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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157663
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】熱源ユニット
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20231019BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20231019BHJP
   F24H 15/38 20220101ALI20231019BHJP
【FI】
F25B1/00 341G
F24H4/02 C
F24H15/38
F25B1/00 399Y
F25B1/00 321J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067718
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須賀 徹
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AB22
3L122AC42
3L122AC44
3L122BB13
3L122BB14
3L122BB16
3L122BC01
3L122CA01
3L122DA22
3L122FA13
3L122FA24
(57)【要約】
【課題】熱交換器内の利用流体に流れがない状態にあることを検出する。
【解決手段】実施形態に係る熱源ユニットは、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機を加熱するヒータと、冷媒と利用流体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、第1熱交換器に設置された第1温度センサと、第1熱交換器において、ヒータからの放熱により受ける熱量が第1温度センサとは異なる箇所に設置された第2温度センサと、第1および第2温度センサの検出温度の差に基づき、圧縮機の起動を禁止するコントローラと、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機を加熱するヒータと、
前記冷媒と利用流体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記第1熱交換器に設置された第1温度センサと、
前記第1熱交換器において、前記ヒータからの放熱により受ける熱量が前記第1温度センサとは異なる箇所に設置された第2温度センサと、
前記第1および第2温度センサの検出温度の差に基づき、前記圧縮機の起動を禁止するコントローラと、
を備えた熱源ユニット。
【請求項2】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機の外周に、前記圧縮機を加熱可能に配置されたヒータと、
前記冷媒と利用流体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記圧縮機と前記第1熱交換器とを収納する筐体と、
前記第1熱交換器に対する前記利用流体の入口部に設置された第1温度センサと、
前記第1熱交換器に対し、前記ヒータからの放熱により受ける熱量が前記入口部とは異なる、前記利用流体の出口部に設置された第2温度センサと、
前記第1温度センサおよび前記第2温度センサから出力される検出信号を取得し、前記ヒータの作動時に、前記第1温度センサの検出信号と前記第2温度センサの検出信号との差分に当たる温度差が所定の値以上である場合は、前記圧縮機の起動を禁止するコントローラと、
を備えた熱源ユニット。
【請求項3】
前記ヒータは、前記圧縮機の周囲に巻き付けられたベルトヒータである、請求項2に記載の熱源ユニット。
【請求項4】
前記入口部と前記出口部とは、配置されている高さまたは前記ヒータからの距離が互いに異なることにより、前記ヒータから受ける熱量が異なる、請求項2に記載の熱源ユニット。
【請求項5】
前記出口部は、前記入口部よりも上方にあるかまたは前記ヒータから近い位置にある、請求項4に記載の熱源ユニット。
【請求項6】
前記利用流体は、水である、請求項1に記載の熱源ユニット。
【請求項7】
膨張弁と、
第2熱交換器と、
前記圧縮機、前記第1熱交換器、前記膨張弁および前記第2熱交換器の間で前記冷媒を循環可能に配置された冷媒配管と、をさらに備え、
前記第1熱交換器は、前記利用流体を前記冷媒との熱交換により冷却可能に構成され、
前記第2熱交換器は、前記利用流体を冷却した後の前記冷媒から熱を放出可能に構成された、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱源ユニット。
【請求項8】
前記筐体は、その内部を仕切る仕切板を備え、
前記仕切板により仕切られた同一空間内に、前記圧縮機および前記第1熱交換器が収納されている、請求項2に記載の熱源ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、蒸発器、膨張弁および凝縮器を冷媒配管で繋ぎ、これらの機器の間で冷媒を循環させるように構成したヒートポンプ式の熱源ユニットが知られている。凝縮器は、熱源ユニットの放熱部を構成し、冷却部である蒸発器が空気または他の流体から熱を吸収する。ここで、凝縮器は、冷媒と利用流体(例えば、水)との間で熱交換を行い、利用流体に蒸発器で吸収した熱を放出する。加熱された利用流体(例えば、温水)は、加熱対象である外部装置に供給される。凝縮器および蒸発器は、いずれも熱交換器として構成されるのが一般的である。なお、冷凍サイクルを逆転させることで、蒸発器と凝縮器とを入れ替えて利用流体を冷却し、冷水を外部装置に供給することを可能として、加熱と冷却とを兼用する熱源ユニットも存在する。
【0003】
