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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157706
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】高周波加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/02 20060101AFI20231019BHJP
   H05B 6/68 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F24C7/02 320M
H05B6/68 320Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067782
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安島 恵
(72)【発明者】
【氏名】竹中 香織
(72)【発明者】
【氏名】松井 友秀
【テーマコード(参考)】
3K086
3L086
【Fターム(参考)】
3K086AA10
3K086BB08
3K086CA02
3K086CD11
3L086AA01
3L086AA13
3L086CB08
3L086CC12
3L086DA14
(57)【要約】
【課題】 複数の被加熱物を連続して加熱調理する場合、前回の加熱時に被加熱物の載置場所等の温度が上昇していても、今回の被加熱物の設置場所を特定できる高周波加熱調理器を提供する。
【解決手段】 テーブルプレートに載置した被加熱物を加熱するレンジ加熱部と、テーブルプレートの上面の複数個所の温度を検出する赤外線センサと、加熱室の庫外温度を検出する庫外温度センサと、赤外線センサの検出温度に基づいてレンジ加熱部を制御する制御部と、を備え、制御部は、庫外温度とテーブルプレートの奥側温度の温度差、および、庫外温度とテーブルプレートの手前側温度の温度差を算出し、前者の温度差が小さい場合は、奥側温度をテーブルプレート温度として採用し、後者の温度差が小さい場合は、手前側温度をテーブルプレート温度として採用し、テーブルプレートの上面の領域であってテーブルプレート温度と温度差のある部分を被加熱物の載置領域と判定する。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルプレートを収納した加熱室と、
前記テーブルプレートに載置した被加熱物を加熱するレンジ加熱部と、
前記テーブルプレートの上面の複数個所の温度を検出する赤外線センサと、
前記加熱室の庫外温度を検出する庫外温度センサと、
前記赤外線センサの検出温度に基づいて前記レンジ加熱部を制御する制御部と、を備え、
該制御部は、
前記庫外温度と前記テーブルプレートの奥側温度の温度差、および、前記庫外温度と前記テーブルプレートの手前側温度の温度差を算出し、
前者の温度差が小さい場合は、前記奥側温度をテーブルプレート温度として採用し、
後者の温度差が小さい場合は、前記手前側温度をテーブルプレート温度として採用し、
前記テーブルプレートの上面の領域であって前記テーブルプレート温度と温度差のある部分を前記被加熱物の載置領域と判定することを特徴とする高周波加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波加熱調理器において、
前記制御部は、前記テーブルプレート温度が所定温度よりも高温であった場合、
前記赤外線センサが検出した前記被加熱物の初期温度から保存状態が冷凍であるか否かを分類し、該保存状態に応じた加熱時間を算出して、前記レンジ加熱部を制御することを特徴とする高周波加熱調理器。
【請求項3】
請求項1に記載の高周波加熱調理器において、
さらに、前記レンジ加熱部のIGBT温度を検出するIGBT温度センサを備え、
前記制御部は、前記テーブルプレート温度が所定温度よりも高温でなかった場合、
前記IGBT温度が所定温度よりも高温であり、かつ、前記赤外線センサが検出した前記テーブルプレートの上面の温度のうち最大温度が所定温度よりも高温であったときに、
前記赤外線センサが検出した前記被加熱物の初期温度から保存状態が冷凍であるか否かを分類し、該保存状態に応じた加熱時間を算出して、前記レンジ加熱部を制御することを特徴とする高周波加熱調理器。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の高周波加熱調理器において、
さらに、前記被加熱物の重量を検出する重量センサを備え、
