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  • 特開-情報読取装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015763
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】情報読取装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
G06K7/10 128
G06K7/10 240
G06K7/10 176
G06K7/10 244
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119724
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 有佑
(72)【発明者】
【氏名】榎本 康平
(57)【要約】
【課題】可動部等を設けることなく、読取性能を高め得る構成を提供する。
【解決手段】筐体20によって電波漏洩を抑制するように形成される収容空間Sに無線タグTを付した物品Gが収容され、収容空間Sに配置されるアンテナ31,32を利用して当該収容空間Sに収容された無線タグTから情報を読み取る読取処理が制御部40により行われる。この制御部40には、アンテナ31,32からそれぞれ出力される電波の出力周波数を変更する出力周波数変更手段と、アンテナ31,32からそれぞれ出力される電波の位相を変えることで位相差を変更する位相差変更手段とが設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間に収容される物品に付された無線タグから情報を読み取る情報読取装置であって、
前記物品が出し入れされる開口部が形成される筐体本体と、前記開口部を閉塞することで前記収容空間を形成する蓋体とを有し、前記収容空間からの電波漏洩を抑制するように構成される筐体と、
前記収容空間に配置される複数のアンテナと、
前記複数のアンテナを利用して前記収容空間に収容された前記無線タグから情報を読み取る読取処理を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数のアンテナからそれぞれ出力される電波の出力周波数を変更する出力周波数変更手段と、前記複数のアンテナからそれぞれ出力される電波の位相を変えることで位相差を変更する位相差変更手段と、
を備えることを特徴とする情報読取装置。
【請求項2】
前記出力周波数変更手段は、前記収容空間に収容された前記無線タグの数に応じて、前記出力周波数を変更するタイミングを変えることを特徴とする請求項1に記載の情報読取装置。
【請求項3】
前記位相差変更手段は、前記収容空間に収容された前記無線タグの数に応じて、前記位相差を変更するタイミングを変えることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記収容空間に収容される少なくとも1つの無線タグを開閉判定用タグとして当該開閉判定用タグに対して間欠的に行った前記読取処理によって得られた情報に基づいて、前記開口部が開放された後に再び閉塞されるように前記蓋体が開閉された状態であるか否かについて判定する判定部を備え、
前記判定部によって肯定判定がなされるまで前記開閉判定用タグに対して間欠的に前記読取処理を行い、前記判定部によって前記肯定判定がなされた後の所定期間では、前記収容空間に収容される全ての前記無線タグに対して前記読取処理を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の情報読取装置。
【請求項5】
前記判定部は、さらに、前記収容空間外に設けられる第2の開閉判定用タグに対して間欠的に行った前記読取処理によって得られた情報をも考慮して、前記開口部が開放された後に再び閉塞されるように前記蓋体が開閉された状態であるか否かについて判定することを特徴とする請求項4に記載の情報読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容空間に収容される物品に付された無線タグから情報を読み取る情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、収容箱等の収容空間に収容された物品に関する情報を取得するため、物品に関する情報を記録した無線タグをその物品に付し、収容箱内に配置されたアンテナを介して物品の無線タグから情報を読み取る技術が多く採用されている。このように収容された物品の無線タグから情報を読み取る技術として、例えば、下記特許文献1に開示される読取装置が知られている。