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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157592
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 11/02 20060101AFI20231019BHJP
   B63B 11/04 20060101ALI20231019BHJP
   B63B 43/06 20060101ALI20231019BHJP
   B63B 3/58 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B63B11/02
B63B11/04 B
B63B43/06 Z
B63B3/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067591
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】勝部 誠
(72)【発明者】
【氏名】末永 一夫
(57)【要約】
【課題】船体に生じるホギング縦曲げモーメントを抑える。
【解決手段】船舶は、一対の舷側、及び船底を有する船体と、船体内の船首尾方向に配置された複数の区画と、船体の後部に配置された燃料タンクと、を備え、船体は、複数の区画のうちの最船首側及び最船尾側の区画を除く、船首尾方向の中央部に配置された区画の少なくとも一つに対応する部分のみに形成され、一対の舷側に対して船幅方向の内側に配置された一対の隔壁を有する舷側二重構造部、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の舷側、及び船底を有する船体と、
前記船体内の船首尾方向に配置された複数の区画と、
前記船体の後部に配置された燃料タンクと、
を備え、
前記船体は、
複数の前記区画のうちの最船首側及び最船尾側の前記区画を除く、船首尾方向の中央部に配置された前記区画の少なくとも一つに対応する部分のみに形成され、一対の前記舷側に対して船幅方向の内側に配置された一対の隔壁を有する舷側二重構造部、を備える
船舶。
【請求項2】
前記舷側二重構造部は、船幅方向の両側に、前記舷側と前記隔壁との間に形成されたバラストタンク部を備える
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
一対の前記隔壁に対して船幅方向の内側に形成された内側バラストタンク部をさらに備える
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記船体は、
前記船底に対して上下方向の上方に間隔をあけて形成された底部甲板と、
前記底部甲板と前記船底との間に形成された船底バラストタンク部と、を備え、
一対の前記隔壁は、前記底部甲板から上方に延びて形成されている
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項5】
一対の前記隔壁は、前記船底から上方に延びて形成されている
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項6】
一対の前記隔壁の上端部は、前記底部甲板よりも上下方向の上方に形成された上部甲板に接合されている
請求項4に記載の船舶。
【請求項7】
一対の前記隔壁の上端部は、前記船底よりも上下方向の上方に形成された上部甲板に接合されている
請求項5に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船体の船尾部の上甲板上に、燃料タンクを備えた構成の船舶が開示されている。燃料タンクは、船舶を航行させる推進力を発揮する主機等の燃料となる液化ガスを収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6966661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、燃料タンクが船体の船尾部の上甲板上に配置されている。そのため、船体には、燃料タンク、及び燃料タンク内に貯留される燃料の荷重による応力が作用する。特に、船体内への貨物搭載量が少ない状態では、船体の船首側と船尾側とを結ぶ船首尾方向の中央部において、船体が上方に撓むような曲げ変形によるホギング縦曲げモーメントが大きくなってしまう場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、船体に生じるホギング縦曲げモーメントを抑えることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、複数の区画と、燃料タンクと、を備える。前記船体は、一対の舷側、及び船底を有する。複数の前記区画は、前記船体内の船首尾方向に配置されている。前記燃料タンクは、前記船体の後部に配置されている。前記船体は、複数の前記区画のうちの最船首側及び最船尾側の前記区画を除く、船首尾方向の中央部に配置された前記区画の少なくとも一つに対応する部分のみに形成されている。前記船体は、一対の隔壁を有する舷側二重構造部、を備えている。一対の前記隔壁は、一対の前記舷側に対して船幅方向の内側に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶によれば、船体に生じるホギング縦曲げモーメントを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の概略構成を示す側面図である。
