(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157738
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
F23N 1/00 20060101AFI20231019BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F23N1/00 103Z
F23N1/00 106
F23N1/02 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067827
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】伊東 航
【テーマコード(参考)】
3K003
3K068
【Fターム(参考)】
3K003AA01
3K003AB03
3K003AB06
3K003AC02
3K003BA01
3K003BB01
3K003CA06
3K003CB05
3K003CC01
3K003DA03
3K003DA04
3K068FA03
3K068FB02
3K068FC03
3K068FD07
3K068GA02
3K068HA02
(57)【要約】
【課題】燃焼量の移行時における空気比を適正範囲に収束させることができるボイラを提供することである。
【解決手段】燃料供給路5の流路を開閉するための開閉弁11、12と、前記燃料供給路5において前記開閉弁11、12の下流側に設けられており、ボイラに供給する燃料の流量を調整する燃料流量調整弁13と、前記燃料供給路5における前記流量調整弁13の一次側の圧力を検出する圧力検出部15と、複数の燃焼量のいずれかに移行するとともに、前記燃料流量調整弁13の開度を制御する制御部6とを備え、前記制御部6は、異なる燃焼量へ移行するときに、移行前の燃焼量および移行後の燃焼量各々の前記開閉弁11、12における圧力損失と、前記圧力検出部15により検出された圧力とに基づき、前記移行後の燃焼量における前記燃料流量調整弁13の一次側の圧力を特定する圧力特定手段を含み、異なる燃焼量へ移行する移行期間においては、前記圧力特定手段により特定された圧力に応じて前記燃料流量調整弁13の開度を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給路の流路を開閉するための開閉弁と、
前記燃料供給路において前記開閉弁の下流側に設けられており、ボイラに供給する燃料の流量を調整する燃料流量調整弁と、
前記燃料供給路における前記流量調整弁の一次側の圧力を検出する圧力検出部と、
複数の燃焼量のいずれかに移行するとともに、前記燃料流量調整弁の開度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
異なる燃焼量へ移行するときに、移行前の燃焼量および移行後の燃焼量各々の前記開閉弁における圧力損失と、前記圧力検出部により検出された圧力とに基づき、前記移行後の燃焼量における前記燃料流量調整弁の一次側の圧力を特定する圧力特定手段を含み、
異なる燃焼量へ移行する移行期間においては、前記圧力特定手段により特定された圧力に応じて前記燃料流量調整弁の開度を制御する、ボイラ。
【請求項2】
移行している燃焼量に応じた流量の燃焼用空気を供給する供給手段と、
供給される燃焼用空気の流量を検出する空気流量検出部とを備え、
前記制御部は、
前記空気流量検出部により検出された燃焼用空気の流量に応じた燃料の流量とするための流量対応値を特定するための流量対応値特定手段と、
異なる燃焼量へ移行する移行期間において、ボイラに供給する燃料の流量を加減するための加減値を特定する加減値特定手段とを含み、
