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特開2023-157722ガスエンジン・コージェネレーション装置およびその運転方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157722
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】ガスエンジン・コージェネレーション装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20231019BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20231019BHJP
   B01J 21/04 20060101ALI20231019BHJP
   F02G 5/02 20060101ALI20231019BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20231019BHJP
   F02B 51/02 20060101ALI20231019BHJP
   F02M 27/02 20060101ALI20231019BHJP
   F02B 43/04 20060101ALI20231019BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F02M21/02 K
C01B3/38
B01J21/04 M
F02G5/02
F01N5/02 H
F02B51/02
F02M27/02 F
F02B43/04
F02D19/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067804
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】天羽 祐太
【テーマコード(参考)】
3G092
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
3G092AB08
3G092AB15
3G092DE17S
3G092DF01
3G092DF02
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB03
4G140EB12
4G140EB23
4G140EB39
4G140EC08
4G169AA04
4G169AA11
4G169BA01
4G169BB02
4G169BC16
4G169CC17
4G169EA15
(57)【要約】
【課題】ガスエンジンの排ガスの熱を利用して触媒の昇温を行える改質器の収納筐体を備えたガスエンジン・コージェネレーション装置を提供する。
【解決手段】ガスエンジン・コージェネレーション装置は、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、触媒を介して改質燃料となる反応生成物を生成する改質器を備えた装置であって、改質器130を収納する収納筐体300と、ガスエンジン110と、発電機111と、排ガスボイラ120とを備え、収納筐体300が、排ガスボイラ120の内部の過熱器121と蒸発器122の中間位置に配置されている。その運転方法は、排ガスを、ガスエンジン110から過熱器121、過熱器121から収納筐体300、収納筐体300から蒸発器122の順に排気して、改質器130を排ガスによって加熱するものである。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、触媒を介して改質燃料となる反応生成物を生成する改質器を備えたガスエンジン・コージェネレーション装置であって、
前記ガスエンジン・コージェネレーション装置は、
前記改質器を収納する収納筐体と、
ガスエンジンと、
前記ガスエンジンにより駆動される発電機と、
前記ガスエンジンからの排ガスにより加熱される排ガスボイラと、を備え、
前記収納筐体が、前記排ガスボイラの内部の過熱器と蒸発器の中間位置に配置されたこと
を特徴とするガスエンジン・コージェネレーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスエンジン・コージェネレーション装置であって、
前記収納筐体は、
前記過熱器に接続され、前記排ガスを前記収納筐体の内部に取り込む入側接続部と、
前記蒸発器に接続され、前記収納筐体の内部から前記排ガスを排出する出側接続部と、
前記改質器を収納する収納部と、
前記収納部に前記改質器を固定する固定機構と、を備えること
を特徴とするガスエンジン・コージェネレーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガスエンジン・コージェネレーション装置であって、
前記収納部は、前記収納筐体の内部の前記排ガスの流路を横断する構造に設けられており、
前記改質器は、前記収納部に対して前記排ガスの流路を横断するように収納される容器状であり、
前記改質器の前記排ガスの流路内に位置する区間には、前記触媒を担持した複数の触媒ユニットが、前記排ガスの流路を横断する方向に積層されて収納されること
を特徴とするガスエンジン・コージェネレーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のガスエンジン・コージェネレーション装置であって、
前記収納筐体は、複数の前記収納部を備え、
前記収納部は、前記排ガスの流路を互いに平行に横断するように配列しており、
前記改質器は、一つの前記収納部に対して一基ずつ収納されること
を特徴とするガスエンジン・コージェネレーション装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガスエンジン・コージェネレーション装置であって、
前記収納部は、前記収納部同士の間、および、前記収納部と前記排ガスの流路の内壁との間に間隔が設けられて配列していること
を特徴とするガスエンジン・コージェネレーション装置。
【請求項6】
請求項5に記載のガスエンジン・コージェネレーション装置であって、
前記触媒ユニットは、前記触媒を担持した触媒層を有し、
前記改質器は、前記触媒層の温度を計測する温度計測器を備えること
を特徴とするガスエンジン・コージェネレーション装置。
【請求項7】
ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、触媒を介して改質燃料となる反応生成物を生成する改質器を備えたガスエンジン・コージェネレーション装置の運転方法であって、
前記ガスエンジン・コージェネレーション装置は、
前記改質器を収納する収納筐体と、
ガスエンジンと、
前記ガスエンジンにより駆動される発電機と、
前記ガスエンジンからの排ガスにより加熱される排ガスボイラと、を備え、
前記収納筐体は、前記排ガスボイラの内部の過熱器と蒸発器の中間位置に配置されており、
前記ガスエンジン・コージェネレーション装置の運転方法は、
前記ガスエンジンからの排ガスを、前記ガスエンジンから前記過熱器、前記過熱器から前記収納筐体、前記収納筐体から前記蒸発器の順に排気して、前記収納筐体に収納された前記改質器を前記排ガスによって加熱し、
前記改質器に前記混合ガスを供給して前記反応生成物を生成し、
前記反応生成物を前記ガスエンジンに供給して前記ガスエンジンを運転すること
を特徴とするガスエンジン・コージェネレーション装置の運転方法。
【請求項8】
請求項7に記載のガスエンジン・コージェネレーション装置の運転方法であって、
前記改質器の内部の前記触媒を前記排ガスによって250℃以上に加熱してから、前記改質器に前記混合ガスを供給すること
を特徴とするガスエンジン・コージェネレーション装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスエンジン・コージェネレーション装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定置式のガスエンジンを備えた発電システムが、工場、公共施設、商業施設をはじめ、電力需要が高い大型の施設、建物等に導入されている。ガスエンジンは、内燃機関の中でも燃焼温度が高く、発電効率が高いことが知られている。近年では、発電した電力と共に燃料の燃焼による排熱を利用するコージェネレーションシステムとしての導入も拡大している。
【0003】
ガスエンジンの燃料として代表的な都市ガスは、COやNOの生成量が比較的少ないクリーンな燃料として知られている。現在、都市ガスを燃料としたガスエンジンによる発電効率は、40~50%程度まで向上しており、システム全体としてのエネルギ変換効率も大幅に改善されている。その一方で、近年では、水素燃料の普及も進められている。
【0004】
水素燃料は、CO等の有害物質を排出しないクリーンエネルギであり、化学的に変換できる炭化水素等の原料も豊富に存在している。そのため、各種の分野において、既存エネルギの水素燃料への代替や、水素燃料を利用するためのインフラの整備が進められている。従来、水素燃料の生産法としては、大規模生産をはじめとして、水蒸気改質が利用されている。
【0005】