図2】本開示の実施形態に係る船舶の概略構成を示す平面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る船舶における舷側二重構造部の構成を示す図であって、図2のA-A矢視断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る舷側二重構造部の構成を示す断面図である。
図5】本開示の第二実施形態の変形例に係る舷側二重構造部の構成を示す断面図である。
図6】本開示の実施形態の他の変形例に係る燃料タンクの配置例を示す側面図である。
図7】本開示の実施形態のさらに他の変形例に係る燃料タンクの配置例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、図1図7を参照して説明する。
<第一実施形態>
(船舶の全体構成)
図1図2に示すように、この実施形態の船舶1Aは、船体2と、複数の区画Sと、燃料タンク10と、舷側二重構造部50Aと、を少なくとも備えている。船舶1Aの船種は、特定のものに限られない。船舶1Aの船種は、例えば、ばら積み貨物船、液化天然ガス(LNG)、二酸化炭素、アンモニア等の液化ガスの運搬船、フェリー、RORO船(Roll-on/Roll-off船)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)、客船等を例示できる。
【0010】
図3に示すように、船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底4と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板3sを備える。船底4は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板4sを備える。これら一対の舷側3A,3B及び船底4により、船体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。船体2は、その内部に、上甲板5、底部甲板6を含む、複数層の甲板を備えている。上甲板5は、最上層に配置される全通甲板である。上甲板5は、外部に露出している。底部甲板6は、船体2内で、最下層に配置されている。底部甲板6と船底4との間には、船底バラストタンク部58が形成されている。船底バラストタンク部58には、バラスト水(図示せず)が注入される。なお、内側バラストタンク部58のうちの一部は、バラスト水を注入せず、配管や配線が挿通されるパイプスペースとしてもよい。
【0011】
図1に示すように、船体2には、船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
燃料タンク10は、船体2の後部に設けられている。燃料タンク10は、例えば上甲板5上に設けられている。燃料タンク10は、上部構造7に対し、船首尾方向FAの船尾2b側に配置されている。本実施形態において、燃料タンク10は、上部構造7に対して船尾2b側に配置されている。燃料タンク10は、後述する原動機21の燃料となる液化ガス、例えば液化天然ガスを貯留する。
【0012】
図1図2に示すように、船体2内には、船首尾方向FAに間隔をあけて複数枚の区画壁11が形成されている。複数枚の区画壁11は、船首尾方向FAに間隔を空けて配置されている。複数枚の区画壁11は、それぞれ舷側3Aから舷側3Bに至るとともに、それぞれ底部甲板6から上甲板5に至っている。つまり、一対の舷側3A,3Bの間において、底部甲板6と上甲板5との間の空間は、複数枚の区画壁11によって、船首尾方向に区切られている。
【0013】
複数の区画Sは、船体2内の船首尾方向FAに配置されている。複数の区画Sは、船幅方向Dwの一方側の舷側3Aと、他方側の舷側3Bと、下方の底部甲板6と、上方の上甲板5との間の空間が、複数枚の区画壁11で仕切られることによって形成されている。複数の区画Sは、船首尾方向FAに並んで配置されている。本実施形態において、複数の区画Sとして、船首尾方向FAに7つの区画S1~S7が配置されている。船首尾方向FAで隣り合う区画S同士は、区画壁11によって仕切られている。
【0014】
複数の区画S1~S7のうち、船首尾方向FAで最も船尾2b側に位置する区画S1は、機関室とされている。機関室は、船体2内において、船首尾方向FAで最も船尾2b側に配置された区画壁11Aに対して、船尾2b側に形成されている。