このような熱源ユニットでは、外部装置側にポンプを設置し、このポンプを駆動して外部装置と熱源ユニットとの間で利用流体を循環または流通させる。外部装置として、室内の冷暖房を行う放熱用または吸熱用の熱交換器や、温水タンク等、種々の利用形態のものがある。
【0004】
ここで、熱源ユニットにポンプインターロック機構を設置し、外部装置側の利用流体を循環または流通させるポンプが停止している条件での圧縮機の作動を禁止する技術が存在する。これにより、蒸発器に凍結が生じたり、熱源ユニット全体に過大な負荷がかかったりする事態を防止する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-078266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ポンプの停止中であってもポンプインターロック機構の端子に何らかの原因により短絡が生じることで、作動の禁止が意図せずに解除されることがあり得る。また、ポンプ自体の故障により、ポンプの通電中であってもポンプが停止している場合もあり得る。さらに、熱源ユニットと外部装置との間で利用流体を流通させる配管では、長期に亘る使用の過程で内部に徐々にスケールが溜まり、結果として配管に詰まりが生じる場合があり、この場合は、ポンプを作動させても利用流体が流れず、ポンプインターロック機構の端子にポンプが運転中であることを示す信号が入っても、実際には利用流体が流れていない状況が生じる。このような事態を回避するため、熱源ユニットと外部装置との間の配管を流れる利用流体の流量を直接検出しようとすると、流量センサ等、特別な部品の追加が必要となり、部品点数が増加してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、いわゆるポンプインターロック機構に依存せず、かつ部品点数の増加を抑えて、利用流体が流れていない条件にあることを的確検出可能とした熱源ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る熱源ユニットは、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機を加熱するヒータと、冷媒と利用流体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、第1熱交換器に設置された第1温度センサと、第1熱交換器において、ヒータからの放熱により受ける熱量が第1温度センサとは異なる箇所に設置された第2温度センサと、第1および第2温度センサの検出温度の差に基づき、圧縮機の起動を禁止するコントローラと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る熱源ユニットの全体的な構成を示す模式図である。
図2】同上熱源ユニットにおける圧縮機およびその周辺機器の電気的な接続関係を示す模式図である。
図3】同上熱源ユニットの筐体を上方から見た内部機器の位置関係を示す平面図である。
図4】同上熱源ユニットの筐体を側面から見た内部機器の位置関係を示す立面図である。
図5】熱源ユニットの基本制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図6】同上ルーチン中の圧縮機起動制御の内容を示すフローチャートである。
図7】利用流体に流れがない状態でヒータへの通電を遮断した場合における、入口部液温Twi、出口部液温Twoおよび温度差ΔTwの変化を示すグラフである。
図8】ヒータへの通電を開始した後、利用流体に流れがない状態を維持した場合における、入口部液温Twi、出口部液温Twoおよび温度差ΔTwの変化を示すグラフである。
図9】利用流体に流れがない状態から通水を開始した場合における、入口部液温Twi、出口部液温Two、温度差ΔTwおよび利用流体の流量Rcwの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1に示す熱源ユニット(以下単に「熱源ユニット」という)Uの構成について、図2から図4を適宜に参照して説明する。
【0012】
本実施形態において、熱源ユニットUは、ヒートポンプ式の冷凍サイクル装置を構成し、外部装置として構成される図示しない冷却・暖房装置または貯湯装置等との間で循環させる利用流体を冷却しまたは加熱することが可能である。利用流体には、水を用いるのが一般的であるが、凍結防止などの目的でブラインを用いることもできる。冷媒は、例えば、R410A、R32冷媒または二酸化炭素(CO)を含むCO冷媒である。本実施形態では、利用流体に水を採用する。図1は、外部装置に対して冷却後の利用流体、つまり、冷水を供給する冷水生成時における冷媒の流れを実線の矢印により示し、外部装置に対して加熱後の利用流体、つまり、温水または熱水を供給する温水生成時における冷媒の流れを点線の矢印により示す。
【0013】
熱源ユニットUは、主な構成要素として、圧縮機1、第1熱交換器2、第2熱交換器3、四方弁4および膨張弁5を備えるとともに、これらの構成要素を流体的に接続し、これらの構成要素の間で冷媒を循環させる冷媒配管6を備える。これらの圧縮機1、第1熱交換器2、第2熱交換器3、四方弁4、膨張弁5および冷媒配管6は、筐体Cの内部に収納される。筐体Cは、屋外に設置され、図3および図4に示すように箱状の板金等からなる強度の高い金属ケースからなり、側面の一部に第2熱交換器3への通風用の開口が設けられている。
【0014】
圧縮機1は、冷媒を圧縮して昇圧させて吐出する、例えば、内部高圧の密閉型ロータリ圧縮機である。圧縮機1は、その外郭として鉄製の密閉の耐圧容器を備え、その内部にロータリ型の圧縮機構が収納されている。この密閉容器内の下方には、圧縮機構を潤滑するための潤滑油が貯留されている。圧縮機1は、公知のインバータ制御により運転周波数を変更可能である。ただし、運転周波数は、必ずしも変更可能である必要はなく、圧縮機1は、商用周波数を用いて一定速で運転するものであってもよい。