水蒸気改質は、メタン等の炭化水素を、触媒の存在下、過熱蒸気で接触酸化させる方法である。水蒸気改質の原料としてメタンを用いる場合、改質反応は、次の反応式(I)で表される。
CH + HO → CO + 3H・・・(I)
【0006】
また、反応式(I)によって生成した一酸化炭素は、主反応に付随する転化反応(シフト反応)によって二酸化炭素に変換される。転化反応は、次の反応式(II)で表される。
CO + HO → CO + H・・・(II)
【0007】
現在、水蒸気改質の原料としては、メタンを主成分とする都市ガスの利用も検討されている。反応式(I)で表される改質反応は吸熱反応であり、反応式(II)で表される転化反応は発熱反応である。しかし、全体としては、吸熱的に反応が進むため、水蒸気改質には加熱が必要である。一般的な水蒸気改質は、600~700℃、最高で900℃程度で行われている。
【0008】
例えば、特許文献1には、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、改質燃料となる反応生成物を生成する改質ユニットを備え、改質燃料を生成する改質能力が内燃機関の燃焼特性に応じて調整される燃料供給装置を備えるガスエンジンシステムが記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、特許文献1とは異なり、燃料としてメタノールを用いるメタノール改質型ガスエンジン・コージェネレーション装置が記載されている。この装置では、メタノール改質装置を、ガスエンジン装置の下流側で、かつ、排熱回収ボイラ装置の前段に設置し、ガスエンジン装置からの排ガスによりメタノール改質装置を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6622943号公報
【特許文献2】特許第2711286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、各所に導入されている新型のガスエンジンは、エンジン構造の改良、燃焼技術の進展等によって、従来以上に燃焼性能やエネルギ変換効率が向上している。そのため、新型のガスエンジンによると、旧型のガスエンジンと比較して、高い燃焼効率の運転が可能になっている。ガスエンジンの定格出力によっては、都市ガスを燃料として50%に近い発電効率を実現することも可能になっている。
【0012】
しかし、現在においても、旧型のガスエンジンが引き続き使用されるケースがある。旧型のガスエンジンは、新型のガスエンジンと比較して、燃焼性能やエネルギ変換効率が劣っているため、低い燃焼効率で運転せざるを得ない現状がある。低い燃焼効率の運転では、取り出したい仕事量、電力量等に対して多量の燃料を要するため、燃料コストがかかったり、プロセス全体のエネルギ的な効率が低下したりしている。
【0013】
一方、ガスエンジンの燃料としては、水素ガスの利用も進められている。水素ガスは、メタン等の炭化水素と比較して、燃焼速度が速い特徴がある。そのため、内燃機関の燃料として水素ガスを含む燃料を用いると、高い燃焼効率で運転することが可能になり、旧型のガスエンジンを使用する場合であっても、省エネルギ性やエネルギ変換効率を改善することができる。
【0014】
しかし、特許文献1に記載された改質ユニットでは、改質器の始動時に、触媒を常温から反応温度まで昇温させるにあたり、過熱蒸気の熱を利用している。過熱蒸気の温度によっては、触媒を構成する材料が水酸化反応を生じることが確認されている。水酸化反応を生じると、触媒を構成する材料の変質や変形によって改質器の圧力損失が増大し、改質器の内部に導入されるガスの流量が低下する等の不具合を生じる。そのため、常温から水酸化反応を生じない裕度を持たせた温度以上までの触媒昇温を過熱蒸気以外で行う必要がある。
【0015】
一方、特許文献2に記載された改質器では、触媒層や原料ガスの昇温に、ガスエンジン装置からの排ガスの熱を利用している。改質器は、排ガスの排気経路上において、ガスエンジン装置の下流側、且つ、排熱回収ボイラ装置の上流側に配置されている。この配置では、改質器に対して高温の排ガスが供給されるため、改質器の内部の触媒も高温に加熱される。触媒の種類によっては、高温で劣化が起こり易くなるため、適正な温度範囲に制御するために、コントロールダンパ等の温度制御機構を必要としている。
【0016】
特許文献2には、Cu-Zn-Cr系触媒を用いてLHSV(Liquid Hourly Space Velocity:液空間速度)=1.0h-1で運転するとすれば、水蒸気改質反応の反応温度は250℃~300℃が望ましく、メタノール分解反応の場合には300~350℃が望ましい旨が記載されている。また、反応温度が高すぎる(例えば350℃以上)と、触媒の劣化が起こり易く、改質装置の構成材料の強度面からも好ましくない旨が記載されている。
【0017】
また、特許文献2では、バイパスダクトが設けられている。ガスエンジン装置の始動時の排ガスは低温であるため、ガスエンジン装置から排出された排ガスを、バイパスダクトに送り、改質器を迂回させて排熱回収ボイラ装置に送っている。また、特許文献2では、改質反応の出発反応物としてメタノール蒸気を用いている。特許文献2には、ガスエンジン装置の始動時においては、エンジンジャケット冷却水のラインが冷えており、メタノール蒸気発生器でメタノール蒸気が発生しないので、始動用電気ヒータによって加熱する旨が記載されている。
【0018】
ガスエンジン・コージェネレーション装置の分野において、このような温度制御機構、バイパスダクト、始動用電気ヒータ等を設けなくとも、改質器の始動時に、改質器の内部の触媒を適切な温度まで昇温させることが可能なシステムが求められている。触媒を構成する材料等が水酸化反応を生じないように、常温から水酸化反応を生じない裕度を持たせた温度以上までの触媒昇温を、過熱蒸気の導入前に過熱蒸気以外で速やかに行う必要がある。
【0019】
そこで、本発明は、ガスエンジンの排ガスの熱を利用して触媒の昇温を行える改質器の収納筐体を備えたガスエンジン・コージェネレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するため、本発明に係るガスエンジン・コージェネレーション装置は、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、触媒を介して改質燃料となる反応生成物を生成する改質器を備えたガスエンジン・コージェネレーション装置であって、前記ガスエンジン・コージェネレーション装置は、前記改質器を収納する収納筐体と、ガスエンジンと、前記ガスエンジンにより駆動される発電機と、前記ガスエンジンからの排ガスにより加熱される排ガスボイラと、を備え、前記収納筐体が、前記排ガスボイラの内部の過熱器と蒸発器の中間位置に配置されたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係るガスエンジン・コージェネレーション装置の運転方法は、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、触媒を介して改質燃料となる反応生成物を生成する改質器を備えたガスエンジン・コージェネレーション装置の運転方法であって、前記ガスエンジン・コージェネレーション装置は、前記改質器を収納する収納筐体と、ガスエンジンと、前記ガスエンジンにより駆動される発電機と、前記ガスエンジンからの排ガスにより加熱される排ガスボイラと、を備え、前記収納筐体は、前記排ガスボイラの内部の過熱器と蒸発器の中間位置に配置されており、前記ガスエンジン・コージェネレーション装置の運転方法は、前記ガスエンジンからの排ガスを、前記ガスエンジンから前記過熱器、前記過熱器から前記収納筐体、前記収納筐体から前記蒸発器の順に排気して、前記収納筐体に収納された前記改質器を前記排ガスによって加熱し、前記改質器に前記混合ガスを供給して前記反応生成物を生成し、前記反応生成物を前記ガスエンジンに供給して前記ガスエンジンを運転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガスエンジンの排ガスの熱を利用して触媒の昇温を行える改質器の収納筐体を備えたガスエンジン・コージェネレーション装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】従来のガスエンジン・コージェネレーション装置の概略系統を示す図である。
図1B】本実施形態に係るガスエンジン・コージェネレーション装置の概略系統を示す図である。
図2A】改質器に収納される触媒ユニットの外観を示す図である。
図2B】改質器に収納される触媒ユニットの層構造を示す図である。
図3】収納筐体に収納される改質器の構造を示す図である。
図4A】改質器が収納される収納筐体の正面図である。
図4B】改質器が収納される収納筐体の平面図である。
図4C】改質器が収納される収納筐体を排ガスの入側から視た側面図である。
図4D】改質器が収納される収納筐体を排ガスの出側から視た側面図である。
図5A】収納筐体が備える収納部の側面図である。
図5B】収納筐体が備える収納部の正面図である。
図5C】収納筐体が備える収納部の断面図である。
図5D】収納部の配置を示す収納筐体の正面の部分拡大図である。