【0015】
図1に示すように、機関室としての区画S1内には、原動機21が配置されている。原動機21は、燃料タンク10から供給される液化ガスを燃料とする。本実施形態において、原動機21は、例えば、主機、及び補機である。主機としての原動機21は、船舶1Aを航行させる推進力を発揮する。主機としての原動機21は、船体2の船尾2bの外部に設けられたスクリュー8を回転駆動させる。補機としての原動機21は、船舶1A内で使用される動力を発生する。本実施形態では、補機としての原動機21は、例えば、発電機(図示せず)を駆動させるための発電機用エンジンである。原動機21としては、例えば、蒸気タービン、ガスタービン、レシプロエンジン等を用いることができる。
【0016】
複数の区画S1~S7のうち、最も船首2a側の区画S7、及び最も船尾2b側の区画S1を除く、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6は、船舶1Aで運搬する貨物を収容する、いわゆる貨物区画とされている。これらの区画S2~S6は、船首尾方向FAで最も船尾2b側に配置された区画壁11Aよりも船首2a側に配置されている。本実施形態において、区画S2~S6の貨物区画は、貨物として、鉱石または穀物等を貯留する。
【0017】
燃料タンク10は、貨物区画としての区画S2~S6のうち、最も船尾2bの区画S2を含む船尾2b側の部分である後部領域Abに配置されている。
【0018】
舷側二重構造部50Aは、複数の区画S1~S7のうちの最も船首2a側の区画S7、及び最も船尾2b側の区画S1を除く、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6の少なくとも一つに対応する部分のみに形成されていれている。本実施形態において、舷側二重構造部50Aは、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6に形成されている。舷側二重構造部50Aは、船体2のホギング縦曲げモーメントに対する強度を高める。
図3に示すように、舷側二重構造部50Aは、一対の隔壁51A,51Bと、バラストタンク部52A,52Bと、カーゴホールド53と、内側バラストタンク部54と、を備えている。
【0019】
図2図3に示すように、一対の隔壁51A,51Bは、一対の舷側3A,3Bに対して船幅方向Dwの内側に間隔をあけて配置されている。隔壁51A,51Bのそれぞれは、上方から見た際に、船首尾方向FAに延びている。隔壁51A,51Bのそれぞれは、船首尾方向FAにおいて、区画S2~S6の全体にわたって延びている。図3に示すように、隔壁51A,51Bのそれぞれは、船首尾方向FAから見た際に、上下方向Dvに延びている。隔壁51A,51Bのそれぞれの下端部は、底部甲板6に接合されている。隔壁51A,51Bのそれぞれは、底部甲板6から上下方向Dvの上方に立ち上がっている。隔壁51A,51Bのそれぞれの上端部は、底部甲板6に対して、上下方向Dvの上方に形成された上部甲板としての上甲板5に接合されている。
【0020】
バラストタンク部52A,52Bは、一対の隔壁51A,51Bに対して、船幅方向Dwの両外側に形成されている。バラストタンク部52A,52Bは、船幅方向Dwの両側で、舷側3A,3B(舷側外板3s)と隔壁51A,51Bとの間に形成されている。船幅方向Dwの一方側のバラストタンク部52Aは、下方の底部甲板6と上方の上甲板5との間で、舷側3Aと隔壁51Aとの間に形成されている。船幅方向Dwの他方側のバラストタンク部52Bは、下方の底部甲板6と上方の上甲板5との間で、舷側3Bと隔壁51Bとの間に形成されている。バラストタンク部52A,52Bには、バラスト水(図示せず)が注入される。なお、内側バラストタンク部52A,52Bのうちの一部は、バラスト水を注入せず、配管や配線が挿通されるパイプスペースとしてもよい。
【0021】
カーゴホールド53は、貨物区画として船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6のそれぞれに設けられている。カーゴホールド53は、貨物として、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、LNG(Liquefied Natural Gas)、アンモニア等の液化ガスを収容(貯留)する。カーゴホールド53は、下方の底部甲板6と上方の上甲板5との間で、一対の隔壁51A,51Bに対して船幅方向Dwの内側に形成されている。カーゴホールド53は、上部傾斜板531A,531Bと、下部傾斜板532A,532Bと、を有している。上部傾斜板531A,531Bは、一対の隔壁51A,51Bから船幅方向Dwの内側に向かって斜め上方に延びている。上部傾斜板531A,531Bの下端部は、一対の隔壁51A,51Bの上下方向Dvの中間部よりも上方に接合されている。上部傾斜板531A,531Bの上端部は、上甲板5の船幅方向Dwの中央部よりも外側に接合されている。
