(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157672
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231019BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/14 607
B41J2/14 605
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067733
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 祐司
(72)【発明者】
【氏名】宮原 崇
(72)【発明者】
【氏名】野元 実咲希
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056HA06
2C057AG44
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性に優れた液体吐出ヘッドおよび記録装置を提供する。
【解決手段】本開示による液体吐出ヘッドは、流路部材と、リザーバと、補強板とを有する。流路部材は、液滴を吐出するノズルおよび前記ノズルに繋がる加圧室を有する。リザーバは、加圧室に液体を供給する。リザーバは、下流側から順に、複数の板状部材が積層された第1部位と、板状部材の積層方向と直交する方向における幅が第1部位よりも大きい第2部位とを有する。補強板は、第1部位の側面に主面が位置し、かつ、第1部位と第2部位との段差面に端面が位置する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルおよび前記ノズルに繋がる加圧室を有する流路部材と、
前記加圧室に液体を供給するリザーバと、
補強板と
を有し、
前記リザーバは、下流側から順に、
複数の板状部材が積層された第1部位と、
前記板状部材の積層方向と直交する方向における幅が前記第1部位よりも大きい第2部位と
を有し、
前記補強板は、前記第1部位の側面に主面が位置し、かつ、前記第1部位と前記第2部位との段差面に端面が位置する、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記補強板の主面は、前記第1部位の側面と前記流路部材の側面とに跨がって位置している、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記補強板の端面は、前記段差面と平行に延びる、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1部位の側面を基準とする前記補強板の突出距離は、前記第1部位の側面を基準とする前記第2部位の突出距離よりも短い、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記段差面を基準とする前記補強板の突出距離は、前記段差面を基準とする前記流路部材の突出距離よりも短い、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記補強板の主面と前記第1部位の側面との間に位置する接着剤を有し、
前記接着剤の一部は、前記第1部位の側面を構成する複数の前記板状部材の側面が前記積層方向と直交する方向にずれることにより形成された凹部に位置する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記補強板の主面と前記第1部位の側面との間に位置する接着剤を有し、
前記接着剤は、さらに、前記補強板の端面と前記段差面との間に位置する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記補強板の主面と前記第1部位の側面との間に位置する接着剤を有し、
前記接着剤は、さらに、前記補強板の前記段差面に位置する端面とは反対側の端面に位置する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記段差面を基準とする前記接着剤の突出距離は、前記段差面を基準とする前記流路部材の突出距離よりも短い、請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記補強板の主面と前記第1部位の側面との間に位置する第1接着剤と、
前記複数の板状部材の間に位置する第2接着剤と
を有し、
前記第1接着剤は、前記第2接着剤よりも粘度が高い、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第1部位の側面を構成する前記板状部材の側面は、前記積層方向と直交する方向に窪んだ窪み部を有する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記補強板、前記流路部材および前記リザーバは、同一種類の金属部材からなる、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一つに記載の液体吐出ヘッドを備える
記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、液体吐出ヘッドおよび記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、インクジェット記録方式を利用したインクジェットプリンタやインクジェットプロッタが知られている。このようなインクジェット方式の印刷装置には、液滴を吐出させるための液体吐出ヘッドが搭載される。
【0003】
