(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157701
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】補強鋼管
(51)【国際特許分類】
E04C 3/32 20060101AFI20231019BHJP
E04C 3/04 20060101ALI20231019BHJP
E04C 3/293 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
E04C3/32
E04C3/04
E04C3/293
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067775
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】521497349
【氏名又は名称】林 穰二
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】林 穰二
【テーマコード(参考)】
2E163
【Fターム(参考)】
2E163FA02
2E163FA12
2E163FB06
2E163FB07
2E163FB09
2E163FF17
(57)【要約】
【課題】強度を有しつつも、軽量で、補強材の数量が少なく、容易に補強可能な補強鋼管。
【解決手段】長尺で真っ直ぐな鋼管1aと、長尺な棒状の補強材2である第一補強材3aと、を備える補強鋼管100aであって、第一補強材3aが、鋼管1aの長尺方向に対して斜めになり、第一補強材3aの一端31及び他端32が鋼管1aの内面11に当接するように、鋼管1aの内部に挿入され、第一補強材3aの一端31および他端32が、鋼管1aの内面に固定され、第一補強材3aが、鋼管aの内部に架空されることを特徴とする補強鋼管100a。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺で真っ直ぐな鋼管と、長尺な棒状の補強材である第一補強材と、を備える補強鋼管であって、
前記第一補強材が、前記鋼管の長尺方向に対して斜めになり、当該第一補強材の一端及び他端が前記鋼管の内面に当接するように、前記鋼管の内部に挿入され、
前記第一補強材の一端および他端が、前記鋼管の内面に固定され、前記第一補強材が、前記鋼管の内部に架空されることを特徴とする補強鋼管。
【請求項2】
二本の前記第一補強材を備え、
二本の前記第一補強材は、二本の当該第一補強材でX字状になるように交差し、二本の当該第一補強材が成す面が、前記鋼管の長尺方向に平行になるように、前記鋼管の内部に架空されることを特徴とする請求項1に記載の補強鋼管。
【請求項3】
さらに、二本の第二補強材を備え、
二本の前記第二補強材は、当該第二補強材のそれぞれの一端及び他端が前記鋼管の内面に当接するように、且つ、二本の当該第二補強材でX字状になるように交差し、二本の当該第二補強材が成す面が、前記鋼管の長尺方向に平行且つ二本の前記第一補強材が成す面に交わるように、前記鋼管の内部に挿入され、
二本の前記第二補強材のそれぞれの一端および他端が、前記鋼管の内面に固定され、二本の前記第二補強材が、前記鋼管の内部に架空されることを特徴とする請求項2に記載の補強鋼管。
【請求項4】
前記鋼管は、角型鋼管であり、
前記第一補強材および前記第二補強材のそれぞれの一端および他端は、前記鋼管の内面の入隅に固定されることを特徴とする請求項3に記載の補強鋼管。
【請求項5】
前記補強材は、当該補強材の一端と他端との中間にダンパーを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の補強鋼管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物を支える柱や梁などの構造躯体となる長尺な鋼管であって、鋼管の内部に長尺な棒状の補強材を斜めに備えることで、当該鋼管の強度を高めつつも、軽量化を図る鋼管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管の内部に、複数の長尺な鉄筋を当該鋼管の長尺方向に平行になるように挿入し、コンクリートなどの充填剤を打設し、養生することで、強度を高めた鋼管がある。
【0003】
