(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157712
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20231019BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231019BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20231019BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20231019BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20231019BHJP
C08L 25/02 20060101ALI20231019BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20231019BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20231019BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/36
C08K5/548
C08L101/12
C08L91/00
C08L25/02
C08L45/00
C08L65/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067790
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓也
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA04
3D131BB01
3D131BC12
3D131BC19
4J002AC11W
4J002AC11X
4J002AE05Z
4J002AF02Y
4J002BA01Y
4J002BC04Y
4J002BC09Y
4J002BK00Y
4J002CE00Y
4J002DJ016
4J002EX087
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD207
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】低温時のウエットグリップ性能と高温時にウエットグリップ性能に優れたタイヤが得られる、タイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】(a)ガラス転移点が-30℃以上である変性スチレンブタジエンゴムを25~65質量部と、(b)ガラス転移点が-50℃以下である変性スチレンブタジエンゴムを25~65質量部とを含むジエン系ゴム100質量部に対して、シリカを80~140質量部、軟化点が40℃以上である熱可塑性樹脂を15~50質量部、オイルを5~15質量部含有する、タイヤトレッド用ゴム組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ガラス転移点が-30℃以上である変性スチレンブタジエンゴムを25~65質量部と、
(b)ガラス転移点が-50℃以下である変性スチレンブタジエンゴムを25~65質量部とを含むジエン系ゴム100質量部に対して、
シリカを80~140質量部、
軟化点が40℃以上である熱可塑性樹脂を15~50質量部、
オイルを5~15質量部含有する、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記変性スチレンブタジエンゴム(a)と前記変性スチレンブタジエンゴム(b)のスチレン含有量の差が5~30質量%である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、又はテルペン系樹脂である、請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
-5℃、周波数10Hz、動ひずみ0.2%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率が、150MPa以下である、請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
25℃、周波数10Hz、動ひずみ0.1%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率(A)と
25℃、周波数10Hz、動ひずみ5%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率(B)との差が20MPa以下である、請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
保護化メルカプトシランを、シリカ100質量部に対して5~20質量部含有する、請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のゴム組成物をトレッドに用いてなる、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤに用いられるゴム組成物においては、湿潤路面におけるグリップ性能(ウエットグリップ性能)を向上させることが求められている。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1には、ゴム成分としてガラス転移点が-30~0℃のスチレンブタジエンゴムを使用することが記載されている。また、特許文献2,3には、グリップ性能を向上するために高軟化点の樹脂を使用することが記載されている。しかしながら、低温時のウエットグリップ性能については改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-321046号公報
【特許文献2】特許3636546号公報
【特許文献3】特許5902583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、低温時(5℃)のウエットグリップ性能と高温時(25℃)のウエットグリップ性能に優れた空気入りタイヤが得られる、ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1](a)ガラス転移点が-30℃以上である変性スチレンブタジエンゴムを25~65質量部と、(b)ガラス転移点が-50℃以下である変性スチレンブタジエンゴムを25~65質量部とを含むジエン系ゴム100質量部に対して、シリカを80~140質量部、軟化点が40℃以上である熱可塑性樹脂を15~50質量部、オイルを5~15質量部含有する、タイヤトレッド用ゴム組成物。
[2]上記変性スチレンブタジエンゴム(a)と上記変性スチレンブタジエンゴム(b)のスチレン含有量の差が5~30質量%である、[1]に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[3]上記熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、又はテルペン系樹脂である、[1]又は[2]に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[4]-5℃、周波数10Hz、動ひずみ0.2%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率が、150MPa以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[5]25℃、周波数10Hz、動ひずみ0.1%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率(A)と25℃、周波数10Hz、動ひずみ5%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率(B)との差が20MPa以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[6]保護化メルカプトシランを、シリカ100質量部に対して5~20質量部含有する、[1]~[5]のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[7][1]~[6]のいずれか1項に記載のゴム組成物をトレッドに用いてなる、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物によれば、低温時(5℃)のウエットグリップ性能と高温時(25℃)のウエットグリップ性能に優れた空気入りタイヤが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0009】