特許文献1には、複数のノズルを有する流路部材と、この流路部材に対して液体を供給するリザーバを有する液体吐出ヘッドにおいて、リザーバが、複数の板状部材の積層体からなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術には、耐衝撃性を向上させるという点でさらなる改善の余地がある。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、耐衝撃性に優れた液体吐出ヘッドおよび記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る液体吐出ヘッドは、流路部材と、リザーバと、補強板とを有する。流路部材は、液滴を吐出するノズルおよびノズルに繋がる加圧室を有する。リザーバは、加圧室に液体を供給する。リザーバは、下流側から順に、複数の板状部材が積層された第1部位と、板状部材の積層方向と直交する方向における幅が第1部位よりも大きい第2部位とを有する。補強板は、第1部位の側面に主面が位置し、かつ、第1部位と第2部位との段差面に端面が位置する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、耐衝撃性に優れた液体吐出ヘッドおよび記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るプリンタの模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプリンタの模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る液体吐出ヘッドの模式的な分解斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るヘッド本体の拡大平面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す一点鎖線に囲まれた領域の拡大図である。
【
図6】
図6は、
図4に示すVI-VI線矢視における断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るヘッド本体を長手方向に沿って見た模式的な側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るヘッド本体を短手方向に沿って見た模式的な側面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すIX-IX線矢視における模式的な断面図である。
【
図14】
図14は、第1変形例に係るヘッド本体を長手方向に沿って見た模式的な側面図である。
【
図15】
図15は、第2変形例に係るヘッド本体を長手方向に沿って見た模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する液体吐出ヘッドおよび記録装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
印刷装置として、インクジェット記録方式を利用したインクジェットプリンタやインクジェットプロッタが知られている。このようなインクジェット方式の印刷装置には、液滴を吐出させるための液体吐出ヘッドが搭載されている。
【0012】
このような液体吐出ヘッドにおいては、たとえばジャムが発生した場合に液体吐出ヘッドのノズル面に記録媒体が接触する場合がある。記録媒体の接触によって液体吐出ヘッドに衝撃が加わると、リザーバを構成する複数の板状部材が剥離するおそれがある。また、複数の板状部材が剥離することで、板状部材間の隙間から液体が漏洩するおそれがある。なお、剥離箇所はリザーバに限定されない。たとえば、リザーバと流路部材とが剥離するおそれもある。
【0013】
このようなことから、耐衝撃性に優れた液体吐出ヘッドおよび記録装置の実現が期待されている。
【0014】
<プリンタの構成>
まず、
図1および
図2を参照して実施形態に係る記録装置の一例であるプリンタ1の概要について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタ1の模式的な側面図である。
図2は、実施形態に係るプリンタ1の模式的な平面図である。実施形態に係るプリンタ1は、たとえば、カラーインクジェットプリンタである。
【0015】
図1に示すように、プリンタ1は、給紙ローラ2と、ガイドローラ3と、塗布機4と、ヘッドケース5と、複数の搬送ローラ6と、複数のフレーム7と、複数の液体吐出ヘッド8と、搬送ローラ9と、乾燥機10と、搬送ローラ11と、センサ部12と、回収ローラ13とを有する。搬送ローラ6は、搬送部の一例である。
【0016】
さらに、プリンタ1は、プリンタ1の各部を制御する制御部14を有する。制御部14は、給紙ローラ2、ガイドローラ3、塗布機4、ヘッドケース5、複数の搬送ローラ6、複数のフレーム7、複数の液体吐出ヘッド8、搬送ローラ9、乾燥機10、搬送ローラ11、センサ部12および回収ローラ13の動作を制御する。
【0017】
プリンタ1は、記録媒体Pに液滴を着弾させることにより、記録媒体Pに画像や文字の記録を行う。記録媒体Pは、たとえば紙である。これに限らず、記録媒体Pは、布等であってもよい。記録媒体Pは、使用前において給紙ローラ2に巻かれた状態になっている。プリンタ1は、給紙ローラ2に巻かれた記録媒体Pをガイドローラ3および塗布機4を介してヘッドケース5の内部に搬送する。
【0018】
塗布機4は、コーティング剤を記録媒体Pに一様に塗布する。これにより、記録媒体Pに表面処理を施すことができることから、プリンタ1の印刷品質を向上させることができる。
【0019】
ヘッドケース5は、複数の搬送ローラ6と、複数のフレーム7と、複数の液体吐出ヘッド8とを収容する。ヘッドケース5の内部には、記録媒体Pが出入りする部分などの一部において外部と繋がっている他は、外部と隔離された空間が形成されている。
【0020】
ヘッドケース5の内部空間は、必要に応じて、温度、湿度、および気圧などの制御因子のうち、少なくとも1つが制御部14によって制御される。搬送ローラ6は、ヘッドケース5の内部で記録媒体Pを液体吐出ヘッド8の近傍に搬送する。
【0021】
フレーム7は、矩形状の平板であり、搬送ローラ6で搬送される記録媒体Pの上方に近接して位置している。また、
図2に示すように、フレーム7は、長手方向が記録媒体Pの搬送方向に直交するように位置している。そして、ヘッドケース5の内部には、複数(たとえば、4つ)のフレーム7が、記録媒体Pの搬送方向に沿って所定の間隔で位置している。
【0022】
なお、以降の説明において、記録媒体Pの搬送方向を「副走査方向」と呼称し、この副走査方向に直交し、かつ、記録媒体Pに平行な方向を「主走査方向」と呼称する場合がある。
【0023】
液体吐出ヘッド8には、図示しない液体タンクから液体、たとえば、インクが供給される。液体吐出ヘッド8は、液体タンクから供給される液体を吐出する。
【0024】
制御部14は、画像や文字などのデータに基づいて液体吐出ヘッド8を制御し、記録媒体Pに向けて液体を吐出させる。液体吐出ヘッド8と記録媒体Pとの間の距離は、たとえば、0.5~20mm程度である。
【0025】
液体吐出ヘッド8は、フレーム7に固定されている。液体吐出ヘッド8は、長手方向が記録媒体Pの搬送方向に直交するように位置している。
【0026】