前記移行期間においては、前記圧力特定手段により特定された圧力と、前記流量対応値特定手段により特定される流量対応値に前記加減値特定手段により特定される加減値を加減算した値とに応じて、前記燃料流量調整弁の開度を制御する、請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記制御部は、異なる燃焼量へ移行する移行期間であっても、移行前の燃焼量と移行後の燃焼量との差が所定範囲内である場合には、前記圧力特定手段により特定された圧力に応じた前記燃料流量調整弁の開度制御を行わない、請求項1または請求項2に記載のボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料供給管において、供給する燃料の圧力を一定に調整するガバナを用いずに、流量調整弁により燃料の流量を調整するボイラがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなボイラにおいて、燃焼量が移行されるときであってボイラに供給する燃料の流量が変化するときには、燃料供給管における流量調整弁の一次側(上流側であって例えば遮断弁など)を通過する際の圧力損失が変化するため、流量調整弁に到達する燃料の圧力も変動してしまう。このため、移行後の燃焼量のみを考慮して流量調整弁の開度を一律に制御してしまうと、流量調整弁に到達する燃料の圧力が低いときには供給燃料が少なくなり高空気比となり、流量調整弁に到達する燃料の圧力が高いときには供給燃料が多くなり低空気比となる。その結果、空気比を適正範囲に収束させることができず、失火等の燃焼異常の発生や、不完全燃焼に起因する一酸化炭素濃度を増加させてしまう虞などがあった。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、燃焼量の移行時における空気比を適正範囲に収束させることができるボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のボイラは、燃料供給路の流路を開閉するための開閉弁と、前記燃料供給路において前記開閉弁の下流側に設けられており、ボイラに供給する燃料の流量を調整する燃料流量調整弁と、前記燃料供給路における前記流量調整弁の一次側の圧力を検出する圧力検出部と、複数の燃焼量のいずれかに移行するとともに、前記燃料流量調整弁の開度を制御する制御部とを備え、前記制御部は、異なる燃焼量へ移行するときに、移行前の燃焼量および移行後の燃焼量各々の前記開閉弁における圧力損失と、前記圧力検出部により検出された圧力とに基づき、前記移行後の燃焼量における前記燃料流量調整弁の一次側の圧力を特定する圧力特定手段を含み、異なる燃焼量へ移行する移行期間においては、前記圧力特定手段により特定された圧力に応じて前記燃料流量調整弁の開度を制御する。
【0007】
上記の構成によれば、異なる燃焼量へ移行する移行期間において、移行後の燃焼量における燃料流量調整弁の一次側の圧力を特定し、特定した圧力に応じて燃料流量調整弁の開度が制御される。これにより、燃焼量が移行されるときであってボイラに供給する燃料の流量が変化するときであっても、燃料流量調整弁に到達する燃料の圧力に応じて燃料流量調整弁の開度を制御することができる。その結果、空気比を適正範囲に収束させることができ、失火等の燃焼異常の発生や、不完全燃焼に起因する一酸化炭素濃度の増加を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、移行している燃焼量に応じた流量の燃焼用空気を供給する供給手段と、供給される燃焼用空気の流量を検出する空気流量検出部とを備え、前記制御部は、前記空気流量検出部により検出された燃焼用空気の流量に応じた燃料の流量とするための流量対応値を特定するための流量対応値特定手段と、異なる燃焼量へ移行する移行期間において、ボイラに供給する燃料の流量を加減するための加減値を特定する加減値特定手段とを含み、前記移行期間においては、前記圧力特定手段により特定された圧力と、前記流量対応値特定手段により特定される流量対応値に前記加減値特定手段により特定される加減値を加減算した値とに応じて、前記燃料流量調整弁の開度を制御する。
【0009】
上記の構成によれば、異なる燃焼量へ移行する移行期間において、移行後の燃焼量における燃料流量調整弁の一次側の特定された圧力と、検出された燃焼用空気の流量に応じた燃料の流量とするための流量対応値に特定の加減値を加減算した値とに応じて、燃料流量調整弁の開度が制御される。これにより、異なる燃焼量へ移行する移行期間において、燃焼用空気の供給量の変化から一定時間遅れて燃料の流量が変化することに起因して、空気比が一時的に変化してしまうことを防ぎ、その結果、燃焼量の移行時における空気比変動を極力安定させて制御でき、失火等の燃焼異常を抑制でき、不完全燃焼に起因する一酸化炭素濃度の増加も抑制できる。
