(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157702
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】蒸気タービンプラント、蒸気タービンプラントの制御方法
(51)【国際特許分類】
F01K 7/44 20060101AFI20231019BHJP
F01K 13/02 20060101ALI20231019BHJP
F22D 1/12 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F01K7/44 Z
F01K13/02 Z
F22D1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067777
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フォガサダシルヴァサントス ウィルトン
(72)【発明者】
【氏名】石田 直行
(57)【要約】
【課題】
システムの規模やコスト、作業員による操作を最小限に抑えつつ、蒸気発生器における蒸気生成を一定に保ちながら、電力需要の変動に対応するよう電力出力を調整可能な蒸気タービンプラントを提供する。
【解決手段】
蒸気を発生させる蒸気発生器と、前記蒸気発生器により発生した蒸気が供給される高圧タービンと、前記高圧タービンから排出された蒸気が供給される低圧タービンと、蓄熱材を内包する蓄熱器と、前記蒸気発生器への給水を加熱する給水加熱器と、前記高圧タービンの上流から流入する蒸気により前記蓄熱材を加熱する蓄熱用伝熱管と、前記高圧タービンまたは前記高圧タービンの下流から流入する蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記給水加熱器に供給する放熱用伝熱管と、を備え、前記放熱用伝熱管内を移動する蒸気の流れは、前記高圧タービンと前記給水加熱器との圧力差により生じることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を発生させる蒸気発生器と、
前記蒸気発生器により発生した蒸気が供給される高圧タービンと、
前記高圧タービンから排出された蒸気が供給される低圧タービンと、
蓄熱材を内包する蓄熱器と、
前記蒸気発生器への給水を加熱する給水加熱器と、
前記高圧タービンの上流から流入する蒸気により前記蓄熱材を加熱する蓄熱用伝熱管と、
前記高圧タービンまたは前記高圧タービンの下流から流入する蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記給水加熱器に供給する放熱用伝熱管と、を備え、
前記放熱用伝熱管内を移動する蒸気の流れは、前記高圧タービンと前記給水加熱器との圧力差により生じることを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気タービンプラントであって、
前記給水加熱器を複数備え、
前記高圧タービンから流入する蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記蒸気発生器直前の給水加熱器に供給することを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項3】
請求項1に記載の蒸気タービンプラントであって、
前記給水加熱器を複数備え、
前記高圧タービンと前記低圧タービンとの間から流入する蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記蒸気発生器直前の給水加熱器よりも上流側の給水加熱器に供給することを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項4】
請求項1に記載の蒸気タービンプラントであって、
前記給水加熱器を複数備え、
前記高圧タービンから流入する蒸気および前記高圧タービンと前記低圧タービンとの間から流入する蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記蒸気発生器直前の給水加熱器および前記蒸気発生器直前の給水加熱器よりも上流側の給水加熱器に供給することを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項5】
請求項1に記載の蒸気タービンプラントであって、
前記給水加熱器を複数備え、
前記高圧タービンと前記低圧タービンとの間から流入する蒸気および前記低圧タービンから流入する蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記蒸気発生器直前の給水加熱器よりも上流側の給水加熱器およびさらにその上流側の給水加熱器に供給することを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項6】