すなわち、実施形態に係るプリンタ1は、プリンタ1の内部に液体吐出ヘッド8が固定されている、いわゆるラインプリンタである。なお、実施形態に係るプリンタ1は、ラインプリンタに限られず、いわゆるシリアルプリンタであってもよい。
【0027】
シリアルプリンタとは、液体吐出ヘッド8を、記録媒体Pの搬送方向に交差する方向、たとえば、略直交する方向に往復させるなどして移動させながら記録する動作と、記録媒体Pの搬送とを交互に行う方式のプリンタである。
【0028】
図2に示すように、1つのフレーム7に複数(たとえば、5つ)の液体吐出ヘッド8が固定されている。
図2では、記録媒体Pの搬送方向の前方に3つ、後方に2つの液体吐出ヘッド8が位置している例を示しており、記録媒体Pの搬送方向において、それぞれの液体吐出ヘッド8の中心が重ならないように液体吐出ヘッド8が位置している。
【0029】
そして、1つのフレーム7に位置する複数の液体吐出ヘッド8によって、ヘッド群8Aが構成されている。4つのヘッド群8Aは、記録媒体Pの搬送方向に沿って位置している。同じヘッド群8Aに属する液体吐出ヘッド8には、同じ色のインクが供給される。これにより、プリンタ1は、4つのヘッド群8Aを用いて4色のインクによる印刷を行うことができる。
【0030】
各ヘッド群8Aから吐出されるインクの色は、たとえば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。制御部14は、各ヘッド群8Aを制御して複数色のインクを記録媒体Pに吐出することにより、記録媒体Pにカラー画像を印刷することができる。
【0031】
なお、記録媒体Pの表面処理をするために、液体吐出ヘッド8からコーティング剤を記録媒体Pに吐出してもよい。
【0032】
また、1つのヘッド群8Aに含まれる液体吐出ヘッド8の個数や、プリンタ1に搭載されているヘッド群8Aの個数は、印刷する対象や印刷条件に応じて適宜変更可能である。たとえば、記録媒体Pに印刷する色が単色で、かつ、1つの液体吐出ヘッド8で印刷可能な範囲を印刷するのであれば、プリンタ1に搭載されている液体吐出ヘッド8の個数は1つでもよい。
【0033】
ヘッドケース5の内部で印刷処理された記録媒体Pは、搬送ローラ9によってヘッドケース5の外部に搬送され、乾燥機10の内部を通る。乾燥機10は、印刷処理された記録媒体Pを乾燥する。乾燥機10で乾燥された記録媒体Pは、搬送ローラ11で搬送されて、回収ローラ13で回収される。
【0034】
プリンタ1では、乾燥機10で記録媒体Pを乾燥することにより、回収ローラ13において、重なって巻き取られる記録媒体P同士が接着したり、未乾燥の液体が擦れたりすることを抑制することができる。
【0035】
センサ部12は、位置センサや速度センサ、温度センサなどにより構成されている。制御部14は、センサ部12からの情報に基づいて、プリンタ1の各部における状態を判断し、プリンタ1の各部を制御することができる。
【0036】
ここまで説明したプリンタ1では、印刷対象(すなわち、記録媒体)として記録媒体Pを用いた場合について示したが、プリンタ1における印刷対象は記録媒体Pに限られず、ロール状の布などを印刷対象としてもよい。
【0037】
また、プリンタ1は、記録媒体Pを直接搬送する代わりに、搬送ベルト上に載せて搬送するものであってもよい。搬送ベルトを用いることで、プリンタ1は、枚葉紙や裁断された布、木材、タイルなどを印刷対象とすることができる。
【0038】
また、プリンタ1は、液体吐出ヘッド8から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。また、プリンタ1は、液体吐出ヘッド8から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、化学薬品を作製してもよい。
【0039】
<液体吐出ヘッドの構成>
次に、実施形態に係る液体吐出ヘッド8の構成について
図3を参照して説明する。
図3は、実施形態に係る液体吐出ヘッド8の模式的な分解斜視図である。
【0040】
液体吐出ヘッド8は、ヘッド本体20と、配線部30と、筐体40と、1対の放熱板45とを有する。ヘッド本体20は、流路部材21と、圧電アクチュエータ基板22(
図4参照)と、リザーバ23とを有する。
【0041】
以降の説明において、便宜的に、液体吐出ヘッド8においてヘッド本体20が設けられる方向を「下」と表記し、ヘッド本体20に対して筐体40が設けられる方向を「上」と表記する場合がある。
【0042】
ヘッド本体20の流路部材21は、略平板形状であり、1つの主面である第1面21a(
図6参照)と、かかる第1面21aの反対側に位置する第2面21b(
図6参照)とを有する。第1面21aは、不図示の開口を有し、後述するリザーバ23からかかる開口を介して流路部材21の内部に液体が供給される。
【0043】
第2面21bには、記録媒体Pに液体を吐出する複数の吐出孔63(
図6参照)が位置している。すなわち、第2面21bは、ヘッド本体20のノズル面である。流路部材21は、第1面21aから第2面21bに液体を流す流路を内部に有する。吐出孔63は、ノズルの一例である。
【0044】
圧電アクチュエータ基板22は、流路部材21の第1面21a上に位置している。圧電アクチュエータ基板22は、複数の変位素子70(
図6参照)を有する。圧電アクチュエータ基板22には、配線部30のフレキシブル基板31が電気的に接続される。圧電アクチュエータ基板22の構成については、
図4~
図6を用いて後述する。
【0045】
圧電アクチュエータ基板22上にはリザーバ23が配置される。具体的には、リザーバ23は、圧電アクチュエータ基板22を覆うように流路部材21の第1面21aに位置する。
【0046】
リザーバ23は、流路部材21の後述する加圧室62に液体を供給する。具体的には、リザーバ23には、長手方向の両端部に開口23aが設けられている。リザーバ23は、内部に流路を有しており、外部から開口23aを介して液体が供給される。リザーバ23は、流路部材21の加圧室62に液体を供給する機能、および供給される液体を貯留する機能を有する。
【0047】
配線部30は、フレキシブル基板31と、ヘッド基板32と、ドライバIC33と、押圧部材34と、弾性部材35とを有する。フレキシブル基板31は、外部から送られた所定の信号をヘッド本体20へ伝達する機能を有する。
図3に示すように、実施形態に係る液体吐出ヘッド8は、フレキシブル基板31を2つ有する。
【0048】
フレキシブル基板31の一端部は、ヘッド本体20の圧電アクチュエータ基板22と電気的に接続されている。フレキシブル基板31の他端部は、リザーバ23の開口23bを挿通するように上方に引き出されており、ヘッド基板32と電気的に接続されている。
