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▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157671
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20231019BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231019BHJP
   H01L 21/8249 20060101ALI20231019BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231019BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20231019BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 301D
H01L29/78 301S
H01L29/78 301V
H01L27/06 321F
H01L27/06 321B
H01L27/06 102A
H01L27/088 B
H01L27/088 D
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652D
H01L29/78 655B
H01L29/78 652N
H01L29/78 652P
H01L29/78 655G
H01L29/78 652Q
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
H01L29/78 652B
H01L29/78 655A
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067732
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 綱一
【テーマコード(参考)】
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F048AB10
5F048AC06
5F048AC10
5F048BA01
5F048BB05
5F048BC03
5F048BC07
5F048BC12
5F048BD07
5F048BF02
5F048BF07
5F140AA30
5F140AB06
5F140AC24
5F140BA01
5F140BB04
5F140BC15
5F140BD04
5F140BF04
5F140BF42
5F140BF43
5F140BF53
5F140BF58
5F140BF59
5F140BF60
5F140BH03
5F140BH05
5F140BH30
5F140BH47
5F140BJ07
5F140BJ10
5F140BJ15
5F140BJ17
5F140CA03
5F140CC05
5F140CE06
5F140DA10
(57)【要約】
【課題】ターンオフの際に、キャリアをエミッタ側に効率的に排出することのができる半導体装置とその製造方法とを提供する。
【解決手段】互いに距離を隔てて配置されたトレンチゲート電極TGEとトレンチエミッタ電極TEEとの間に位置する半導体基板SUBの領域に、ソース拡散層SDRとベース拡散層BDRとが形成されている。トレンチエミッタ電極TEE、ベース拡散層BDRおよび絶縁膜EIFには、第1主面から第2主面に向かって後退したリセス部RCSが形成されている。共通コンタクト部材CCNは、そのリセス部RCSに接触する態様で、第1主面から第2主面に向かって突き出している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタ電極、コレクタ電極およびゲート電極を有するトレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを備えた半導体装置であって、
対向する第1主面および第2主面を有し、前記第1主面上に前記ゲート電極および前記エミッタ電極が形成されるとともに、前記第2主面に前記コレクタ電極が形成された第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面から前記第2主面に向かってそれぞれ形成され、前記エミッタ電極に電気的に接続される第1トレンチエミッタ電極および前記ゲート電極に電気的に接続される第1トレンチゲート電極を含む、複数のトレンチ電極と、
前記半導体基板における第1領域に形成された、第1不純物濃度を有する第2導電型の第1不純物領域を含む、複数の不純物領域と、
前記半導体基板の前記第1主面を覆うように形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜を貫通するように形成され、前記エミッタ電極に電気的に接続された第1コンタクト部材を含む、複数のコンタクト部材と
を有し、
前記第1トレンチエミッタ電極は、エミッタトレンチ内にトレンチ絶縁膜を介在させて形成され、
前記半導体基板における前記第1領域が前記トレンチ絶縁膜に接触する態様で、前記第1領域と前記第1トレンチエミッタ電極との間に前記トレンチ絶縁膜が介在し、
前記第1不純物領域は、前記半導体基板の前記第1領域において、前記第1主面からの深さが第1深さよりも浅い位置に形成され、
前記第1トレンチエミッタ電極、前記トレンチ絶縁膜および前記第1不純物領域には、前記第1トレンチエミッタ電極と前記第1不純物領域との間に跨る態様で、前記第1主面から前記第2主面に向かって後退したリセス部が形成され、
前記リセス部は、
前記第1不純物領域に形成され、前記第1主面から、前記第1深さよりも浅い第2深さに位置する第1リセス部と、
前記第1トレンチエミッタ電極に形成され、前記第1主面から、前記第2深さよりも深く、前記第1深さよりも浅い第3深さに位置する第2リセス部と、
前記トレンチ絶縁膜に形成され、前記第1主面から、前記第3深さよりも深く、前記第1深さよりも浅い第4深さに位置する第3リセス部と
を備え、
前記第1コンタクト部材は、前記リセス部に接触する態様で、前記第1主面から前記第2主面に向かって突き出している、半導体装置。
【請求項2】
前記第1リセス部が位置する前記第1不純物領域では、前記第2深さから、前記第4深さよりも深く、前記第1深さよりも浅い位置にわたり、前記第1不純物濃度よりも高い第2不純物濃度を有する高濃度不純物領域が形成され、
前記第1コンタクト部材は、前記高濃度不純物領域に接触する部分を含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1トレンチゲート電極は、前記第1トレンチゲート電極と前記第1トレンチエミッタ電極との間に、前記半導体基板における前記第1領域が位置する態様で、前記第1トレンチエミッタ電極とは距離を隔てて形成され、
複数の前記不純物領域は、前記半導体基板における前記第1領域において、前記第1主面から前記第2深さよりも浅い位置にわたり形成されて、前記第1不純物領域に接触する第1導電型の第2不純物領域を含む、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1コンタクト部材は、前記第2不純物領域とは、前記第1主面において接触する部分を含む、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
複数の前記トレンチ電極は、
前記エミッタ電極に電気的に接続された第2トレンチエミッタ電極と、
前記ゲート電極に電気的に接続された第2トレンチゲート電極と
を含み、
前記第2トレンチエミッタ電極は、前記第2トレンチエミッタ電極と前記第1トレンチエミッタ電極との間に、前記半導体基板の前記第1領域が位置する態様で、前記第1トレンチエミッタ電極とは距離を隔てて形成され、
前記第1トレンチゲート電極と前記第2トレンチゲート電極とは、前記第1トレンチゲート電極と前記第2トレンチゲート電極との間に、前記半導体基板における第2領域が位置する態様で、互いに距離を隔てて形成された、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
複数の前記不純物領域は、
前記第2領域における前記第1主面から、第5深さにわたり形成された第1導電型の第3不純物領域と、
前記第5深さから、前記第5深さよりも深い第6深さにわたり形成された第2導電型の第4不純物領域と
を含み、
複数の前記コンタクト部材は、前記第3不純物領域および前記第4不純物領域に接触するように形成されて、前記エミッタ電極に電気的に接続された第2コンタクト部材を含む、請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
複数の前記トレンチ電極は、前記エミッタ電極と電気的に接続された第3トレンチエミッタ電極を含み、
