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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157726
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/22 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
D02J1/22 301C
D02J1/22 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067809
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】堀本 尭幸
(72)【発明者】
【氏名】北川 重樹
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA05
4L036MA06
4L036PA05
4L036PA42
4L036PA49
(57)【要約】
【課題】加熱装置に用いられる接糸部材の製造コストを低減する。
【解決手段】第1加熱装置13は、熱源42と、所定の延在方向に延び、熱源によって加熱される加熱部41と、少なくとも延在方向に延びた状態で加熱部41によって加熱される接糸部材43と、加熱部41を含み、接糸部材43が取り付けられた取付部とを備える。接糸部材43は、糸Yを接触させるための接糸面57を有する。接糸面57は、少なくとも延在方向に延び、且つ、少なくとも、延在方向と直交する所定の高さ方向における一方側を向いている。第1加熱装置13は、加熱部41に取り付けられた接糸部材43を、延在方向及び高さ方向の両方に直交する幅方向から見たときに弾性変形させた状態で保持する弾性変形保持部60を備える。接糸部材43が弾性変形保持部60によって弾性変形させられて保持された状態において 、接糸面57の幅方向に直交する断面曲線59が、所定の曲率を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の糸を加熱する加熱装置であって、
熱源と、
所定の延在方向に延び、前記熱源によって加熱される加熱部と、
前記糸を接触させるための接糸面を有し、少なくとも前記延在方向に延びた状態で前記加熱部によって加熱される接糸部材と、
前記加熱部を含み、前記接糸部材が取り付けられた取付部と、を備え、
前記接糸面は、少なくとも前記延在方向に延び、且つ、少なくとも、前記延在方向と直交する所定の高さ方向における一方側を向いており、
前記取付部に取り付けられた前記接糸部材を、前記延在方向及び前記高さ方向の両方に直交する幅方向から見たときに弾性変形させた状態で保持する弾性変形保持部、を備え、
前記接糸部材が前記弾性変形保持部によって弾性変形させられて保持された状態において、前記接糸面の前記幅方向に直交する断面曲線が、所定の曲率を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記弾性変形保持部は、前記接糸部材を前記取付部に脱着可能に保持することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記取付部は、前記接糸部材の脱着の際に前記接糸部材が前記高さ方向に通過することが可能な脱着通路を有することを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記弾性変形保持部は、
前記取付部に取り付けられた前記接糸部材のうち、前記延在方向における所定位置に位置している第1部分、に対して前記高さ方向における前記一方側への力を加えるように構成された第1加力部と、
前記取付部に取り付けられた前記接糸部材のうち、前記第1部分よりも前記延在方向における一方側の第2部分に対して前記高さ方向における他方側への力を加えるように構成された第2加力部と、
前記取付部に取り付けられた前記接糸部材のうち、前記第1部分よりも前記延在方向における他方側の第3部分に対して前記高さ方向における前記他方側への力を加えるように構成された第3加力部と、を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第1加力部は、
前記高さ方向において前記第1部分よりも前記他方側に位置し、前記第1部分の前記高さ方向における前記他方側への移動を規制する第1規制部、を有し、
前記第2加力部は、
前記高さ方向において前記第2部分よりも前記一方側に位置し、前記第2部分の前記高さ方向における前記一方側への移動を規制する第2規制部、を有し、
前記第3加力部は、
前記高さ方向において前記第3部分よりも前記一方側に位置し、前記第3部分の前記高さ方向における前記一方側への移動を規制する第3規制部、を有することを特徴とする請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第2規制部及び前記第3規制部は、
前記高さ方向から見たときに前記接糸部材と重ならない退避位置と、前記高さ方向から見たときに前記接糸部材と重なる重なり位置との間で移動可能であることを特徴とする請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第2規制部及び前記第3規制部の各々を前記退避位置から前記重なり位置へ付勢する付勢部を備えることを特徴とする請求項6に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第2規制部及び前記第3規制部の各々を揺動可能に支持する揺動軸を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記第1規制部、前記第2規制部及び前記第3規制部のうち少なくとも1つは、前記延在方向及び前記高さ方向の少なくともいずれかにおいて、前記取付部に対し位置変更可能であることを特徴とする請求項5~8のいずれかに記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を加熱する加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行している糸を仮撚加工する仮撚加工機(繊維機械)に設けられた加熱装置が開示されている。より詳細には、加熱装置は、シーズヒータ(熱源)と、所定の延在方向に延びた加熱体(加熱部)と、加熱部に取り付けられており熱源によって加熱されるように構成された接触プレート(接糸部材)とを有する。接糸部材は、糸が確実に接触させられるように湾曲した接糸面を有する。これにより、接糸面に接触しつつ走行している糸が熱伝導により加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-194631公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加熱装置の仕様(より具体的には、接糸面により形成される糸道の最適な曲率)は、主に、糸道を形成する繊維機械のレイアウトに応じて変わりうる。従来は、加熱装置の仕様に応じて糸道が最適な曲率を有するように予め加工された接糸部材が製造されるため、接糸部材の製造コストが多くかかっている。
【0005】
本発明の目的は、加熱装置に用いられる接糸部材の製造コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の加熱装置は、走行中の糸を加熱する加熱装置であって、熱源と、所定の延在方向に延び、前記熱源によって加熱される加熱部と、前記糸を接触させるための接糸面を有し、少なくとも前記延在方向に延びた状態で前記加熱部によって加熱される接糸部材と、前記加熱部を含み、前記接糸部材が取り付けられた取付部と、を備え、前記接糸面は、少なくとも前記延在方向に延び、且つ、少なくとも、前記延在方向と直交する所定の高さ方向における一方側を向いており、前記取付部に取り付けられた前記接糸部材を、前記延在方向及び前記高さ方向の両方に直交する幅方向から見たときに弾性変形させた状態で保持する弾性変形保持部、を備え、前記接糸部材が前記弾性変形保持部によって弾性変形させられて保持された状態において、前記接糸面の前記幅方向に直交する断面曲線が、所定の曲率を有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、接糸面の断面曲線が所定の曲率を有するように、接糸部材が弾性変形させられた状態で取付部に取り付けられ、弾性変形保持部によって保持されている。言い換えると、製造された時には単純に直線状に延びている接糸部材が加熱装置に取り付けられる場合でも、接糸部材を弾性変形させるだけで、接糸面を所望の形状にすることができる。これにより、加熱装置の仕様に応じて加工された接糸部材が製造される場合と比べて、接糸部材の加工コストを低減できる。したがって、加熱装置に用いられる接糸部材の製造コストを低減できる。