【0049】
これにより、ヘッド本体20の圧電アクチュエータ基板22と外部とを電気的に接続することができる。フレキシブル基板31は、たとえば、ポリイミドからなるフィルム状の基板(COF)であり、ドライバIC33などが基板上に実装されている。
【0050】
ヘッド基板32は、ヘッド本体20の上方に位置している。ヘッド基板32は、ドライバIC33へ信号を分配する機能を有する。ドライバIC33は、フレキシブル基板31における一方の主面に設けられている。ドライバIC33は、制御部14(
図1参照)から送られた信号に基づいて、ヘッド本体20の圧電アクチュエータ基板22を駆動させている。これにより、ドライバIC33は、液体吐出ヘッド8を駆動させる。
【0051】
押圧部材34は、断面視で略U字形状を有し、フレキシブル基板31上のドライバIC33を放熱板45へ向けて内側から押圧している。これにより、実施形態では、ドライバIC33が駆動する際に発生する熱を、外側の放熱板45へ効率よく放熱することができる。
【0052】
弾性部材35は、押圧部材34における図示しない押圧部の外壁に接するように位置している。このような弾性部材35を設けることにより、押圧部材34がドライバIC33を押圧する際に、押圧部材34がフレキシブル基板31を破損させる可能性を低減することができる。
【0053】
弾性部材35は、たとえば、発泡体両面テープなどで構成されている。また、弾性部材35として、たとえば、非シリコン系の熱伝導シートを用いることにより、ドライバIC33の放熱性を向上させることができる。なお、弾性部材35は必ずしも設ける必要はない。
【0054】
筐体40は、配線部30を覆うように、ヘッド本体20上に配置されている。これにより、筐体40は配線部30を封止することができる。筐体40は、たとえば、樹脂や金属などで構成されている。
【0055】
筐体40は、主走査方向に長く延びる箱形状であり、主走査方向に沿って対向する1対の側面に第1開口40aおよび第2開口40bを有する。また、筐体40は、下面に第3開口40cを有しており、上面に第4開口40dを有する。
【0056】
第1開口40aには、放熱板45の一方が第1開口40aを塞ぐように位置し、第2開口40bには、放熱板45の他方が第2開口40bを塞ぐように位置する。
【0057】
放熱板45は、主走査方向に延びるように設けられており、放熱性の高い金属や合金などで構成されている。放熱板45は、ドライバIC33に接するように設けられており、ドライバIC33で生じた熱を放熱する。
【0058】
1対の放熱板45は、図示しないネジによってそれぞれ筐体40に固定されている。そのため、放熱板45が固定された筐体40は、第1開口40aおよび第2開口40bが塞がれ、第3開口40cおよび第4開口40dが開口した箱形状をなしている。
【0059】
第3開口40cは、リザーバ23と対向するように位置している。第3開口40cには、フレキシブル基板31および押圧部材34が挿通されている。
【0060】
第4開口40dは、ヘッド基板32に設けられたコネクタ(不図示)を挿通するために設けられている。かかるコネクタと第4開口40dとの間を、樹脂などで封止すると、筐体40の内部に液体やゴミなどが侵入しにくくなる。
【0061】
また、筐体40は、断熱部40eを有する。かかる断熱部40eは、第1開口40aおよび第2開口40bに隣り合うように配置されており、主走査方向に沿った筐体40の側面から外側へ向けて突出するように設けられている。
【0062】
断熱部40eは、主走査方向に延びるように形成されている。すなわち、断熱部40eは、放熱板45とヘッド本体20との間に位置している。このように、筐体40に断熱部40eを設けることにより、ドライバIC33で発生した熱が放熱板45を介してヘッド本体20に伝わりにくくなる。
【0063】
なお、
図3に示した液体吐出ヘッド8の構成は、あくまで一例であり、液体吐出ヘッド8の構成は、
図3に示す構成に限定されない。
【0064】
<ヘッド本体の構成>
次に、実施形態に係るヘッド本体20の構成について、
図4~
図6を参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係るヘッド本体20の拡大平面図である。
図5は、
図4に示す一点鎖線に囲まれた領域Vの拡大図である。
図6は、
図4に示すVI-VI線矢視における断面図である。
【0065】
図4に示すように、ヘッド本体20は、流路部材21と圧電アクチュエータ基板22とを有する。流路部材21は、供給マニホールド61と、複数の加圧室62と、複数の吐出孔63とを有する。
【0066】
複数の加圧室62は、供給マニホールド61に繋がっている。複数の吐出孔63は、複数の加圧室62にそれぞれ繋がっている。
【0067】
加圧室62は、流路部材21の第1面21a(
図6参照)に開口している。また、流路部材21の第1面21aは、供給マニホールド61と繋がる開口61aを有する。液体は、リザーバ23(
図2参照)から開口61aを介して流路部材21の内部に供給される。
【0068】
図4に示す例において、ヘッド本体20は、流路部材21の内部に4つの供給マニホールド61を有している。供給マニホールド61は、流路部材21の長手方向(すなわち、主走査方向)に沿って延びる細長い形状を有しており、その両端において、流路部材21の第1面21aに供給マニホールド61の開口61aが形成されている。
【0069】
流路部材21には、複数の加圧室62が2次元的に広がって形成されている。
図5に示すように、加圧室62は、たとえば角部にアールが施された略菱形の平面形状を有する中空の領域である。なお、加圧室62の形状は図示の例に限定されない。加圧室62は、流路部材21の第1面21aに開口しており、第1面21aに圧電アクチュエータ基板22が接合されることによって閉塞されている。
【0070】
加圧室62は、長手方向に配列された加圧室行を構成している。加圧室行の加圧室62は、近隣する2行の加圧室行の間において千鳥状に配置されている。そして、1つの供給マニホールド61に繋がっている4行の加圧室行によって、1つの加圧室群が構成されている。
図4の例では、流路部材21がかかる加圧室群を4つ有する。
【0071】
また、各加圧室群内における加圧室62の相対的な配置は同じになっており、各加圧室群は長手方向にわずかにずれて配置されている。
【0072】
吐出孔63は、流路部材21のうち供給マニホールド61と対向する領域を避けた位置に配置されている。すなわち、流路部材21を第1面21a側から透過視した場合に、吐出孔63は、供給マニホールド61と重なっていない。