図6A】収納筐体の配置を示す収納筐体の正面図である。
図6B】収納筐体の配置を示す収納筐体の平面図である。
図7】収納筐体に改質器を固定する固定機構を示す図である。
図8A】ストッパを備えた改質器の断面図である。
図8B】パッキン受け治具の平面図および断面図である。
図8C】パッキン押えの平面図および断面図である。
図8D】特殊ワッシャの平面図である。
図9】改質反応の触媒の温度を計測する温度計測器の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るガスエンジン・コージェネレーション装置およびその運転方法について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0025】
図1Aは、従来のガスエンジン・コージェネレーション装置の概略系統を示す図である。図1Aには、特許文献1に記載されたガスエンジンシステムに用いられる概略系統を示す。図1Aにおいて、実線矢印は都市ガスの流れ、破線矢印は改質ガスの流れ、二点鎖線矢印は過熱蒸気の流れ、白抜矢印は排ガスの流れを示す。
【0026】
図1Aに示すように、従来のガスエンジン・コージェネレーション装置は、ガスエンジン110と、発電機111と、排ガスボイラ120と、改質器130と、熱交換器140と、を備えている。排ガスボイラ120、改質器130および熱交換器140は、燃料改質装置を構成している。排ガスボイラ120と改質器130とは、別体として設けられている。
【0027】
ガスエンジン・コージェネレーション装置は、ガス燃料の燃焼による燃焼エネルギをガスエンジン110で力学的エネルギとして取り出すと共に、燃焼に伴う排熱を回収して利用する装置である。ガスエンジン・コージェネレーション装置によると、ガスエンジン110の排熱を回収して利用するため、システム全体として高いエネルギ効率が得られる。ガス燃料の使用量当たりのエネルギ効率が向上して、システムの省エネルギ化や、運転コストの削減や、炭素排出量の削減が促進される。
【0028】
ガスエンジン110は、気体状のガス燃料を燃焼させる内燃機関であり、燃焼室に供給されたガス燃料を燃焼させて、燃焼室内の流体の膨張による力を力学的エネルギに変換する。ガスエンジン110が発生させた動力は、発電機111のタービンに供給されて発電に利用される。ガスエンジン110によると、ガスタービン等の他の内燃機関と比較して、高い燃焼効率や、安定したトルクや燃費特性が得られる。
【0029】
ガスエンジン110の燃料としては、メタンを主成分とする炭化水素系の燃料や、メタンの水蒸気改質によって生成された改質ガスや、これらが混合された混合ガスが用いられる。炭化水素系の燃料の一例としては、13A、12A等の都市ガスが挙げられる。代表的な都市ガスである13Aは、約90%のメタンと、約10%未満のエタン、プロパン、ブタンを含有する混合ガスである。
【0030】
都市ガスは、ガス導管網等に接続された都市ガス供給ラインを通じて、システム外からガスエンジン110に供給される。また、都市ガスは、都市ガス供給ラインから分岐した分岐ラインを通じて、熱交換器140を経由して改質器130に供給される。ガスエンジン110の燃料の種類や供給流量は、ガスエンジン110の起動時の燃焼の安定化や、炭素排出量の削減等のために、システムの運転状況に応じて切り替えられる。
【0031】
改質ガスは、改質ガス供給ラインを通じて、改質器130から熱交換器140を経由してガスエンジン110に供給される。熱交換器140は、改質器130に供給される改質反応用の都市ガスと、改質器130からガスエンジン110に供給される改質ガスとを熱交換する。改質ガスは、熱交換によってガスエンジン110で許容可能な温度や相対湿度に冷却される。改質反応用の都市ガスは、熱交換によって改質反応の前に予熱される。
【0032】
混合ガスは、システム外からガスエンジン110に供給される都市ガスと、改質器130から熱交換器140を経由してガスエンジン110に供給される改質ガスとを混合することによって生成される。混合ガスは、都市ガス供給ラインと改質ガス供給ラインとが合流する不図示の合流点で生成された後に、ガスエンジン110に供給される。
【0033】
排ガスボイラ120は、排ガスの熱を利用して水を加熱するボイラである。排ガスボイラ120には、ガスエンジン110の燃焼室から排出された排ガスが供給される。排ガスボイラ120は、排ガスの熱を利用して改質反応の反応温度以上まで過熱された高温の過熱蒸気を生成する。排ガスは、排ガスボイラ120で熱的に利用された後に、環境中等に放出される。
【0034】
排ガスボイラ120は、過熱器121と、蒸発器122と、を備えている。過熱器121は、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する。過熱器121では、ガスエンジン110から排出された排ガスと蒸発器122から供給される飽和蒸気との熱交換が行われる。蒸発器122は、水を加熱して蒸気を生成する。蒸発器122では、ガスエンジン110から排出された後に過熱器121を経由した排ガスと水との熱交換が行われる。
【0035】
排ガスボイラ120では、熱交換する水として、外部から供給される給水や、改質反応後の凝縮水を用いることができる。凝縮水は、改質器130で生成された改質反応の反応生成物を凝縮させることによって回収される。排ガスボイラ120が生成した過熱蒸気は、改質器130に供給される。過熱蒸気は、改質器130に供給される前に、改質反応用の都市ガスと熱交換されてもよい。
【0036】
改質器130は、ガス燃料と過熱蒸気とを含む混合ガスを取り込み、触媒を介して改質燃料となる反応生成物を生成する反応器である。改質器130には、都市ガスと過熱蒸気とが混合された混合ガスが導入される。改質器130は、メタン等の炭化水素を水蒸気により水素改質(水蒸気改質)して、水素を主成分とする改質ガスを生成する。改質ガスは、改質器130からガスエンジン110に供給される。
【0037】
改質ガスは、改質器130において、メタンを主成分とする都市ガスと過熱蒸気から、反応式(I)や反応式(II)にしたがって生成される。改質ガスは、主成分の水素(H)、未反応のメタン(CH)や、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)等を含む混合ガスである。転化反応を含めた改質反応は、全体として吸熱的に進む。そのため、改質器130には、予熱された改質反応用の都市ガスと、排ガスボイラ120が生成した高温の過熱蒸気が導入される。
【0038】
改質ガスの主成分である水素は、メタン等の炭化水素と比較して、燃焼速度が速く、燃焼の安定性が高い性質を持つ。そのため、改質ガスを燃料として用いると、炭素排出量が削減されるだけでなく、ガスエンジン110の燃焼効率が高められる。ガスエンジン110の燃焼特性が性能上で劣っている場合であっても、ガスエンジン110で生じる燃焼エネルギ(発熱量)の合計を増大させることができる。
【0039】
図1Aに示すように、従来のガスエンジン・コージェネレーション装置では、改質器130に対して、改質反応用の都市ガスと過熱蒸気との混合ガスが供給されているが、ガスエンジン110から排出された排ガスが供給されていない。従来は、改質器130の内部の触媒が、常温から反応温度まで混合ガス中の過熱蒸気によって加熱されている。都市ガスや過熱蒸気は、ガスエンジン110等の始動後に昇温していく。しかし、ガスエンジン110の始動時には低温である。
【0040】
このような従来の構成では、改質器の運転に問題を生じることが、本発明者らによって確認された。運転試験の繰り返しの過程において、改質器の圧力損失が増大し、改質器に導入されるガスの流量が大幅に減少する事象が確認された。原因を調査したところ、改質器の内部の触媒に著しい変質や変形が認められた。触媒を解析した結果、触媒担体や支持材を形成するアルミニウムが水酸化反応を生じていた。水酸化反応によって変質や膨張等の変形が発生し、改質器の内部のガスの流路が閉塞したことが判明した。
【0041】
その後の検証によって、アルミニウムの水酸化反応は、アルミ材が200℃以下で水と接触していると進行することが確認された。水酸化反応を生じさせないためには、改質器の内部の触媒の常温からの昇温過程において、水酸化反応を生じさせない裕度を持たせた温度である250℃を目安とした触媒昇温を、水の非存在下で行うことが適切であるとの結論が得られた。
【0042】
このような知見に基づき、改質反応の触媒を収納した改質器を、ガスエンジンからの排ガスの流路における過熱器と蒸発器との中間位置に配置する対策を想到した。過熱器から蒸発器に送られる排ガスの熱を利用して改質器の外表面を加熱することによって、常温から水酸化反応を生じさせない裕度を持たせた温度である250℃までの触媒昇温を、水の非存在下、急速な昇温速度で行うものとした。
【0043】
図1Bは、本実施形態に係るガスエンジン・コージェネレーション装置の概略系統を示す図である。図1Bにおいて、実線矢印は都市ガスの流れ、破線矢印は改質ガスの流れ、二点鎖線矢印は過熱蒸気の流れ、白抜矢印は排ガスの流れを示す。