【0010】
好ましくは、前記制御部は、異なる燃焼量へ移行する移行期間であっても、移行前の燃焼量と移行後の燃焼量との差が所定範囲内である場合には、前記圧力特定手段により特定された圧力に応じた前記燃料流量調整弁の開度制御を行わない。
【0011】
上記の構成によれば、燃焼量の差が所定範囲以上とならなければ、圧力特定手段により特定された圧力に応じた燃料流量調整弁の開度制御を行わないため、燃焼量の細かな変化に応じて燃料流量調整弁の開度制御が行われてしまうことを防止できる。その結果、燃料流量調整弁の開度が安定せずにハンチングさせてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ボイラの概略構成を説明するための図である。
【
図2】ボイラの制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本実施形態に係る補正開度を特定するためのテーブルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<概略構成について>
以下に、
図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るボイラ1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るボイラ1の構成を模式的に示す図である。
【0014】
ボイラ1は、燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ本体2と、空気供給路30を介してボイラ本体2内に空気を送り込む送風機3と、ボイラ本体2からの排ガスなどを導出する煙道4と、ボイラ本体2に燃料を供給する燃料供給路5(燃料供給ライン)と、制御装置6備えている。なお、燃料は、ガスである例について説明するが、ガスなどの気体に限らず、油などの液体であってもよい。
【0015】
燃料供給路5は、空気供給路30に接続されている。燃料供給路5から供給される燃料(ガス)は、空気供給路30において、送風機3から送風される空気と混合されて、ボイラ本体2内のバーナ20に供給される。
【0016】
送風機3から供給される空気は、燃焼用空気として空気供給路30を介してボイラ本体2内のバーナ20に供給される。燃焼用空気の流量の調整は、空気供給路30にダンパ7を設けて、ダンパ7の位置(開度)を調整するか、これに代えてまたはこれに加えて、インバータを用いて送風機3のファンの回転速度を変えることでなされる。本実施の形態では、燃焼用空気の流量は、ダンパ7の開度制御および送風機3のインバータ制御により調整される。
【0017】
燃料供給路5には、流路を開閉するための開閉弁(電磁弁)11,12と、燃料流量調整弁13と、圧力センサ15(圧力検出部)とが設けられている。開閉弁11,12をまとめて二重遮断弁ともいう。燃料流量調整弁13は、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を調整可能である圧力調整弁として機能するとともに遮断機能をも備える。燃料流量調整弁13は、開閉弁11,12よりも下流側に設けられており、制御装置6によって開度が調整されるモータバルブである。なお、燃料流量調整弁13は、燃料の流量を調整するものであればモータバルブに限らず、例えば、空気式制御弁であってもよい。
【0018】
圧力センサ15は、開閉弁11、12よりも下流に設けられて、燃料流量調整弁13の上流側(一次側)を流通する燃料の圧力を検出する。圧力センサ15は、燃料流量調整弁13の一次側の圧力を特定するための検出信号を制御装置6に送信する。これにより、圧力センサ15からの検出信号を制御装置6に入力することができる。なお、圧力センサ15から出力されるアナログ信号はデジタル信号に変換されて、制御装置6に入力される。
【0019】