【0008】
第2の発明の加熱装置は、前記第1の発明において、前記弾性変形保持部は、前記接糸部材を前記取付部に脱着可能に保持することを特徴とする。
【0009】
一般的に、走行する糸が接触する部材は、必要に応じて清掃される。また、加熱装置は、清掃を行う作業者の身長よりも高い位置に配置される場合がある。このため、接糸部材が取付部から取り外せない場合、加熱装置の配置によっては清掃の作業を行いにくいおそれがある。この点、本発明では、接糸部材が、清掃される際に取付部から取り外されることが可能である。したがって、加熱装置の配置によらず、接糸部材の清掃作業の効率を向上させることができる。
【0010】
第3の発明の加熱装置は、前記第2の発明において、前記取付部は、前記接糸部材の脱着の際に前記接糸部材が前記高さ方向に通過することが可能な脱着通路を有することを特徴とする。
【0011】
例えば、接糸部材を延在方向に抜き差しすることにより接糸部材が取付部に脱着されても良い。しかしながら、このような場合、延在方向において加熱装置と隣接する位置に脱着用の長い空間を確保する必要があるため、加熱装置の周辺のレイアウトに大きな制約が生じてしまう。この点、本発明では、接糸部材を高さ方向に動かすことにより、接糸部材を取付部に脱着することができる。このような場合、延在方向において加熱装置と隣接する長い空間を確保する必要がない。したがって、加熱装置の周辺のレイアウトに制約が生じることを抑制できる。
【0012】
第4の発明の加熱装置は、前記第1~第3のいずれかの発明において、前記弾性変形保持部は、前記取付部に取り付けられた前記接糸部材のうち、前記延在方向における所定位置に位置している第1部分、に対して前記高さ方向における前記一方側への力を加えるように構成された第1加力部と、前記取付部に取り付けられた前記接糸部材のうち、前記第1部分よりも前記延在方向における一方側の第2部分に対して前記高さ方向における他方側への力を加えるように構成された第2加力部と、前記取付部に取り付けられた前記接糸部材のうち、前記第1部分よりも前記延在方向における他方側の第3部分に対して前記高さ方向における前記他方側への力を加えるように構成された第3加力部と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明では、接糸部材の延在方向における一部分に対して高さ方向における一方側への力が加えられ、当該一部分よりも延在方向における一方側の部分及び他方側の部分に対して高さ方向における他方側への力が加えられる。これにより、接糸部材を撓ませることができる。したがって、単純な構造により接糸部材を弾性変形させることができる。
【0014】
第5の発明の加熱装置は、前記第4の発明において、前記第1加力部は、前記高さ方向において前記第1部分よりも前記他方側に位置し、前記第1部分の前記高さ方向における前記他方側への移動を規制する第1規制部、を有し、前記第2加力部は、前記高さ方向において前記第2部分よりも前記一方側に位置し、前記第2部分の前記高さ方向における前記一方側への移動を規制する第2規制部、を有し、前記第3加力部は、前記高さ方向において前記第3部分よりも前記一方側に位置し、前記第3部分の前記高さ方向における前記一方側への移動を規制する第3規制部、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明では、第1規制部によって第1部分の高さ方向における他方側への移動を規制することにより、作用反作用の法則によって、第1部分に対して高さ方向における一方側への力が加えられる。また、第2規制部及び第3規制部によって第2部分及び第3部分の高さ方向における一方側への移動をそれぞれ規制することにより、作用反作用の法則によって、第2部分及び第3部分に対して高さ方向における他方側への力が加えられる。したがって、単純な構造により接糸部材を弾性変形させることができる。
【0016】
第6の発明の加熱装置は、前記第5の発明において、前記第2規制部及び前記第3規制部は、前記高さ方向から見たときに前記接糸部材と重ならない退避位置と、前記高さ方向から見たときに前記接糸部材と重なる重なり位置との間で移動可能であることを特徴とする。
【0017】
本発明では、接糸部材を取付部に取り付ける作業の際に、第2規制部及び第3規制部を一時的に退避位置に移動させ、接糸部材を撓ませた状態で第2規制部及び第3規制部を重なり位置に移動させるという簡単な作業により、接糸部材を取付部に取り付けることができる。また、接糸部材が取付部に脱着可能である場合は、第2規制部及び第3規制部を一時的に退避位置に移動させるという簡単な作業により、接糸部材を取付部から取り外すことができる。
【0018】
第7の発明の加熱装置は、前記第6の発明において、前記第2規制部及び前記第3規制部の各々を前記退避位置から前記重なり位置へ付勢する付勢部を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明では、前記第2規制部及び前記第3規制部が重なり位置から退避位置へ意図せず動くことを抑制できる。
【0020】
第8の発明の加熱装置は、前記第6又は第7の発明において、前記第2規制部及び前記第3規制部の各々を揺動可能に支持する揺動軸を備えることを特徴とする。
【0021】
第2規制部及び第3規制部が平行移動可能に構成されていても良いが、その場合、第2規制部及び第3規制部の移動のために広い空間を確保する必要が生じうる。本発明では、例えば加熱装置の製造時に接糸部材を取付部に取り付ける作業(又は、接糸部材が取付部に脱着可能である場合に、接糸部材を取付部から取り外す作業)の際に、第2規制部及び第3規制部の移動のために必要な空間をコンパクトにすることができる。
【0022】
第9の発明の加熱装置は、前記第5~第8のいずれかの発明において、前記第1規制部、前記第2規制部及び前記第3規制部のうち少なくとも1つは、前記延在方向及び前記高さ方向の少なくともいずれかにおいて、前記取付部に対し位置変更可能であることを特徴とする。
【0023】
本発明では、加熱装置がセットアップされた後でも、必要に応じて接糸面の断面曲線の曲率を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態の第1加熱装置を備える仮撚加工機の側面図である。
図2】糸の経路に沿って仮撚加工機を展開した模式図である。
図3】(a)~(e)は、第1加熱装置の構造を示す説明図である。
図4】(a)、(b)は、第1加熱装置の構造を示す説明図である。
図5】撓ませ部を示す説明図である。
図6】(a)~(d)は、引掛部を延在方向から見た図である。
図7】(a)、(b)は、引掛部を幅方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1の紙面垂直方向を機台長手方向とする。図1の紙面左右方向を機台幅方向とする。機台長手方向及び機台幅方向の両方と直交する方向を、重力の作用する上下方向(鉛直方向)とする。
【0026】
(仮撚加工機の全体構成)
本実施形態の第1加熱装置13(本発明の加熱装置。より詳細については後述)を備える仮撚加工機1の全体構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。図1は、仮撚加工機1の側面図である。図2は、糸Yの経路(糸道)に沿って仮撚加工機1を展開した模式図である。
【0027】
仮撚加工機1は、合成繊維(例えばポリエステル)からなる糸Yを仮撚加工可能に構成されている。糸Yは、例えば複数のフィラメントからなるマルチフィラメント糸である。或いは、糸Yは、1本のフィラメントによって構成されていても良い。仮撚加工機1は、給糸部2と、加工部3と、巻取部4とを備える。給糸部2は、糸Yを供給可能に構成されている。加工部3は、給糸部2から糸Yを引き出して仮撚加工するように構成されている。巻取部4は、加工部3によって加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取るように構成されている。給糸部2、加工部3及び巻取部4が有する各構成要素は、機台長手方向において複数配列されている(図2参照)。機台長手方向は、給糸部2から加工部3を通って巻取部4に至る糸道によって形成される、糸Yの走行面(図1の紙面)と直交する方向である。
【0028】
給糸部2は、複数の給糸パッケージPsを保持するクリールスタンド7を有し、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、給糸部2から複数の糸Yを引き出して加工するように構成されている。加工部3は、糸走行方向における上流側から順に、例えば、第1フィードローラ11、撚止ガイド12、第1加熱装置13、冷却装置14、仮撚装置15、第2フィードローラ16、交絡装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20が配置された構成となっている。巻取部4は、複数の巻取装置21を有する。各巻取装置21は、加工部3で仮撚加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成する。