図1Bに示すように、本実施形態に係るガスエンジン・コージェネレーション装置は、ガスエンジン110と、排ガスボイラ120と、熱交換器140と、を備えている。排ガスボイラ120は、過熱器121と、改質器130が収納される収納筐体300と、蒸発器122と、を備えている。
【0044】
本実施形態に係るガスエンジン・コージェネレーション装置が、従来のガスエンジン・コージェネレーション装置と異なる点は、水蒸気改質を行う改質器130が排ガスボイラ120の内部に配置されている点である。改質器130は、排ガスの流路を形成するダクト状の収納筐体300に収納されており、収納筐体300は、排ガスボイラ120の内部であって、ガスエンジン110からの排ガスの流路における過熱器121と蒸発器122の中間位置に配置されている。
【0045】
このような配置によると、改質器130の内部の触媒が、ガスエンジン110から排出された排ガスによって加熱される。排ガスは、ガスエンジン110から過熱器121、過熱器121から収納筐体300、収納筐体300から蒸発器122の順に流される。排ガスは、収納筐体300の内部を通流する過程で、改質器130の外周面に接触して内部の触媒を加熱する。
【0046】
ガスエンジン110から排出される排ガスの温度は、400~600℃程度であり、一例として505℃である。収納筐体300に収納された改質器130は、高温の排ガスによって、改質反応の反応温度まで急速に加熱される。改質反応の反応温度は、300℃以上、好ましくは400℃以上であり、一例として420℃である。過熱器121を通過した排ガスの温度は、約420℃となる。
【0047】
収納筐体300に収納された改質器130には、内部の触媒が所定の温度まで加熱された後に、メタンを主成分とする都市ガスと過熱蒸気が供給される。改質反応用の都市ガスは、都市ガス供給ラインから分岐した分岐ラインを通じて、熱交換器140を経由して改質器130に供給される。過熱蒸気は、過熱蒸気供給ラインを通じて、排ガスボイラ120の過熱器121から改質器130に供給される。過熱蒸気の温度は、300℃以上、好ましくは400℃以上であり、一例として420℃である。
【0048】
このように、本実施形態に係るガスエンジン・コージェネレーション装置では、排ガスボイラ120の内部の排ガスの流路上に収納筐体300を設置し、収納筐体300に改質器130を収納する。そのため、改質器130の始動時や、改質器130の運転中には、改質器130を排ガスの熱で加熱することができる。改質器130の始動時には、常温から水酸化反応を生じさせない裕度を持たせた温度である250℃までの触媒昇温を、改質器130に過熱蒸気が導入される以前に、水の非存在下で行うことができる。また、高温の排ガスによって急速な昇温速度で行うことができる。
【0049】
改質器130を排ガスの熱で加熱すると、常温から水酸化反応を生じさせない裕度を持たせた温度である250℃までの触媒昇温を、水の非存在下、急速な昇温速度で行うことができるため、触媒の材料としてアルミニウムを用いている場合、触媒の変質や膨張等の変形が低減される。そのため、触媒の材料としてアルミニウムを用いることが可能になる。また、触媒の変質や変形が低減されて、ガスの流路の閉塞が防止されるため、ガスの流量を安定した高流量に維持できる。
【0050】
また、改質器130を排ガスの熱で加熱すると、従来の過熱蒸気で加熱する場合と比較して、改質反応の至適温度まで昇温させる所要時間を短縮することができる。排ガスは、ガスエンジン110の起動直後から高温であるためである。改質器130の運転中には、改質器130の内部の温度を、ガスエンジン110から供給される排ガスと、改質器130に導入される過熱蒸気とによって、適切な反応温度に維持することができる。
【0051】
また、改質器130を排ガスの熱で加熱する構成であると、改質器130の内部を改質反応の反応温度まで昇温させる目的や、アルミニウムの水酸化反応を防止する目的で、新たな加熱源を設ける必要がない。新たな加熱源を設ける場合の設置コスト、運用コストや、新たな加熱源に対する配管系統を省略することができる。そのため、低コストでエネルギ効率が高いガスエンジン・コージェネレーション装置を実現できる。
【0052】
図2Aは、改質器に収納される触媒ユニットの外観を示す図である。図2Bは、改質器に収納される触媒ユニットの層構造を示す図である。
図2Aおよび図2Bにおいて、符号200は触媒ユニット、符号201は支持材、符号202は触媒層を示す。符号Cは触媒ユニットの外径、符号Cは触媒ユニットの厚さを示す。
【0053】
図2Aに示すように、改質器130に収納される触媒ユニット200は、触媒シートが渦巻状に巻回されることによって円柱状の巻回体とされる。触媒シートは、図2Bに示すように、シート状の支持材201と、触媒層202によって形成される。触媒層202は、支持材201上に形成される。触媒層202は、例えば、支持材201の表面および裏面の両方に形成することができる。
【0054】
支持材201は、触媒ユニット200の構造を機械的に保持している。巻回された支持材201は、触媒ユニット200の径方向の外側から内側に向けて熱伝導に寄与することができる。触媒層202は、改質反応を触媒する不図示の触媒活性成分を担持する。触媒ユニット200は、粒子の焼結や繊維の成形等によって多孔質に設けられる。触媒ユニット200の巻回体には、巻回軸と平行な方向に多孔質によるガスの流路が形成される。
【0055】
支持材201は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成することができる。触媒層202は、触媒成分と、触媒成分を担持する触媒担体で形成される。触媒担体は、例えば、酸化アルミニウム(Al)で形成することができる。なお、本発明は、アルミニウムの水酸化反応を生じさせない対策に基づくが、支持材201や触媒層202には、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化アルミニウム以外の材料が用いられてもよい。
【0056】
触媒ユニット200は、巻回軸が改質器130の中心軸と平行になる向きで、円筒状の改質器130に収納される。触媒ユニットの外径Cは、改質器130の内径等に応じて設計することができる。触媒ユニットの厚さCは、改質器130についての触媒ユニット200の収納可能範囲や、改質器130についての触媒ユニット200の収納数等に応じて設計することができる。
【0057】
図3は、収納筐体に収納される改質器の構造を示す図である。
図3において、符号130は改質器、符号131は容器部、符号132は蓋部、符号133は接続管、符号134は接続フランジ、符号200は触媒ユニットを示す。符号Lは、触媒ユニットの収納可能範囲、符号Nは触媒ユニットの収納数を示す。符号Daは容器部の外径、符号Dbは接続フランジの外径を示す。
【0058】
図3に示すように、改質器130は、円筒状に設けられた容器部131と、容器部131の開口を閉じる蓋部132と、蓋部132に接続された管状の接続管133と、接続管133の末端に設けられた接続フランジ134と、を備えている。蓋部132、接続管133および接続フランジ134は、容器部131の両側に対称状に設けられている。
【0059】
容器部131は、触媒ユニット200を収納可能な円筒状の中空構造に設けられている。容器部131には、1個または複数個の触媒ユニット200が収納される。複数個の触媒ユニット200は、容器部131の中心軸に対して同心となるように互いに積層されて収納される。巻回体の側面が容器部131の内周面と近接するように触媒ユニット200が収納される。容器部131の両端には、蓋部132と接続するためのフランジ部131aが形成されている。
【0060】
蓋部132は、半球状の覆いとして設けられている。蓋部132の頂部には、貫通孔が形成されており、貫通孔に繋がるように接続管133が接合されている。蓋部132の基底側には、容器部131と接続するためのフランジ部132aが形成されている。容器部131は、触媒ユニット200が収納された後に、蓋部132をフランジ接続することによって閉じられる。
【0061】
接続管133は、容器部131よりも小径の管状に設けられている。接続管133は、容器部131の内部と改質器130の外部とを連通している。接続管133の末端には、接続フランジ134が形成されている。接続フランジ134は、他の配管に対してフランジ接続される。他の配管としては、改質反応用の混合ガスを供給する配管や、改質ガスをガスエンジン110に供給する配管が挙げられる。
【0062】
容器部131、蓋部132および接続管133は、改質反応の反応温度に耐える耐熱性の材料で形成される。容器部131、蓋部132、接続管133および接続フランジ134の材料としては、改質反応の温度やコスト等に応じて、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼等の適宜の材料を用いることができる。
【0063】
触媒ユニットの収納可能範囲Lは、改質器130の内部の空間のうち、触媒ユニット200を収納することができる範囲を意味する。触媒ユニットの収納可能範囲Lは、改質器130が収納筐体300に収納されたとき、改質器130の外周面がガスエンジン110から排出された排ガスによって直接的に加熱される範囲となる。
【0064】