【0015】
圧縮機1の外周には、圧縮機1を加熱可能に、具体的には、圧縮機1の内部に熱を伝達可能なようにヒータ7が配置されている。ヒータ7には、例えば、ベルトヒータやコードヒータを適用することができる。圧縮機1の外周にベルトヒータ7を巻き付け、その周囲に適宜の断熱材を配置することで、圧縮機1を加熱・保温することが可能である。ヒータ7が生じさせた熱が圧縮機1の内部に伝えられるとともに、内部に貯留され、圧縮機1内部の圧縮機構を潤滑する潤滑油を加熱して、圧縮機1の停止中においてもその粘度を適正に維持する。
【0016】
第1熱交換器2は、冷媒と利用流体との間で熱交換を行う。第1熱交換器2は、例えば、コイル式の水冷媒熱交換器であり、冷媒を流す管2aと利用流体を流す管(以下「通水管」という)2bとを夫々コイル状に形成し、これらの管2a、2bを互いに接合または溶接させた構造を有する。なお、第1熱交換器2は、コイル式に限らず、複数枚の薄いプレートを積層し、隣り合うプレート間の隙間において冷媒と利用流体とを交互に流すようにしたプレート式熱交換器を用いてもよい。図1は、説明のため、配管構造を簡略化し、第1熱交換器2内部の冷媒を流す管2aおよび利用流体を流す通水管2bを夫々太い点線により示す。
【0017】
ここで、図3及び図4に示すように熱源ユニットUの構成要素を収容する筐体Cには、その背面側に利用流体の入口部と出口部とのそれぞれに配管継ぎ手j1、j2が設けられている。利用流体は、熱源ユニットUに対し、外部装置から延びる入口側配管p1から入口部配管継ぎ手j1を介して導入され、第1熱交換器2内部の通水管2bに流入する。冷媒との熱交換後の利用流体は、通水管2bを出て、出口部配管継ぎ手j2を介して第1熱交換器2、つまり、熱源ユニットUから排出される。熱源ユニットUを出た利用流体は、出口側配管p2を介して外部装置に供給される。図1は、利用流体の流れを太い矢印により示す。
【0018】
第2熱交換器3は、冷媒と空気、例えば、外気との間で熱交換を行う。第2熱交換器3は、例えば、フィンアンドチューブ式の空気冷媒熱交換器であり、銅パイプからなるチューブ31とアルミの薄板からなる複数のフィン32とを備える(図3)。第2熱交換器3は、さらに、ファンFおよびその駆動源であるモータMを備え、ファンFによりフィン32の表面に沿って強制的に空気(外気)の流れを形成することで、チューブ31内を流れる冷媒と空気との間における熱の授受を促進する。
【0019】
筐体Cの内部は、図3に示すように、上下方向に延びる仕切板9により送風機室Aと機械室Bとが左右に区画されている。送風機室Aには、ファンFと第2熱交換器3が収納され、第2熱交換器3と対向する筐体Cの側面は、通風のための開口が設けられている。一方、機械室Bには、ファンFおよび第2熱交換器3以外の冷凍サイクル機器、具体的には、圧縮機1、第1熱交換器2、四方弁4等が収納される。仕切板9は、板金等により形成され、開口等を通じて送風機室Aに入り込んだ雨水等が機械室Bに侵入しないように筐体Cに取り付けられている。さらに、仕切板9と筐体Cの天板10(図4)とを含む外郭により、機械室Bに対する雨水等の外部からの直接的な侵入が防止される。圧縮機1と第1熱交換器2とは、機械室Bの内部で互いに近接して配置されている。
【0020】
四方弁4は、圧縮機1により吐出された冷媒の流路を、冷水生成時と温水生成時とで切り替える。冷水生成時において、四方弁4は、冷媒の流路を、四方弁4から第2熱交換器3に向かう方向に設定する。これにより、四方弁4を出た冷媒は、第2熱交換器3を通過した後、第1熱交換器2に流入する。これに対し、温水生成時では、冷媒の流路は、四方弁4から第1熱交換器2に向かう方向に切り替えられる。これにより、四方弁4を出た冷媒は、第1熱交換器2を通過した後、第2熱交換器3に流入する。
【0021】
膨張弁5は、凝縮器(例えば、冷水生成時に凝縮器として機能する第2熱交換器3)を出た冷媒の圧力を、オリフィスの作用により調整するものであり、流れの抵抗により圧力降下を生じさせることで、蒸発器(例えば、冷水生成時に蒸発器として機能する第1熱交換器2)に向かう冷媒の圧力を調整する。膨張弁5に適用可能なものとして、例えば、ステッピングモータ駆動式の電子膨張弁を使用することができる。
【0022】
冷媒配管6は、圧縮機1、第1熱交換器2、第2熱交換器3、四方弁4および膨張弁5の間を冷媒が流通可能に接続する。本実施形態において、冷媒配管6は、大別すると、圧縮機1と四方弁4とに接続された第1冷媒管6a、四方弁4と第2熱交換器3とに接続された第2冷媒管6b、第2熱交換器3と膨張弁5とに接続された第3冷媒管6c、膨張弁5と第1熱交換器2とに接続された第4冷媒管6d、第1熱交換器2と四方弁4とに接続された第5冷媒管6e、四方弁4と圧縮機1とに接続された第6冷媒管6fからなる。
【0023】
冷水生成時において、四方弁4は、流入口4aと第1流出入口4bとを繋ぐとともに、第2流出入口4cと流出口4dとを繋ぐ。四方弁4における流路の切り替えは、図示しないパイロット弁の制御により行う。冷水生成時では、冷媒の流れに対して上流側に配置される第2熱交換器3が凝縮器または放熱部として動作し、下流側に配置される第1熱交換器2が蒸発器ないし吸熱部として動作する。圧縮機1から吐出された冷媒は、四方弁4を介して第2熱交換器3へ向かい、膨張弁5の作用を受けた後、第1熱交換器2を通過し、さらに、四方弁4を介して圧縮機1に戻る。
【0024】
これに対し、温水生成時では、四方弁4は、パイロット弁の制御により、流入口4aの接続先を第2流出入口4cに切り替えるとともに、流出口4dの接続先を第1流出入口4bに切り替える。温水生成時では、冷媒の流れに対して上流側に配置される第1熱交換器2が凝縮器または放熱部として動作し、下流側に配置される第2熱交換器3が蒸発器ないし吸熱部として動作する。圧縮機1から吐出された冷媒は、四方弁4を介して第1熱交換器2へ向かい、膨張弁5の作用を受けた後、第2熱交換器3を通過し、さらに、四方弁4を介して圧縮機1に戻る。
