(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157602
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】締結工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
B25B21/00 530Z
B25B21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067611
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和也
(57)【要約】
【課題】ねじを締め込む動作の正常な完了を検出できない場合でも、ネジを締め込む動作を終了できるようにした締結工具を提供する。
【解決手段】締結工具1は、ドライバビットを回転させるビット回転モータ40と、ビット回転モータ40の回転量に基づき異常の発生を検出する異常検出回転量が設定され、ドライバビットが前進終了位置に到達しておらず、ビット回転モータ40の回転量が異常検出回転量に到達すると、ビット回転モータ40の回転を停止させる制御部100を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバビットを着脱可能に保持し、ドライバビットの周方向に回転可能及び軸方向に移動可能なビット保持部と、
前記ビット保持部を回転させる第1のモータと、
ドライバビットの軸方向に沿った前記ビット保持部の移動位置を検出する位置検出部と、
前記第1のモータを回転させて前記ビット保持部を回転させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記位置検出部で検出された前記ビット保持部の移動位置に基づき、前記ビット保持部が前進終了位置に移動したか否かを判断し、前記ビット保持部が前記前進終了位置に到達しておらず、かつ、前記第1のモータの停止条件を満たしたとき、前記第1のモータの回転を停止する
締結工具。
【請求項2】
前記停止条件は、前記第1のモータの回転量が異常検出回転量に到達したことである
請求項1に記載の締結工具。
【請求項3】
前記停止条件は、前記第1のモータの回転を開始してからの時間が、異常検出規定時間に到達したことである
請求項1に記載の締結工具。
【請求項4】
オン状態とオフ状態を切り替え可能な操作スイッチ部を備え、
前記制御部は、前記操作スイッチ部がオン状態のとき前記第1のモータを駆動させ、前記操作スイッチ部がオフ状態のとき前記第1のモータを停止させる一方、前記ビット保持部が前進終了位置へ移動する前においては、前記操作スイッチ部がオフ状態に切り替わっても、前記第1のモータの回転を継続する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の締結工具。
【請求項5】
前記制御部は、前記ビット保持部の前進終了位置への移動を検出した後に、前記第1のモータが前記停止条件に到達する前に前記操作スイッチ部がオフ状態になると、前記第1のモータの回転を停止する
請求項4に記載の締結工具。
【請求項6】
前記ビット保持部を軸方向に沿って移動させる第2のモータをさらに備え、
前記制御部は、前記第2のモータを回転させて前記ビット保持部を軸方向に沿って移動させる
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の締結工具。
【請求項7】
前記制御部は、ドライバビットに係合されたネジが締結される締結対象物を第2のモータの回転量または回転速度に基づき判別し、締結対象物に応じて前記停止条件を変更する
請求項6記載の締結工具。
【請求項8】
前記制御部は、ネジを締結対象物に締め込む動作を開始すると、ネジを介して第1または第2のモータに掛かる負荷に応じて前記停止条件を変更する
請求項6に記載の締結工具。
【請求項9】
オン状態とオフ状態を切り替え可能な操作スイッチ部を備え、
前記制御部は、前記操作スイッチ部がオン状態のとき前記第1のモータを駆動させ、前記操作スイッチ部がオフ状態のとき前記第1のモータを停止させる一方、前記ビット保持部が前進終了位置へ移動する前においては、前記操作スイッチ部がオフ状態に切り替わっても、前記第1のモータの回転を継続するとともに、ドライバビットに係合されたネジが締結される締結対象物を判別し、締結対象物に応じて前記停止条件を変更し、前記操作スイッチ部がオフ状態になると、前記第1のモータの回転を停止する
請求項8に記載の締結工具。
【請求項10】
ドライバビットを着脱可能に保持し、ドライバビットの周方向に回転可能及び軸方向に移動可能なビット保持部と、
前記ビット保持部を回転させる第1のモータと、
ドライバビットに係合されたネジが締結される締結対象物に接触するコンタクト部材と、
前記コンタクト部材の軸方向の移動によって作動し、オン状態とオフ状態が切り替えられるコンタクトスイッチ部と、
ドライバビットの軸方向に沿った前記ビット保持部の移動位置を検出する位置検出部と、
前記第1のモータを回転させて前記ビット保持部を回転させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記コンタクトスイッチ部の作動の有無に基づき、前記第1のモータの駆動を停止するタイミングを制御すると共に、前記位置検出部で検出された前記ビット保持部の移動位置に基づき、前記ビット保持部が前進終了位置に移動したと判断したとき、前記コンタクトスイッチ部の作動の有無を判断し、前記コンタクトスイッチ部がオフ状態であると、前記第1のモータが停止条件を満たすまで回転を継続する
締結工具。
【請求項11】
前記停止条件は、前記第1のモータの回転量が異常検出回転量に到達したことである
請求項10に記載の締結工具。
【請求項12】
前記停止条件は、前記第1のモータの回転を開始してからの時間が、異常検出規定時間に到達したことである
請求項10に記載の締結工具。
【請求項13】
前記制御部は、前記ビット保持部の前進終了位置への移動を判断し、かつ前記コンタクトスイッチ部がオフ状態のとき、前記第1のモータが前記停止条件に到達する前に前記コンタクトスイッチ部がオン状態になると前記第1のモータを停止する
請求項10から請求項12の何れか1項に記載の締結工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジにドライバビットを係合させ、ドライバビットでネジを押して締結対象物に押し付け、ドライバビットを回転させて捩じ込む締結工具に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンプレッサから供給される圧縮空気の空気圧や、ガスの燃焼圧を利用し、マガジンに装填された連結止め具を、ドライバガイドの先端から順次打ち出す可搬形の打込機と称す工具が知られている。
【0003】
ビットを回転させてネジを締めると共に、ネジを打ち込む方向にビットを移動させる工具では、従来、エアモータでビットを回転させ、ネジを打ち込む方向にはエア圧で移動させる空気圧式ネジ打ち機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ドライバビットを回転させるモータの駆動力でバネを圧縮し、バネの付勢でドライバビットを軸方向に移動させてネジを打ち込むネジ打ち機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5262461号
【特許文献2】特許第6197547号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バネの付勢でドライバビットを軸方向に移動させてネジを打ち込むネジ打ち機では、ドライバビットを検出するセンサによりドライバビットの下降を検出することで、ねじ締め動作の完了を判断している。しかし、センサが壊れたり、ノーズ内でねじが倒れてドライバビットが進まなくなるといった状況が発生した場合に、ねじを締め込む動作の完了を検出できなくなることで、ネジを締め込む動作が継続し続けてしまう問題が考えられる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、ねじを締め込む動作の正常な完了を検出できない場合でも、ネジを締め込む動作を終了できるようにした締結工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、ドライバビットを着脱可能に保持し、ドライバビットの周方向に回転可能及び軸方向に移動可能なビット保持部と、ビット保持部を回転させる第1のモータと、ドライバビットの軸方向に沿ったビット保持部の移動位置を検出する位置検出部と、第1のモータを回転させてビット保持部を回転させる制御部とを備え、制御部は、位置検出部で検出されたビット保持部の移動位置に基づき、ビット保持部が前進終了位置に移動したか否かを判断し、ビット保持部が前進終了位置に到達しておらず、かつ、第1のモータの停止条件を満たしたとき、第1のモータの回転を停止する締結工具である。