【0022】
下部傾斜板532A,532Bは、一対の隔壁51A,51Bからそれぞれ船幅方向Dwの内側に向かって斜め下方に延びている。下部傾斜板532A,532Bの上端部は、一対の隔壁51A,51Bの上下方向Dvの中間部よりも下方に接合されている。下部傾斜板532A,532Bの下端部は、底部甲板6の船幅方向Dwの中央部よりも外側に接合されている。
【0023】
上部傾斜板531Aの下端部と下部傾斜板532Aの上端部とは、上下方向Dvに間隔をあけて配置され、上部傾斜板531B下端部と下部傾斜板532Bの上端部とは、上下方向Dvに間隔をあけて配置されている。これによりカーゴホールド53を船幅方向Dwの内側から見て、上部傾斜板531Aの下端部と下部傾斜板532Aの上端部との間から隔壁51Aの一部51cが露出し、上部傾斜板531Bの下端部と、下部傾斜板532Bの上端部との間から隔壁51Bの一部51cが露出している。つまり、隔壁51Aの一部51cは、船幅方向Dwの一方において、カーゴホールド53の一部を形成し、隔壁51Bの一部51cは、船幅方向Dwの他方において、カーゴホールド53の一部を形成している。
【0024】
さらに、上部傾斜板531Aの上端部と、上部傾斜板531Bの上端部とは、船幅方向Dwに間隔をあけて配置されており、カーゴホールド53の内側から見て、これら上部傾斜板531Aの上端部と上部傾斜板531Bの上端部との間から上甲板5の船幅方向Dwの一部5cが露出している。同様に、下部傾斜板532Aの下端部と、下部傾斜板532Bの下端部とは、船幅方向Dwに間隔をあけて配置されている。カーゴホールド53の内側から見て、これら下部傾斜板532Aの下端部と下部傾斜板532Bの下端部との間から上甲板5の船幅方向Dwの一部5cが露出している。つまり、上甲板5の一部5cは、上下方向Dvの上方において、カーゴホールド53の一部を形成し、底部甲板6の一部6cは、上下方向Dvの下方において、カーゴホールド53の一部を形成している。
【0025】
図3に示すように、船首尾方向FAから見て、内側バラストタンク部54は、カーゴホールド53と一対の隔壁51A,51Bとの間に形成されている。内側バラストタンク部54は、カーゴホールド53の上部の船幅方向Dwの両側と、カーゴホールド53の下部の船幅方向Dwの両側とにそれぞれ形成されている。カーゴホールド53の上部の船幅方向Dwの両側に形成された内側バラストタンク部54A,54Bは、上部傾斜板531A,531Bと、隔壁51A,51Bと、上甲板5とに囲まれて形成されている。カーゴホールド53の下部の船幅方向Dwの両側形成された内側バラストタンク部54C,54Dは、下部傾斜板532A,532Bと、隔壁51A,51Bと、底部甲板6とに囲まれて形成されている。内側バラストタンク部54A~54Dには、バラスト水(図示せず)が注入される。なお、内側バラストタンク部54A~54Dのうちの一部は、バラスト水を注入せず、配管や配線が挿通されるパイプスペースとしてもよい。
【0026】
(作用効果)
上記実施形態の船舶1Aでは、船体2内に配置された複数の区画Sのうち、最も船首2a側及び最も船尾2b側の区画S7,S1を除く、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6に対応する部分のみに舷側二重構造部50Aを備えている。舷側二重構造部50Aは、一対の舷側3A,3Bに対して船幅方向Dwの内側に配置された一対の隔壁51A,51Bを有している。このように、船首尾方向FAの中央部2cに、一対の舷側3A,3B、及び一対の隔壁51A,51Bが設けられることで、船体2の船首尾方向FAの中央部2cにおける、縦曲げモーメントに対する剛性が高まっている。これにより、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を抑えることができる。したがって、実施形態の船舶1Aによれば、船体2に生じるホギング縦曲げモーメントを抑えることができる。
【0027】
上記実施形態では、舷側二重構造部50Aは、船幅方向Dwの両側に、舷側3A,3Bと隔壁51A,51Bとの間に形成されたバラストタンク部52A,52Bを備えている。
これにより、船幅方向Dwの両側のバラストタンク部52A,52B内にバラスト水を収容することにより、バラスト水の荷重によって、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を、より有効に抑えることができる。その結果、船体2に生じるホギング縦曲げモーメントを効果的に抑えることができる。
【0028】
上記実施形態では、更に、一対の隔壁51A,51Bの間に、カーゴホールド53と、内側バラストタンク部54と、を備えている。
これにより、内側バラストタンク部54にバラスト水を収容することによって、その荷重により、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を抑えることができる。
