(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157680
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20231019BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/1333
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067744
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】平井 明
(72)【発明者】
【氏名】川平 雄一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 彰
【テーマコード(参考)】
2H189
2H291
【Fターム(参考)】
2H189AA53
2H189AA60
2H189AA64
2H189HA16
2H189JA10
2H189JA14
2H189LA17
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA81Z
2H291FB22
2H291FC13
2H291FD04
2H291FD34
2H291GA19
2H291GA23
2H291HA11
2H291HA15
2H291LA40
(57)【要約】
【課題】見栄えに一体感があり、デザイン性に優れる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】第一の偏光板と、薄膜トランジスタを備える第一の基板と、液晶分子を含有する液晶層と、第二の基板と、第二の偏光板と、バックライトと、をこの順に備える液晶表示装置であって、上記第一の基板は、表示領域と、上記表示領域の外縁に配置された額縁領域とを有し、上記第一の基板の額縁領域と上記第一の偏光板との間に、インク層を有し、式(1-1)で表される内部反射率比yが0.2~0.3である、液晶表示装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の偏光板と、薄膜トランジスタを備える第一の基板と、液晶分子を含有する液晶層と、第二の基板と、第二の偏光板と、バックライトと、をこの順に備える液晶表示装置であって、
前記第一の基板は、表示領域と、前記表示領域の外縁に配置された額縁領域とを有し、
前記第一の基板の額縁領域と前記第一の偏光板との間に、インク層を有し、
下記式(1-1)で表される内部反射率比yが0.2~0.3であることを特徴とする液晶表示装置。
y=Y2/Y1 (1-1)
式中、Y2は、XYZ表色系のY値を用いて表される、前記額縁領域の内部反射率(%)であり、下記式(1-2)により求められる。Y1は、前記表示領域の内部反射率(%)を表し、下記式(1-3)により求められる。
Y2=YA2-YB (1-2)
Y1=YA1-YB (1-3)
式中、YA2は、前記額縁領域の反射率(%)を表す。YA1は、前記表示領域の反射率(%)を表す。YBは、前記第一の偏光板の表面反射率(%)を表す。
【請求項2】
カバーガラスを有さないことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第一の偏光板は、前記第一の基板の三辺又は四辺まで覆うように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第一の偏光板及び第二の偏光板は、直線偏光板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第二の偏光板の偏光軸は、前記第一の偏光板の偏光軸に対してクロスニコルに配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記インク層は、カーボンブラックを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
下記式(2-1)で表される内部反射率比xが0.2~0.3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
x=X2/X1 (2-1)
式中、X2は、XYZ表色系のX値を用いて表される、前記額縁領域の内部反射率(%)であり、下記式(2-2)により求められる。X1は、前記表示領域の内部反射率(%)を表し、下記式(2-3)により求められる。
X2=XA2-XB (2-2)
X1=XA1-XB (2-3)
式中、XA2は、前記額縁領域の反射率(%)を表す。XA1は、前記表示領域の反射率(%)を表す。XBは、前記第一の偏光板の表面反射率(%)を表す。
【請求項8】
前記内部反射率比yに対する前記内部反射率比xの比率(x/y)は、0.95~1.05であることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
下記式(3-1)で表される内部反射率比zが0.2~0.3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
z=Z2/Z1 (3-1)
式中、Z2は、XYZ表色系のZ値を用いて表される、前記額縁領域の内部反射率(%)であり、下記式(3-2)により求められる。X1は、前記表示領域の内部反射率(%)を表し、下記式(3-3)により求められる。
Z2=ZA2-ZB (3-2)
Z1=ZA1-ZB (3-3)
式中、ZA2は、前記額縁領域の反射率(%)を表す。ZA1は、前記表示領域の反射率(%)を表す。ZBは、前記第一の偏光板の表面反射率(%)を表す。
【請求項10】
前記内部反射率比yに対する前記内部反射率比zの比率(z/y)は、0.95~1.05であることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、表示のために液晶材料を利用する表示装置であり、その代表的な表示方式は、
図11に示すように、TFT(Thin Film Transistor)基板30A及びCF(Color Filter)基板50A間に液晶層40Aを有する液晶表示パネル100Aに対してバックライト6Aから光を照射し、液晶組成物に電圧を印加して液晶分子の配向を変化させることにより、液晶表示パネル100Aを透過する光の量を制御するものである。液晶表示装置は、薄型、軽量及び低消費電力といった特長を活かして幅広い分野で用いられている。
【0003】
従来の液晶表示装置では、液晶表示パネルの表示領域の外縁に、配線や部材、隙間等を隠すために額縁領域が設けられている。額縁領域は通常、樹脂等により遮光されている。近年では、操作性やデザイン性等の観点から、液晶表示パネルの表示領域と額縁領域とを含む全体をカバーガラスで覆う等して、1枚の板のようなデザイン、即ちいわゆるフラットデザインを採用した液晶表示装置が増えている。