【0029】
仮撚加工機1は、機台幅方向に間隔を置いて配置された主機台8及び巻取台9を有する。主機台8及び巻取台9は、機台長手方向に略同じ長さに延びるように設けられている。主機台8及び巻取台9は、機台幅方向において互いに対向するように配置されている。仮撚加工機1は、1組の主機台8及び巻取台9を含む、スパンと呼ばれる単位ユニットを有する。1つのスパンにおいては、機台長手方向に並んだ状態で走行する複数の糸Yに対して、同時に仮撚加工を施すことができるように各装置が配置されている。仮撚加工機1は、このスパンが、主機台8の機台幅方向の中心線Cを対称軸として、紙面左右対称に配置されている(主機台8は、左右のスパンで共通のものとなっている)。また、複数のスパンが、機台長手方向に配列されている。
【0030】
(加工部の構成)
加工部3の構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。第1フィードローラ11は、給糸部2に装着された給糸パッケージPsから糸Yを解舒して第1加熱装置13へ送るように構成されている。第1フィードローラ11は、例えば、図2に示すように、1本の糸Yを第1加熱装置13へ送るように構成されている。或いは、第1フィードローラ11は、隣り合う複数の糸Yをそれぞれ糸走行方向における下流側へ送ることが可能に構成されていても良い。撚止ガイド12は、仮撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播しないように構成されている。
【0031】
第1加熱装置13は、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを所定の加工温度に加熱するための装置である。第1加熱装置13は、例えば、図2に示すように、2本の糸Yを加熱可能に構成されている。第1加熱装置13の下側には、オペレータが糸掛け等の作業を行うための作業空間S(図1参照)が形成されている。第1加熱装置13のより詳細については後述する。
【0032】
冷却装置14は、第1加熱装置13で加熱された糸Yを冷却するように構成されている。冷却装置14は、例えば、図2に示すように、1本の糸Yを冷却するように構成されている。或いは、冷却装置は、複数の糸Yを同時に冷却可能に構成されていても良い。仮撚装置15は、冷却装置14の糸走行方向下流側に配置され、糸Yに撚りを付与するように構成されている。仮撚装置15は、例えば、いわゆるディスクフリクション方式の仮撚装置であるが、これには限られない。第2フィードローラ16は、仮撚装置15で処理された糸Yを交絡装置17へ送るように構成されている。第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速い。これにより、糸Yは、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸仮撚される。
【0033】
交絡装置17は、糸Yに交絡を付与するように構成されている。交絡装置17は、例えば、空気流によって糸Yに交絡を付与する公知のインターレースノズルを有する。
【0034】
第3フィードローラ18は、交絡装置17よりも糸走行方向における下流側を走行している糸Yを第2加熱装置19へ送るように構成されている。第3フィードローラ18は、例えば、図2に示すように、1本の糸Yを第2加熱装置19へ送るように構成されている。或いは、第3フィードローラ18は、隣り合う複数の糸Yをそれぞれ糸走行方向における下流側へ送ることが可能に構成されていても良い。なお、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度は、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩される。第2加熱装置19は、第3フィードローラ18から送られてきた糸Yを加熱するように構成されている。第2加熱装置19は、鉛直方向に沿って延びており、1つのスパンに1つずつ設けられている。第4フィードローラ20は、第2加熱装置19によって加熱された糸Yを巻取装置21へ送るように構成されている。第4フィードローラ20は、例えば、図2に示すように、1本の糸Yを巻取装置21へ送ることが可能に構成されている。或いは、第4フィードローラ20は、隣り合う複数の糸Yをそれぞれ糸走行方向における下流側へ送ることが可能に構成されていても良い。第4フィードローラ20による糸Yの搬送速度は、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩される。
【0035】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yが、仮撚装置15によって撚られる。仮撚装置15により形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播するが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱されて熱固定された後、冷却装置14で冷却される。仮撚装置15よりも糸走行方向下流側では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって糸Yが波状に仮撚りされた状態が維持される(すなわち、糸Yの捲縮が維持される)。
【0036】
仮撚りが施された糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、交絡装置17によって交絡が付与された後、糸走行方向下流側へ案内される。さらに、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩されながら、第2加熱装置19で熱処理される。最後に、第4フィードローラ20から送られた糸Y巻取装置21によって巻き取られる。
【0037】
(巻取部の構成)
巻取部4の構成について、図2を参照しつつ説明する。巻取部4は、複数の巻取装置21を有する。各巻取装置21は、1つの巻取ボビンBwに糸Yを巻取可能に構成されている。巻取装置21は、支点ガイド31と、トラバース装置32と、クレードル33とを有する。支点ガイド31は、糸Yが綾振りされる際の支点となるガイドである。トラバース装置32は、トラバースガイド34によって糸Yを綾振りすることが可能に構成されている。クレードル33は、巻取ボビンBwを回転自在に支持するように構成されている。クレードル33の近傍には、接触ローラ35が配置されている。接触ローラ35は、巻取パッケージPwの表面に接触して接圧を付与する。以上のように構成された巻取部4では、上述した第4フィードローラ20から送られた糸Yが各巻取装置21によって巻取ボビンBwに巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される。
【0038】
(第1加熱装置)
次に、第1加熱装置13のより具体的な構成について、図3(a)~(e)及び図4(a)、(b)を参照しつつ説明する。図3(a)は、第1加熱装置13を機台長手方向から見た図である。図3(a)において、第1加熱装置13は、紙面左右方向に沿って延びるように記載されている。図3(b)は、第1加熱装置13の、機台長手方向に直交する断面図である。図3(b)においては、接糸部材43(後述)の接糸面57(後述)が記載されている。図3(c)は、図3(b)の紙面左側端部の拡大図である。図3(d)は、第1加熱装置13のうち接糸部材43の延在方向における端部を抜粋して拡大した図である。図3(e)は、図3(d)のIII(e)-III(e)線断面図である。図4(a)は、図3(a)のIV(a)矢視図である。図4(b)は、図3(a)のIV(b)-IV(b)線断面図である。
【0039】
説明の便宜上、図3(a)、(b)における紙面左右方向を第1加熱装置13が延びる延在方向とする。延在方向は、機台長手方向と直交している。図3(a)、(b)における紙面左側を延在方向における一方側と定義し、紙面右側を延在方向における他方側と定義する。また、機台長手方向及び延在方向の両方と直交する方向を高さ方向とする。図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)における紙面下側を高さ方向における一方側と定義し、紙面上側を高さ方向における他方側と定義する。図示は省略するが、図3(c)~(e)及び後述する図6(a)~図7(b)についても同様である。より詳しく説明すると、第1加熱装置13において、高さ方向における一方側は、作業空間S(図1参照)に近い側である。したがって、以下では、高さ方向における一方側を「作業空間S側」とも呼ぶ。また、高さ方向における他方側を「作業空間Sと反対側」とも呼ぶ。また、以下では、機台長手方向を幅方向(図3(e)、図4(a)、(b)参照)とも呼ぶ。幅方向は、延在方向及び高さ方向の両方と直交している。