また、特許文献1に記載されるように、筒状(管状)の構造物である橋脚又は橋梁構造物において、その内部に、H形鋼又は角型鋼管よりなる中央柱状構造物と、水平に伸びる補強アームと、を備えることで、水平方向及び鉛直方向に対する構造物の強度を向上させる技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、内部に鉄筋及びコンクリートを備える鋼管は、複数の鉄筋が当該鋼管の長尺方向に平行に伸びるため、当該鋼管の長尺方向に対しての強度は高いが、当該鋼管の長尺方向に垂直な方向に対しての強度は高くない。さらに、当該鋼管は、複数の鉄筋と、コンクリートと、の部材コストが掛かり、複数の鉄筋と、コンクリートと、によって重量が重くなる。また、コンクリートの打設および養生作業を伴う組立作業に手間が掛かる。
【0006】
また、特許文献1に記載の構造物に用いられる技術を、角型鋼管などの鋼管自身の補強に用いる場合、特殊なサイズのH形鋼又は角型鋼管を用意する必要がありコスト面から現実味がない。もし、H形鋼又は角型鋼管以外の材料を用いて中央柱状構造物を作成することで、特許文献1に記載の技術を角型鋼管などの鋼管自身の補強に用いたとしても、中央柱状構造物と、補強アームと、の部材コストが掛かり、中央柱状構造物と、補強アームと、によって重量が重くなる。また、その組立作業に手間が掛かる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、強度を有しつつも、軽量で、補強材の数量が少なく、容易に補強可能な補強鋼管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に掛かる補強鋼管は、長尺で真っ直ぐな鋼管と、長尺な棒状の補強材である第一補強材と、を備える補強鋼管であって、前記第一補強材が、前記鋼管の長尺方向に対して斜めになり、当該第一補強材の一端及び他端が前記鋼管の内面に当接するように、前記鋼管の内部に挿入され、前記第一補強材の一端および他端が、前記鋼管の内面に固定され、前記第一補強材が、前記鋼管の内部に架空されることを特徴とする。
【0009】
さらに、二本の前記第一補強材を備え、二本の前記第一補強材は、二本の当該第一補強材でX字状になるように交差し、二本の当該第一補強材が成す面が、前記鋼管の長尺方向に平行になるように、前記鋼管の内部に架空されることを特徴とする。
【0010】
さらに、二本の第二補強材を備え、二本の前記第二補強材は、当該第二補強材のそれぞれの一端及び他端が前記鋼管の内面に当接するように、且つ、二本の当該第二補強材でX字状になるように交差し、二本の当該第二補強材が成す面が、前記鋼管の長尺方向に平行且つ二本の前記第一補強材が架かる面に交わるように、前記鋼管の内部に挿入され、二本の前記第二補強材のそれぞれの一端および他端が、前記鋼管の内面に固定され、二本の前記第二補強材が、前記鋼管の内部に架空されることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記鋼管は、角型鋼管であり、前記第一補強材および前記第二補強材のそれぞれの一端および他端は、前記鋼管の内面の入隅に固定されることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記補強材は、当該補強材の一端と他端との中間にダンパーを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る補強鋼管によると、鋼管の長尺方向に平行で第一補強材の一端から他端までを含む面の面内方向に対して、補強鋼管が座屈しようとするときに、第一補強材に応力が発生するため、補強鋼管の強度が高くなる。本発明に係る補強鋼管は、長尺な補強材によって補強されるため、多数の部品を必要としない。よって、従来技術に比べ補強材のコストを削減することができ、補強材の重量が軽量となり、補強材のコストを削減することができる。また、長尺な補強材の一端及び他端を鋼管の内面に固定するだけで良いので、従来技術に比べ組み立ての手間が掛からない。
【0014】
さらに、X字状に交差する二本の第一補強材を備えることで、補強鋼管の強度をより高くすることができる。
【0015】
さらに、X字状に交差する二本の第一補強材と、X字状に交差する二本の第二補強材と、を備えることで補強鋼管の強度をより高くすることができる。
【0016】
さらに、X字状に交差する二本の第一補強材と、X字状に交差する二本の第二補強材と、が角型鋼管の内部で、当該角型鋼管の対角線上に筋交いのように架設されることで、補強鋼管の強度をより高くなり、鋼管の捻じれを防止することができる。
【0017】