前記制御部は、前記重量に応じた加熱時間を算出して、前記レンジ加熱部を制御することを特徴とする高周波加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を利用して食品を加熱調理する高周波加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波加熱調理器の中には、加熱室に入れた食品の保存状態等に基づいて、マイクロ波による加熱調理時間を設定するものがある。例えば、特許文献1の要約書には、「被加熱物の保存状態、量、初期表面温度に関わらず、被加熱物を適温に加熱する事を可能とする」高周波加熱調理器として、「被加熱物を加熱する加熱手段と、前記加熱室で前記被加熱物が載置されるテーブルプレートと、該テーブルプレートを支持し前記被加熱物の重量を測定する重量センサと、前記非加熱物に係る温度を検出する温度センサと、仕上がり温度となるように、前記重量センサと前記温度センサの検出値に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、を備え、該制御手段は、前記被加熱物を加熱している時の温度上昇を前記温度センサにて検出し、検出した温度上昇に応じて前記被加熱物が冷凍状態であるか否かを保存状態として判定し、前記被加熱物の保存状態に合わせた加熱時間を算出し、被加熱物を加熱する」ものが開示されている。また、同文献の請求項5には「前記温度センサは、赤外線センサである」と記載されている。
【0003】
このように、特許文献1の高周波加熱調理器では、非接触の温度センサ(赤外線センサ)が検出した被加熱物の温度上昇に基づき、被加熱物が冷凍状態であるか否かを判定し、その判定結果に合わせた加熱調理時間を算出することで、被加熱物を適切に加熱調理している(同文献の図13~15参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-211171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の高周波加熱装置は、ある食品を加熱調理した直後に別の食品を連続して加熱調理する状況を想定しておらず、後者の食品を適切に加熱調理できない場合があった。おかずの加熱に続けてごはんを加熱する状況を例に、この問題を具体的に説明する。
【0006】
この場合、おかず加熱時におかずを載置した部分のテーブルプレートの温度も上昇するため、調理終了後におかずを取り出すと、テーブルプレート上面には室温よりも高温の部分が存在することになる。その後、おかず載置場所と異なる位置にごはんを載置して加熱調理を開始すると、特許文献1の温度センサ(赤外線センサ)では、テーブルプレート上面の高温部が調理対象の食品(被加熱物)であるか否かを判別することができない。そのため、特許文献1の高周波加熱装置では、テーブルプレート上面の高温部(直前までおかずが載置されていた場所)を被加熱物と誤解し、そこでの温度変化に基づいて、不適切なごはん加熱時間を算出する可能性があり、ごはんの加熱不良を惹起する虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、複数の被加熱物を連続して加熱調理する場合、前回の加熱時に被加熱物の載置場所等の温度が上昇していても、今回の被加熱物の設置場所を特定することができる高周波加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高周波加熱調理器は、上記目的を達成するためになされたものであり、テーブルプレートを収納した加熱室と、前記テーブルプレートに載置した被加熱物を加熱するレンジ加熱部と、前記テーブルプレートの上面の複数個所の温度を検出する赤外線センサと、前記加熱室の庫外温度を検出する庫外温度センサと、前記赤外線センサの検出温度に基づいて前記レンジ加熱部を制御する制御部と、を備え、該制御部は、前記庫外温度と前記テーブルプレートの奥側温度の温度差、および、前記庫外温度と前記テーブルプレートの手前側温度の温度差を算出し、前者の温度差が小さい場合は、前記奥側温度をテーブルプレート温度として採用し、後者の温度差が小さい場合は、前記手前側温度をテーブルプレート温度として採用し、前記テーブルプレートの上面の領域であって前記テーブルプレート温度と温度差のある部分を前記被加熱物の載置領域と判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高周波加熱調理器によれば、複数の被加熱物を連続して加熱調理する場合、前回の加熱時に被加熱物の載置場所等の温度が上昇していても、今回の被加熱物の設置場所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施例に係る加熱調理器の前方斜視図。
図2】一実施例に係る加熱調理器の外枠を外した後方斜視図。
図3図1のA-A断面図
図4図3において、茶わんに入れた冷ごはんを加熱する場合の赤外線センサの動作説明図
図5図3において、ラップに包んだ冷凍ごはんを加熱する場合の赤外線センサの動作説明図。
図6】赤外線センサの基準位置を説明する拡大断面図。
図7】赤外線センサの終点位置を説明する拡大断面図。
図8】赤外線センサの観測窓を閉めた状態を説明する拡大断面図。
図9】赤外線センサの温度測定領域を説明する説明図。
図10】一実施例に係る加熱調理器の制御の前段を説明するフローチャート。
図11】一実施例に係る加熱調理器の制御の後段を説明するフローチャート。
図12】一実施例に係る加熱調理器の制御ブロック図。
図13】一実施例に係る加熱調理器の加熱時間を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0012】
図1から図3は、本実施例の主要部分を示すもので、図1は加熱調理器本体を前面側から見た斜視図、図2は同本体の外枠を除いた状態で後方側から見た斜視図、図3図1のA-A断面図である。
【0013】
図において、加熱調理器の本体1は、加熱室28の中に加熱する食品を入れ、マイクロ波やヒータの熱、過熱水蒸気を使用して食品を加熱調理する。