【0025】
以上に加え、熱源ユニットUは、制御系の構成要素として、コントローラ101、入口部温度センサ111、出口部温度センサ112、運転スイッチ113およびディスプレイ装置114を備える。本実施形態では、さらに、後に述べるヒータ通電用のリレー115を備える。コントローラ101は、インバータ回路やマイクロコンピュータを含む制御回路を備え、機械室Bに配置してもよいし、例えば、仕切板9により支持することで、機械室Bと送風機室Aとに跨って筐体C内部の上部に配置してもよい。
【0026】
図1図4に示すように、入口部温度センサ111は、第1熱交換器2、具体的には、第1熱交換器2の通水管2bに流入する利用流体の温度Twiを検出するものである。入口部温度センサ111は、例えば、サーミスタであり、第1熱交換器2に対する利用流体の入口部に配置されている。本実施形態において、入口部温度センサ111は、第1熱交換器2と入口部配管継ぎ手111とを繋ぐ第1中継管、より具体的には、第1中継管のうち、第1熱交換器2に近い部位に設置されている。
【0027】
出口部温度センサ112は、第1熱交換器2、具体的には、第1熱交換器2の通水管2bから流出する利用流体の温度Twoを検出するものである。入口部温度センサ111と同様に、出口部温度センサ112についてもサーミスタを採用可能であり、第1熱交換器2に対する利用流体の出口部に配置されている。本実施形態において、出口部温度センサ112は、第1熱交換器2と出口部配管継ぎ手112とを繋ぐ第2中継管、より具体的には、第2中継管のうち、第1熱交換器2に近い部位に設置されている(図3)。入口部温度センサ111と出口部温度センサ112とは、第1熱交換器2とともに機械室Bに配置されている。
【0028】
運転スイッチ113は、熱源ユニットUに対して運転および停止を指示するスイッチである。運転スイッチ113は、例えば、押釦スイッチであり、使用者が操作する。
【0029】
ディスプレイ装置114は、熱源ユニットUの運転状態を表示するものであり、筐体Cの外側に設置され、使用者がその表示内容を確認するとともに、操作を行うことが可能である。本実施形態において、ディスプレイ装置114は、コントローラ101に対して互いに通信可能に接続されている。さらに、ディスプレイ装置114は、表示部に加えて操作パネルを備え、運転スイッチ113は、操作パネルに組み込まれ、ディスプレイ装置114と一体に形成されている。
【0030】
コントローラ101は、入口部温度センサ111および出口部温度センサ112から出力される検出信号を入力するとともに、運転スイッチ113およびディスプレイ装置114から各種の操作信号を入力し、圧縮機1およびベルトヒータ7の動作を制御する。
【0031】
図2の回路図を参照すると、圧縮機1は、商用交流電源11に対し、整流器12、キャパシタ13およびインバータ14を介して接続され、インバータ14により運転周波数、つまり、回転数を変更可能に構成されている。ここで、熱源ユニットUは、上流にあるブレーカ(図示せず)を遮断しない限り、常に商用交流電源11から電力が供給された状態にあるため、コントローラ101およびディスプレイ装置114は、電源11から動作電力の供給を受け、運転スイッチ113に対するオン・オフ操作の有無に拘らず、常に制御動作を継続することができる。
【0032】
ベルトヒータ7は、電源11に対して整流器12と並列に接続され、ベルトヒータ7を電源11に繋ぐ回路には、リレー115が設置されている。リレー115は、コントローラ101からの指令信号に応じて作動し、コントローラ101からのオン指令により回路を閉じて、ベルトヒータ7に通電して作動させる一方、コントローラ101からのオフ指令により回路を開いて、ベルトヒータ7への通電を遮断し、ベルトヒータ7の加熱動作を停止させる。ベルトヒータ7のオン・オフ制御については後に図5に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0033】
さらに、図3および図4を参照すると、入口部温度センサ111と出口部温度センサ112とは、配置されている高さが互いに異なる。具体的には、出口部温度センサ112が、入口部温度センサ111よりも上方に位置するようになっている。
【0034】
より具体的には、圧縮機1は、第1熱交換器2の背面側に配置され、入口部温度センサ111は、第1熱交換器2の正面側において、通水路2bの導入側開口に隣接する入口部に配置され、圧縮機1の外周におけるベルトヒータ7の設置領域のうち、最下部に近い高さに配置されている。これに対し、出口部温度センサ112は、第1熱交換器2の正面側において、通水路2bの排出側開口に隣接する出口部に配置され、ベルトヒータ7の設置領域の最上部よりもさらに高い位置に配置されている。ベルトヒータ7の設置領域は、ベルトヒータ7により包囲される圧縮機1外周の範囲をいい、図4は、これを二点鎖線により模式的に示す。
【0035】
本実施形態において、圧縮機1および第1熱交換器2が配置される筐体C内部の機械室Bと、第2熱交換器3およびファンFが配置される送風機室Aとは、仕切板9により隔てられている。ここで、機械室Bは、ある程度気密になっており、圧縮機1の運転中においてはインバータ14を冷却するためにファンFにより形成される風の一部を機械室Bに流すこともあるが、圧縮機1の停止中、つまり、冷凍サイクルの停止中は、ファンFも停止するため、機械室Bへの外気の流通は殆どない。
【0036】
これにより、入口部温度センサ111と出口部温度センサ112、つまり、入口部温度センサ111が配置される第1熱交換器2の入口部と出口部温度センサ112が配置される第1熱交換器2の出口部とで、ベルトヒータ7を熱源とする対流熱伝達により受ける熱量に差が生じ、出口部温度センサ112の受ける熱量が、入口部温度センサ111の受ける熱量よりも大きくなる。図4は、入口部温度センサ111と出口部温度センサ112との高さの差を符号Δhにより示す。
【0037】