【0040】
第1加熱装置13は、走行する糸Yを加熱するように構成されている。本実施形態では、第1加熱装置13は、例えば2本の糸Y(糸YA、YB。図4(a)参照))を加熱可能に構成されている。第1加熱装置13は、2つの加熱部41(加熱部41A、41B。本発明の取付部)と、熱源42と、2つの接糸部材43(接糸部材43A、43B)とを有する。第1加熱装置13は、加熱部41A、41Bにそれぞれ取り付けられた接糸部材43A、43Bを熱源42によって加熱し、走行中の糸YA、YBを接糸部材43A、43Bにそれぞれ接触させるように構成されている。これによって、糸YA、YBが加熱される。
【0041】
加熱部41(本発明の取付部)は、熱源42によって加熱されるように構成されている。加熱部41は、熱源42によって生成される熱を主に熱伝導によって接糸部材43に伝えるように構成されている。加熱部41は、延在方向に沿って直線状に延びている。加熱部41の所定方向における長さは、例えば1.0m以上1.5m以下である。図4(a)、(b)に示すように、加熱部41A、41Bは、延在方向から見たときに、熱源42を挟んで互いに線対称に構成されている。図示は省略するが、延在方向から見たときに、断熱部材(不図示)が加熱部41の周りに配置されている。各加熱部41(加熱部41A、41B)は、例えば、第1加熱部材54(第1加熱部材54A、54B)と、第2加熱部材55(第2加熱部材55A、55B)とを有する。第1加熱部材54及び第2加熱部材55は同じ種類の材料(例えば真鍮)によって構成されていても良い。或いは、第1加熱部材54及び第2加熱部材55は、互いに異なる種類の材料によって構成されていても良い。
【0042】
第1加熱部材54は、例えば、延在方向と直交する断面が概ね長方形状の部材である(図4(b)参照)。当該断面において、第1加熱部材54は、例えば、高さ方向に長く延びている。第1加熱部材54は、熱源42に接触するように構成されている。第1加熱部材54の熱源42との接触面は、熱源42の外形に沿った形状を有している。第1加熱部材54Aと第1加熱部材54Bは、幅方向において互いに隣接するように配置されている。第1加熱部材54Aと第1加熱部材54Bは、熱源42を囲うように配置されている。
【0043】
第2加熱部材55は、例えば、延在方向と直交する断面が略L字状の部材である(図4(b)参照)。当該断面において、第2加熱部材55は、例えば、高さ方向に長く延びている。当該断面において、第2加熱部材55の高さ方向における他方側部分は、幅方向において、同じ加熱部41に属する第1加熱部材54側へ突出している。第2加熱部材55は、同じ加熱部41に属する第1加熱部材54と幅方向において隣接するように配置されている。第2加熱部材55のうち、上述したように幅方向に突出した部分が、当該第1加熱部材54と接触している。幅方向において、第1加熱部材54と第2加熱部材55との間には、高さ方向における一方側(作業空間S側)が開口した収容空間56(収容空間56A、56B)が形成されている。収容空間56は、例えば、延在方向と直交する断面が高さ方向に長く延びた略長方形状を有する。収容空間56(本発明の脱着通路)は、接糸部材43を収容するための空間である。収容空間56は、例えば加熱部41の高さ方向における作業空間S側に設けられた不図示の蓋によって開閉されても良い。
【0044】
第1加熱部材54及び第2加熱部材55の形状は、上述したものに限られない。或いは、加熱部41は、第1加熱部材54及び第2加熱部材55の代わりに、一体的に形成された加熱部材(不図示)を有していても良い。例えば、1つの中実の棒状部材が切削加工されることによって、第1加熱部材54と第2加熱部材55とを合わせた形状を有する加熱部材が形成されていても良い。
【0045】
延在方向において、加熱部41の端及びその近傍部分の位置には、加熱部41を部分的に囲うように配置されたカバー部材51が設けられている。カバー部材51は、延在方向から見たときに略U字状である。カバー部材51は、高さ方向における一方側(作業空間S側)が開口している。
【0046】
熱源42は、加熱部41を介して接糸部材43を加熱するように構成されている。熱源42は、例えば公知のシーズヒータ(電熱ヒータ)である。シーズヒータは、電熱線(例えばコイル)と、電熱線を囲むパイプとを有する装置である。シーズヒータは、電熱線に電流が流れているときにジュール熱を発生させる。熱源42は、延在方向に沿って延びている(図3(a)参照)。熱源42は、加熱部41によって囲われるように配置されている。
【0047】
各接糸部材43(接糸部材43A、43B)は、加熱部41に取り付けられた部材である。接糸部材43は、加熱部41(第1加熱部材54及び第2加熱部材55)によって加熱されるように構成されている。接糸部材43は、例えばステンレス鋼(SUS)からなる部材を切削加工することにより形成されている。接糸部材43は、少なくとも延在方向に延びている。接糸部材43A、43Bは、収容空間56A、56B内にそれぞれ収容されている。接糸部材43は、加熱部41に接触するように配置されている。接糸部材43の幅方向における内側部分には、少なくとも高さ方向における一方側(作業空間S側)を向いた、糸Yを接触させるための接糸面57(図4(d)、(e)参照)が形成されている。接糸面57は、例えば、延在方向における両端部が接糸面57のうち高さ方向における最も他方側に位置し、延在方向における中央部が接糸面57のうち高さ方向における最も一方側に位置するように湾曲している。これにより、接糸面57の幅方向に直交する断面曲線59(図3(b)、(c)参照)は、所定の曲率を有している。幅方向において接糸面57の両外側には、糸Yの幅方向における移動を規制する一対の規制壁58が形成されている。接糸面57及び規制壁58によって、接糸部材43には、糸Yが走行するための糸道が形成されている。
【0048】
仮撚加工機1において、走行している糸Yが接糸面57に確実に接触するように、第1加熱装置13と撚止ガイド12との位置関係及び第1加熱装置13と冷却装置14との位置関係が適切に設定されている。また、糸Yには所定の張力が付与されている。これによって、高さ方向において接糸面57側へ向かう力が糸Yに作用する。したがって、糸Yが接糸面57から離れてしまうことが防止される。
【0049】
以上の構成を有する第1加熱装置13において、熱源42によって生成された熱は、加熱部41(第1加熱部材54及び第2加熱部材55)を介して接糸部材43に伝えられる。これにより接糸部材43が加熱され、さらに、接糸部材43の接糸面57と接触している糸Yが加熱される(接触方式)。
【0050】
ここで、第1加熱装置13の仕様(より具体的には、接糸面の最適な曲率)は、主に、糸道を形成する仮撚加工機1のレイアウトに応じて変わりうる。従来の加熱装置(不図示)においては、加熱装置の仕様に応じて糸道が最適な曲率を有するように予め加工された接糸部材(不図示)が製造されていたため、接糸部材(不図示)製造コストが多くかかっていた。そこで、接糸部材43の製造コストを低減するため、本実施形態の第1加熱装置13は以下のように構成されている。
【0051】
(第1加熱装置の詳細構成)
第1加熱装置13の詳細構成について、図4(a)~図7(b)を参照しつつ説明する。図5は、後述する複数の撓ませ部61(本発明の第1加力部及び第1規制部)を模式的に示す説明図である。図6(a)、(b)は、後述する引掛部62を延在方向における一方側から見た図である。図6(c)、(d)は、後述する引掛部63を延在方向における他方側から見た図である。図6(a)~(d)の紙面上下方向が、高さ方向と平行である。図6(a)~(d)の紙面左右方向が、幅方向と平行である。図7(a)、(b)は、引掛部62、63を幅方向(機台長手方向)から見た図である。以下、より具体的に、延在方向において、後述する撓ませ部61C(図4(b)及び図5参照)が配置された位置を基準位置とする。例えば図5において、撓ませ部61Cよりも紙面左側を延在方向における一方側とし、撓ませ部61Cよりも紙面右側を延在方向における他方側とする。
【0052】
以下では、第1加熱装置13における、2本の糸Yのうち一方の糸Yを加熱するための構成(より具体的には、図4(a)の紙面右側に記載されたもの)のみについて説明する。2本の糸Yのうち他方の糸Yを加熱するための構成については、上記一方の糸Yを加熱するための構成と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
まず、本実施形態の接糸部材43の構造は、以下のとおりである。接糸部材43は、加熱部41に取り付けられる前の時点では、当然、加熱部41から外力を受けていない。この状態で、接糸部材43は、略直線状に延びている(例えば、図5の二点鎖線を参照)。この状態では、接糸面57も、接糸部材43の延びる方向に略直線状に延びている。また、接糸部材43は、後述するように、加熱部41に脱着されることが可能に構成されている。
