(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157709
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20231019BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20231019BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20231019BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20231019BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20231019BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L45/00
C08L97/00
C08L93/04
C08L57/02
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067786
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂苅 佳祐
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA03
3D131AA04
3D131AA06
3D131BA12
3D131BB03
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC19
3D131BC33
3D131BC39
4J002AC011
4J002AC032
4J002AF025
4J002AH003
4J002BA015
4J002BK004
4J002CE004
4J002FB263
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】氷上性能、耐摩耗性、低発熱性及びウェットグリップ性能をバランス良く改善する。
【解決手段】実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、α-ピネン単位とβ-ピネン単位を含むテルペン系樹脂0.1~20質量部と、平均粒径0.1~500μmの植物性粒状体1~30質量部とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部に対して、α-ピネン単位とβ-ピネン単位を含むテルペン系樹脂0.1~20質量部と、平均粒径0.1~500μmの植物性粒状体1~30質量部とを含む、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
さらにロジン系樹脂及び/又は石油樹脂を0.1~20質量部含む、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記植物性粒状体が、ゴム接着性改良剤の樹脂液により表面処理された表面処理植物性粒状体と、前記表面処理が施されていない非処理植物性粒状体とを含む、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
重荷重用タイヤ用である請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴム組成物においてテルペン系樹脂を配合することが知られている(特許文献1~3参照)。例えば、特許文献1には、雪上や氷上でのグリップ性能を向上するために、ジエン系ゴムに軟化剤含有ノルボルネン系重合体とともにテルペン樹脂等の粘着付与剤を配合することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、氷上性能、摩耗性能の総合性能を改善するために、イソプレン系ゴムとブタジエンゴムに、α-ピネン単位含有率65~100質量%及びβ-ピネン単位含有率0~35質量%のテルペン系樹脂を配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-246711号公報
【特許文献2】特開2021-054377号公報
【特許文献3】特表2019-530793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤに要求される性能として、凍結路面でのグリップ性能(即ち、氷上性能)や、濡れた路面でのグリップ性能(ウェットグリップ性能)がある。また、タイヤ寿命の観点からは耐摩耗性が求められ、更に、燃費性の観点から低発熱性が求められる。しかしながら、これらの性能をバランス良く改善すること、すなわちいずれかの性能を悪化させることなく同時に満足させることは難しく、更なる改善が求められる。
【0006】
本発明の実施形態は、氷上性能、耐摩耗性、低発熱性及びウェットグリップ性能をバランス良く改善することができるタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] ゴム成分100質量部に対して、α-ピネン単位とβ-ピネン単位を含むテルペン系樹脂0.1~20質量部と、平均粒径0.1~500μmの植物性粒状体1~30質量部とを含む、タイヤ用ゴム組成物。