さらに、構造材にダンパーを備えることで、補強鋼管は、動的荷重に対して強度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る鋼管を示す三面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る鋼管を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る鋼管を示す三面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る鋼管を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第三実施形態に係る鋼管を示す三面図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係る鋼管を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第四実施形態に係る鋼管を示す三面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る補強鋼管について、以下、図面を参照しつつ第一実施形態から第四実施形態を説明する。ただし、以下はあくまで本発明の一実施形態を例示的に示すものであり、本発明の範囲は以下の第一実施形態乃至第四実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0020】
初めに、第一実施形態の補強鋼管100aについて説明する。
図1は、第一実施形態の補強鋼管100aを示す三面図であり、
図1(a)が平面図であり、
図1(b)が正面図であり、
図1(c)が右側面図である。
図1及び
図2に示すように、第一実施形態の補強鋼管100aは、長尺で真っ直ぐな丸型鋼管である鋼管1aと、長尺な棒状の補強材2である第一補強材3aと、を備える。
【0021】
図1(b)に示すように、鋼管1aの内面11に固定される第一補強材3aの一端31及び他端32は、当該第一補強材3aが鋼管1aの内部に斜めに挿入された状態であるときに、鋼管1aの内面11に当接するように鋼管1aの内面11に沿って折れ曲がり形成される。
【0022】
図1及び
図2に示すように、第一補強材3aは、鋼管1aの長尺方向に対して斜めになり、第一補強材3aの一端31及び他端32が鋼管1aの内面11に当接するように鋼管1aの内部に挿入される。
【0023】
そして、第一補強材3aが鋼管1aの内部に架空される状態で、第一補強材3aの一端31及び他端32が、鋼管1aの内面11に溶接によって固定されることで、補強鋼管100aが構築される。このとき、第一補強材3aの一端31および他端32が鋼管1aの内面11に沿って折れ曲がり形成されることで、第一補強材3aの一端31および他端32の鋼管1aの内面11に溶接される面積が増え、鋼管1aと、第一補強材3aと、の固定が強固になる。
【0024】
第一補強材3aには、当該第一補強材3aの長尺方向に対して引張力が掛かると、引張力に反発する応力が発生し、当該第一補強材3aの長尺方向に対して圧縮力が掛かると、圧縮力に反発する応力が発生する。したがって、補強鋼管100aに外力が掛かり、当該補強鋼管100aの第一補強材3aを備える範囲が座屈しようとしたときに、補強鋼管100aに応力が発生し、補強鋼管100aの座屈を防止することができる。その効果は、特に、鋼管1aの長尺方向に平行で第一補強材3aの一端31から他端32までを含む面7の面内方向に、補強鋼管100aが座屈しようとするときに、発揮される。つまり、補強鋼管100aは、第一補強材3aを備える範囲において、鋼管1aの長尺方向に平行で第一補強材3aの一端31から他端32までを含む面7の面内方向に対して強い強度を有することになる。補強鋼管100aの第一補強材3aを備える範囲とは、当該補強鋼管100aの長尺方向における第一補強材3aの一端31から他端32までの範囲のことである。
【0025】
以上のように、補強鋼管100aは、第一補強材3aによって補強されるため、従来技術のように、多数の部品を必要としない。よって、従来技術に比べ補強材2の重量が軽量となり、補強材2のコストを削減することができる。また、長尺な補強材2である第一補強材3aの一端31及び他端32を鋼管1aの内面11に固定するだけで良いため、従来技術に比べ補強鋼管100aを準備する手間が掛からない。さらに、第一補強材3aによって強度が増すことで、鋼管1aの肉厚を薄くすることが可能となり、その場合、補強鋼管100aのさらなる軽量化と、コストの削減ができる。
【0026】
次に、第二実施形態の補強鋼管100bについて説明する。
図3は、第二実施形態の補強鋼管100bを示す三面図であり、
図3(a)が平面図であり、
図3(b)が正面図であり、
図3(c)が右側面図である。また、
図4は、補強鋼管100bをわかりやすく透過させた斜視図である。
図3及び