この読取装置は、内面が電波反射材で形成された筐体とこの筐体の内部に収容されたアンテナとを備え、筐体内に収容された書類に付されたRFIDタグから情報を読み取る際、筐体内面を構成する上面と下面との距離を調整することで、筐体内で反射した電波の干渉により電界強度が極端に弱くなる領域(ヌルポイント)の影響を抑制して読取性能を高めるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-032087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物品の収容状態等によってヌル範囲が変化するため、収容空間に対する物品の出し入れが多い場合、上述のように筐体の面と下面との距離を調整してヌルの影響を抑制する構成では、物品を出し入れするごとに上記距離調整を行う必要がある。このため、上述のように距離を調整するための可動部等を設ける構成では、その距離調整に要する消費電力が増大するだけでなく耐久性を確保するために製造コストが増大してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、可動部等を設けることなく、読取性能を高め得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
収容空間(S)に収容される物品(G)に付された無線タグ(T)から情報を読み取る情報読取装置(10)であって、
前記物品が出し入れされる開口部(21a)が形成される筐体本体(21)と、前記開口部を閉塞することで前記収容空間を形成する蓋体(22)とを有し、前記収容空間からの電波漏洩を抑制するように構成される筐体(20)と、
前記収容空間に配置される複数のアンテナ(31,32)と、
前記複数のアンテナを利用して前記収容空間に収容された前記無線タグから情報を読み取る読取処理を行う制御部(40)と、
を備え、
前記制御部は、前記複数のアンテナからそれぞれ出力される電波の出力周波数を変更する出力周波数変更手段と、前記複数のアンテナからそれぞれ出力される電波の位相を変えることで位相差を変更する位相差変更手段と、
を備えることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、筐体によって電波漏洩を抑制するように形成される収容空間に無線タグを付した物品が収容され、収容空間に配置される複数のアンテナを利用して当該収容空間に収容された無線タグから情報を読み取る読取処理が制御部により行われる。この制御部には、複数のアンテナからそれぞれ出力される電波の出力周波数を変更する出力周波数変更手段と、複数のアンテナからそれぞれ出力される電波の位相を変えることで位相差を変更する位相差変更手段とが設けられる。
【0008】
これにより、物品を出し入れするごとにヌル範囲が変化したとしても、出力周波数を変更するごとに読取処理により得られた読取結果や位相差を変更することごとに読取処理により得られた読取結果を照合することで、ヌル範囲に起因する無線タグの読み取り漏れを低減することができる。したがって、可動部等を設けることなく、ヌルの影響を抑制して読取性能を高めることができる。
【0009】
請求項2の発明では、出力周波数変更手段は、収容空間に収容された無線タグの数に応じて、出力周波数を変更するタイミングを変える。
【0010】
収容空間に収容された無線タグの数が多くなるほど、収容空間内の全ての無線タグの読み取りに時間がかかるため、一定の間隔で出力周波数を変更すると、無線タグの数が多い場合には、上記一定の間隔間での無線タグの読み取り漏れが生じやすくなる。その一方で、上記一定の間隔を長くすると、無線タグの数が少ない場合には読み取り完了後に無駄な時間が生じるために読取時間が長くなってしまう。このため、収容空間に収容された無線タグの数に応じて、出力周波数を変更するタイミングを変えることで、読み取り漏れ等を抑制しつつ読取時間の短縮を図ることができる。
【0011】
請求項3の発明では、位相差変更手段は、収容空間に収容された無線タグの数に応じて、位相差を変更するタイミングを変える。
【0012】
一定の間隔で位相差を変更すると、無線タグの数が多い場合には、上記一定の間隔間での無線タグの読み取り漏れが生じやすくなり、上記一定の間隔を長くすると、無線タグの数が少ない場合には読み取り完了後に無駄な時間が生じるために読取時間が長くなってしまう。このため、収容空間に収容された無線タグの数に応じて、位相差を変更するタイミングを変えることで、読み取り漏れ等を抑制しつつ読取時間の短縮を図ることができる。
【0013】
請求項4の発明では、収容空間に収容される少なくとも1つの無線タグを開閉判定用タグとして当該開閉判定用タグに対して間欠的に行った読取処理によって得られた情報に基づいて、開口部が開放された後に再び閉塞されるように蓋体が開閉された状態であるか否かについて、判定部により判定される。そして、判定部によって肯定判定がなされるまで開閉判定用タグに対して間欠的に読取処理が行われ、判定部によって肯定判定がなされた後の所定期間では、収容空間に収容される全ての無線タグに対して読取処理が行われる。
【0014】
