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特開2023-157583ポリプロピレン系延伸フィルム、包装体
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  • 特開-ポリプロピレン系延伸フィルム、包装体 図1
  • 特開-ポリプロピレン系延伸フィルム、包装体 図2
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  • 特開-ポリプロピレン系延伸フィルム、包装体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157583
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系延伸フィルム、包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231019BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/32 102
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067575
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】勝木 海斗
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB85
3E086CA01
3E086CA17
3E086DA08
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK07J
4F100AL03C
4F100AL03G
4F100AL03J
4F100AT00
4F100BA14A
4F100BA14B
4F100BA14C
4F100BA16A
4F100BA16B
4F100BA16C
4F100EH17
4F100EH202
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100EH20C
4F100EJ372
4F100GB15
4F100JK09
(57)【要約】
【課題】薄く、かつ、耐ピンホール性が高いポリプロピレン系延伸フィルム、および、包装体を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系延伸フィルムは、基材層と、前記基材層に対して一方に積層される表層と、前記基材層に対して他方に積層されるシール層と、を備え、前記表層は、厚さが4μm以下であり、アイソタクティックインデックスが98%以上のホモポリプロピレンを80重量%以上含み、前記基材層は、アイソタクティックインデックスが96%以上のホモポリプロピレンを50重量%超含み、融点が162℃未満であり、前記シール層は、ポリプロピレン系ランダム共重合体を含み、樹脂の流れ方向の引張強度が100MPa以上、かつ、全体の厚さが25μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層に対して一方に積層される表層と、
前記基材層に対して他方に積層されるシール層と、を備え、
前記表層は、厚さが4μm以下であり、アイソタクティックインデックスが98%以上のホモポリプロピレンを80重量%以上含み、
前記基材層は、アイソタクティックインデックスが96%以上のホモポリプロピレンを50重量%超含み、融点が162℃未満であり、
前記シール層は、ポリプロピレン系ランダム共重合体を含み、
樹脂の流れ方向の引張強度が100MPa以上、かつ、全体の厚さが25μm以下である
ポリプロピレン系延伸フィルム。
【請求項2】
前記シール層の厚さは、2μm超である
請求項1に記載のポリプロピレン系延伸フィルム。
【請求項3】
130℃におけるヒートシール強度は、5.0N/15mm以上である
請求項1または2に記載のポリプロピレン系延伸フィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリプロピレン系延伸フィルムを用いて製造される包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系延伸フィルム、および、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ポリプロピレン系延伸フィルムの一例を開示している。このポリプロピレン系延伸フィルムは、基材層と、基材層に積層される熱融着層と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-137074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境問題の観点から、ポリプロピレン系延伸フィルムに使用される樹脂の使用量を低減することが求められている。このため、ポリプロピレン系延伸フィルムを薄く構成することが好ましい。一方、ポリプロピレン系延伸フィルムを薄く構成した場合、耐ピンホール性の低下が懸念される。