【0014】
ドア2は、加熱室28の内部に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室28を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用するマイクロ波の漏洩を防止し、ヒータの熱や過熱水蒸気を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0015】
取っ手9は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
【0016】
ガラス窓3は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられており、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
【0017】
入力部71は、ドア2の前面下側の操作パネル4に設けられ、マイクロ波加熱やヒータ加熱等の加熱部や加熱する時間等と加熱温度の入力するための操作部6と、操作部6から入力された内容や調理の進行状態を表示する表示部5とで構成されている。
【0018】
外枠7は、加熱調理器の本体1の上面と左右側面を覆うキャビネットである。
【0019】
水タンク42は、加熱水蒸気を作るのに必要な水を溜めておく容器であり、加熱調理器の本体1の前面下側に設けられ、本体1の前面から着脱可能な構造とすることで給水および排水が容易にできるようになっている。
【0020】
後板10は、前記したキャビネットの後面を形成するものであり、上部に外部排気ダクト18が取り付けられ、食品から排出した蒸気や本体1の内部の部品を冷却した後の冷却風(廃熱)39を外部排気ダクト18の外部排気口8から排出する。
【0021】
機械室20は、加熱室底面28aと本体1の底板21との間の空間部に設けられ、底板21上には食品を加熱するためのマグネトロン33、マグネトロン33に接続された導波管47、制御部23a(図12参照)を実装した制御基板23、その他後述する各種部品、これらの各種部品を冷却するファン装置15等が取り付けられている。
【0022】
加熱室底面28aは、略中央部が凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ26が設置され、マグネトロン33より放射されるマイクロ波エネルギーが導波管47、回転アンテナ26の出力軸46aが貫通する開孔部47aを通して回転アンテナ26の下面に流入し、該回転アンテナ26で拡散されて加熱室28内に放射される。回転アンテナ26の出力軸46aは回転アンテナ駆動部46に連結されている。
【0023】
ファン装置15は、底板21に取り付けた冷却モータに取り付けられた冷却ファンとで構成する。このファン装置15によって発生する冷却風39は、機械室20内の自己発熱するマグネトロン33やインバータ回路(図示無し)、奥側重量センサ25c,左側重量センサ25bなどを冷却する。また、加熱室28の外側と外枠7の間および前記したように熱風ケース11aと後板10の間を流れ、外枠7と後板10を冷却しながら外部排気ダクト18の外部排気口8より排出される。さらに、後述する熱風モータ13を冷却するためのダクト16aと、後述する赤外線ケース48内に収められた赤外線ユニット50を冷却するためのダクト16bが設けられ、赤外線ユニット50を冷却した冷却風39は、加熱室28内の排熱(水蒸気など)を廃棄する排気ダクト28eの反対側から排出された後外部排気ダクト18より外に排出される。
【0024】
レンジ加熱部330(図12)はマグネトロン33とインバータ回路(図示せず)よりなり制御部23aによって制御される。インバータ回路の中にあるIGBT(図示せず)の温度はIGBT温度センサ101によって検出される。
【0025】
加熱室28の後部には、熱風ユニット11が取り付けられ、該熱風ユニット11内には加熱室28内の空気を効率良く循環させる熱風ファン32が取り付けられ、加熱室後部壁面28bには空気の通り道となる熱風吸気孔31と熱風吹出し孔30が設けられている。
【0026】
熱風ファン32は、熱風ケース11aの外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
【0027】
また、熱風ユニット11は、加熱室奥壁面28bの後部側に熱風ケース11aを設け、加熱室奥壁面28bと熱風ケース11aとの間に熱風ファン32とその外周側に位置するように熱風ヒータ14を設け、熱風ケース11aの後側に熱風モータ13を取り付け、そのモータ軸を熱風ケース11aに設けた穴を通して熱風ファン32と連結している。
【0028】
熱風モータ13は、加熱室28や熱風ヒータ14からの熱によって温度上昇するため、それを防ぐために、熱風モータカバー17によって囲い、略筒状に形成されてダクト16aを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16aの上端開口部を熱風モータカバー17の下面に接続し、下端開口部をファン装置15の吹出し口に接続し、ファン装置15からの冷却風39の一部を熱風モータカバー17内に取り入れるようにしている。
【0029】