【0073】
さらに、平面視して、吐出孔63は、圧電アクチュエータ基板22の搭載領域に収まるように配置されている。このような吐出孔63は、1つの群として圧電アクチュエータ基板22と略同一の大きさおよび形状の領域を占有する。
【0074】
液体吐出ヘッド8では、制御部14(
図1参照)から送られた信号に基づいてドライバIC33が圧電アクチュエータ基板22の変位素子70(
図6参照)を変位させる。これにより、加圧室62が加圧されて加圧室62内の液体が吐出孔63から吐出される。
【0075】
図6に示すように、流路部材21は、複数のプレートが積層された積層構造を有する。たとえば、流路部材21は、流路部材21の上面から順に、キャビティプレート21A、ベースプレート21B、アパーチャプレート21C、サプライプレート21D、マニホールドプレート21E,21F,21G、カバープレート21Hおよびノズルプレート21Iを有する。
【0076】
プレートには、多数の孔が形成されている。プレートの厚さは、10μm~300μm程度である。これにより、孔の形成精度を高くすることができる。プレートは、これらの孔が互いに連通して所定の流路を構成するように、位置合わせして積層されている。
【0077】
流路部材21において、供給マニホールド61と吐出孔63との間は、個別流路64で繋がっている。供給マニホールド61は、流路部材21内部の第2面21b側に位置しており、吐出孔63は、流路部材21の第2面21bに位置している。
【0078】
個別流路64は、加圧室62と、個別供給流路65とを有する。加圧室62は、流路部材21の第1面21aに位置しており、個別供給流路65は、供給マニホールド61と加圧室62とを繋ぐ流路である。
【0079】
また、個別供給流路65は、他の部分よりも幅の狭いしぼり66を含んでいる。しぼり66は、個別供給流路65の他の部分よりも幅が狭いため、流路抵抗が高い。このように、しぼり66の流路抵抗が高いとき、加圧室62に生じた圧力は、供給マニホールド61へ逃げにくい。
【0080】
圧電アクチュエータ基板22は、圧電セラミック層22A,22Bと、共通電極71と、個別電極72と、接続電極73と、ダミー接続電極74と、表面電極75(
図4参照)とを有する。圧電セラミック層22B、共通電極71、圧電セラミック層22Aおよび個別電極72は、下から順に、すなわち、流路部材21側から順にこの順番で積層されている。
【0081】
圧電セラミック層22A,22Bは、いずれも複数の加圧室62を跨ぐように流路部材21の第1面21a上に延在している。圧電セラミック層22A,22Bは、それぞれ20μm程度の厚さを有する。圧電セラミック層22A,22Bは、たとえば、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料で構成されている。
【0082】
共通電極71は、圧電セラミック層22Aと圧電セラミック層22Bとの間の領域に面方向の略全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極71は、圧電アクチュエータ基板22に対向する領域内のすべての加圧室62と重なっている。
【0083】
共通電極71の厚さは、2μm程度である。共通電極71は、たとえば、Ag-Pd系などの金属材料で構成されている。
【0084】
個別電極72は、本体電極72aと、引出電極72bとを含んでいる。本体電極72aは、圧電セラミック層22A上のうち加圧室62と対向する領域に位置している。本体電極72aは、加圧室62よりも一回り小さく、加圧室62と略相似な形状を有する。
【0085】
引出電極72bは、本体電極72aから加圧室62と対向する領域外に引き出されている。個別電極72は、たとえば、Au系などの金属材料で構成されている。
【0086】
接続電極73は、引出電極72b上に位置し、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極73は、フレキシブル基板31(
図3参照)に設けられた電極と電気的に接続されている。接続電極73は、たとえばガラスフリットを含む銀-パラジウムで構成されている。
【0087】
ダミー接続電極74は、圧電セラミック層22B上に位置しており、個別電極72などの各種電極と重ならないように位置している。ダミー接続電極74は、圧電アクチュエータ基板22とフレキシブル基板31とを接続し、接続強度を高めている。
【0088】
また、ダミー接続電極74は、圧電アクチュエータ基板22と、圧電アクチュエータ基板22との接触位置の分布を均一化し、電気的な接続を安定させる。ダミー接続電極74は、接続電極73と同等の材料で構成されるとよく、接続電極73と同等の工程で形成されるとよい。
【0089】
図4に示す表面電極75は、圧電セラミック層22B上において、個別電極72を避ける位置に形成されている。表面電極75は、圧電セラミック層22Aに形成されたビアホールを介して共通電極71と繋がっている。
【0090】
これにより、表面電極75は接地され、グランド電位に保持されている。表面電極75は、個別電極72と同等の材料で構成されるとよく、個別電極72と同等の工程で形成されるとよい。
【0091】
複数の個別電極72は、個別に電位を制御するために、それぞれがフレキシブル基板31および配線を介して、個別に制御部14(
図1参照)に電気的に接続されている。そして、個別電極72と共通電極71とを異なる電位にして、圧電セラミック層22Aの分極方向に電界を印加すると、圧電セラミック層22A内の電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として動作する。
【0092】
すなわち、圧電アクチュエータ基板22では、個別電極72、圧電セラミック層22Aおよび共通電極71における加圧室62に対向する部位が、変位素子70として機能する。
【0093】
そして、このような変位素子70がユニモルフ変形することにより、加圧室62が押圧され、吐出孔63から液滴が吐出される。
【0094】
ここで、実施形態に係る液体吐出ヘッド8の駆動手順について説明する。予め、個別電極72を共通電極71よりも高い電位(以下、高電位という)にしておく。そして、吐出要求があるごとに個別電極72を共通電極71と一旦同じ電位(以下、低電位という)とし、その後、所定のタイミングでふたたび高電位とする。
【0095】