【0054】
また、第1加熱装置13は、図4(a)~図7(b)に示すように、接糸部材43を加熱部41に脱着可能に保持する弾性変形保持部60を備える。弾性変形保持部60は、加熱部41に取り付けられた接糸部材43を弾性変形させた状態で保持するように構成されている(詳細については後述する)。弾性変形保持部60は、例えば、複数の撓ませ部61(図4(b)及び図5参照)と、引掛部62(図4(a)、図6(a)、(b)及び図7(a)参照)と、引掛部63(図6(c)、(d)及び図7(b)参照)とを有する。複数の撓ませ部61、引掛部62及び引掛部63は、加熱部41に取り付けられている。複数の撓ませ部61、引掛部62及び引掛部63は、接糸部材43を弾性変形させ、且つ、接糸部材43が弾性変形した状態を維持するように構成されている。
【0055】
複数の撓ませ部61は、接糸部材43の延在方向における複数部分と接触し、接糸部材43の高さ方向における他方側(作業空間Sと反対側)への移動を規制するように構成されている。複数の撓ませ部61は、接糸部材43よりも高さ方向における他方側(作業空間Sと反対側)に配置されている。各撓ませ部61は、例えば図4(b)に示すように、幅方向に延びたボルト状の部材である。各撓ませ部61は、例えば公知の棒先ボルトであっても良い。説明の便宜上、撓ませ部61の延びる方向をボルト軸方向と呼ぶ。撓ませ部61は、例えば、頭部71と、雄ねじ部72と、先端部73とを有する。頭部71は、撓ませ部61のボルト軸方向における最も基端側に位置している。雄ねじ部72は、頭部71よりもボルト軸方向におけるすぐ先端側に配置された、雄ねじが形成された部分である。雄ねじ部72は、例えば、第2加熱部材55に形成された雌ねじ部に螺合されている。これにより、撓ませ部61は、加熱部41の第2加熱部材55に固定されている。先端部73は、雄ねじ部72よりもボルト軸方向におけるすぐ先端側に配置された、ねじが形成されていない部分である。先端部73は、例えば、幅方向において収容空間56と重なる位置に配置されている。これにより、先端部73は、接糸部材43のうち延在方向における一部と接触可能になっている。例えば、延在方向において第1加熱装置13の略中央に位置している撓ませ部61C(図4(b)及び図5参照)と、接糸部材43の延在方向における中央(本発明の所定位置)に位置する第1部分43f(図4(b)、及び図5の破線参照)とが接触している。このようにして、複数の撓ませ部61により、第1部分43fを含む接糸部材43の複数部分(以下、説明の便宜上、延在方向における複数の内側部分と呼ぶ)の、高さ方向における他方側への移動が規制される。
【0056】
本実施形態では、上述したように、撓ませ部61は第2加熱部材55に固定されている。但し、これに限られるものではなく、撓ませ部61が例えば第1加熱部材54に固定されるように構成されていても良い。
【0057】
図5に示すように、複数の撓ませ部61は、例えば、延在方向において間隔を空けて配置されている。複数の撓ませ部61のうち互いに隣り合う任意の2つの撓ませ部61の高さ方向における位置は、接糸面57の断面曲線59が所定の曲率を有するように、互いにわずかに異なっている。本実施形態において、複数の撓ませ部61の各々は、加熱部41に対して移動不能である。
【0058】
引掛部62は、接糸部材43の第1部分43fよりも延在方向における一方側に配置された第2部分43s(図7(a)のハッチングされた部分を参照)の、高さ方向における一方側(作業空間S側)への移動を規制するように構成されている。第2部分43sは、接糸部材43の延在方向における一方側の端部に配置されている。接糸部材43の延在方向における一方側の端部とは、例えば、延在方向において接糸部材43の一方側の端面から10mm以内の部分の一部(又は全部)を意味するが、これに限られるものではない。さらに、引掛部62は、接糸部材43を加熱部41に脱着可能に保持するように構成されている。図6(a)、(b)及び図7(a)に示すように、引掛部62は、揺動部材81と、例えば延在方向に沿って延びた揺動軸82と、ねじりコイルバネ83とを有する。揺動部材81が揺動軸82を軸中心として揺動することによって、第2部分43sの高さ方向における一方側への移動の規制及び規制解除が行われる。
【0059】
揺動部材81(図4(a)、図6(a)、(b)及び図7(a)参照)は、揺動軸82を介して、加熱部41に揺動可能に取り付けられている。揺動部材81は、例えば板金部材を加工することにより形成されている。図6(a)、(b)及び図7(a)に示すように、揺動部材81は、例えば、ベース部84と、ストッパー部85と、ツマミ部86とを有する。ベース部84は、揺動軸82が挿通される挿通穴(図示省略)が形成された板状の部分である。
【0060】
ストッパー部85は、ベース部84から少なくとも揺動軸82の径方向における外側へ延びた板状の部分である。ストッパー部85は、接糸部材43の第2部分43sの高さ方向における一方側の端と当接可能な当接面85aが形成された、爪状の当接部85b(本発明の第2加力部、第2規制部)を有する。より具体的には、当接面85aは、一対の規制壁58の一方の、高さ方向における一方側の端と当接可能に構成されている。当接部85bは、高さ方向から見たときに接糸部材43と重なる重なり位置(図6(a)参照)と、高さ方向から見たときに接糸部材43と重ならない退避位置(図6(b)参照)との間で移動可能に構成されている。当接部85bをより厳密に定義すると、当接部85bは、重なり位置に位置しているとき(つまり、当接面85aが第2部分43sと接触しているとき)、当接面85aから高さ方向における他方側へ延びた部分である(図6(a)のハッチング部分を参照)。ストッパー部85は、退避位置から重なり位置に移動したとき、接糸部材43の幅方向における端の面と部分的に接触することにより、さらなる揺動が接糸部材43によって規制されるように構成されている。当接面85aは、例えば、接糸部材43が加熱部41に装着されているとき、第1部分43fの高さ方向における一方側の端よりも高さ方向における他方側に位置するように配置されている。
【0061】
当接部85bの高さ方向における一方側の端部には、少なくとも高さ方向における一方側を向いた傾斜面85cが形成されている(図6(a)参照)。傾斜面85cは、幅方向において収容空間56と部分的に重なっている。傾斜面85cは、延在方向から見たときに、例えば、収容空間56の幅方向における中央へ向かうほど、高さ方向における他方側へ向かうように傾斜している。
【0062】
ツマミ部86は、例えば、ストッパー部85から延在方向における一方側へ延びた部分である。ツマミ部86は、オペレータが手でつまんで操作することが可能な部分である。ツマミ部86には、例えば、ねじりコイルバネ83の第1腕部83a(後述)が嵌装される嵌装穴86aが形成されている。
【0063】
揺動軸82は、加熱部41の延在方向における一方側の端部に固定された軸部材である。揺動軸82は、例えば、収容空間56よりも高さ方向における他方側(作業空間Sと反対側)に配置されている。揺動軸82は、揺動部材81を揺動可能に支持するように構成されている。揺動軸82の軸方向は、例えば、延在方向と略平行である。揺動軸82には、ねじりコイルバネ83が取り付けられている。
【0064】
ねじりコイルバネ83は、揺動部材81(当接部85bを含む)を退避位置から重なり位置へ付勢するように構成されたばね部材である。ねじりコイルバネ83は、揺動軸82に取り付けられている。ねじりコイルバネ83の一端部には第1腕部83aが形成されている。ねじりコイルバネ83の他端部には第2腕部83bが形成されている。第1腕部83aは、例えばツマミ部86の嵌装穴86aに嵌装されており、揺動部材81と一体的に揺動可能である。第2腕部83bは、揺動軸82に対して揺動不能であるように、例えばカバー部材51に固定されている。ねじりコイルバネ83は、本発明の付勢部に含まれる。
【0065】
引掛部63は、接糸部材43の第1部分43fよりも延在方向における他方側に配置された第3部分43t(図7(b)のハッチングされた部分を参照)の、高さ方向における一方側(作業空間S側)への移動を規制するように構成されている。第3部分43tは、接糸部材43の延在方向における他方側の端部に配置されている。接糸部材43の延在方向における他方側の端部とは、例えば、延在方向において接糸部材43の他方側の端面から10mm以内の部分の一部(又は全部)を意味するが、これに限られるものではない。さらに、引掛部63は、接糸部材43を加熱部41に脱着可能に保持するように構成されている。簡単に言えば、引掛部63は、幅方向から見たときに、引掛部62と線対称に構成されている。このため、引掛部63に関する説明を必要最小限にとどめる。図6(c)、(d)及び図7(b)に示すように、引掛部63は、揺動部材91と、例えば延在方向に沿って延びた揺動軸92と、ねじりコイルバネ93とを有する。