収容空間内の無線タグを読み取るための読取処理は、消費電力低減の観点から、定期的ではなく、収容される無線タグが入れ替わるタイミング、すなわち、蓋体が開閉されたタイミングで行うことが好ましい。そして、開口部が開放された開放状態では、開口部が閉塞された閉塞状態と比較して、収容空間外に電波が漏れるため、同じ無線タグを読み取る場合でも、受信信号強度等の読取処理によって得られた情報が変わる。このため、開閉判定用タグに対して間欠的に行った読取処理によって得られた情報(受信信号強度等)に基づいて、開口部が開放された後に再び閉塞されるように蓋体が開閉された状態であるか否かについて判定することができる。これにより、開閉センサ等を利用することなく蓋体が開閉された状態であるか否かについて判定でき、肯定判定がなされた後の所定期間にて収容空間に収容される全ての無線タグに対して読取処理を行うことで、読取性能を高めつつ、読取処理に関して消費電力の低減を図ることができる。
【0015】
請求項5の発明では、さらに、収容空間外に設けられる第2の開閉判定用タグに対して間欠的に行った読取処理によって得られた情報をも考慮して、開口部が開放された後に再び閉塞されるように蓋体が開閉された状態であるか否かについて、判定部により判定される。このように、収容空間内の開閉判定用タグと収容空間外の第2の開閉判定用タグの双方の受信信号強度等を考慮することで、蓋体の開閉判定に関して判定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る情報読取装置の概要を説明する説明図である。
図2】第2実施形態に係る情報読取装置の概要を説明する説明図である。
図3】第2実施形態において、タグ読取モード及び低消費モードの切り替えと、筐体の開閉状態と、開閉判定用タグからの応答波の受信信号強度との関係を例示するタイミングチャートである。
図4】第2実施形態において、さらに収容空間外の第2の開閉判定用タグを利用して筐体の開閉状態の判定する情報読取装置の概要を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の情報読取装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る情報読取装置10は、筐体20内に設けられる収容空間Sに収容された物品Gに関する情報を、その物品に付された無線タグ(例えば、RFIDタグ)Tから読み取る収容装置として構成される。物品Gとしては、例えば、個別に管理を要する鍵などが想定され、各物品Gに付された無線タグTには、その物品に関する情報が読み取り可能に記録されている。このため、収容空間S内の無線タグTを一括して読み取ることで、その収容空間S内に収容されている物品Gの情報を取得することができる。なお、図1等では、便宜上、収容空間S内に収容されている複数の物品Gのうちの1つを無線タグTとともに図示している。
【0018】
図1に示すように、筐体20は、物品Gが出し入れされる開口部21aが形成される筐体本体21と、開口部21aを閉塞することで収容空間Sを形成する蓋体22とを有し、これら筐体本体21及び蓋体22が電波を遮断又は電波強度を減衰させる材料(例えば、アルミニウムなど)によって形成されることで、収容空間Sからの電波漏洩を抑制するように構成されている。
【0019】
筐体本体21には、収容空間S内となる位置に、収容空間S内の無線タグTを読取対象とする2つのアンテナ31,32が設けられている。アンテナ31及びアンテナ32は、互いの送信波の送信方向がほぼ直交するように配置されている。なお、筐体本体21には、収容空間Sに収容される各物品Gがアンテナ31,32に接触しないように、電波強度を減衰させない材料等からなる収容ケース等を、開口部21aを除く筐体本体21の内面が覆われるようにして設けることができる。
【0020】
また、情報読取装置10は、全体制御を司る制御部40と、第1通信部41及び第2通信部42とを備えている。第1通信部41は、制御部40に制御されることで、アンテナ31を利用して収容空間S内の無線タグTを読み取るための無線通信処理を行うように構成されている。第2通信部42は、制御部40に制御されることで、アンテナ32を利用して収容空間S内の無線タグTを読み取るための無線通信処理を行うように構成されている。
【0021】
制御部40は、アンテナ31,32を利用して収容空間Sに収容された無線タグTから情報を読み取る読取処理を行うように構成されている。より具体的には、制御部40は、収容空間S内の無線タグTを読み取る読取処理を行う際に、第1通信部41及びアンテナ31を利用して読み取った読取結果と第2通信部42及びアンテナ32を利用して読み取った読取結果とのいずれかを採用してもよいし、読取精度を高めるために両読取結果を照合した結果を採用することもできる。
【0022】
特に、本実施形態では、第1通信部41は、制御部40により制御されることで、アンテナ31から出力される電波の出力周波数を変更可能に構成されている。また、第2通信部42は、制御部40により制御されることで、アンテナ32から出力される電波の出力周波数を変更可能に構成されている。