加熱室28の加熱室天面28cの裏側には、ヒータよりなるグリル加熱部12が取り付けられている。グリル加熱部12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室28の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の食品を輻射熱によって焼くものである。
【0030】
また、加熱室28の加熱室天面28cの奥側には後述する赤外線ユニット50が設けられ、赤外線ユニット50を冷却するために赤外線ケース48にて覆い、略筒状に形成されてダクト16bを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16bの上端開口部を赤外線ケース48の側面に接続し、下端開口部を熱風モータカバー17上面と接続し、ファン装置15からの冷却風39の一部を取り入れるようにしている。
【0031】
加熱室28の加熱室天面28cの左奥側には、加熱室28の雰囲気温度(以下、「庫内温度Ti」と称する)を検出する庫内温度センサ80(サーミスタ)を設けている。
【0032】
また、加熱室底面28aには、複数個の重量センサ25、例えば前側左右に左側重量センサ25b、右側重量センサ(図示せず)、後側中央に奥側重量センサ25cが設けられ、その上にテーブルプレート24が載置されている。
【0033】
テーブルプレート24は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、マイクロ波の透過性が良い材料で成形されている。
【0034】
ボイラー43は、熱風ユニット11の熱風ケース11aの外側面に取り付けられ、飽和水蒸気を熱風ユニット11内に臨ませ、熱風ユニット11内に噴出した飽和水蒸気は熱風ヒータ14によって加熱され過熱水蒸気となる。
【0035】
ポンプ部87は、水タンク42の水をボイラー43まで汲み上げるもので、ポンプとポンプを駆動するモータで構成される。ボイラー43への給水量の調節はモータのON/OFFの比率で決定する。
【0036】
加熱部はレンジ加熱部330、熱風ヒータ14、熱風モータ13、グリル加熱部12、ボイラー43などである。
【0037】
次に、図4図9を用いて加熱室28の上方に設けられた非接触で被加熱物の温度を検出する赤外線センサ52について詳細を説明する。
【0038】
図4図3で示す断面図を使用して茶わんにごはんを入れて加熱する場合の赤外線センサの動作説明図、図5図3で示す断面図を使用してラップに包んだ冷凍ごはんを加熱する場合の赤外線センサの動作説明図、図6は基準位置を示す赤外線センサ部の説明用の拡大図、図7は、終点位置を示す赤外線センサの説明用の拡大図、図8は、観測窓を閉めた状態を示す赤外線センサの説明用の拡大図、図9は赤外線センサの視野を説明する説明図である。
【0039】
51はモータで、モータ51の向きは、回転軸51aと加熱室奥壁面28bと並行となるように取り付けられている。そして、回転軸51aが後述する筒状のユニットケース54を回転(駆動)させることで、ユニットケース54に収めた赤外線センサ52を搭載した基板53を回転させて赤外線センサ52のレンズ部52aの向きを加熱室底面28aの奥側(加熱室奥壁面28b側)から加熱室開口部28dまでの範囲を回転移動して温度を検出できるようにしている。モータ51はステッピングモータを使用し制御基板23に設けられた制御部23aの制御によって回転軸51aを正転、逆転、また回転角度を好みに動作可能となっている。
【0040】
52は赤外線センサで、テーブルプレート24や被加熱物60cの温度を非接触で検出する。本実施例では、基板53上に8個の赤外線検出素子(例えばサーモパイル)を回転軸51aの方向に一列に並べて赤外線センサ52を構成している。そのため、本実施例の赤外線センサ52は、テーブルプレート24上の8個所の温度を同時に検出することができる。また、本実施例の赤外線センサ52は、赤外線検出素子群を設置した基板53を回転軸51a周りに回転させることで(図6図7参照)、テーブルプレート24の全域の温度を検出できるようにしている。
【0041】
54は筒状のユニットケースで、最大径部に基板53を配置し赤外線センサ52のレンズ部52aを臨ませる窓部54aを設けている。また、ユニットケース54の材料にはカーボンを含ませることでユニットケース54の特性を導電材とすることで外来ノイズのユニットケース54内への侵入を防止している。
【0042】
55は金属板から成るシャッタである。シャッタ55は、赤外線センサ52を使用しない時に後述する観測窓44aを閉じるものである(図8参照)。また加熱室28の温度がユニットケース54に伝わるのを防止するために、ユニットケース54の外周に冷却風を流せるようにユニットケース54の外周に沿って隙間を設けた風路55cを形成するようにシャッタ55を配置し、風路55cに冷却風39流す出入り口となる開口55aと開口55bを設けている。
【0043】
56は位置決め凸部で、赤外線センサ52の検知点を基準位置(図4の検知点a)に合わせるように制御部23aがモータ51の回転を制御した時、赤外線センサ52の検知点の基準位置を補正できるように、シャッタ55によって観測窓44aを閉じた時に、位置決め凸部56が赤外線ケース48に設けられたストッパ(図示せず)に当接させた状態で回転軸51aをスリップさせることで、制御部23aの制御する基準位置と赤外線センサ52の検知する基準位置となる検知点aの位置を補正することができる