触媒ユニットの収納可能範囲Lの長さは、収納筐体300の内部の排ガスの流路の幅よりも小さく設けることが好ましい。このような設計であると、改質器130に収納された触媒を、ガスエンジン110から排出された排ガスによって均一性高く加熱できる。触媒ユニットの収納可能範囲Lは、このような条件の下で、改質器130に導入する混合ガスの流量や、混合ガスの目標改質率に基づいて設計できる。
【0065】
触媒ユニットの収納数Nは、改質器130の1基当たりに収納される触媒ユニット200の個数を意味する。触媒ユニットの収納数Nは、触媒ユニットの収納可能範囲Lと、触媒ユニットの厚さCとの関係によって定まる。触媒ユニットの収納数Nは、触媒ユニットの厚さCに応じて、触媒ユニットの収納可能範囲Lのうちで最大化されることが好ましい。
【0066】
接続フランジ134の外径Dbは、容器部131の外径Da以下(Db≧Da)に設けられることが好ましい。このような寸法であると、収納筐体300に設けられる円筒状の収納部310に対して改質器130を挿入または引抜するとき、接続フランジ134の物理的な干渉を防止できる。
【0067】
図4Aは、改質器が収納される収納筐体の正面図である。図4Bは、改質器が収納される収納筐体の平面図である。図4Cは、改質器が収納される収納筐体を排ガスの入側から視た側面図である。図4Dは、改質器が収納される収納筐体を排ガスの出側から視た側面図である。
図4A~4Dにおいて、符号300は収納筐体、符号301は下面部、符号302は上面部、符号303は入側前面部、符号304は出側前面部、符号305は入側後面部、符号306は出側後面部、符号307は入側接続部、符号308は出側接続部、符号309は吊具、符号310は収納部を示す。図4Bにおいて、符号Dは収納筐体の奥行寸法、白抜矢印は、改質器の挿入または引抜の方向を示す。
【0068】
収納筐体300は、断面が略矩形状のダクト状に設けられている。収納筐体300は、左右の側面が開口しており、内部を左右方向にガスが通流可能とされている。図4Aに示すように、収納筐体300の内部には、ガスエンジン110から排出された排ガスが左右方向に流される。収納筐体300は、下面部301と、上面部302と、前面部303,304と、後面部305,306と、を有している。
【0069】
収納筐体300のガスの入側には、入側接続部307が形成されている。入側接続部307は、収納筐体300の側面に開口した開口部と、開口部の周囲のフランジとによって形成されている。収納筐体300のガスの出側には、出側接続部308が形成されている。出側接続部308は、収納筐体300の側面に開口した開口部と、開口部の周囲のフランジとによって形成されている。
【0070】
入側接続部307は、排ガスボイラ120の過熱器121に接続される。入側接続部307は、過熱器121から排出された排ガスを収納筐体300の内部に取り込む開口部を形成している。入側接続部307は、過熱器121の排ガスを排出するダクト径に合わせて設けられる。入側接続部307は、フランジ接続によって、過熱器121の排ガスのダクトの出側と接続される。
【0071】
出側接続部308は、排ガスボイラ120の蒸発器122に接続される。出側接続部308は、収納筐体300の内部から排ガスを排出する開口部を形成している。出側接続部308は、蒸発器122の排ガスを吸入するダクト径に合わせて設けられる。出側接続部308は、フランジ接続によって、蒸発器122の排ガスのダクトの入側と接続される。
【0072】
収納筐体300の上部には、吊具309が取り付けられている。吊具309は、収納筐体300の搬送時や、収納筐体300の据付時に、クレーン、ホイスト等で収納筐体300を吊り上げるために使用される。収納筐体300は、過熱器121の排ガスのダクトと蒸発器122の排ガスのダクトとを接続する既存のダクトに対して置換されてもよい。
【0073】
前面部303,304および後面部305,306は、収納筐体300の正面視や背面視において、台形状を呈している。上面部302は、ガスの入側から出側に向かうに連れて下方に傾斜している。図4Cおよび図4Dに示すように、出側接続部308の開口部は、入側接続部307の開口部よりも小径に設けられている。収納筐体300は、収納筐体300の正面視や背面視において、過熱器121から蒸発器122に向けてガスの流路を狭める形状に設けられている。
【0074】
前面部303,304は、ガスの入側が入側前面部303、ガスの出側が出側前面部304によって形成されている。後面部305,306は、ガスの入側が入側後面部305、ガスの出側が出側後面部306によって形成されている。図4Aおよび図4Bに示すように、入側前面部303および入側後面部305は、出側前面部304や出側後面部306よりも左右に長く設けられている。
【0075】
図4Bに示すように、収納筐体300の平面視において、入側前面部303と入側後面部305とは、互いに平行に設けられている。一方、出側前面部304と出側後面部306とは、ガスの入側から出側に向かうに連れて内側に傾斜して設けられている。収納筐体300は、収納筐体300の平面視において、過熱器121から蒸発器122に向けてガスの流路を狭める形状に設けられている。
【0076】
収納筐体300は、改質器130を収納するための複数の収納部310を備えている。収納部310は、円筒状のスリーブ管によって形成されている。収納部310は、入側前面部303および入側後面部305を貫通するように設けられている。収納部310は、収納筐体300を前後に貫通しており、収納筐体300の内部の排ガスの流路を横断する構造に設けられている。
【0077】
入側前面部303および入側後面部305には、前側および後側で互いに同心となる配置で、複数の貫通孔が形成されている。収納部310を形成するスリーブ管は、これらの貫通孔に挿通されている。貫通孔に挿通されたスリーブ管は、入側前面部303および入側後面部305に対してボルト締結等で接合されている。
【0078】
図4Aにおいて、収納部310としては、縦5列×横3列の計15個が設けられている。複数の収納部310は、排ガスの流路を互いに平行に横断するように配列している。但し、収納部310は、改質ガスの目標生成量、排ガスの流量、排ガスの流路の圧力損失等に応じて、適宜の個数や配列に設けることができる。
【0079】
収納筐体300の下面部301、上面部302、前面部303,304、後面部305,306や、収納部310は、ガスエンジン110から排出される排ガスの温度に耐える耐熱性の材料で形成される。収納筐体300の材料としては、排ガスの温度やコスト等に応じて、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼等を用いることができる。
【0080】
収納筐体300の奥行寸法Dは、排ガスボイラ120の過熱器121の奥行寸法に収まる範囲内で、過熱器121の排ガスを排出するダクト径に合わせて設けることが好ましい。収納筐体300の奥行寸法Dは、改質反応の出発反応物である混合ガスの流量や、混合ガスの目標改質率に基づいて、既定の厚さに設けられる触媒ユニット200が最大数配置されるように、すなわち、触媒ユニット200の合計の厚さが最大化されるように設計することが好ましい。
【0081】
図5Aは、収納筐体が備える収納部の側面図である。図5Bは、収納筐体が備える収納部の正面図である。図5Cは、収納筐体が備える収納部の断面図である。図5Dは、収納部の配置を示す収納筐体の正面の部分拡大図である。
図5A~5Dにおいて、符号310は収納部、符号311は容器部、符号312はフランジ、符号313は開口部を示す。図5Dにおいて、符号Aは開口部が形成された領域、符号ΔWは収納部の水平方向の間隔、符号Δhは収納部の鉛直方向の間隔を示す。
【0082】
図5Aに示すように、スリーブ管によって形成された収納部310は、円筒状に設けられた容器部311と、容器部311の末端に設けられたフランジ312と、容器部311の外周面に開口した開口部313と、を備えている。フランジ312は、容器部311の両側に対称状に設けられている。
【0083】
容器部311は、円筒状に設けられており、改質器130を収納可能な中空構造を形成している。容器部311には、改質器130の中心軸が容器部311の中心軸と平行になる向きで、1基の改質器130が収納される。容器部311の内径は、改質器130の外径よりも僅かに小さく設けられる。
【0084】
フランジ312は、収納部310に対する改質器130の固定に用いられる。フランジ312には、軸封部材を用いた固定機構がボルト締結によって接合される。
【0085】
開口部313は、容器部311の周壁に窓状に開口している。開口部313は、容器部311の周壁を貫通しており、収納筐体300の内部の排ガスの流路と容器部311の内部とを連通している。開口部313は、容器部311の周壁に、1個以上の適宜の個数を設けることができる。
【0086】
開口部313は、図5Aに示すように、収納部310の長手方向において、収納部310の外周面のうち、収納筐体300の内部の排ガスの流路内に位置する区間に形成される。開口部313は、開口部313同士の間に設けられる枠部を除いて、収納部310の外周面のうち、排ガスの流路内に位置する区間の略全幅にわたって形成されることが好ましい。
