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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157693
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】包丁
(51)【国際特許分類】
   B26B 3/00 20060101AFI20231019BHJP
   B25G 1/00 20060101ALI20231019BHJP
   B25G 1/10 20060101ALI20231019BHJP
   B25G 3/36 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B26B3/00 C
B25G1/00 F
B25G1/10 A
B25G1/10 D
B25G3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067765
(22)【出願日】2022-04-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.掲載アドレス:https://www.instagram.com/p/CTYggwIHv5d/ 掲載日:令和3年9月4日 2.掲載アドレス:https://ryusen-hamono.com/news/detail.php?id=56 掲載日:令和3年9月24日 3.掲載アドレス:https://www.furusato-tax.jp/product/detail/18209/5322605 掲載日:令和3年9月28日以降 4.掲載アドレス:https://www.furusato-tax.jp/product/detail/18209/5322606 掲載日:令和3年9月28日以降 5.掲載アドレス:https://www.furusato-tax.jp/product/detail/18209/5322607 掲載日:令和3年9月28日以降 6.掲載アドレス:https://item.rakuten.co.jp/f182095-echizen/100000383/ 掲載日:令和3年9月28日以降 7.掲載アドレス:https://item.rakuten.co.jp/f182095-echizen/100000384/ 掲載日:令和3年9月28日以降 8.掲載アドレス:https://item.rakuten.co.jp/f182095-echizen/100000385/ 掲載日:令和3年9月28日以降 9.掲載アドレス:https://furusato.moneyforward.com/gift_detail?product_detail_id=5322605 掲載日:令和3年9月28日以降 10.掲載アドレス:https://furusato.moneyforward.com/gift_detail?product_detail_id=5322606 掲載日:令和3年9月28日以降 11.掲載アドレス:https://furusato.moneyforward.com/gift_detail?product_detail_id=5322607 掲載日:令和3年9月28日以降
(71)【出願人】
【識別番号】300040461
【氏名又は名称】株式会社龍泉刃物
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増谷 浩司
【テーマコード(参考)】
3C061
【Fターム(参考)】
3C061AA02
3C061AA13
3C061BB01
3C061BB03
3C061BB06
3C061BB10
3C061DD15
3C061EE13
(57)【要約】
【課題】柄部の総重量が軽減して包丁さばきを向上させ、竹材本来の美観を引き立たせて食文化の風情を漂わせるとともに、押し切り時や引き切り時に握持位置の不用意なズレが生じても使用者に握持位置の矯正を意識させ、引き切り時には握手が柄部の柄尻から抜け落ちることを抑止する包丁を得ること。