【0009】
本発明では、ビット保持部に保持されたドライバビットが前進終了位置に移動したと判断すると、第1のモータの回転を停止する。但し、ビット保持部に保持されたドライバビットが前進終了位置に移動したことを検出できず、ビット保持部に保持されたドライバビットが前進終了位置に移動していないと判断すると、停止条件を満たしたときに第1のモータの回転を停止する。
【0010】
また、本発明は、ドライバビットを着脱可能に保持し、ドライバビットの周方向に回転可能及び軸方向に移動可能なビット保持部と、ビット保持部を回転させる第1のモータと、ドライバビットに係合されたネジが締結される締結対象物に接触するコンタクト部材と、コンタクト部材の軸方向の移動によって、オン状態とオフ状態が切り替えられるコンタクトスイッチ部と、ドライバビットの軸方向に沿ったビット保持部の移動位置を検出する位置検出部と、第1のモータを回転させて前記ビット保持部を回転させる制御部とを備え、制御部は、コンタクトスイッチ部の作動に基づき、第1のモータの駆動を停止するタイミングを制御すると共に、位置検出部で検出されたビット保持部の移動位置に基づき、ビット保持部が前進終了位置に移動したと判断したとき、コンタクトスイッチ部の作動の有無を判断し、コンタクトスイッチ部がオフ状態であると、第1のモータが停止条件を満たすまで回転を継続する締結工具である。
【0011】
本発明では、ビット保持部に保持されたドライバビットが前進終了位置に移動したと判断すると、第1のモータの回転を停止する。但し、コンタクトスイッチ部が非作動であると、締結工具が締結対象物から浮き上がっていることが想定されるため、第1のモータのネジを締結する一の方向の回転を継続し、その後コンタクトスイッチ部が作動すると、第1のモータの回転を停止する。一方、コンタクトスイッチ部が継続して非作動であると、停止条件を満たしたときに第1のモータの回転を停止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ビット保持部に保持されたドライバビットが前進終了位置に移動したことを検出できない状態でも、第1のモータの回転を停止することができる。
【0013】
また、本発明では、ビット保持部に保持されたドライバビットが前進終了位置に移動した後、コンタクトスイッチ部の作動の有無に基づき第1のモータの駆動を停止するタイミングを検出できない状態でも、第1のモータの回転を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本実施の形態の締結工具の内部構造の一例を示す側断面図である。
【
図1B】本実施の形態の締結工具の内部構造の一例を示す上面断面図である。
【
図1C】本実施の形態の締結工具の内部構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図2A】本実施の形態の締結工具の要部構成の一例を示す斜視図である。
【
図2B】本実施の形態の締結工具の要部構成の一例を示す斜視図である。
【
図3A】本実施の形態の締結工具の要部構成の一例を示す断面斜視図である。
【
図3B】本実施の形態の締結工具の要部構成の一例を示す断面斜視図である。
【
図4】本実施の形態のネジ送り部及びノーズ部の一例を示す斜視図である。
【
図5】本実施の形態の締結工具の一例を示すブロック図である。
【
図7A】本実施の形態の締結工具の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7B】本実施の形態の締結工具の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7C】本実施の形態の締結工具の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8A】ビット回転モータとビット移動モータの回転速度の関係を示すグラフである。
【
図8B】ビット回転モータとビット移動モータの回転速度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の締結工具の実施の形態について説明する。
【0016】
<本実施の形態の締結工具の構成例>
図1Aは、本実施の形態の締結工具の内部構造の一例を示す側断面図、
図1Bは、本実施の形態の締結工具の内部構造の一例を示す上面断面図、
図1Cは、本実施の形態の締結工具の内部構造の一例を示す分解斜視図である。
【0017】
本実施の形態の締結工具1は、ドライバビット2を回転可能、及び、軸方向に移動可能に保持するビット保持部3と、ビット保持部3で保持されたドライバビット2を回転させる第1の駆動部4と、ビット保持部3で保持されたドライバビット2を軸方向に移動させる第2の駆動部5を備える。
【0018】
また、締結工具1は、ネジ200が収納されるネジ収納部6と、ネジ収納部6に収納されたネジを送る後述するネジ送り部7と、ネジ200が締結される締結対象物に押し付けられると共に、ネジ200が射出されるノーズ部8を備える。
【0019】
更に、締結工具1は、工具本体10とハンドル11を備える。また、締結工具1は、ハンドル11の端部に、バッテリ12が着脱可能に取り付けられるバッテリ取付部13を備える。
【0020】
締結工具1は、工具本体10が矢印A1、A2で示すドライバビット2の軸方向に沿った一の方向に延伸し、工具本体10の延伸方向に対して交差する他の方向にハンドル11が延伸する。締結工具1は、工具本体10が延伸する方向、すなわち、矢印A1、A2で示すドライバビット2の軸方向を前後方向とする。また、締結工具1は、ハンドル11が延伸する方向を上下方向とする。更に、締結工具1は、工具本体10の延伸方向及びハンドル11の延伸方向に直交する方向を左右方向とする。
【0021】
第1の駆動部4は、ハンドル11を挟んで、工具本体10の一方の側である後方に設けられる。また、第2の駆動部5は、ハンドル11を挟んで、工具本体10の他方の側である前方に設けられる。
【0022】
ネジ収納部6は、複数のネジ200が連結帯で連結され、渦巻き状に巻かれた連結ネジが収納される。
【0023】
図2A、
図2Bは、本実施の形態の締結工具の要部構成の一例を示す斜視図、
図3A、
図3Bは、本実施の形態の締結工具の要部構成の一例を示す断面斜視図であり、次に、各図を参照して、ビット保持部3及び第1の駆動部4について説明する。
【0024】
ビット保持部3は、ドライバビット2を着脱可能に保持する保持部材30と、保持部材30をドライバビット2の軸方向に沿った矢印A1、A2で示す前後方向へ移動可能に支持すると共に、保持部材30と共に回転する回転ガイド部材31と、保持部材30を回転ガイド部材31に沿って前後方向に移動させる移動部材32と、移動部材32を矢印A2で示す後方向へ付勢する付勢部材33を備える。
【0025】
保持部材30は、回転ガイド部材31の内径より外径が若干小さく、回転ガイド部材31の内側に入れられる例えば円柱状の部材で構成される。保持部材30は、ドライバビット2の軸方向に沿った前側の端部に、ドライバビット2の断面形状と合致した形状の開口30aが設けられる。保持部材30は、ドライバビット2を着脱可能に保持する着脱保持機構30cを開口30aに備える。保持部材30は、開口30aが回転ガイド部材31の内側に露出し、開口30aにドライバビット2が着脱可能に挿入される。
【0026】
着脱保持機構30cは、開口30a内に露出するボール30dと、ボール30dを開口30a内に露出する方向に付勢するバネ30eを備える。バネ30eは、環状の板バネで構成され、保持部材30の外周に嵌められる。
【0027】
着脱保持機構30cは、バネ30eで付勢されたボール30dがドライバビット2の溝部に嵌ることで、ドライバビット2が保持部材30から不用意に抜けることが抑制される。また、ドライバビット2を保持部材30から抜く方向に所定以上の力が掛かると、環状のバネ30eを変形させながらボール30dが退避することで、ドライバビット2を保持部材30から抜くことが可能である。
【0028】
回転ガイド部材31は、工具本体10の延伸方向、すなわち、ドライバビット2の軸方向に沿った矢印A1、A2で示す前後方向に沿って延伸する。回転ガイド部材31は、内側に保持部材30が入る円筒形状で、前側の端部が、工具本体10の外装を構成するケース10aの前側に設けられる前フレーム10bに、軸受の一例であるベアリング34aを介して回転可能に支持される。また、回転ガイド部材31は、後側の端部が第1の駆動部4と連結される。