【0087】
開口部313は、図5Cに示すように、収納部310の断面視において、収納部310のガスの入側の周壁、および、収納部310のガスの出側の周壁のそれぞれに、線対称状に設けられる。開口部313は、ガスの入側およびガスの出側のそれぞれにおいて、収納部310の外周面のうち、収納部310の中心を通る水平面から上下に約60度以上に開口するように大きく設けられることが好ましい。
【0088】
開口部313を設けると、収納筐体300の内部に過熱器121から流入した排ガスが、開口部313を通じて収納部310の内部を通流することができる。容器部311の内径を、改質器130の外径よりも僅かに小さく設けると、収納部310に改質器130を収納したとき、容器部311の内周面と改質器130の外周面との間に僅かな隙間が形成される。収納部310の内部に流入した排ガスは、この隙間を通流することができる。
【0089】
収納筐体300の内部を排ガスが通流する過程では、収納部310に収納された改質器130の外周面を、排ガスの接触によって直接的に加熱できる。約400℃以上の高温の排ガスが、開口部313を通じて改質器130の外周面に接触するため、改質器130の内部の触媒を急速に加熱できる。そのため、改質反応用の都市ガスと過熱蒸気との混合ガスが改質器130に導入される以前に、触媒担体や支持材を形成するアルミニウムの水酸化反応を防止しつつ、触媒を改質反応の反応温度まで昇温させることができる。
【0090】
図5Dに示すように、複数の収納部310は、前側の入側側面部303および後側の入側側面部305において、収納部310同士の間や、収納部310と排ガスの流路の内壁を形成する下面部301や上面部302との間に間隔が設けられて配列していることが好ましい。収納部310の水平方向の間隔ΔWや、収納部310の鉛直方向の間隔Δhは、収納部310の外径、収納部310の配置数等に応じて設計できる。
【0091】
このような構造によると、収納筐体300の内部に流入した排ガスが、収納部310同士の間や、収納部310と排ガスの流路の内壁との間を通流できるため、排ガスの圧力損失を低減することができる。収納部310に収納された各改質器130を、排ガスの熱で均一性高く加熱して温度ムラを低減することができる。そのため、改質器130毎の改質反応を均一に進めて、全体としての混合ガスの改質率を向上させることができる。
【0092】
図6Aは、収納筐体の配置を示す収納筐体の正面図である。図6Bは、収納筐体の配置を示す収納筐体の平面図である。
図6Aおよび図6Bにおいて、符号121は過熱器の排ガスを排出するダクトの部分、符号122は蒸発器の排ガスを吸入するダクトの部分、符号130は改質器、符号300は収納筐体、符号310は収納部を示す。図6Aおよび図6Bにおいて、白抜矢印は排ガスの流れを示す。
【0093】
図6Aおよび図6Bに示すように、収納筐体300は、排ガスボイラ120の内部であって、ガスエンジン110からの排ガスの流路における過熱器121と蒸発器122の中間位置に配置される。収納筐体300の一端の入側接続部307は、過熱器121の排ガスを排出するダクトの出側と接続される。収納筐体300の他端の出側接続部308は、蒸発器122の排ガスを吸入するダクトの入側と接続される。
【0094】
収納筐体300を排ガスボイラ120の内部の過熱器121と蒸発器122の中間位置に配置すると、改質器130を排ガスボイラ120の内部に設置することができる。排ガスの熱を利用して過熱蒸気を生成する排ガスボイラ120と、過熱蒸気を利用して改質ガスを生成する改質器130とが、一体化される。そのため、改質反応の触媒を排ガスの熱を利用して昇温させる構成において、システムをコンパクト化することができる。
【0095】
改質器130は、排ガスの流路を横断する構造に設けられた収納部310に対して排ガスの流路を横断するように収納される。改質器130は、改質器130の中心軸が収納部310の中心軸と平行になる向きで収納される。改質器130の排ガスの流路内に位置する区間には、触媒を担持した複数の触媒ユニット200が、排ガスの流路を横断する方向に積層されて収納される。
【0096】
このような構造によると、収納筐体300の内部に流入した排ガスの熱で、改質器130の外周面を均一性高く加熱することができる。改質器130の外周面は、全周にわたって加熱される。また、改質器130に積層されて収納された触媒ユニット200同士を均一性高く昇温させることができる。触媒ユニット200毎の改質反応を均一に進めることができるため、全体としての混合ガスの改質率を向上させることができる。
【0097】
複数の改質器130は、一つの収納部310に対して一基ずつ収納される。複数の改質器130は、収納筐体300の内部の排ガスの流路を互いに平行に横断するように配列する。このような構造によると、収納筐体300の内部に流入した排ガスの熱で、複数の改質器130の外周面を、改質器130同士で均一性高く加熱することができる。複数の改質器130を一度に使用できるため、改質ガスの生成量を増大させると共に、排ガスの熱を有効に利用することができる。
【0098】
改質器130は、収納筐体300に対して着脱自在に設けられる。改質器130は、改質器130の設置時や交換時等に、収納部310に対して長手方向に抜き差しすることができる。改質器130は、収納部310に挿入された後に、収納部310に対して軸封部材を用いた固定機構によって固定される。収納部310に収納された改質器310には、入側接続部307と出側接続部308に配管が接続される。
【0099】
ガスエンジン110から排出された排ガスは、過熱器121の排ガスを排出するダクトから排出された後、収納筐体300の内部をとおり、蒸発器122の排ガスを吸入するダクトに流入する。この間に、収納部310に収納された改質器130の外周面が、排ガスによって加熱される。改質器130の内部の触媒は、改質反応の至適温度付近まで、改質器130に混合ガスを導入して昇温させる場合と比較して高い昇温速度で加熱される。
【0100】
このような収納筐体300を搭載した排ガスボイラ120は、過熱器121と、改質器130が収納される収納筐体300と、蒸発器122と、をユニット化することによって、コージェネレーションの用途に提供することができる。ユニット化を行うと、排ガスボイラ120の機能と改質器130の機能とを一体的に運用することが可能になり、改質器130の始動を迅速に行えるコンパクトなシステムが得られる。
【0101】
図7は、収納筐体に改質器を固定する固定機構を示す図である。図8Aは、ストッパを備えた改質器の断面図である。図8Bは、パッキン受け治具の平面図および断面図である。図8Cは、パッキン押えの平面図および断面図である。図8Dは、特殊ワッシャの平面図である。
図7図8A図8Bおよび図8Cにおいて、符号401はストッパ、符号402はパッキン受け治具、符号403はパッキン押え、符号404は特殊ワッシャ、符号410はグランドパッキンを示す。
【0102】
図7に示すように、収納筐体300は、改質器130を固定する固定機構を備えている。収納筐体300に収納された改質器130は、収納筐体300の収納部310に対して、軸封部材を用いた固定機構によって固定される。軸封部材としては、グランドパッキン410が用いられる。固定機構は、ストッパ401、パッキン受け治具402、パッキン押え403、特殊ワッシャ404、グランドパッキン410や、改質器130および収納筐体300の部位によって構成される。
【0103】
ストッパ401は、図8Aに示すように、改質器130の容器部131の外周面に、外周面から外側に突出する突状に設けられる。ストッパ401は、容器部131の外周面に角材等を接合することによって形成される。ストッパ401は、収納部310の外側を向く受面を有している。
【0104】
ストッパ401は、図7に示すように、収納部310の長さ方向において、外側を向く受面が収納筐体300の入側側面部303,305や収納部310のフランジ312から所定の距離だけ離隔する位置となるように配置される。ストッパ401は、収納部310の容器部311の内周面と改質器130の容器部131の外周面との間に詰め込まれるパッキン受け治具402等を、収納部310の長手方向における所定の位置に止める。
【0105】
図8Aにおいて、ストッパ401は、改質器130の容器部131の外周面に90度のピッチで4箇所に設けられている。但し、ストッパ401は、適宜の個数、ピッチに設けることができる。また、適宜の収納部310の長手方向における長さに設けることができる。
【0106】
パッキン受け治具402は、図8Bに示すように、二つ割れの円環形状の板状に設けられる。パッキン受け治具402は、分割単位同士が対向するように組み合わされて使用される。パッキン受け治具402の内径は、改質器130の容器部131の外径と同等または僅かに大きく設けられる。パッキン受け治具402の外径は、収納部310内径と同等または僅かに小さく設けられる。
【0107】
パッキン受け治具402は、図7に示すように、収納部310の長手方向において、ストッパ401の受面に当接するように配置される。パッキン受け治具402は、収納部310の容器部311の内周面と改質器130の容器部131の外周面との間に詰め込まれるグランドパッキン410等を、収納部310の内側から受けて機械的に支持する。