図4に示すように、第二実施形態の補強鋼管100bは、長尺で真っ直ぐな角型鋼管である鋼管1bと、長尺な棒状の補強材2である二本の第一補強材3bと、を備える。
【0027】
図3(b)に示すように、二本の第一補強材3bのそれぞれの一端31及び他端32は、当該第一補強材3bが鋼管1bの内部に斜めに挿入された状態であるときに、鋼管1bの内面11に当接するように鋼管1bの内面11に沿って折れ曲がり形成される。
【0028】
図3及び
図4に示すように、一方の第一補強材3bが、鋼管1bの長尺方向に対して斜めになり、一方の第一補強材3bの一端31及び他端32が鋼管1bの内面11に当接するように鋼管1bの内部に挿入され、一方の第一補強材3bが鋼管1bの内部に架空される状態で、一方の第一補強材3bの一端31及び他端32が、鋼管1bの内面11に溶接によって固定される。さらに、他方の第一補強材3bが、他方の第一補強材3bの一端31及び他端32が鋼管1bの内面11に当接するように、且つ、一方の第一補強材3bとでX字状になるように交差し、二本の第一補強材3bが成す面8が、鋼管1bの長尺方向に平行になるように鋼管1bの内部に挿入され、他方の第一補強材3bが鋼管1bの内部に架空される状態で、他方の第一補強材3bの一端31及び他端32が、鋼管1bの内面11に溶接によって固定されることで、補強鋼管100bが構築される。このとき、二本の第一補強材3bのそれぞれの一端31および他端32が鋼管1bの内面11に沿って折れ曲がり形成されることで、二本の第一補強材3bのそれぞれの一端31および他端32の鋼管1bの内面11に溶接される面積が増え、鋼管1bと、二本の第一補強材3bと、の固定が強固になる。
【0029】
第一補強材3bには、当該第一補強材3bの長尺方向に対して引張力が掛かると、引張力に反発する応力が発生し、当該第一補強材3bの長尺方向に対して圧縮力が掛かると、圧縮力に反発する応力が発生する。したがって、補強鋼管100bに外力が掛かり、当該補強鋼管100bの第一補強材3bを備える範囲が座屈しようとしたときに、補強鋼管100bに応力が発生し、補強鋼管100bの座屈を防止することができる。その効果は、特に、二本の当該第一補強材3bが成す面8の面内方向に、補強鋼管100bが座屈しようとするときに、発揮される。つまり、補強鋼管100bは、二本の第一補強材3bを備える範囲において、二本の第一補強材3bが成す面8の面内方向に対して強い強度を有することになる。補強鋼管100bの第一補強材3bを備える範囲とは、当該補強鋼管100bの長尺方向における二本の第一補強材3bが重複する範囲のことである。
【0030】
以上のように、補強鋼管100bは、二本の第一補強材3bによって補強されるため、従来技術のように、多数の部品を必要としない。よって、従来技術に比べ補強材2の重量が軽量となり、補強材2のコストを削減することができる。また、長尺な補強材2である二本の第一補強材3bのそれぞれの一端31及び他端32を鋼管1bの内面11に固定するだけで良いため、従来技術に比べ補強鋼管100bを準備する手間が掛からない。さらに、第一補強材3bによって強度が増すことで、鋼管1bの肉厚を短くすることが可能となり、その場合、補強鋼管100bのさらなる軽量化と、コストの削減ができる。
【0031】
次に、第三実施形態の補強鋼管100cについて説明する。
図5は、第三実施形態の補強鋼管100cを示す三面図であり、
図5(a)が平面図であり、
図5(b)が正面図であり、
図5(c)が右側面図である。また、
図6は、補強鋼管100cをわかりやすく透過させた斜視図である。
図5、
図6に示すように、第三実施形態の補強鋼管100cは、長尺で真っ直ぐな角型鋼管である鋼管1cと、長尺な棒状の補強材2である二本の第一補強材3cと、第一補強材3cの長さより短い長さの長尺な棒状の補強材2である二本の第二補強材4と、を備える。
【0032】
図5(b)に示すように、二本の第一補強材3cのそれぞれの一端31及び他端32は、当該第一補強材3cが鋼管1cの内部に斜めに挿入された状態であるときに、鋼管1cの内面11に当接するように鋼管1cの内面11に沿って折れ曲がり形成される。また、
図5(c)に示すように、二本の第二補強材4のそれぞれの一端41及び他端42は、当該第一補強材3cが鋼管1cの内部に斜めに挿入された状態であるときに、鋼管1cの内面11に当接するように鋼管1cの内面11に沿って折れ曲がり形成される。
【0033】
図5、
図6に示すように、二本の第一補強材3cうちの一方の第一補強材3cが、鋼管1cの長尺方向に対して斜めになり、一方の第一補強材3cの一端31及び他端32が鋼管1cの内面11に当接するように鋼管1cの内部に挿入され、一方の第一補強材3cが鋼管1cの内部に架空される状態で、一方の第一補強材3cの一端31及び他端32が、鋼管1cの内面11に溶接によって固定される。