【0005】
本発明は、薄く、かつ、耐ピンホール性が高いポリプロピレン系延伸フィルム、および、これを用いて製造される包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係るポリプロピレン系延伸フィルムは、基材層と、前記基材層に対して一方に積層される表層と、前記基材層に対して他方に積層されるシール層と、を備え、前記表層は、厚さが4μm以下であり、アイソタクティックインデックスが98%以上のホモポリプロピレンを80重量%以上含み、前記基材層は、アイソタクティックインデックスが96%以上のホモポリプロピレンを50重量%超含み、融点が162℃未満であり、前記シール層は、ポリプロピレン系ランダム共重合体を含み、樹脂の流れ方向の引張強度が100MPa以上、かつ、全体の厚さが25μm以下である。
【0007】
上記ポリプロピレン系延伸フィルムによれば、全体の厚さが25μm以下であるため、薄く構成される。また、上記ポリプロピレン系延伸フィルムによれば、表層の諸元、基材層の諸元、および、樹脂の流れ方向の引張強度が上記のように構成されるため、耐ピンホール性が高められることが確認された。すなわち、上記ポリプロピレン系延伸フィルムによれば、薄く、かつ、耐ピンホール性が高い。
【0008】
本発明の第2観点に係るポリプロピレン系延伸フィルムは、第1観点に係るポリプロピレン系延伸フィルムであって、前記シール層の厚さは、2μm超である。
【0009】
上記ポリプロピレン系延伸フィルムによれば、高いヒートシール強度が得られることが確認された。
【0010】
本発明の第3観点に係るポリプロピレン系延伸フィルムは、第1観点または第2観点に係るポリプロピレン系延伸フィルムであって、130℃におけるヒートシール強度は、5.0N/15mm以上である。
【0011】
上記ポリプロピレン系延伸フィルムによれば、ヒートシール強度が高いため、強固に接合できる。
【0012】
本発明の第4観点に係る包装体は、第1観点~第3観点のいずれか1つに係るポリプロピレン系延伸フィルムを用いて製造される。
【0013】
上記包装体によれば、第1観点~第3観点のいずれか1つに係るポリプロピレン系延伸フィルムと同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に関するポリプロピレン系延伸フィルムおよび包装体によれば、薄く、かつ、耐ピンホール性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の包装体に含まれるポリプロピレン系延伸フィルムの断面図。
図2】実施例のポリプロピレン系延伸フィルムの諸元、および、試験結果を示す表。
図3】比較例のポリプロピレン系延伸フィルムの諸元、および、試験結果を示す表。
図4】摩耗試験に関する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るポリプロピレン系延伸フィルムおよび包装体について説明する。
【0017】
<1.ポリプロピレン系延伸フィルムの構成>
図1は、本実施形態の包装体1に含まれるポリプロピレン系延伸フィルム10の層構成の一例を示す断面図である。本実施形態のポリプロピレン系延伸フィルム10は、例えば、商品の包装袋、青果物(カットキャベツ等)の食品の包装袋、または、小売店の陳列用吊り下げ袋等に用いられる。ポリプロピレン系延伸フィルム10は、基材層20と、表層30と、シール層40と、を含む積層フィルムである。本実施形態のポリプロピレン系延伸フィルム10は、樹脂の使用量を低減する観点から、全体の厚さが薄く構成される。ポリプロピレン系延伸フィルム10の全体の厚さは、25μm以下である。ポリプロピレン系延伸フィルム10の全体の厚さは、23μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0018】
基材層20は、アイソタクティックインデックス(メソペンダット分率)が96%以上のホモポリプロピレンを50重量%超含み、融点が162℃未満である。このため、ポリプロピレン系延伸フィルム10の延伸性が良好となる。ポリプロピレン系延伸フィルム10の延伸性をより良好にする観点から、基材層20は、アイソタクティックインデックスが96%以上98%未満のホモポリプロピレンを60重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことがさらに好ましい。示差走査熱量測定によって測定される基材層20の融点は、150℃以上162℃未満であることが好ましく、152℃以上160℃以下であることがさらに好ましい。また、基材層20の結晶化温度は、115℃未満であることが好ましい。基材層20を構成するホモポリプロピレンは、植物由来原料およびバイオマス原料の少なくとも一方を含んでいてもよく、また、ポリプロピレン系延伸フィルム等のリサイクル原料を含んでいてもよい。基材層20を構成する材料のホモポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR)は10g/10min以下であることが好ましく、7g/10min以下であることがより好ましく、4g/10min未満であることがさらに好ましい。基材層20の結晶化温度は、100℃以上~140℃以下が好ましく、110以上~130℃以下がより好ましい。基材層20の厚みは10以上~20μm以下が好ましく、12以上~18μm以下がより好ましい。