【解決手段】左右一対の柄部構成片120、120とダボ部材130とが、竹材からなり、柄部構成片120、120が、竹材の表皮側を柄部の左右両側面に露出させた状態で組付けられているとともに中子112と同一形状の平坦な接合面121に中子112の貫通穴112aと対向する有底のダボ穴122を有し、竹材の表皮側に突出した節目からなる握り抜け止め部123が、柄部構成片120、120の柄尻125に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切先から柄尻に向けて刃部と中子とを連続して形成した金属製の刀身と、該刀身の中子を左右両面側から挟装して柄部を構成する左右一対の柄部構成片と、前記中子に設けた複数の貫通穴に挿通して前記左右一対の柄部構成片を一体に保持する複数のダボ部材とを組付けた包丁であって、
前記左右一対の柄部構成片と前記ダボ部材とが、竹材からなり、
前記柄部構成片が、前記竹材の表皮側を前記柄部の左右両側面に露出させた状態で組付けられているとともに前記中子と同一形状の平坦な接合面に前記中子の貫通穴と対向する有底のダボ穴を有し、
前記竹材の表皮側に突出した節目からなる握り抜け止め部が、前記柄部構成片の柄尻に設けられていることを特徴とする包丁。
【請求項2】
前記柄部構成片の刃部側から前記刃部のあご近傍に向けて徐々に削り取られてなる肉薄の親指当接部または人差し指当接部が、前記左右一対の柄部構成片のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の包丁。
【請求項3】
前記柄部構成片の竹材を組織する維管束が、前記柄部構成片の刃部側と柄尻側との間で指向していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包丁。
【請求項4】
前記柄部構成片の外側形状が、前記竹材の表皮を露出させた部分から前記竹材の表皮を除去して維管束を露出させた部分を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包丁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、料理用の包丁であって、刃部と中子とを連続して形成した金属製の刀身と、この刀身の中子を装着する柄部とを一体に組付けた包丁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、包丁として、切先から柄尻に向けて刃部と中子とを連続して形成した金属製の刀身と、この刀身の中子を左右両面側から挟装して柄部を構成する、所謂、本通し構造を採用し、水に強い金属材、木材、もしくは、合成樹脂材からなる左右一対の柄部構成片とを一体に組付けた包丁がある(例えば、特許文献1を参照)。
また、切先から柄尻に向けて刃部と中子とを備えた金属製の刀身と、この刀身の中子を差し込んだ竹材からなる柄部を構成する、所謂、差し込み構造を採用し、柄部とを一体に組付けた包丁がある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-177014号公報(特に、請求項1、図2を参照。)
【特許文献2】実開昭61-99489号公報(特に、請求項5、図1を参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の包丁は、左右一対の柄部構成片が水に強い朴(ほお)、櫟(いちい)、積層強化木、紫檀、黒檀などの木材、もしくは、合成樹脂材からなっているため、柄部の重量が重くなり、この包丁の重心が柄部側に偏重し過ぎるため、包丁の使い勝手が悪く、しかも、左右一対の柄部構成片を一体に保持する金属製ボスなどのカシメ跡が柄部構成片の左右両側面に現出するため、柄部の左右両側面から食文化の風情を漂わす美観が感じられないという問題があった。
【0005】
また、後者の包丁は、柄部の全周にわたって竹材の表皮のみが露出した柄部となっているため、調理時に食文化の風情が感じられるものの、柄部に対する中子の組付け強度が充分でなく、しかも、柄部の長手方向に沿って複数の節目による凹凸が存在するため、料理時に複数の節目による凹凸に起因して握り辛く、正確な包丁さばきができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、柄部の総重量が軽減して包丁さばきを向上させ、竹材本来の美観を引き立たせて食文化の風情を漂わせるとともに、押し切り時や引き切り時に握持位置の不用意なズレが生じても使用者に握持位置の矯正を意識させ、引き切り時には握手が柄部の柄尻から抜け落ちることを抑止する包丁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本請求項1に係る発明は、切先から柄尻に向けて刃部と中子とを連続