これにより、個別電極72が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層22A,22Bが元の形状に戻り、加圧室62の容積が、初期状態すなわち高電位の状態よりも増加する。この際、加圧室62内には負圧が与えられることから、供給マニホールド61内の液体が加圧室62内へ吸い込まれる。
【0096】
その後、再び個別電極72を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層22A,22Bは、加圧室62側へ凸となるように変形する。すなわち、加圧室62の容積が減少することにより、加圧室62内の圧力が正圧となる。これにより、加圧室62内の液体の圧力が上昇し、吐出孔63から液滴が吐出される。
【0097】
すなわち、制御部14は、吐出孔63から液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号をドライバIC33を用いて個別電極72に供給する。このパルス幅は、しぼり66から吐出孔63まで圧力波が伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)とすればよい。
【0098】
これにより、加圧室62内が負圧状態から正圧状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
【0099】
また、階調印刷においては、吐出孔63から連続して吐出される液滴の数、すなわち、液体吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行われる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液体吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔63から連続して行う。
【0100】
<補強板>
ヘッド本体20は、さらに補強板を備える。かかる補強板の構成について
図7~
図10を参照して説明する。
図7は、実施形態に係るヘッド本体20を長手方向に沿って見た模式的な側面図である。
図8は、実施形態に係るヘッド本体20を短手方向に沿って見た模式的な側面図である。
図9は、
図8に示すIX-IX線矢視における模式的な断面図である。
図10は、
図7に示す領域Xの模式的な拡大図である。
【0101】
ここで、補強板の説明に先立ち、リザーバ23の具体的な構成について
図7および
図8を参照して説明する。
図7および
図8に示すように、リザーバ23は、複数の板状部材231~233を有する。複数の板状部材231~233は、下流側から順に、板状部材231、板状部材232および板状部材233の順番で積層される。各板状部材231~233は、いずれも主走査方向に長い形状を有している。板状部材231~233が積層されることにより、リザーバ23には、液体の導入路および分岐路等の流路(後述する流路238a)や圧電アクチュエータ基板22が収容される凹部(後述する空洞部237)等が形成される。
【0102】
板状部材231および板状部材232の形状は、側面視において四角形である。側面視とは、ヘッド本体20の第2面21b(ノズル面)と平行な視点のことである。これに対し、板状部材233は、大きさの異なる2つの四角形を重ねたような形状を有する。
【0103】
具体的には、板状部材233は、下流側から順に、幅狭部233aと幅広部233bとを有する。幅狭部233aは、水平方向の幅、具体的には、副走査方向における幅W1および主走査方向における幅W3が板状部材231および幅狭部233aと同等である。幅広部233bは、幅狭部233aよりも主走査方向における幅および副走査方向における幅が大きい。具体的には、幅広部233bの主走査方向における幅W2は、幅狭部233aの主走査方向における幅W1よりも大きい。また、幅広部233bの副走査方向における幅W4は、幅狭部233aの副走査方向における幅W2よりも大きい。
【0104】
このように、リザーバ23は、複数の板状部材231~233が積層された積層体である。別の観点によれば、リザーバ23は、下流側(第2面21b側)から順に、複数の板状部材(ここでは、板状部材231,232および板状部材233の幅狭部233a)が積層された第1部位23Aと、板状部材の積層方向と直交する方向における幅が第1部位よりも大きい第2部位23B(ここでは、板状部材233の幅広部233b)とを有する。
【0105】
かかるリザーバ23は、第1部位23Aと第2部位23Bとの間に段差面236を有する。段差面236は、リザーバ23の長手方向の両側方および短手方向の両側方に位置している。
【0106】
ここでは、幅狭部233aと幅広部233bとが一体であり、これら幅狭部233aと幅広部233bとで1つの板状部材233が形成される場合の例を示したが、幅狭部233aおよび幅広部233bは、それぞれ別個の板状部材であってもよい。また、ここでは、リザーバ23が3つの板状部材231~233を有する場合の例を示したが、リザーバ23は、少なくとも2つ以上の板状部材を有していればよい。たとえば、リザーバ23は、4つ以上の板状部材を有していてもよい。
【0107】
図7~
図10に示すように、ヘッド本体20は、複数(ここでは、2つ)の補強板25を有する。補強板25は、板状の部材である。補強板25の主面250は、リザーバ23における第1部位23Aの側面235に位置している。より具体的には、補強板25の主面250は、第1部位23Aの側面235と流路部材21の側面215とに跨がって位置している。第1部位23Aの側面235は、具体的には、板状部材231の側面、板状部材232の側面および幅狭部233aの側面である。なお、ここでいう側面は、流路部材21の第2面21bと直交する面のことをいう。
【0108】
補強板25が位置する側面215,235は、第1部位23Aおよび流路部材21の側面のうち、第1部位23Aおよび流路部材21の長辺を含む側面である。補強板25の主面250は、第1部位23Aおよび流路部材21の長辺に沿って延在している。
【0109】
図9に示すように、第1部位23Aの長辺の一部は、肉薄部239となっている。具体的には、第1部位23Aは、空洞部237を有する。空洞部237は、圧電アクチュエータ基板22の収容スペースとして機能する。空洞部237は、板状部材231,232および板状部材233の幅狭部233aを貫通しており、第1部位23Aの長手方向(主走査方向)に沿って延在している。
【0110】