【0019】
基材層20を構成する材料は、オレフィン系エラストマー、および、石油樹脂をさらに含んでいてもよい。基材層20を構成する樹脂成分100重量%に対して、オレフィン系エラストマーおよび石油樹脂の含有量は1重量%以上~40重量%が好ましく、3重量%以上~30重量%以下がより好ましい。また、オレフィン系エラストマーとしては、エチレン/α-オレフィン共重合体エラストマー、プロピレン/α-オレフィン共重合体エラストマ-を用いることが好ましい。上記共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。上記エチレン/α-オレフィン共重合体エラストマー、上記プロピレン/α-オレフィン共重合体エラストマーとは、炭素数4以上のα-オレフィンの共重合成分が15モル%以上のエラストマーである。ここでα-オレフィンとしては、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1等が挙げられる。なかでも、エチレン/ブテン共重合体エラストマー、プロピレン/ブテン共重合体エラストマーが好ましい。
【0020】
表層30は、基材層20に対して一方に積層される。表層30は、例えば、接着層等を介して基材層20に積層されてもよい。表層30は、厚さが4μm以下である。このため、ポリプロピレン系延伸フィルム10の延伸性が良好となる。ポリプロピレン系延伸フィルム10の延伸性をより良好にする観点から、表層30の厚さは、3μm以下であることが好ましい。表層30は、アイソタクティックインデックスが98%以上のホモポリプロピレンを80重量%以上含む。表層30に高いアイソタクティックインデックスを有するホモポリプロピレンが用いられているため、ポリプロピレン系延伸フィルム10の耐ピンホール性が高められる。ポリプロピレン系延伸フィルム10の耐ピンホール性を高める観点から、表層30は、アイソタクティックインデックスが98%以上のホモポリプロピレンのみによって構成されることが好ましい。耐ピンホール性を高める観点から、表層30の厚さの下限値は、1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましい。表層30を構成する材料のホモポリプロピレンのメルトマスフローレート(MFR)は10g/10min以下であることが好ましく、7g/10min以下であることがより好ましく、4g/10min未満であることがさらに好ましい。
【0021】
シール層40は、基材層20に対して他方に積層される。シール層40は、例えば、接着層等を介して基材層20に積層されてもよい。シール層40は、ポリプロピレン系ランダム共重合体を含んで構成される。シール層40の厚さは、任意に選択可能である。ヒートシール強度を高める観点から、シール層40の厚さは、2μm超5μm未満であることが好ましい。シール層40のヒートシール強度は、任意に選択可能である。強固に接合するため、シール層40のヒートシール強度は、130℃において、5.0N/15mm以上であることが好ましい。シール層40のヒートシール強度は、130℃において、6.0N/15mm以上であることがさらに好ましい。
【0022】
ポリプロピレン系延伸フィルム10の製造においては、配向性を向上させる観点から、MD(Machine Direction)における延伸倍率は、例えば、4.0倍~8.0倍程度とすることが好ましく、4.5倍~6.5倍程度とすることがより好ましい。このため、ポリプロピレン系延伸フィルム10のコシ感が高められる。ポリプロピレン系延伸フィルム10のMDの延伸は、ポリプロピレン系延伸フィルム10を延伸させる最初の工程であるため、ロールの負荷は大きくなるものの、TD(Transverse Direction)の延伸よりも容易に実施できる。ポリプロピレン系延伸フィルム10の製造においては、配向性を向上させる観点から、TDにおける延伸倍率は、例えば、5.0倍~10.0倍程度であることが好ましい。また、ポリプロピレン系延伸フィルム10は、MD、換言すれば、樹脂の流れ方向の引張強度が100MPa以上である。このため、機械的強度が高い。
【0023】
機械的強度を高める観点から、ポリプロピレン系延伸フィルム10のMDにおける延伸倍率は、4.5倍以上であることが好ましい。同様の観点から、ポリプロピレン系延伸フィルム10のMDにおけるヤング率は、2.0GPa以上であることが好ましく、TDにおけるヤング率は、5.0GPa以上であることが好ましい。同様の観点から、ポリプロピレン系延伸フィルム10のMDにおけるループステフネスは、0.000200以上であることが好ましく、TDにおけるループステフネスは、0.000450以上であることが好ましい。