44は加熱室28の内方向に突出した円弧状の観測部で、回転軸51aの回転中心と筒状のユニットケース54の中心とユニットケース54の外周に沿って設けられて円弧状に曲げられたシャッタ55の円弧の中心と円弧状の観測部44の各中心位置は全て同一位置となっている。44aは観測部44に設けた観測窓で、赤外線センサ52の検出する視野範囲となる範囲を開口している。また、マイクロ波加熱時に観測窓44aからのマイクロ波漏洩を防止するために、観測窓44aの周囲外側には立上壁(バーリング)44bを2mm程度設けている。
【0044】
観測部44を加熱室28の内側に突出させることで、最低限の狭い観測窓開口範囲で広範囲の温度検知が可能となる。
【0045】
49は凸部であり、加熱室天面28cから赤外線ケース48と赤外線ユニット50を離すもので、加熱室天面28cとの接触を凸部49のみとすることで加熱時にグリル加熱部12や熱風ユニット11などのヒータによって加熱された加熱室天面28cの温度が赤外線ユニット50に伝わりにくいようにしている。
【0046】
100は赤外線ユニット50内の基板53に配置した庫外温度センサであり、加熱室28の外側の庫外温度Toを検知する。なお、複数の被加熱物を連続して加熱する場合、初回の加熱開始前に測定された庫外温度Toは、加熱調理器外部の室温とほぼ等しく、2回目以降の加熱開始前に測定された庫外温度Toは、加熱調理器外部の室温より高温になっているものの、庫内温度Tiよりは低温である。
【0047】
制御基板23に搭載された制御部23aの赤外線センサ52の測定要領について図4図5により説明する。
【0048】
図4では、茶わんにごはんを入れて加熱する場合、図5はラップに包んだ冷凍ごはんを加熱する場合の赤外線センサの動作を説明する図である。図4では、検知点fにおいて被加熱物60cの表面を直接検出する事ができる。図5では、被加熱物60cの表面を食用ラップ越しに検出している。
【0049】
赤外線センサ52は、一度の測定で8点を測定するセンサをモータ51で基準位置(図4、検知点a)から終点位置(図4、検知点h)まで赤外線センサ52を3度ずつ14回、回転移動させて計15列の測定が行われ、左右方向8点×前後方向15列の120か所の温度を検出する。そして終点位置から基準位置までは赤外線センサ52は測定せずに直接基準位置に戻る。
【0050】
温度検知は、基準位置から終点位置まで赤外線センサ52を3度ずつ14回移動させて15列で測定し、終点位置から基準位置までは戻ることを繰り返す。測定した温度の処理は後述する。
【0051】
次に赤外線センサ52の回転移動について説明する。
【0052】
図4のように被加熱物(ごはん)60cが入った茶碗を熱室底面28aに設けられているテーブルプレート24に載置して加熱を開始した時、マグネトロン33が安定発信する1~2秒間はシャッタ55にて観測窓44aを閉じて(図8参照)マグネトロン33の発信開始時の不安定発信によるノイズが赤外線センサ52に入り込むのを防止する。
【0053】
マグネトロン33の発信が安定した後に、制御部23aはモータ51の回転軸51aを基準位置に回転するように制御する。回転軸51aが基準位置へと回転することでユニットケース54を回転し、赤外線センサ52のレンズ部52aの向きも基準位置の検知点aを検知できる位置に回転(図4図6参照)する。この時、冷却風39は赤外線センサ52のレンズ部52aを流れてセンサ窓部44aから加熱室28へと流れるので、レンズ部52aへの汚れ付着を防止している。
【0054】
ユニットケース54を回転することで、被加熱物60cの温度の検出は前述した基準位置(検知点a)からテーブルプレート24の検知点b、検知点cへと進み、さらにユニットケース54が回転すると茶わん(容器60)の外側の温度を高さ方向に検知し、検知点dから検知点eの温度を検知する。検知点が茶わん(容器60)の開口部の頂点に達した後は、被加熱物60cの表面の温度を検知点fで検知し、次に茶わん(容器60)の内側の温度を検知点gで検知し、次にテーブルプレート24の温度を検知点hで検知する。
【0055】
検知点a~検知点hの温度検知範囲の温度の検知は、ユニットケース54を回転する往路の片方で行い、一度終点まで温度検知を行った後、復路は途中で測定せず温度の検知をしないで、再度基準位置に戻ってから再び検知点a~検知点hと順次行う。
【0056】
温度の検知数は好みに変えられ、前述した検知点a~検知点hは、説明上の例で、前記したように15列のデータを測定する。
【0057】
また、温度の検知は、温度を検知している間はモータ51の回転を止めて検知し、検知した後に回転を行う。正確に温度を検知するため回転を止めて測定する方が良い。
【0058】
例えば、加熱初めは、ユニットケース54の回転を止めて検知し、検知した後に一定角度で回転を行い、回転を止めて検知し、検知した後に一定角度で回転を行うことをくりかえしてマス目状に温度分布を測定する。そうすることで、等角度で一定位置の温度を測定することによりテーブルプレート24の全面をまんべんなく測定するものである。
【0059】
赤外線センサ52は、加熱室底面28aに載置されたテーブルプレート24の四辺から加熱室天面28cに垂直に伸ばした仮想線の内側の加熱室天面28cの左右方向の略中央に設けられている。
【0060】
