(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157682
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】コークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 57/06 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
C10B57/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067747
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小山 雄也
(72)【発明者】
【氏名】川口 拓未
(72)【発明者】
【氏名】三河 健一
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012PA00
(57)【要約】
【課題】汚泥をコークス炉内で処分する場合であっても、石炭の嵩密度を向上させることができる、コークスの製造方法を提供する。
【解決手段】コークスの製造方法は、石炭供給工程(#5)と、汚泥添加工程(#10)と、薬剤添加工程(#15)と、を備える。石炭供給工程(#5)では、コークス炉(3)に石炭を搬送する搬送ラインに定められた第1位置(A)に石炭を供給する。汚泥添加工程(#10)では、搬送ラインのうちで第1位置(A)の下流に定められた第2位置(B)で、石炭に汚泥を添加する。薬剤添加工程(#15)では、第2位置(B)で汚泥の添加と同時に石炭に嵩密度向上剤を添加するか、又は搬送ラインのうちで第2位置(B)の下流に定められた第3位置(C)で、石炭及び汚泥に嵩密度向上剤を添加する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉に石炭を搬送する搬送ラインに定められた第1位置に前記石炭を供給する石炭供給工程と、
前記搬送ラインのうちで前記第1位置の下流に定められた第2位置で、前記石炭に汚泥を添加する汚泥添加工程と、
前記第2位置で前記汚泥の添加と同時に前記石炭に嵩密度向上剤を添加するか、又は前記搬送ラインのうちで前記第2位置の下流に定められた第3位置で、前記石炭及び前記汚泥に前記嵩密度向上剤を添加する薬剤添加工程と、を備える、コークスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコークスの製造方法であって、
前記搬送ラインは、前記石炭を混錬する混錬機を含み、
前記第1位置、前記第2位置、及び前記第3位置の各々は、前記混錬機の内部に位置する、コークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークスは、原料となる石炭をコークス炉に装入し、石炭を高温で乾留することにより製造される。コークスの製造において、石炭の嵩密度は、強度や生産性といったコークスの品質に大きく影響する。そのため、コークスの原料となる石炭の嵩密度を向上させることが求められている。
【0003】
石炭の嵩密度を向上させる方法として、コークス炉に石炭を搬送する搬送ラインで嵩密度向上剤(界面活性剤)を石炭に添加する方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、石炭の搬送ラインにおいて、粉砕機で粉砕した後の石炭に嵩密度向上剤を添加することより、粉砕前の石炭に嵩密度向上剤を添加する場合と比較して、優れた嵩密度向上効果が得られる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コークス炉を含む製鉄所では、廃棄物が発生し、この廃棄物の処理が問題となる。代表的な廃棄物は、余剰汚泥である。以下、汚泥に代表される様な含水物等を単に「汚泥」と言う。例えば、コークス炉は、その付帯設備として浄化設備を備える。浄化設備では、活性汚泥を用いて廃水処理が行われ、この廃水処理によって汚泥が発生する。汚泥の廃棄には費用がかかるため、汚泥をコークス炉内で処分することが求められている。
【0006】
