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特開2023-157664接合方法、接合製品、及び、加熱処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157664
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】接合方法、接合製品、及び、加熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
B23K20/00 310H
B23K20/00 310J
B23K20/00 310L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067719
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】平松 茂
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA08
4E167AA10
4E167AA29
4E167AC09
4E167BA12
4E167DA04
4E167DB09
4E167DC02
(57)【要約】
【課題】メッキ層を有する第1部材と第2部材との拡散接合の接合品質を良好にする。
【解決手段】基材12と当該基材12にメッキされたメッキ層13とを有する電極11に導電タブを拡散接合する接合方法は、電極11に対してレーザ光Lによる加熱処理を行うことでメッキ層13の材料の結晶粒を大きくする第1ステップと、電極11のうち第1ステップにより結晶粒を大きくした部分に導電タブをメッキ層13の側から抵抗溶接により拡散接合する第2ステップと、を備える。メッキ層13の材料は、ニッケルであり、導電タブは、銅系材料からなる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と当該基材にメッキされたメッキ層とを有する第1部材に第2部材を拡散接合する接合方法であって、
前記第1部材に対して加熱処理を行うことで前記メッキ層の材料の結晶粒を大きくする第1ステップと、
前記第1部材のうち前記第1ステップにより前記結晶粒を大きくした部分に前記第2部材を前記メッキ層の側から拡散接合する第2ステップと、
を備える接合方法。
【請求項2】
前記メッキ層の前記材料は、ニッケルであり、
前記第2部材の材料は、銅系材料である、
請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記基材の材料は、鋼である、
請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記第1部材は、電池の電極であり、
前記第2部材は、前記電池を他の電池と電気的に接続する導電タブである、
請求項3に記載の接合方法。
【請求項5】
前記第1ステップの前記加熱処理では、前記メッキ層の厚み方向から見たときの前記第1部材の一部のみを前記メッキ層の側から照射されるレーザ光により加熱することで、当該一部に前記結晶粒を大きくした前記部分を形成する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項6】
前記第1ステップの前記加熱処理では、前記第1部材の前記一部のみを、不活性ガスを吹き付けながら、不活性ガスの雰囲気中で、又は、真空中で、前記レーザ光により加熱する、
請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
基材と当該基材にメッキされたメッキ層とを有する第1部材と、
前記第1部材の前記メッキ層に拡散接合された第2部材と、を備え、
前記メッキ層は、材料の結晶粒が第1の大きさの第1部分と、材料の結晶粒の大きさが第1の大きさよりも大きな第2の大きさの第2部分と、を備え、
前記メッキ層は、前記第2部分で前記第2部材に拡散接合されている、
接合製品。
【請求項8】
前記第1部材は、電池の電極であり、
前記第2部材は、前記電池を他の電池と電気的に接続する導電タブである、
請求項7に記載の接合製品。
【請求項9】
基材と当該基材にメッキされたメッキ層とを有する第1部材に第2部材を拡散接合する前に、前記第1部材を加熱処理するように構成された加熱処理装置であって、
前記第1部材にレーザ光を前記メッキ層の側から照射して前記第1部材を加熱することで前記メッキ層の材料の結晶粒を大きくするレーザと、