蒸気タービンプラントの制御方法であって、
(a)主蒸気パイプライン内の高温蒸気を部分的に蓄熱器内に取り込み、前記高温蒸気の熱を前記蓄熱器内の蓄熱材に蓄熱するステップと、
(b)高圧タービンまたは前記高圧タービンの下流から抽気した蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を蒸気発生器への給水を加熱する給水加熱器に供給するステップと、
を有することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の蒸気タービンプラントの制御方法であって、
前記(b)ステップにおいて、前記高圧タービンから抽気した蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記蒸気発生器直前の給水加熱器に供給することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の蒸気タービンプラントの制御方法であって、
前記(a)ステップと前記(b)の間に、
(c)前記高圧タービンから抽気する蒸気の流量を減少させるステップと、
を有することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【請求項9】
請求項6に記載の蒸気タービンプラントの制御方法であって、
前記(b)ステップにおいて、
前記高圧タービンと低圧タービンとの間から抽気した蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記蒸気発生器直前の給水加熱器よりも上流側の給水加熱器に供給することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の蒸気タービンプラントの制御方法であって、
前記(a)ステップと前記(b)の間に、
(d)前記高圧タービンと前記低圧タービンとの間から抽気する蒸気の流量を減少させるステップと、
を有することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【請求項11】
請求項9に記載の蒸気タービンプラントの制御方法であって、
前記(a)ステップと前記(b)の間に、
(e)前記高圧タービンから抽気する蒸気の流量を減少させるステップと、
を有することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【請求項12】
請求項6に記載の蒸気タービンプラントの制御方法であって、
前記(b)ステップにおいて、前記高圧タービンから抽気した蒸気および前記高圧タービンと低圧タービンとの間から抽気した蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記蒸気発生器直前の給水加熱器および前記蒸気発生器直前の給水加熱器よりも上流側の給水加熱器に供給することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載の蒸気タービンプラントの制御方法であって、
前記(a)ステップと前記(b)の間に、
(f)前記高圧タービンから抽気する蒸気の流量または前記高圧タービンと前記低圧タービンとの間から抽気する蒸気の流量を減少させるステップと、
を有することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【請求項14】
請求項6に記載の蒸気タービンプラントの制御方法であって、
前記(b)ステップにおいて、前記高圧タービンと低圧タービンとの間から抽気した蒸気および低圧タービンから抽気した蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記蒸気発生器直前の給水加熱器よりも上流側の給水加熱器およびさらにその上流側の給水加熱器に供給することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載の蒸気タービンプラントの制御方法であって、
前記(a)ステップと前記(b)の間に、
(g)前記高圧タービンと前記低圧タービンとの間から抽気する蒸気の流量を減少させるステップと、
を有することを特徴とする蒸気タービンプラントの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンプラントの構成とその運転制御に係り、特に、蒸気タービンからの抽気を用いてボイラまたは原子炉への給水を加熱する給水加熱器を備えた蒸気タービンプラントに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火力・原子力発電プラントにおいて、ボイラや原子炉で作られた蒸気は、タービン及び発電機を回して発電する。発電に利用された蒸気は、復水器で水に戻され、ポンプによってボイラや原子炉に送られる。この水は、ボイラや原子炉に戻される前に、熱効率向上のため、給水加熱器によって予熱される。給水加熱器では、蒸気タービンからの抽気を用いて水が加熱される。