リザーバ23の長手方向(主走査方向)における空洞部237の側方は、第1部位23Aの肉厚部238となっている。肉厚部238には、流路部材21に繋がる流路238aが位置している。一方、リザーバ23の短手方向(副走査方向)における空洞部237の側方は、肉厚部238より厚みが薄い肉薄部239となっている。補強板25は、かかる肉薄部239に位置している。すなわち、補強板25は、第1部位23Aの肉薄部239を補強している。
【0111】
リザーバ23の長手方向(主走査方向)における補強板25の幅は、たとえば、主走査方向における肉薄部239の幅W5と同一であってもよい。これに限らず、リザーバ23の長手方向(主走査方向)における補強板25の幅は、主走査方向における第1部位23Aの幅W3より短く、かつ、主走査方向における肉薄部239の幅W5より長くてもよい。また、リザーバ23の長手方向(主走査方向)における補強板25の幅は、主走査方向における肉薄部239の幅W5より短くてもよい。この場合、補強板25は、少なくとも、大きな応力がかかり易い肉薄部239の中央部に位置していればよい。肉薄部239の中央部とは、たとえば肉薄部239を主走査方向に3分割した場合における中央部である。
【0112】
補強板25は、リザーバ23および第1部位23Aの長辺を含む側面に接着剤100を介して接合される。接着剤100は、補強板25の主面250と第1部位23Aの側面235との間に位置する。接着剤100としては、たとえばエポキシ系の熱硬化性樹脂が用いられる。
【0113】
接着剤100は、リザーバ23の板状部材231~233同士の接合に用いられる接着剤、流路部材21のプレート21A~21I同士の接合に用いられる接着剤、および、流路部材21とリザーバ23との接合に用いられる接着剤と同じものであってもよい。また、これに限らず、接着剤100は、板状部材231~233同士の接合に用いられる接着剤、流路部材21のプレート21A~21I同士の接合に用いられる接着剤、および、流路部材21とリザーバ23との接合に用いられる接着剤と異なるものであってもよい。この点については後述する。
【0114】
補強板25の上端面251は、第1部位23Aと第2部位23Bとの段差面236に位置している。具体的には、補強板25は、段差面236に接触した状態、言い換えれば、突き当てられた状態で、第1部位23Aの側面235および流路部材21の側面215に接合されている。
【0115】
このように、実施形態に係る液体吐出ヘッド8は、第1部位23Aの側面235に補強板25が位置している。補強板25は、リザーバ23を構成する複数の板状部材231~233に跨がって位置している。このため、実施形態に係る液体吐出ヘッド8は、記録媒体Pの接触によりヘッド本体20に衝撃が加わった場合であっても、リザーバ23を構成する複数の板状部材231~233が剥離しにくい。
【0116】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8では、補強板25の上端面251が第1部位23Aと第2部位23Bとの段差面236に突き当てられた状態となっている。かかる構成とした場合、補強板25の上端面251が段差面236から離れている場合と比較して補強板25とリザーバ23との接触面積が大きくなるため、衝撃をより分散させやすい。
【0117】
したがって、実施形態に係る液体吐出ヘッド8によれば、耐衝撃性に優れる。
【0118】
また、補強板25の上端面251と段差面236との間に隙間がある場合、かかる隙間にミスト化したインクが溜まってヘッド本体20を汚損するおそれがある。これに対し、実施形態に係る液体吐出ヘッド8では、補強板25の上端面251が第1部位23Aと第2部位23Bとの段差面236に突き当てられた状態となっているため、ヘッド本体20の汚損を抑制することができる。
【0119】
また、補強板25の上端面251を第1部位23Aと第2部位23Bとの段差面236に突き当てる構成とすることで、液体吐出ヘッド8を製造する際の補強板25の位置合わせを容易化することができる。この点については後述する。
【0120】
また、補強板25は、第1部位23Aおよび流路部材21の側面215,235に跨がって位置している。このため、実施形態に係る液体吐出ヘッド8は、流路部材21とリザーバ23との間の剥離も生じにくい。
【0121】
図8に示すように、補強板25の上端面251は、段差面236と平行に直線状に延びている。かかる補強板25の上端面251は、長手方向の一端から他端の全域において段差面236と接触する。かかる構成とすることにより、耐衝撃性をさらに高めることができる。
【0122】
図10に示すように、第1部位23Aの側面235を基準とする補強板25の突出距離D1は、第1部位23Aの側面235を基準とする第2部位23Bの突出距離D2よりも短い。言い換えれば、補強板25は、リザーバ23の段差内に収まっている。かかる構成とすることで、補強板25が外部と接触しにくくなるため、外部との接触による補強板25の剥がれを抑制することができる。
【0123】
段差面236を基準とする補強板25の突出距離D3は、段差面236を基準とする流路部材21の突出距離、具体的には、第1部位23Aおよび流路部材21の突出距離の合計D4よりも短い。言い換えれば、補強板25の下端面252は、流路部材21の第2面21bよりも上方に位置している。つまり、補強板25の下端面252は、記録媒体Pからより離れた場所に位置している。かかる構成とすることで、補強板25が記録媒体Pと接触しにくくなる。このため、記録媒体Pとの接触による補強板25の剥がれを抑制することができる。
【0124】
補強板25は、流路部材21およびリザーバ23と同一の材料で形成されてもよい。たとえば、補強板25、流路部材21およびリザーバ23は、SUS(ステンレス鋼)で形成されてもよい。具体的には、補強板25、流路部材21およびリザーバ23は、同一種類のSUSで形成されてもよい。一例として、補強板25、流路部材21およびリザーバ23は、マルテンサイト系のSUSで形成されてもよい。補強板25、流路部材21およびリザーバ23は、SUS以外の金属で形成されてもよい。
【0125】
このように、流路部材21およびリザーバ23と同一種類の材料を補強板25に用いることで、これらの線膨張係数を揃えることができる。これにより、液体吐出ヘッド8に温度変化が生じた場合に、線膨張係数差によって補強板25が流路部材21およびリザーバ23から剥がれるといった事態を生じにくくすることができる。
【0126】
<補強板の取り付け方法>
次に、上述した補強板25の取り付け方法について
図11~
図13を参照して説明する。
図11~
図13は、補強板25の取り付け方法の説明図である。