【0034】
そして、二本の第一補強材3cうちの他方の第一補強材3cが、他方の第一補強材3cの一端31及び他端32が鋼管1cの内面11に当接するように、且つ、一方の第一補強材3cとでX字状になるように交差し、二本の第一補強材3cが成す面8が、鋼管1cの長尺方向に平行になるように鋼管1cの内部に挿入され、他方の第一補強材3cが鋼管1cの内部に架空される状態で、他方の第一補強材3cの一端31及び他端32が、鋼管1cの内面11に溶接によって固定される。
【0035】
次に、
図5、
図6に示すように、二本の第二補強材4のうちの一方の第二補強材4が、鋼管1cの長尺方向に対して斜めになり、一方の第二補強材4の一端41及び他端42が鋼管1cの内面11に当接するように鋼管1cの内部に挿入され、一方の第二補強材4が鋼管1cの内部に架空される状態で、一方の第二補強材4の一端41及び他端42が、鋼管1cの内面11に溶接によって固定される。
【0036】
そして、二本の第二補強材4のうちの他方の第二補強材4が、他方の第二補強材4の一端41及び他端42が鋼管1cの内面11に当接するように、且つ、一方の第二補強材4とでX字状になるように交差し、二本の第二補強材4が成す面9が、鋼管1cの長尺方向に平行になるように鋼管1cの内部に挿入され、他方の第二補強材4が鋼管1cの内部に架空状態で、他方の第二補強材4の一端41及び他端42が、鋼管1cの内面11に溶接によって固定されることで、補強鋼管100cが構築される。このとき、二本の第一補強材3cのそれぞれの一端31および他端32と、二本の第二補強材4のそれぞれの一端41および他端42と、が鋼管1cの内面11に沿って折れ曲がり形成されることで、二本の第一補強材3cのそれぞれの一端31および他端32と、二本の第二補強材4のそれぞれの一端41および他端42と、の鋼管1cの内面11に溶接される面積が増え、二本の第一補強材3cと、二本の第二補強材4と、が鋼管1cに強固に固定されることになる。
【0037】
なお、
図5(a)に示すように、二本の第二補強材4は、二本の当該第二補強材4が成す面9が、二本の第一補強材3cが成す面8に交わるように、配置され固定されるものであり、二本の第二補強材4のそれぞれの一端41及び他端42と、二本の第一補強材3cのそれぞれの一端31及び他端32と、は、角型鋼管である鋼管1cの内面11の入隅12に固定される。
【0038】
また、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、二本の第一補強材3cが交差する位置61と、二本の第二補強が交差する位置62と、が互いに干渉しないように、第一補強材3cと、第二補強材4と、は配置され固定される。具体的に、第三実施形態の補強鋼管100cでは、第二補強材4の長さが第一補強材3cの長さより短く、第一補強材3cの一端31と、第二補強材4の一端41と、を鋼管1cの内面11の端部側に固定することで、二本の第一補強材3cが交差する位置61と、二本の第二補強が交差する位置62と、が互いに干渉しないようになされている。
【0039】
本発明の補強鋼管100cは、第一補強材3cと、第二補強材4と、は同じ長さであっても良い。その場合は、二本の第一補強材3cが交差する位置61と、二本の第二補強材4が交差する位置62と、が互いに干渉しないように、第一補強材3cと、第二補強材4と、が鋼管1cの長尺方向にずれるように配置固定される。
【0040】
第一補強材3c及び第二補強材4には、それぞれの長尺方向に対して引張力が掛かると、引張力に反発する応力が発生し、それぞれの長尺方向に対して圧縮力が掛かると、圧縮力に反発する応力が発生する。したがって、補強鋼管100cに外力が掛かり、当該補強鋼管100cの第一補強材3c及び第二補強材4を備える範囲が座屈しようとしたときに、補強鋼管100cに応力が発生し、補強鋼管100cの座屈を防止することができる。その効果は、特に、二本の第一補強材3cが成す面8の面内方向又は二本の第二補強材4が成す面9の面内方向に補強鋼管100cが座屈しようとするときに、発揮される。つまり、補強鋼管100cは、二本の第一補強材3cと、二本の第二補強材4と、を備える範囲において、二本の第一補強材3cが成す面8の面内方向と、二本の第二補強材4が成す面9の面内方向と、に対して強い強度を有することになる。補強鋼管100cの二本の第一補強材3cと、二本の第二補強材4と、を備える範囲とは、当該補強鋼管100bの長尺方向における二本の第一補強材3cと二本の第二補強材4とが重複する範囲のことである。