【0004】
液晶表示装置の一例として、例えば特許文献1には、画素電極が配置されたTFT基板と、該画素電極に対応するカラーフィルタが形成された対向基板とを備えた液晶表示パネルを有する液晶表示装置が開示されている。この装置では、対向基板に接着された偏光板と外力から保護するための面板とが紫外線硬化樹脂によって接着されており、該面板の内側には、黒色インクを印刷することで形成された遮光膜が額縁状に形成されている。特許文献1では、黒色インクの含有成分やその量を調整することで、面板と偏光板との接着時に気泡が発生することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11は、一般的な液晶表示装置の断面模式図である。
図11に示す一般的な液晶表示装置1Aを観察面側から見た概略図を、
図12に示す。なお通常、液晶表示パネル(
図11のCF基板50AからTFT基板30Aまでの部分)の両面に一対の偏光板を配置することが一般的であるが、
図11では、便宜上、偏光板を省略している。一般的な液晶表示装置1Aでは、観察面側にCF基板50Aが配置される(
図11参照)。CF基板50Aにおいては一般に、表示領域300AにR(赤)、G(緑)及びB(青)のカラーフィルタ(サブ画素)71Aと、該カラーフィルタを区画するブラックマトリクス72Aとが形成され、該表示領域300Aの周囲に、外部から表示領域内に入り得る不要な光を遮光するためのブラックマトリクスが、額縁状に形成されている(310A)。この額縁状に形成されたブラックマトリクスは、表示領域300A内のブラックマトリクス72Aから延長するように形成されるため、見栄えに関して大きな違和感はない。
【0007】
ところで近年では、上述したようにフラットデザインを採用した液晶表示装置が増えている。液晶表示パネルの表面全体がフラットなものは、四辺フルフラットとも称され、液晶表示パネルの三辺がフラットなものは、三辺フラットとも称される。本発明者らは、三辺又は四辺フルフラットの液晶表示装置を実現する手法の一つとして、観察面側に、CF基板よりも基板サイズの大きなTFT基板が配置されるように、TFT基板とCF基板との配置を逆にした構造(反転構造と称す)について検討した。
【0008】
図13に、この反転構造の液晶表示装置1Bの断面模式図を示す。液晶表示装置1Bにおいては、観察面側から、TFT基板30B、液晶層40B及びCF基板50Bがこの順に配置され、CF基板50Bの背面にバックライト6Bが配置されている。
図13に示す液晶表示装置1Bを観察面側から見た概略図を、
図14に示す。なお通常、液晶表示パネル(
図13のTFT基板30BからCF基板50Bまでの部分)の両面に一対の偏光板を配置することが一般的であるが、
図13では、便宜上、偏光板を省略している。TFT基板30Bにおいては、表示領域300Bの周囲に、液晶表示に必要なメタル配線等が存在するため、線状の模様が視認される。そこで、本発明者らは、デザイン性の観点からこの配線等を隠す手段の一つとして、表示領域300Bの周囲に、黒色インクで額縁状(310B)に印刷する方法を検討した。だが、この方法を採用した場合、電圧無印加時(Off状態)に、表示領域300Bでは、明るく、かつTFT基板30B上に形成されたメタル配線のメタル種による色味を観察することができる一方で、表示領域300Bと、黒を基調とする額縁領域310Bとにおいて見栄えの一体感が得られないことがあることを見出した。この場合、液晶表示装置(及び液晶表示パネル)のデザイン性の観点で課題が生じる。なお、表示領域300Bでは、カラーフィルタ71B及びブラックマトリクス72Bも、視認される。
【0009】
このように見栄えに一体感が損なわれた原因は、反射率の違いにあると考えられる。即ち表示領域300Bでは、TFT基板30B上に形成されたメタル配線等の影響によって、外部からの入射光の反射率が、額縁領域310Bの黒色インクよりも高くなるためと考えられる。そこで、本発明者らは、例えば、表示領域300Bと額縁領域310Bとで反射率を一致させることを検討した。だが、この場合は額縁領域310Bの明るさが目立つことになり、見栄えの一体感が得られなかった。その原因は、反射の違いにあると考えられる。表示領域300Bでは、外部からの入射光が主に、TFT基板30B上に形成されたメタル等の反射によって正反射するのに対し、額縁領域310Bでは、入射光が主に、インクに含まれる樹脂によって拡散反射する。拡散反射が主な額縁領域310Bの方が、外部からの入射光の影響を受け易いため、表示領域300Bと額縁領域310Bとで反射率を一致させたとしても、見栄えの一体感は得られない。
【0010】
特許文献1には、インクの反射率や色味を検討したような記載はないため、表示領域と額縁領域との見栄えの一体感については検討されていないと判断できる。特許文献1に記載の液晶表示装置はまた、観察面側にCF基板が配置された構造であり、CF基板の観察面側には、液晶表示パネルを保護するために、ガラスで形成された面板、即ちいわゆるカバーガラスを必須に備えている。このような装置では、デザイン性を更に向上させるための工夫の余地があった。また近年では、液晶表示装置には薄型、軽量でかつ安価であることが強く要望されるが、その要望により充分に応えられる装置とするための工夫の余地もあった。
【0011】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、見栄えに一体感があり、デザイン性に優れる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の一実施形態は、第一の偏光板と、薄膜トランジスタを備える第一の基板と、液晶分子を含有する液晶層と、第二の基板と、第二の偏光板と、バックライトと、をこの順に備える液晶表示装置であって、上記第一の基板は、表示領域と、上記表示領域の外縁に配置された額縁領域とを有し、上記第一の基板の額縁領域と上記第一の偏光板との間に、インク層を有し、下記式(1-1)で表される内部反射率比yが0.2~0.3である、液晶表示装置。
y=Y2/Y1 (1-1)
式中、Y2は、XYZ表色系のY値を用いて表される、上記額縁領域の内部反射率(%)であり、下記式(1-2)により求められる。Y1は、上記表示領域の内部反射率(%)を表し、下記式(1-3)により求められる。
Y2=YA2-YB (1-2)
Y1=YA1-YB (1-3)
式中、YA2は、上記額縁領域の反射率(%)を表す。YA1は、上記表示領域の反射率(%)を表す。YBは、上記第一の偏光板の表面反射率(%)を表す。