前記第1トレンチエミッタ電極、前記第1トレンチゲート電極および前記第3トレンチエミッタ電極は、前記第1トレンチエミッタ電極と前記第3トレンチエミッタ電極との間に、前記第1トレンチゲート電極が位置する態様で、互いに距離を隔てて形成された、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項8】
複数の前記トレンチ電極は、前記第1トレンチゲート電極と電気的に接続される第3トレンチゲート電極を含み、
前記第3トレンチゲート電極は、
第1幅を有する第1部と、
前記第1幅よりも広い第2幅を有する第2部と
を含み、
複数の前記コンタクト部材は、前記ゲート電極に電気的に接続され、前記第3トレンチゲート電極における前記第2部に接触するように形成された第3コンタクト部材を含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体基板における前記第1主面上には、周辺素子と電気的に接続される配線が形成され、
複数の前記コンタクト部材は、前記配線に接触するように形成された第4コンタクト部材を含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
エミッタ電極、コレクタ電極およびゲート電極を有するトレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを備えた半導体装置の製造方法であって、
互いに対向する第1主面および第2主面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
前記半導体基板における前記第1主面から前記第2主面に向かって、第1エミッタトレンチおよび第1ゲートトレンチをそれぞれ形成する工程を含む、複数のトレンチを形成する工程と、
前記第1エミッタトレンチ内にトレンチ絶縁膜を介在させて第1トレンチエミッタ電極を形成する工程および前記第1ゲートトレンチ内に第1トレンチゲート電極を形成する工程を含む、複数の前記トレンチ内のそれぞれにトレンチ電極を形成する工程と、
前記トレンチ絶縁膜に対して前記第1トレンチエミッタ電極が位置する側とは反対側の、前記トレンチ絶縁膜に接している前記半導体基板の第1領域に、第2導電型の第1不純物領域を形成する工程を含む、複数の不純物領域を形成する工程と、
前記半導体基板の前記第1主面を覆うように、層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第1トレンチエミッタ電極、前記トレンチ絶縁膜および前記第1不純物領域に跨る態様で、前記層間絶縁膜を貫通する第1コンタクト開口部を形成する工程を含む、複数のコンタクト開口部を形成する工程と、
前記第1コンタクト開口部に第1コンタクト部材を形成する工程を含む、複数の前記コンタクト開口部のそれぞれにコンタクト部材を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記第1コンタクト部材に電気的に接続される第1導電層を形成する工程を含む、複数の導電層を形成する工程と
を有し、
前記第1コンタクト開口部を形成する工程では、前記第1トレンチエミッタ電極、前記トレンチ絶縁膜および前記第1不純物領域に、前記第1主面から前記第2主面に向かって後退したリセス部が形成され、
前記第1コンタクト部材を形成する工程では、前記第1コンタクト部材は、前記リセス部が形成された、前記第1トレンチエミッタ電極および前記第1不純物領域に接触する態様で、前記第1主面から前記第2主面に向かって突き出すように形成され、
前記第1導電層を形成する工程では、前記第1導電層は、前記エミッタ電極として形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1ゲートトレンチを形成する工程では、前記第1ゲートトレンチは、前記第1エミッタトレンチと前記第1ゲートトレンチとの間に、前記半導体基板における前記第1領域が位置するように形成され、
複数の前記不純物領域を形成する工程は、前記半導体基板における前記第1領域において、前記第1主面から前記第1不純物領域の底よりも浅い深さにわたり、第1導電型の第2不純物領域を形成する工程を含み、
前記第1コンタクト部材を形成する工程では、前記第1コンタクト部材は、前記第1トレンチエミッタ電極、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域に接触するように形成され、
複数の前記導電層を形成する工程は、前記第1トレンチゲート電極と前記ゲート電極とを電気的に接続する工程を含む、請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
複数の前記トレンチを形成する工程は、第2エミッタトレンチを形成する工程および第2ゲートトレンチを形成する工程を含み、
前記第2エミッタトレンチを形成する工程では、前記第2エミッタトレンチは、前記第1エミッタトレンチと前記第2エミッタトレンチとの間に、前記半導体基板における前記第1領域が位置するように形成され、
前記第2ゲートトレンチを形成する工程では、前記第2ゲートトレンチは、前記第1ゲートトレンチと前記第2ゲートトレンチとの間に、前記半導体基板における第2領域が位置するように形成され、
複数の前記トレンチ電極を形成する工程は、
前記第2エミッタトレンチ内に、第2トレンチエミッタ電極を形成する工程と、
前記第2ゲートトレンチ内に、第2トレンチゲート電極を形成する工程と
を含み、
複数の前記コンタクト開口部を形成する工程は、前記層間絶縁膜を貫通して、前記半導体基板における前記第2領域に達する第2コンタクト開口部を形成する工程を含み、
複数の前記コンタクト部材を形成する工程は、前記第2コンタクト開口部に、前記エミッタ電極に電気的に接続される第2コンタクト部材を形成する工程を含み、
複数の前記導電層を形成する工程は、前記第1トレンチゲート電極および前記第2トレンチゲート電極のそれぞれと、前記ゲート電極とを電気的に接続する工程を含む、請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
複数の前記コンタクト開口部を形成する工程では、前記第1コンタクト開口部を形成する工程と、前記第2コンタクト開口部を形成する工程とは同時に行われる、請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
複数の前記トレンチを形成する工程は、第3ゲートトレンチを形成する工程を含み、
複数の前記トレンチ電極を形成する工程は、前記第3ゲートトレンチ内に第3トレンチゲート電極を形成する工程を含み、
前記第3ゲートトレンチを形成する工程では、第1幅を有する第1幅部と、前記第1幅よりも広い第2幅部とが形成され、
前記第3ゲートトレンチを形成する工程および前記第3トレンチゲート電極を形成する工程では、前記第3トレンチゲート電極が前記第1トレンチゲート電極と電気的に接続されるように形成され、
前記第3トレンチゲート電極を形成する工程では、前記第1幅部に第1部が形成されるとともに、前記第2幅部に第2部が形成され、
複数の前記コンタクト開口部を形成する工程は、前記層間絶縁膜を貫通して前記第3トレンチゲート電極における前記第2部に達する第3コンタクト開口部を形成する工程を含み、
複数の前記コンタクト部材を形成する工程は、前記第3コンタクト開口部に第3コンタクト部材を形成する工程を含み、
複数の前記導電層を形成する工程は、前記ゲート電極と前記第3コンタクト部材とを電気的に接続する第2導電層を形成する工程を含む、請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
複数の前記コンタクト開口部を形成する工程では、前記第1コンタクト開口部を形成する工程と、前記第3コンタクト開口部を形成する工程とは同時に行われる、請求項14記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記半導体基板の前記第1主面上に周辺素子と電気的に接続される配線を形成する工程を備え、
複数の前記コンタクト開口部を形成する工程は、前記層間絶縁膜を貫通して、前記配線に達する第4コンタクト開口部を形成する工程を含み、
複数の前記コンタクト部材を形成する工程は、前記第4コンタクト開口部に第4コンタクト部材を形成する工程を含み、
複数の前記導電層を形成する工程は、前記第4コンタクト部材を介して前記配線に電気的に接続される第3導電層を形成する工程を含む、請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
複数の前記コンタクト開口部を形成する工程では、前記第1コンタクト開口部を形成する工程と、前記第4コンタクト開口部を形成する工程とは同時に行われる、請求項16記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、たとえば、電子注入促進型のトレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを備えた半導体装置に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