【0024】
<2.ポリプロピレン系延伸フィルムの製造方法>
本実施形態のポリプロピレン系延伸フィルム10の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。生産性、および、ポリプロピレン系延伸フィルム10の物性等の観点から、ポリプロピレン系延伸フィルム10は、フラット状シートを押出成形によって製膜し、次いで逐次二軸延伸することによって製造することが好ましい。
【0025】
本実施形態では、適正な温度に設定された3台の押出機に、例えば、表層30を構成する樹脂組成物、基材層20を形成する樹脂組成物、および、シール層40を形成する樹脂組成物をそれぞれ投入し、押出機内で樹脂を溶融・混練したあと、210℃~250℃のTダイスによってシート状に押出す。この場合、3層の多層構成を形成するために、フィードブロック方式を用いてもよく、マルチマニホールド方式を用いてもよい。押出されたシートは、25℃の冷却ロールにて冷却固化され、MD延伸工程に送られる。MD延伸は130℃~140℃に設定された加熱ロールにより構成されており、ロール間の速度差によって、シートは、MDに延伸される。加熱ロールの本数には特に制限はないが、少なくとも低速側および高速側の2本は必要である。MD延伸の延伸倍率は、上述したように、4.0倍~8.0倍程度とすることが好ましく、4.5倍~6.5倍程度とすることがより好ましい。次に、シートは、テンターによるTD延伸工程に送られ、TDに延伸される。テンター内は予熱ゾーン、延伸ゾーン、および、アニールゾーンに分かれている。予熱ゾーンの温度は、165℃~170℃に設定されている。延伸ゾーンの温度は、165℃~170℃に設定されている。アニールゾーンの温度は、165℃~170℃に設定されている。延伸ゾーンでの延伸倍率は、上述したように、5.0倍~10.0倍程度であることが好ましい。シートは、延伸されたのち、アニールゾーンで冷却、固定され、巻き取り機にて巻き取られ、フィルムロールとなる。
【0026】
<3.ポリプロピレン系延伸フィルムの作用および効果>
ポリプロピレン系延伸フィルム10は、全体の厚さが25μm以下であるため、薄く構成される。また、ポリプロピレン系延伸フィルム10は、表層30の諸元、基材層20の諸元、および、MDの引張強度が上記のように構成されるため、耐ピンホール性が高められる。すなわち、ポリプロピレン系延伸フィルム10によれば、薄く、かつ、耐ピンホール性が高い。
【0027】
<4.実施例>
本願発明者(ら)は、実施例のポリプロピレン系延伸フィルム、および、比較例のポリプロピレン系延伸フィルムを製造し、ポリプロピレン系延伸フィルムの物性を測定する試験を実施した。以下では、便宜上、各実施例および各比較例のポリプロピレン系延伸フィルムの構成要素について、実施形態と同様の符号を付して説明する場合がある。
【0028】
各実施例のポリプロピレン系延伸フィルムは、実施形態のポリプロピレン系延伸フィルムである。図2は、実施例1~7のポリプロピレン系延伸フィルムの諸元、および、試験結果を示す表である。図3は、比較例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムの諸元、および、試験結果を示す表である。図2図3においては、アイソタクティックインデックスの値を「II値」と記載している。図2図3中の基材層20、表層30、および、シール層40の厚さは、ポリプロピレン系延伸フィルムを延伸させた後の厚さである。
【0029】
また、図2図3において、記号で記載される材料の諸元は、以下のとおりである。
・PP-1:ホモポリプロピレン(II値:99%、MFR:3.0g/10min)
・PP-2:ホモポリプロピレン(II値:98%、MFR:3.0g/10min)
・PP-3:ホモポリプロピレン(II値:97%、MFR:3.0g/10min)
・PP-4:ホモポリプロピレン(II値:96%、MFR:3.0g/10min)
・PP-5:ホモポリプロピレン(II値:95%、MFR:2.5g/10min)
・PP-6:プロピレン/ブテン共重合体エラストマー(MFR:7.0g/10min)
・PP-7:プロピレン/エチレン/ブテンランダム共重合体(MFR:5.0g/10min)
・PE-1:直鎖状低密度ポリエチレン(MFR:3.5g/10min)
・HC-1:石油樹脂
【0030】
実施例1のポリプロピレン系延伸フィルムは、図2に示される配合にて各層を構成する樹脂組成物を3台の押出機にそれぞれ投入し、表層30、基材層20、および、シール層40の順に積層されるようにして、温度230℃の3層Tダイスから共押出し、25℃の冷却ロールで冷却、固化して原反シートを得た。次に、このシートを130℃に加熱し、MDに5.3倍ロール延伸したあと、テンターにて設定温度165℃で予熱し、設定温度165℃でTDに6倍延伸した。次に、設定温度165℃でアニールし、テンターを出たあと、コロナ放電処理を施し、巻き取り機で巻き取って、ポリプロピレン系延伸フィルムを得た。得られたポリプロピレン系延伸フィルムの全体の厚さは、20μmである。表層30およびシール層40の厚さは、2μmであり、基材層20の厚さは、16μmである。なお、実施例2~7、および、比較例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムは、図2および図3に示す配合、全体の厚さ、各層の厚さ、または、延伸倍率に変更した以外は実施例1と同様の方法で各々のフィルムを得た。