本実施形態に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、(a)ガラス転移点(Tg)が-30℃以上である変性スチレンブタジエンゴム(SBR)を25~65質量部と、(b)ガラス転移点(Tg)が-50℃以下である変性スチレンブタジエンゴム(SBR)を25~65質量部とを含むジエン系ゴム100質量部に対して、シリカを80~140質量部、軟化点が40℃以上である熱可塑性樹脂を15~50質量部、オイルを5~15質量部含有するものとする。本明細書において、ガラス転移点(Tg)とは、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分(測定温度範囲:-150℃~150℃)にて測定される値である。軟化点とは、JIS K2207に準拠した環球式にて測定される値である。
【0010】
本明細書において、ゴム成分における「変性」とは、シリカとの反応性を有する官能基を有するもののことをいい、「未変性」とは、シリカとの反応性を有する官能基を有さないもののことをいう。シリカとの反応性を有する官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、エポキシ基などが挙げられ、当該官能基は、分子末端に導入されたものであってもよく、分子鎖中に導入されたものであってもよい。
【0011】
ジエン系ゴムは、変性SBR(a)、変性SBR(b)以外の成分を含むものであってもよい。このようなゴム成分としては、Tgが-30℃以下のジエン系ゴムであることが好ましく、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等を使用することができる。これらは、変性したものでも未変性でもよいが、未変性SBRであることが好ましい。すなわち、Tgが-30℃以下である未変性SBRがより好ましい。
【0012】
ジエン系ゴムにおける変性SBR(a)と変性SBR(b)の合計の含有割合は、50~100質量%であることが好ましく、60~90質量%であることが好ましく、60~80質量%であることがより好ましい。
【0013】
変性SBR(a)と変性SBR(b)の含有割合(変性SBR(a)/変性SBR(b))は、特に限定されないが、質量比で0.4~2.6であることが好ましく、0.6~1.7であることがより好ましい。
【0014】
変性SBR(a)と変性SBR(b)のスチレン含有量の差は、5~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。スチレン含有量の差が上記範囲内である場合、優れたウエットグリップ性能が得られやすい。
【0015】
本実施形態に係るゴム組成物は、補強性充填剤として、シリカを含有するものである。シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。
【0016】
シリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、80~140質量部であり、100~140質量部であることが好ましく、110~130質量部であることがより好ましい。
【0017】
補強性充填剤としては、シリカに加えて、カーボンブラックを併用するものであってもよい。補強性充填剤の含有量(シリカとカーボンブラックの合計量)は、特に限定されず、ジエン系ゴム100質量部に対して80~170質量部でもよく、100~160質量部でもよく、110~150質量部でもよい。カーボンブラックの含有量も特に限定されず、ジエン系ゴム100質量部に対して1~30質量部でもよく、5~20質量部でもよい。
【0018】
本実施形態に係るゴム組成物はシランカップリング剤を含有することが好ましく、その場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、5~20質量部であることが好ましく、より好ましくは5~15質量部である。また、シランカップリング剤の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、4~30質量部であることが好ましく、5~20質量部であることがより好ましい。
【0019】
シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。この中でも保護化メルカプトシランであることが好ましい。
【0020】
本実施形態に係るゴム組成物は、軟化点が40℃以上の熱可塑性樹脂を含有するものであり、軟化点は40~160℃であることが好ましい。軟化点が40℃以上の熱可塑性樹脂を含有することにより、優れたウエットグリップ性能が得られやすい。
【0021】
熱可塑性樹脂の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、15~50質量部であり、20~40質量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が、上記範囲内である場合、優れたウエットグリップ性能が得られやすい。
【0022】
熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系炭化水素樹脂、ロジン系樹脂などが挙げられ、この中でも、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂であることが好ましい。
【0023】
スチレン系樹脂としては、スチレン及び/又はα-メチルスチレンを構成モノマーとして含む樹脂であればよく、スチレン又はα-メチルスチレンを単独で重合した単独重合体や、スチレン及びα-メチルスチレンを共重合した共重合体、スチレン及び/又はα-メチルスチレンとその他の単量体との共重合体が挙げられる。その他の単量体としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール等のテルペン化合物(テルペン系単量体)や、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等の非共役オレフィン等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
テルペン系樹脂としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0025】
石油系炭化水素樹脂としては、例えば、C5系の脂肪族系炭化水素樹脂、C9系の芳香族系炭化水素樹脂、C5/C9系の脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂が挙げられる。脂肪族系炭化水素樹脂は、炭素数4~5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり、一部水添したものであってもよい。芳香族系炭化水素樹脂は、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり、一部水添したものであってもよい。脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂は、上記C5留分とC9留分とをカチオン重合により共重合して得られる樹脂であり、一部水添したものであってもよい。