制御装置6は、内部にメモリ、タイマ、および演算処理部を含むコンピュータにより実現され、電気的に接続される圧力センサ15を含む各センサからの信号に基づいて、燃料流量調整弁13や送風機3の制御を行う。また、制御装置6は、設定されている目標蒸気圧と蒸気ヘッダの蒸気圧とに応じて、ボイラ本体2における燃焼量(燃焼率)が段階的に異なる複数の燃焼状態のいずれかに制御する。制御装置6は、制御した燃焼状態に応じて、流量調整弁13の開度と、送風機3により送り込む空気量とを制御する。複数の燃焼状態としては、高燃焼状態、中燃焼状態および低燃焼状態が設けられている。ボイラ本体2における燃焼量は、高燃焼状態、中燃焼状態、低燃焼状態の順で小さくなる。
【0020】
空気供給路30には、ダンパ7より下流にパンチングメタル等の燃焼用空気減圧部材8が設けられている。空気流量検出部9は、燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧を検出し、差圧情報を出力する。空気流量検出部9は、制御装置6と電気的に接続されている。これにより、空気流量検出部9からの差圧情報を制御装置6に入力することができる。なお、空気流量検出部9から出力されるアナログ信号はデジタル信号に変換されて、制御装置6に入力される。
【0021】
制御装置6は、制御している燃焼量に応じた態様(例えば、回転数、周波数)となるよう送風機3を制御し、燃焼量に応じた量の燃焼用空気を供給する。燃焼量に応じた燃焼用空気の流量は、複数の燃焼状態(燃焼量)毎に予め定められている。制御装置6は、空気流量検出部9が検出した燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧情報に基づいて、ボイラ本体2に実際に供給されている燃焼用空気の流量を算出(検出)する。
【0022】
制御装置6は、算出した燃焼用空気の流量に応じた燃料流量調整弁13の開度を特定するための流量対応値と、稼働状況に応じて燃料流量調整弁13の開度を補正するための補正開度および流量加減値とに基づいて、燃料流量調整弁13の開度調整を行う。流量対応値は、燃料の供給圧力が一定であった場合において、算出された燃焼用空気の流量との関係で空気比が適正範囲内の所定値となる燃料の流量を供給できる燃料流量調整弁13の開度を特定するための値である。これにより、例えば、燃焼用空気の流量が増加すれば、燃料流量調整弁13の開度を大きくして燃料の流量を増加させる一方、燃焼用空気の流量が減少すれば、燃料流量調整弁13の開度を小さくして燃料の流量を減少させる。その結果、燃焼量に応じてボイラから要求される流量であって空気比が適性範囲となる流量(設計値)を供給することができる。なお、補正開度および流量加減値は、流量対応値から特定される開度を補正するための値であるが、詳細については後述する。
【0023】
制御装置6は、制御部61と記憶部62とを備える。記憶部62には、ボイラ1に関する各種の情報として、例えば、燃焼量に応じた送風機3の態様(例えば、回転数、周波数)を特定するための情報や、燃料流量調整弁13の開度を特定するための開度調整情報などが記憶されている。開度調整情報には、流量対応値、補正開度、および、流量加減値などを特定するためのテーブル、演算式などの情報が含まれる。
【0024】
制御部61は、記憶部62に記憶された開度調整情報に基づいて、燃料流量調整弁13に対して開度を特定するための開度特定信号を送信する。これにより、燃料流量調整弁13は、燃焼用空気減圧部材8の前後の差圧に応じた開度に制御されて、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を調整することができる。なお、開度調整情報のうち、例えば流量対応値を特定するための情報は、差圧(あるいは差圧から算出される燃焼用空気の流量)に応じて燃料流量調整弁13の開度を特定可能なテーブルであってもよく、また差圧(あるいは差圧から算出される燃焼用空気の流量)に応じて燃料流量調整弁13の開度を特定するための演算式であってもよい。また、開度調整情報のうち補正開度や流量加減値を特定するための情報についても同様に、補正開度や流量加減値を特定可能なテーブルであってもよく、演算式であってもよい。
【0025】