【0023】
そして、本実施形態では、第1通信部41は、制御部40により制御されることで、アンテナ31から出力される電波の位相を変更可能に構成されている。また、第2通信部42は、制御部40により制御されることで、アンテナ32から出力される電波の位相を変更可能に構成されている。このため、制御部40による制御によって、アンテナ31から出力される電波の位相とアンテナ32から出力される電波の位相との位相差を変更することができる。
【0024】
なお、上述のように電波の出力周波数を変更する制御部40の機能は、「出力周波数変更手段」の一例に相当し、上述のように電波の位相差を変更する制御部40の機能は、「位相差変更手段」の一例に相当し得る。このため、制御部40は、アンテナ31,32からそれぞれ出力される電波の出力周波数を変更する出力周波数変更手段と、アンテナ31,32からそれぞれ出力される電波の位相を変えることで位相差を変更する位相差変更手段とを備えるように構成される。
【0025】
このように構成される情報読取装置10では、制御部40にて行われる読取処理に関して、ヌル範囲に起因する無線タグの読み取り漏れを低減するため、電波の出力周波数を変更する第1読取モードと位相差を変更する第2読取モードとが採用されている。
【0026】
第1読取モードの読取処理では、アンテナ31から出力される電波の出力周波数を順次変更した際にアンテナ31を介して各無線タグTから得られた情報を照合した結果と、アンテナ32から出力される電波の出力周波数を順次変更した際にアンテナ32を介して各無線タグTから得られた情報を照合した結果とを、さらに照合するようにして読取結果が得られる。
【0027】
第2読取モードの読取処理では、アンテナ31から出力される電波の位相とアンテナ32から出力される電波の位相との位相差を前回の読取処理時での位相差から変えた際に両アンテナ31,32を介して各無線タグTから得られた情報を照合した結果と、前回得た照合結果とを、さらに照合するようにして読取結果が得られる。
【0028】
そして、第1読取モードでの読取結果又は第2読取モードでの読取結果に基づいて、収容空間Sに収容されている物品G(無線タグT)を特定することができる。より正確な無線タグTの読み取りを実現するため、第1読取モードでの読取結果と第2読取モードでの読取結果とをさらに照合することで、収容空間Sに収容されている物品G(無線タグT)を特定することもできる。
【0029】
このように、物品Gを出し入れするごとにヌル範囲が変化したとしても、出力周波数を変更するごとに読取処理により得られた読取結果や位相差を変更することごとに読取処理により得られた読取結果を照合することで、ヌル範囲に起因する無線タグTの読み取り漏れを低減することができる。したがって、可動部等を設けることなく、ヌルの影響を抑制して読取性能を高めることができる。
【0030】
本実施形態の第1の変形例として、一定の間隔で出力周波数が変更されることに限らず、例えば、収容空間Sに収容された無線タグTの数に応じて、出力周波数を変更するタイミングが変更されてもよい。すなわち、一定の間隔に相当する上記1度の読取処理の間隔を、収容空間Sに収容された無線タグTの数に応じて変更してもよい。
【0031】
収容空間Sに収容された無線タグTの数が多くなるほど、収容空間S内の全ての無線タグTの読み取りに時間がかかるため、一定の間隔で出力周波数を変更すると、無線タグTの数が多い場合には、上記一定の間隔間での無線タグTの読み取り漏れが生じやすくなる。その一方で、上記一定の間隔を長くすると、無線タグTの数が少ない場合には読み取り完了後に無駄な時間が生じるために読取時間が長くなってしまう。このため、例えば、無線タグTの数が増えるほど出力周波数が変更される間隔を長くする等、収容空間Sに収容された無線タグTの数に応じて、出力周波数を変更するタイミングを変えることで、読み取り漏れ等を抑制しつつ読取時間の短縮を図ることができる。
【0032】
同様に、一定の間隔で位相差が変更されることに限らず、例えば、収容空間Sに収容された無線タグTの数に応じて、位相差を変更するタイミングが変更されてもよい。
【0033】
一定の間隔で位相差を変更すると、無線タグTの数が多い場合には、上記一定の間隔間での無線タグTの読み取り漏れが生じやすくなり、上記一定の間隔を長くすると、無線タグTの数が少ない場合には読み取り完了後に無駄な時間が生じるために読取時間が長くなってしまう。このため、収容空間Sに収容された無線タグTの数に応じて、位相差を変更するタイミングを変えることで、読み取り漏れ等を抑制しつつ読取時間の短縮を図ることができる。
【0034】
なお、収容空間S内の無線タグTを読取対象とするアンテナとして、互いの送信波の送信方向がほぼ直交するアンテナ31,32が採用されることに限らず、例えば、互いの送信波の送信方向が対向する2つのアンテナや互いの送信波の送信方向が平行となる2つのアンテナが採用されてもよいし、3つ以上のアンテナが採用されてもよい。