パワー系の半導体装置には、スイッチング素子として、トレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を備えた半導体装置がある。さらに、この半導体装置には、オン電圧を低くするために、IE(Injection Enhancement)効果(電子注入促進効果)を高めた半導体装置がある。
【0003】
この種の半導体装置では、コレクタ側から注入されるホールが、エミッタ(電極)側に抜けるのを抑制する領域が形成されている。これにより、半導体基板におけるドリフト層に蓄積されるホールの濃度が高くなり、エミッタ側から電子の注入が促進されて、電子の濃度も高くなる。キャリア(電子とホール)の濃度が高くなることで、伝導度変調が起こり、オン電圧を低くすることができる。この種の半導体装置では、用途に応じて種々のトレンチゲート電極等の配置パターンが提案されている(特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-29434号公報
【特許文献2】特開2013-140885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置では、オン状態からオフ状態に切り替える際に、ターンオフ損失を低減するために、ターンオフするまでの時間を短くすることが求められている。すなわち、ドリフト層に蓄積されたキャリア(ホール)を、エミッタ(電極)に効率的に排出することが求められている。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付の図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態に係る半導体装置は、エミッタ電極、コレクタ電極およびゲート電極を有するトレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを備えた半導体装置であって、第1導電型の半導体基板と複数のトレンチ電極と複数の不純物領域と層間絶縁膜と複数のコンタクト部材とを有する。第1導電型の半導体基板は、対向する第1主面および第2主面を有し、第1主面上にゲート電極およびエミッタ電極が形成されるとともに、第2主面にコレクタ電極が形成されている。複数のトレンチ電極は、半導体基板の第1主面から第2主面に向かってそれぞれ形成され、エミッタ電極に電気的に接続される第1トレンチエミッタ電極およびゲート電極に電気的に接続される第1トレンチゲート電極を含む。複数の不純物領域は、半導体基板における第1領域に形成された、第1不純物濃度を有する第2導電型の第1不純物領域を含む。層間絶縁膜は、半導体基板の第1主面を覆うように形成されている。複数のコンタクト部材は、層間絶縁膜を貫通するように形成され、エミッタ電極に電気的に接続された第1コンタクト部材を含む。第1トレンチエミッタ電極は、エミッタトレンチ内にトレンチ絶縁膜を介在させて形成されている。半導体基板における第1領域がトレンチ絶縁膜に接触する態様で、第1領域と第1トレンチエミッタ電極との間にトレンチ絶縁膜が介在する。第1不純物領域は、半導体基板の第1領域において、第1主面からの深さが第1深さよりも浅い位置に形成されている。第1トレンチエミッタ電極、トレンチ絶縁膜および第1不純物領域には、第1トレンチエミッタ電極と第1不純物領域との間に跨る態様で、第1主面から第2主面に向かって後退したリセス部が形成されている。リセス部は、第1リセス部と第2リセス部と第3リセス部とを備えている。第1リセス部は、第1不純物領域に形成され、第1主面から、第1深さよりも浅い第2深さに位置する。第2リセス部は、第1トレンチエミッタ電極に形成され、第1主面から、第2深さよりも深く、第1深さよりも浅い第3深さに位置する。第3リセス部は、トレンチ絶縁膜に形成され、第1主面から、第3深さよりも深く、第1深さよりも浅い第4深さに位置する。第1コンタクト部材は、リセス部に接触する態様で、第1主面から第2主面に向かって突き出している。
【0008】
他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、エミッタ電極、コレクタ電極およびゲート電極を有するトレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを備えた半導体装置の製造方法であって、互いに対向する第1主面および第2主面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程と、複数のトレンチを形成する工程と、複数の前記トレンチ内のそれぞれにトレンチ電極を形成する工程と、複数の不純物領域を形成する工程と、半導体基板の第1主面を覆うように層間絶縁膜を形成する工程と、複数のコンタクト開口部を形成する工程と、複数のコンタクト開口部のそれぞれにコンタクト部材を形成する工程と、複数の導電層を形成する工程とを有する。複数のトレンチを形成する工程は、半導体基板における第1主面から第2主面に向かって、第1エミッタトレンチおよび第1ゲートトレンチをそれぞれ形成する工程を含む。複数の不純物領域を形成する工程は、トレンチ絶縁膜に対して第1トレンチエミッタ電極が位置する側とは反対側の、トレンチ絶縁膜に接している半導体基板の第1領域に、第2導電型の第1不純物領域を形成する工程を含む。複数のコンタクト開口部を形成する工程は、第1トレンチエミッタ電極、トレンチ絶縁膜および第1不純物領域に跨る態様で、層間絶縁膜を貫通する第1コンタクト開口部を形成する工程を含む。複数のコンタクト開口部のそれぞれにコンタクト部材を形成する工程は、第1コンタクト開口部に第1コンタクト部材を形成する工程を含む。複数の導電層を形成する工程は、層間絶縁膜上に、第1コンタクト部材に電気的に接続される第1導電層を形成する工程を含む。第1コンタクト開口部を形成する工程では、第1トレンチエミッタ電極、トレンチ絶縁膜および第1不純物領域に、第1主面から前記第2主面に向かって後退したリセス部が形成される。第1コンタクト部材を形成する工程では、第1コンタクト部材は、リセス部が形成された、第1トレンチエミッタ電極および第1不純物領域に接触する態様で、第1主面から第2主面に向かって突き出すように形成される。第1導電層を形成する工程では、第1導電層は、エミッタ電極として形成される。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態に係る半導体装置によれば、蓄積されたキャリアをエミッタ電極に効率的に排出することができる。
【0010】
他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、蓄積されたキャリアをエミッタ電極に効率的に排出することができる半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】各実施の形態に係る半導体装置の一例を示す平面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置の平面構造の一例を示す部分平面図である。
図3】同実施の形態において、図2に示される断面線IIIa-IIIa、断面線IIIb-IIIbおよび断面線IIIc-IIIcのそれぞれにおける断面構造を合わせて示す断面図である。
図4】同実施の形態において、リセス部および共通コンタクト部材の構造を示す部分拡大断面図である。
図5】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図6】同実施の形態において、図5に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図7】同実施の形態において、図6に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図8】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図9】同実施の形態において、図8に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図10】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図11】同実施の形態において、図10に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図12】同実施の形態において、図11に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図13】同実施の形態において、図12に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図14】同実施の形態において、図13に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図15】同実施の形態において、図14に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図16】同実施の形態において、図15に示す工程における部分拡大断面図である。