本開示の目的は、汚泥をコークス炉内で処分する場合であっても、石炭の嵩密度を向上させることができる、コークスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るコークスの製造方法は、石炭供給工程と、汚泥添加工程と、薬剤添加工程と、を備える。石炭供給工程では、コークス炉に石炭を搬送する搬送ラインに定められた第1位置に石炭を供給する。汚泥添加工程では、搬送ラインのうちで第1位置の下流に定められた第2位置で、石炭に汚泥を添加する。薬剤添加工程では、第2位置で汚泥の添加と同時に石炭に嵩密度向上剤を添加するか、又は搬送ラインのうちで第2位置の下流に定められた第3位置で、石炭及び汚泥に嵩密度向上剤を添加する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るコークスの製造方法によれば、汚泥をコークス炉内で処分することができ、その場合であっても、石炭の嵩密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコークスの製造方法を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、石炭の搬送ラインの構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施例の検証結果を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施例の検証結果を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施例の検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ねた。まず、本発明者らは、汚泥をコークス炉内で処分するには、コークス炉に石炭を搬送する搬送ラインで石炭に汚泥を添加すればよいことを見出した。石炭に汚泥を添加した後、得られる混合物は、コークス炉に装入される。石炭に添加された汚泥は、石炭とともにコークス炉内で乾留され、コークスの成分となる。
【0011】
石炭に嵩密度向上剤が添加されると、嵩密度向上剤は水分に付着して石炭の表面を覆うことにより、石炭の表面張力を下げる。従来、嵩密度向上剤の添加は、石炭の搬送ラインの早いタイミングで(例えば、石炭を搬送ラインに供給後速やかに)行われていた。早い時期に石炭に嵩密度向上剤が添加されれば、石炭に嵩密度向上剤が添加されてから石炭がコークス炉に装入されるまでの時間が長くなり、この場合、嵩密度向上剤が石炭の表面で均一に広がることが期待できるからである。そのため、本発明者らは、石炭に嵩密度向上剤を添加した後に、石炭と嵩密度向上剤の混合物に汚泥を添加することを試した。しかしながら、このようなタイミングで嵩密度向上剤及び汚泥を石炭に添加すると、石炭に嵩密度向上剤を添加しているにもかかわらず、得られる混合物の嵩密度は十分に向上しなかった。以下、石炭に汚泥と嵩密度向上剤の少なくともどちらか一方が添加されたものを、単に「混合物」と言う。
【0012】
そこで、本発明者らは、石炭に嵩密度向上剤及び汚泥を添加するタイミングについて検討した。その結果、石炭に嵩密度向上剤及び汚泥を添加するタイミングが、得られる混合物の嵩密度を向上させる効果に大きく影響するという知見を得た。具体的には、石炭に汚泥を添加する場合には、石炭に汚泥を添加した後に混合物に嵩密度向上剤を添加すると、石炭に嵩密度向上剤を添加した後に混合物に汚泥を添加する場合と比較して、得られる混合物の嵩密度が向上しやすいことが分かった。その理由は、嵩密度向上剤を添加した後に汚泥を添加すると、汚泥に含まれる水分で石炭の表面を覆う嵩密度向上剤が流れ落ちたり局所的に薄まったりして、石炭表面の表面張力が上昇するからと考えられる。
【0013】
したがって、石炭に汚泥を添加する場合には、嵩密度向上剤を添加するタイミングが、汚泥を添加するよりも前でなければ、得られる混合物の嵩密度が向上しやすい。言い換えると、石炭に汚泥を添加する場合には、汚泥を添加するのと同時に石炭に嵩密度向上剤を添加するか、又は汚泥を添加した後に石炭及び汚泥に嵩密度向上剤を添加すれば、得られる混合物の嵩密度が向上しやすい。
【0014】
本開示の実施形態に係るコークスの製造方法は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0015】
本実施形態に係るコークスの製造方法は、石炭供給工程と、汚泥添加工程と、薬剤添加工程と、を備える。石炭供給工程では、コークス炉に石炭を搬送する搬送ラインに定められた第1位置に石炭を供給する。汚泥添加工程では、搬送ラインのうちで第1位置の下流に定められた第2位置で、石炭に汚泥を添加する。薬剤添加工程では、第2位置で汚泥の添加と同時に石炭に嵩密度向上剤を添加するか、又は搬送ラインのうちで第2位置の下流に定められた第3位置で、石炭及び汚泥に嵩密度向上剤を添加する(第1の構成)。