【0035】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る情報読取装置について、図面を参照して説明する。
本第2実施形態では、筐体20の開閉状態に関する判定結果を利用することで、読取処理に関して消費電力の低減を図る点が、上記第1実施形態と主に異なる。したがって、第1実施形態と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
収容空間S内の複数の無線タグTを読み取るための読取処理は、消費電力低減の観点から、収容される無線タグTが入れ替わるタイミング、すなわち、筐体20の蓋体22が開閉されたタイミングで行うことが好ましい。このため、筐体20の開閉状態を検知可能な開閉センサ等を採用することもできるが、部品点数が増加するために製造コストが増大するだけでなく、開閉センサの設置位置等の制約によっては装置自体が大型化してしまうという問題がある。
【0037】
そこで、本実施形態では、図2に示すように、収容空間S内に開閉判定用として別途設けられる無線タグ(以下、開閉判定用タグTj)が配置される。そして、本実施形態において制御部40にてなされる読取処理では、開閉判定用タグTjからの受信信号強度(RSSI)に基づいて、開口部21aが開放された後に再び閉塞されるように蓋体22が開閉された状態(以下、筐体20の開閉状態ともいう)であるか否かについて判定する。
【0038】
開口部21aが開放された開放状態では、開口部21aが蓋体22によって閉塞された閉塞状態と比較して、収容空間S外に電波が漏れるため、同じ無線タグTを読み取る場合でも、受信信号強度が小さくなるからである。なお、開閉判定用タグTjに対して間欠的に読取処理を行った際の受信信号強度(読取結果)に基づいて、筐体20の開閉状態であるか否かについて判定する処理を行う制御部40の機能は、「判定部」の一例に相当し得る。
【0039】
また、本実施形態では、収容空間S内の複数の無線タグTを読み取るためのタグ読取モード(連続動作モード)と開閉判定用タグTjのみを間欠的に読み取るための低消費モード(間欠動作モード)とが用意される。そして、本実施形態において制御部40にてなされる読取処理では、低消費モードにて開閉判定用タグTjからの受信信号強度に基づいて筐体20の開閉状態であると判定(肯定判定)された場合に、低消費モードからタグ読取モードに切り替えられる。これにより、上記タグ読取モードにて常時読取処理が行われる場合と比較して、消費電力の低減を図ることができる。
【0040】
以下、低消費モード及びタグ読取モードを切り替えるように制御部40にて行われる読取処理について、図3に示すタイミングチャートを参照して詳述する。なお、図3では、タグ読取モード及び低消費モードの切り替えと、筐体20の開閉状態(閉塞状態又は開放状態)と、開閉判定用タグTjからの応答波の受信信号強度との関係をタイミングチャートにて図示している。
【0041】
読取処理の開始時(開口部21aが蓋体22によって閉塞された閉塞状態時)では、低消費モードに切り替えられて、開閉判定用タグTjが間欠的に読み取られる。開閉判定用タグTjのみを読取対象として間欠的に読み取る処理がなされるため、複数の無線タグTを連続的に読み取る処理よりも、省電力化が図られる。この低消費モードでの読取処理では、図3に示すように、閉塞状態が維持されていると、開閉判定用タグTjの受信信号強度は、一定の値になる。
【0042】
そして、開閉判定用タグTjの受信信号強度に基づいて筐体20の開閉状態であるか否かについて判定され、開閉判定用タグTjの受信信号強度が上記一定の値からほとんど変化していない場合には、筐体20の開閉状態でないと判定されて、低消費モードが維持される。
【0043】
この低消費モード中に、物品Gを出し入れするユーザによって蓋体22が開けられて開口部21aが開放されると(図3の時刻t1参照)、収容空間S外に電波が漏れるため、その後に受信される開閉判定用タグTjの受信信号強度が小さくなる(図3の時刻t2参照)。そして、物品Gの出し入れを終えたユーザによって蓋体22が閉められて開口部21aが閉塞されると(図3の時刻t3参照)、収容空間S外への電波の漏れが抑制されるため、その後に受信される開閉判定用タグTjの受信信号強度が上記一定の値まで大きくなる(図3の時刻t4参照)。
【0044】
このように、開閉判定用タグTjの受信信号強度が一旦小さくなった後に再び元の値に戻ると、筐体20の開閉状態であると判定(肯定判定)されて、物品Gの出し入れが完了しているとして、タグ読取モードに切り替えられる(図3の時刻t5参照)。これにより、収容空間S内の複数の無線タグTを読取対象として連続的に読み取るための処理がなされる。
【0045】