図17】同実施の形態において、図15および図16に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図18】同実施の形態において、図17に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図19】同実施の形態において、ベース拡散層の深さと絶縁膜の位置との関係に対するオン電圧の依存性を定性的に示すグラフである。
図20】実施の形態2に係る半導体装置の平面構造の一例を示す部分平面図である。
図21】同実施の形態において、図20に示される断面線XXIa-XXIa、断面線XXIb-XXIbおよび断面線XXIc-XXIcのそれぞれにおける断面構造を合わせて示す断面図である。
図22】同実施の形態において、リセス部および共通コンタクト部材の構造を示す部分拡大断面図である。
図23】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
図24】同実施の形態において、図23に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図25】同実施の形態において、図24に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図26】同実施の形態において、図25に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図27】同実施の形態において、図26に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図28】同実施の形態において、図27に示す工程における部分拡大断面図である。
図29】同実施の形態において、図27および図28に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図30】同実施の形態において、図29に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図31】実施の形態3に係る半導体装置の断面構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
IE型のトレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを備えた半導体装置では、用途に応じて種々のトレンチゲート電極等の配置パターンがあることを述べた。たとえば、オン電圧の低減を重視した半導体装置では、GE型の半導体装置がある。GE型とは、ゲート電極に電気的に接続されるトレンチゲート電極と、エミッタ電極に電気的に接続されるトレンチエミッタ電極とが、間隔を隔てて配置されている構造である。
【0013】
また、動作の安定性およびバランス性を重視した半導体装置では、GGEE型の半導体装置がある。GGEE型とは、一のトレンチエミッタ電極と他のトレンチエミッタ電極とが、間隔を隔てて配置され、一のトレンチゲート電極と他のトレンチゲート電極とが、間隔を隔てて配置された構造である。一のトレンチエミッタ電極および他のトレンチエミッタ電極と、一のトレンチゲート電極および他のトレンチゲート電極とは、所定の間隔を隔てて配置されている。
【0014】
さらに、高速性能を重視した半導体装置では、EGE型の半導体装置がある。EGE型とは、一のトレンチエミッタ電極とトレンチゲート電極と他のトレンチエミッタ電極とが、それぞれ間隔を隔てて配置された構造である。以下、具体的に説明する。
【0015】
はじめに、IE型のトレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを備えた半導体装置の全体構造の一例について説明する。図1に示すように、半導体装置SED(半導体基板SUB)では、セル領域CERとゲート配線引き出し領域MGRとが規定されている。
【0016】
セル領域CERには、IE型のトレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタが形成されている。セル領域CERには、セル領域CERを覆うように、エミッタ電極MEEが形成されている。エミッタ電極MEEは、エミッタ電極MEE(半導体基板SUB)を覆う絶縁膜(図示せず)に形成された開口部HK1の底に露出している。
【0017】
ゲート配線引き出し領域MGRは、セル領域CERを取り囲むように配置されている。ゲート配線引き出し領域MGRには、ゲート引き出し配線MGIとゲート電極MGEとが形成されている。ゲート引き出し配線MGIは、ゲート電極MGEに電気的に接続されている。ゲート電極MGEは、ゲート電極MGE(半導体基板SUB)を覆う絶縁膜(図示せず)に形成された開口部HK2の底に露出している。
【0018】
さらに、半導体装置SED(半導体基板SUB)には、たとえば、保護ダイオードまたは温度検知ダイオード等の周辺素子が形成された周辺素子領域PDRが規定されている。
【0019】
実施の形態1
ここでは、GE型の半導体装置SEDの一例について説明する。まず、セル領域CERについて説明する。図2および図3に示すように、セル領域CERでは、トレンチゲート電極TGE(第1トレンチゲート電極)とトレンチエミッタ電極TEE(第1トレンチエミッタ電極)とが、一方向に間隔を隔てて配置されている。トレンチゲート電極TGEとトレンチエミッタ電極TEEとは、一方向と交差する他の方向にそれぞれ延在する。
【0020】
トレンチゲート電極TGEは、トレンチTRC(第1ゲートトレンチ)内に絶縁膜GIFを介在させて形成されている。トレンチエミッタ電極TEEは、トレンチTRC(第1エミッタトレンチ)内に絶縁膜EIF(トレンチ絶縁膜)を介在させて形成されている。トレンチTRCは、N型領域NSR(ドリフト層)を有する半導体基板SUBの第1主面から第2主面に向かって形成されている。
【0021】
トレンチゲート電極TGEとトレンチエミッタ電極TEEとの間に位置する半導体基板SUBの領域(第1領域)には、第1主面から所定の深さにわたり、N+型のソース拡散層SDR(第2不純物領域)が形成されている。そのソース拡散層SDRの底からさらに所定の深さにわたり、P型のベース拡散層BDR(第1不純物領域)が形成されている。ベース拡散層BDRには、P型の不純物濃度がより高いP+層PPR(高濃度不純物領域)が形成されている。ベース拡散層BDRの底(第1深さ)からさらに所定の深さにわたり、N型のホールバリア層HBRが形成されている。ホールバリア層HBRは、トレンチゲート電極TGEおよびトレンチエミッタ電極TEEの底部(下端部)に達する程度に形成されている。ホールバリア層HBRが形成されている領域は、アクティブ領域と称されている。
【0022】
トレンチゲート電極TGEに対して、トレンチエミッタ電極TEEが位置する側とは反対側に位置する半導体基板SUBの領域には、第1主面からトレンチゲート電極TGEの底部(下端部)よりも深い位置にわたり、P型のフローティング拡散層FPRが形成されている。また、トレンチエミッタ電極TEEに対して、トレンチゲート電極TGEが位置する側とは反対側に位置する半導体基板SUBの領域には、第1主面からトレンチエミッタ電極TEEの底部(下端部)よりも深い位置にわたり、P型のフローティング拡散層FPRが形成されている。フローティング拡散層FPRは、インアクティブ領域と称されている。
【0023】
トレンチゲート電極TGE、トレンチエミッタ電極TEEおよびソース拡散層SDR等を覆うように、層間絶縁膜CILが形成されている。層間絶縁膜CILを貫通して、トレンチエミッタ電極TEE、ベース拡散層BDR(P+層PPR)およびソース拡散層SDR等に接触するように、共通コンタクト部材CCNが形成されている。共通コンタクト部材CCNは、バリアメタル膜BMEとタングステンプラグWPGとを含む。
【0024】
トレンチエミッタ電極TEE、ベース拡散層BDRおよび絶縁膜EIFには、第1主面から第2主面に向かって後退したリセス部RCSが形成されている。共通コンタクト部材CCNは、そのリセス部RCSに接触する態様で、第1主面から第2主面に向かって突き出している。トレンチエミッタ電極TEEとトレンチゲート電極TGEとの間隔L1は、共通コンタクト部材CCNが、トレンチゲート電極TGEに接触しない間隔に設定されている。この構造については、後述する。
【0025】
層間絶縁膜CILの表面(上面)に接触するように、エミッタ電極MEE(第1導電層)が形成されている。共通コンタクト部材CCNはエミッタ電極MEEに電気的に接続されている。エミッタ電極MEEは、たとえば、アルミニウム膜等から形成されている。
【0026】
一方、半導体基板SUBの第2主面側には、P型のコレクタ拡散層CDRとN型のバッファ層NBRとが形成されている。フローティング拡散層FPRとバッファ層NBRとの間に、ドリフト層としてのN型領域NSRが位置する。コレクタ拡散層CDR(半導体基板SUBの第2主面)に接触するように、コレクタ電極BEL(裏面電極)が形成されている。