[2] さらにロジン系樹脂及び/又は石油樹脂を0.1~20質量部含む、[1]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[3] 前記植物性粒状体が、ゴム接着性改良剤の樹脂液により表面処理された表面処理植物性粒状体と、前記表面処理が施されていない非処理植物性粒状体とを含む、[1]又は[2]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[4] 重荷重用タイヤ用である[1]~[3]のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、氷上性能、耐摩耗性、低発熱性及びウェットグリップ性能をバランス良く改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物(以下、ゴム組成物ともいう。)は、(A)ゴム成分、(B)テルペン系樹脂、及び(C)植物性粒状体を含む。一実施形態において、該ゴム組成物は、さらに(D)ロジン系樹脂及び/又は(E)石油樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
[(A)ゴム成分]
ゴム成分としてはジエン系ゴムが用いられる。ジエン系ゴムとは、共役二重結合を持つジエンモノマーに対応する繰り返し単位を持つゴムをいい、ポリマー主鎖に二重結合を有する。ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等、ゴム組成物において通常使用される各種ジエン系ゴムが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なお、上記のジエン系ゴムには、必要に応じて末端や主鎖を変性したもの(例えば、末端変性SBR)や、所望の特性を付与するべく改質したもの(例えば、改質NR)も、その概念に包含される。
【0011】
一実施形態において、ゴム成分は、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、及びブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。より好ましくは、ゴム成分は、天然ゴムとブタジエンゴムを含むことである。ゴム成分100質量部は、天然ゴム40~90質量部とブタジエンゴム10~60質量部を含むことが好ましく、より好ましくは天然ゴム50~80質量部とブタジエンゴム20~50質量部を含むことであり、更に好ましくは天然ゴム55~70質量部とブタジエンゴム30~45質量部を含むことである。
【0012】
[(B)テルペン系樹脂]
テルペン系樹脂は、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であり、本実施形態ではα-ピネン単位とβ-ピネン単位を含むものが用いられる。好ましくは、α-ピネン単位とβ-ピネン単位を含む共重合体からなるテルペン系樹脂が、テルペン系樹脂として用いられる。α-ピネン単位とβ-ピネン単位を含むテルペン系樹脂は、ゴム成分との相溶性が高く、ゴム成分中での分散性に優れるため、植物性粒状体とともに配合することと相俟って、氷上性能、耐摩耗性、低発熱性及びウェットグリップ性能をバランス良く改善することができると考えられる。
【0013】
α-ピネン単位とは、α-ピネンに由来する単位である。β-ピネン単位とは、β-ピネンに由来する単位である。α-ピネン単位とβ-ピネン単位を含むテルペン系樹脂は、α-ピネンとβ-ピネンを含む混合物を重合することにより得ることができる。α-ピネン単位とβ-ピネン単位の質量比は、特に限定しないが、35:65~4:96であることが好ましく、より好ましくは20:80~4:96であり、さらに好ましくは10:90~4:96である。一実施形態において、テルペン系樹脂におけるα-ピネン単位の含有率は4~35質量%であることが好ましく、より好ましくは4~20質量%であり、さらに好ましくは4~10質量%である。テルペン系樹脂におけるβ-ピネン単位の含有率は65~96質量%であることが好ましく、より好ましくは80~96質量%であり、さらに好ましくは90~96質量%である。
【0014】
テルペン系樹脂は、その構成モノマーとして、α-ピネン及びβ-ピネンのみが用いられてもよいが、その他のテルペン化合物、更にはテルペン化合物以外のモノマーを、効果が損なわれない限り含んでもよい。一実施形態において、テルペン系樹脂は、テルペン化合物(テルペンモノマー)のみを重合して得られるポリテルペン樹脂でもよく、すなわち、α-ピネン単位とβ-ピネン単位を含むポリテルペン樹脂でもよい。
【0015】
一実施形態において、テルペン系樹脂は、リモネンに由来する単位であるリモネン単位を実質的に含まないことが好ましく、例えば、テルペン系樹脂におけるリモネン単位の含有率は10質量%未満でもよく、5質量%未満でもよく、2質量%未満でもよく、1質量%未満でもよく、0質量%でもよい。
【0016】
テルペン系樹脂の合成方法は特に限定されない。例えば、テルペン系樹脂は、ルイス酸触媒を用いて、α-ピネン及びβ-ピネンを含むモノマー混合物をカチオン重合することにより合成することができる。ルイス酸触媒の具体例としては、特に限定されず、金属ハライド(例えば、BF3、BBr3、AlF3、AlBr3、TiCl4、TiBr4、FeCl3、FeCl2、SnCl4、WCl6、MoCl5、ZrCl4、SbCl3、SbCl5、TeCl2及びZnCl2)、金属アルキル化合物(例えば、Et3Al、Et2AlCl、EtAlCl2、Et3Al2Cl3、(iBu)3Al、(iBu)2AlCl、(iBu)AlCl2、Me4Sn、Et4Sn、Bu4Sn及びBu3SnCl)、並びに金属アルコキシ化合物(例えば、Al(OR)3-xClx及びTi(OR)4-yCly(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表し、xは1又は2の整数を表し、yは1~3の整数を表す))が挙げられる。ここで、Etはエチル基、iBuはイソブチル基、Meはメチル基、Buはブチル基をそれぞれ表す。