【0029】
回転ガイド部材31は、ドライバビット2の軸方向に沿った矢印A1、A2で示す前後方向に延伸する溝部31aが、径方向に対向する周面の2箇所に形成される。回転ガイド部材31は、保持部材30を径方向に貫通し、保持部材30の両側方から突出した連結部材30bが溝部31aに入ることで、連結部材30bを介して保持部材30と連結される。
【0030】
連結部材30bは、断面形状が長円形状の筒状の部材で構成され長円形状の長手方向が、矢印A1、A2で示すドライバビット2の軸方向と平行な溝部31aの延伸方向に沿った向きとなる。また、連結部材30bは、長円形状の短手方向が、矢印B1、B2方向で示す溝部31aの延伸方向と直交する向き、すなわち、回転ガイド部材31の回転方向に沿った向きとなる。そして、連結部材30bは、長円形状の短手方向の幅、すなわち、回転ガイド部材31の回転方向に沿った幅が、溝部31aの同方向に沿った幅より若干小さく構成される。
【0031】
これにより、溝部31aに入れられた連結部材30bは、回転ガイド部材31の軸方向に沿って移動可能に溝部31aに支持される。また、連結部材30bは、回転ガイド部材31に対して回転方向に沿った移動が、溝部31aの延伸する方向に沿った溝部31aの一方の側面と他方の側面との間で規制される。よって、連結部材30bは、回転ガイド部材31が回転する動作で、回転ガイド部材31の回転方向に応じて溝部31aの一方の側面または他方の側面に押され、回転ガイド部材31から回転方向である周方向の力を受ける。
【0032】
従って、保持部材30は、回転ガイド部材31が回転すると、連結部材30bが回転ガイド部材31の溝部31aに押されることで、回転ガイド部材31と共に回転する。また、保持部材30は、連結部材30bが回転ガイド部材31の溝部31aにガイドされ、ドライバビット2の軸方向に沿った前後方向に移動する。
【0033】
移動部材32は、保持部材30と共に回転し、保持部材30を回転ガイド部材31に沿って前後方向に移動させる第1の移動部材32aと、ベアリング32bを介して第1の移動部材32aに支持され、ベアリング32bを介して第1の移動部材32aを押す第2の移動部材32cと、第2の移動部材32cの後側に取り付けられる緩衝部材32dを備える。
【0034】
第1の移動部材32aは、回転ガイド部材31の外径より内径が若干大きく、回転ガイド部材31の外側に入れられる例えば円筒状の部材で構成される。第1の移動部材32aは、回転ガイド部材31の溝部31aから突出した連結部材30bを介して保持部材30と連結されることで、回転ガイド部材31の軸方向に沿って移動可能に支持される。
【0035】
ベアリング32bは軸受の一例で、第1の移動部材32aの外周と第2の移動部材32cの内周の間に挿入される。第1の移動部材32aは、ベアリング32bの内輪を保持する軸受内輪保持部材を構成し、第2の移動部材32cは、ベアリング32bの外輪を保持する軸受外輪保持部材を構成する。ベアリング32bは、内輪が第1の移動部材32aの外周に回転方向と軸方向の移動を不能に支持され、外輪が第2の移動部材32cの内周に回転方向と軸方向の移動を不能に支持される。
【0036】
これにより、第2の移動部材32cは、第1の移動部材32aに対して、軸方向に沿った前後方向への移動が規制された状態で、ベアリング32bを介して連結される。また、第2の移動部材32cは、ベアリング32bを介して第1の移動部材32aを回転可能に支持する。
【0037】
従って、第1の移動部材32aは、第2の移動部材32cが軸方向に沿った前後方向に移動する動作で、ベアリング32bを介して第2の移動部材32cに押され、第2の移動部材32cと共に軸方向に沿った前後方向に移動する。また、第1の移動部材32aは、回転ガイド部材31に対して非回転な第2の移動部材32cに対して回転可能である。
【0038】
付勢部材33は、本例ではコイルバネで構成され、回転ガイド部材31の外側で、工具本体10のケース10aの前側に設けられる前フレーム10bと、移動部材32の第2の移動部材32cとの間に入れられ、ベアリング32bの外輪の端面に接触するように配置されたばね座32fに当接する。付勢部材33は、移動部材32が矢印A1で示す前方向に移動することで圧縮され、移動部材32を矢印A2で示す後方向に押す力を移動部材32に掛ける。
【0039】
第1の駆動部4は、バッテリ12から供給される電気で駆動されるビット回転モータ40と、減速機41を備える。ビット回転モータ40は第1のモータの一例で、ビット回転モータ40の軸40aが、減速機41と連結され、減速機41の軸41aが、回転ガイド部材31に連結される。第1の駆動部4は、減速機41が遊星歯車を利用した構成で、ビット回転モータ40が回転ガイド部材31及び保持部材30と、保持部材30に保持されたドライバビット2と同軸上に配置される。
【0040】
第1の駆動部4は、工具本体10のケース10aの後側に設けられる後フレーム10cに、ビット回転モータ40及び減速機41が取り付けられ、減速機41の軸41aが、ベアリング42を介して後フレーム10cに支持される。回転ガイド部材31は、後側の端部が、減速機41の軸41aと連結され、軸41aが、ベアリング42を介して後フレーム10cに支持されることで、軸受の一例であるベアリング42を介して回転可能に支持される。
【0041】
ビット保持部3と第1の駆動部4は、前フレーム10bと後フレーム10cが、前後方向に延伸する結合部材10dで連結されることで、一体に組み立てられ、前フレーム10bが、工具本体10のケース10aにネジ10eにより固定される。
【0042】
また、ビット保持部3は、回転ガイド部材31の前側の端部が、工具本体10のケース10aの前側に固定される前フレーム10bにベアリング34aを介して支持され、回転ガイド部材31の後側の端部が、ケース10aの後側に固定される後フレーム10cに、減速機41の軸41a及びベアリング42を介して支持される。よって、ビット保持部3は、回転ガイド部材31が工具本体10に回転可能に支持される。
【0043】
これにより、第1の駆動部4は、ビット回転モータ40により回転ガイド部材31を回転させる。ドライバビット2が保持される保持部材30は、回転ガイド部材31が回転すると、連結部材30bが回転ガイド部材31の溝部31aに押されることで、回転ガイド部材31と共に回転する。
【0044】
ビット保持部3は、第2の移動部材32cにガイド部材32gが設けられる。第2の移動部材32cは、ガイド部材32gが結合部材10dにガイドされることで、ドライバビット2の軸方向に沿った矢印A1、A2で示す前後方向に移動可能で、かつ、回転ガイド部材31に追従した回転が規制される。
【0045】
次に、各図を参照して、第2の駆動部5について説明する。第2の駆動部5は、バッテリ12から供給される電気で駆動されるビット移動モータ50と、減速機51を備える。ビット移動モータ50は第2のモータの一例で、ビット移動モータ50の軸50aが、減速機51と連結され、減速機51の軸51aが伝達部材の一例であるプーリ52と連結される。第2の駆動部5は、プーリ52がベアリング53を介して工具本体10に支持される。第2の駆動部5は、ビット移動モータ50の軸50aがハンドル11の延伸方向に沿って配置される。
【0046】
第2の駆動部5は、伝達部材の一例である線状のワイヤ54の一端がプーリ52に連結され、プーリ52が回転することでワイヤ54がプーリ52に巻かれる。また、ワイヤ54の他端が、移動部材32の第2の移動部材32cに設けたワイヤ連結部32hに連結される。
【0047】
これにより、第2の駆動部5は、ビット移動モータ50によりプーリ52を回転させて、ワイヤ54を巻き取ることで、第2の移動部材32cを矢印A1で示す前方向に移動させる。ビット保持部3は、第2の移動部材32cが前方向に移動することで、ベアリング32bを介して第1の移動部材32aが押され、第1の移動部材32aが第2の移動部材32cと共に軸方向に沿った前方向に移動する。第1の移動部材32aが前方向に移動することで、第1の移動部材32aと連結部材30bを介して連結された保持部材30が前方向に移動し、保持部材30で保持されたドライバビット2が、矢印A1で示す前方向に移動する。
【0048】
第2の駆動部5は、プーリ52においてワイヤ54が巻かれる部位の接線方向が、回転ガイド部材31の延伸方向に沿うように、締結工具1の左右方向における略中心に対し一方の側にオフセットされて配置される。また、ドライバビット2を所定量移動させるために、プーリ52がワイヤ54を巻き取る動作で、プーリ52にワイヤ54が重ねて巻かれることがないように、プーリ52の径などが設定される。
【0049】