【0003】
一方、蓄熱装置を設置して、電力需要が減少した場合に余剰となる蒸気の熱を一時的に蓄熱装置に蓄熱する火力・原子力発電プラントが知られている。上記の給水加熱器に加えて、この蓄熱装置の蓄熱を利用して、ボイラや原子炉への給水を加熱することも検討されている。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、「効率よく蓄熱を行いつつ、出力を調整することができる原子力発電プラント等に適用される蒸気タービンプラント」が開示されている。
【0005】
特許文献1では、蒸気を低圧タービンに供給してより多くの電力を生成した後、湿分分離器から蒸気を抽出し、顕熱蓄熱材を用いて加熱し、蒸気発生器の直前の給水加熱器に送る。
【0006】
湿分分離器から抽出された蒸気を加熱するには、顕熱蓄熱材のためのシステムを構築し、プラントに追加する必要がある。追加するシステムには、「低温側タンク」と「高温側タンク」と呼ばれる2つの貯蔵タンクが含まれ、その間で顕熱蓄熱材が循環する。また、そのシステムには、6つのバルブと、顕熱蓄熱材を「低温側タンク」と「高温側タンク」の間で移動させる2つのポンプと、2つの熱交換器が必要となる。顕熱蓄熱材は、追加したシステム内でのみ流れるように制限される。
【0007】
プラントの通常の運転状態では、顕熱蓄熱材は比較的低温であり、「低温側タンク」に貯蔵される。
【0008】
電力需要が低い場合、顕熱蓄熱材はポンプの作動により流れ、湿分分離器から熱を抽出して顕熱蓄熱材の温度を上昇させた後、「高温側タンク」に貯蔵される。
【0009】
電力需要が高い場合、ポンプにより顕熱蓄熱材を「高温側タンク」から熱交換器に移動させ、蒸気発生器の直前の熱交換器内の給水を加熱するために使用される蒸気に熱を伝達する。その後、顕熱蓄熱材は「低温側タンク」に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、蒸気タービンプラントでは、通常運転時に、蒸気発生器で生成された蒸気の一部がタービンから抽出され、給水加熱器を通して蒸気発生器に戻る給水を加熱するために使用される。
【0012】
電力需要のピークが発生し、迅速な対応が必要な場合、給水加熱器で給水を加熱するために通常使用される蒸気は、作業員のバルブ操作によって部分的に低圧タービンに供給され、電力出力を増大させる。
【0013】
その結果、1つまたは複数の給水加熱器における蒸気の流量が低下し、給水を加熱する能力は大幅に低下する。
【0014】
したがって、蒸気発生器の入口の給水温度が低くなり、蒸気発生に影響を及ぼす。給水エンタルピーの低下を補い、蒸気発生量を変化させないようにするには、プラントの作業員が対策を講じる必要がある。
【0015】
上記特許文献1の技術では、全く新しい給水循環システムを構築する必要があるため、非常に大規模でコストの掛かる解決策となる。
【0016】
また、ポンプやバルブ、蓄熱タンク、熱交換器などの各構成機器を作動させる必要があり、システムの操作も複雑になる。
【0017】
そこで、本発明の目的は、システムの規模やコスト、作業員による操作を最小限に抑えつつ、蒸気発生器における蒸気生成を一定に保ちながら、電力需要の変動に対応するよう電力出力を調整可能な蒸気タービンプラント及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は、蒸気を発生させる蒸気発生器と、前記蒸気発生器により発生した蒸気が供給される高圧タービンと、前記高圧タービンから排出された蒸気が供給される低圧タービンと、蓄熱材を内包する蓄熱器と、前記蒸気発生器への給水を加熱する給水加熱器と、前記高圧タービンの上流から流入する蒸気により前記蓄熱材を加熱する蓄熱用伝熱管と、前記高圧タービンまたは前記高圧タービンの下流から流入する蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を前記給水加熱器に供給する放熱用伝熱管と、を備え、前記放熱用伝熱管内を移動する蒸気の流れは、前記高圧タービンと前記給水加熱器との圧力差により生じることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、蒸気タービンプラントの制御方法であって、(a)主蒸気パイプライン内の高温蒸気を部分的に蓄熱器内に取り込み、前記高温蒸気の熱を前記蓄熱器内の蓄熱材に蓄熱するステップと、(b)高圧タービンまたは前記高圧タービンの下流から抽気した蒸気を前記蓄熱材により加熱し、当該加熱した蒸気を蒸気発生器への給水を加熱する給水加熱器に供給するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、システムの規模やコスト、作業員による操作を最小限に抑えつつ、蒸気発生器における蒸気生成を一定に保ちながら、電力需要の変動に対応するよう電力出力を調整可能な蒸気タービンプラント及びその制御方法を実現することができる。