【0016】
第1の構成の製造方法では、汚泥添加工程において、石炭供給工程で石炭が供給された第1位置よりも下流側の第2位置で、石炭に汚泥を添加する。薬剤添加工程では、第2位置で、汚泥と同時に石炭に嵩密度向上剤を添加するか、又は第2位置よりも下流側の第3位置で、石炭及び汚泥に嵩密度向上剤を添加する。要するに、第1の構成の製造方法において、石炭に嵩密度向上剤を添加するタイミングは、石炭に汚泥を添加するのと同時か、又は汚泥を添加した後である。上述した通り、このようなタイミングで石炭に嵩密度向上剤を添加すれば、得られる混合物の嵩密度が向上する。これにより、第1の構成の製造方法によれば、コークス炉に装入される石炭の搬送ラインにおいて、搬送中の石炭に嵩密度向上剤及び汚泥を添加して得られる混合物の嵩密度を向上させることができる。
【0017】
第1の構成のコークスの製造方法は、下記の構成を備えてもよい。搬送ラインは、石炭を混錬する混錬機を含む。第1位置、第2位置、及び第3位置の各々は、混錬機の内部に位置する(第2の構成)。
【0018】
第2の構成の製造方法では、第1位置、第2位置、及び第3位置の各々は、混錬機の内部に位置する。要するに、石炭供給工程では、混錬機内に石炭を供給し、汚泥添加工程及び薬剤添加工程は、混錬機内で行われる。これにより、石炭に汚泥及び嵩密度向上剤を添加して得られた混合物を混錬機で混錬することができる。そのため、混合物が均一に混ざり、得られる混合物の嵩密度がより向上する。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0020】
図1は、本実施形態に係るコークスの製造方法を示すフロー図である。
図1に示すように、本実施形態の製造方法は、石炭供給工程(#5)と、汚泥添加工程(#10)と、薬剤添加工程(#15)と、を備える。本実施形態の製造方法では、粉砕機で粉砕された後の石炭に汚泥及び嵩密度向上剤を添加する。得られた混合物は、コークス炉に装入される。混合物(石炭、汚泥及び嵩密度向上剤)はコークス炉内で乾留され、これによりコークスが製造される。要するに、汚泥及び嵩密度向上剤の添加は、コークス炉に石炭を搬送する搬送ラインで行われる。以下、
図1に示す各工程を具体的に説明する。
【0021】
〔石炭供給工程(#5)〕
石炭供給工程(#5)では、石炭の搬送ラインに石炭を供給する。石炭供給工程(#5)で供給する石炭は、粉砕機で粉砕された後の石炭である。供給する石炭は、例えば石炭全体における粒径3mm以下の粒分の割合が80~90%となるように粉砕されている。石炭に含まれる水分が少ない場合、石炭に含まれる水分が多い場合と比較して、その石炭を用いて得られる混合物の嵩密度を向上させやすくなる。石炭に含まれる水分が少ないと、粒子間の滑りが良好になり、嵩密度が向上するからである。そのため、供給する石炭の含水率は極力低いことが好ましい。石炭の含水率は、例えば10.0%以下である。
【0022】
図2は、石炭の搬送ラインの構成例を示す模式図である。搬送ラインは、混錬機2を含む。搬送ラインでは、粉砕機1で粉砕された石炭が、混錬機2を経由しつつコークス炉3まで搬送される。石炭は、例えばベルトコンベアで搬送される。混錬機2は、ドラム状であり、搬送ラインの石炭の搬送方向に沿った軸を中心に回転可能である。混錬機2は、混錬機2内部の石炭を混錬する。
【0023】
図2を参照して、石炭供給工程(#5)では、搬送ラインの第1位置Aに石炭を供給する。第1位置Aは、混錬機2の内部に位置する。要するに、石炭供給工程(#5)では、混錬機2内に石炭を供給する。
【0024】
〔汚泥添加工程(#10)〕
汚泥添加工程(#10)では、第2位置Bで石炭に汚泥を添加する。第2位置Bは、搬送ラインのうちで第1位置Aの下流に定められる。つまり、汚泥添加工程(#10)では、石炭供給工程(#5)で第1位置Aに供給された後の石炭に対して汚泥を添加する。
【0025】
汚泥添加工程(#10)で石炭に添加する汚泥は、例えば、活性汚泥を用いた浄化設備から発生する余剰汚泥である。この浄化設備は、コークス炉3の付帯設備であり、廃水を処理する。汚泥の含水率は、例えば80~95%である。
【0026】
〔薬剤添加工程(#15)〕
薬剤添加工程(#15)では、第3位置Cで石炭及び汚泥に嵩密度向上剤を添加する。第3位置Cは、搬送ラインのうちで第2位置Bの下流に定められる。つまり、薬剤添加工程(#15)では、汚泥添加工程(#10)で石炭に汚泥を添加した後に、得られる石炭と汚泥の混合物に嵩密度向上剤を添加する。
【0027】