【0027】
次に、ゲート配線引き出し領域MGRについて説明する。ゲート配線引き出し領域MGRでは、トレンチゲート引き出し電極TGI(第3トレンチゲート電極)が形成されている。トレンチゲート引き出し電極TGIは、トレンチTRCW内に絶縁膜GIFを介在させて形成されている。図2および図3に示すように、トレンチゲート引き出し電極TGIは、トレンチゲート電極TGEと電気的に接続されている。トレンチゲート引き出し電極TGI(トレンチTRCW(第3ゲートトレンチ))は、トレンチゲート電極TGE(トレンチTRC)の幅と同じ第1幅W1に設定されている第1部TGNと、その幅よりも広い第2幅W2に設定されている第2部TGWとを有する。
【0028】
層間絶縁膜CILを貫通して、トレンチゲート引き出し電極TGIにおける第2部TGWに接触するように、ゲート引き出しコンタクト部材GCNが形成されている。ゲート引き出しコンタクト部材GCNは、バリアメタル膜BMEとタングステンプラグWPGとを含む。層間絶縁膜CILの表面(上面)に接触するように、ゲート引き出し配線MGI(第2導電層)が形成されている。ゲート引き出しコンタクト部材GCNは、ゲート引き出し配線MGIに電気的に接続されている。ゲート引き出し配線MGIは、たとえば、アルミニウム膜等から形成されている。
【0029】
次に、周辺素子領域PDRについて説明する。周辺素子領域PDRでは、半導体基板SUBの第1主面に、絶縁膜IFおよびシリコン酸化膜HDLを介在させて配線PICが形成されている。配線PICは、たとえば、保護ダイオードまたは温度検知ダイオード等の周辺素子(図示せず)に電気的に接続されている。層間絶縁膜CILを貫通して、配線PICに接触するように、コンタクト部材DCNが形成されている。層間絶縁膜CILの表面には、コンタクト部材DCNを介して、配線PICと電気的に接続される導電層MPL(第3導電層)が形成されている。
【0030】
次に、共通コンタクト部材CCNの構造について、より詳細に説明する。図4に示すように、トレンチエミッタ電極TEE、ベース拡散層BDR(ソース拡散層SDR)、および、トレンチエミッタ電極TEEとベース拡散層BDR(ソース拡散層SDR)との間に位置する絶縁膜EIFには、第1主面から第2主面に向かって後退したリセス部RCSが形成されている。
【0031】
リセス部RCSは、トレンチエミッタ電極TEEとベース拡散層BDR(ソース拡散層SDR)との間に跨るように形成されている。リセス部RCSは、ベース拡散層BDR(ソース拡散層SDR)に形成された第1リセス部RCS1と、トレンチエミッタ電極TEEに形成された第2リセス部RCS2と、絶縁膜EIFに形成された第3リセス部RCS3とを有している。
【0032】
第1リセス部RCS1は、第1主面から深さD1(第2深さ)に位置する。第2リセス部RCS2は、第1主面から深さD1よりも深い深さD2(第3深さ)に位置する。第3リセス部RCS3は、第1主面から深さD2よりも深く、深さD4(第1深さ)よりも浅い深さD3(第4深さ)に位置する。共通コンタクト部材CCNは、第1リセス部RCS1、第2リセス部RCS2および第3リセス部RCS3に接触する態様で、第1主面から第2主面に向かって突き出した突き出し構造を有する。
【0033】
絶縁膜EIFに形成された第3リセス部RCS3の深さD3が、トレンチエミッタ電極TEEに形成された第2リセス部RCS2の深さD2よりも深いことで、共通コンタクト部材CCNとベース拡散層BDR(P+層PPR)との接触面積が拡げられて、キャリア(ホール)を効率的に排除させることができる。GE型の半導体装置SEDは、上記のように構成される。
【0034】
次に、上述した半導体装置SEDの製造方法の一例について説明する。図5に示すように、半導体基板SUBの第1主面を覆うように、シリコン酸化膜SOF1が形成される。次に、シリコン酸化膜SOF1が形成された状態で、P型の不純物を注入することにより、フローティング拡散層となるP型領域PRが形成される。また、N型の不純物を注入することにより、ホールバリア層となるN型領域NRが形成される。
【0035】
次に、トレンチを形成するための、ハードマスク(図示せず)が形成される。次に、そのハードマスクをエッチングマスクとして、半導体基板SUBにエッチング処理を施すことにより、トレンチTRC(第1エミッタトレンチ、第1ゲートトレンチ)およびトレンチTRCW(第3ゲートトレンチ)が形成される(図6参照)。その後、ハードマスクが除去される。これにより、図6に示すように、トレンチTRCおよびトレンチTRCWが形成された半導体基板SUBの第1主面が露出する。トレンチTRCWは、トレンチTRCの幅よりも広い幅を有するように形成されている。
【0036】
次に、所定の熱処理を施すことにより、P型領域PRのP型の不純物が拡散することで、フローティング拡散層FPRが形成される。また、N型領域NRのN型の不純物が拡散することで、ホールバリア層HBRが形成される(図7参照)。次に、図7に示すように、熱酸化処理を施すことにより、トレンチTRCおよびトレンチTRCWのそれぞれの内壁面を含む半導体基板SUBの第1主面に、絶縁膜IFが形成される。
【0037】
次に、トレンチTRC内およびトレンチTRCW内のそれぞれに充填する態様で、半導体基板SUBを覆うようにポリシリコン膜PSFが形成される。このとき、相対的に幅が太いトレンチTRCWを覆うポリシリコン膜PSFの位置は、相対的に幅が細いトレンチTRCを覆うポリシリコン膜PSFの位置よりも低くなる。
【0038】
次に、ポリシリコン膜PSFの全面にエッチング処理を施すことにより、半導体基板SUBの第1主面上に位置するポリシリコン膜PSFの部分が除去される。さらに、ポリシリコン膜PSFにオーバーエッチング処理が施される。これにより、図8に示すように、トレンチTRC内およびトレンチTRCW内のそれぞれに残されるポリシリコン膜PSFの上面が、半導体基板SUBの第1主面よりも低い位置になる。
【0039】
このとき、ポリシリコン膜PSFが形成された状態で、トレンチTRCWを覆うポリシリコン膜PSFの位置が、トレンチTRCを覆うポリシリコン膜PSFの位置よりも低い。このため、全面エッチング処理が施された後では、トレンチTRCW内に残されるポリシリコン膜PSFの上面の位置は、トレンチTRC内に残されるポリシリコン膜PSFの上面の位置よりも低くなる。ここで、この高さ(厚さ)の差に相当する厚さを厚さTKとする。
【0040】
次に、図9に示すように、絶縁膜IFを覆うように、シリコン酸化膜HDLが形成される。次に、シリコン酸化膜HDLを覆うように、ポリシリコン膜PSF2が形成される。次に、写真製版処理を施すことにより、配線をパターニングするためのフォトレジストパターンPHR1が形成される。
【0041】
次に、図10に示すように、フォトレジストパターンPHR1をエッチングマスクとして、ポリシリコン膜PSF2にエッチング処理を施すことにより、配線PICが形成される。次に、フォトレジストパターンPHR1をエッチングマスクとして、シリコン酸化膜HDLにエッチング処理を施し、さらに、絶縁膜IFにエッチング処理を施すことによって、半導体基板SUBの第1主面上に位置するシリコン酸化膜HDLの部分と絶縁膜IFの部分とが除去される。
【0042】
これにより、トレンチTRC内に絶縁膜EIF(絶縁膜IF)を介在させてトレンチエミッタ電極TEEが形成される。また、トレンチTRC内に絶縁膜GIF(絶縁膜IF)を介在させてトレンチゲート電極TGEが形成される。さらに、トレンチTRCW内に絶縁膜GIF(絶縁膜IF)を介在させてトレンチゲート引き出し電極TGIが形成される。その後、フォトレジストパターンPHR1が除去される。
【0043】
次に、図11に示すように、半導体基板SUBの第1主面を覆うように、シリコン酸化膜SOF2が形成される。次に、所定の写真製版処理を施すことにより、ソース拡散層およびベース拡散層を形成するためのフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとして、P型の不純物が注入される。さらに、N型の不純物が注入される。その後、フォトレジストパターンが除去される。
【0044】
これにより、トレンチエミッタ電極TEEとトレンチゲート電極TGEとの間に位置する半導体基板SUBの領域に、ソース拡散層SDRとベース拡散層BDRとが形成される。ベース拡散層BDRは、第1主面から所定の深さ(第1深さ)よりも浅い位置に形成される。ソース拡散層SDRは、第1主面からベース拡散層BDRの底(第1深さ)よりも浅い位置にわたり形成される。その後、シリコン酸化膜SOF2が除去される。
【0045】
次に、半導体基板SUBの第1主面を覆うように、層間絶縁膜CILが形成される(図12参照)。層間絶縁膜CILとして、たとえば、PSG膜(Phospho Silicate Glass)が形成される。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、層間絶縁膜CILにコンタクト開口部を形成するためのフォトレジストパターンPHR2が形成される(図12参照)。