これにより、ビット移動モータ50の回転量と、保持部材30の移動量との関係が、保持部材30の移動可能範囲の全域において、1対1の関係となり、ビット移動モータ50の回転量を制御することで、回転ガイド部材31の軸方向に沿った保持部材30の移動量を制御できる。すなわち、ビット移動モータ50の回転量を制御することで、保持部材30に取り付けられたドライバビット2の移動量を制御可能となる。
【0050】
また、ビット移動モータ50の回転速度に応じて、ドライバビット2の移動速度を速くすることができる。よって、ドライバビット2でネジ200を締結対象物に押し付けるまでの時間を短縮することができる。
【0051】
なお、ワイヤ54は、プーリ52に巻き取ることが可能な可撓性を有することから、第2の移動部材32cを押して移動部材32を後方へ移動させることができない。そこで、移動部材32が矢印A1で示す前方向に移動することで圧縮され、移動部材32を矢印A2で示す後方向に押す力を移動部材32に掛ける付勢部材33を備える。これにより、プーリ52でワイヤ54を巻き取り、ドライバビット2を前進させる構成で、前進後のドライバビット2を後進させることができる。
【0052】
図4は、本実施の形態のネジ送り部及びノーズ部の一例を示す斜視図であり、次に、各図を参照して、ネジ送り部7及びノーズ部8について説明する。ネジ送り部7は、ネジ送りモータ70と、ネジ送りモータ70の軸に減速機を介して取り付けられるピニオンギア71と、ピニオンギア71と噛み合うラックギア72と、ラックギア72と連結され、ネジ収納部6から送られる連結ネジと係合する係合部73を備える。
【0053】
ネジ送り部7は、ラックギア72が、連結ネジの送り方向に沿った上下方向に移動可能に支持される。ネジ送り部7は、ネジ送りモータ70が正転及び逆転することで、連結ネジと係合する係合部73が上下方向に往復移動し、連結ネジが送られる。なお、ネジ送り部7は、ソレノイドなどの電磁力と付勢手段の組み合わせで直動する駆動部により係合部73を往復移動させる構成としてもよい。
【0054】
ノーズ部8は、ネジ送り部7によりネジ200が供給されると共に、ドライバビット2が通る射出通路80を備える。また、ノーズ部8は、射出通路80と連通する射出口81aを有し、締結対象物に接触するコンタクト部材81を備える。更に、ノーズ部8は、コンタクト部材81と連動して前後方向に移動するコンタクトアーム82を備える。
【0055】
ノーズ部8は、コンタクト部材81が矢印A1、A2で示す前後方向に移動可能に支持され、コンタクト部材81と連動してコンタクトアーム82が前後方向に移動する。ノーズ部8は、コンタクト部材81が図示しない付勢部材で前方向に付勢され、締結対象物に押し付けられて後方に移動したコンタクト部材81が、付勢部材で付勢されて前方向に移動する。
【0056】
締結工具1は、コンタクトアーム82に押されて作動するコンタクトスイッチ部84を備える。コンタクトスイッチ部84は、コンタクト部材81が締結対象物に押し付けられて後方へ移動するコンタクトアーム82が後方へ移動することで、コンタクトアーム82に押されることで作動の有無が切り替えられる。本例では、コンタクトアーム82に押されておらず、コンタクトスイッチ部84が非作動な状態をコンタクトスイッチ部84のオフ、コンタクトアーム82に押されてコンタクトスイッチ部84が作動した状態をコンタクトスイッチ部84のオン状態とする。
【0057】
図5は、本実施の形態の締結工具の一例を示すブロック図であり、次に、各図を参照して、締結工具1の制御及び操作に関する構成について説明する。
【0058】
締結工具1は、操作を受けるトリガ9と、トリガ9の操作で作動するトリガスイッチ部90を備える。トリガ9は操作部の一例で、
図1Aなどに示すように、ハンドル11の前側に設けられ、ハンドル11を把持する手の指で操作可能に構成される。トリガスイッチ部90は操作スイッチ部の一例で、トリガ9に押されて作動する。
【0059】
トリガスイッチ部90は、トリガ9に押されることで作動の有無が切り替えられ、本例では、トリガ9が操作されておらず、トリガ9でトリガスイッチ部90が押されずトリガスイッチ部90が非作動な状態をトリガスイッチ部90のオフ、トリガ9が操作され、トリガ9に押されてトリガスイッチ部90が作動した状態をトリガスイッチ部90のオン状態とする。
【0060】
締結工具1は、トリガ9の操作で作動するトリガスイッチ部90及びコンタクト部材81に押されて作動するコンタクトスイッチ部84の出力に基づき、第1の駆動部4、第2の駆動部5及びネジ送り部7を制御する制御部100を備える。制御部100は、各種電子部品が実装された基板で構成され、
図1Aに示すように、ネジ収納部6とハンドル11との間で、ネジ収納部6の裏面側に設けた基板収納部111に収納される。
【0061】
制御部100は、コンタクトスイッチ部84がオン状態であるか、または、オフ状態であるかと、トリガスイッチ部90がオン状態であるか、またはオフ状態であるかとの組み合わせに基づき、第2の駆動部5のビット移動モータ50と第1の駆動部4のビット回転モータ40の駆動の有無を制御する。
【0062】
締結工具1は、上述したように、ビット保持部3で保持部材30に保持されたドライバビット2を、ビット回転モータ40の駆動により回転させる第1の駆動部4を備える。また、締結工具1は、ビット保持部3で保持部材30に保持されたドライバビット2を、ビット移動モータ50の駆動により軸方向に沿った前後方向に移動させる第2の駆動部5を備える。
【0063】
締結工具1は、ビット移動モータ50が所定の方向に回転することで、ビット保持部3で保持部材30に保持されたドライバビット2が矢印A1で示す前方向に移動(前進)する。また、締結工具1は、ビット回転モータ40が所定の方向に回転することで、ネジ200を締結する方向にドライバビット2が回転する。
【0064】
締結工具1は、ビット移動モータ50の回転でドライバビット2を前進させることで、ドライバビット2とネジ200のリセス200aを係合させ、ネジ200を前方向に移動させて、締結対象物に押し付ける。
【0065】
また、締結工具1は、ビット回転モータ40の回転でネジ200を締結する方向にドライバビット2を回転させることで、ドライバビット2と係合したネジ200を締結対象物に締結する。
【0066】
更に、締結工具1は、ビット回転モータ40の回転に連動してビット移動モータ50を回転させることで、ネジ200の締結に追従してドライバビット2を前進させる。
【0067】
そこで、制御部100は、ビット移動モータ50の回転量を制御することで、ドライバビット2の移動量(前進量)を制御する。制御部100は、ドライバビット2の移動量を制御することで、ドライバビット2の軸方向に沿った停止位置を制御する。
【0068】
また、制御部100は、ビット回転モータ40の回転速度とビット移動モータ50の回転速度を制御することで、ネジ200の締結に追従してドライバビット2を前進させる。
【0069】
締結工具1は、制御部100がドライバビット2の移動量(前進量)を制御するため、ドライバビット2の軸方向に沿ったビット保持部3の移動位置を検出する位置検出部113を備える。位置検出部113は、ビット移動モータ50の回転量を検出し、ビット移動モータ50の回転量に基づきビット保持部3の移動位置を検出する。制御部100は、位置検出部113で検出されたビット保持部3の移動位置に基づき、ビット保持部3が所定の前進終了位置に移動したか否か判断する。なお、位置検出部の機能は、制御部100で実現しても良い。
【0070】
制御部100は、ビット保持部3に保持されたドライバビット2が軸方向に沿って前進終了位置に移動したか否かを判断する第1の条件が設定されると共に、ビット回転モータ40とビット移動モータ50の回転を停止するか否かを判断する停止条件としての第2の条件が設定される。制御部100は、第1の条件に基づく検出で、ビット保持部3に保持されたドライバビット2が前進終了位置に移動したことを非検出であると判断すると、第2の条件に基づきビット回転モータ40とビット移動モータ50の回転を停止する。
【0071】
制御部100は、第1の条件として、ビット移動モータ50の回転量に基づき、ビット保持部3に保持されたドライバビット2の軸方向に沿った位置を制御する。このため、制御部100は、ビット移動モータ50が回転を開始してから、ビット保持部3に保持されたドライバビット2が軸方向に沿って所定の前進終了位置に移動するまでのビット移動モータ50の規定回転量が設定される。
【0072】