【0021】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例1に係る蒸気タービンプラントの概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例2に係る蒸気タービンプラントの概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施例3に係る蒸気タービンプラントの概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施例4に係る蒸気タービンプラントの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0024】
図1を参照して、本発明の実施例1に係る蒸気タービンプラントとその制御方法について説明する。
図1は、本実施例の蒸気タービンプラントの概略構成を示す図である。
【0025】
本実施例の蒸気タービンプラントは、
図1に示すように、主要な構成として、蒸気発生器1と、高圧タービン3と、湿分分離加熱器4と、低圧タービン5と、発電機6と、復水器7と、蓄熱器8と、給水加熱器60~62とを備えている。
【0026】
蒸気発生器1で生成された蒸気は、主蒸気パイプライン2を通じて高圧タービン3に供給される。
【0027】
高圧タービン3の回転に利用された蒸気は、湿分分離加熱器4を介して低圧タービン5に供給され、低圧タービン5の回転に利用される。
【0028】
湿分分離加熱器4は、低圧タービン5の効率低下や水滴による腐食・損傷を防止するため、蒸気中の湿分を分離する。また、蒸気発生器1からの高圧蒸気及び高圧タービン3の抽気の一部を加熱源として、高圧タービン3から排出される蒸気を加熱する。
【0029】
蒸気発生器1で生成された蒸気の熱エネルギーを、高圧タービン3及び低圧タービン5により回転エネルギーに変換し、この回転エネルギーを利用して発電機6により発電する。
【0030】
発電に利用された蒸気は、復水器7で凝縮させて水に戻され、給水パイプライン45~47を通じて蒸気発生器1に送られ、再び蒸気の生成に利用される。
【0031】
復水器7と給水パイプライン45の間には、複数の(ここでは4つの)給水加熱器62が設置されている。蒸気抽出パイプライン43を通じて供給された低圧タービン5の抽気を加熱源として、復水器7から供給された給水を給水加熱器62で加熱する。
【0032】
給水パイプライン45と給水パイプライン46の間には、給水加熱器61が設置されている。蒸気抽出パイプライン42を通じて供給された高圧タービン3と低圧タービン5の間の抽気を加熱源として、給水加熱器62から供給された給水を給水加熱器61でさらに加熱する。
【0033】
給水パイプライン46と給水パイプライン47の間には、給水加熱器60が設置されている。蒸気抽出パイプライン41を通じて供給された高圧タービン3の抽気を加熱源として、給水加熱器61から供給された給水を給水加熱器60でさらに加熱する。
【0034】
蓄熱器8は、内部に蓄熱材9と、蓄熱用伝熱管40と、放熱用伝熱管44を有している。蓄熱材9の選択に応じて、顕熱または潜熱を蓄熱器8に蓄えることができる。
【0035】
なお、
図1では1つの蓄熱器8を示しているが、複数の蓄熱器を備えていても良い。
【0036】
蓄熱器8は、システム全体で最高温度の蒸気を含む主蒸気パイプライン2と、復水器7と、蒸気抽出パイプライン41~43の少なくとも1つに接続されている。
【0037】
蓄熱器8は、同時に複数の蒸気抽出パイプラインに接続することができる。本実施例(
図1)では、蒸気抽出パイプライン41に接続されている例を示している。
【0038】
主蒸気パイプライン2から蓄熱器8に供給された蒸気は、蓄熱用伝熱管40を介して蓄熱器8内部の蓄熱材9を加熱する熱源として用いられる。
【0039】
図1に示す本実施例の蒸気タービンプラントでは、蒸気を輸送するために蒸気供給系統及び給水系統の圧力差を使用するため、ポンプを必要としない。また、蓄熱材9は、常に蓄熱器8の内部に留まる。
【0040】
蒸気タービンプラントの通常の運転状態では、バルブ20と22は閉じられ、バルブ21と23は開いている。蒸気は、高圧タービン3から抽出され、蒸気抽出パイプライン41を通じて給水加熱器60に移送され、蒸気発生器1に戻る給水を加熱する。
【0041】
