375】
飛行体8900はスキッドを有してもよい。スキッドは例えば、主翼部8901の下面に装着されていればよい。また、スキッドの下部に車輪が装着されていてもよい。
【0376】
また、飛行体8900は、
図17(B)に示すように主翼部8901の内部にリチウムイオン電池8907を有する。
図17(B)には、主翼部8901の内部に、概略四角形の上面形状を有するリチウムイオン電池8907が複数配置される例を示す。
図17(B)においては、複数のリチウムイオン電池8907が主翼部8901の内部において一列に配列する様子を示すが、複数のリチウムイオン電池8907が複数列、配列されてもよい。またリチウムイオン電池8907の上面形状は、四角形に限定されず、例えば、四角形以外の多角形、角が丸まった多角形、円形、楕円形、L字型、等の様々な形状を取り得る。
【0377】
【0378】
図17(C)において、ソーラーパネル8906は、主翼部8901の筐体8911の表面に埋め込まれるように設けられる。ソーラーパネル8906は例えば、筐体8911に接する領域を有する。ソーラーパネル8906が筐体8911に埋め込まれるように設けられる場合には、ソーラーパネル8906の受光部は、外側に露出する領域を有する。また、
図17(C)においては、ソーラーパネル8906が筐体8911に埋め込まれるように設けられる例を示すが、ソーラーパネル8906は、筐体8911において、外側の表面上に設けられてもよい。
【0379】
また、
図17(C)において、リチウムイオン電池8907は、主翼部8901の筐体8911の内壁8912に沿って設けられる。リチウムイオン電池8907は例えば、内壁8912に接する領域を有する。
【0380】
リチウムイオン電池8907として、本発明の一態様の電解質層を用いることで液漏れを抑制できる。
【0381】
リチウムイオン電池8907として、折り曲げ可能(可撓性を有すると呼称してもよい)なリチウムイオン電池を用いることが好ましい。主翼部8901は、飛行体8900の飛行の際に外力に応じて変形する場合がある。リチウムイオン電池8907として可撓性を有するリチウムイオン電池を用いることにより、主翼部8901の変形に合わせてリチウムイオン電池8907が変形することができるため、好ましい。また、可撓性を有するリチウムイオン電池においては、リチウムイオン電池の外装体に薄いフィルムを用いることによりリチウムイオン電池の重量化、及びリチウムイオン電池の小型化が可能となる。飛行体8900の軽量化が可能となるため、飛行体8900の飛行に要する電力を低減することができる。また、リチウムイオン電池の小型化が可能となるため、リチウムイオン電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができ、リチウムイオン電池の体積当たりの飛行体8900の飛行距離を長くすることができる。
【0382】
可撓性を有するリチウムイオン電池は折り曲げが可能なため、
図18(A)及び
図18(B)に示すように、主翼部8901の上面及び下面をなめらかな曲面とすることができる。
図18(A)は、飛行体の一例を示す斜視図であり、
図18(B)は、
図18(A)の主翼部の内部を説明する斜視図である。
【0383】
図18(A)において、ソーラーパネル8906は、主翼部8901の滑らかな上面に沿って設けられる。ソーラーパネル8906として、フレキシブルな基板上に設けられた太陽電池モジュールを用いてもよい。
【0384】
図18(B)において、リチウムイオン電池8907は、主翼部8901の筐体の内壁に沿って設けられる。
図18(B)に示すリチウムイオン電池8907として、可撓性を有するリチウムイオン電池を用いることが好ましい。
【0385】
リチウムイオン電池8907として可撓性を有するリチウムイオン電池を用いることにより、主翼部8901を様々な形状とすることができるため、飛行体8900の飛行性能が向上する場合がある。
【0386】