また、制御部100は、ドライバビット2の軸方向に沿った位置をビット移動モータ50の回転量に基づき制御できないような異常が発生している場合に、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させるか否か判断する第2の条件として、ビット回転モータ40の回転量に基づき異常の発生を検出するビット回転モータ40の異常検出回転量が設定される。
【0073】
制御部100は、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を開始してから、ビット移動モータ50の回転量が規定回転量に到達できず、ビット回転モータ40の回転量が異常検出回転量に到達すると、ビット回転モータ40及びビッド移動モータ50の停止条件を満たしたと判断し、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を停止させる。
【0074】
更に、制御部100は、ドライバビット2の軸方向に沿った位置をビット移動モータ50の回転量に基づき制御できないような異常が発生している場合に、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させるか否か判断する第2の条件として、ネジ200の締め込み動作を開始してからの時間の経過に基づき異常の発生を検出する異常検出規定時間が設定される。ネジ200の締め込み動作を開始してからの時間の経過として、例えば、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間の経過に基づき異常の発生を検出する異常検出規定時間が設定される。
【0075】
制御部100は、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を開始してから、ビット移動モータ50の回転量が規定回転量に到達できず、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間が異常検出規定時間に到達すると、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を停止させる。
【0076】
制御部100は、ビット保持部3に保持されたドライバビット2が前進終了位置に移動したことを、ビット移動モータ50の回転量に基づき検出したと判断する前に、トリガ9の操作でトリガスイッチ部90がオフとなると、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を継続する。
【0077】
また、制御部100は、締結対象物を判別し、締結対象物がネジ200を締め込むことができない可能性がある材質である場合、第2の条件に基づきビット回転モータ40とビット移動モータ50の回転を停止する。また、締結対象物がネジ200を締め込むことができない可能性がある材質である場合、トリガ9の操作でトリガスイッチ部90がオフとなると、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を停止させる。
【0078】
締結工具1は、ドライバビット2の前進量を規定するビット移動モータ50の回転量などが設定される設定部110を備える。
図6は、設定部の一例を示す斜視図であり、次に、各図を参照して設定部110について説明する。
【0079】
設定部110は設定手段の一例で、複数の設定値の中から任意の設定値が選択可能、または、任意の設定値が無段階で選択可能に構成される。
【0080】
設定部110は、本例では、ボタンで構成される操作部110aで設定値が選択される構成である。また、操作部110aは、回転式のダイヤルで設定値が選択される構成でもよい。また、設定部110は、現在の設定値を作業者が容易に把握できるよう、ラベルや刻印などで現在値を示す方法や、LEDなどの表示部110bで現在値を示す方法などにより、選択された設定値を表示する構成を備えてもよい。表示部110bに表示される内容としては、ドライバビット2の前進量で規定されるネジ深さの設定値に加え、電源のON/OFFの状態、選択可能な各種運転モードの中から選択された運転モード、ネジの有無、ネジの残量、異常の有無などである。
【0081】
設定部110は、ネジ収納部6の裏面側に設けた基板収納部111において、ハンドル11と対向する側の面の左右両側にそれぞれ設けられる。
【0082】
これにより、締結工具1を後方からみた場合に、ハンドル11の左右両側から設定部110を視認することが可能である。
【0083】
<本実施の形態の締結工具の動作例>
図7A、
図7B及び
図7Cは、本実施の形態の締結工具の動作の一例を示すフローチャート、
図8A、
図8Bは、ビット回転モータとビット移動モータの回転速度の関係を示すグラフであり、次に、各図を参照して、本実施の形態の締結工具の締結動作について説明する。
【0084】
図7Aは、ビット回転モータ40の回転量が異常検出回転量に到達したか否かを判断して、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させる制御を示す。
図7Bは、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間が異常検出規定時間に到達したか否かを判断して、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させる制御を示す。
図7Cは、締結対象物の材質を判断し、トリガスイッチ部90のオフを検出してビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させる制御を示す。
【0085】
締結工具1は、待機状態では、
図1Aに示すように、ドライバビット2の先端が、射出通路80の後方の待機位置P1に位置し、射出通路80にネジ200を供給可能である。
【0086】
締結工具1は、コンタクト部材81が締結対象物に押し付けられ、コンタクトアーム82によりコンタクトスイッチ部84が押されて、コンタクトスイッチ部84がオンになる。また、締結工具1は、トリガ9が操作されてトリガスイッチ部90がオンになる。
【0087】
まず、
図7Aの制御について説明すると、制御部100は、
図7AのステップSA1でコンタクトスイッチ部84がオンになり、ステップSA2でトリガスイッチ部90がオンになると、ステップSA3で第1の駆動部4のビット回転モータ40を駆動すると共に、ステップSA4で第2の駆動部5のビット移動モータ50を駆動する。
【0088】
ビット移動モータ50が駆動されて一の方向である正方向に回転すると、プーリ52が正方向に回転することでワイヤ54がプーリ52に巻き取られる。プーリ52にワイヤ54が巻き取られることで、ワイヤ54と連結された第2の移動部材32cが、回転ガイド部材31にガイドされて軸方向に沿った前方向に移動する。第2の移動部材32cが前方向に移動すると、第1の移動部材32aがベアリング32bを介して第2の移動部材32cに押され、第2の移動部材32cと共に、付勢部材33を圧縮しながら軸方向に沿った前方向に移動する。
【0089】
第1の移動部材32aが前方向に移動すると、第1の移動部材32aと連結部材30bで連結された保持部材30が、回転ガイド部材31の溝部31aに連結部材30bがガイドされて、ドライバビット2の軸方向に沿った前方向に移動する。
【0090】
これにより、保持部材30に保持されたドライバビット2が矢印A1で示す前方向に移動し、ノーズ部8の射出口81aに供給されたネジ200と係合してネジ200を前方向に移動させ、締結対象物に押し付ける。
【0091】
また、ビット回転モータ40が駆動されて一の方向である正方向に回転すると、回転ガイド部材31が正方向に回転する。回転ガイド部材31が正方向に回転すると、保持部材30と連結された連結部材30bが回転ガイド部材31の溝部31aに押されることで、保持部材30が回転ガイド部材31と共に回転する。
【0092】
これにより、保持部材30に保持されたドライバビット2がネジ200を正方向(時計回り)に回転させ、締結対象物に締め込む。制御部100は、第1の駆動部4でドライバビット2を回転させてネジを締結対象物に締め込む動作に連動させて、ビット回転モータ40に掛かる負荷、ビット回転モータ40の回転数、ビット移動モータ50に掛かる負荷、ビット移動モータ50の回転数などに基づき、第2の駆動部5でドライバビット2を前方向に移動させることで、締結対象物に締め込まれるネジ200にドライバビット2を追従させる。
【0093】
図8Aは、木材や石膏などの通常の締結対象物に、正常にネジ200が締結される場合におけるビット回転モータ40とビット移動モータ50の回転速度の関係を示す。これに対し、
図8Bは、鋼板の下地に石膏などが重ねられた締結対象物であって、正常にネジ200を締結できない場合におけるビット回転モータ40とビット移動モータ50の回転速度の関係を示す。