【0046】
次に、図12に示すように、フォトレジストパターンPHR2をエッチングマスクとして、層間絶縁膜CILにエッチング処理が施される。このエッチング処理によって、コンタクト開口部CH1(第1コンタクト開口部)、コンタクト開口部CH2(第3コンタクト開口部)およびコンタクト開口部CH3(第4コンタクト開口部)が、同時に形成される。
【0047】
ここで、コンタクト開口部の開口幅に対して開口深さが大きく、アスペクト比(開口深さDC/開口幅WC:1.4~2.5程度)が高いため、エッチング処理として異方性エッチング処理が適用される。この異方性エッチングでは、半導体基板SUB(トレンチエミッタ電極TEE)のエッチングレートに対する、層間絶縁膜CIL(絶縁膜EIF)のエッチングレートのエッチング選択比が高い条件が設定される。この異方性エッチング処理によって、コンタクト開口部CH1等は、テーパ状に形成される。
【0048】
また、上述したように、トレンチTRCW内に形成されているトレンチゲート引き出し電極TGI(ポリシリコン膜PSF)の上面の位置は、トレンチTRC内に形成されているトレンチエミッタ電極TEE(ポリシリコン膜PSF)の上面の位置よりも、厚さTK分低い位置にある。
【0049】
このため、この異方性エッチングでは、トレンチエミッタ電極TEEの上面が露出した時点では、トレンチゲート引き出し電極TGIは、まだ、厚さTK分の層間絶縁膜CILに覆われた状態にある。そうすると、トレンチエミッタ電極TEEが露出した後、トレンチゲート引き出し電極TGIが露出するまでの間に、トレンチエミッタ電極TEEとベース拡散層BDR(半導体基板SUB)との間に介在する絶縁膜EIFもエッチングされることになる。これにより、絶縁膜EIFの上面が後退し、第3リセス部RCS3が形成されて、露出するベース拡散層BDRの面積が拡がる。その後、フォトレジストパターンPHR2が除去される。
【0050】
次に、図13に示すように、コンタクト開口部CH1の底に露出したトレンチエミッタ電極TEE、ベース拡散層BDRおよびソース拡散層SDRに、異方性エッチング処理が施される。これにより、トレンチエミッタ電極TEEの上面の一部が後退するとともに、ベース拡散層BDRの上面の一部が後退する。このとき、当初、トレンチエミッタ電極TEEの上面が、半導体基板SUBの第1主面(ベース拡散層BDRの上面)よりも低い位置にあることで、後退したトレンチエミッタ電極TEEの上面は、後退したベース拡散層BDRの上面よりも低い位置になる。
【0051】
この一連の異方性エッチングによって、コンタクト開口部CH1の底には、絶縁膜EIFの一部とシリコン(半導体基板SUB、ポリシリコン)の一部等が残渣RESとして残ることになる。次に、ドライエッチング処理を施すことにより、残渣RESが除去される。こうして、リセス部RCSが形成される(図14参照)。
【0052】
次に、図14に示すように、コンタクト開口部CH1~コンタクト開口部CH3を介して、P+型の不純物注入される。このとき、コンタクト開口部CH1の底(リセス部RCS)に露出しているP型のベース拡散層BDRに、ベース拡散層BDRの不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するP+層PPRが形成される。これにより、共通コンタクト部材CCNとP+層PPR(ベース拡散層BDR)との接触抵抗が低減される。
【0053】
一方、コンタクト開口部CH1の底では、リセス部RCSに露出しているN型のソース拡散層SDRの側面にもP+型の不純物が注入されることになる。このため、共通コンタクト部材CCNが接触することになるソース拡散層SDRのN型の不純物がP+型の不純物によって中和されてしまい、ソース拡散層SDRと共通コンタクト部材CCNとの接触抵抗が上昇するおそれがある。
【0054】
そこで、次に、図15に示すように、層間絶縁膜CILにウェットエッチング処理を施すことにより、コンタクト開口部CH1等の開口幅が拡げられる。図16に示すように、コンタクト開口部CH1の開口幅が拡げられることで、P+型の不純物PMが注入されていないソース拡散層SDRの上面が露出することになる。これにより、共通コンタクト部材CCNとソース拡散層SDRとの接触抵抗が低減される。
【0055】
次に、図17に示すように、コンタクト開口部CH1~CH3の内壁面を含む層間絶縁膜CILを覆うようにバリアメタル膜BMEが形成される。バリアメタル膜BMEとして、たとえば、チタンナイトライド(TiN)とチタン(Ti)との積層膜が形成される。次に、バリアメタル膜BMEを覆うように、タングステン膜WFが形成される。次に、タングステン膜WF等に全面エッチバック処理を施すことにより、層間絶縁膜CILの上面上に位置するタングステン膜WFとバリアメタル膜BMEとが除去される。
【0056】
これにより、図18に示すように、コンタクト開口部CHI内に残されたタングステン膜WFおよびバリアメタル膜BMEによって、共通コンタクト部材CCNが形成される。コンタクト開口部CH2内に残されたタングステン膜WFおよびバリアメタル膜BMEによって、ゲート引き出しコンタクト部材GCNが形成される。コンタクト開口部CH3内に残されたタングステン膜WFおよびバリアメタル膜BMEによって、コンタクト部材DCNが形成される。
【0057】
その後、層間絶縁膜CILを覆うように、たとえば、アルミニウム膜(図示せず)を形成し、そのアルミニウム膜をパターニングすることで、エミッタ電極MEE、ゲート引き出し配線MGIおよびゲート電極MGE等が形成される(図3等参照)。次に、半導体基板SUBの第2主面側に、N型のバッファ層NBRとP型のコレクタ拡散層CDRとが形成される。さらに、コレクタ電極BEL(裏面電極)が形成されて、半導体装置が完成する。
【0058】
次に、上述した半導体装置SEDの動作について説明する。まず、トレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオンさせる際には、ゲート電極MGEにしきい値電圧以上の電圧が印加される。これにより、ソース拡散層SDRからチャネルを経て半導体基板SUBにおけるN型領域NSR(ドリフト層)へ電子が注入されて、N型領域NSRとコレクタ拡散層CDRとのPN接合が順バイアスされた状態になり、コレクタ拡散層CDRからN型領域NSRへホールが注入される。
【0059】
注入されたホールは、P型のフローティング拡散層FPRによって、ソース拡散層SDR(エミッタ)側へ抜けるのが阻止されて、N型領域NSRとフローティング拡散層FPRとにホールが蓄積されて、ホールの濃度が高くなる。N型領域NSR等におけるホールの濃度が高くなると、ソース拡散層SDRからの電子の注入が促進されて、電子の濃度も高くなる。こうして、N型領域NSR等におけるキャリアの濃度が高くなることで、伝導度変調が起こり、オン状態になる。
【0060】
次に、トレンチ絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをオフさせる際には、ゲート電極MGEにしきい値電圧よりも低い電圧が印加される。これにより、チャネルが消滅する。N型領域NSR等に蓄積されたキャリア(ホール)は、トレンチエミッタ電極TEE側に形成された寄生PチャネルMOSFET(フローティング拡散層FPR、エミッタ電位のトレンチエミッタ電極TEE、ベース拡散層BDR等)によって、エミッタ電極MEEに排出されて、オフ状態になる。
【0061】
上述した半導体装置SEDでは、ベース拡散層BDR等とエミッタ電極MEEとの間を電気的に接続する共通コンタクト部材CCNは、リセス部RCSに接触する。リセス部RCSは、トレンチエミッタ電極TEE、絶縁膜EIFおよびベース拡散層BDR等に跨る態様で形成されている。リセス部RCSは、ベース拡散層BDRに形成された第1リセス部RCS1と、トレンチエミッタ電極TEEに形成された第2リセス部RCS2と、絶縁膜EIFに形成された第3リセス部RCS3とを有している。
【0062】
第1リセス部RCS1、第2リセス部RCS2および第3リセス部RCS3では、第1リセス部RCS1および第2リセス部RCS2に対して、第3リセス部RCS3が最も深い位置(第4深さ)にある。このため、絶縁膜EIFの上面が下に下がっている(後退している)分、共通コンタクト部材CCNとベース拡散層BDRとの接触面積が拡げられるとともに、共通コンタクト部材CCNとトレンチエミッタ電極TEEとの接触面積が拡げられて、接触抵抗が低減する。
【0063】
これにより、N型領域NSR等に蓄積されたキャリア(ホール)が、ベース拡散層BDRから共通コンタクト部材CCNを経てエミッタ電極MEEに効率的に排出されることになる。その結果、ターンオフするまでの時間が短くなり、ターンオフ損失の低減に寄与することができる。
【0064】
また、絶縁膜EIFに形成される第3リセス部RCS3の位置を、第1リセス部RCS1および第2リセス部RCS2のそれぞれの位置よりも深い位置にまで後退させるには、層間絶縁膜CILにコンタクト開口部を形成する際のオーバーエッチングによって形成することができる。