【0066】
揺動部材91は、揺動部材81に対応する部材である。揺動部材91は、揺動軸92を介して、加熱部41に揺動可能に取り付けられている。揺動部材91は、例えば、ベース部94と、ストッパー部95と、ツマミ部96とを有する。ストッパー部95は、接糸部材43の第3部分43tの高さ方向における一方側の端と当接可能な当接面95aが形成された、爪状の当接部95b(本発明の第3加力部、第3規制部)を有する。当接部95bは、高さ方向から見たときに接糸部材43と重なる重なり位置(図6(c)参照)と、高さ方向から見たときに接糸部材43と重ならない退避位置(図6(d)参照)との間で移動可能に構成されている。当接部95bをより厳密に定義すると、当接部95bは、重なり位置に位置しているとき(つまり、当接面95aが第3部分43tと接触しているとき)、当接面95aから高さ方向における他方側へ延びた部分である(図6(c)のハッチング部分を参照)。当接面95aは、例えば、接糸部材43が加熱部41に装着されているとき、第1部分43fの高さ方向における一方側の端よりも高さ方向における他方側に位置するように配置されている。
【0067】
ストッパー部95の、当接面95aよりも高さ方向における一方側には、少なくとも高さ方向における一方側を向いた傾斜面95cが形成されている(図6(c)参照)。傾斜面95cは、幅方向において収容空間56と部分的に重なっている。傾斜面95cは、延在方向から見たときに、例えば、収容空間56の幅方向における中央へ向かうほど、高さ方向における他方側へ向かうように傾斜している。ツマミ部96には、例えば、ねじりコイルバネ93の第1腕部93a(後述)が嵌装される嵌装穴96aが形成されている。
【0068】
揺動軸92は、加熱部41の延在方向における他方側の端部に固定された軸部材である。揺動軸92は、例えば、収容空間56よりも高さ方向における他方側(作業空間Sと反対側)に配置されている。揺動軸92の軸方向は、例えば、延在方向と略平行である。ねじりコイルバネ93は、揺動部材91(当接部95bを含む)を退避位置から重なり位置へ付勢するように構成された部材である。ねじりコイルバネ93は、揺動軸92に取り付けられている。ねじりコイルバネ93の一端部には第1腕部93aが形成されている。ねじりコイルバネ93の他端部には第2腕部93bが形成されている。第1腕部93aは、例えばツマミ部96の嵌装穴96aに嵌装されており、揺動部材91と一体的に揺動可能である。第2腕部93bは、例えばカバー部材51に固定されている。ねじりコイルバネ93は、ねじりコイルバネ83と同様、本発明の付勢部に含まれる。
【0069】
(加熱部に装着された接糸部材の状態)
次に、上述した構成を有する第1加熱装置13において加熱部41に装着された接糸部材43の状態について説明する。接糸部材43が加熱部41に装着され、弾性変形保持部60によって保持された状態では、上述した揺動部材81の当接部85b及び揺動部材91の当接部95bの両方が重なり位置に位置している(図6(a)、(c)参照)。また、ねじりコイルバネ83によって揺動部材81が重なり位置側(図6(a)の紙面左側)へ付勢されており、ねじりコイルバネ93によって揺動部材91が重なり位置側(図6(a)の紙面右側)へ付勢されている。これにより、接糸部材43が加熱部41から脱落することが防止される。
【0070】
複数の撓ませ部61、引掛部62及び引掛部63の上記配置により、接糸部材43は、図5の実線に示すように、幅方向から見たときに弾性変形した状態で加熱部41に取り付けられている。より具体的には、接糸部材43の延在方向における両端部が高さ方向における他方側(作業空間Sとは反対側)へ撓んでいる。また、接糸部材43のうち、延在方向において両端部よりも第1加熱装置13の中央に近い部分が、高さ方向における一方側(作業空間S側)へ撓んでいる。当該複数の内側部分は、弾性復元力により高さ方向における他方側へ戻ろうとする。しかし、接糸部材43の、複数の撓ませ部61と接触している部分(以下、第1部分43fを含む複数の内側部分)の高さ方向における他方側への移動は、複数の撓ませ部61によって規制されている。このため、当該複数の内側部分には、作用反作用の法則により、複数の撓ませ部61によって高さ方向における一方側への力が加えられる(図5の紙面下向きの矢印を参照)。また、接糸部材43の第2部分43s及び第3部分43tは、弾性復元力により高さ方向における一方側へ戻ろうとする。しかし、第2部分43s及び第3部分43tの高さ方向における一方側への移動は、引掛部62の当接部85b及び引掛部63の当接部95bによってそれぞれ規制されている。このため、作用反作用の法則により、引掛部62及び引掛部63によって高さ方向における他方側への力が加えられる(図5の紙面上向きの矢印を参照)。このように、接糸部材43は弾性変形した状態で加熱部41に取り付けられている。これにより、接糸面57の幅方向に直交する断面曲線59(図3(b)参照)は、所定の曲率を有している。断面曲線59の各位置における曲率半径は、例えば15~20メートルである。延在方向において、断面曲線59の各位置における曲率半径は略一定でも良いが、これには限られない。
【0071】
(接糸部材の脱着方法)
接糸部材43を加熱部41に脱着する方法について説明する。まず、接糸部材43を加熱部41から取り外す方法について説明する。オペレータが弾性変形保持部60の揺動部材81、91を操作して当接部85b、95bを重なり位置から退避位置へ移動させる(揺動させる)ことにより、接糸部材43の延在方向両端部における高さ方向一方側への移動の規制が解除される。これにより、オペレータは接糸部材43を手で持って収容空間56内を高さ方向における一方側へ移動させ(通過させ)、加熱部41から取り外すことができる。このため、接糸部材43を清掃する作業が容易になる。オペレータは、当接部85b、95bを略同時に重なり位置から退避位置へ移動させ、接糸部材43全体を加熱部41から一度に取り外しても良い。或いは、オペレータは、例えば当接部85b、95bの一方を退避位置へ移動させて接糸部材43の一部を加熱部41から取り外した後に、当接部85b、95bの他方を退避位置へ移動させて接糸部材43全体を加熱部41から取り外しても良い。接糸部材43は、加熱部41から取り外されたとき、弾性復元力によって元の形状(略直線状。図5の二点鎖線を参照)に戻る。
【0072】
次に、接糸部材43を加熱部41に取り付ける方法について説明する。オペレータは、接糸部材43を手で持って収容空間56内に挿入する。さらに、オペレータは、接糸部材43の延在方向における内側部分を複数の撓ませ部61に押し当てつつ、接糸部材43の両端部を高さ方向における他方側へ移動させる。これにより、接糸部材43が弾性変形し始める。さらに、オペレータは、接糸部材43を傾斜面85c、95cに押し当てつつ、接糸部材43の延在方向における両端部を高さ方向における他方側へ移動させる。これにより、ねじりコイルバネ83、93による付勢力に逆らう力として、当接部85b、95bを退避位置へ移動させるための力が揺動部材81、91に加えられる。これにより、接糸部材43の第2部分43s及び第3部分43tが当接面85a、95aよりも高さ方向における他方側へ移動したとき、ねじりコイルバネ83、93による付勢力によって当接部85b、95bが退避位置から重なり位置に戻る。これにより、接糸部材43が弾性変形した状態で加熱部41に取り付けられる。
【0073】
以上のように、接糸面57の断面曲線59が所定の曲率を有するように、接糸部材43が弾性変形保持部60によって弾性変形させられた状態で加熱部41に取り付けられている。言い換えると、製造された時には単純に直線状に延びている接糸部材43が第1加熱装置13に取り付けられる場合でも、接糸部材43を弾性変形させるだけで、接糸面57を所望の形状にすることができる。これにより、第1加熱装置13の仕様に応じて予め加工された接糸部材(不図示)が製造される場合と比べて、接糸部材43の加工コストを低減できる。したがって、第1加熱装置13に用いられる接糸部材43の製造コストを低減できる。
【0074】
また、接糸部材43が、清掃される際に加熱部41から取り外されることが可能である。したがって、第1加熱装置13の配置によらず、接糸部材43の清掃作業の効率を向上させることができる。
【0075】