【0013】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、カバーガラスを有さない、液晶表示装置。
【0014】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は上記(2)の構成に加え、上記第一の偏光板は、上記第一の基板の三辺又は四辺まで覆うように配置されている、液晶表示装置。
【0015】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)又は上記(3)の構成に加え、上記第一の偏光板及び第二の偏光板は、直線偏光板である、液晶表示装置。
【0016】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)又は上記(4)の構成に加え、上記第二の偏光板の偏光軸は、上記第一の偏光板の偏光軸に対してクロスニコルに配置されている、液晶表示装置。
【0017】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)又は上記(5)の構成に加え、上記インク層は、カーボンブラックを含む、液晶表示装置。
【0018】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)又は上記(6)の構成に加え、下記式(2-1)で表される内部反射率比xが0.2~0.3である、液晶表示装置。
x=X2/X1 (2-1)
式中、X2は、XYZ表色系のX値を用いて表される、上記額縁領域の内部反射率(%)であり、下記式(2-2)により求められる。X1は、上記表示領域の内部反射率(%)を表し、下記式(2-3)により求められる。
X2=XA2-XB (2-2)
X1=XA1-XB (2-3)
式中、XA2は、上記額縁領域の反射率(%)を表す。XA1は、上記表示領域の反射率(%)を表す。XBは、上記第一の偏光板の表面反射率(%)を表す。
【0019】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)又は上記(7)の構成に加え、上記内部反射率比yに対する上記内部反射率比xの比率(x/y)は、0.95~1.05である、液晶表示装置。
【0020】
(9)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)、上記(7)又は上記(8)の構成に加え、下記式(3-1)で表される内部反射率比zが0.2~0.3である、液晶表示装置。
z=Z2/Z1 (3-1)
式中、Z2は、XYZ表色系のZ値を用いて表される、上記額縁領域の内部反射率(%)であり、下記式(3-2)により求められる。X1は、上記表示領域の内部反射率(%)を表し、下記式(3-3)により求められる。
Z2=ZA2-ZB (3-2)
Z1=ZA1-ZB (3-3)
式中、ZA2は、上記額縁領域の反射率(%)を表す。ZA1は、上記表示領域の反射率(%)を表す。ZBは、上記第一の偏光板の表面反射率(%)を表す。
【0021】
(10)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)、上記(7)、上記(8)又は上記(9)の構成に加え、上記内部反射率比yに対する上記内部反射率比zの比率(z/y)は、0.95~1.05である、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、見栄えに一体感があり、デザイン性に優れる液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1の液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。
【
図2】
図1で示される液晶表示装置を、観察面側から見た概略図である。
【
図3】
図1で示される液晶表示装置をより詳しく示す断面模式図である。
【
図4】
図3で示される液晶表示装置のうち、第二の基板50がカラーフィルタを有する態様の液晶表示装置を、観察面側から見た概略図である。
【
図5】額縁領域の反射率A2及び表示領域の反射率A1を説明するための図である。
【
図6】第一の偏光板の表面反射率Bを説明するための図である。
【
図7】額縁領域の反射率A2と第一の偏光板の表面反射率Bとの違いを概念的に示す図である。
【
図8】実施形態2の液晶表示装置の一例を、より詳しく示す断面模式図である。
【
図9】評価試験時の実施例2-1及び比較例2-2の液晶表示パネルを撮影した写真である。
【
図10A】表示領域300と額縁領域310では、反射が異なることを説明するための図である。
【
図10B】表示領域300と額縁領域310では、反射が異なることを説明するための図である。
【
図11】一般的な液晶表示装置の断面模式図である。
【
図12】
図11で示される液晶表示装置を、観察面側から見た概略図である。
【
図13】反転構造の液晶表示装置の断面模式図である。
【
図14】
図13で示される液晶表示装置を、観察面側から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。
図1に示すように、液晶表示装置1は、観察面側から背面側に向かって順に、第一の偏光板11と、薄膜トランジスタ(TFTとも称す)を備える第一の基板30と、液晶分子41を含有する液晶層40と、第二の基板50と、第二の偏光板12と、バックライト6と、を有する。第一の基板30の額縁領域310(
図2参照)と、第一の偏光板11との間にインク層2を有する。
本明細書中、「観察面側」とは、液晶表示装置の画面(表示面)に対してより近い側を意味し、「背面側」とは、液晶表示装置の画面(表示面)に対してより遠い側を意味する。
【0026】
図1で示される液晶表示装置1を観察面側から見た概略図を、
図2に示す。
図2に示すように、第一の基板30は、表示領域300と、表示領域300の外縁に配置された額縁領域310とを有する。表示領域300は、バックライトの点灯時に任意の画像等が表示される領域である。つまり、バックライトの点灯時に液晶表示装置1の観察面側から視認される領域である。一方、額縁領域310は、表示領域300の外縁に額縁状に配置された領域である。額縁領域310は、光を透過しなくてもよい。額縁領域310と第一の偏光板11との間にインク層2を有する(
図1参照)。
【0027】
(偏光板)
第一の偏光板11の偏光軸と第二の偏光板12の偏光軸とは、互いに直交するよう配置されてもよく(すなわちクロスニコル配置)、互いに平行となるように配置されてもよい(すなわちパラレルニコル配置)が、互いに直交するように配置されることが好ましい。即ち第二の偏光板12の偏光軸は、第一の偏光板11の偏光軸に対してクロスニコルに配置されていることが好適である。