して形成した金属製の刀身と、該刀身の中子を左右両面側から挟装して柄部を構成する左右一対の柄部構成片と、前記中子に設けた複数の貫通穴に挿通して前記左右一対の柄部構成片を一体に保持する複数のダボ部材とを組付けた包丁であって、前記左右一対の柄部構成片と前記ダボ部材とが、竹材からなり、前記柄部構成片が、前記竹材の表皮側を前記柄部の左右両側面に露出させた状態で組付けられているとともに前記中子と同一形状の平坦な接合面に前記中子の貫通穴と対向する有底のダボ穴を有し、前記竹材の表皮側に突出した節目からなる握り抜け止め部が、前記柄部構成片の柄尻に設けられていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された包丁の構成に加えて、前記柄部構成片の刃部側から前記刃部のあご近傍に向けて徐々に削り取られてなる肉薄の親指当接部または人差し指当接部が、前記左右一対の柄部構成片のそれぞれに設けられていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された包丁の構成に加えて、前記柄部構成片の竹材を組織する維管束が、前記柄部構成片の刃部側と柄尻側との間で指向していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された包丁の構成に加えて、前記柄部構成片の外側形状が、前記竹材の表皮を露出させた部分から前記竹材の表皮を除去して維管束を露出させた部分を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、切先から柄尻に向けて刃部と中子とを連続して形成した金属製の刀身と、この刀身の中子を左右両面側から挟装して柄部を構成する左右一対の柄部構成片と、中子に設けた複数の貫通穴に挿通して左右一対の柄部構成片を一体に保持する複数のダボ部材とを組付けた包丁であって、以下のような技術的特徴を備えていることにより、以下のような本発明に特有の効果を奏することができる。
【0012】
すなわち、本請求項1に係る発明の包丁によれば、左右一対の柄部構成片とダボ部材とが竹材からなることにより、竹材に特有の消臭作用と殺菌作用を奏するため、調理用具として衛生的な効果を向上させることができる。
また、柄部構成片が、竹材の表皮側を柄部の左右両側面に露出させた状態で組付けられているとともに中子と同一形状の平坦な接合面に中子の貫通穴と対向する有底のダボ穴を有していることにより、左右一対の柄部構成片が刀身の中子を左右両面側から挟装して柄部を構成する、所謂、本通し構造を採用しているにも係わらず、従来の金属材料、木材、樹脂材料などを用いて本通し構造を採用した柄部と比較すると、柄部の総重量が軽減されるため、包丁の使い勝手を向上させることができるばかりでなく、竹材の表皮側が柄部の外側面に全面的に露出した状態で組付けられるため、調理時に自然色豊かな雰囲気で天然物的な手触り感が得られ、しかも、従来のように左右一対の柄部構成片を一体に保持する金属製ボスなどのカシメ跡が柄部構成片の外側面に存在しないため、柄部の外側面において竹材が奏する美観、風情を純粋に引き立たせることができる。
さらに、竹材の表皮側に突出した節目からなる握り抜け止め部が柄部構成片の柄尻に設けられていることにより、包丁を使用する際の押し切り時や引き切り時に握持位置の不用意なズレが生じたとしても握り抜け止め部が使用者に握持位置の矯正を意識させ、特に引き切り時には握手が柄部の柄尻から抜け落ちることを抑止する、所謂、抜け落ちストッパー効果を発揮することができる。
【0013】
本請求項2に係る発明の包丁によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、柄部構成片の刃部側から刃部のあご近傍に向けて徐々に削り取られてなる肉薄の親指当接部または人差し指当接部が、左右一対の柄部構成片のそれぞれに設けられていることにより、包丁を使用する際の押し切り時や引き切り時に親指当接部と人差し指当接部とが使用者に触感的に正規の握持位置を意識させるとともにこれらの親指当接部および人差し指当接部の領域内に包丁の重心を置かれることになるため、この包丁の重心を中心とした包丁の使い勝手、所謂、包丁さばきを著しく向上させることができる。
【0014】