【0127】
図11に示すように、まず、第1部位23Aおよび流路部材21の側面215,235が上方を向くように流路部材21およびリザーバ23を載置する。そして、第1部位23Aおよび流路部材21の側面215,235に接着剤100を塗布する。
【0128】
つづいて、
図12に示すように、接着剤100が塗布された第1部位23Aおよび流路部材21の側面215,235に補強板25を載置する。このとき、補強板25の上端面251を段差面236に突き当てながら補強板25を第1部位23Aおよび流路部材21の側面215,235に載置する。
【0129】
つづいて、
図13に示すように、固定治具Jを用いて補強板25を第1部位23Aおよび流路部材21の側面215,235に固定する。これらの一連の作業を残りの補強板25について行った後、たとえば熱処理によって接着剤100を硬化させる。これにより、補強板25は、段差面236に突き当てられた状態で第1部位23Aおよび流路部材21の側面215,235に取り付けられた状態となる。
【0130】
このように、実施形態に係る液体吐出ヘッド8は、補強板25の上端面251を段差面236に突き当てる構成としているため、補強板25の取り付け作業において補強板25の位置合わせが容易である。
【0131】
(第1変形例)
図14は、第1変形例に係るヘッド本体20を長手方向に沿って見た模式的な側面図である。
図14に示すように、接着剤100は、補強板25の主面250と第1部位23Aの側面235との間に加えて、さらに、補強板25の上端面251と段差面236との間に位置していてもよい。かかる構成とすることにより、補強板25とリザーバ23との接合をより強固にすることができる。
【0132】
また、接着剤100は、さらに、補強板25の下端面252に位置していてもよい。かかる構成とすることにより、補強板25と接着剤100との接触面積が大きくなるため、補強板25をより剥がれにくくすることができる。なお、
図14では、補強板25の下端面252の全体が接着剤100で覆われている例を示しているが、接着剤100は、補強板25の下端面252の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0133】
段差面236を基準とする接着剤100の突出距離D5は、段差面236を基準とする流路部材21の突出距離D4よりも短い。言い換えれば、接着剤100は、流路部材21の第2面21bよりも上方に位置している。かかる構成とすることで、接着剤100が記録媒体Pと接触しにくくなる。このため、接着剤100が記録媒体Pと接触することによる補強板25の剥がれを抑制することができる。
【0134】
(第2変形例)
図15は、第2変形例に係るヘッド本体20を長手方向に沿って見た模式的な側面図である。
図15に示すように、第1部位23Aの側面235を構成する板状部材231,232および幅狭部233aの側面は、これらの積層方向と直交する方向に互いにずれていてもよい。この場合、第1部位23Aの側面235は、板状部材231,232および幅狭部233aの積層ズレによって形成された凹部235aを有する。接着剤100の一部は、この凹部235aに位置していてもよい。
【0135】
このように、第1部位23Aの側面235の凹部235a内に接着剤100の一部が入り込むことで、接着剤100と第1部位23Aとの接触面積が大きくなるため、補強板25とリザーバ23との接合をより強固にすることができる。また、凹凸を有する第1部位23Aの側面235が接着剤100で均されることで、第1部位23Aの側面235への補強板25の取り付けを容易化することができる。
【0136】
リザーバ23は、複数の板状部材231~233間に、これらを接合するための接着剤101(第2接着剤の一例)を有していてもよい。この場合、接着剤100(第1接着剤の一例)は、接着剤101よりも粘度が高くてもよい。かかる構成とした場合、凹部235a内への接着剤100の充填が容易である。なお、接着剤100は、第1部位23Aと流路部材21とを接合するための接着剤102よりも粘度が高くてもよい。
【0137】
図16は、
図15に示す領域XVIの模式的な拡大図である。
図16に示すように、第1部位23Aの側面235を構成する板状部材232の側面は、積層方向と直交する方向に窪んだ窪み部232aを有していてもよい。また、板状部材232は、複数(たとえば2つ)の窪み部232aを有していてもよい。
【0138】
かかる構成とすることにより、接着剤100と第1部位23Aとの接触面積が大きくなるため、補強板25とリザーバ23との接合をより強固にすることができる。
【0139】
なお、ここでは、一例として板状部材232の側面に窪み部232aが位置する場合の例を示したが、他の板状部材231,233も同様に、側面に窪み部232aを有していてもよい。
【0140】
上述してきたように、実施形態に係る液体吐出ヘッド(一例として、液体吐出ヘッド8)は、流路部材(一例として、流路部材21)と、リザーバ(一例として、リザーバ23)と、補強板(一例として、補強板25)とを有する。流路部材は、液滴を吐出するノズル(一例として、吐出孔63)およびノズルに繋がる加圧室(一例として、加圧室62)を有する。リザーバは、加圧室に液体を供給する。リザーバは、下流側から順に、複数の板状部材(一例として、板状部材231,232、幅狭部233a)が積層された第1部位(一例として、第1部位23A)と、板状部材の積層方向と直交する方向における幅が第1部位よりも大きい第2部位(一例として、第2部位23B)とを有する。補強板は、第1部位の側面(一例として、側面235)に主面(一例として、主面250)が位置し、かつ、第1部位と第2部位との段差面(一例として、段差面236)に端面(一例として、上端面251)が位置する。
【0141】
したがって、実施形態に係る液体吐出ヘッドによれば、耐衝撃性が高い。また、補強板の位置合わせが容易である。
【0142】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0143】
1 プリンタ
8 液体吐出ヘッド
20 ヘッド本体
21 流路部材
22 圧電アクチュエータ基板
23 リザーバ
23A 第1部位
23B 第2部位
25 補強板
62 加圧室
63 吐出孔
100~102 接着剤
215 流路部材の側面
231~233 板状部材
233a 幅狭部
233b 幅広部
235 第1部位の側面
236 段差面
250 補強板の主面
251 補強板の上端面
252 補強板の下端面
J 固定治具
P 記録媒体