図1に戻り、コントローラ101は、入口部温度センサ111、出口部温度センサ112、運転スイッチ113により出力された各種の信号を入力し、圧縮機1、ベルトヒータ7、ディスプレイ装置114およびリレー115に対して指令信号を出力する。
【0038】
本実施形態では、特に外部装置に備わるポンプが停止していることなどにより、利用流体に流れがない条件での熱源ユニットUの運転を回避し、具体的には、圧縮機1の起動を禁止する。その方法を図5および図6に示すフローチャートをもとに説明する。
【0039】
コントローラ101は、図5および図6に示すルーチンによる制御を、使用者による運転スイッチ113のオン操作に従って開始し、その後、オフ操作があるまで、繰り返し実行する。
【0040】
S101では、熱源ユニットUの運転スイッチ113がオン状態にあるか否か、換言すれば、運転スイッチ113に対するオン操作がなされた状態にあるか否かを判定する。オン状態にある場合は、S102へ進み、オン状態にない場合、つまり、オフ状態にある場合は、S106へ進んで、圧縮機1が運転中であるか、停止中であるかに拘らず、圧縮機1を停止状態とする。続いて、S102に進み、ベルトヒータ7を作動させた後、このルーチンを繰り返す。このように熱源ユニットUが停止している間においてもベルトヒータ7に対する通電が継続されるため、圧縮機1は、常に適温に維持される。これにより、運転スイッチ113のオン操作がなされたときは、速やかに圧縮機1を起動させ、熱源ユニットUの運転を開始することができる。
【0041】
S102では、入口部温度センサ111により検出された利用流体の温度(以下「入口部液温」という)Twiと、出口部温度センサ112により検出された利用流体の温度(以下「出口部液温」という)Twoとを読み込み、次のステップS103へ移行する。
【0042】
S103では、圧縮機1の駆動周波数Fcmpを設定する。駆動周波数Fcmpの設定は、例えば、入口部液温Twiまたは出口部液温Twoとその目標温度に対する差分や、この差分の時間的変化量等に基づく。
【0043】
S104では、S103で設定された駆動周波数Fcmpが0であるか否か、つまり、圧縮機1を停止させる条件にあるか否かを判定する。例えば、入口部液温Twiが目標とする温度よりも高くなれば、駆動周波数Fcmpが0となり、圧縮機1は停止される。駆動周波数Fcmpが0である場合(S104のYES)は、S105へ進み、0でない場合(S104のNO)は、S106へ進む。
【0044】
S105では、今回の前のルーチン、つまり、前回のルーチンで設定された駆動周波数Fcmpが0であったか否かを判定する。換言すれば、前回のルーチンに引き続き、今回のルーチンでも駆動周波数Fcmpが0であるか否かを判定することにより、圧縮機1が停止中であるか否かを判定する。前回のルーチンで設定された駆動周波数Fcmpが0であった場合は、今回のルーチンにおける制御を終了し、最初のスタートに戻る。0でない場合は、今回のルーチンで駆動周波数Fcmpが0になったとして、S107へ進む。なお、運転オン直後の初回のルーチン(S101の初回のYES)では、Fcmpの前回値にはその初期値として“0”が設定される。
【0045】
S106では、前回のルーチンで設定された駆動周波数Fcmpが0であったか否かを判定する。換言すれば、前回のルーチンでは0であった駆動周波数Fcmpが今回のルーチンで0でなくなったか否かを判定することにより、圧縮機1の起動時にあるか否かを判定する。前回のルーチンで設定された駆動周波数Fcmpが0であった場合(S106のYES)は、圧縮機1の起動が必要として、S109へ進み、0でない場合(S106のNO)は、今回のルーチンまでに圧縮機1を既に起動済みであり、圧縮機1は作動中であるとして、S110へ進む。
【0046】
S107では、圧縮機1を停止させる。そして、これと同時またはほぼ同時に、続くS1208でベルトヒータ7に通電してベルトヒータ7の加熱動作を開始させ、停止中にある圧縮機1を加熱する。
【0047】
一方、S109では、図6に示す圧縮機起動制御を実行する。本実施形態において、圧縮機起動制御は、圧縮機1の起動に際し、入口部温度センサ111の検出信号と出口部温度センサ112の検出信号との差分に当たる温度差ΔTwと所定の温度ΔTslとを対比し、温度差ΔTwが所定の値ΔTsl以上である場合に、圧縮機1の起動を禁止する制御として構成する。所定の値ΔTslは、概ね3~5℃程度の範囲にある温度として設定される。
【0048】
S110では、駆動周波数Fcmpにより、圧縮機1を作動させる。
【0049】
圧縮機起動制御において、図6に示すフローチャートのS201では、入口部液温Twiと出口部液温Twoとの温度差ΔTwを算出し、温度差ΔTwが所定の値ΔTsl以上であるか否かを判定する。温度差ΔTwが所定の値ΔTsl以上である場合(S201のYES)は、第1熱交換器2に利用流体の流れがないという判断のもと、S202へ進み、圧縮機1を停止させたままで維持する。これに対し、所定の値ΔTsl未満である場合(S201のNO)は、第1熱交換器2に利用流体の流れが正常に生じているという判断のもと、S209へ進み、圧縮機1を起動する。つまり、圧縮機1の停止中において、既に第1熱交換器2に利用流体の流れが正常に生じていれば、利用流体からの熱伝達により入口部液温Twiと出口部液温Twoとが利用流体の温度としてほぼ同じになることから、正常と判断するのである。
【0050】
S202に続くS203以下は、第1熱交換器2に利用流体の流れがないことが確定的なものか否かを確認して、異常を判定および表示するステップである。
【0051】
S203では、圧縮機1の駆動周波数Fcmpが0になってから所定の時間が経過したか否か、換言すれば、温度差ΔTwが所定の値ΔTsl以上である状態が所定の時間に亘って継続したか否かを判定する。所定の時間が経過した場合(S203のYES)は、S204へ進み、経過していない場合(S203のNO)は、S204以降の処理を迂回して、図5に示す基本制御ルーチンへ戻り、今回のルーチンによる制御を終了した後、基本ルーチンを繰り返す。これは、圧縮機1がある程度の時間に亘って停止した後でないと、入口部液温Twiと出口部液温Twoとにより利用流体の正確な状態を検知することができないためである。