本請求項3に係る発明の包丁によれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、柄部構成片の竹材を組織する維管束が、柄部構成片の刃部側と柄尻側との間で指向していることにより、維管束の一部を構成する道管が導水作用を奏するため、この道管が、調理場などで水に濡れた包丁の柄部に対して水分を吸収して水捌け効果を発揮して柄部に対する滑りを抑制する一方で、水場で使用した後の包丁では柄部内部の残留した水分の脱水機能を発揮して乾き易くなり、柄部を構成する柄部構成片の衛生的な維持管理を促進することができる。
【0015】
本請求項4に係る発明の包丁によれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、柄部構成片の外側形状が竹材の表皮を露出させた部分から竹材の表皮を除去して維管束を露出させた部分を備えていることにより、維管束を露出させた部分において維管束の切断面が現出し、この切断面が多孔質構造を呈するため、柄部構成片に付着した臭いとなる物質を吸収して、竹材に特有の消臭効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例である包丁を示す全体図。
図2図1に示す包丁の組み立て分解図。
図3図1に示す包丁のIII-III線で矢視した断面図。
図4】竹材を構成する維管束を示す分布状態図。
図5図1に示す包丁の使用態様図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、切先から柄尻に向けて刃部と中子とを連続して形成した金属製の刀身と、この刀身の中子を左右両面側から挟装して柄部を構成する左右一対の柄部構成片と、中子に設けた複数の貫通穴に挿通して左右一対の柄部構成片を一体に保持する複数のダボ部材とを組付けた包丁であって、左右一対の柄部構成片とダボ部材が、竹材からなり、柄部構成片が、竹材の表皮側を柄部の左右両側面に露出させた状態で組付けられているとともに中子と同一形状の平坦な接合面に中子の貫通穴と対向する有底のダボ穴を有し、竹材の表皮側に突出した節目からなる握り抜け止め部が、柄部構成片の柄尻に設けられ、柄部の総重量が軽減して包丁さばきを向上させ、竹材本来の美観を引き立たせて食文化の風情を漂わせるとともに、押し切り時や引き切り時に握持位置の不用意なズレが生じても使用者に握持位置の矯正を意識させ、引き切り時には握手が柄部の柄尻から抜け落ちることを抑止するものであれば、その具体的な実施態様は、いかなるものであっても何ら構わない。
【0018】
すなわち、本発明の包丁は、菜切包丁、刺身包丁、牛刀包丁、三徳包丁、パン切り包丁などとして用いられる様々な刃部を備えた包丁のいずれのものにも適用されることは言うまでもない。
【0019】
本発明の包丁に用いる刀身については、炭素鋼またはステンレス刃物鋼からなる1枚の芯材用鋼板の表裏両面にこの芯材用鋼板より粘り強い母材用鋼板を1枚ずつそれぞれ積層して鍛造した三層の断面構造を有する刃物用鋼板であれば、如何なるものであっても良いが、例えば、柔らかいステンレス鋼と硬いステンレス鋼を交互に33層重ねて鍛造してなる母材用鋼板を芯材用鋼板の表裏両面にそれぞれ積層接合してなる、所謂、67層ダマスカス鋼(モリブデン、バナジウム鋼に希少金属コバルトを加えたVG10鋼)を用いた場合には、折れ曲がりが無く、切れ味が良く、しかも、錆にも強い優れた耐食性を発揮することができるので、より好ましい。
【0020】
そして、本発明の包丁における柄部の具体的な形態については、左右一対の柄部構成片とダボ部材が竹材からなり、柄部構成片が竹材の表皮側を柄部の左右両側面に露出させた状態で組付けられているとともに中子と同一形状の平坦な接合面に中子の貫通穴と対向する有底のダボ穴を有し、竹材の表皮側に突出した節目からなる握り抜け止め部が柄部構成片の柄尻に設けられているものであれば、いかなるものであっても差し支えなく、例えば、竹材については、節の環が2つであって節間が比較的長い真竹、もしくは、節の環が1つであって材質部が比較的厚い孟宗竹のいずれであっても良く、また、柄部構成片に設ける親指当接部または人差し指当接部については、柄部構成片の刃部側から刃部のあご近傍に向けて徐々に削り取られてなる肉薄化した曲面領域であって包丁の重心を中心とした包丁の使い勝手を向上させるものであれば良いが、特に柄部に対して左右対称に設けると左右バランスの良い包丁さばきを達成することができるので、より好ましい。
【0021】
また、本発明の包丁における柄部の基本的な断面形態については、外側面に膨出するかまぼこ型であった方が、柄部を過度の握力を必要とすることなく握り易く、包丁さばきもさらに向上させることができる。