【0094】
制御部100は、ビット移動モータ50の回転量が、設定部110などで選択された設定値となり、ドライバビット2の先端が設定された前進終了位置に到達したかステップSA5で判断する。
【0095】
制御部100は、上述したステップSA5でビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達していないと判断すると、ステップSA6でネジ200を介してドライバビット2に掛かる負荷を検出する。
【0096】
締結工具1は、ドライバビット2を回転させてネジ200を締結対象物に締め込む動作を開始すると、ネジ200を介してドライバビット2に掛かる負荷が発生する。ドライバビット2に掛かる負荷が発生すると、ビット回転モータ40の回転速度V1と、ビット移動モータ50の回転速度V2がともに低下する。このため、ネジ締めにより発生する負荷は、ビット移動モータ50の回転速度V2の低下量などに基づき検出可能である。
【0097】
締結工具1では、様々な材質の締結対象物にネジ200を締結する場合が考えられるが、木材や石膏などの通常の締結対象物にネジ200が締結される場合と、鋼板の下地に石膏などが重ねられた締結対象物にネジ200が締結される場合では、ネジ200を介してドライバビット2に掛かる負荷が異なる。
【0098】
締結対象物が鋼板などの場合、ネジ200の先端が鋼板に到達すると、鋼板にネジ200を押し付ける際の負荷が、木材や石膏などに比べて大きく、ドライバビット2を軸方向に移動(前進)させる際の負荷が大きくなる。
【0099】
但し、締結工具1では、締結対象物が鋼板などである場合でも、ネジ200が鋼板に到達してドライバビット2を軸方向に移動(前進)させる際の負荷の増加が所定の範囲内であれば、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を継続することで、ネジ200を締結対象物に締め込むことができる。
【0100】
そこで、制御部100は、
図8A、
図8Bに示すネジ締めによる負荷の発生のタイミングT1以降、ネジ締めにより発生する負荷が、ネジ200を締結対象物に締結可能な正常な範囲内であると判断すると、ビット移動モータ50の回転量に基づくドライバビット2の軸方向に沿った位置制御を継続する。
【0101】
制御部100は、上述したステップSA5でビット移動モータ50の回転量が所定の設定値(規定回転量)に到達したと判断すると、
図8Aに示すドライバビット2が規定量移動したタイミングT2において、
図7AのステップSA7でビット回転モータ40の駆動を停止すると共に、ステップSA8でビット移動モータ50の正方向への回転を停止した後、ステップSA9でビット移動モータ50を逆転させる。
【0102】
ビット移動モータ50が他の方向である逆方向に回転すると、プーリ52が逆方向に回転することでワイヤ54がプーリ52から引き出される。ワイヤ54がプーリ52から引き出されることで、第2の移動部材32cが前方向に移動することで圧縮されていた付勢部材33が伸び、第2の移動部材32cを後方向に押す。
【0103】
第2の移動部材32cは、付勢部材33により後方向に押されることで、回転ガイド部材31にガイドされ軸方向に沿った後方向に移動する。第2の移動部材32cが後方向に移動すると、第1の移動部材32aがベアリング32bを介して第2の移動部材32cに引かれ、第2の移動部材32cと共に軸方向に沿った後方向に移動する。
【0104】
第1の移動部材32aが後方向に移動すると、第1の移動部材32aと連結部材30bで連結された保持部材30が、回転ガイド部材31の溝部31aに連結部材30bがガイドされて、ドライバビット2の軸方向に沿った後方向に移動する。
【0105】
制御部100は、ステップSA10で、プーリ52からワイヤ54が所定量引き出される初期位置までビット移動モータ50が逆転し、ドライバビット2の先端が待機位置P1に戻る位置まで、保持部材30及び移動部材32が後方向に移動すると、ステップSA11でビット移動モータ50の逆転を停止する。
【0106】
制御部100は、トリガスイッチ部90がオフになると、ネジ送りモータ70を一の方向に回転させることで、係合部73を下降させる。係合部73が次のネジ200と係合する位置まで下降すると、制御部100は、ネジ送りモータ70を逆転させることで、係合部73を上昇させ、次のネジ200を射出通路80に供給する。
【0107】
これに対し、締結対象物が鋼板などの場合で、鋼板にネジ200を押し付けて穴をあけることができないと、ドライバビット2が軸方向に移動(前進)できなくなる。また、ドライバビット2で前方向に押されたネジ200が、射出通路80や射出口81aに詰まった場合、ドライバビット2が軸方向に移動(前進)できなくなる。ドライバビット2が軸方向に移動(前進)できなくなると、ビット移動モータ50の回転量が規定回転量に到達しない。
【0108】
このように、締結対象物にネジ200で穴を開けられない、または、ネジ200が射出通路80や射出口81aに詰まるなどの要因で、ドライバビット2を軸方向に移動(前進)させる際の負荷が大きくなった場合、ネジ200を締結対象物に締め込めないという異常が発生している可能性がある。
【0109】
このような異常が発生している場合、ビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達しない可能性がある。ビット移動モータ50の回転量に基づきドライバビット2の軸方向の位置を制御し、ビット移動モータ50の回転を停止させる制御では、ビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達しないと、ビット移動モータ50の回転を停止できない。
【0110】
そこで、制御部100は、ビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達するより前に、上述したステップSA6で、ドライバビット2を軸方向に移動(前進)させる際の負荷の増加が所定の範囲以上であると判断すると、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させるか否か判断する。
【0111】
制御部100は、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させるか否か判断する第2の条件として、ステップSA12で、ビット回転モータ40の回転量が異常検出回転量に到達したか否か判断する。
【0112】
ネジ200を締結対象物に締め込めない異常が発生している場合、ドライバビット2がネジ200に対して空転した状態となるため、
図8Bに示すように、異常発生のタイミングT2以降のビット回転モータ40の回転速度は、ネジ200の先端が締結対象物に穴をあけて締結対象物に締め込まれる場合と比較して減少しない。このため、ビット回転モータ40の回転速度に基づき、ネジ200を締結対象物に締め込めない異常が発生しているか否かを判断できる。
【0113】
制御部100は、ビット回転モータ40の回転量が異常検出回転量に到達したと判断すると、
図8Bに示すビット回転モータ40の回転量が異常検出回転量に到達したタイミングT3において、上述したステップSA7でビット回転モータ40の回転を停止させ、ステップSA8でビット移動モータ50の回転を停止させる。
【0114】
これにより、ビット移動モータ50の回転量で、ドライバビット2の軸方向に沿った位置を制御する締結工具1において、ネジ200を締結対象物に締め込めない異常が発生しているなどの要因で、ビット移動モータ50の回転量が規定回転量に到達せず、ドライバビット2が前進終了位置に到達したことを検出できない状態である場合に、ビット回転モータ40の回転量に基づき、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を停止できる。
【0115】
次に、
図7Bの制御について説明すると、制御部100は、
図7BのステップSB1でコンタクトスイッチ部84がオンになり、ステップSB2でトリガスイッチ部90がオンになると、ステップSB3で第1の駆動部4のビット回転モータ40を駆動すると共に、ステップSB4で第2の駆動部5のビット移動モータ50を駆動する。
【0116】
ビット移動モータ50が駆動されて一の方向である正方向に回転すると、ビット保持部3の保持部材30に保持されたドライバビット2が矢印A1で示す前方向に移動し、ノーズ部8の射出口81aに供給されたネジ200と係合してネジ200を前方向に移動させ、締結対象物に押し付ける。
【0117】