【0028】
本実施形態では、円偏光モードではなく、直線偏光モードの液晶表示装置であることが好適である。従って、第一の偏光板11及び第二の偏光板12は、直線偏光板であることが好ましい。なお、第一の偏光板11と第一の基板30との間、及び、第二の偏光板12と第二の基板50との間には、位相差フィルム等の光学フィルムが配置されていてもよい。だが、上述の通り直線偏光モードが好ましい観点から、本発明の液晶表示装置は、位相差フィルムを有さないことが好適である。
【0029】
第一の偏光板11は、第一の基板30の三辺又は四辺まで覆うように配置されている。即ち、第一の偏光板11及び第一の基板30の平面形状が四角形である場合、第一の偏光板11の外縁のうち三辺以上が、それに対応する第一の基板30の外縁と重なるか又は当該第一の基板30の外縁よりも外側になるように、第一の偏光板11を配置することが好ましい。基板より偏光板の外縁が内側にあると、偏光板端の切り口が視認されて、デザイン性をより一層高めることができない場合がある。そこで偏光板の外縁を隠すための手段として、ベゼル(フレーム)により隠す手段や、特許文献1のように額縁にインク印刷したカバーガラスを設置する手段が考えられる。だが、前者の手段ではフラットデザインを実現することが困難となり、後者の手段ではカバーガラスが必要になる。一方、上記のように、第一の偏光板11が第一の基板30の三辺又は四辺まで覆うように配置されていると、薄くフラットなデザインを実現することができる。即ち、本発明の液晶表示装置が、三辺フラット又は四辺フルフラットの液晶表示装置として好適なものとなる。また、狭額縁によるデザイン性の更なる向上も期待できる。なお、第一の偏光板11の外縁のうち三辺以上が、それに対応する第一の基板30の外縁と重なる(外縁と揃う)ことが、より好ましい。
【0030】
第一の偏光板11及び第二の偏光板12としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素錯体(又は染料)等の異方性材料を染色及び吸着させてから延伸配向させた偏光子(吸収型偏光板)等が挙げられる。なお、一般的には、機械強度及び耐湿熱性を確保するために、ポリビニルアルコールフィルムの両側にトリアセチルセルロースフィルム等の保護フィルムが積層された状態で実用に供される。
【0031】
(インク層)
インク層2は、第一の基板30の額縁領域310と第一の偏光板11との間に位置する。インク層2により、額縁領域310と第一の偏光板11とが接着されている。インク層2は、インク材料を、第一の基板30の裏側(第一の偏光板11側)の額縁領域310に、印刷により塗布することによって、形成される。塗布後に、加熱及び/又は乾燥することが好ましい。
【0032】
インク層2の材料(インク材料とも称す)は、遮光性を有するものが好適である。例えば、黒色顔料と樹脂とを含有するものが好ましい。黒色顔料としてはカーボンブラックが好適である。樹脂は特に限定されず、インク用樹脂として使用されるものを用いればよい。インク材料は、反射率を調整するために白色顔料を更に含むことが好ましく、白色顔料としては例えば、酸化チタン等の金属物質が好適である。また、硬化剤を更に含むことが好適である。例えば樹脂としてポリウレタン系樹脂を用いる場合、硬化剤の主成分はイソシアネート基を有する材料であることが好ましい。硬化剤の含有割合は特に限定されず、例えば、インク材料の主剤(顔料及び樹脂)100質量部に対し、5~15質量部であることが好適である。なお、インク材料として市販品を用いることもでき、当該市販品としては例えば、セイコーアドバンス社製のスクリーン印刷インク(例えばポリウレタン系等)等が挙げられる。
インク層の厚みは特に限定されないが、例えば、インク層の最厚部の厚みが500nm~10μmであることが好ましい。より好ましくは、最厚部の厚みが1~5μmである。
【0033】
(基板)
図1で示される液晶表示装置をより詳しく示す断面模式図、即ち基板をより詳しく示した断面模式図を
図3に示す。第一の基板30は、絶縁基板(絶縁膜とも称す)31と、絶縁基板31上に形成された各種配線及び画素電極32と、薄膜トランジスタ(TFT)等とを備える。表示領域300では、絶縁基板31上に、行方向に沿って互いに平行に延設された複数のゲート線と、絶縁膜を介して各ゲート線と交差する方向に沿って(列方向に沿って)互いに平行に延設され複数のソース線と、を備える。複数のゲート線及び複数のソース線は、各画素を区画するように全体として格子状に形成されている。各ソース線と各ゲート線との交点にはスイッチング素子としてのTFTが配置されている。TFTとドレイン配線で接続された画素電極32が、画素領域内に配置されている。画素電極32は、行方向及び列方向にマトリクス状に複数配置されている。第一の基板30としては、液晶表示パネルの分野において、TFT基板等として通常使用されるものを用いることができる。
【0034】
第二の基板50は、第一の基板30と、液晶層40を挟んで対向して配置される。第二の基板50は、絶縁基板(絶縁膜とも称す)51と、共通電極52とを有する。共通電極52は、液晶層40を介して、画素電極32と向かい合うように配置されている。共通電極52と画素電極32との間で縦電界を形成して、液晶分子41を傾けることで、表示を行うことができる。即ち本実施形態1の液晶表示装置は、液晶層40の厚さ方向(又は面外方向)に電界が印加される、縦電界モードである。縦電界モードには、例えば、TN(Twisted Nematic)モードや、VA(Vertical Alignment)モード等がある。
【0035】
画素電極32及び共通電極52は、透明電極であってもよい。例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の透明導電材料、又は、それらの合金で形成することができる。また、絶縁基板31及び51は、ガラス等を材料とする絶縁性の透明基板が好ましく用いられる。
【0036】
第一の基板30及び第二の基板50のいずれかは、カラーフィルタを備える基板であってもよい。いずれもカラーフィルタを有さないものであってもよい。第一の基板30がカラーフィルタを備える場合、当該第一の基板30はカラーフィルタオンアレイ(Color Filter On Array)と称される形態となる。また、本実施形態に係る液晶表示装置は、モノクロディスプレイや、フィールドシーケンシャルカラー(FFS)方式であってもよいが、これらの場合、カラーフィルタは不要である。
【0037】