前記レーザ光を前記第1部材に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記移動機構及び前記レーザを制御して、前記メッキ層の厚み方向から見たときの前記第1部材の一部であって前記第2部材と拡散接合する部分を含む一部にのみ前記レーザ光を走査するコントローラと、
を備える加熱処理装置。
【請求項10】
前記第1部材の前記レーザ光の照射部分に不活性ガスを吹き付ける吹き付けノズルをさらに備える、
請求項9に記載の加熱処理装置。
【請求項11】
前記第1部材は、電池の電極であり、
前記電池が固定可能に構成されたステージをさらに備える、
請求項9又は10に記載の加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、接合製品、及び、加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が開示するように、鉄又は鉄合金製の基材と当該基材にメッキされたニッケルメッキ層とを有する第1部材に、ニッケルメッキ層の側から銅又は銅合金からなる第2部材を抵抗溶接する接合方法が知られている。この接合方法では、第2部材の材料が銅又は銅合金であるため、第2部材は第1部材に拡散接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-258467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の接合方法では、接合後の第2部材が第1部材から剥がれてしまうことがある。この剥がれの原因は、ニッケルメッキ層が厚さ方向途中の位置で破断してしまうことにある。このため、特許文献1に記載の接合方法では、第1部材と第2部材との接合品質が良好でない。このような不都合は、メッキ層を有する第1部材に第2部材を拡散接合する場合一般に生じ得る。
【0005】
本発明は、メッキ層を有する第1部材と第2部材との拡散接合の接合品質を良好にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る接合方法は、基材と当該基材にメッキされたメッキ層とを有する第1部材に第2部材を拡散接合する接合方法であって、前記第1部材に対して加熱処理を行うことで前記メッキ層の材料の結晶粒を大きくする第1ステップと、前記第1部材のうち前記第1ステップにより前記結晶粒を大きくした部分に前記第2部材を前記メッキ層の側から拡散接合する第2ステップと、を備える。
【0007】
一例として、前記メッキ層の前記材料は、ニッケルであり、前記第2部材の材料は、銅系材料である。
【0008】
一例として、前記基材の材料は、鋼である。
【0009】
一例として、前記第1部材は、電池の電極であり、前記第2部材は、前記電池を他の電池と電気的に接続する導電タブである。
【0010】
一例として、前記第1ステップの前記加熱処理では、前記メッキ層の厚み方向から見たときの前記第1部材の一部のみを前記メッキ層の側から照射されるレーザ光により加熱することで、当該一部に前記結晶粒を大きくした前記部分を形成する。
【0011】
一例として、前記第1ステップの前記加熱処理では、前記第1部材の前記一部のみを、不活性ガスを吹き付けながら、不活性ガスの雰囲気中で、又は、真空中で、前記レーザ光により加熱する。
【0012】
本発明に係る接合製品は、基材と当該基材にメッキされたメッキ層とを有する第1部材と、前記第1部材の前記メッキ層に拡散接合された第2部材と、を備え、前記メッキ層は、材料の結晶粒が第1の大きさの第1部分と、材料の結晶粒の大きさが第1の大きさよりも大きな第2の大きさの第2部分と、を備え、前記メッキ層は、前記第2部分で前記第2部材に拡散接合されている。
【0013】
一例として、前記第1部材は、電池の電極であり、前記第2部材は、前記電池を他の電池と電気的に接続する導電タブである。
【0014】
本発明に係る加熱処理装置は、基材と当該基材にメッキされたメッキ層とを有する第1部材に第2部材を拡散接合する前に、前記第1部材を加熱処理するように構成された加熱処理装置であって、前記第1部材にレーザ光を前記メッキ層の側から照射して前記第1部材を加熱することで前記メッキ層の材料の結晶粒を大きくするレーザと、前記レーザ光を前記第1部材に対して相対的に移動させる移動機構と、前記移動機構及び前記レーザを制御して、前記メッキ層の厚み方向から見たときの前記第1部材の一部であって前記第2部材と拡散接合する部分を含む一部にのみ前記レーザ光を走査するコントローラと、を備える。
【0015】
一例として、加熱処理装置は、前記第1部材の前記レーザ光の照射部分に不活性ガスを吹き付ける吹き付けノズルをさらに備える。
【0016】