そして、タグ読取モードが所定期間継続することで、収容空間S内の無線タグTを読み取りが完了すると(図3の時刻t6参照)、再び低消費モードに切り替えられて、開閉判定用タグTjの受信信号強度が上述のように変化するまで、開閉判定用タグTjのみが間欠的に読み取られる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る情報読取装置10では、収容空間Sに収容される開閉判定用タグTjに対して間欠的に行った読取処理によって得られた受信信号強度に基づいて、開口部21aが開放された後に再び閉塞されるように蓋体22が開閉された筐体20の開閉状態であるか否かについて、判定される。そして、肯定判定がなされるまで開閉判定用タグTjに対して間欠的に読取処理が行われ、肯定判定がなされた後の所定期間では、収容空間Sに収容される全ての無線タグTに対して読取処理が行われる。
【0047】
このように、開閉判定用タグTjに対して間欠的に行った読取処理によって得られた受信信号強度等に基づいて、開口部21aが開放された後に再び閉塞されるように蓋体22が開閉された筐体20の開閉状態であるか否かについて判定することができる。これにより、開閉センサ等を利用することなく筐体20の蓋体22が開閉された状態であるか否かについて判定でき、肯定判定がなされた後の所定期間にて収容空間Sに収容される全ての無線タグTに対して読取処理を行うことで、読取性能を高めつつ、読取処理に関して消費電力の低減を図ることができる。
【0048】
なお、開閉判定用タグTjは、例えば、蓋体22の内側に貼り付けられることで、蓋体22の開閉時に得られる受信信号強度の変化が大きくなるように配置されてもよい。また、開閉判定用タグTjは、管理対象の物品Gに付された無線タグTとは別に設けられることに限らず、筐体20の開閉状態ごとに、管理対象として収容空間S内に収容される各物品Gのいずれか1つに付された無線タグTを利用して構成されてもよい。
【0049】
また、図4に示すように、さらに、収容空間S外に設けられる第2の開閉判定用タグTj2に対して間欠的に行った読取処理によって得られた受信信号強度などの情報をも考慮して、筐体20の開閉状態であるか否かについて判定してもよい。このように、収容空間S内の開閉判定用タグTjと収容空間S外の第2の開閉判定用タグTj2の双方の受信信号強度等を考慮することで、筐体20の蓋体22の開閉判定に関して判定精度を高めることができる。
【0050】
本実施形態の変形例として、収容空間S内の複数の無線タグT及び開閉判定用タグTj等を読み取るためのアンテナとして、2つのアンテナ31,32を採用することに限らず、例えば、1つのアンテナを採用してもよく、この場合には、アンテナから出力される電波の出力周波数や位相を変更可能に構成されなくてもよい。
【0051】
上記変形例に係る情報読取装置10は、以下に記載するような発明として定義することができる。
収容空間Sに収容される物品Gに付された無線タグTから情報を読み取る情報読取装置10であって、
前記物品が出し入れされる開口部21aが形成される筐体本体21と、前記開口部を閉塞することで前記収容空間を形成する蓋体22とを有し、前記収容空間からの電波漏洩を抑制するように構成される筐体20と、
前記収容空間に配置されるアンテナと、
前記アンテナを制御して前記収容空間に収容された前記無線タグから情報を読み取る読取処理を行う制御部40と、
を備え、
前記制御部は、
前記収容空間に収容される少なくとも1つの無線タグを開閉判定用タグTjとして当該開閉判定用タグに対して間欠的に前記読取処理を行った際の読取結果に基づいて、前記開口部が開放された後に再び閉塞されるように前記蓋体が開閉された状態であるか否かについて判定する判定部を備え、
前記判定部によって肯定判定がなされるまで前記開閉判定用タグに対して間欠的に前記読取処理を行い、前記判定部によって前記肯定判定がなされた後の所定期間では、前記収容空間に収容される全ての前記無線タグに対して前記読取処理を行うことを特徴とする情報読取装置。
【0052】
なお、本発明は上記各実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明において管理対象となる物品Gは、個別に管理を要する鍵であることに限らず、例えば、薬品又は薬品を封入した容器等や、工場出荷前等にて筐体20内に一時的に保管される製品であってもよい。
【0053】
(2)筐体20は、筐体本体21と蓋体22とを有することで電波を遮断又は電波強度を減衰させるように箱状に形成されることに限らず、上方又は側方の少なくとも一方が開閉可能に構成されて電波を遮断又は電波強度を減衰させる収容空間を構成するように形成されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…情報読取装置
20…筐体
21…筐体本体
21a…開口部
22…蓋体
31,32…アンテナ
40…制御部
41…第1通信部
42…第2通信部
G…物品
S…収容空間
T…無線タグ
Tj…開閉判定用タグ
Tj2…第2の開閉判定用タグ
図1
図2
図3
図4