本実施形態における燃料供給路5には、燃料を一定の圧力で供給するガバナ付き遮断弁などを設けていないため、製造コストを削減できる。しかし、この場合には、二重遮断弁を流通する燃料(ボイラ1に供給される燃料でもある)の流量に応じて、当該二重遮断弁における圧力損失が異なるため、燃料流量調整弁13に到達する燃料の圧力が変動する。特に、燃焼状態が移行されるときであってボイラに供給する燃料の流量が変化するときには、燃料供給路5における二重遮断弁を通過する際の圧力損失が大きく変化するため、燃料流量調整弁13に到達する燃料の圧力が大きく変動してしまう。このため、例えば燃焼用空気の流量に応じて算出される流量対応値のみに基づいて燃料流量調整弁13の開度を制御した場合であって、ボイラ1に供給される燃料の流量が多い場合(例えば高燃焼状態に移行する場合など)には、圧力損失が大きくなるため、二重遮断弁の下流の圧力が低くなり、供給燃料が設計値よりも少なくなり高空気比となる傾向にある。逆に、ボイラ1に供給される燃料の流量が少ない場合(例えば低燃焼状態に移行する場合など)には、圧力損失が小さくなるため、二重遮断弁の下流の圧力が高くなり、供給燃料が設計値よりも多くなり低空気比となる傾向にある。
【0026】
このような課題を解決するために、燃料供給路5における二重遮断弁を通過する際の圧力損失が、流通する燃料の流量の二乗や、燃焼状態(燃焼量、燃焼率)の二乗に比例することに着眼し、燃焼状態(燃焼量)を異なる燃焼状態へ移行(変更)する制御を開始するときに、移行前の燃焼状態と、移行後の燃焼状態との各々に応じた圧力損失値ΔPと、圧力センサ15により検出された圧力(現在燃料供給圧力値Pg2)とに基づいて、移行後の流量調整弁13の一次側に到達する燃料の圧力の推定値(移行先燃料供給圧力推定値Pg2´)を算出する。その上で、当該算出した移行先燃料供給圧力推定値Pg2´から燃料流量調整弁13の補正開度を特定し、流量対応値に基づいて特定される燃料流量調整弁13の開度を、当該補正開度に基づいて補正して制御する。すなわち、移行後の燃料流量調整弁13の一次側に到達する燃料の圧力の推定値を加味して燃料流量調整弁13の開度が補正制御される。これにより、燃焼状態の移行に伴って燃料流量調整弁13の一次側に到達する燃料の圧力が変動する場合であっても、空気比を適正範囲に収束させることができる。
【0027】
記憶部62には、各燃焼状態(燃焼量)に応じた圧力損失値ΔPが予め記憶されているとともに、移行先燃料供給圧力推定値Pg2´を算出するための以下の式に対応する情報が記憶されている。例えば、燃焼状態aから燃焼量が異なる燃焼状態bへの移行(例えば、低燃焼状態から中燃焼状態への移行など)が開始されたとき、記憶された圧力損失値ΔPと、圧力センサ15により検出された現在燃料供給圧力値Pg2とを用いて、次式に基づき移行先燃料供給圧力推定値Pg2´が算出される。なお、燃焼状態aに応じた圧力損失値をΔPa、燃焼状態bに応じた圧力損失値をΔPbとする。
【0028】
(式) Pg
2´=Pg
2-(ΔPb-ΔPa)
また、記憶部62には、
図3に示すような、燃焼状態(燃焼量)の移行後(移行先)における移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´に応じた燃料流量調整弁13の補正開度(%)が定められたテーブルが記憶されている。移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´と補正開度の関係は、実験などにより予め求めることができる。燃料流量調整弁13の開度は、流量対応値などから特定される開度に対して、特定された補正開度を掛け合わせた開度分を上乗せ(合算)した開度に補正して制御される。例えば、移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´が30kPaであれば、
図3に示すテーブルから、補正開度は17%と算出され、流量対応値などから特定される開度に対して、当該開度の17%分が上乗せした開度に補正して制御される。
図3に示すように、補正開度は、移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´が小さい程、大きくなるように定められているため、上乗せされる開度も大きくなる。なお、