一例として、前記第1部材は、電池の電極であり、前記電池が固定可能に構成されたステージをさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メッキ層を有する第1部材と第2部材との拡散接合の接合品質が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係る接合方法の態様を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る接合方法のフロー図である。
図3図3は、加熱処理前の電極のメッキ層の様子を示す一部断面図である。
図4図4は、加熱処理中の電極のメッキ層の様子を示す一部断面図である。
図5図5は、メッキ層の一部断面図である。
図6図6は、接合製品の立面図である。
図7図7は、加熱処理装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る接合方法、接合製品、及び、加熱処理装置について、図面を参照して説明する。図面の各要素は、模式的に誇張して描かれており、各要素間の寸法(特に厚み)の関係は、実際のものと異なる場合がある。
【0020】
本実施形態に係る接合方法では、図1に示すように、電池10の正の電極11(第1部材)に対して導電タブ20(第2部材)を、一対の溶接用電極E1及びE2により抵抗溶接する。
【0021】
電極11は、純鉄又は鉄合金(鋼など)などの鉄系材料からなる鉄板又は鋼板などの板状の基材12と、基材12に対してメッキされたメッキ層13と、を備える。メッキ層13は、ニッケル又はニッケル合金などのニッケル系材料からなる。一例として、基材12を鋼製とし、メッキ層13をニッケル製とすることができる。
【0022】
導電タブ20は、複数の電池10の電極11同士を電気的に接続するための板状部材である。導電タブ20は、銅又は銅合金などの銅系材料からなる。導電タブ20は、錫などによりメッキされてもよい。導電タブ20は、電極11に、メッキ層13の側から抵抗溶接される。導電タブ20は、銅系材料であるため、抵抗溶接によりメッキ層13に拡散接合されることになる。この拡散接合により、導電タブ20は、電極11に電気的に接続される。
【0023】
本実施形態に係る接合方法は、図2に示すように、電極11に対して加熱処理を行うステップS11と、ステップS11で加熱処理が行われたあとの電極11に導電タブ20をメッキ層13の側から抵抗溶接するステップS12と、を有する。
【0024】
ステップS11では、電極11に対して加熱処理を行うことで、メッキ層13を改質し、メッキ層13の材料つまりニッケルなどの結晶粒を加熱処理前よりも大きくする。
【0025】
図3に示すように、加熱処理前のメッキ層13は、当該メッキ層13の材料つまりニッケルなどの結晶粒13Aから構成されている。結晶粒13Aは、比較的均一な大きさの微結晶である。この結晶粒13Aを加熱処理により大きくする。
【0026】
加熱処理の具体的方法は任意であるが、例えば、図4に示すように、レーザ51からのレーザ光Lを電極11に照射することで行う。レーザ光Lは、メッキ層13の側から電極11に照射され、これにより電極11の主にメッキ層13が加熱される。レーザ光Lの照射時には、メッキ層13が酸化しないよう、吹き付けノズル52から不活性ガスGをレーザ光Lの照射箇所に吹き付けるとよい。不活性ガスGとしては、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス、又は、窒素、アンモニアなどの中性ガスが採用される。不活性ガスGは、複数種類のガスの組み合わせであってもよい。不活性ガスGの吹き付けに代えて、レーザ光Lの照射を不活性ガスの雰囲気中又は真空中で行ってもよい。メッキ層13の加熱前の結晶粒13A(微結晶)は、レーザ光Lにより加熱されることで他の結晶粒13Aを取り込んで結晶成長する。その結果、メッキ層13の加熱処理された部分の各結晶粒13Bは、加熱前の結晶粒13Aよりも大きくなっている。各結晶粒13Bの大きさは、結晶粒13Aに比べて不均一となっている。
【0027】
レーザ光Lの出力などを調整することで、ステップS11の加熱処理で、基材12とメッキ層13とのうちの少なくとも一方を溶融させ、基材12とメッキ層13との接合強度を高めてもよい。ただし、メッキ層13が蒸発するまでの加熱は避ける必要がある。
【0028】
加熱処理では、例えば、レーザ光Lを電極11の全体に走査して、電極11(より具体的にはメッキ層13)の全部を加熱してもよいが、電池10への余計な熱影響を避けるため、その一部(メッキ層13の厚み方向(図3乃至図6の紙面上下方向)から見たときの一部)を局所的に加熱するとよい。当該局所的な加熱は、レーザ51により容易に実現可能となる。図5に示すように、加熱される前記一部つまり加熱対象部位Rは、溶接予定部位、つまり、一対の溶接用電極E1及びE2により通電されて導電タブ20と抵抗溶接される2つの部分R1及びR2を含めばよい。加熱対象部位Rは、離れた位置にある部分R1及びR2のみからなってもよい。