そして、赤外線センサ52の視野は、検知点aと検知点hはテーブルプレート24の前後のフランジ部の温度を検知する範囲に略定め、赤外線センサ52の整列した複数素子の両側のセンサはテーブルプレート24の左右のフランジ部の温度を検知する範囲に略定められている。こうすることで、テーブルプレート24の略中央に載置された被加熱物60cの温度を正確に検出する事が可能となる。また赤外線センサ52の回転は、温度の測定範囲が広い方に回転させる方が、容器60に入れられた被加熱物60cの温度を検知するのに良い。
【0061】
このような設定で、容器60をテーブルプレート24の奥側に載置した時は、赤外線センサ52の略下側の検知点bで茶わん内の被加熱物60cの温度を検知可能となり、容器60をテーブルプレート24の左右の一方側に載置したときは、赤外線センサ52は加熱室28の左右横方向の略中央に設けられているため、赤外線センサ52内に設けられている一列に整列した8素子の両側の赤外線センサによって被加熱物60cの温度の検出が可能となる。
【0062】
さらに、重量センサ25による重量情報と赤外線センサ52による検知した温度分布情報から重量情報が軽く温度分布の温度上昇が広範囲に認められるときは、被加熱物60cが薄くて広いものと判断できる。
【0063】
本実施例では、容器60に入れた被加熱物60cの温度検知の方法を詳細説明したが、容器を使用しない被加熱物60cがブロック状の大きな塊の場合でも、ブロック状の被加熱物60cの側面の高さ方向と上面の温度を検知できるため、被加熱物60cの温度分布を詳細に検知することが可能となる。
【0064】
<赤外線センサ52の温度測定手順>
次に、赤外線センサ52の測定した温度の処理について説明する。
【0065】
初めに、テーブルプレート24上の被加熱物60cの温度を、赤外線センサ52を使用して測定する際の課題について説明する。本実施例の赤外線センサ52で使用される赤外線検出素子(サーモパイル)は、視野内の被測定物の温度の平均値を検出温度として出力する素子である。従って、赤外線検出素子の視野内に被加熱物60cとテーブルプレート24が存在する場合、両者の温度だけでなく視野内での両者の面積比も測定温度に反映されることになる。
【0066】
本実施例の赤外線センサ52は、テーブルプレート24に載置した被加熱物60cの大凡の大きさと形状を認識できるように、テーブルプレート24の上面を複数個の領域に分けて測定する。例えば、8個の赤外線検出素子を持つ赤外線センサ52であれば、モータ51の回転軸51aを3度ずつ14回移動させることで、図9に例示するように、デーブルプレート24の上面を120(8×15)個の領域に分けて温度測定することができる。
【0067】
以下では、図9に示す120個のマス目一個一個をピクセルと呼ぶ。このピクセルは、赤外線センサ52の指向特性の約50%以上を有する視野角で設定している。しかし、赤外線センサ52からの出力は、視野内(視野角100%)に含まれるすべての被測定物となる以下のものが含まれる。指向特性の50%以上を有する視野角としているピクセル、該ピクセルに隣接した複数のピクセル、またテーブルプレート24以外の加熱室28の壁面も含まれる。そのため、検出した温度を補正して被加熱物60cの温度を略算出する必要がある。
【0068】
補正に必要な情報は、テーブルプレート温度Tt、および、被加熱物60cの認識(判定)と認識した被加熱物60cの大きさと温度である。
【0069】
ここで、テーブルプレート温度Ttは、テーブルプレート24の奥側温度Tb(奥側8ピクセルの平均温度)と手前側温度Tf(手前側8ピクセルの平均温度)を検出した後、使用に適した温度をテーブルプレート温度Ttとしている。なお、テーブルプレート温度Ttとして、どちらを選択するかの詳細は、後述することとする。
【0070】
<被加熱物60cの認識方法>
次に、各ピクセルの測定温度に基づく、被加熱物60cの認識方法と、認識した被加熱物60cの大きさと温度について説明する。
【0071】
被加熱物60cの認識は、前述したテーブルプレート温度Tt(すなわち、テーブルプレート24の奥側温度Tbまたは手前側温度Tf)に対して、所定以上の温度差のあるピクセルを被加熱物60cとして認識する。但し、被加熱物60cは、冷凍・冷蔵・常温など幅広い温度の可能性があるので、被加熱物60cの認識には下記の判定方法を用いる。
【0072】
加熱調理器は主に台所に置かれているため、加熱に使用した直後を除くと、加熱調理器の温度は常温と同程度の温度となる。
【0073】
被加熱物60cが冷凍や冷蔵の場合、テーブルプレート温度Ttの温度に対して、被加熱物60cの温度は低い温度を示す。被加熱物60cを正確に認識するために、検出した各ピクセルの最低温度がテーブルプレート温度Ttより特定の温度分低い場合に、被加熱物60cを認識したと判断する。そして被加熱物60cの大きさは、最低温度からテーブルプレート温度Ttと最低温度との差に対応した事前に確認されている温度幅に含まれる温度を示すピクセルを集めたものを被加熱物60cの大きさとして認識する(例えば、図9の斜線部)。そして、最低温度を被加熱物60cの温度として認識し、検出した被加熱物60cの温度を被加熱物60cの放射率に応じて補正して被加熱物60cの初期温度として算出する。検出した温度を放射率に応じて補正するのは、被加熱物60cの温度が同じでも、放射率が異なれば、赤外線センサ52が測定する温度が異なるため、放射率に応じて温度補正する必要があるからである。なお、被加熱物60cの放射率は、設定されたメニューに応じて特定できるものとする。