また、例えば、接糸部材43を延在方向に抜き差しすることにより接糸部材43が加熱部41に脱着されるように構成されていても良い。しかしながら、このような場合、延在方向において第1加熱装置13と隣接する位置に脱着用の長い空間を確保する必要があるため、第1加熱装置13の周辺のレイアウトに大きな制約が生じてしまう。また、仮に、延在方向において第1加熱装置13と隣接する長い空間が確保されている場合でも、例えば、そのような空間に撚止ガイド12(図1参照)等、糸道を規定する部材が配置されている場合には、以下の問題が生じうる。すなわち、接糸部材43を例えば延在方向に抜き差しする前に、例えば撚止ガイド12など、第1加熱装置13の周辺の部材を一時的に移動させる必要が生じうる。この場合、オペレータの手間が増大する上に、接糸部材43の脱着の前後において、撚止ガイド12等によって規定される糸道が意図せず変化してしまうおそれがある。この点、本実施形態では、接糸部材43を高さ方向に動かすことにより、接糸部材43を加熱部41に脱着することができる。このような構成においては、接糸部材43を延在方向に抜き差しすることにより接糸部材43が脱着されるように加熱部41が構成されている場合と異なり、延在方向において第1加熱装置13と隣接する長い空間を確保する必要がない。また、接糸部材43の脱着の際に第1加熱装置13の周辺の部材を移動させる必要がない。したがって、第1加熱装置13の周辺のレイアウトに制約が生じること等のデメリットの発生を抑制できる。
【0076】
また、本実施形態では、接糸部材43の延在方向における一部に対して高さ方向における一方側への力が加えられ、接糸部材43の上記一部の延在方向における両側の部分に対して高さ方向における他方側への力が加えられる。これによって、接糸部材43を撓ませることができる。したがって、単純な構造により接糸部材43を弾性変形させることができる。
【0077】
また、撓ませ部61によって第1部分43fの高さ方向における他方側への移動を規制することにより、作用反作用の法則によって、第1部分43fに対して高さ方向における一方側への力が加えられる。また、当接部85b及び当接部95bによって第2部分43s及び第3部分43tの高さ方向における一方側への移動をそれぞれ規制することにより、作用反作用の法則によって、第2部分43s及び第3部分43tに対して高さ方向における他方側への力が加えられる。したがって、単純な構造により接糸部材43を弾性変形させることができる。
【0078】
また、当接部85b及び当接部95bは、退避位置と重なり位置との間で移動可能である。これにより、接糸部材43を加熱部41に取り付ける作業の際に、当接部85b及び当接部95bを一時的に退避位置に移動させ、接糸部材43を撓ませた状態で当接部85b及び当接部95bを重なり位置に移動させるという簡単な作業により、接糸部材43を加熱部41に取り付けることができる。また、接糸部材43が加熱部41に装着されているとき、当接部85b及び当接部95bを一時的に退避位置に移動させるという簡単な作業により、接糸部材43を加熱部41から取り外すことができる。
【0079】
また、当接部85bは、ねじりコイルバネ83によって退避位置から重なり位置へ付勢されている。当接部95bは、ねじりコイルバネ93によって退避位置から重なり位置へ付勢されている。これにより、当接部85b及び当接部95bが重なり位置から退避位置へ意図せず動くことを抑制できる。
【0080】
また、揺動軸82、92によって揺動部材81及び揺動部材91(つまり、当接部85b及び当接部95b)がそれぞれ揺動可能に支持される。したがって、当接部85b及び当接部95bの移動のために必要な空間をコンパクトにすることができる。
【0081】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0082】
(1)前記実施形態においては、撓ませ部61が加熱部41に固定されており、加熱部41に対して移動不能であるものとした。しかしながら、これには限られない。撓ませ部61は、例えば、加熱部41に対して延在方向及び/又は高さ方向に移動可能(平行移動可能又は揺動可能)に構成されていても良い。例えば、手動で撓ませ部61の位置を調整するための調整部材(不図示のボルトなど)が設けられていても良い。或いは、例えば、撓ませ部61を移動させる不図示の電動アクチュエータが設けられていても良い。また、撓ませ部61に加えて(或いは撓ませ部61の代わりに)、引掛部62全体及び/又は引掛部63全体が、延在方向及び/又は高さ方向に移動可能に構成されていても良い。つまり、撓ませ部61、当接部85b及び当接部95bのうち少なくとも一つが、延在方向及び高さ方向の少なくともいずれかにおいて、加熱部41に対し位置変更可能に構成されていても良い。これにより、第1加熱装置13がセットアップされた後でも、必要に応じて接糸面57の断面曲線59の曲率を調整することができる。
【0083】
(2)前記までの実施形態において、複数の撓ませ部61の各々は、幅方向に延びたボルト状の部材であるものとした。しかしながら、これには限られない。複数の撓ませ部61の各々は、例えば、高さ方向に延びていても良い。或いは、複数の撓ませ部61の各々は、接糸部材43の高さ方向における他方側への移動を規制する機能を有していれば、ボルト以外の部材であっても良い。撓ませ部61の各々は、例えば板状の部材であっても良く、ブロック状の部材であっても良い。或いは、複数の撓ませ部61の各々は、例えば板バネなど、接糸部材43に対して高さ方向における一方側への力を加えるように構成されたバネ部材であっても良い。また、加熱部41に複数の撓ませ部61が取り付けられているものとしたが、これには限られない。加熱部41には、撓ませ部61が1つのみ取り付けられていても良い。
【0084】
(3)前記までの実施形態において、揺動部材81、91は、ねじりコイルバネ83、93によってそれぞれ退避位置から重なり位置へ付勢されているものとした。しかしながら、これには限られない。ねじりコイルバネ83、93の代わりに、例えば板バネ等、別の種類のバネ部材が設けられていても良い。或いは、バネ部材の代わりにゴムなどで形成された弾性部材が設けられていても良い。或いは、弾性部材の代わりに、エアシリンダ等が設けられていても良い。これらの構成も、本発明の付勢部に相当する。或いは、このような付勢部が設けられていなくても良い。つまり、揺動部材81、91は、付勢されていなくても良い。
【0085】
(4)前記までの実施形態において、揺動部材81は傾斜面85cを有し、揺動部材91は傾斜面95cを有するものとした。しかしながら、これには限られない。傾斜面85c、95cの代わりに、延在方向から見たときに湾曲している湾曲面(不図示)が設けられていても良い。或いは、傾斜面85c、95cは設けられていなくても良い。
【0086】
(5)前記までの実施形態において、揺動部材81、91が揺動軸82、92に揺動可能に支持されているものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、揺動部材81、91と同じ形状の部材を幅方向に平行移動可能に支持する支持部材(不図示)が設けられていても良い。
【0087】
(6)前記までの実施形態において、加熱部41に引掛部62、63が設けられているものとした。つまり、当接部85b、96bによって、接糸部材43に対して高さ方向における他方側への力を加えるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、引掛部62、63の代わりに、接糸部材43に対して高さ方向における他方側への力を加えるように構成された2つの不図示のエアシリンダ或いは電動アクチュエータ(本発明の第2加力部及び第3加力部)が設けられていても良い。或いは、引掛部62、63の代わりに、撓ませ部61と同一又は類似の、2つのボルト部材(不図示)が設けられていても良い。この場合、2つのボルト部材は、退避位置と重なり位置との間で移動可能でなくても良い。
【0088】
(7)前記までの実施形態において、接糸部材43が加熱部41に脱着される際、接糸部材43が収容空間56内を高さ方向に通過することが可能であるものとした。しかしながら、これには限られない。接糸部材43は、例えば、加熱部41に対して延在方向に抜き差しされることによって加熱部41に脱着されても良い。
【0089】
(8)前記までの実施形態において、接糸部材43は、弾性変形保持部60によって加熱部41に脱着されることが可能であるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、加熱部41は、接糸部材43が取り付けられた後、接糸部材43が取り外されないように構成されていても良い。例えば、接糸部材43には、不図示のねじ穴が形成されていても良い。加熱部41は、接糸部材43がねじ止めされるように構成され、接糸部材43が容易に脱着されないように構成されていても良い。このような構成において、さらに、接糸部材43をねじ止めするために用いられた不図示のボルトが、溶接などによって加熱部41に固定されても良い。この場合でも、接糸部材43を弾性変形させた状態で保持するように構成された部材が、本発明の弾性変形保持部に相当する。
【0090】