【0031】
実施例1~7、および、比較例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムを構成する材料のMFRは、JIS K-7210(2014)に準拠し、230℃、2.16kgの条件により測定される値である。また、アイソタクティックインデックスは、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR)測定から、ペンタッド単位のアイソタクティック分率として算出される。13C-NMR測定は、核磁気共鳴装置を用い、135℃に加熱しながら実施する。得られたチャートから、21.82、21.57、21.31、21.03、20.82、20.64、20.29、20.17、および、19.88ppmの各ピーク高さの合計に対する21.82ppmのピーク高さの比率を算出し、アイソタクティックインデックスを求める。
【0032】
実施例1~7、および、比較例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムの基材層を構成する材料の融点、および、結晶化温度は、示差走査熱量計(島津製作所社製、DSC-60)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定することができる。
【0033】
<5.試験>
本願発明者(ら)は、実施例1~7、および、比較例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムについて、以下の項目を測定する試験を実施した。
【0034】
<5-1.引張強度、引張伸度>
実施例1~7、および、比較例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムを、標線間隔40mmおよび幅10mmの大きさにカットし試験片を得た。得られた試験片を、東洋精機製作所社製ストログラフVE-1Dを用いてJISK-6732に準拠した方法で測定した。ただし、測定雰囲気温度5℃、試験速度100mm/minにて測定した。引張強度および引張伸度は、各実施例および各比較例につき、5つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。
【0035】
<5-2.ヤング率>
実施例1~7、および、比較例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムを、MD250mm×TD5mm、および、MD5mm×TD250mmの大きさのサンプルにカットし、それぞれ2種の試験片を得た。得られた試験片を、東洋精機製作所社製ストログラフVE-1Dを用いてASTM D882に準拠した方法で測定した。ヤング率は、各実施例および各比較例につき、7つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。
【0036】
<5-3.ループステフネス>
実施例1~7、および、比較例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムの長手方向(MD)を短冊の長軸(ループ方向)、または、ポリプロピレン系延伸フィルムの幅方向(TD)を短冊の長軸(ループ方向)として、200mm×25.0mmの短冊をそれぞれ10枚切り出し試験片を得た。これらをクリップに挟んでフィルムの片方の面がループの内面になるものと、その反対面がループの内面になる測定用ループを、短冊の長軸がフィルムの長手方向及び幅方向となるものについて作製した。短冊の長軸がポリプロピレン系延伸フィルムの長手方向となる試験片を、東洋精機株式会社製ループステフネステスタDAのチャック部に幅方向を垂直にした状態でセットし、クリップをはずし、ループステフネス応力を測定した。チャック間隔は80mmである。押し込み深さは、30mmである。圧縮速度は、3.3mm/秒である。測定は、ポリプロピレン系延伸フィルムの一方の面がループの内面になるように設置したものについて、ループステフネスを5回測定した。その後、他方の面がループの内面になるように設置したものについて、ループステフネスを5回測定した。この計10回分のデータを用い、各試験片の厚み(μm)の3乗を横軸に、そのループステフネスの応力(mN)を縦軸としてプロットし、原点を通るように近似曲線を得て、その傾きの値をループステフネスの測定値として算出した。また、短冊の長軸がポリプロピレン系延伸フィルムの幅方向となる試験片についても、同様に測定した。
【0037】
<5-4.耐ピンホール性>
耐ピンホール性については、摩耗試験により確認した。