【0017】
一実施形態において、上記テルペン系樹脂は、軟化点が60~150℃であることが好ましく、より好ましくは70~140℃であり、更に好ましくは80~130℃である。軟化点は、ASTM D6090(刊行日1997年)に準拠して測定される。
【0018】
一実施形態において、テルペン系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が38~81℃であることが好ましい。Tgは、TA Instrumentsの示差走査熱量計SC Q2000を使用してASTM D6604(刊行日2013年)に準拠して測定される。
【0019】
テルペン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部であり、更に好ましくは0.8~7質量部であり、特に好ましくは1~5質量部である。
【0020】
[(C)植物性粒状体]
植物性粒状体としては、種子の殻、果実の核、穀物及びその芯材などの粉砕物が挙げられ、これらの少なくとも1種を配合することができる。例えば、胡桃(クルミ)、杏(あんず)、椿、桃、梅、銀杏、落花生、栗などの果実の核や種子の殻の粉砕物、米、麦、アワ、ひえ、とうもろこしなどの穀物の粉砕物や、トウモロコシの穂芯などの穀物芯材の粉砕物などが挙げられる。これらはモース硬度が2~5程度であり、氷よりも硬いので、氷雪路面に対して引っ掻き効果を発揮することができる。また、このような引っ掻き効果を持つ防滑り材の中でも、植物性粒状体であれば、テルペン系樹脂と併用したときに耐摩耗性を損なうことなく、氷上性能、低発熱性及びウェットグリップ性能を向上することができる。
【0021】
植物性粒状体としては、平均粒径が0.1~500μmであるものを用いることが好ましい。植物性粒状体の平均粒径は10~500μmであることが好ましく、より好ましくは100~400μmであり、更に好ましくは150~300μmである。ここで、植物性粒状体の平均粒径は、90%体積粒径(D90)であり、レーザ回折・散乱法により測定される粒度分布(体積基準)における積算値90%での粒径を意味する。例えば、該平均粒径は、光源として赤色半導体レーザ(波長680nm)を用いる(株)島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置「SALD-2200」により求められる。
【0022】
植物性粒状体は、ゴム成分とのなじみを良くして脱落を防ぐために、ゴム接着性改良剤の樹脂液により表面処理されたものを用いることが好ましい。ゴム接着性改良剤としては、例えば、特開平10-7841号公報に記載されたレゾルシン・ホルマリン樹脂初期縮合物と天然ゴムラテックスまたはジエン系合成ゴムラテックスとの混合物が挙げられる。
【0023】
一実施形態において、植物性粒状体は、ゴム接着性改良剤の樹脂液により表面処理された表面処理植物性粒状体と、そのような表面処理が施されていない非処理植物性粒状体とを含むことが好ましい。表面処理植物性粒状体と非処理植物性粒状体を併用することにより、氷上性能を更に改善することができる。このように併用する場合、表面処理植物性粒状体と非処理植物性粒状体との質量比は、特に限定されないが、20:80~60:40であることが好ましく、より好ましくは30:70~50:50であり、特に好ましくは30:70~45:55であり、表面処理植物性粒状体よりも非処理植物性粒状体を多く配合することが好ましい。また、併用する場合、両者の平均粒径の関係は特に限定されないが、表面処理植物性粒状体の平均粒径が非処理植物性粒状体の平均粒径よりも大きいことが好ましい。
【0024】
植物性粒状体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは2~20質量部であり、更に好ましくは3~10質量部であり、特に好ましくは3~8質量部である。
【0025】
[(D)ロジン系樹脂]
本実施形態に係るゴム組成物には、ロジン系樹脂が配合されてもよい。ロジン系樹脂を添加することにより、テルペン系樹脂と植物性粒状体を併用したことによる氷上性能、低発熱性及びウェットグリップ性能を損なうことなく、耐摩耗性を顕著に改善することができる。
【0026】
ロジン系樹脂は、ロジン酸を主成分とする樹脂であり、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの原料ロジン、原料ロジンの不均化物、原料ロジンを水素添加処理した安定化ロジン、重合ロジンなどのロジン類や、ロジン類のエステル化物(ロジンエステル樹脂)、フェノール変性ロジン類、不飽和酸(マレイン酸など)変性ロジン類、ロジン類を還元処理したホルミル化ロジン類などの各種公知のものを使用できる。
【0027】
ロジン系樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部であり、更に好ましくは0.8~5質量部である。
【0028】
[(E)石油樹脂]
本実施形態に係るゴム組成物には、石油樹脂が配合されてもよい。石油樹脂を添加することにより、テルペン系樹脂と植物性粒状体を併用したことによる氷上性能及び低発熱性を損なうことなく、耐摩耗性とウェットグリップ性能を向上することができる。
【0029】