【実施例0022】
以下、本発明の一実施例である包丁100について、図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例である包丁を示す全体図であり、図2は、図1に示す包丁の組み立て分解図であり、図3は、図1に示す包丁のIII-III線で矢視した断面図であり、図4は、本発明の実施例における維管束の分布を示す図であり、図5は、図1に示す包丁の使用態様図である。
【0023】
まず、図1に示す本実施例の包丁100は、ステンレス刃物鋼からなる1枚の芯材用鋼板の表裏両面に母材用鋼板を1枚ずつそれぞれ積層して鍛造した三層の断面構造を有する刃物用鋼板からなる刀身110を備え、この刀身110に形成した刃部111の刃渡りが16~18cmほどで、肉・魚を調理しやすいようにみねの先がまるくて切先111aが尖り、野菜を切りやすいように切先111aに向かって緩やかに細く反っており、肉、魚、野菜など幅広い材料に対してさまざまな切り方ができる、所謂、三徳包丁と称するものである。
【0024】
すなわち、図2及び図3に示すように、本実施例の包丁100は、切先111aから柄尻125に向けて刃部111と中子112とを連続して形成した刀身110と、この刀身110の中子112を左右両面側から挟装して柄部を構成する左右一対の柄部構成片120、120とが、中子112に設けた3つの貫通穴112aに挿通する3本のダボ部材130によって一体に組付けられたものである。
【0025】
そして、上述した左右一対の柄部構成片120、120とダボ部材130は、消臭作用と殺菌作用を奏する真竹を採用している。
図4は、真竹Bを輪切りして維管束B2の分布状態を示した断面図であり、特に、柄部構成片120は、真竹Bを組織する各維管束B2の束長手方向が柄部構成片120の刃部111側から柄尻125側に向かって指向するように造形され、この真竹Bの表皮B1側を柄部の外側面に露出させた状態で組付けられている。
さらに、真竹Bの表皮B1を露出させた部分の一部、すなわち、親指当接部または人差し指当接部124と柄尻125には、真竹Bの表皮B1を除去して維管束B2を露出させた部分がそれぞれ配置され、維管束B2の一部を構成する道管B21が導水作用を奏するようになっている。
なお、図4に示す符号Bは、竹材(真竹)であって、符号B1は、この竹材Bの外周側に位置する表皮であり、符号B2は、竹材Bの中心側から外周側の表皮B1に向かって分布する無数の維管束であり、符号B21は、維管束B2の一部を構成して水分を通り道となる道管であり、符号B22は、維管束B2の一部を構成していろいろな養分の通り道であった師管であり、符号B23は、道管B21や師管B22を取り巻く維管束鞘であり、符号B24は、上述した無数の維管束B2の相互間に介在する柔細胞である。
【0026】
ここで、上述した柄部構成片120には、図2及び図3に示すように、中子112と同一形状の平坦な接合面121に中子112の貫通穴112aと対向する3つの有底のダボ穴122を有している。
したがって、左右一対の柄部構成片120、120は、刀身110の中子112をその左右両面側から挟装する、所謂、本通し構造を採用することによって、真竹Bの表皮B1側が、3本のダボ部材130とこれらに対応する3つのダボ穴122を介して、柄部の外側面に全面的に露出した状態となるように組付けられ、その結果、柄部が構成される。
【0027】
さらに、図3及び図5に示すように、柄部構成片120の柄尻125には、竹材の表皮側に突出した節目からなる握り抜け止め部123が設けられ、包丁100を使用する際に押し切り時や引き切り時に握持位置の不用意なズレが生じたとしても握り抜け止め部123が使用者に握持位置の矯正を意識させ、調理する際の引き切り時には握手が柄部の柄尻125から抜け落ちることを抑止するように形成されている。
【0028】
加えて、図2及び図5に示すように、左右一対の柄部構成片120、120には、柄部構成片120の刃部111側から刃部111のあご111b近傍に向けて徐々に削り取られてなる肉薄の親指当接部または人差し指当接部124が、これらの親指当接部および人差し指当接部124の領域内に包丁100の重心を置かれるようにそれぞれ設けられ、図5に示すように、使用者に触感的に正規の握持位置を意識させるようになっている。