【0108】
図8Bにおいて、パッキン受け治具402は、二つ割れの分割構造に設けられている。但し、パッキン受け治具402は、ストッパ401の配置等に応じて、適宜の分割構造、形状、大きさに設けることができる。
【0109】
パッキン押え403は、図8Cに示すように、一端にフランジが形成された二つ割れの円筒状に設けられる。パッキン押え403は、分割単位同士が対向するように組み合わされて使用される。パッキン押え403の内径は、改質器130の容器部131の外径と同等または僅かに大きく設けられる。パッキン押え403のフランジの外径は、収納部310のフランジ312の外径に合わせて設けられる。
【0110】
パッキン押え403は、図7に示すように、収納部310の長手方向において、グランドパッキン410の外側面と収納部310のフランジ312の外側面に当接するように配置される。パッキン押え403は、収納部310の容器部311の内周面と改質器130の容器部131の外周面との間に詰め込まれるグランドパッキン410等を、収納部310の外側から押さえて機械的に支持する。
【0111】
パッキン押え403のフランジには、収納部310のフランジ312に対してフランジ接続するためのボルト孔403aが設けられる。図8Cにおいて、ボルト孔403aは、パッキン押え403の分割単位毎に、パッキン押え403の両端付近に2箇所が設けられている。パッキン押え403は、収納部310のフランジ312に対してボルト孔403aを用いたフランジ接続によって固定される。
【0112】
図8Cにおいて、パッキン押え403は、二つ割れの分割構造に設けられている。但し、パッキン押え403は、収納部310の容器部311の内周面と改質器130の容器部131の外周面との間の隙間に挿し込み可能であり、グランドパッキン410を均一に押圧できる限り、適宜の分割構造、形状、大きさに設けることができる。
【0113】
特殊ワッシャ404は、図8Dに示すように、円環形状の部分円弧を切り出したような部分円環状の板状に設けられる。特殊ワッシャ404は、2個を一対として使用される。特殊ワッシャ404の内径や外径は、パッキン押え403の内径や外径と同等に設けることができる。
【0114】
特殊ワッシャ404は、図7に示すように、収納部310の長手方向において、パッキン押え403の外側面に当接するように配置される。特殊ワッシャ404は、パッキン押え403の緩みを防止する。特殊ワッシャ404は、パッキン押え403の分割単位同士が対向する方向に対して、直交する方向に向き合うように配置されて固定される。特殊ワッシャ404によると、パッキン押え403の分割単位同士が乖離する方向の緩みが防止される。
【0115】
特殊ワッシャ404には、収納部310のフランジ312に対してボルト締結するためのボルト孔404aが設けられる。図8Dにおいて、ボルト孔404aは、特殊ワッシャ404の両端付近に2箇所が設けられている。特殊ワッシャ404は、パッキン押え403と共に、収納部310のフランジ312に対してボルト孔404aを用いたボルト締結によって固定される。
【0116】
図8Dにおいて、特殊ワッシャ404は、パッキン押え403と同等の大きさに設けられている。但し、特殊ワッシャ404は、パッキン押え403の分割単位同士を連結して固定できる限り、適宜の組み合わせ構造、形状、大きさに設けることができる。例えば、特殊ワッシャ404は、パッキン押え403が嵌合する形状であり、パッキン押え403の外側面と外周面を覆う構造に設けられてもよい。
【0117】
グランドパッキン410は、図7に示すように、収納部310の容器部311の内周面と改質器130の容器部131の外周面との間の隙間であって、パッキン受け治具402とパッキン押え403との間に詰め込まれる。グランドパッキン410は、この隙間を気密に密閉する軸封部材として機能する。
【0118】
グランドパッキン410の材料としては、カーボン、ポリテトラフルオロエチレン等の適宜のシール材を用いることができる。グランドパッキン410としては、シール材を円筒状に成形した成形体や、シール材の編組等のいずれを用いてもよい。シール材の編組は、軸封が必要な箇所にコイル状に巻回されて用いられる。
【0119】
改質器130は、収納筐体300に対して、次の手順で固定される。はじめに、収納筐体300の収納部310に、改質器130を挿入する。そして、収納部310の容器部311の内周面と改質器130の容器部131の外周面との間の隙間に、パッキン受け治具402とグランドパッキン410を、ストッパ401に止められる位置まで、この順に詰め込む。次いで、グランドパッキン410が詰め込まれた隙間にパッキン押え403を挿し込む。
【0120】
続いて、パッキン押え403の外側に特殊ワッシャ404を配置し、パッキン押え403と特殊ワッシャ404を、収納部310のフランジ312に対してボルト締結する。パッキン押え403は、収納部310のフランジ312に対して締結されると、隙間に詰め込まれたグランドパッキン410に対して外側から押圧を加える。グランドパッキン410は、パッキン押え403からの押圧によって、収納部310の長手方向および径方向に歪みを生じる。その結果、グランドパッキン410は、収納部310の容器部311の内周面や、改質器130の容器部131の外周面に押し付けられる。
【0121】
このような軸封部材を用いた固定機構によると、収納部310の容器部311の内周面と改質器130の容器部131の外周面との間の隙間が、押し付けられたグランドパッキン410の圧力で気密に密閉される。収納筐体300の内部に流入した排ガスは、収納部310の容器部311の内周面と改質器130の容器部131の外周面との間の隙間を通流して、外部に漏洩することなく、改質器130の外周面を加熱することができる。
【0122】
図8Cおよび図8Dに示すように、一対の特殊ワッシャ404は、パッキン押え403の分割単位同士が対向する方向に対して、直交する方向に向き合うように配置される。特殊ワッシャ404は、このような配置でパッキン押え403に対して重ねられ、パッキン押え403と共に収納部310のフランジ312に対してボルト締結される。そのため、交差する向きに固定された特殊ワッシャ404によって、パッキン押え403の分割単位同士が乖離する方向の緩みが防止される。収納部310の径方向において、パッキン押え403の変位が抑制されるため、各ボルトで均一性高い締結力を得ることが可能になる。そのため、収納部310の容器部311の内周面と改質器130の容器部131の外周面との間の隙間の気密性を向上させることができる。
【0123】
改質器130は、このような固定機構によって収納筐体300に固定された後、各種の配管系統と接続される。改質器130の一端の接続管133には、都市ガスと過熱蒸気とが混合された混合ガスを改質器130に供給する混合ガス供給系統が接続される。混合ガスは、改質反応用の都市ガスと過熱蒸気とを合流させることによって生成される。改質器130の他端の接続管133には、改質器130で生成された改質ガスをガスエンジン110に供給する改質ガス供給系統が接続される。
【0124】
複数の改質器130には、混合ガス供給系統から供給される混合ガスの圧力を均等化させるヘッダ器を接続することができる。ヘッダ器を供給側に設けると、複数の改質器130に導入される混合ガスの圧力が均等化されるため、改質器130毎の改質能力を平準化させることができる。複数の改質器130のそれぞれが、互いに同程度の改質能力を発揮するようになるため、複数の改質器130の全体としての改質能力を、使用する改質器130の本数で調整することが可能になる。
【0125】
複数の改質器130には、改質器130毎に導入される混合ガスの流量を調節する調節弁を接続することができる。調節弁を供給側に設けると、改質器130毎の改質能力を、弁開度の変更によって調整することができる。個々の改質器130の改質能力を調整できるため、複数の改質器130の全体としての改質能力を、より精密に調整することが可能になる。
【0126】
複数の改質器130の全体としての改質能力は、混合ガスを導入する改質器130の本数のみによって調整してもよいし、改質器130毎に備えられる調節弁の開度のみによって調整してもよいし、これらの両方によって調整してもよい。但し、複数の改質器130の全体としての改質能力を、精密に調整する観点からは、複数の改質器130の供給側にヘッダ器を設け、且つ、ヘッダ器の下流側に調節弁を設けて、両方を調整することが好ましい。
【0127】
図9は、改質反応の触媒の温度を計測する温度計測器の配置を示す図である。
図9に示すように、本実施形態に係るガスエンジン・コージェネレーション装置において、改質反応の触媒の温度は、改質器130の始動時や、改質器130の運転中に、温度計測器Tによって計測される。
【0128】
温度計測器Tは、改質器130に収納された触媒ユニット200の触媒層202の温度を計測する。温度計測器Tは、改質器130の内部、収納筐体300の内部等の適宜の箇所に設置することができる。温度計測器Tとしては、熱電対、測温抵抗体等の接触式計測器や、赤外線放射温度計等の非接触式計測器を用いることができる。
【0129】