制御装置8905は、主翼部8901を挟んで、ソーラーパネル8906とは反対の位置に配置されることが好ましい。例えば、ソーラーパネル8906が主翼部8901の上面側に配置される場合には、制御装置8905を主翼部8901の下面側に配置すればよい。ソーラーパネル8906では、太陽光を受光して発電している期間には、温度が上昇する場合がある。制御装置8905を、主翼部8901を挟んで反対の位置に配置することにより、制御装置8905の温度上昇を抑制し、制御装置が有する各機器、及び各回路の動作を安定に行うことができる場合がある。
【0387】
飛行体8900の主翼部8901は、断熱材を有していてもよい。断熱材は例えば筐体8911の内壁8912に沿って、あるいは筐体8911に埋め込むように設ければよい。断熱材を設けることにより、外界からの筐体8911の内部への温度の影響を小さくすることができる。
【0388】
ソーラーパネル8906とリチウムイオン電池8907との間に断熱材を配置することにより、ソーラーパネル8906からリチウムイオン電池8907への熱の影響を小さくできる場合がある。
【0389】
リチウムイオン電池8907を高い温度において動作させる場合には、リチウムイオン電池8907の劣化、例えば放電容量の減少が生じる場合がある。また、リチウムイオン電池8907は、低温において出力特性が低下する場合がある。筐体8911の内部の温度変動を小さくすることにより、リチウムイオン電池の寿命を長くすることができる。また、リチウムイオン電池の動作を安定させることができる。
【0390】
飛行体8900において、ソーラーパネル8906が発電する電力はリチウムイオン電池8907に蓄電されることが好ましい。飛行体8900は、電力制御回路を有する。電力制御回路は、リチウムイオン電池8907の充電及び放電を制御する機能を有する。また、電力制御回路は、ソーラーパネル8906の受光量及び発電量の少なくとも一方を計測する機能を有することが好ましい。ソーラーパネル8906が発電する電力は、電力制御回路を介してリチウムイオン電池8907に充電される。電力制御回路は、リチウムイオン電池8907の残量を計測する機能を有することが好ましい。
【0391】
制御装置8905は、飛行体8900の飛行を制御する機能を有する。制御装置8905は例えば、プロペラ8902の回転を制御することにより、飛行体8900の飛行を制御することができる。
【0392】
電力制御回路は、リチウムイオン電池8907に蓄電された電力をプロペラ8902に供給する機能を有する。電力制御回路は、直流を交流に変換する機能を有することが好ましい。
【0393】
電力制御回路の少なくとも一部は、制御装置8905に配置されることが好ましい。また、電力制御回路の一部が主翼部8901の筐体8911の内部に設けられてもよい。例えば電力制御回路の一部として、複数のリチウムイオン電池8907のそれぞれに対応した保護回路が設けられてもよい。保護回路は例えばリチウムイオン電池の過充電、過放電、充電過電流、放電過電流、及び短絡の一以上を抑制する機能を有する。また、直列に接続された複数のリチウムイオン電池8907を有する場合、電力制御回路は、複数のリチウムイオン電池8907のそれぞれの充電率を揃えるセルバランス回路を有することが好ましい。
【0394】
なお、飛行体8900において、ソーラーパネル8906が発電する電力のリチウムイオン電池8907への充電と、リチウムイオン電池8907からプロペラ8902への電力の供給と、は同時に行われる場合がある。
【0395】
また、飛行体8900は、アンテナを有する。飛行体8900はアンテナを用いて無線通信を行う機能を有する。飛行体8900においてアンテナは複数設けられてもよい。アンテナとして例えば、マルチビームアンテナを用いることができる。
【0396】
飛行体8900は例えば、無線基地局として機能することができる。
【0397】