図3に示すテーブルでは、移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´が10kPa単位でしか補正開度が示されていないが、実際には、例えば1kPa単位毎に補正開度が対応付けて記憶されているものとする。
【0029】
制御装置6は、上記式によって、現在燃料供給圧力値Pg
2と、移行前の燃焼量(現在の燃焼量)および移行後の燃焼量(目標燃焼量)各々の圧力損失値ΔPとによって移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´を算出し、
図3に示すテーブルを参照して、燃料流量調整弁13の補正開度を特定する。補正開度を特定する処理は、燃焼状態の移行開始時に行われる。なお、
図3に示す数値は一例であり、ボイラによって適宜変動し得る値である。
【0030】
ボイラ1では、上述した補正開度による補正制御に加えて、さらに以下の補正制御が行われる。ボイラ1は、燃焼用空気の流量変化を先行させ、実際に供給される燃焼用空気の流量に応じて燃料の流量を調整するものであり、燃料の流量調整が燃焼用空気の流量のフィードバックによる後追いとなる制御を行う。このため、燃焼状態が他の燃焼状態に移行されるときには、過渡的な状態となり空気比が大きく変動してしまう結果、適正な空気比での燃焼状態の維持が困難になるおそれがある。例えば、低燃焼状態から中燃焼状態に移行させたときにおいては、燃焼用空気の流量増に対する燃料の供給増が後追いとなり、高空気比となる期間を生じさせてしまう傾向にある。これを解決するために、制御装置6は、燃焼状態の移行時において、流量対応値に基づいて特定される燃料流量調整弁13の開度を、移行先燃料供給圧力推定値Pg2´に応じて特定された燃料流量調整弁13の補正開度に加え、後述する流量加減値に基づいて補正して制御する。
【0031】
記憶部62には、ボイラ1に関する各種の情報として、一の燃焼状態から異なる燃焼状態への燃焼状態移行における移行所要時間Δtと、燃焼状態(燃焼量)に応じて一義的に定められている燃料流量調整弁13の理論開度を特定するための情報とが記憶されている。移行所要時間Δtは、送風機3のインバータ周波数、加減速時間、ダンパ7の開度、ダンパ7の開閉速度等により、ボイラ毎に規定される。燃焼状態を移行させる際に、例えば、送風機3のインバータ周波数やダンパ7の開度を変化させることによって風量を変えるが、単位時間当たりに変更可能なインバータ周波数には制約があることにより、移行後の燃焼状態に対応する風量に到達するまでには所定の時間を要する。また、ダンパ7の開度も瞬時に変更されるのではなく一定の速度で変化するため、目標とする開度到達までには所定の時間を要する。これらの要因により、移行後の燃焼状態に応じた目標空気比に対応した燃料の供給量となるように即時で変化させると、空気比を適正範囲に収束させることができない場合が生じる。
【0032】
制御装置6のタイマは、運転状態中において燃焼状態の移行が検出されると、例えば、移行が開始されてから経過した経過時間t0の計時を開始する。制御装置6は、計時された経過時間t0、燃焼状態に応じて予め定められている燃料流量調整弁13の理論開度、および移行所要時間Δtに基づいて、例えば、移行期間における流量加減値を算出する。流量加減値とは、流量対応値に基づく流量調整弁13の開度を加減算(補正)するための値を特定する値である。制御装置6は、流量加減値を算出するための処理を、運転状態中の移行期間において繰り返し行う。
【0033】
また、記憶部62には、燃焼用空気の流量に基づいて特定される流量調整弁13の開度である流量対応値と、上述した流量加減値を算出するための以下の式に対応する情報とが記憶されている。例えば、燃焼状態aから異なる燃焼状態bへの移行が開始されたとき、移行所要時間Δtが特定されるとともに経過時間t0の計時が開始され、流量加減値は、次式に基づき経過時間t0における値が算出される。なお、燃焼状態aに応じた理論開度を理論開度A、燃焼状態bに応じた理論開度を理論開度Bとする。ここで、燃焼用空気の流量変化を先行させ、燃料の流量調整がフィードバックによる後追いとなる制御を行うボイラにおいて、燃焼状態の移行を開始するための処理が開始されたときには、燃焼用空気の流量を変化させるための処理が開始された後、燃焼用空気の流量が特定されるまでの一定時間だけ遅れて、燃料の流量を変化させるための処理が開始されるが、その遅れ時間をTとする。