また、ビット回転モータ40が駆動されて一の方向である正方向に回転すると、ビット保持部3の保持部材30に保持されたドライバビット2がネジ200を正方向(時計回り)に回転させ、締結対象物に締め込む。制御部100は、第1の駆動部4でドライバビット2を回転させてネジを締結対象物に締め込む動作に連動させて、ビット回転モータ40に掛かる負荷、ビット回転モータ40の回転数、ビット移動モータ50に掛かる負荷、ビット移動モータ50の回転数などに基づき、第2の駆動部5でドライバビット2を前方向に移動させることで、締結対象物に締め込まれるネジ200にドライバビット2を追従させる。
【0118】
制御部100は、ビット移動モータ50の回転量が、設定部110などで選択された設定値(規定回転量)となり、ドライバビット2の先端が設定された前進終了位置に到達したかステップSB5で判断する。
【0119】
制御部100は、上述したステップSB5でビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達していないと判断すると、ステップSB6でネジ200を介してドライバビット2に掛かる負荷を検出する。
【0120】
制御部100は、
図8A、
図8Bに示すネジ締めによる負荷の発生のタイミングT1以降、ネジ締めにより発生する負荷が、ネジ200を締結対象物に締結可能な正常な範囲内であると判断すると、ビット移動モータ50の回転量に基づくドライバビット2の軸方向に沿った位置制御を継続する。
【0121】
制御部100は、上述したステップSB5でビット移動モータ50の回転量が所定の設定値(規定回転量)に到達したと判断すると、
図8Aに示すドライバビット2が規定量移動したタイミングT2において、
図7BのステップSB7でビット回転モータ40の駆動を停止すると共に、ステップSB8でビット移動モータ50の正方向への回転を停止した後、ステップSB9でビット移動モータ50を逆転させる。
【0122】
制御部100は、ステップSB10で、プーリ52からワイヤ54が所定量引き出される初期位置までビット移動モータ50が逆転し、ドライバビット2の先端が待機位置P1に戻る位置まで、保持部材30及び移動部材32が後方向に移動すると、ステップSB11でビット移動モータ50の逆転を停止する。
【0123】
これに対し、制御部100は、ビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達するより前に、上述したステップSB6で、ドライバビット2を軸方向に移動(前進)させる際の負荷の増加が所定の範囲以上であると判断すると、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させるか否か判断する。
【0124】
制御部100は、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させるか否か判断する第2の条件として、ステップSB12で、ビット移動モータ50の回転を開始してから、規定時間に到達したか否か判断する。
【0125】
ビット移動モータ50が回転を開始してから、ビット移動モータ50の回転量が設定値(規定回転量)となり、ドライバビット2の先端が所定の前進終了位置に到達するまでの時間は、ビット移動モータ50の回転速度によって決まっている。しかしネジ200を締結対象物に締め込めない異常が発生している場合、ドライバビット2が軸方向に移動(前進)できない、または、移動速度が通常時と比較して低速になるため、所定時間の間に、ビット移動モータ50の回転量が規定回転量に到達しない。このため、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間の経過に基づき、ネジ200を締結対象物に締め込めない異常が発生しているか否かを判断できる。
【0126】
制御部100は、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間が、異常検出規定時間に到達したと判断すると、
図8Bに示すビット移動モータ50の回転を開始してからの時間が、異常検出規定時間に到達したタイミングT3において、上述したステップSB7でビット回転モータ40の回転を停止させ、ステップSB8でビット移動モータ50の回転を停止させる。
【0127】
これにより、ビット移動モータ50の回転量で、ドライバビット2の軸方向に沿った位置を制御する締結工具1において、ネジ200を締結対象物に締め込めない異常が発生しているなどの要因で、ビット移動モータ50の回転量が規定回転量に到達せず、ドライバビット2が前進終了位置に到達したことを検出できない状態である場合に、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間の経過に基づき、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を停止できる。
【0128】
次に、
図7Cの制御について説明すると、制御部100は、
図7CのステップSC1でコンタクトスイッチ部84がオンになり、ステップSC2でトリガスイッチ部90がオンになると、ステップSC3で第1の駆動部4のビット回転モータ40を駆動すると共に、ステップSC4で第2の駆動部5のビット移動モータ50を駆動する。
【0129】
ビット移動モータ50が駆動されて一の方向である正方向に回転すると、ビット保持部3の保持部材30に保持されたドライバビット2が矢印A1で示す前方向に移動し、ノーズ部8の射出口81aに供給されたネジ200と係合してネジ200を前方向に移動させ、締結対象物に押し付ける。
【0130】
また、ビット回転モータ40が駆動されて一の方向である正方向に回転すると、ビット保持部3の保持部材30に保持されたドライバビット2がネジ200を正方向(時計回り)に回転させ、締結対象物に締め込む。制御部100は、第1の駆動部4でドライバビット2を回転させてネジを締結対象物に締め込む動作に連動させて、ビット回転モータ40に掛かる負荷、ビット回転モータ40の回転数、ビット移動モータ50に掛かる負荷、ビット移動モータ50の回転数などに基づき、第2の駆動部5でドライバビット2を前方向に移動させることで、締結対象物に締め込まれるネジ200にドライバビット2を追従させる。
【0131】
制御部100は、ビット移動モータ50の回転量が、設定部110などで選択された設定値(規定回転量)となり、ドライバビット2の先端が設定された前進終了位置に到達したかステップSC5で判断する。
【0132】
制御部100は、上述したステップSC5でビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達していないと判断すると、ステップSC6でネジ200を介してドライバビット2に掛かる負荷を検出する。
【0133】
制御部100は、
図8A、
図8Bに示すネジ締めによる負荷の発生のタイミングT1以降、ネジ締めにより発生する負荷が、ネジ200を締結対象物に締結可能な正常な範囲内であると判断すると、ビット移動モータ50の回転量に基づくドライバビット2の軸方向に沿った位置制御を継続する。
【0134】
制御部100は、上述したステップSC5でビット移動モータ50の回転量が所定の設定値(規定回転量)に到達したと判断すると、
図8Aに示すドライバビット2が規定量移動したタイミングT2において、
図7CのステップSC7でビット回転モータ40の駆動を停止すると共に、ステップSC8でビット移動モータ50の正方向への回転を停止した後、ステップSC9でビット移動モータ50を逆転させる。
【0135】
制御部100は、ステップSC10で、プーリ52からワイヤ54が所定量引き出される初期位置までビット移動モータ50が逆転し、ドライバビット2の先端が待機位置P1に戻る位置まで、保持部材30及び移動部材32が後方向に移動すると、ステップSC11でビット移動モータ50の逆転を停止する。
【0136】
これに対し、制御部100は、ビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達するより前に、上述したステップSC6で、ドライバビット2を軸方向に移動(前進)させる際の負荷の増加が所定の範囲以上であると判断すると、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させるか否か判断する。
【0137】
制御部100は、ビット移動モータ50及びビット回転モータ40の回転を停止させるか否か判断する第2の条件として、ステップSC12で、締結対象物の材質を判断する。締結対象物が鋼板である場合、ネジ200を締め込むためにネジ200で締結対象物に穴をあける際の負荷が、木材や石膏などに比較して高くなる。
【0138】