【0065】
上述したように、図18に示す工程では、トレンチゲート引き出し電極TGI(ポリシリコン膜PSF)の上面の位置は、トレンチエミッタ電極TEE(ポリシリコン膜PSF)の上面の位置よりも、厚さTK分低い位置にある。
【0066】
これにより、トレンチエミッタ電極TEEが露出した後、トレンチゲート引き出し電極TGIが露出するまでの間に絶縁膜EIFもエッチングされることになり、新たな工程を追加することなく、絶縁膜EIFの上面の位置を下げる(後退させる)ことができる。
【0067】
また、上述したように、共通コンタクト部材CCNは、N型のソース拡散層SDRとは、ソース拡散層SDRの上面において接触している部分を含む。図14に示す工程において、P+層PPRを形成する際に、露出したN型のソース拡散層SDRの側面にP型の不純物が注入されてしまい、N型の不純物がP型の不純物によって中和されることになる。
【0068】
そこで、図15に示す工程において、コンタクト開口部CH1等の開口幅を拡げることで、P型の不純物が注入されていないソース拡散層SDRの上面が露出し、そのース拡散層SDRの上面に共通コンタクト部材CCNが接触することで、接触抵抗の低減を図ることができる。
【0069】
なお、図4に示すように、絶縁膜EIFの上端の位置(深さD3)は、ベース拡散層BDRの底(深さD4)よりも浅い位置になるように調整する必要がある。このことについて説明する。図19に、深さD3および深さD4と、オン電圧Vsatとの関係を定性的な関係をグラフとして示す。
【0070】
図19に示すように、絶縁膜EIFの上端の位置(深さD3)が、ベース拡散層BDRの底(深さD4)よりも浅い位置にある場合(深さD3<深さD4)には、オン電圧(ゲート電極がオンした状態で、定格電流を流すために必要なコレクタ電圧)は、一定の値になる。
【0071】
ところが、絶縁膜EIFの上端の位置(深さD3)が、ベース拡散層BDRの底(深さD4)よりも深い位置にある場合(深さD3>さD4)には、絶縁膜EIFの上端の位置(深さD3)が深くなるにしたがって、オン電圧Vsatが徐々に高くなる。すなわち、ホールが、共通コンタクト部材CCNを直接通って抜けてしまうことになる。
【0072】
オン電圧Vsatは、低い方が望ましいことから、絶縁膜EIFのエッチングでは、絶縁膜EIFの上端の位置(深さD3)が、ベース拡散層BDRの底(深さD4)よりも深くならないようにする必要がある。この場合、エッチングのばらつきとイオン注入のばらつきとでは、エッチングのばらつきは、イオン注入のばらつきよりも大きいことから、ベース拡散層BDRの深さを制御する必要がある。
【0073】
実施の形態2
ここでは、GGEE型の半導体装置の一例について説明する。GGEE型の半導体装置は、安定した動作等が要求される用途に適用される。まず、セル領域CERについて説明する。図20および図21に示すように、一のトレンチエミッタ電極TEE(第1トレンチエミッタ電極)と他のトレンチエミッタ電極TEE(第2トレンチエミッタ電極)とが、一方向に距離を隔てて配置されている。一のトレンチエミッタ電極TEEと他のトレンチエミッタ電極TEEとの間隔は、間隔L2である。一のトレンチエミッタ電極TEEと他のトレンチエミッタ電極TEEとは、一方向と交差する他の方向にそれぞれ延在する。
【0074】
一のトレンチゲート電極TGE(第1トレンチゲート電極)と他のトレンチゲート電極TGE(第2トレンチゲート電極)とが、一方向に距離を隔てて配置されている。一のトレンチゲート電極TGEと他のトレンチゲート電極TGEとの間隔は、間隔L3である。一のトレンチゲート電極TGEと他のトレンチゲート電極TGEとは、一方向と交差する他の方向にそれぞれ延在する。
【0075】
また、一のトレンチエミッタ電極TEEおよび他のトレンチエミッタ電極TEEと、一のトレンチゲート電極TGEおよび他のトレンチゲート電極TGEとは、一方向に距離を隔てて配置されている。
【0076】
一のトレンチエミッタ電極TEEと他のトレンチエミッタ電極TEEとの間に位置する半導体基板SUBの領域(第1領域)には、第1主面から所定の深さ(第1深さ)にわたり、P型のベース拡散層BDRが形成されている。ベース拡散層BDRには、P型の不純物濃度がより高いP+層PPRが形成されている。
【0077】
一のトレンチゲート電極TGEおよび他のトレンチゲート電極TGEとの間に位置する半導体基板SUBの領域(第2領域)には、第1主面から所定の深さにわたり、N+型のソース拡散層SDR(第3不純物領域)が形成されている。そのソース拡散層SDRの底からさらに所定の深さ(第1深さ)にわたり、P型のベース拡散層BDR(第4不純物領域)が形成されている。
【0078】
半導体基板SUBの第1主面を覆うように、層間絶縁膜CILが形成されている。層間絶縁膜CILを貫通するように。共通コンタクト部材CCNとゲートコンタクト部材GDCとが形成されている。図22に示すように、一のトレンチエミッタ電極TEE、ベース拡散層BDRおよび絶縁膜EIFには、第1主面から第2主面に向かって後退したリセス部RCSが形成されている。
【0079】
リセス部RCSは、トレンチエミッタ電極TEEとベース拡散層BDRとの間に跨るように形成されている。リセス部RCSは、ベース拡散層BDRに形成された第1リセス部RCS1と、トレンチエミッタ電極TEEに形成された第2リセス部RCS2と、絶縁膜EIFに形成された第3リセス部RCS3とを有している。
【0080】
図22に示すように、第1リセス部RCS1は、第1主面から深さD1(第2深さ)に位置する。第2リセス部RCS2は、第1主面から深さD1よりも深い深さD2(第3深さ)に位置する。第3リセス部RCS3は、第1主面から深さD2よりも深く、深さD4(第1深さ)よりも浅い深さD3(第4深さ)に位置する。共通コンタクト部材CCNは、第1リセス部RCS1、第2リセス部RCS2および第3リセス部RCS3に接触する態様で、第1主面から第2主面に向かって突き出した突き出し構造を有する。
【0081】
一方、図21に示すように、ゲートコンタクト部材GDCは、半導体基板SUBの領域(第2領域)に形成されたソース拡散層SDRおよびベース拡散層BDRに接するように形成されている。
【0082】
また、互いに隣り合う一のトレンチエミッタ電極TEEと他のトレンチエミッタ電極TEEとの間隔L2は、前述した半導体装置SEDにおけるトレンチゲート電極TGEとトレンチエミッタ電極TEEとの間隔L1より狭くてもよい。これは、共通コンタクト部材CCNが、他のトレンチエミッタ電極TEEに接触しても構わないからである。なお、これ以外の構成については、図2および図3に示す半導体装置SEDの構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0083】
次に、上述した半導体装置SEDの製造方法の一例について説明する。トレンチゲート電極TGE(トレンチTRC(第1ゲートトレンチ、第2ゲートトレンチ、第3ゲートトレンチ))およびトレンチエミッタ電極TEE(トレンチTRC(第1エミッタトレンチ、第2エミッタトレンチ))の配置パターンが、前述した半導体装置SEDにおけるトレンチゲート電極TGEおよびトレンチエミッタ電極TEEの配置パターンと異なるだけで、前述した半導体装置SEDの製造方法と実質的に同じ製造方法によって、半導体装置SEDが製造される。
【0084】
図5図10に示す工程と実質的に同じ工程を経た後、図23に示すように、半導体基板SUBの第1主面を覆うように、シリコン酸化膜SOF2が形成される。次に、所定の写真製版処理を施すことにより、ベース拡散層BDRを形成するためのフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとして、P型の不純物を注入することにより、ベース拡散層BDRが形成される。
【0085】
次に、そのフォトレジストパターンが除去された後、所定の写真製版処理を施すことにより、ソース拡散層SDRを形成するためのフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとして、N型の不純物を注入することにより、ソース拡散層SDRが形成される。その後、そのフォトレジストパターンが除去される。
【0086】
これにより、互いに隣り合う一のトレンチエミッタ電極TEEと他のトレンチエミッタ電極との間に位置する半導体基板SUBの領域に、ベース拡散層BDRが形成される。また、互いに隣り合う一のトレンチゲート電極TGEと他のトレンチゲート電極TGEとの間に位置する半導体基板SUBの領域に、ベース拡散層BDRとソース拡散層SDRとが形成される。その後、シリコン酸化膜SOF2が除去される。
【0087】