【0029】
上記実施形態では、更に、底部甲板6と船底4との間に船底バラストタンク部58を備え、底部甲板6上に一対の隔壁51A,51Bを形成している。これによって、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を抑えることができる。その結果、船体2に生じるホギング縦曲げモーメントを抑えることができる。
【0030】
上記実施形態では、一対の隔壁51A,51Bの下端部が底部甲板6に接合され、上端部が上甲板5に接合されている。これにより、船体2の船首尾方向FAの中央部2cにおける船体2の縦曲げモーメントに対する剛性が、より効果的に高められる。したがって、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を、一層効果的に抑えることができる。
【0031】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る船舶の第二実施形態について説明する。この第二実施形態は、第一実施形態と船舶の構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
(船舶の全体構成)
図4に示すように、この第二実施形態の船舶1Bは、タンカーであり、船体2と、複数の区画Sと、燃料タンク10と、舷側二重構造部50Bと、を少なくとも備えている。
【0032】
舷側二重構造部50Bは、複数の区画S1~S7のうちの最も船首2a側の区画S7、及び最も船尾2b側の区画S1を除く、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6に対応する部分のみに形成されている。舷側二重構造部50Bは、船体2のホギング縦曲げモーメントに対する強度を高める。舷側二重構造部50Bは、一対の隔壁51C,51Dと、バラストタンク部52C,52Dと、カーゴタンク61と、内側バラストタンク部62と、を備えている。
【0033】
一対の隔壁51C,51Dは、一対の舷側3A,3Bに対して船幅方向Dwの内側に間隔をあけて配置されている。隔壁51C,51Dのそれぞれの下端部は、船底4に接合されている。隔壁51C,51Dのそれぞれは、船底4から上下方向Dvの上方に立ち上がっている。隔壁51C,51Dのそれぞれの上端部は、船底4に対して、上下方向Dvの上方に形成された上部甲板としての上甲板5に接合されている。
【0034】
バラストタンク部52C,52Dは、一対の隔壁51C,51Dに対して、船幅方向Dwの両外側に形成されている。バラストタンク部52C,52Dは、船幅方向Dwの両側で、舷側3A,3Bと隔壁51C,51Dとの間に形成されている。船幅方向Dwの一方側のバラストタンク部52Cは、下方の船底4と上方の上甲板5との間で、舷側3Aと隔壁51Cとの間に形成されている。船幅方向Dwの他方側のバラストタンク部52Dは、下方の船底4と上方の上甲板5との間で、舷側3Bと隔壁51Dとの間に形成されている。バラストタンク部52C,52Dには、バラスト水(図示せず)が注入される。
【0035】
カーゴタンク61は、船首尾方向FAの中央部2cに配置された貨物区画としての区画S2~S6のそれぞれに設けられている。カーゴタンク61は、貨物としての各種液体を収容する。カーゴタンク61は、一対の隔壁51C,51Dに対して船幅方向Dwの内側に配置されている。カーゴタンク61は、船底4に支持部材(図示せず)を介して下方から支持されている。
【0036】
内側バラストタンク部62は、船底4と上甲板5との間で、カーゴタンク61と一対の隔壁51C,51Dとの間に形成されている。つまり、内側バラストタンク部62は、カーゴタンク61の下方、及びカーゴタンク61の船幅方向Dwの両側に形成されている。内側バラストタンク部62には、バラスト水(図示せず)が注入される。なお、内側バラストタンク部62の一部には、配管や配線が挿通されるパイプスペースを設けてもよい。
【0037】
(作用効果)
上記第二実施形態の船舶1Bでは、上述した第一実施形態と同様、船首尾方向FAの中央部2cに、一対の舷側3A,3B、及び一対の隔壁51C,51Dが設けられることで、船体2の船首尾方向FAの中央部2cにおける縦曲げモーメントに対する剛性が高まっている。これにより、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を抑えることができる。したがって、実施形態の船舶1Bによれば、船体2に生じるホギング縦曲げモーメントを抑えることができる。
【0038】
また、上記第二実施形態では、一対の隔壁51C,51Dが、船底4から上方に延びるように形成されている。このような場合であっても、一対の隔壁51C,51Dによって、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を抑えることができる。その結果、船体2に生じるホギング縦曲げモーメントを抑えることができる。