第一の基板30又は第二の基板50がカラーフィルタを有する場合、絶縁基板31又は51上に、格子状に形成されたブラックマトリクス72、及び、格子(即ち画素)の内側に形成されたカラーフィルタ71等が設けられた構成が挙げられる。ブラックマトリクス72は、画素の境界と重なるように一画素ごとに格子状に形成されてもよく、更に、一画素の中央を短手方向に沿って横切るように、半画素ごとに格子状に形成されてもよい。カラーフィルタは、例えば、列ごとに、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の順で配置されてもよいし、黄色(Y)、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の順で配置されてもよいし、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、緑色(G)順で配置されてもよい。なお、
図4は、
図3に示す液晶表示装置のうち第二の基板50がカラーフィルタを有する態様の液晶表示装置を、観察面側から見た概略図である。
【0038】
(液晶層)
液晶層40は、液晶分子41を含む。液晶層40に対して電圧を印加し、印加した電圧に応じて液晶材料中の液晶分子41の配向状態を変化させることにより、光の透過量を制御する。液晶分子41は、下記式(4);
Δε=(長軸方向の誘電率)-(短軸方向の誘電率) (4)
で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよい。正の誘電率異方性を有する液晶分子はポジ型液晶とも称し、負の誘電率異方性を有する液晶分子はネガ型液晶とも称す。
なお、液晶分子の長軸方向が遅相軸の方向となる。液晶分子は、電圧が印加されていない状態(電圧無印加状態)でホモジニアス配向するものであり、電圧無印加状態における液晶分子の長軸の方向は、液晶分子の初期配向の方向ともいう。
図1及び
図3中、液晶分子41内の矢印は、液晶分子41の第二の基板50側の長軸端部を始点とし、第一の基板30側の長軸端部を終点としたときの配向ベクトル(液晶分子の向き)を表す。
図1及び
図3では、便宜上、液晶分子の向きを基板の短軸方向に沿った形態を記載したが、本発明では、液晶表示モードや液晶分子の配向方向(向き)は特に限定されない。本発明の液晶表示装置は、液晶表示モードや液晶分子の配向方向によらず、見栄えに一体感があり、デザイン性に優れるという効果を発揮することができる。
【0039】
液晶層40に含まれる液晶分子41は、電圧無印加時に略垂直に配向する。液晶分子41が略垂直に配向するとは、液晶層40への電圧無印加時(液晶層40への印加電圧が閾値電圧未満である場合)に、液晶層40中の液晶分子41が第一の基板30及び第二の基板50の各々の主面に対して略垂直に配向することをいう。
本明細書では、共通電極と画素電極との間に電圧が印加された電圧印加状態を、単に「電圧印加状態」とも称し、共通電極と画素電極との間に電圧が印加されていない電圧無印加状態を、単に「電圧無印加状態」又は「電圧無印加時」と称す。
【0040】
(反射率)
液晶表示装置1は、上記式(1-1)で表される内部反射率比yが0.2~0.3である。これにより、表示領域300と額縁領域310とにおいて見栄えに一体感が得られ、デザイン性に優れる液晶表示装置を実現することができる。内部反射率比yの下限値は、好ましくは0.1であり、上限値は、好ましくは0.5である。
【0041】
液晶表示装置1はまた、上記式(2-1)で表される内部反射率比xが0.2~0.3であることが好ましい。内部反射率比yと内部反射率比xとが近いと、色がより一致することになるため、より一体感のある見栄えを実現できる。この観点から、内部反射率比yに対する内部反射率比xの比率(x/y)は0.95~1.05であることが好ましい。より好ましくは0.97~1.03、更に好ましくは0.99~1.01であり、最も好ましくは1、即ち内部反射率比yと内部反射率比xとが一致することである。
【0042】
液晶表示装置1はまた、上記式(3-1)で表される内部反射率比zが0.2~0.3であることが好ましい。内部反射率比yと内部反射率比zとが近いと、色がより一致することになるため、より一体感のある見栄えを実現できる。この観点から、内部反射率比yに対する内部反射率比zの比率(z/y)は0.95~1.05であることが好ましい。より好ましくは0.97~1.03、更に好ましくは0.99~1.01であり、最も好ましくは1、即ち内部反射率比yと内部反射率比zとが一致することである。
【0043】
上記式(1-2)、(2-2)及び(3-2)中、「額縁領域の反射率」とは、XYZ表色系のX値、Y値又はZ値を用いて表される反射率であって、液晶表示パネルを構成(作製)した後に、第一の偏光板側から、額縁領域上の当該偏光板について測定した反射率A2である。つまり、「額縁領域の反射率」は、「額縁領域上の第一の偏光板の反射率」と称することもできる。具体的には、
図5に示すように、液晶表示パネル100を作製した後、第一の偏光板11側から、額縁領域310上の第一の偏光板11の反射率を測定する。第一の偏光板11と第二の偏光板12とは、クロスニコルに配置されている。これを「額縁領域の反射率」(A2)と称す。このうち、XYZ表色系のX値を用いて表される反射率をX
A2とし、Y値を用いて表される反射率をY
A2とし、Z値を用いて表される反射率をZ
A2とする。なお、
図5は、額縁領域の反射率A2及び表示領域の反射率A1を説明するための図である。
【0044】
本明細書中、液晶表示パネルとは、液晶表示装置のうち、一対の基板で挟まれた構造部分(構造体)を意味し、例えば
図1で言えば、第一の基板30から第二の基板50までの部分(第一の基板30、液晶層40及び第二の基板50からなる部分)を意味する。一対の基板の外側に位置する、偏光板やバックライト等は含まない。
【0045】
上記式(1-3)、(2-3)及び(3-3)中、「表示領域の反射率」とは、XYZ表色系のX値、Y値又はZ値を用いて表される反射率であって、液晶表示パネルを構成(作製)した後に、第一の偏光板側から、表示領域上の当該偏光板について測定した反射率A1である。つまり、「表示領域の反射率」は、「表示領域上の第一の偏光板の反射率」と称することもできる。具体的には、
図5に示すように、液晶表示パネル100を作製した後、第一の偏光板11側から、表示領域300上の第一の偏光板11の反射率を測定する。これを「表示領域の反射率」(A1)と称す。このうちXYZ表色系のX値を用いて表される反射率をX
A1とし、Y値を用いて表される反射率をY
A1とし、Z値を用いて表される反射率をZ
A1とする。
ここで、額縁領域の反射率A2及び表示領域の反射率A1は、液晶表示パネルの種類やインク層の有無により変化し得る。
【0046】
また