飛行体8900は例えば、成層圏を飛行して、成層圏プラットフォームを提供することができる。また、飛行体8900は地上に設置された基地局と通信することができる。また、複数の飛行体8900がそれぞれ、基地局を形成してもよい。そのような場合には、複数の飛行体の間で通信を行うことが好ましい。また、飛行体8900は人工衛星との間において、信号の授受を行う機能を有してもよい。飛行体8900は成層圏プラットフォームから、地上のユーザ端末に無線通信サービスを提供することができる。ここで、ユーザ端末とは例えば、スマートフォンである。飛行体8900は、無線通信サービスを提供する対象エリアの上空を旋回する場合がある。通信プロトコル又は通信技術として、LTE(Long Term Evolution)、GSM(Global System for Mobile Communication:登録商標)、EDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)、CDMA2000(Code Division Multiple Access 2000)、W-CDMA(登録商標)などの通信規格化された仕様を用いることができる。また、国際電気通信連合(ITU)が定める第3世代移動通信システム(3G)、第4世代移動通信システム(4G)、又は第5世代移動通信システム(5G)などを用いることもできる。
【0398】
制御装置8905は、撮像装置を有してもよい。飛行体8900は、撮像装置を用いて飛行する空中、あるいは地上、あるいは上空を撮影することができる。
【0399】
制御装置8905は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)を有してもよい。
【0400】
本実施の形態の内容は他の実施の形態の内容と自由に組み合わせることができる。
【実施例0401】
<電解質層の作製>
本実施例では本発明の一態様である電解質層を作製した。
【0402】
はじめに高分子材料と溶媒とを5分間混合して、混合液Aを得た。高分子材料には、トルエンに溶解したPDMAEMA(関東化学社製)(トルエンを30%含む)を用いた。溶媒には、カチオンにEMI、アニオンにFSIを用いたイオン液体(以下EMI-FSIと記す)を用い、EMI-FSIにリチウム塩であるLiFSIを2.15mol/Lとなるように調製した液体材料を用いた。当該液体材料1Lに対し、高分子材料が80gの割合となるように混合し、混合液Aとした。
【0403】
その後、架橋剤を加えて、さらに5分間混合して、流動性のある混合液Bを得た。架橋剤にはC12TFSA(関東化学社製)を用いた。
【0404】
<トルエンの除去>
混合液Bから不純物であるトルエンを除去するための条件を検討するため、真空乾燥炉に配した混合液Bに対し、処理条件1として100℃で1時間30分、処理条件2として80℃で1時間30分、及び処理条件3として加熱処理なしとする処理を行った。なお熱処理を開始する前、真空乾燥炉が有する差圧計は-100kPa以下であった。
【0405】
重水素アセトニトリル溶液に、処理条件1乃至3を経た混合液Bをそれぞれ溶解させて、核磁気共鳴法(
1H NMR)により測定した。
図19(A)には、処理条件1を実施した混合液Bに対応したチャートを示す。
図19(B)には、処理条件2を実施した混合液Bに対応したチャートを示す。
図19(C)には、処理条件3を実施した混合液Bに対応したチャートを示す。
【0406】
図19(C)ではトルエンのピークに矢印を付す。当該トルエンのピークは、
図19(A)及び
図19(B)で確認されなかったため、トルエンを混合液Bから除去するためには、混合液Bを処理条件2又は処理条件3で処理すればよいとわかった。さらに処理条件2の時間が処理条件3の時間と等しいことを踏まえると、混合液Bからトルエンを除去するためには80℃以上の熱処理が好ましいと考えられる。
【0407】
<LLZAO>
次に、パスツールピペットを用いて混合液Aを30滴(0.68g相当)、固体電解質であるLi
6.25La
3Zr
2Al
0.25O
12(豊島製作所製、以下本実施例ではLLZAOと記す)へ滴下し、スパーテルを用いて練り込み、混合物Cを作製した。当該混合物Cは半固体、つまりゲルとなっていた。その後、混合物Cを真空乾燥炉に配して、上記処理条件2に対応した80℃で1時間30分加熱して、
図20(A)に示す混合物Dを得た。混合物Dには、目視で貫通孔が確認された。当該貫通孔はトルエンの揮発により生じたと考えられた。
【0408】
そこで本発明者等は、パスツールピペットを用いて混合液Aを10滴(0.2g相当)滴下して、当該混合液Aと0.5gのLLZAOとをスパーテルを用いて練り込み、混合物Eを作製した。その後、混合物Eを真空乾燥炉に配して、上記処理条件2に対応した80℃で1時間30分加熱して、