【0052】
S204では、カウント値CNTに1を加算する(CNT=CNT+1)。
【0053】
S205では、加算後のカウント値CNTが所定の値aに達したか否かを判定する。つまり、温度差ΔTwが所定の値ΔTsl以上である状態が所定の時間に亘って継続する事態が、所定の値aにより定められた回数だけ、連続して生じたか否かを判定することにより、一時的な事象による誤った判定を回避するのである。所定の値aに達した場合(S205のYES)は、S206へ進み、達していない場合(S205のNO)は、S206以降の処理を迂回して、基本制御ルーチンへ戻る。値aは、3~5程度が望ましい。
【0054】
S206では、第1熱交換器2に利用流体の流れがない条件にあるとの判定(以下「異常判定」という)を確定し、使用者に対して異常が発生しているとの認識を促す表示または報知を実施する。例えば、ディスプレイ装置114の表示部を点灯させ、異常の発生を表示する。
【0055】
続くS207では、使用者によるリセット操作がなされたか否かを判定する。リセット操作がなされた場合(S207のYES)は、S208へ進み、なされていない場合(S207のNO)は、異常の発生を示す表示を継続する。つまり、リセット操作がなされるまではS207の判定を繰り返し、圧縮機1の起動を保留するのである。リセット操作は、例えば、ディスプレイ装置114の操作パネルにリセット用のボタンを設置することにより実施可能である。使用者のリセット操作は、外部装置に備わるポンプの動作状態の確認や、第1熱交換器2内部の配管または外部装置の配管における詰りの有無等の確認を行い、問題がないことを使用者が確認した場合に実施される。
【0056】
S208では、異常判定を解除し、異常の発生を示す表示等を停止させ、基本ルーチンに戻り、圧縮機1の運転を可能とする。
【0057】
S209では、圧縮機1を起動し、図5に示す基本ルーチンのS104で設定された駆動周波数Fcmpにより、圧縮機1を作動させる。S209に続くS210では、この圧縮機1の運転開始により、圧縮機1の加熱が不要となるため、ベルトヒータ7の通電をオフして、図5に示す基本ルーチンに戻る。
【0058】
なお、消費電力削減のため、圧縮機1の起動後、ベルトヒータ7をオフしたが(S210)、圧縮機1自体の発熱を補うために引き続き作動させるようにしてもよい。この場合に、熱源ユニットUは、電源11に接続されている限り常に通電され、ベルトヒータ7による圧縮機1の加熱が継続されることになる。
【0059】
図7~9は、異なる状況における温度変化を比較するために入口部液温Twi、出口部液温Twoの変化例を示すものであり、図7は、利用流体に流れがない状態でベルトヒータ7への通電を遮断した場合における、入口部液温Twi、出口部液温Twoおよび温度差ΔTwの変化を示すグラフを示している。
【0060】
一方、図8は、ベルトヒータ7への通電を開始した後、ポンプを引き続き停止させるなどして、利用流体に流れがない状態を維持した場合における、入口部液温Twi、出口部液温Twoおよび温度差ΔTwの変化を示すグラフである。
【0061】
図9は、利用流体に流れがない状態からポンプを起動し、第1熱交換器2を介する利用流体の循環を開始した場合における、入口部液温Twi、出口部液温Two、温度差ΔTwおよび利用流体の流量Rcwの変化を示すグラフである。
【0062】
図7から図9のそれぞれにおいて、点線は、入口部液温Twiを示し、実線は、出口部液温Twoを示し、二点鎖線は、入口部液温Twiと出口部液温Twoとの温度差ΔTwを示す。さらに、図9において、細かい点線は、利用流体の流量Rcwを示す。
【0063】
本実施形態では、熱源ユニットUの筐体C内部の機械室Bにおいて、第1熱交換器2と圧縮機1とが互いに近接して設けられていること(図3)、さらに、第1熱交換器2に対する利用流体の出口部が入口部よりも上方に設けられること(図4)により、出口部温度センサ112が入口部温度センサ111よりも上方に位置し、ベルトヒータ7を熱源とする対流熱伝達により受ける熱量が大きい。よって、他の熱的な影響がないか、あるとしても充分に小さいとみなすことができる場合は、出口部温度センサ112の検出温度である出口部液温Twoが入口部温度センサ111の検出温度である入口部液温Twiよりも高くなる。本実施形態では、温度差ΔTwは、出口部液温Twoから入口部液温Twiを減じた差分として算出する(Two-Twi>0)。
【0064】
ここで、図7を参照すると、利用流体に流れがない状態、つまり、利用流体の流量Rcwが0[L/min]の状態でベルトヒータ7への通電を遮断し、放置した場合は、入口部液温Twiと出口部液温Twoとが時間の経過とともに互いに近付き、最終的に外気に近い温度に収束する傾向にある。
【0065】
これに対し、図8を参照すると、ベルトヒータ7への通電を開始した後、ポンプを引き続き停止させるなどして、利用流体に流れがない状態を維持した場合は、入口部液温Twiが外気に近い温度に収束する一方、出口部液温Twoは外気の温度を超えて上昇し、出口部液温Twoと入口部液温Twiとの間に温度差ΔTwが生じて、温度差ΔTwは、時間の経過とともに拡大し、やがて、一定の差を保って収束に向かう傾向にある。
【0066】
さらに、図9を参照すると、利用流体に流れがない状態でベルトヒータ7を作動させ、入口部液温Twiと出口部液温Twoとの間に温度差ΔTwを形成した状態から、ベルトヒータ7を作動させたままに維持して、時刻t0にポンプを起動し、第1熱交換器2を介する利用流体の循環を開始した場合は、通水、つまり、利用流体の循環開始後、時間の経過とともに温度差ΔTwが縮小し、ある程度の時間が経過すると、0[℃]またはその近傍に収束する傾向にある。