図6に示すように、ガラス8の片方の面に第一の偏光板11を貼り、ガラス8のもう一方の面に第二の偏光板12を貼る。その際、これら偏光板の偏光軸が互いにクロスニコルになるように貼る。こうして作製した積層体(測定基準となる積層体)9について、第一の偏光板11側から、反射率Bを測定する。これを「第一の偏光板の表面反射率」(B)と称す。このうち、XYZ表色系のX値を用いて表される反射率をX
Bとし、Y値を用いて表される反射率をY
Bとし、Z値を用いて表される反射率をZ
Bとする。ガラス8としては、通常一般的なガラスを使用すればよい。なお、
図6は、第一の偏光板の表面反射率Bを説明するための図である。
ここで、第一の偏光板の表面反射率Bは、第一の偏光板として同じ偏光板を使用している限り、液晶表示パネルの種類やインク層の有無に限らず、同じになる。つまり、第一の偏光板の表面反射率は、実質的に、偏光板固有の値であると言える。
【0047】
図7に、額縁領域の反射率(A2)と第一の偏光板の表面反射率(B)との違いを概念的に示す。一般に、一対の偏光板により液晶表示パネルが挟持された構造体について反射率を測定すると、その測定値には、偏光板表面の反射率(例えば
図7では、第一の偏光板11の表面反射率B)が含まれる。この偏光板表面の反射率は、上述した通り、同じ偏光板を使用している限り、液晶表示パネルの種類やインク層の有無に限らず、同じになる。そのため、表示領域と額縁領域とで反射率を比較する際には、この偏光板表面の反射率を含まない内部反射率(例えば
図7では、額縁領域の反射率A2)について、比較するべきである。そこで本発明では、内部反射率Y
2とY
1とを求め、これらの比yを規定することにした。
【0048】
本明細書中、反射率とは、SCI(Specular Component Include)方式による反射率を意味する。反射率の測定には、分光測色計を用いる。分光測色計としては、例えばコニカミノルタ社製の製品名「CM-2600d」が好ましく使用される。
【0049】
液晶表示装置1は、観察面側に、第一の偏光板11及び第一の基板30が配置される。このような構造では、カバーガラスが不要である。カバーガラスとは、液晶表示装置の最も観察面側に配置され、液晶表示装置の部材等を保護するガラスを意味する。例えば、
図11に示す一般的な液晶表示装置1Aがカバーガラスを有する場合、カバーガラスは、CF基板50Aよりも観察面側に配置される。カバーガラスの材料としては、例えば強化ガラス等が挙げられる。本実施形態の液晶表示装置は、カバーガラスを有してもよいが、カバーガラスを有さないことが好ましい。カバーガラスを有さない場合には、薄型化、軽量化及び低コスト化をより高いレベルで実現することができる。
【0050】
なお通常、カバーガラスの代わりに、アクリル樹脂やポリカーボネート等の樹脂を用いることもある。即ち、液晶表示装置の最も観察面側に配置され、液晶表示装置の部材等を保護する保護部材として、樹脂板を用いることもある。本実施形態の液晶表示装置は、この保護部材として樹脂板を有しても良いが、当該樹脂板を有さないことが好ましい。この場合も、薄型化、軽量化及び低コスト化をより高いレベルで実現することができる。
【0051】
次に、本実施形態の液晶表示装置の構成について更に説明する。
液晶表示装置1はまた、第一の基板30と液晶層40との間、及び、第二の基板50と液晶層40との間に、それぞれ、第一の配向膜及び第二の配向膜を備えてもよい。第一の配向膜及び第二の配向膜は、光配向膜材料を成膜し、光配向処理を行うことによって液晶分子41を特定方向に配向させる機能を発現させた光配向膜であることが好ましい。光配向膜材料とは、紫外光、可視光等の光(電磁波)が照射されることによって構造変化を生じ、その近傍に存在する液晶分子41の配向を規制する性質(配向規制力)を発現する材料や、配向規制力の大きさ及び/又は向きが変化する材料全般を意味する。
【0052】
光配向膜材料は、例えば、二量化(二量体形成)、異性化、光フリース転移、分解等の反応が光照射によって起こる光反応部位を含む。光照射によって二量化及び異性化する光反応部位(官能基)としては、例えば、シンナメート、シンナモイル、4-カルコン、クマリン、スチルベンが挙げられる。光照射によって異性化する光反応部位(官能基)としては、例えば、アゾベンゼンが挙げられる。光照射によって光フリース転移する光反応部位としては、例えば、フェノールエステル構造が挙げられる。光照射によって分解する光反応部位としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸-1,2:3,4-二無水物(CBDA)等のシクロブタン環を含む二無水物が挙げられる。また、光配向膜材料は、垂直配向モードで使用可能な垂直配向性を示すものが好ましい。光配向膜材料としては、例えば、光反応部位を含むポリアミド(ポリアミック酸)、ポリイミド、ポリシロキサン誘導体、メタクリル酸メチル、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0053】
また本実施形態では、ポリマー支持配向(PSA:Polymer Sustained Alignment)技術が用いられてもよい。PSA技術は、光重合性モノマーを含有させた液晶組成物を第一の基板30及び第二の基板50の間に封入し、その後に液晶層40に光を照射して光重合性モノマーを重合させることにより、第一の配向膜及び第二の配向膜の表面に重合体(ポリマー)を形成し、この重合体により液晶の初期傾斜(プレチルト)を固定化するものである。
【0054】
バックライト6は、可視光を含む光を発するものであれば特に限定されない。可視光のみを含む光を発するものであってもよく、可視光及び紫外光の両方を含む光を発するものであってもよい。カラー表示を可能とするためには、白色光を発する光源が好適に用いられる。バックライトの種類としては、例えば、発光ダイオード(LED)が好適に用いられる。なお、本明細書中、「可視光」とは、波長380nm以上800nm未満の光(電磁波)を意味する。
【0055】
本実施形態の液晶表示装置は、上述した部材等の他に、TCP(テープ・キャリア・パッケージ)、PCB(プリント配線基板)等の外部回路;視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルム;ベゼル(フレーム);等の複数の部材により構成されるものであり、部材によっては、他の部材に組み込まれていてもよい。既に説明した部材以外の部材については特に限定されず、液晶表示パネルや液晶表示装置の分野において通常使用されるものを用いることができるので、説明を省略する。
【0056】