次に、半導体基板SUBの第1主面を覆うように、層間絶縁膜CILが形成される(図24参照)。次に、所定の写真製版処理を施すことにより、層間絶縁膜CILにコンタクト開口部を形成するためのフォトレジストパターンPHR2が形成される。次に、図24に示すように、フォトレジストパターンPHR2をエッチングマスクとして、層間絶縁膜CILにエッチング処理が施される。このエッチング処理によって、コンタクト開口部CH1(第1コンタクト開口部)、コンタクト開口部CH2(第3コンタクト開口部)、コンタクト開口部CH3(第4コンタクト開口部)およびコンタクト開口部CH4(第2コンタクト開口部)が、同時に形成される。
【0088】
このとき、図12に示す工程について説明したように、アスペクト比(開口深さDC/開口幅WC:1.4~2.5程度)が高いため、エッチング処理として異方性エッチング処理が適用される。この異方性エッチング処理によって、コンタクト開口部CH1等は、テーパ状に形成される。また、トレンチゲート引き出し電極TGI(ポリシリコン膜PSF)の上面の位置は、トレンチエミッタ電極TEE(ポリシリコン膜PSF)の上面の位置よりも、厚さTK分低い位置にあるため、その厚さTK分に相当する分をエッチングする間に、絶縁膜EIFの上面が下がり(後退)、露出するベース拡散層BDRの面積が拡がる。その後、フォトレジストパターンPHR2が除去される。
【0089】
次に、図13に示す工程と同様に、異方性エッチング処理が施される。これにより、図25に示すように、コンタクト開口部CH1の底に露出したトレンチエミッタ電極TEEの上面が後退するとともに、ベース拡散層BDRの上面が後退する。また、このとき、コンタクト開口部CH4の底では、ソース拡散層SDRがエッチングされて、ベース拡散層BDRも露出する。その後、ドライエッチング処理を施すことにより、コンタクト開口部CH1の底に残る残渣RESが除去される。
【0090】
次に、図14に示す工程と同様に、P+型の不純物が注入される。これにより、図26に示すように、P型のベース拡散層BDRに、P+層PPRが形成される。次に、図15に示す工程と同様に、層間絶縁膜CILにウェットエッチング処理が施される。これにより、図27に示すように、コンタクト開口部CH1およびコンタクト開口部CH4等の開口幅が拡げられる。図28に示すように、コンタクト開口部CH1の底には、共通コンタクト部材CCNが接触することになるリセス部RCSが形成される。また、このとき、コンタクト開口部CH4の底では、開口幅が拡げられることで、P+型の不純物が注入されていないソース拡散層SDRの上面が露出する。
【0091】
次に、図17に示す工程と同様に、図29に示すように、コンタクト開口部CH1~CH4の内壁面を含む層間絶縁膜CILを覆うようにバリアメタル膜BMEが形成される。次に、バリアメタル膜BMEを覆うように、タングステン膜WFが形成される。次に、タングステン膜WF等に全面エッチバック処理を施すことにより、層間絶縁膜CILの上面上に位置するタングステン膜WFとバリアメタル膜BMEとが除去される。
【0092】
これにより、図30に示すように、コンタクト開口部CHI内に共通コンタクト部材CCNが形成される。コンタクト開口部CH2内にゲート引き出しコンタクト部材GCNが形成される。コンタクト開口部CH3内にコンタクト部材DCNが形成される。コンタクト開口部CH4内にゲートコンタクト部材GDCが形成される。その後、エミッタ電極MEE、ゲート引き出し配線MGIおよびゲート電極MGE等を形成する工程を経て、半導体装置SEDが完成する。
【0093】
上述した半導体装置SEDでは、図22に示すように、リセス部RCSは、ベース拡散層BDRに形成された第1リセス部RCS1と、トレンチエミッタ電極TEEに形成された第2リセス部RCS2と、絶縁膜EIFに形成された第3リセス部RCS3とを有している。第1リセス部RCS1および第2リセス部RCS2に対して、第3リセス部RCS3が最も深い位置(第4深さ)にある。
【0094】
このため、絶縁膜EIFの上面が下に下がっている(後退している)分、共通コンタクト部材CCNとベース拡散層BDRとの接触面積が拡げられるとともに、共通コンタクト部材CCNとトレンチエミッタ電極TEEとの接触面積が拡げられて、接触抵抗が低減する。
【0095】
これにより、N型領域NSR等に蓄積されたキャリア(ホール)が、ベース拡散層BDRから共通コンタクト部材CCNを経てエミッタ電極MEEに効率的に排出されることになる。その結果、ターンオフするまでの時間が短くなり、ターンオフ損失の低減に寄与することができる。
【0096】
また、コンタクト開口部CH4の底では、開口幅を拡げることによって、P+型の不純物が注入されていないソース拡散層SDRの上面が露出し、ゲートコンタクト部材GDCとソース拡散層SDRとの接触抵抗の低減を図ることができる。
【0097】
実施の形態3
ここでは、EGE型の半導体装置の一例について説明する。EGE型の半導体装置SEDは、高速性が要求される用途に適用される。図31に示すように、セル領域CERでは、一のトレンチエミッタ電極TEE(第1トレンチエミッタ電極)、トレンチゲート電極TGE(第1トレンチゲート電極)および他のトレンチエミッタ電極TEE(第3トレンチエミッタ電極)とが形成されている。
【0098】
一のトレンチエミッタ電極TEE、トレンチゲート電極TGEおよび他のトレンチエミッタ電極TEEは、一のトレンチエミッタ電極TEEと他のトレンチエミッタ電極TEEとの間に、トレンチゲート電極TGEが位置する態様で、互いに距離(間隔L1)を隔てて形成されている。
【0099】
一のトレンチエミッタ電極TEE、ベース拡散層BDRおよび絶縁膜EIFに、一のリセス部RCSが形成されている。他のトレンチエミッタ電極TEE、ベース拡散層BDRおよび絶縁膜EIFに、他のリセス部RCSが形成されている。一のリセス部RCSと他のリセス部RCSとは、トレンチゲート電極TGEを挟んでほぼ対称(線対象)に形成されている。一のリセス部RCSおよび他のリセス部RCSは、図4に示すリセス部RCSと同様の構造を有する。
【0100】
なお、これ以外の構成については、図3等に示される半導体装置SEDの構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0101】
次に、上述した半導体装置SEDの製造方法について説明する。トレンチゲート電極TGEおよびトレンチエミッタ電極TEEの配置パターンが、図3等に示す半導体装置SEDにおけるトレンチゲート電極TGEおよびトレンチエミッタ電極TEEの配置パターンと異なるだけで、実施の形態1において説明した半導体装置SEDの製造方法と実質的に同じ製造方法によって、半導体装置SEDが製造される。
【0102】
上述した半導体装置SEDでは、実施の形態1において説明したのと同様に、第1主面から第2主面に向かって後退したリセス部RCSが形成され、そのリセス部RCSに共通コンタクト部材CCNが接触している。
【0103】
このため、共通コンタクト部材CCNとベース拡散層BDRとの接触面積が拡げられて、接触抵抗が低減する。これにより、N型領域NSR等に蓄積されたキャリア(ホール)が、ベース拡散層BDRから共通コンタクト部材CCNを経てエミッタ電極MEEに効率的に排出されることになる。その結果、ターンオフするまでの時間が短くなり、ターンオフ損失の低減に寄与することができる。
【0104】
なお、各実施の形態において説明した半導体装置およびその製造方法については、必要に応じて種々組み合わせることが可能である。また、この組み合わせに応じた請求項の従属関係が予定される。
【0105】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0106】
SED 半導体装置、CER セル領域、MGR ゲート配線引き出し領域、PDR 周辺素子領域、MEE エミッタ電極、MGE ゲート電極、MGI ゲート引き出し配線、SUB 半導体基板、TRC トレンチ、GIF 絶縁膜、TGE トレンチゲート電極、EIF 絶縁膜、TEE トレンチエミッタ電極、SDR ソース拡散層、BDR ベース拡散層、PPR P+層、HBR ホールバリア層、FPR フローティング拡散層、NBR Nバッファ層、CDR コレクタ拡散層、NSR N型領域、BEL コレクタ電極、CIL 層間絶縁膜、 CH1 コンタクト開口部、CCN 共通コンタクト部材、WPG タングステンプラグ、BME バリアメタル膜、RCS リセス部、RCS1 第1リセス部、RCS2 第2リセス部、RCS3 第3リセス部、GDC ゲートコンタクト部材、CH2 コンタクト開口部、GCN ゲート引き出しコンタクト部材、TGI トレンチゲート引き出し電極、TGN 第1部、TGW 第2部、TRCW トレンチ、CH3 コンタクト開口部、DCN コンタクト部材、PIC 配線、MPL 導電層、SOF1 シリコン酸化膜、NR N型領域、PR P型領域、IF 絶縁膜、PSF ポリシリコン膜、TK 厚さ、HDL シリコン酸化膜、PSF2 ポリシリコン膜、PHR1 フォトレジスト、SOF2 シリコン酸化膜、PHR2 フォトレジスト、RES 残渣、PM P型不純物、WF タングステン膜、W1 第1幅、W2 第2幅、L1、L2、L3 間隔、WC 開口幅、DC 開口深さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31