薬剤添加工程(#15)で石炭に添加する嵩密度向上剤は、典型的には界面活性剤である。嵩密度向上剤は、例えば、ジアルキルスルホコハク酸又はその塩(例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩)、アニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等)、及びノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン(POE)付加重合物又はその塩等)である。薬剤添加工程(#15)では、1種類の嵩密度向上剤を石炭に添加してもよいし、複数の種類の嵩密度向上剤を混合して石炭に添加してもよい。石炭に添加する嵩密度向上剤の質量%濃度は、例えば0.05~0.30%である。
【0028】
本実施形態の例では、薬剤添加工程(#15)において、嵩密度向上剤の添加は第3位置Cで行われる。しかしながら、嵩密度向上剤を添加するタイミングは、これに限定されるものではなく、汚泥を添加するよりも前でなければよい。言い換えると、嵩密度向上剤を添加する第3位置Cが、汚泥を添加する第2位置Bよりも上流側に位置しなければよい。つまり、第2位置Bと第3位置Cとは同じ位置であってもよい。この場合、薬剤添加工程では、第2位置Bで汚泥と同時に石炭に嵩密度向上剤を添加する。汚泥と同時に嵩密度向上剤を添加する場合は、別々の経路で汚泥及び嵩密度向上剤を添加してもよいし、事前に汚泥と嵩密度向上剤とを混合しておき、混合された汚泥及び嵩密度向上剤を添加してもよい。
【0029】
本実施形態の例では、第1位置A、第2位置B、及び第3位置Cの各々は、混錬機2の内部に位置する。しかしながら、第2位置B及び第3位置Cは、混錬機2よりも下流側であってもよい。要するに、混錬機2で混錬された後の石炭に対して、汚泥及び嵩密度向上剤を添加してもよい。ただし、その場合、汚泥及び嵩密度向上剤は、できるだけ上流側(例えば、第1位置Aの直後)で石炭に添加されるのが好ましい。得られた混合物が、混錬機2や搬送ラインのベルトコンベアの乗継部で十分に混合され、嵩密度向上剤が石炭の表面で均一に広がるからである。
【0030】
[効果]
本実施形態の製造方法では、汚泥添加工程(#10)において、石炭供給工程(#5)で石炭が供給された第1位置Aよりも下流側の第2位置Bで、石炭に汚泥を添加する。薬剤添加工程(#15)では、第2位置Bで、汚泥と同時に石炭に嵩密度向上剤を添加するか、又は第2位置Bよりも下流側の第3位置Cで、石炭及び汚泥に嵩密度向上剤を添加する。要するに、本実施形態の製造方法において、石炭に嵩密度向上剤を添加するタイミングは、石炭に汚泥を添加するのと同時か、又は汚泥を添加した後である。このようなタイミングで石炭に嵩密度向上剤を添加すれば、得られる混合物の嵩密度が向上する。これにより、本実施形態の製造方法によれば、コークス炉3に装入される石炭の搬送ラインにおいて、搬送中の石炭に嵩密度向上剤及び汚泥を添加して得られる混合物の嵩密度を向上させることができる。
【0031】
本実施形態の製造方法では、第1位置A、第2位置B、及び第3位置Cの各々は、混錬機2の内部に位置する。要するに、石炭供給工程(#5)では、混錬機2内に石炭を供給し、汚泥添加工程(#10)及び薬剤添加工程(#15)は、混錬機2内で行われる。これにより、石炭に汚泥及び嵩密度向上剤を添加して得られた混合物を混錬機2で混錬することができる。そのため、得られる混合物の嵩密度がより向上する。
【実施例0032】
[第1実施例]
本実施形態のコークスの製造方法の効果を確認するため、実際のコークス炉の石炭の搬送ラインを用いて、石炭に嵩密度向上剤を添加するタイミングによる混合物の嵩密度向上効果の違いを検証した。本実施例では、石炭に嵩密度向上剤を添加した後に汚泥を添加する場合(ケース1)に得られた混合物の嵩密度と、石炭に汚泥を添加した後に嵩密度向上剤を添加する場合(ケース2)に得られた混合物の嵩密度とを比較した。
【0033】
本実施例では、ケース1及びケース2のそれぞれにおいて、-0.3mm比率が異なる複数の石炭を用いて検証を行った。「-0.3mm比率」は、石炭全体における粒径0.3mm以下の粒分の割合を意味し、以下、「-0.3mm比率」を「細粒比率」と言う場合がある。本実施例では、まず、用いた石炭の細粒比率ごとに、得られた混合物の実嵩密度をグラフ上にプロットした。次に、ケース1について、プロットの近似直線を求め、その近似直線における細粒比率が20%のときの嵩密度の値を算出し、この値を基準値aとした。
【0034】