【0029】
図2のステップS12では、導電タブ20を電極11にメッキ層13の側から当接させる。そして、溶接用電極E1及びE2を、導電タブ20のうち、加熱処理により結晶粒を大きくしたメッキ層13の加熱対象部位Rに当接している部位に当てて加圧及び通電することにより、導電タブ20を電極11に抵抗溶接する。導電タブ20は、銅系材料からなるため、抵抗溶接の結果、電極11のメッキ層13に拡散接合される。電極11は、加熱対象部位Rに含まれる2つの部分R1及びR2で導電タブ20に拡散接合される。導電タブ20が、錫などによりメッキされている場合、当該錫などは、抵抗溶接時に溶融して導電タブ20とメッキ層13との間から押し出され、導電タブ20とメッキ層13とが直接接触して拡散接合される。導電タブ20にメッキされた錫などは、導電タブ20とメッキ層13との接合境界面に残留してもよい。例えば、導電タブ20にメッキされた錫などの少なくとも一部は、導電タブ20とメッキ層13との拡散接合時に、前記のように押し出されるのではなく、導電タブ20の材料と化合物(CuSn、Cu3Snなど)を構成してもよい。つまり導電タブ20の、メッキ層13と拡散接合される部分の少なくとも一部は、導電タブ20にメッキされた錫などとの化合物となって、メッキ層13と拡散接合してもよい。導電タブ20とメッキ層13との抵抗溶接ないし拡散接合は、このような化合物の形成及び化合物の接合を含んでもよい。
【0030】
ステップS11の加熱処理を行っていないメッキ層13に導電タブ20を拡散接合すると、当該メッキ層13の厚さ方向の途中が破断して、導電タブ20がはがれてしまうことがある。本願発明者は、この点を詳細に検討したところ、加熱処理によりメッキ層13の結晶粒を大きくすることで、前記の破断が生じ難くなることを見出した。前記の破断の原因は、加熱処理をしていないメッキ層13では微結晶である結晶粒13Aの間に有機物などの不純物が存在し、この不純物がメッキ層13の結晶粒13A間の結合を弱くしていることによるもの本願発明者は推測している。他方、加熱処理によりメッキ層13の結晶粒13Aが結晶粒13Bのように大きくなることで、この変化の過程で前記の不純物が蒸発しかつメッキ層13の外部に押し出されてメッキ層13から除去され、これにより結晶粒13B間が強く結合し、その結果、前記の破断が生じ難くなっていると本願発明者は推測している。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る接合方法では、拡散接合の前に加熱処理を行うことでメッキ層13の材料つまりニッケルなどのニッケル系材料の結晶粒を大きくする。これにより、上述したメッキ層13の拡散接合部分の破断が生じ難くになり、メッキ層13を有する電極11と、導電タブ20との拡散接合の接合品質が良好となる。また、当該接合方法により、複数の電池10と導電タブ20とを接合した接合製品が量産された場合、量産される当該接合製品の歩留りが向上する。
【0032】
また、加熱の対象である加熱対象部位Rを、メッキ層13の一部のみとすることにより、電池10における加熱対象部位R以外の部分の温度上昇が抑制され、これにより、電池10への熱による悪影響が低減される。また、加熱をレーザ光Lによって行うことで、加熱する部位などを容易に制御できる。
【0033】
また、レーザ光Lによる加熱処理時に、不活性ガスG又は真空を用いることでメッキ層13の材料の酸化が抑制される。
【0034】
上記接合方法により、図6に示すような複数の電池10の正の電極11同士及び負の電極15同士を2つの導電タブ20によりそれぞれ電気的に接続した電池パックとしての接合製品30が生産される。負の電極15も上記の接合方法により導電タブ20と接合されることができる。電極15は、電極11と同様に基材12及びメッキ層13を備える。接合製品30のメッキ層13は、図3及び図4の結晶粒13Aで構成された第1部分Pと、図4の結晶粒13Bで構成された上記加熱対象部位Rである第2部分Rと、を備える。そして、メッキ層13の第2部分Rが電極11又は15に拡散接合されている。結晶粒の大きい第2部分R(上記のように不純物が取り除かれた部分といえる)が、電極11又は15に拡散接合されていることで、上記のように接合品質が良好となる。
【0035】