図20(B)に示す混合物Fを得た。混合物Fには目視で貫通孔が確認されなかった。貫通孔のない混合物Fは電解質層に好適である。
【0409】
次に、PFAシートに混合物Fを挟んで、膜厚が0.7mm以上0.8mmの範囲におさまるよう、シート状へ加工した。その後、処理条件2に対応した80℃で1時間30分加熱を行うと、
図20(C)に示すように、目視で貫通孔が確認されない混合物Gを作成できた。混合物Gは容易に円形状に打ち抜くことができた。目視で貫通孔が確認されない混合物Gを電解質層に用いることで、セパレータを配しないリチウムイオン電池とすることができる。また、混合物Gはイオン伝導性をもつと同時に、固体材料等の粒子同士を結着させるバインダの役割ももつため、抵抗となるようなバインダを新たに加える必要がなく、容量の向上が見込まれる。
【0410】
<コインセルの作製>
次に充放電試験を行うためコインセルを作製した。コインセルの電解質層には、混合物Gを用いた。
【0411】
コインセルの正極活物質に、ニッケルと、コバルトと、マンガンの比率が、Ni:Co:Mn=8:1:1となるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(以下、NCM811と記す)を用いた。正極集電体にはアルミニウム箔を用いた。
【0412】
コインセルの導電材にABを用い、バインダにPVDFを用いた。これらの混合比はNCM811:AB;PVDF=95:3:2とした。コインセルにはセパレータを配置しなかった。
【0413】
コインセルの負極にリチウム金属を用いた。リチウム金属を用いたコインセルをハーフセルと呼び、リチウム金属を対極と記すことがある。
【0414】
コインセルの正極及び負極の電解質に、混合液Aを用いることとした。具体的には、正極活物質層又は負極活物質層へ、パスツールピペットを用いて混合液Aを滴下した。正極層及び負極層へそれぞれ2滴(0.04g相当)滴下したものをサンプル1、正極層のみに2滴(0.04g相当)滴下したものをサンプル2、混合液Aを滴下しなかったものをサンプル3とした。
【0415】
<放電容量の測定>
次にサンプル1乃至3の放電容量を、充放電測定器として東洋システム社製の充放電計測システム(TOSCAT-3100)を用いて測定した。
【0416】
放電容量を測定する際、レート条件を0.05C、0.1C、0.2C、0.5Cとした。ここで、上記レートについて説明する。レートとは、電池容量に対する放電時の電流の相対的な比率、又は充電時の電流の相対的な比率であり、単位Cで表される。例えば定格容量X(Ah)の電池において、1C相当の電流は、X(A)である。放電容量、及びサイクル特性を測定する際に、2X(A)の電流で放電させた場合は、レート2Cで放電させたといい、X/2(A)の電流で放電させた場合は、レート0.5Cで放電させたという。なお放電を充電に置き換えて、本レートを理解することができる。また本実施例では1C=200mA/gとした。
【0417】
その他の条件は、サンプル1乃至3を25℃環境下に配し、終止電圧が4.3Vとなるまで定電流充電(CC充電と記す)を行い、4.3Vとなったときに充電を終了した。その後、同じレートで定電流放電(CC放電と記す)を終止電圧2.5Vとなるまで行った。CC放電の際に充放電計測システムを流れる電流量を計測し、放電において流れた電流の積算量を求め、放電容量へ換算した。
【0418】
サンプル1乃至3の放電容量(mAh/g)の結果を
図21に示す。
図21の横軸には、レート条件を示す。
【0419】
サンプル1乃至3はセパレータを配置しなくとも充放電できることがわかった。サンプル1、2の放電容量はサンプル3よりも高かった。サンプル1乃至3はいずれもレートが低くなるにつれて放電容量も高くなった。
本実施例では、サンプル1乃至3に用いたLLZAOに代えて、無機材料である酸化マグネシウム(MgO)粉末を用いて、実施例1のサンプル3と同様の実験を行った。その際、MgOは1.00g、混合液Aは0.85g用いた。MgOを用いたサンプルをサンプル4とする。サンプル4は高い粘着性が発現された。
サンプル4はセパレータを配置しなくとも充放電できることが分かった。さらにMgOを用いたサンプル4は、LLZAOを用いたサンプル3よりも放電容量が高いことがわかった。