【0039】
(第二実施形態の変形例)
上記第二実施形態では、船舶1Bとしてタンカーを例に挙げたが、これに限られない。
例えば、図5に示すように、船舶1Cがコンテナ船である場合、船舶1Cの舷側二重構造部50Cには、上記第二実施形態で示したカーゴタンク61に代えて、一対の隔壁51C,51Dの間に、カーゴホールド71を設けるようにしてもよい。カーゴホールド71は、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6のそれぞれに設けられている。カーゴホールド71は、貨物としてのコンテナを複数収容する。カーゴホールド71は、一対の隔壁51C,51Dに対して船幅方向Dwの内側に配置されている。カーゴホールド71は、船底4に支持部材(図示せず)を介して下方から支持されている。
【0040】
カーゴホールド71の底部と、船底4との間には、船幅方向Dwに間隔をあけて一対の壁74A,74Bが設けられているカーゴホールド71の底部と船底4、及び一対の壁74A,74Bとに囲まれた空間は、配管や配線が挿通されるパイプスペース75としてもよい。
【0041】
舷側二重構造部50Cの内側バラストタンク部72A,72Bは、船底4と上甲板5との間で、カーゴホールド71と一対の隔壁51C,51Dとの間に形成されている。内側バラストタンク部72Aは、カーゴホールド71と隔壁51Cとの間に形成され、内側バラストタンク部72Bは、カーゴホールド71と隔壁51Dとの間に形成されている。これら内側バラストタンク部72A,72Bは、パイプスペース75の船幅方向Dwの両外側、及びカーゴホールド71の船幅方向Dwの両外側に形成されている。これら内側バラストタンク部72A,72Bには、バラスト水(図示せず)が注入される。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態では、燃料タンク10を、船尾2b側の上甲板5上に配置したが、これに限るものではない。燃料タンク10は、最も船尾2bの区画S1(機関室)を含む船尾2b側の部分に配置されていてもよい。
例えば、図6に示すように、後部領域Abにおいて、区画S2内の船首尾方向FAの一部に、燃料タンク10Bを配置してもよい。
また、図7に示すように、後部領域Abにおいて、区画S2内の上下方向Dvの一部を、燃料タンク10Cとしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、隔壁51A~51Dを備えた舷側二重構造部50A~50Cを、最も船首2a側の区画S7、及び最も船尾2b側の区画S1を除く、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6の全体に設けるようにしたが、これに限るものではない。舷側二重構造部50A~50Cは、最も船首2a側の区画S7、及び最も船尾2b側の区画S1を除く、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6のうち、少なくとも一部に設けられていればよい。例えば、舷側二重構造部50A~50Cは、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6のうち、区画S4のみ、区画S4及びS5のみ、あるいは区画S3~S5のみ、といったように配置してもよい。さらには、舷側二重構造部50A~50Cは、船首尾方向FAの中央部2cに配置された区画S2~S6のうち、例えば区画S2、S4、S6のみといったように、間欠的に配置してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、隔壁51A~51Dの上端部は、上部甲板としての上甲板5に接合するようにしたがこれに限られない。隔壁51A~51Dの上端部は、船底4よりも上方に形成された上甲板5以外の上部甲板、例えば上甲板5よりも下方に形成された他の甲板に接合するようにしてもよい。
また、上記施形態では、五つの区画S2~S6を貨物区画としたが、貨物区画として用いられる区画Sの数は、五つ以上、また五つ未満であってもよい。
【0045】
<付記>
各実施形態に記載の船舶1A~1Cは、例えば以下のように把握される。
【0046】
(1)第1の態様に係る船舶1A~1Cは、一対の舷側3A,3B、及び船底4を有する船体2と、前記船体2内の船首尾方向FAに配置された複数の区画Sと、前記船体2の後部に配置された燃料タンク10、10B、10Cと、を備え、前記船体2は、複数の前記区画S1~S7のうちの最も船首2a側及び最も船尾2b側の前記区画S7,S1を除く、船首尾方向FAの中央部2cに配置された前記区画S2~S6の少なくとも一つに対応する部分のみに形成され、一対の前記舷側3A,3Bに対して船幅方向Dwの内側に配置された一対の隔壁51A,51B,51C,51Dを有する舷側二重構造部50A~50C、を備える。
【0047】