すなわち、本実施例の包丁100が、柄部構成片120を力点とし、刃部111を作用点として機能する際に、肉薄の親指当接部または人差し指当接部124が、支点となるが、この支点となる親指当接部または人差し指当接部124に親指と人差し指が置かれるため、力点と作用点との間でバランスが良い包丁さばきを達成することができる。
【0029】
以上のようにして得られた本実施例の包丁100は、刀身110の中子112を左右両面側から挟装して柄部を構成する左右一対の柄部構成片120、120が、中子112に設けた3つの貫通穴112aに挿通する3本のダボ部材130によって一体に組付けられ、左右一対の柄部構成片120、120とダボ部材130が真竹Bからなることにより、真竹Bに特有の消臭作用と殺菌作用を発揮し、調理用具として衛生的な効果を向上させることができる。
【0030】
また、柄部構成片120が、真竹Bの表皮B1側を柄部の外側面に露出させた状態で組付けられているとともに中子112と同一形状の平坦な接合面121を有していることにより、左右一対の柄部構成片120、120が刀身110の中子112をその左右両面側から挟装して柄部を構成する本通し構造を採用しているにも係わらず、従来の金属材料、木材、樹脂材料などを用いて本通し構造を採用した柄部と比較すると、柄部の総重量が軽減されるため、包丁100の使い勝手を向上させることができるばかりでなく、調理時に自然色豊かな雰囲気で天然物的な手触り感が得られ、しかも、従来のように左右一対の柄部構成片120、120を一体に保持する金属製ボスなどのカシメ跡が柄部構成片120の外側面に存在せずに、柄部の外側面において真竹が奏する美観、風情を純粋に引き立たせることができる。
【0031】
さらに、柄部構成片120の柄尻125に設けた握り抜け止め部123が、引き切り時に使用者の握手が柄部の柄尻125から抜け落ちることを抑止する、所謂、抜け落ちストッパー効果を発揮することができる。
【0032】
加えて、柄部構成片120の刃部111側から刃部111のあご111b近傍に向けて徐々に削り取られてなる肉薄の親指当接部または人差し指当接部124が、左右一対の柄部構成片120、120のそれぞれに設けられていることにより、包丁100を使用する際の押し切り時や引き切り時に親指当接部と人差し指当接部124とが使用者に触感的に正規の握持位置を意識させるとともに、この包丁100の重心を中心とした包丁100の使い勝手、所謂、包丁さばきを著しく向上させることができる。
【0033】
柄部構成片120の真竹Bを組織する維管束B2が、柄部構成片120の刃部側と柄尻側との間で指向していることにより、維管束B2が、調理場などで水に濡れた包丁の柄部に対して水分を吸収して水捌け効果を発揮して柄部に対する滑りを抑制する一方で、水場で使用した後の包丁100では柄部内部の残留した水分の脱水機能を発揮して乾き易くなり、柄部を構成する柄部構成片120の衛生的な維持管理を促進することができる。
【0034】
柄部構成片120の外側形状が、竹材Bの表皮B1を露出させた部分から竹材Bの表皮B1を除去して維管束B2を露出させた部分を備えていることにより、すなわち、柄部構成片120が、真竹Bを組織する各維管束B2の束長手方向が柄部構成片120の刃部111側から柄尻125側に向かって指向するように造形され、この真竹Bの表皮B1側を柄部の外側面に露出させた状態で組付けられ、真竹Bの表皮B1を露出させた部分の一部、すなわち、親指当接部または人差し指当接部124と柄尻125に、真竹Bの表皮B1を除去して維管束B2を露出させた部分をそれぞれ配置したことにより、維管束B2を露出させた部分において維管束B2の切断面が多孔質構造となり、柄部構成片120に付着した臭いを吸収して、消臭効果をさらに高めることができるなど、その効果は甚大である。
【0035】
以上で、本発明の実施例の説明を終えるが、本発明の実施態様は、上述した実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
【符号の説明】
【0036】
100 ・・・包丁
110 ・・・刀身
111 ・・・刃部
111a・・・切先
111b・・・あご
112 ・・・中子
112a・・・貫通穴
120 ・・・柄部構成片
121 ・・・接合面
122 ・・・ダボ穴
123 ・・・握り抜け止め部
124 ・・・親指当接部または人差し指当接部
125 ・・・柄尻
130 ・・・ダボ部材
B ・・・竹材(真竹)
B1 ・・・表皮
B2 ・・・維管束
B21・・・道管
B22・・・師管
B23・・・維管束鞘
B24・・・柔細胞
図1
図2
図3
図4
図5