本実施形態に係るガスエンジン・コージェネレーション装置の運転は、次の順序で行われる。
【0130】
はじめに、ガスエンジン110を、都市ガスを燃料として起動する。ガスエンジン110は、ガス導管網等から供給される都市ガスを燃料として、定格回転速度に到達するまで立ち上げ運転される。ガスエンジン110の燃焼室からは、都市ガスの燃焼による排ガスが排ガスボイラ120に向けて排出される。
【0131】
ガスエンジン110から排出された排ガスは、ガスエンジン110から過熱器121、過熱器121から収納筐体300、収納筐体300から蒸発器122の順に排気される。この間に、排ガスは、過熱器121や蒸発器122において、過熱蒸気の生成に利用される。また、排ガスは、収納筐体300の内部を通流する間に、収納部310に収納された改質器130を加熱する。この段階では、改質反応は開始されてなく、改質器130に対する混合ガスの導入は停止されている。
【0132】
温度計測器Tは、ガスエンジン110の起動後、且つ、改質器130における改質反応の開始前に、改質器130に収納された触媒ユニット200の触媒層202の温度を計測する。触媒層202の温度は、所定の時間間隔で経時的に測定される。ガスエンジン・コージェネレーション装置では、触媒層202の温度に応じて、改質器130に対する過熱蒸気の供給を、自動または手動で切り替えることができる。
【0133】
改質器130の始動時に、触媒層202の温度が、250℃未満であるときには、改質器130に対する過熱蒸気の導入を開始せず、排ガスによる改質器130の昇温を継続する。この場合、例えば、混合ガスを改質器130に供給する混合ガス供給ラインのバルブや、過熱蒸気を過熱器121から改質器130に供給する過熱蒸気供給ラインのバルブを閉鎖する。
【0134】
一方、触媒層202の温度が、250℃以上であるときには、改質器130に対する過熱蒸気の導入を開始することができる。改質器130の内部の触媒を排ガスによって250℃以上に加熱してから、改質器130に混合ガスを供給して改質反応の反応生成物を生成する。この場合、例えば、混合ガスを改質器130に供給する混合ガス供給ラインのバルブや、過熱蒸気を過熱器121から改質器130に供給する過熱蒸気供給ラインのバルブを開放する。
【0135】
続いて、ガスエンジン110の燃料を、都市ガスから混合ガスを経て、混合ガスから改質ガスに切り替える。燃料を切り替える過程では、都市ガスの供給流量を次第に降下させる制御と、改質ガスの供給流量を次第に上昇させる制御とを同期的に行う。定格回転速度の立ち上げ運転中に、改質ガスが所定の燃焼力に到達するまで、混合ガスの水素濃度を次第に高める制御を行う。
【0136】
続いて、ガスエンジン110を、改質ガスを燃料として定格運転する。改質器130で生成された改質反応の反応生成物である改質ガスを、改質器130からガスエンジン110に供給する。ガスエンジン110は、改質ガスを燃料として、定格回転速度で運転される。ガスエンジン110が発生させた動力は、一般電力を取り出すための発電等に利用される。改質器130の内部の触媒は、ガスエンジン110から排出された排ガスや、排ガスボイラ120から供給される過熱蒸気によって、適切な反応温度に維持される。
【0137】
ガスエンジン110を停止する際には、ガスエンジン110の燃料を、改質ガスから混合ガスを経て、混合ガスから都市ガスに切り替える。燃料を切り替える過程では、改質ガスの供給流量を次第に降下させる制御と、都市ガスの供給流量を次第に上昇させる制御とを同期的に行う。定格回転速度の運転中に、燃焼室内や配管内の改質ガスが全焼可能な量に減少するまで、改質ガスの供給流量を下げる制御を行う。その後、ガスエンジン110に対する改質ガスの供給を停止する。
【0138】
続いて、ガスエンジン110における燃焼行程が停止される。ガスエンジン110を停止させる過程では、都市ガスの供給流量を次第に降下させる制御が行われる。燃焼室内や配管内の改質ガスが全焼した後、ガスエンジン110に対する都市ガスの供給を停止する。また、改質器130に対する混合ガスの供給を停止する。
【0139】
このような運転によると、触媒層202の温度に応じて改質器130に対する過熱蒸気の導入が切り替えられるため、改質器130の内部の触媒担体や支持材が200℃以下で水と接触しなくなる。触媒担体や支持材を形成するアルミニウムが水酸化反応を生じ難くなるため、触媒担体や支持材の変質や変形や、改質器130の内部の流路の閉塞を防止することができる。
【0140】
また、このような運転によると、ガスエンジン110が改質ガスを燃料として定格運転されるため、都市ガスの全体としての消費量を抑制しつつ、高い燃焼効率を得ることができる。供給されるガス燃料の全重量に対して、燃焼エネルギ(発熱量)の合計が増大することになり、ガス燃料の単位供給量に対する燃焼エネルギ(発熱量)の合計が大きくなる。そのため、燃焼効率が高いガスエンジン・コージェネレーション装置が実現される。
【0141】
また、このような運転によると、ガスエンジン110を停止する際に、ガスエンジン110の燃料が都市ガスに切り替えられる。燃料が改質ガスから都市ガスに切り替えられるため、燃焼室内や配管内への水素の残留が防止される。そのため、ガスエンジン110の停止後の再起動を、水素を含まない高濃度の都市ガスを燃料として、確実且つ速やかに行うことができる。
【0142】
特許文献2に記載されたCu-Zn-Cr系触媒は、改質反応の温度範囲が250~300℃と狭い範囲である。そのため、このような触媒を用いる場合、触媒の著しい劣化を避けるために、温度制御機構を設けて改質反応の温度を制御する必要がある。触媒が著しい劣化を生じる温度範囲や、改質器の材料の強度に大きな影響が及ぶ温度範囲は、温度制御によって回避する必要がある。これに対し、触媒担体が酸化アルミニウムであり、触媒成分が白金族等である改質触媒は、改質反応の反応温度が、250~500℃と広範囲である。
【0143】
本実施形態に係るガスエンジン・コージェネレーション装置では、排ガスの熱で触媒を加熱するため、このような改質反応の反応温度が広範囲である触媒を用いる場合、改質反応を適正な温度範囲に制御するための温度制御機構の設置を省略できる。また、改質器130の内部が改質反応の至適温度まで昇温された後に、改質器130に混合ガスを導入することができるため、ガスエンジン110から排出された排ガスの流路において、改質器130を迂回させるバイパスが不要になる。
【0144】
本発明者らによる検証の結果、改質器の内部の触媒層の温度を監視し、触媒層の温度がアルミニウムの水酸化反応を生じない適正温度に昇温されてから、混合ガスを導入して改質反応を開始すると、触媒の材料としてアルミニウムが使用されていても、アルミニウムの水酸化反応が発生せず、改質器の内部のガスの流路が閉塞しないことが確認された。化学的安定性や高熱伝導率等が得られるアルミ材の使用が可能になることが確認された。
【0145】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、技術的範囲を逸脱しない限り、様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成に他の構成を加えたりすることが可能である。また、或る実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、構成の削除、構成の置換をすることも可能である。
【0146】
例えば、前記のガスエンジン・コージェネレーション装置は、ガスエンジンの燃料として、都市ガスや、改質ガスや、混合ガスを用いているが、ガス燃料としては、メタンを主成分とするその他の炭化水素系の燃料や、これを水蒸気改質した改質ガスや、これらの混合ガスを用いてもよい。ガス燃料としては、LPG、CNG、バイオガス等や、これらを混合した混合ガスが用いられてもよい。ガスエンジンの起動時の運転方法は、前記の方法に限定されるものではない。
【0147】
また、前記の触媒ユニットは、円柱状の巻回体として設けられており、前記の改質器は円筒状に設けられており、前記の収納筐体は、断面が略矩形状のダクト状に設けられているが、触媒ユニット、改質器および収納筐体は、作用・機能を損なわない限り、適宜の形状・構造に設けることができる。また、前記の触媒ユニットでは、触媒昇温時に避けるべき温度範囲の上限として、裕度を持たせた250℃を設定しているが、他の有効な対策等がある場合は、水酸化反応を生じさせない限り、他の温度を設定してもよい。
【符号の説明】
【0148】
110 ガスエンジン
111 発電機
120 排ガスボイラ
121 過熱器
122 蒸発器
130 改質器
131 容器部
132 蓋部
133 接続管
134 接続フランジ
140 熱交換器
200 触媒ユニット
201 支持材
202 触媒層
300 収納筐体
301 下面部
302 上面部
303 入側前面部
304 出側前面部
305 入側後面部
306 出側後面部
307 入側接続部
308 出側接続部
309 吊具
310 収納部
401 ストッパ
402 パッキン受け治具
403 パッキン押え
404 特殊ワッシャ
410 グランドパッキン
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9