石油樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂が挙げられる。脂肪族系石油樹脂は、炭素数4~5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C5系石油樹脂とも称される。)、水添されたものであってもよい。芳香族系石油樹脂は、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C9系石油樹脂とも称される。)、水添されたものであってもよい。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂は、上記C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂であり(C5/C9系石油樹脂とも称される。)、水添されたものであってもよい。
【0030】
石油樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部であり、更に好ましくは0.8~5質量部である。なお、ロジン系樹脂と石油樹脂を併用する場合、ロジン系樹脂と石油樹脂の合計で、ゴム成分100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部であり、更に好ましくは0.8~5質量部である。
【0031】
[その他の成分]
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、オイル、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0032】
充填剤としては、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることが好ましく、より好ましくはカーボンブラックを含むことであり、カーボンブラックとシリカを併用してもよい。なお、シリカを配合する場合、シランカップリング剤を併用してもよい。
【0033】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。具体的には、SAF級(N100番台)、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)(ともにASTMグレード)などが挙げられる。これら各グレードのカーボンブラックは、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。シリカとしては、特に限定されず、湿式シリカ、乾式シリカ等が挙げられる。好ましくは、シリカとして、湿式沈降法シリカ、湿式ゲル化法シリカなどの湿式シリカが用いられる。
【0034】
充填剤の含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して、20~100質量部でもよく、30~80質量部でもよい。充填剤はカーボンブラックを主成分としてもよい。すなわち、充填剤の全質量に対するカーボンブラックの量が50質量%超でもよく、70質量%以上でもよく、100質量%でもよい。
【0035】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の含有量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部であり、1~3質量部でもよい。
【0036】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の含有量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部であり、1~3質量部でもよい。
【0037】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、テルペン系樹脂及び植物性粒状体とともに、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤が添加混合される。次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤が添加混合される。これにより、未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0038】
本実施形態に係るゴム組成物は、タイヤ用ゴム組成物として用いることができる。タイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラックやバスの重荷重用タイヤなど各種用途及び各種サイズの空気入りタイヤが挙げられる。好ましくは、該ゴム組成物は、重荷重用タイヤのためのゴム組成物として用いられる。
【0039】
一実施形態に係るタイヤは、上記ゴム組成物を用いて作製されたタイヤである。すなわち、該タイヤは、上記ゴム組成物からなるゴム部分を備えたものである。タイヤの適用部位としては、例えば、トレッドゴム、サイドウォールゴムなどが挙げられ、好ましくはトレッドゴムである。
【0040】
タイヤのトレッドゴムには、キャップゴムとベースゴムとの2層構造からなるものと、両者が一体の単層構造のものがある。単層構造のものでは、当該トレッドゴムが上記ゴム組成物で形成されてもよい。2層構造のものでは、路面に接地する外側のキャップゴムが上記ゴム組成物で形成されてもよく、キャップゴムの内側に配されるベースゴムが上記ゴム組成物で形成されてもよく、キャップゴムとベースゴムの双方が上記ゴム組成物で形成されてもよい。
【0041】