本実施形態の液晶表示装置の製造方法は特に限定されず、液晶表示パネルや液晶表示装置の分野において通常使用される方法を用いることができる。例えば液晶表示パネルを作製するには、例えば、液晶層40の周囲を囲むように設けられたシール材によって、第一の基板30と第二の基板50とを貼り合わせることで、得ることができる。この場合、液晶層40が所定の領域に保持される。シール材としては、例えば、無機フィラー又は有機フィラー及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。また、必要に応じて、配向膜に対し配向処理を行ってもよい。液晶表示パネルを得た後、該液晶表示パネルの両面に偏光板をそれぞれ配置し(その際、インク層を上記のように形成することが好ましい。)、第二の基板50の背面側にバックライトを配置することで、液晶表示装置を得ることができる。
【0057】
(実施形態2)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。上記実施形態1では、縦電界モードの液晶表示装置について説明したが、本実施形態では、液晶層の平面方向(又は面内方向)に電界が印加される、横電界モードの液晶表示装置について説明する。横電界モードには、例えば、FFS(Fringe Field Switching)モードや、IPS(In-Plane Switching)モード等がある。
【0058】
図1及び
図2で示される通り、本実施形態に係る液晶表示装置1もまた、観察面側から背面側に向かって順に、第一の偏光板11と、TFTを備える第一の基板30と、液晶分子41を含有する液晶層40と、第二の基板50と、第二の偏光板12と、バックライト6と、を有し、第一の基板30の額縁領域310と第一の偏光板11との間にインク層2を有する。
【0059】
(基板)
図1で示される液晶表示装置をより詳しく示す断面模式図、即ち本実施形態における基板をより詳しく示した断面模式図を
図8に示す。第一の基板30は、TFTを備え、かつ画素電極32と共通電極52とを有する。共通電極52は、絶縁基板51を介して、画素電極32と向かい合うように配置されている。画素電極32と共通電極52との間で発生する横電界(FFSモードでは特にフリンジ電界)により液晶分子41の配向変化が生じ、これにより表示を行うことができる。
【0060】
横電界モードの本実施形態の液晶表示装置では、第二の基板50は特に限定されない。例えば、透明基板等が用いられる。なお、実施形態1で述べた通り、第一の基板30及び第二の基板50のいずれかは、カラーフィルタを備える基板であってもよいし、いずれもカラーフィルタを有さないものであってもよい。
【0061】
(液晶層)
液晶層40に含まれる液晶分子41は、電圧無印加時に略平行に配向する。液晶分子41が略平行に配向するとは、液晶層40への電圧無印加時(液晶層40への印加電圧が閾値電圧未満である場合)に、液晶層40中の液晶分子41が第一の基板30及び第二の基板50の各々の主面に対して略平行に配向することをいう。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、説明された個々の事項は、すべて本発明全般に対して適用され得るものである。
【0063】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、反射率の測定方法は上述した通りであり、分光測色計としては、コニカミノルタ社製の製品名「CM-2600d」を使用した。
【0064】
(試験例1)
(実施例1-1~1-2、比較例1-2~1-3)
図3及び
図4に示す構成と同様の構成を有する液晶表示装置を作製した。具体的にはまず、第一の基板30としてTFT基板を用い、第二の基板50としてCF基板とを用い、これら一対の基板を、液晶層40を挟んで貼り合わせることで、解像度FHD(full high definition)の液晶表示パネルを作製した。この液晶表示パネルのTFT基板の裏側の額縁領域に、インク材料を塗工した。その後、TFT基板及びCF基板の両裏面に、偏光板11及び12をクロスニコルに配置されるように貼り、CF基板がバックライト側になるように、バックライトモジュールに組み込んだ。
なお、偏光板11及び12としては、日東電工社製の「CVT-1764FCUHC」を用いた。偏光板11について、上述した方法(
図6参照)に従って求めた表面反射率Bは、X
B=4.4%、Y
B=4.6%、Z
B=5.1%であった。
【0065】
各例において、インク材料としては、カーボンブラックと酸化チタンと硬化剤とを含むポリウレタン系のスクリーン印刷インク(セイコーアドバンス社製)を用いた。その際、酸化チタンの含有量は、A<B<C<D(Dが最も多い)となるように変化させることで(表1参照)、反射率を異ならせるようにした。インク材料の塗工は、スクリーン印刷法により、TFT基板の裏側の額縁領域にインク材料を塗工し、60℃で加温し、乾燥させることで行った。こうして膜厚が3μmのインク層2を形成した。
【0066】
(比較例1-1)
インク層2を設けないこと以外は、実施例1-1~1-2及び比較例1-2~1-3と同様の構成の液晶表示装置を作製した。
【0067】
各例で得た液晶表示装置について、額縁領域上の第一の偏光板の反射率YA2を測定した。結果を表1に示す。また、第一の偏光板の表面反射率YBを測定したところ、4.6%であった。YA2からYBを差し引くことで、額縁領域の内部反射率Y2を求めた。結果を表1に示す。
【0068】
【0069】
(試験例2)
(実施例2-1~2-2、比較例2-2~2-3)
図3及び
図4に示す構成と同様の構成を有する液晶表示装置をそれぞれ作製した。具体的にはまず、第一の基板30としてTFT基板を用い、第二の基板50としてCF基板とを用い、これら一対の基板を液晶層40を挟んで貼り合わせることで、解像度UHD(ultra high definition)の液晶表示パネルを作製した。この液晶表示パネルのTFT基板の裏側の額縁領域に、インク材料を塗工した。その後、TFT基板及びCF基板の両裏面に、偏光板11及び12をクロスニコルに配置されるように貼り、CF基板がバックライト側になるように、バックライトモジュールに組み込んだ。
なお、偏光板11及び12については試験例1と同様であり、偏光板11の表面反射率Bは上述した通りである。
【0070】
各例において、インク材料としては、カーボンブラックと酸化チタンと硬化剤とを含むものを用いた。その際、酸化チタンの含有量は、E<F<G<H(Hが最も多い)となるように変化させることで(表2参照)、反射率を異ならせるようにした。塗工方法及び膜厚は、上記試験例1と同様である。
【0071】
(比較例2-1)
インク層2を設けないこと以外は、実施例2-1~2-2、比較例2-2~2-3と同様の構成の液晶表示装置を作製した。
【0072】