(9)前記までの実施形態において、加熱部41は、高さ方向における一方側(作業空間S側)が開口した収容空間56を有するものとした。しかしながら、収容空間56の形状及び加熱部41の形状は、これに限られない。例えば、収容空間56は、延在方向に直交する断面において、高さ方向に対して45度以下の傾きを有していても良い(図示省略)。或いは、収容空間56は、例えば延在方向に直交する断面が略L字状になっており、高さ方向における一方側に加え、幅方向における一端も開口していても良い(図示省略)。このような場合、例えば、接糸部材43は、幅方向における一端に形成された開口(不図示)を介して着脱されても良い。
【0091】
(10)前記までの実施形態において、加熱部41が本発明の取付部に相当するものとした。しかしながら、これには限られない。具体例として、第2加熱部材55の代わりに、不図示の断熱部材その他の部材(以下、断熱部材等)が設けられていても良い。このような構成では、断熱部材等が加熱部41に含まれない。この場合でも、第1加熱部材54と断熱部材等とによって形成される空間(不図示)に接糸部材43が収容されることにより、接糸部材43が第1加熱装置13に取り付けられる。このような構成においては、加熱部41と断熱部材等とを合わせたものが本発明の取付部に相当する。言い換えれば、取付部は、加熱部41を含む。
【0092】
(11)前記までの実施形態において、接糸部材43は、ステンレス鋼からなる部材を切削加工することにより形成されているものとした。しかしながら、これには限られない。接糸部材43は、例えば板状の部材を折り曲げる(板金加工する)ことによって形成されていても良い。また、接糸部材43を構成する材料は、ステンレス鋼に限られない。
【0093】
(12)前記までの実施形態において、熱源42としてシーズヒータを有する第1加熱装置13が仮撚加工機1に設けられているものとした。しかしながら、これには限られない。第1加熱装置13の代わりに、熱媒を用いて接糸部材43を加熱する公知のダウサムヒータが仮撚加工機1に設けられていても良い。この場合、ダウサムヒータが本発明の加熱装置に相当する。熱媒が封入された通路を形成する部材(不図示)が、本発明の熱源に相当する。
【0094】
(13)前記までの実施形態において、第1加熱装置13が2本の糸Yを加熱可能に構成されているものとした。しかしながら、これには限られない。第1加熱装置13は、1本の糸Yを加熱可能に構成されていても良い。或いは、第1加熱装置13は、3本以上の糸Yを加熱可能に構成されていても良い。
【0095】
(14)第1加熱装置13は、本実施形態の仮撚加工機1に限らず、他の構成を有する公知の仮撚加工機(不図示)に設けられても良い。或いは、第1加熱装置13は、仮撚加工機の他に、例えば公知のエア加工機(不図示)等、糸(不図示)を走行させながら加工する糸加工機に設けられても良い。
【符号の説明】
【0096】
13 第1加熱装置(加熱装置)
41 加熱部(取付部)
42 熱源
43 接糸部材
57 接糸面
59 断面曲線
60 弾性変形保持部
61 撓ませ部(第1加力部、第1規制部)
83 ねじりコイルバネ(付勢部)
85b 当接部(第2加力部、第2規制部)
93 ねじりコイルバネ(付勢部)
95b 当接部(第3加力部、第3規制部)
Y 糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
各接糸部材43(接糸部材43A、43B)は、加熱部41に取り付けられた部材である。接糸部材43は、加熱部41(第1加熱部材54及び第2加熱部材55)によって加熱されるように構成されている。接糸部材43は、例えばステンレス鋼(SUS)からなる部材を切削加工することにより形成されている。接糸部材43は、少なくとも延在方向に延びている。接糸部材43A、43Bは、収容空間56A、56B内にそれぞれ収容されている。接糸部材43は、加熱部41に接触するように配置されている。接糸部材43の幅方向における内側部分には、少なくとも高さ方向における一方側(作業空間S側)を向いた、糸Yを接触させるための接糸面57(図(d)、(e)参照)が形成されている。接糸面57は、例えば、延在方向における両端部が接糸面57のうち高さ方向における最も他方側に位置し、延在方向における中央部が接糸面57のうち高さ方向における最も一方側に位置するように湾曲している。これにより、接糸面57の幅方向に直交する断面曲線59(図3(b)、(c)参照)は、所定の曲率を有している。幅方向において接糸面57の両外側には、糸Yの幅方向における移動を規制する一対の規制壁58が形成されている。接糸面57及び規制壁58によって、接糸部材43には、糸Yが走行するための糸道が形成されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
ストッパー部85は、ベース部84から少なくとも揺動軸82の径方向における外側へ延びた板状の部分である。ストッパー部85は、接糸部材43の第2部分43sの高さ方向における一方側の端と当接可能な当接面85aが形成された、爪状の当接部85b(本発明の第2加力部、第2規制部)を有する。より具体的には、当接面85aは、一対の規制壁58の一方の、高さ方向における一方側の端と当接可能に構成されている。当接部85bは、高さ方向から見たときに接糸部材43と重なる重なり位置(図6(a)参照)と、高さ方向から見たときに接糸部材43と重ならない退避位置(図6(b)参照)との間で移動可能に構成されている。当接部85bをより厳密に定義すると、当接部85bは、重なり位置に位置しているとき(つまり、当接面85aが第2部分43sと接触しているとき)、当接面85aから高さ方向における一方側へ延びた部分である(図6(a)のハッチング部分を参照)。ストッパー部85は、退避位置から重なり位置に移動したとき、接糸部材43の幅方向における端の面と部分的に接触することにより、さらなる揺動が接糸部材43によって規制されるように構成されている。当接面85aは、例えば、接糸部材43が加熱部41に装着されているとき、第1部分43fの高さ方向における一方側の端よりも高さ方向における他方側に位置するように配置されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
揺動部材91は、揺動部材81に対応する部材である。揺動部材91は、揺動軸92を介して、加熱部41に揺動可能に取り付けられている。揺動部材91は、例えば、ベース部94と、ストッパー部95と、ツマミ部96とを有する。ストッパー部95は、接糸部材43の第3部分43tの高さ方向における一方側の端と当接可能な当接面95aが形成された、爪状の当接部95b(本発明の第3加力部、第3規制部)を有する。当接部95bは、高さ方向から見たときに接糸部材43と重なる重なり位置(図6(c)参照)と、高さ方向から見たときに接糸部材43と重ならない退避位置(図6(d)参照)との間で移動可能に構成されている。当接部95bをより厳密に定義すると、当接部95bは、重なり位置に位置しているとき(つまり、当接面95aが第3部分43tと接触しているとき)、当接面95aから高さ方向における一方側へ延びた部分である(図6(c)のハッチング部分を参照)。当接面95aは、例えば、接糸部材43が加熱部41に装着されているとき、第1部分43fの高さ方向における一方側の端よりも高さ方向における他方側に位置するように配置されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
(加熱部に装着された接糸部材の状態)
次に、上述した構成を有する第1加熱装置13において加熱部41に装着された接糸部材43の状態について説明する。接糸部材43が加熱部41に装着され、弾性変形保持部60によって保持された状態では、上述した揺動部材81の当接部85b及び揺動部材91の当接部95bの両方が重なり位置に位置している(図6(a)、(c)参照)。また、ねじりコイルバネ83によって揺動部材81が重なり位置側(図6(a)の紙面左側)へ付勢されており、ねじりコイルバネ93によって揺動部材91が重なり位置側(図6)の紙面右側)へ付勢されている。これにより、接糸部材43が加熱部41から脱落することが防止される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
(6)前記までの実施形態において、加熱部41に引掛部62、63が設けられているものとした。つまり、当接部85b、95bによって、接糸部材43に対して高さ方向における他方側への力を加えるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、引掛部62、63の代わりに、接糸部材43に対して高さ方向における他方側への力を加えるように構成された2つの不図示のエアシリンダ或いは電動アクチュエータ(本発明の第2加力部及び第3加力部)が設けられていても良い。或いは、引掛部62、63の代わりに、撓ませ部61と同一又は類似の、2つのボルト部材(不図示)が設けられていても良い。この場合、2つのボルト部材は、退避位置と重なり位置との間で移動可能でなくても良い。