【0074】
一方、被加熱物60cがテーブルプレート温度Ttの温度より高い場合は、被加熱物60cを正確に認識するために、検出した各ピクセルの最大温度がテーブルプレート温度Ttより特定の温度高い場合に被加熱物60cを認識したと判断する。そして被加熱物60cの大きさは、最高温度から最高温度とテーブルプレート温度Ttの温度との差に対応した事前に確認されている温度幅に含まれる温度を示すピクセルを集めたものを被加熱物60cの大きさとして認識する。そして、最高温度を被加熱物60cの温度として認識し、検出した被加熱物60cの温度を被加熱物60cの放射率に応じて補正して被加熱物60cの初期温度として算出する。
【0075】
また、被加熱物60cが常温の場合は、テーブルプレート温度Ttと被加熱物60cの温度は等しくなる。そのため、検出した各ピクセルの温度とテーブルプレート温度Ttとの間に特定の温度差が求められない。従って、前述した被加熱物60cが冷凍もしくは冷蔵の場合を想定した特定の温度差、もしくは被加熱物60cがテーブルプレート温度Ttより高い場合を想定した温度差のどちら側にも判定されない場合は、テーブルプレート温度Ttの全域を被加熱物60cと認識する。そして、被加熱物60cを加熱することで温度上昇し、この上昇が特定の温度以上に上昇した位置の温度を被加熱物60cの検出温度として再認識し、特定の温度が上昇したピクセルを集めたものを被加熱物60cの大きさとして再認識する。この場合も、検出した被加熱物60cの温度を被加熱物60cの放射率に応じて補正して被加熱物60cの初期温度として算出する。
【0076】
<レンジ加熱制御のフローチャート>
次に、図10図11のフローチャートを用いて、本実施例の加熱調理器による、レンジ加熱制御を説明する。
【0077】
このレンジ加熱制御は、図10に示す前段のフローチャートで、主として、テーブルプレート温度Ttを判定し、図11に示す後段のフローチャートで、主として、レンジ加熱モードを決定する。
【0078】
初めに、図10の工程S1では、ユーザは、加熱室28のドア2を開け、被加熱物60cを入れた容器60をテーブルプレート24に載置した後、ドア2を閉める。そして、入力部71を用いてオートメニューを選択する。
【0079】
次に、工程S2では、ユーザは、入力部71を用いて、調理の仕上がりを調節する。具体的には、予め用意された仕上がり調節Kから、「強」、「やや強」、「中」、「やや弱」、「弱」のいずれかを選択する。ここで、仕上がり調節Kの「中」は標準の温度で仕上がりであり、「強」は仕上がり温度をより高くした仕上がりであり、「弱」は仕上がり温度をより低くした仕上がりである。
【0080】
工程S3では、ユーザは、入力部71のスタートボタンを入力する。
【0081】
工程S4では、重量センサ25は、テーブルプレート24に載置された、被加熱物60cと容器60の合計の重量Wを検出する。
【0082】
工程S5では、庫内温度センサ80は庫内温度Tiを検出する。
【0083】
工程S6では、制御部23aは、庫内温度Tiが所定の温度より高いかを判定する。そして、庫内温度Tiが所定の温度より高い場合は、庫内高温モードに移行して被加熱物60cを加熱する。一方、そうでない場合は、工程S7に進む。
【0084】
ここで、庫内高温モードとは、オーブン調理の直後のように加熱室28の温度が高い場合、赤外線センサ52が被加熱物60cの温度を正確に検出できなくなるため、赤外線センサ52を使用せずにレンジ加熱を行うモードである。そのため、このモードでは、ユーザに、入力部71で被加熱物60cの保存状態が常温/冷蔵か冷凍かを選択させ、この選択結果と、検出した重量Wを基に、入力された温度に被加熱物60cが加熱できる程度の加熱時間を事前に確認した結果に基づいて総加熱時間を算出して加熱する。
【0085】
工程S7では、赤外線センサ52は、テーブルプレート上面の奥側温度Tbと手前側温度Tfを検出し(図9参照)、庫外温度センサ100は加熱室28の外側の庫外温度Toを検出する。
【0086】
工程S8では、制御部23aは、奥側温度Tbと庫外温度Toの温度差、および、手前側温度Tfと庫外温度Toの温度差を比較し、前者の温度差が小さければ工程S9に進み、後者の温度差が小さければ工程S10に進む。
【0087】
工程S9では、制御部23aは、庫外温度Toにより近い温度の奥側温度Tbをテーブルプレート温度Ttとして採用する。
【0088】
一方、工程S10では、制御部23aは、庫外温度Toにより近い温度の手前側温度Tfをテーブルプレート温度Ttとして採用する。
【0089】
次に、図11の工程S11では、制御部23aは、テーブルプレート上面の各ピクセルの温度に基づいて、被加熱物60cの載置領域を判定する。本工程により、図9の斜線部で例示するような被加熱物60cの載置領域が特定される。
【0090】
工程S12では、制御部23aは、工程S9または工程S10で採用したテーブルプレート温度Ttが所定の温度よりも高温であるかを判定する。そして、テーブルプレート温度Ttが高温であれば工程S16に進み、そうでなければ、工程S13に進む。なお、本工程でテーブルプレート温度Ttが高温と判定された場合、現在のレンジ加熱調理の直前に他のレンジ加熱調理が実行された結果、テーブルプレート温度Ttが高温になっていると推定することができる。