【0067】
このように、利用流体に流れがない状態でベルトヒータ7を作動させると、ベルトヒータ7により放出される熱により圧縮機1周辺の空気が暖められ、機械室B内部の雰囲気温度が上昇する。そして、これに伴い、主に対流熱伝達により機械室Bの上部にある出口部温度センサ112およびその設置箇所も暖められる。利用流体に流れがなく、第1熱交換器2の前後で利用流体が停滞することから、出口部温度センサ112およびその設置箇所では、ベルトヒータ7から受けた熱量が保持され、出口部温度センサ112およびその設置箇所の温度が上昇し、外気よりも高い温度に到達する。これに対し、機械室Bの下部にある入口部温度センサ111およびその設置箇所は、ベルトヒータ7の設置領域の最下部に近い位置にあるため、ベルトヒータ7からの放熱の影響を受けず、外気に近い温度を維持する。
【0068】
これに対し、圧縮機1の停止中に、第1熱交換器2に利用流体の流れがあれば、入口部温度センサ111および出口部温度センサ112ともに熱容量的には利用流体からの伝熱量が大きくなり、ベルトヒータ7からの放熱の影響は相対的に小さくなる。これにより、入口部温度センサ111により検出される入口部液温Twiと出口部温度センサ112により検出される出口部液温Twoとは、利用流体の温度に近付き、互いにほぼ同じ温度となる。そして、出口部液温Twoと入口部液温Twiとの温度差ΔTwは、0℃またはこれに近い温度にまで低下し、設定値ΔTslより小さくなる。
【0069】
本実施形態に係る熱源ユニットUは、以上の構成を有する。以下に、本実施形態により得られる効果を述べる。
【0070】
本実施形態によれば、ベルトヒータ7の作動時に、入口部液温Twiと出口部液温Twoとの温度差ΔTwの推移に着目すること、具体的には、入口部液温Twiと出口部液温Twoとの温度差ΔTwを検出し、温度差ΔTwを予め設定された値ΔTslと比較することで、利用流体に流れがない条件にあること、例えば、外部装置のポンプが停止していることを知らせる外部入力、いわゆるポンプインターロック機構に依存せずに判定することが可能である。さらに、利用流体の流れを検出するための流量センサ等の特別な部品の追加を不要として、部品点数の増大を抑制しまたはその削減を図ることができる。
【0071】
よって、入口部温度センサ111と出口部温度センサ112とで検出される温度Twi、Twoに相応の差がないことを圧縮機1を起動させる際の条件とすることで、利用流体に流れがない条件のもとでの圧縮機1の起動を禁止し、ポンプインターロック機構を備えていないものにおいてはこれに依存せず、他方で、ポンプインターロック機構を備えるものにおいてはこれを補完して、熱源ユニットUのより適切な保護を図ることができる。
【0072】
さらに、温度差ΔTwと比較する所定の値ΔTslを調整することで、利用流体に流れはあるものの、流量Rcwが極めて小さい条件にあること、例えば、利用流体の配管p1、p2に漏れが生じている等の不具合を判定することが可能である。
【0073】
このように、本実施形態によれば、いわゆるポンプインターロック機構に依存せず、利用流体に流れがないかまたは流れがあってもその流量が極めて小さい条件のもとでの圧縮機1の起動を禁止し、熱源ユニットUの機器の凍結や過大な負荷から保護することができる。
【0074】
入口部温度センサ111および出口部温度センサ112は、熱源ユニットUの各種制御のために必須のセンサであり、このような既存の部品を活用することにより、新たな部品の追加を伴わずに熱源ユニットU全体の保護を図ることが可能である。
【0075】
さらに、本実施形態によれば、第1熱交換器2に対する利用流体の出口部を入口部よりも上方に配置し、出口部または出口部温度センサ112がベルトヒータ7からの放熱により受ける熱量が、入口部または入口部温度センサ111が受ける熱量よりも大きくなる配置としたことで、利用流体に流れがある場合とない場合とで温度差ΔTwがとるべき値を明確に区別することが可能となる。
【0076】
以上の説明では、出口部温度センサ112を入口部温度センサ111よりも上方に配置することで、入口部温度センサ111と出口部温度センサ112とで、ベルトヒータ7を熱源とする対流熱伝達により受ける熱量に差を生じさせる構成とした。
【0077】
入口部温度センサ111と出口部温度センサ112とで受ける熱量に差が生じる原因は、これに限定されるものではなく、入口部温度センサ111と出口部温度センサ112とで、ベルトヒータ7からの熱輻射により受ける熱量に差が生じるようにしてもよい。例えば、出口部温度センサ112を入口部温度センサ111よりもベルトヒータ7の近くに配置することで、出口部温度センサ112がベルトヒータ7からの熱輻射により受ける熱量を入口部温度センサ111が受ける熱量よりも大きくするのである。
【0078】
出口部温度センサ112が受ける熱量を大きくする配置に限らず、入口部温度センサ111が受ける熱量を大きくする配置としてもよい。例えば、入口部温度センサ111を出口部温度センサ112よりも上方に配置したり、入口部温度センサ111を出口部温度センサ112よりも圧縮機1またはベルトヒータ7の近くに配置したりするのである。要は2つのセンサ111、112の間で、ベルトヒータ7から受ける熱量を異ならせればよい。
【0079】
さらに、入口部温度センサ111と出口部温度センサ112とが受ける熱量は、対流熱伝達および熱輻射に限らず、ベルトヒータ7からの熱伝導による影響があってもよい。つまり、利用流体に実質的な流れがないことにより、入口部温度センサ111と出口部温度センサ112とで受ける熱量の差が利用流体による熱の持ち去りにより解消されず、温度差ΔTwとして検出可能な状況にあればよい。
【0080】
以上の説明では、空冷式の熱源ユニットUに適用する場合について説明したが、水冷式の熱源ユニットに適用することも可能であり、この場合は、第1熱交換器2だけでなく、第2熱交換器3も水冷媒熱交換器となり、ファンFは不要となる。さらに、筐体Cの内部の仕切板7も不要であり、圧縮機1、第1熱交換器2、第2熱交換器3および他の冷凍サイクル部品が筐体C内部の単一空間に収納される。