図4は、摩耗試験に用いられる装置である。摩耗試験では、錐状のアルミ製治具100に各実施例および各比較例のポリプロピレン系延伸フィルムFを装着し、錐状の頂点100Aをポリプロピレン系延伸フィルムFを介して固定具110によって固定されたボール紙120に接触させる。次に、治具100に20gの重り130を載せる。この状態で、湿度65%の条件下、2700mm/分の速度で、移動距離45mmの範囲で治具100を摺動させて、ピンホールが開くまでの摺動回数を数える。ピンホールの発生は、ポリプロピレン系延伸フィルムFのうちの治具100の頂点が当たっていたところに浸透液を滴下して判定する。
【0038】
<5-5.ヒートシール強度>
実施例1~7、および、比較例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムのそれぞれについて2枚のフィルムを、シール層40が向かい合うように重ねた後、ヒートシールテスター(東洋精機製作所社製 HG-100)にて、ヒートシールして、試験片を得た。温度は、130℃である。圧力は、0.2MPaである。シール時間は、1.0秒である。得られた試験片を長さ200mm、幅15mmの寸法にカットし、剥離試験機(新東科学社製 Peeling TESTER HEIDON-17)を用いたT字剥離試験にて、引張速度200mm/minでヒートシール強度測定を行った。各実施例および各比較例につき、測定を5回行い、その平均値をシール強度(N/15mm)とした。
【0039】
<5-6.試験結果>
各実施例のポリプロピレン系延伸フィルムにおいては、全体の厚さが25μm以下であり、かつ、荷重20gのときのピンホールが開くまでの摺動回数が150回~200回である。このため、各実施例のポリプロピレン系延伸フィルムは、薄く、かつ、耐ピンホール性が高い。各実施例のポリプロピレン系延伸フィルムは、表層30の諸元、基材層20の諸元、および、MDの引張強度が実施形態で示された要件を満たすためであると考えられる。
【0040】
実施例6のポリプロピレン系延伸フィルムは、表層30の厚さが3μmであり、実施例1~5、7のポリプロピレン系延伸フィルムの表層30の厚さよりも厚い。実施例6のポリプロピレン系延伸フィルムは、実施例1~5、7のポリプロピレン系延伸フィルムよりも延伸性が低下するため、生産性が少し低下する。この点から、表層30の厚さは、2μm以下であることが好ましことが把握できる。
【0041】
実施例7のポリプロピレン系延伸フィルムは、シール層40の厚さが2μmであり、実施例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムのシール層40の厚さよりも薄い。このため、実施例7のポリプロピレン系延伸フィルムは、実施例1~6のポリプロピレン系延伸フィルムよりも、ヒートシール強度が低い。この点から、シール層40の厚さは、2μm超であることが好ましいことが把握できる。
【0042】
比較例1のポリプロピレン系延伸フィルムは、表層30を構成する材料のホモポリプロピレンのアイソタクティックインデックスが98%未満である。また、基材層20を構成するホモポリプロピレンのアイソタクティックインデックスが96%未満である。このため、耐ピンホール性が低い。
【0043】
比較例2のポリプロピレン系延伸フィルムは、表層30の厚さが、4μm超である。表層30の厚さが厚く、延伸性が低下したため、比較例2のポリプロピレン系延伸フィルムを製造することができなかった。
【0044】
比較例3のポリプロピレン系延伸フィルムは、アイソタクティックインデックスが99%のホモポリプロピレンを50重量%含む。また、基材層20の融点が、162℃である。延伸性が低下したため、比較例3のポリプロピレン系延伸フィルムを製造することができなかった。
【0045】
比較例4のポリプロピレン系延伸フィルムは、全体の厚さが25μm超である。シール層40に熱が伝わりにくいため、低温におけるシール強度が1.3N/15mmと低い。
【0046】
比較例5のポリプロピレン系延伸フィルムは、表層30を構成する材料が、アイソタクティックインデックスが98%以上のホモポリプロピレンであるが、含有量が80重量%未満である。このため、このため、耐ピンホール性が低い。
【0047】
比較例6のポリプロピレン系延伸フィルムは、製造するときの延伸倍率が3.6倍であり、MDの引張強度が100MPa未満である。このため、耐ピンホール性が低い。
【0048】
上記実施形態は本発明に関するポリプロピレン系延伸フィルム、および、包装体が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するポリプロピレン系延伸フィルム、および、包装体は、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、各実施形態に新たな構成を付加した形態である。
【符号の説明】
【0049】
1 :包装体
10:ポリプロピレン系延伸フィルム
20:基材層
30:表層
40:シール層
図1
図2
図3
図4