各例で得た液晶表示装置について、額縁領域上の第一の偏光板の反射率YA2を測定した。結果を表2に示す。また、第一の偏光板の表面反射率YBを測定したところ、4.6%であった。YA2からYBを差し引くことで、額縁領域の内部反射率Y2を求めた。結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
(試験例3)
(実施例3-1~3-2、比較例3-2~3-3)
図3及び
図4に示す構成と同様の構成を有する液晶表示装置を作製した。具体的にはまず、第一の基板30としてTFT基板を用い、第二の基板50としてCF基板とを用い、これら一対の基板を、液晶層40を挟んで貼り合わせることで、試験例2とは異なる、解像度UHDの液晶表示パネルを作製した。この液晶表示パネルのTFT基板の裏側の額縁領域に、インク材料を塗工した。その後、TFT基板及びCF基板の両裏面に、偏光板11及び12をクロスニコルに配置されるように貼り、CF基板がバックライト側になるように、バックライトモジュールに組み込んだ。
なお、偏光板11及び12については試験例1と同様であり、偏光板11の表面反射率Bは上述した通りである。
【0075】
各例において、インク材料としては、カーボンブラックと酸化チタンと硬化剤とを含むものを用いた。その際、酸化チタンの含有量は、I<J<K<L(Lが最も多い)となるように変化させることで(表3参照)、反射率を異ならせるようにした。塗工方法及び膜厚は、上記試験例1と同様である。
【0076】
(比較例3-1)
インク層2を設けないこと以外は、実施例3-1~3-2、比較例3-2~3-3と同様の構成の液晶表示装置を作製した。
【0077】
各例で得た液晶表示装置について、額縁領域上の第一の偏光板の反射率YA2を測定した。結果を表3に示す。また、第一の偏光板の表面反射率YBを測定したところ、4.6%であった。YA2からYBを差し引くことで、額縁領域の内部反射率Y2を求めた。結果を表3に示す。
【0078】
【0079】
(評価試験)
各例で得た液晶表示装置について、表示領域の反射率Y
A1及び内部反射率Y
1も測定し、よって内部反射率比yを求めた。結果を表4に示す。また、各例で得た液晶表示装置について、額縁領域の模様感及び見栄えの一体感を評価した。具体的には、各例で得た液晶表示装置が有する表示モジュール(即ち、液晶表示パネルと、その両面に貼付された偏光板11及び12とからなる部分を意味する。)を、400lux環境下の机上に置き、目視にて観察した。そして、以下に示す判定基準にて評価した。判定結果を表4に示す。例えば
図9に、評価試験時の実施例2-1及び比較例2-2の液晶表示パネルを撮影した写真を示す。
【0080】
(額縁領域の模様感)
〇:額縁領域310に、線状の模様が視認されない。
×:額縁領域310に、線状の模様が視認される。
(見栄えの一体感の判定)
〇:表示領域300と額縁領域310とで見栄えに一体感があった。
×:表示領域300と額縁領域310とで見栄えに一体感がなく、両者が明確に区別されていた。
【0081】
【0082】
比較例1-1、2-1及び3-1で得た液晶表示装置はインク層2を有さない。一般に、額縁領域310(その中でも特に、左右側や端子辺側)には、表示領域300に電気信号を送るためのメタル配線が配置されている。インク層2を有さない場合、そのメタルパターンが隠されずに視認されるため、額縁領域310には線状の模様が視認される(表4参照)。また、表示領域300と額縁領域310とで見栄えの一体感もなく、両者が明確に区別されて見えた(表4参照)。
【0083】
一方、上記以外の比較例及び実施例では、第一の基板30と第一の偏光板11との間にインク層2を備える。だが、明所での反射により、表示領域300と額縁領域310とで明るさの差が視認されて、見栄えの一体感が得られない場合があった(比較例1-2、1-3、2-2、2-3、3-2、3-3及び
図9参照)。この場合には、デザイン性を損なう(
図14も参照)。
【0084】
このように見栄えに一体感が損なわれた原因は、上述したように反射率の違いにあると考えられる。即ち表示領域300では、第一の基板30上に形成されたメタル配線等の影響によって、外部からの入射光の反射率が、額縁領域310にあるインク層2よりも高くなるためと考えられる。そこで、表示領域300と額縁領域310とで反射率を一致させること、つまり反射率の数値を一致させることを、一案として考えたが、この場合は、額縁領域310の明るさが目立つことになり、見栄えの一体感が得られない。その原因は、反射の違いにあると考えられる。
図10Aに示すように、表示領域300では、外部からの入射光が主に、第一の基板30側に設置されたメタル等の反射によって正反射する。これに対し、
図10Bに示すように、額縁領域310では、入射光が主に、インク層に含まれる樹脂によって拡散反射する。拡散反射が主である額縁領域310の方が、外部からの入射光の影響を受け易いため、明るく見えやすい。そのため、表示領域300と額縁領域310とで反射率を一致させたとしても、見栄えの一体感は得られない。
【0085】
これに対し、各実施例で得た液晶表示装置では、表示領域300と額縁領域310とで見栄えに一体感があり、デザイン性の向上を図ることができた(表4及び
図9参照)。なお、この結果から、内部反射率比yの数値範囲(0.2~0.3)に臨界的意義があることを確認することもできる。
【0086】
実施例1-1で得た液晶表示装置について、表示領域の反射率XA1、ZA1、額縁領域の反射率XA2、ZA2、第一の偏光板の表面反射率XB、ZBも測定したところ、以下のようであった。
XA1=8.1%
XA2=5.2%
XB=4.4%
ZA1=9.6%
ZA2=6.1%
ZB=5.1%
よって、上記式(2-1)~(2-3)及び(3-1)~(3-3)により内部反射率比x、zを求めたところ、内部反射率比x=0.22、内部反射率比z=0.22であった。
【0087】
以上に示した本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1、1A、1B:液晶表示装置
2:インク層
6、6A、6B:バックライト
8:ガラス
9:積層体
11:第一の偏光板
12:第二の偏光板
30:第一の基板
30A、30B:TFT基板
31:絶縁基板
32:画素電極
40、40A、40B:液晶層
41:液晶分子
50:第二の基板
50A、50B:CF基板
51:絶縁基板
52:共通電極
71、71A、71B:カラーフィルタ
72、72A、72B:ブラックマトリクス
100、100A:液晶表示パネル
300、300A、300B:表示領域
310、310A、310B:額縁領域
A1:表示領域の反射率
A2:額縁領域の反射率
B:第一の偏光板の表面反射率