【0041】
また、補強鋼管100cに外力が掛かり、当該補強鋼管100cが二本の第一補強材3cが成す面8の面内方向と、二本の第二補強材4が成す面9の面内方向と、以外の方向に座屈しようとする場合であっても、補強鋼管100cは、二本の第二補強材4が成す面9と、二本の第一補強材3cが成す面8と、が交わるように、二本の第二補強材4と、二本の第一補強材3cと、を備えることで、二本の第二補強材4と、二本の第一補強材3cと、のどちらにも少なからずの応力が発生し、補強鋼管100cの捻じれを防止することができる。つまり、補強鋼管100cは、二本の第一補強材3cと、二本の第二補強材4と、を備えることで、二本の第一補強材3c及び二本の第一補強材3cを備える範囲において、どの方向に対しても強度を有することになる。
【0042】
さらに、鋼管1cが角型鋼管であり、二本の第二補強材4のそれぞれの一端41及び他端42と、二本の第一補強材3cのそれぞれの一端31及び他端32と、が、鋼管1cの内面11の入隅12に固定される補強鋼管100cは、
図5(a)に示すように、二本の第二補強材4が成す面9と、二本の第一補強材3cが成す面8と、が、筋交いのように、鋼管1cの対角線上に広がることになる。したがって、補強鋼管100cは、二本の第一補強材3c及び二本の第一補強材3cを備える範囲において、さらに強い強度を有することになり、鋼管1cの捻じれを防止することができる。
【0043】
以上のように、補強鋼管100cは、二本の第一補強材3cと、二本の第二補強材4と、によって補強されるため、従来技術のように、多数の部品を必要としない。よって、従来技術に比べ補強材2の重量が軽量となり、補強材2のコストを削減することができる。また、二本の第一補強材3cの一端31及び他端32と、二本の第二補強材4の一端41及び他端42と、を鋼管1cの内面11に固定するだけで良いため、従来技術に比べ補強鋼管100cを準備する手間が掛からない。さらに、第一補強材3cによって強度が増すことで、鋼管1cの肉厚を短くすることが可能となり、その場合、補強鋼管100cのさらなる軽量化と、コストの削減ができる。
【0044】
次に、第四実施形態の補強鋼管100dについて説明する。
図7は、第四実施形態の補強鋼管100dを示す三面図であり、
図7(a)が平面図であり、
図7(b)が正面図であり、
図7(c)が右側面図である。
図7に示すように、第四実施形態の補強鋼管100dは、第二実施形態の補強鋼管100bに、さらにダンパー5を備えるものである。ダンパー5は補強材である第一補強材3bに備えられる。第一補強材3bにダンパー5を備えることで、補強鋼管100dは、当該第一補強材3bを備える範囲において、二本の当該第一補強材3bが成す面8の面内方向の動的荷重に対して強度を増すことができる。
【0045】
第四実施形態の補強鋼管100dのダンパー5は、各第一補強材3bに備えられる一軸ダンパー5であるが、本発明の他の実施形態においては、複数の補強材2に一括して備えられるダンパーであっても良く、油圧式やバネ式などのダンパーの種別も特に限定するものではない。また、補強材である第一補強材及び第二補強材を備える実施形態においては、補強鋼管が使用される箇所にどのような力が掛かるかを加味して、第一補強材及び第二補強材のどちらにも備えることと、第一補強材又は第二補強材のどちらかに備えることと、が選択できる。
【0046】
以上のように、本発明に係る補強鋼管は、例えば、鉛直方向に立設し、側面に水平に伸びる長尺な梁の端部が接合される柱といったように、強度を必要とする建築物の構造躯体などに用いることでその効果を発揮する。
【0047】
また、本発明の補強鋼管100の内部に、さらにコンクリートを打設することで、重量は重くなるが、より強度の高い補強鋼管100を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る鋼管は、特に建設業において好意的に採用されるものと見込まれ、建設業の発展に貢献できる。
【符号の説明】
【0049】
100a 補強鋼管
100b 補強鋼管
100c 補強鋼管
100d 補強鋼管
1a 鋼管
1b 鋼管
1c 鋼管
11 鋼管の内面
12 鋼管の入隅
2 補強材
3a 第一補強材
3b 第一補強材
3c 第一補強材
31 第一補強材の一端
32 第一補強材の他端
4 第二補強材
41 第二補強材の二端
42 第二補強材の他端
61 二本の第一補強材が交差する位置
62 二本の第二補強材が交差する位置
5 ダンパー
7 鋼管の長尺方向に平行で第一補強材の一端から他端までを含む面
8 二本の第一補強材が成す面
9 二本の第二補強材が成す面