タイヤの製造方法は、特に限定されない。例えば、上記ゴム組成物を、常法に従い、押出加工によって所定の形状に成形し、他の部品と組み合わせて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)が作製される。例えば、上記ゴム組成物を用いてトレッドゴムを作製し、該トレッドゴムを他のタイヤ部材と組み合わせて未加硫タイヤが作製される。その後、例えば140~180℃で加硫成形することにより、タイヤを製造することができる。
【実施例0042】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0044】
・天然ゴム:RSS#3
・ブタジエンゴム:宇部興産(株)製「BR150B」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト6」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種」
・ステアリン酸:日油(株)製「ビーズステアリン酸」
・非処理植物性粒状体:クルミ殻粉砕物((株)日本ウォルナット製「ソフトグリット#46」、D90=400μm)
・表面処理植物性粒状体:クルミ殻粉砕物((株)日本ウォルナット製「ソフトグリット#46」)に対し、特開平10-7841号公報の段落0015に記載に方法に準じてRFL処理液(レゾルシン・ホルマリン樹脂初期縮合物とラテックスの混合物を主成分とするもの)で表面処理を施したもの(D90=300μm)
・オイル:アロマ系、JXTGエネルギー(株)製「プロセスNC-140」
・テルペン系樹脂:α-ピネン/β-ピネン混合樹脂、クレイトン社製「SYLVATRAXX4150」(α-ピネン単位:5質量%、β-ピネン単位:95質量%、軟化点:115℃、Tg:61℃)
・ロジン系樹脂:ロジン、アイレック(株)製「TR-80」
・石油樹脂:C5/C9系石油樹脂、東ソー(株)製「ペトロタック90」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・硫黄:鶴見化学工業(株)「粉末硫黄」
・加硫促進剤:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
【0045】
得られた各ゴム組成物について、氷上性能、耐摩耗性、低発熱性、及びウェットグリップ性能を評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0046】
・氷上性能:各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成形することにより重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ:11.5R22.5 14PR)を作製した。得られたタイヤを25トントラックに装着し、-3±3℃の氷盤路上で30km/h走行から急ブレーキをかけて(ABS非作動)、制動距離(m)を測定した。制動距離の逆数(n=10の平均値)を比較し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど制動距離が短く、氷上性能に優れることを示す。
【0047】
・耐摩耗性:各ゴム組成物を160℃で30分間加硫した試験片について、JIS K6264に準じて、ランボーン摩耗試験機を用いて、荷重3kg、スリップ率20%、温度23℃、落砂量20g/分で摩耗量を測定した。摩耗量の逆数を比較し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0048】
・低発熱性:氷上性能の評価方法に記載のとおり作製したタイヤを用いた。米国自動車安全基準FMVSS119に規定する高速耐久試験条件でドラム走行した直後、ベルト上でトレッド厚みが最大になるベルト端位置にサーミスタを挿入して温度を測定し、結果を下記式で計算した指数で示した。値が大きいほど、発熱しにくく、低発熱性に優れることを示す。
(比較例1のタイヤの温度)×100/(各試作タイヤの温度)
【0049】
・ウェットグリップ性能:氷上性能の評価方法に記載の通り作製したタイヤを用いた。50%摩耗時のタイヤを装着した車両が水深5mmの路面を速度40km/hで進入し、急制動した時の制動距離を測定し、その逆数を指数として算出した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、制動距離が短く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0050】
【0051】
結果は表1に示す通りである。比較例1では、植物性粒状体が配合されるもテルペン系樹脂が配合されていない。該比較例1に対し、テルペン系樹脂と植物性粒状体を配合した実施例1~3では、耐摩耗性を維持ないし向上しながら、氷上性能、低発熱性及びウェットグリップ性能を改善することができ、特に氷上性能と低発熱性の向上効果に優れていた。実施例4~6では、テルペン系樹脂及び植物性粒状体に加えて更にロジン系樹脂が配合されている。実施例4~6では、実施例1~3に対して、氷上性能、低発熱性及びウェットグリップ性能を維持しつつ、耐摩耗性を顕著に向上することができた。実施例7~9では、テルペン系樹脂及び植物性粒状体に加えて更に石油樹脂が配合されている。実施例7~9では、実施例1~3に対して、氷上性能及び低発熱性を維持しつつウェットグリップ性能及び耐摩耗性を向上することができた。
【0052】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。