図3は、本実施例の検証結果を示す図である。
図3において、横軸は用いた石炭の-0.3mm比率を表し、縦軸は混合物の相対嵩密度を表す。
図3は、用いた石炭の-0.3mm比率と、得られた混合物の相対嵩密度との関係をプロットしたものである。相対嵩密度とは、混合物の嵩密度を基準値で除した値である。
図3では、ケース1及びケース2の各プロットを基準値aに対する相対値で表した。
【0035】
図3に示すケース1のプロットについて、近似直線S1を求めた。
図3を参照して、ケース1におけるプロットの近似直線S1は、横軸をx及び縦軸をyとしたときy=-0.0024x+1.0474と表すことができる。また、ケース2について、プロットの近似直線S2を求めた。ケース2におけるプロットの近似直線S2は、y=-0.0024x+1.0651と表すことができる。
【0036】
図4は、本実施例の検証結果を示す図である。
図4では、ケース1及びケース2のそれぞれにおいて、石炭の細粒比率(-0.3mm比率)が20%のときの相対嵩密度と、細粒比率が25%のときの相対嵩密度を棒グラフで示す。
【0037】
図4において、細粒比率が25%のときの相対嵩密度の基準値は、細粒比率が20%のときの相対嵩密度の基準値と異なる。細粒比率が20%の場合、相対嵩密度は、混合物の実嵩密度を基準値aで除した値である。要するに、
図4の細粒比率が20%の場合の基準値は、
図3のグラフにおける基準値と同じである。細粒比率が20%の場合、ケース1の相対嵩密度は、
図3の近似直線S1により算出した値、すなわち1で示され、ケース2の相対嵩密度は、
図3の近似直線S2により算出した値で示されている。
【0038】
一方、
図4の細粒比率が25%の場合、
図3の近似直線S1における細粒比率が25%のときの相対嵩密度の値を算出し、その値を基準値bとする。この場合の相対嵩密度は、
図3に示すケース1及びケース2の相対嵩密度を基準値bで除した値である。具体的には、細粒比率が25%の場合、ケース1の相対嵩密度は、
図3の近似直線S1により算出した値を基準値bで除した値、すなわち1で示され、ケース2の相対嵩密度は、
図3の近似直線S2により算出した値を基準値bで除した値が示されている。
【0039】
また、
図4では、石炭の-0.3mm比率が20%及び25%のそれぞれにおける嵩密度改善率を示す。嵩密度改善率とは、ケース1の混合物の嵩密度と比較して、ケース2の混合物の嵩密度が改善した度合いを表す指標である。嵩密度改善率R
1は、ケース1の混合物の嵩密度をρ
1、ケース2の混合物の嵩密度をρ
2としたとき、以下の式(1)を満たす。
【0040】
【0041】
図3及び
図4を参照して、用いた石炭の-0.3mm比率が同じ条件でケース1とケース2の結果とを比較すると、ケース2の嵩密度の方がケース1の嵩密度よりも大きかった。例えば、石炭の-0.3mm比率が20%のとき、嵩密度改善率R
1は約1.75であり、石炭の-0.3mm比率が25%のとき、嵩密度改善率R
1は約1.71である。このことから、汚泥を添加した後に嵩密度向上剤を石炭及び汚泥に添加すれば、嵩密度向上剤を添加した後に汚泥を添加するよりも、混合物の嵩密度が向上することがわかる。
【0042】
[第2実施例]
次に、実際のコークス炉の石炭の搬送ラインを用いて、石炭の含水率による混合物の嵩密度向上効果の違いを検証した。本実施例では、複数の石炭を用いて検証を行った。本実施例では、まず、用いた石炭の含水率と、得られた混合物の嵩密度との関係をプロットした。次に、各プロットの近似直線を求め、その近似直線における石炭の含水率が10.0%のときの嵩密度の値を算出した。この値を基準値とし、各プロットを基準値に対する相対値で表した。
【0043】
図5は、本実施例の検証結果を示す図である。
図5において、横軸は用いた石炭の含水率を表し、縦軸は混合物の相対嵩密度を表す。
図5は、用いた石炭の含水率と、得られた混合物の相対嵩密度との関係をプロットしたものである。本実施例において、混合物の相対嵩密度とは、混合物の嵩密度を上述した基準値で除した値である。
【0044】
図5に示すプロットについて、近似直線S3を求めた。
図5を参照して、各プロットの近似直線S3は、横軸をx及び縦軸をyとしたときy=-0.0122x+1.1214と表すことができる。
図5に示す結果から、用いる石炭の含水率が少ないほど、混合物の嵩密度が向上する。このことから、供給する石炭の含水率は極力低いことが好ましいことがわかる。
【0045】
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。