電力需要が低い場合、通常運転時は閉じているバルブ20を開き、主蒸気パイプライン2内の高温蒸気を部分的に蓄熱器8内に取り込む。蓄熱器8内に取り込まれた高温蒸気の熱は、蓄熱用伝熱管40を介した熱交換により、蓄熱器8内部の蓄熱材9に蓄えられる。その後、蒸気は復水器7に排出される。
【0042】
電力需要が高い場合は、バルブ20は完全に閉じられる。バルブ21を部分的に閉じて、蒸気抽出パイプライン41内の蒸気の流量を減少させ、低圧タービン5への蒸気の流入を増加させる。これにより、発電機6の発電量は増加する。
【0043】
蒸気抽出パイプライン41内の蒸気の流量の減少を補うため、バルブ23が完全に閉じられ、バルブ22が開かれ、蒸気抽出パイプライン41内の蒸気が放熱用伝熱管44を通って流れるように強制される。蓄熱器8内の蓄熱材9は、放熱用伝熱管44内を流れる蒸気よりも高温になっているため、蓄熱器8を通過する際の蒸気のエンタルピーが増加する。
【0044】
蒸気は通常の運転状態よりもエンタルピーが高いため、給水加熱器60で伝達される熱量は、流量が減少しても変化しない。したがって、給水パイプライン47内の給水の温度は一定に保たれる。
【0045】
以上説明したように、本実施例の蒸気タービンプラントは、蒸気を発生させる蒸気発生器1と、蒸気発生器1により発生した蒸気が供給される高圧タービン3と、高圧タービン3から排出された蒸気が供給される低圧タービン5と、蓄熱材9を内包する蓄熱器8と、蒸気発生器1への給水を加熱する給水加熱器60と、高圧タービン3の上流から流入する蒸気により蓄熱材9を加熱する蓄熱用伝熱管40と、高圧タービン3から流入する蒸気を蓄熱材9により加熱し、加熱した蒸気を給水加熱器60に供給する放熱用伝熱管44を備えている。そして、放熱用伝熱管44内を移動する蒸気の流れは、高圧タービン3と給水加熱器60との圧力差により生じる。
【0046】
また、複数の給水加熱器60~62を備えており、高圧タービン3から流入する蒸気を蓄熱材9により加熱し、加熱した蒸気を蒸気発生器1直前の給水加熱器60に供給する。
【0047】
これにより、システムの規模やコスト、作業員による操作を最小限に抑えつつ、蒸気発生器1における蒸気生成を一定に保ちながら、電力需要の変動に対応するよう電力出力を調整することができる。
電力需要が低い場合、バルブ20を開き、主蒸気パイプライン2内の高温蒸気を部分的に蓄熱器8内に取り込む。蓄熱器8内に取り込まれた高温蒸気の熱は、蓄熱用伝熱管40を介した熱交換により、蓄熱器8内部の蓄熱材9に蓄えられる。その後、蒸気は復水器7に排出される。
電力需要が高い場合は、バルブ20は完全に閉じられる。バルブ29を部分的に閉じて、蒸気抽出パイプライン42内の蒸気の流量を減少させ、低圧タービン5への蒸気の流入を増加させる。これにより、発電機6の発電量は増加する。バルブ29を部分的に閉じることで、給水加熱器61内の給水を加熱するために使用される蒸気の一部を低圧タービン5に流れるように流れ方向を変更する。この際、バルブ21は開いており、蒸気抽出パイプライン41内の蒸気の流量は変化しない。
蒸気抽出パイプライン42内の蒸気の流量の減少を補うため、バルブ25が完全に閉じられ、バルブ24が開かれ、蒸気抽出パイプライン42内の蒸気が放熱用伝熱管48を通って流れるように強制される。蓄熱器8内の蓄熱材9は、放熱用伝熱管48内を流れる蒸気よりも高温になっているため、蓄熱器8を通過する際の蒸気のエンタルピーが増加する。
蒸気は通常の運転状態よりもエンタルピーが高いため、給水加熱器61で伝達される熱量は、流量が減少しても変化しない。したがって、給水パイプライン46,47内の給水の温度は一定に保たれる。
バルブ21を部分的に閉じることにより、蒸気抽出パイプライン41内の蒸気の一部が低圧タービン5に移送されて発電に寄与するため、蒸気抽出パイプライン41内の蒸気の流量が減少する。この場合、蒸気抽出パイプライン42内の蒸気の流量は変わらない。
蒸気抽出パイプライン41内の蒸気の流量の減少と、その結果として給水加熱器60内で伝達される熱量の減少を補うため、バルブ25を閉じ、バルブ24を開いて、蒸気抽出パイプライン42内の蒸気を蓄熱器8内の放熱用伝熱管48を通って流れるようにする。蒸気抽出パイプライン42内の蒸気は、放熱用伝熱管48を介した蓄熱材9との熱交換により、過飽和状態まで加熱される。
給水加熱器60の入口における給水の温度はより高くなるため、蒸気抽出パイプライン41内の蒸気の流量が減少し、給水加熱器60に供給される蒸気の量が減少したとしても、給水パイプライン47内の給水の温度を一定に保つことができる。
以上説明したように、本実施例の蒸気タービンプラントは、複数の給水加熱器60~62を備えており、高圧タービン3と低圧タービン5との間から流入する蒸気を蓄熱材9により加熱し、加熱した蒸気を蒸気発生器1直前の給水加熱器60よりも上流側の給水加熱器61に供給する。