【0081】
以上の説明では、特に明記していないが、熱源ユニットUは、ポンプインターロック機構を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。ポンプインターロック機構は、ポンプの作動状態を検出し、ポンプが停止している場合に、圧縮機1の作動ないし起動を禁止するものである。ポンプインターロック機構を備えることで、重畳的なフェールセーフを図ることが可能である。特に利用流体の配管に漏れや詰りが生じ、ポンプは作動しているものの、利用流体に実質的な流れがない場合は、ポンプの作動中であることからポンプインターロック機構によっては圧縮機1の作動を禁止することができないが、本実施形態によりこれに対処することが可能である。
【0082】
さらに、以上の説明では、熱源ユニットUに四方弁4を設置し、外部装置に対して冷水を供給したり、温水を供給したりすることができるものとしたが、これに限らず、四方弁4を持たない構成とすることにより、熱源ユニットUを冷水生成装置または温水生成装置として構成することも可能である。冷水生成装置として構成される熱電ユニットUにおいて、第1熱交換器2は、蒸発器として機能し、第2熱交換器3は、凝縮器として機能する。他方で、温水生成装置として構成される熱電ユニットUにおいて、第1熱交換器2は、凝縮器として機能し、第2熱交換器3は、蒸発器として機能する。
【0083】
さらに、熱源ユニットUが適用されるシステムは、外部装置との間で利用流体を循環させる循環型の構成であってもよいし、開放型の構成であってもよい。例えば、外部装置から水等の利用流体の供給を受けるとともに、第1熱交換器2によりこの利用流体を冷却または加熱した後、冷却または加熱後の利用流体を外部装置に供給する。調整後の流体は、外部装置での使用後、他の用途に使用しまたは熱の回収を図るなどした後、廃棄する。
【0084】
以上の記載から導き出すことのできる概念を、以下に纏める。
(1)冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機の外周に、前記圧縮機を加熱可能に配置されたヒータと、
前記冷媒と利用流体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記圧縮機と前記第1熱交換器とを収納する筐体と、
前記第1熱交換器に対する前記利用流体の入口部に設置された第1温度センサと、
前記第1熱交換器に対し、前記ヒータからの放熱により受ける熱量が前記入口部とは異なる、前記利用流体の出口部に設置された第2温度センサと、
前記第1温度センサおよび前記第2温度センサから出力される検出信号を取得し、前記ヒータの作動時に、前記第1温度センサの検出信号と前記第2温度センサの検出信号との差分に当たる温度差が所定の値以上である場合は、前記圧縮機の起動を禁止するコントローラと、を備えた熱源ユニット。
(2)前記ヒータは、前記圧縮機の周囲に巻き付けられたベルトヒータである、請求項1に記載の熱源ユニット。
(3)前記入口部と前記出口部とは、配置されている高さまたは前記ヒータからの距離が互いに異なることにより、前記ヒータから受ける熱量が異なる、上記(1)または(2)に記載の熱源ユニット。
(4)前記出口部が前記ヒータからの放熱により受ける熱量が、前記入口部が受ける熱量よりも大きい、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の熱源ユニット。
(5)前記利用流体は、水である、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の熱源ユニット。
(6)膨張弁と、
第2熱交換器と、
前記圧縮機、前記第1熱交換器、前記膨張弁および前記第2熱交換器の間で前記冷媒を循環可能に配置された冷媒配管と、をさらに備え、
前記第1熱交換器は、前記利用流体を前記冷媒との熱交換により冷却可能に構成され、
前記第2熱交換器は、前記利用流体を冷却した後の前記冷媒から熱を放出可能に構成された、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の熱源ユニット。
(7)前記筐体は、その内部を仕切る仕切板を備え、
前記仕切板により仕切られた同一空間内に、前記圧縮機および前記第1熱交換器が収納されている、上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の熱源ユニット。
(8)冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機を加熱するヒータと、前記冷媒と利用流体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、前記第1熱交換器に設けられ、前記ヒータからの放熱により受ける熱量が各々で異なる第1温度センサおよび第2温度センサと、前記第1および第2温度センサの検出温度の差に基づき、前記圧縮機の起動を禁止するコントローラと、を備えた熱源ユニット。
【0085】
本発明の幾つかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものに過ぎず、発明の範囲を限定することを意図したものではない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
U…熱源ユニット、C…筐体、送風機室A、機械室B、1…圧縮機、2…第1熱交換器、3…第2熱交換器、7…ベルトヒータ、9…仕切板、p1…入口側配管、p2…出口側配管、11…電源、101…コントローラ、111…入口部温度センサ、112…出口部温度センサ、113…運転スイッチ、115…リレー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9