また、鋼板に押し付けられたネジ200の先端が潰れた場合など、鋼板にネジ200を押し付けて穴をあけることができないと、ドライバビット2が軸方向に移動(前進)できなくなる。ドライバビット2が軸方向に移動(前進)できなくなると、ビット移動モータ50の回転量が規定回転量に到達しない。
【0139】
このように、締結対象物にネジ200で穴を開けられないことにより、ドライバビット2を軸方向に移動(前進)させる際の負荷が大きくなった場合、ネジ200を締結対象物に締め込めないという異常が発生している可能性がある。
【0140】
このような異常が発生している場合、ビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達しない可能性がある。ビット移動モータ50の回転量に基づきドライバビット2の軸方向の位置を制御し、ビット移動モータ50の回転を停止させる制御では、ビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達しないと、ビット移動モータ50の回転を停止できない。
【0141】
そこで、締結対象物がネジ200を締め込むことができない可能性がある材質である場合、トリガ9の操作でビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を停止できるようにする。このため、制御部100は、ビット移動モータ50の回転量が所定の設定値に到達するより前に、上述したステップSC6で、ドライバビット2を軸方向に移動(前進)させる際の負荷の増加が所定の範囲以上であると判断すると、締結対象物の材質を判断する。
【0142】
制御部100は、締結対象物の材質を、ビット回転モータ40の回転量に基づき判断してもよく、ビット回転モータ40の回転量が上述した異常検出回転量に到達したと判断すると、締結対象物の材質が鋼板などの所定の高負荷材であると判断する。また、制御部100は、締結対象物の材質を、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間に基づき判断してもよく、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間が上述した異常検出規定時間に到達したと判断すると、締結対象物の材質が鋼板などの所定の高負荷材であると判断する。さらに、制御部100は、締結対象物の材質を、ビット移動モータ50の回転量に基づき判断してもよく、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間が所定の異常検出規定時間に到達したと判断したとき、ビット移動モータ50の回転量が上述した規定回転量に到達していないと判断すると、締結対象物の材質が鋼板などの所定の高負荷材であると判断する。また、制御部100は、締結対象物の材質を、ビット移動モータ50の回転速度に基づき判断してもよく、ビット移動モータ50の回転を開始してからの時間が所定の異常検出規定時間に到達したと判断したとき、ビット移動モータ50の回転量が所定の規定回転速度に到達していないと判断すると、締結対象物の材質が鋼板などの所定の高負荷材であると判断する。
【0143】
制御部100は、締結対象物の材質が通常の負荷材であると判断すると、通常の締結動作を継続する。制御部100は、上述したステップSC5でビット移動モータ50の回転量が所定の設定値(規定回転量)に到達したと判断すると、締結動作を終了するため、ビット回転モータ40の停止、ビット移動モータ50の逆転によるドライバビット2の待機位置への復帰動作を行う。
【0144】
制御部100は、締結対象物の材質が高負荷材であると判断すると、ステップSC13で、トリガ9が操作されてトリガスイッチ部90がオフになったか否か判断する。制御部100は、トリガスイッチ部90がオフになったと判断すると、
図8Bに示すトリガスイッチ部90がオフになったタイミングT3において、上述したステップSC7でビット回転モータ40の回転を停止させ、ステップSC8でビット移動モータ50の回転を停止させる。なお、制御部100は、締結対象物の材質が高負荷材であると判断すると、第2の条件としての異常検出規定時間を、締結対象物の材質が通常の負荷材である場合と比較して増やしても良い。これにより、制御部100は、締結対象物の材質が高負荷材であると判断した場合、締結対象物の材質が通常の負荷材である場合と比較して増やされた異常検出規定時間の間に、トリガスイッチ部90がオフになったと判断すると、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を停止させる。
【0145】
これにより、ビット移動モータ50の回転量で、ドライバビット2の軸方向に沿った位置を制御する締結工具1において、締結対象物がネジ200を締め込むことができない可能性がある材質であるなどの要因で、ビット移動モータ50の回転量が規定回転量に到達せず、ドライバビット2が前進終了位置に到達したことを検出できない状態である場合に、トリガスイッチ部90のオフを検出して、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50の回転を停止できる。
【0146】
<本実施の形態の締結工具の変形例>
締結工具1は、第1の条件として、コンタクトスイッチ部84の出力から、締結対象物に対する締結工具1の浮き上がりの有無を検知して、ビット回転モータ40及びビット移動モータ50を制御してもよい。
【0147】
制御部100は、上述したように、コンタクトスイッチ部84がオンになり、トリガスイッチ部90がオンになると、ビット回転モータ40を正方向に回転させると共に、ビット移動モータ50を正方向に回転させる。
【0148】
制御部100は、正方向に回転させたビット移動モータ50の回転量が所定の設定値(規定回転量)に到達したと判断すると、ビット移動モータ50の正方向への回転を停止する。これに対し、コンタクトスイッチ部84がオンからオフになると、締結工具1が締結対象物から離れる方向に浮き上がっていると判断し、ビット移動モータ50の駆動を停止した状態で、ビット回転モータ40を正方向に回転させる駆動を継続する。
【0149】
これにより、ドライバビット2がネジ200を正方向に回転させ、締結対象物に更に締め込むことで、締結工具1が締結対象物に近づく方向へ移動する。よって、コンタクトアーム82に対して締結工具1が相対的に移動し、コンタクトアーム82によりコンタクトスイッチ部84が押されて、コンタクトスイッチ部84がオンになる。制御部100は、コンタクトスイッチ部84がオンになると、締結動作を終了するため、ビット回転モータ40の停止、ビット移動モータ50の逆転によるドライバビット2の待機位置への復帰動作を行う。
【0150】
但し、ネジ200を締結対象物に締め込めない異常が発生している場合、ドライバビット2がネジ200に対して空転した状態となり、ネジ200が締結対象物に更に締め込まれないため、コンタクトスイッチ部84がオンにならない。
【0151】
そこで、制御部100は、第2の条件として、ビット回転モータ40の回転量が異常検出回転量に到達したと判断すると、ビット回転モータ40の回転を停止させる。
【0152】
これにより、コンタクトスイッチ部84の出力に基づき締結工具1が締結対象物から離れる方向に浮き上がっていると判断し、ビット回転モータ40を正方向に回転させる駆動を継続する締結工具1において、コンタクトスイッチ部84が再度オンとならなくても、ビット回転モータ40の回転量に基づき、ビット回転モータ40の回転を停止できる。
【0153】
また、制御部100は、第2の条件として、ネジ200の締め込み動作を開始してからの時間が異常検出規定時間に到達したと判断すると、ビット回転モータ40の回転を停止させる。
【0154】
これにより、コンタクトスイッチ部84の出力に基づき締結工具1が締結対象物から離れる方向に浮き上がっていると判断し、ビット回転モータ40を正方向に回転させる駆動を継続する締結工具1において、コンタクトスイッチ部84が再度オンとならなくても、ネジ200の締め込み動作を開始してからの時間に基づき、ビット回転モータ40の回転を停止できる。
【符号の説明】
【0155】
1・・・締結工具、10・・・工具本体、11・・・ハンドル、2・・・ドライバビット、3・・・ビット保持部、30・・・保持部材、31・・・回転ガイド部材、32・・・移動部材、33・・・付勢部材、4・・・第1の駆動部、40・・・ビット回転モータ(第1のモータ)、5・・・第2の駆動部、50・・・ビット移動モータ(第2のモータ)、52・・・プーリ、54・・・ワイヤ、6・・・ネジ収納部、7・・・ネジ送り部、8・・・ノーズ部、81・・・コンタクト部材、84・・・コンタクトスイッチ部、9・・・トリガ、90・・・トリガスイッチ部、100・・・制御部、110・・・設定部