【0091】
工程S13では、制御部23aは、IGBT温度センサ101が検出したIGBT温度が所定の温度よりも高温であるかを判定する。そして、IGBT温度が高温であれば工程S14に進み、そうでなければ、工程S15に進む。なお、本工程でIGBT温度が高温と判定された場合、現在のレンジ加熱調理の直前に他のレンジ加熱調理が実行された結果、レンジ加熱部330に電力を供給するIGBTが高温になっていると推定することができる。
【0092】
工程S14では、制御部23aは、赤外線センサ52が測定したテーブルプレート上面の各ピクセルの温度のうち最大温度が、庫外温度Toに所定の温度を加算した温度よりも高温であるかを判定する。そして、最大温度が高温であれば工程S16に進み、そうでなければ、工程S15に進む。なお、本工程でテーブルプレート上面が局所的に高温と判定された場合、現在のレンジ加熱調理の直前に他のレンジ加熱調理が実行された結果、前回加熱された被加熱物の熱によってテーブルプレート上面が局所的に高温になっていると推定することができる。
【0093】
工程S15では、制御部23aは、工程S11で被加熱物領域と判定されたピクセルにおける赤外線センサ52の測定温度に基づいて、被加熱物60cの初期温度Tsを検出し、その初期温度Tsに基づいて、被加熱物60cの保存状態を、冷凍、冷蔵、常温の何れかに分類する。その後、分類された被加熱物60cの状態に応じて、通常加熱モードでの加熱調理が実行される。なお、通常加熱モードは、赤外線センサ52で被加熱物60cの温度を正しく検出可能な場合に選択される加熱モードであり、従来の加熱制御と同様に、被加熱物60cの温度が所望の調理終了温度に到達した時点で加熱を終了するものである。
【0094】
工程S16では、制御部23aは、工程S11で被加熱物領域と判定されたピクセルにおける赤外線センサ52の測定温度に基づいて、被加熱物60cの初期温度Tsを検出し、その初期温度Tsに基づいて、被加熱物60cの保存状態を、冷凍、冷凍以外のどちらかに分類する。その後、分類された被加熱物60cの状態に応じて、載置場所高温モードでの加熱調理が実行される。
【0095】
載置場所高温モードは、今回のレンジ加熱調理の直前に他の被加熱物をレンジ加熱調理していた痕跡があり(テーブルプレートの奥側または手前側が高温、または、テーブルプレートが局所的に高温)、その痕跡のために、赤外線センサ52では被加熱物60cの温度を誤解する可能性がある場合に、工程S4で検出した重量Wと、工程S16で判別した保存状態に応じて、被加熱物60cを適切な温度に加熱できる程度のレンジ加熱時間を算出して加熱する加熱モードである。
【0096】
ここで、図13を用いて、載置場所高温モードが選択された場合のレンジ加熱を説明する。載置場所高温モードが選択された場合の総加熱時間は、前段のセンシング時間t1と、後段のレンジ加熱時間t2の和である。前段のセンシング時間t1は、センシング処理を実行するための期間であり、被加熱物60cの重量Wや保存状態が求められる。一方、後段のレンジ加熱時間t2は、センシングで求めた被加熱物60cの重量Wと保存状態に基づいて、下記の何れかの式で算出される。
【0097】
<被加熱物が冷凍である場合>
t2a=k×(k-k×Ts)×W ・・・(式1)
<被加熱物が冷凍以外(冷蔵、常温)の場合>
t2b=k×(k-k×Ts)×W ・・・(式2)
ここで、kは、仕上がり調節Kの設定に応じた係数であり、例えば、「強」設定の場合は1.5、「やや強」設定の場合は1.2、「中」設定の場合は1、「やや弱」設定の場合は0.8、「弱」設定の場合は0.5である。また、k~kは所定の正数であり、被加熱物の初期温度Tsが調理完了温度以下である場合に、式1のt2a、式2のt2bが常に正値となる値が設定される。
【0098】
これにより、被加熱物60cの保存状態を冷凍か冷凍以外かに分類できさえすれば、直前のレンジ加熱の痕跡によって被加熱物60cの温度を正確に測定できない場合であっても、被加熱物60cを適温に加熱するために必要とされるレンジ加熱時間t2を算出することができ、そのレンジ加熱時間t2を用いることで被加熱物60cを適温に加熱することができる。
【0099】
以上で説明したように、本実施例の高周波加熱調理器によれば、複数の被加熱物を連続して加熱調理する場合、前回の加熱時に被加熱物の載置場所等の温度が上昇していても、今回の被加熱物の設置場所を特定することができ、今回の被加熱物を適温に加熱することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 加熱調理器の本体、
23a 制御部、
24 テーブルプレート、
25 重量センサ、
28 加熱室、
33 マグネトロン、
52 赤外線センサ、
60 容器、
60c 被加熱物、
71 入力部、
80 庫内温度センサ、
100 庫外温度センサ、
101 IGBT温度センサ、
Ti 庫内温度、
To 庫外温度、
Tt テーブルプレート温度、
Tf テーブルプレートの手前側温度、
Tb テーブルプレートの奥側温度、
Ts 被加熱物の初期温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13