ステップS11の加熱処理を行う加熱処理装置としては、例えば、図7に示すような構成を有することができる。図7に示すように加熱処理装置50は、レーザ51と、吹き付けノズル52と、移動機構53と、コントローラ54と、を備える。加熱処理装置50は、さらに、電池10が固定可能に構成されたステージSを備える。ステージSは、電池10を固定するための治具Jなどを備える。
【0036】
レーザ51は、ステージSに固定された電池10の電極11(図6の電極15でもよい。以下同じ)にレーザ光Lを照射して電極11のメッキ層13を加熱することでメッキ層13の材料の結晶粒を大きくする上記加熱処理を行う。吹き付けノズル52は、ガス供給部GSからの不活性ガスGを、電極11のメッキ層13のレーザ光Lの照射部分に吹き付ける。移動機構53は、リニアモータ、ボールネジなどの機構を用いた移動機構である。移動機構53は、ステージSを移動させることで、レーザ51からのレーザ光Lと吹き付けノズル52からの不活性ガスGとを電極11に対して相対的に移動させる。これにより、電極11上においてレーザ光Lの照射位置及び不活性ガスGの吹き付け位置が移動する、つまり、電極11上でレーザ光L及び不活性ガスGが走査される。移動機構53は、レーザ51と吹き付けノズル52とを移動させることでレーザ光Lと不活性ガスGとを電極11に対して相対的に移動させるように構成されてもよい。コントローラ54は、コンピュータなどの制御回路からなり、移動機構53及びレーザ51を制御して、電極11のメッキ層13の厚さ方向から見たときの一部(上記の加熱対象部位R)にのみレーザ光L及び不活性ガスGを走査する。コントローラ54は、さらに、ガス供給部GSを制御して不活性ガスGの吹き付けを制御してもよい。移動機構53は、レーザ光Lを移動させるつまり走査する構成として、ガルバノスキャナを有してもよい。吹き付けノズル52は、移動不可に固定され、レーザ光Lの走査領域(加熱対象部位R)全体に不活性ガスGを吹き付けるように構成されてもよい。
【0037】
加熱処理装置50は、上記抵抗溶接を行うための上記溶接用電極E1及びE2を備えてもよい。この場合、コントローラ54が溶接用電極E1及びE2を介した抵抗溶接のための通電を制御する。加熱処理装置50は、吹き付けノズル52を備えなくてもよい。この場合、加熱処理装置50は、電池10、ステージS、レーザ51などを収容し、不活性ガスGにより満たされるか真空引きされるチャンバを備えてもよい。
【0038】
電極11の導電タブ20に対する上記加熱処理に加熱処理装置50を用いることで、上記拡散接合の接合品質が容易に良好となる。
【0039】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態に対する様々な変更が含まれる。
【0040】
例えば、基材12の材料は、任意であり、例えば鉄系材料以外の金属材料であってもよい。メッキ層13の材料は、任意であり、例えばクロム又はクロム合金などのクロム系材料であってもよい。メッキ層13は、ニッケル系材料からなるメッキ層の上にクロム系材料からなるメッキ層を形成したニッケルクロムメッキ層であってもよい。導電タブ20の材料も銅系材料に限定されず任意である。材料が変更されても、メッキ層13に混入した不純物は、メッキ層13の結晶粒を大きくすることでメッキ層13から排除され、拡散接合の接合品質が良くなる。導電タブ20には、抵抗溶接時の無効分流を抑制するためのスリットが形成されてもよい。また、導電タブ20の電極11との接合部分にプロジェクションが形成されていてもよい。抵抗溶接は、インダイレクト方式で行われてもよい。
【0041】
電極11と導電タブ20との拡散接合は、抵抗溶接以外の方法により行われてもよい。不活性ガスGは、メッキ層13全体を加熱する際にも用いられるとよい。
【0042】
本発明は、基材と当該基材にメッキされたメッキ層とを有する第1部材に第2部材を拡散接合する技術全般に適用可能である。従って、上記で説明した接合は、電池10の電極11との接合以外の接合に使用されてもよい。この場合、接合製品30は、電池パック以外であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…電池、11…電極、12…基材、13…メッキ層、13A,13B…結晶粒、15…電極、20…導電タブ、30…接合製品、50…加熱処理装置、51…レーザ、52…ノズル、53…移動機構、54…コントローラ、E1,E2…溶接用電極、G…不活性ガス、GS…ガス供給部、J…治具、L…レーザ光、P…第1部分、R…加熱対象部位(第2部分)、R1,R2…部分、S…ステージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7