【0026】
ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの原料ロジン、原料ロジンの不均化物、重合ロジンなどのロジン類や、ロジン類のエステル化物(ロジンエステル樹脂)、フェノール変性ロジン類、不飽和酸(マレイン酸など)変性ロジン類、ロジン類を還元処理したホルミル化ロジン類などが挙げられる。
【0027】
オイルとしては、一般にゴム組成物に配合される各種オイルを用いることができる。例えば、鉱物油、即ちパラフィンオイル、ナフテンオイル、及びアロマオイルからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物油を用いてもよい。オイルの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5~15質量部であり、5~10質量部以下であることが好ましい。
【0028】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分以外に、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0029】
上記加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の含有量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。また、上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の含有量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0030】
本実施形態に係るゴム組成物の-5℃、周波数10Hz、動ひずみ0.2%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率は、優れたウエットグリップ性能が得られる観点から、200MPa以下であることが好ましい。
【0031】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物の25℃、周波数10Hz、動ひずみ0.1%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率(A)と25℃、周波数10Hz、動ひずみ5%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率(B)との差は、優れたウエットグリップ性能が得られる観点から、20MPa以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0033】
このようにして得られたゴム組成物は、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど、各種用途・各種サイズの空気入りタイヤのトレッドに適用することができる。すなわち、該ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、例えば140~180℃でグリーンタイヤを加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
ラボミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0036】
・未変性SBR1:JSR(株)製「SL563」、Tg=-35℃
・未変性SBR2:JSR(株)製「SBR1502」、Tg=-52℃
・未変性SBR3:旭化成(株)製「TUF1834」、Tg=-70℃
・変性SBR1:JSR(株)製「HPR850」、Tg=-24℃、スチレン含有量=27質量%
・変性SBR2:JSR(株)製「HPR840」、Tg=-60℃、スチレン含有量=10質量%
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シーストKH」
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・シランカップリング剤:モメンティブ社製「NXT」、保護化メルカプトシラン
・オイル:ENEOS(株)製「プロセスNC140」
・熱可塑性樹脂1:C5/C9系樹脂、東ソー(株)製「ペトロタック90」、軟化点=100℃
・熱可塑性樹脂2:スチレン系樹脂、クレイトン社製「SYLVATRAXX 4401」、軟化点=85℃
・熱可塑性樹脂3:テルペン系樹脂、クレイトン社製「SYLVATRAXX 4150」、軟化点=115℃
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・ワックス:日本精蝋(株)製「OZOACE0355」
・老化防止剤1:大内新興化学(株)製「ノクラック6C」
・老化防止剤2:川口化学工業(株)製「アンテージRD」
・加硫促進剤1:大内新興化学(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤2:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
【0037】
得られた各ゴム組成物について、160℃で20分間加硫して所定形状の試験片を作製し、動的粘弾性試験を行った。また、得られた各ゴム組成物を用いて、空気入りタイヤを作製し、ウエットグリップ性能を評価した。測定方法は次の通りである。
【0038】
・-5℃における貯蔵弾性率(E’(-5℃)):GABO社製粘弾性測定機を用い、-5℃、周波数10Hz、動ひずみ0.2%、静ひずみ10%の条件で貯蔵弾性率を測定した。
【0039】
・25℃、周波数10Hz、動ひずみ0.1%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率(A)と25℃、周波数10Hz、動ひずみ5%、静ひずみ10%の条件で測定した貯蔵弾性率(B)との差(ΔE’(25℃)):GABO社製粘弾性測定機を用いて貯蔵弾性率を測定し、貯蔵弾性率(A)と貯蔵弾性率(B)との差を求めた。
【0040】
・ウエットグリップ性能(5℃):上記で得られたゴム組成物をトレッドとして搭載した215/45ZR17試験用ラジアルタイヤ4本を車両に装着させて、気温5℃の条件下、時速100キロメートルで、水深1mmの路面を走行させた状態からABSを作動させた。この際の制動距離を測定し、その測定値の逆数を算出した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、ウエットグリップ性能が優れていることを示す。
【0041】
・ウエットグリップ性能(25℃):上記で得られたゴム組成物をトレッドとして搭載した215/45ZR17試験用ラジアルタイヤ4本を車両に装着させて、気温25℃の条件下、時速100キロメートルで、水深1mmの路面を走行させた状態からABSを作動させた。この際の制動距離を測定し、その測定値の逆数を算出した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、ウエットグリップ性能が優れていることを示す。
【0042】
【0043】
結果は、表1に示す通りであり、実施例1~7は比較例1と比較して、低温時のウエットグリップ性能、及び高温時のウエットグリップ性能が優れていた。
【0044】
比較例2,3は変性SBR(a)の含有量が下限値未満の例であり、比較例1と比較して高温時のウエットグリップ性能が劣っていた。
【0045】
比較例4,5は変性SBR(b)の含有量が下限値未満の例であり、低温時のウエットグリップ性能が劣っていた。