これにより、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を抑えることができる。その結果、船体2に生じるホギング縦曲げモーメントを抑えることができる。
【0048】
(2)第2の態様に係る船舶1A~1Cは、(1)の船舶1A~1Cであって、前記舷側二重構造部50A~50Cは、船幅方向Dwの両側に、前記舷側3A,3Bと前記隔壁51A,51B,51C,51Dとの間に形成されたバラストタンク部52A,52B,52C,52Dを備える。
【0049】
これにより、船幅方向Dwの両側のバラストタンク部52A,52B、52C,52D内にバラスト水を収容することができるため、バラスト水の荷重によって、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を、より有効に抑えることができる。その結果、船体2に生じるホギング縦曲げモーメントを効果的に抑えることができる。
【0050】
(3)第3の態様に係る船舶1A~1Cは、(1)又は(2)の船舶1A~1Cであって、一対の前記隔壁51A,51B,51C,51Dに対して船幅方向Dwの内側に形成された内側バラストタンク部54,62,72A,72Bと、をさらに備える。
【0051】
これにより、一対の隔壁51A,51B,51C,51Dに対して船幅方向Dwの内側に形成された内側バラストタンク部54,62,72A,72Bにバラスト水を収容することができるため、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を抑えることができる。
【0052】
(4)第4の態様に係る船舶1Aは、(1)から(3)の何れか一つの船舶1Aであって、前記船体2は、前記船底4に対して上下方向の上方に間隔をあけて形成された底部甲板6と、前記底部甲板6と前記船底4との間に形成された船底バラストタンク部58と、を備え、一対の前記隔壁51A,51Bは、前記底部甲板6から上方に延びて形成されている。
【0053】
これにより、底部甲板6と船底4との間に船底バラストタンク部58を備える場合、底部甲板6上に一対の隔壁51A,51Bを形成することによって、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を抑えることができる。その結果、船体2に生じるホギング縦曲げモーメントを抑えることができる。
【0054】
(5)第5の態様に係る船舶1B、1Cは、(1)から(3)の何れか一つの船舶1B、1Cであって、一対の前記隔壁51C,51Dは、前記船底4から上方に延びて形成されている。
【0055】
これにより、一対の隔壁51C,51Dが、船底4から上方に延びるように形成されている場合であっても、一対の隔壁51C,51Dによって、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を抑えることができる。その結果、船体2に生じるホギング縦曲げモーメントを抑えることができる。
【0056】
(6)第6の態様に係る船舶1A~1Cは、(4)の船舶1A~1Cであって、一対の前記隔壁51A,51B,51C,51Dの上端部は、前記底部甲板6よりも上下方向の上方に形成された上部甲板5に接合されている。
上部甲板としては、上甲板、又は上甲板よりも下方に配置された他の甲板が挙げられる。
【0057】
(7)第7の態様に係る船舶1A~1Cは、(5)の船舶1A~1Cであって、一対の前記隔壁51A,51B,51C,51Dの上端部は、前記船底4よりも上下方向の上方に形成された上部甲板5に接合されている。
【0058】
これにより、一対の隔壁51A,51B,51C,51Dの下端部が底部甲板6又は船底4に接合され、上端部が上部甲板5に接合されることによって、船体2の船首尾方向FAの中央部2cにおける船体2の構成が、より効果的に高められる。したがって、船体2の船首2a側及び船尾2b側に対して船首尾方向FAの中央部2cが上方に撓むような変形を、一層効果的に抑えることができる。
【符号の説明】
【0059】
1A~1C…船舶 2…船体 2a…船首 2b…船尾 2c…中央部 3A,3B…舷側 3s…舷側外板 4…船底 4s…船底外板 5…上甲板(上部甲板) 5c…一部 6…底部甲板 6c…一部 7…上部構造 8…スクリュー 10、10B、10C…燃料タンク 11、11A…区画壁 21…原動機 50A~50C…舷側二重構造部 51A,51B,51C,51D…隔壁 51c…一部 52A,52B、52C,52D…バラストタンク部 53…カーゴホールド 54、54A,54B、54C,54D…内側バラストタンク部 58…船底バラストタンク部 61…カーゴタンク 62…内側バラストタンク部 71…カーゴホールド 72A,72B…内側バラストタンク部 74A,74B…壁 75…パイプスペース 531A,531B…上部傾斜板 532A,532B…下部傾斜板 S、S1~S7…区画
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7