【0034】
(式) 流量加減値={(B-A)/Δt}・t
ただし、経過時間t0の値に応じ、tの値を以下のように特定する。
【0035】
0≦t0<T : t=t0
T≦t0<Δt : t=T
Δt≦t0<Δt+T : t=(T+Δt)-t0
本実施形態におけるボイラ1では、算出された燃焼用空気の流量に応じた流量対応値に基づいて特定される燃料流量調整弁13の開度を、移行先燃料供給圧力推定値Pg2´に応じて特定された燃料流量調整弁13の補正開度に加え、前記式によって算出された流量加減値に基づいて補正して制御する。この処理は、燃焼状態の移行期間において、流量検出部9によって検出される燃焼用空気の流量が、移行後の燃焼状態に応じた流量となるまで繰り返し行われる。
【0036】
これにより、燃焼用空気の流量変化を先行させる、所謂フィードバック制御を行うボイラにおいて、燃焼状態(燃焼量)の移行時における空気比変動を極力安定させて制御でき、燃焼量が変化(移行)した際に、燃料の供給量の変化から一定時間遅れて燃焼用空気の流量が変化することに起因して、空気比が一時的に変化してしまうことを防ぎ、その結果、燃焼量の移行時における空気比変動を極力安定させて制御でき、失火等の燃焼異常を抑制でき、不完全燃焼に起因する一酸化炭素濃度の増加も抑制できる。以下では、このような制御についてより具体的に説明する。
【0037】
<ボイラ制御処理について>
図2は、本発明のボイラの制御の一例を説明するためのフローチャートである。制御装置6は、一定期間(例えば1秒)毎に本制御を行い、ボイラ1の運転中は継続して本制御を実行する。
【0038】
ステップS01では、検出された蒸気ヘッダにおける蒸気圧と、目標蒸気圧とに基づき、燃焼量の変更(移行)が必要であるか否かを判定する。ステップS01において燃焼量の変更が必要であると判定されなかったときには、本制御を終了する。一方、ステップS01において燃焼量の変更が必要であると判定されたときには、ステップS02に移行する。
【0039】
ステップS02では、燃焼量aから燃焼量が異なる燃焼量bに変更する。ステップS03では、ステップS02で変更後の燃焼量bに応じた態様で、送風機3を制御する。
【0040】
ステップS04では、燃焼量a(現在の燃焼量)に応じた理論開度A、燃焼量b(目標燃焼量)に応じた理論開度B、および移行所要時間Δtを特定する。移行所要時間Δtは、燃焼量b(移行後の燃焼量)に応じた流量の燃焼用空気が供給手段(送風機3等)により供給されるまでに要する、予め特定される移行時間である。ステップS05では、移行開始からの経過時間t0の計時を開始する。
【0041】
ステップS06では、記憶部62に記憶されている圧力損失値ΔPのうち、燃焼量aに応じた圧力損失値ΔPaと、燃焼量bに応じた圧力損失値ΔPbとを特定するとともに、圧力センサ15からの検出信号に基づき現在燃料供給圧力値Pg2を特定する。
【0042】
ステップS07では、ステップS06で特定したΔPbからΔPaを差し引いた値を、現在燃料供給圧力値Pg2から差し引き、移行先燃料供給圧力推定値Pg2´を算出する。
【0043】
ステップS08では、
図3に示すテーブルを参照し、ステップS07で算出した移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´に基づき燃料流量調整弁13の補正開度を特定する。
【0044】
ステップS09では、空気流量検出部9により検出した差圧に基づいて燃焼用空気の空気流量を検出(算出)する。
【0045】
ステップS10では、ステップS09で検出した空気流量に基づき、燃焼用空気の流量に応じた燃料の流量とするための流量対応値を特定する。
【0046】
ステップS11では、燃焼量bに応じた理論開度Bから燃焼量aに応じた理論開度Aを差し引いた値を、移行所要時間Δtで除し、燃焼量a(移行前の燃焼量)から燃焼量b(移行後の燃焼量)への移行が開始されてから経過した時間t0に応じて特定される値tを乗じて、経過時間t0における流量加減値を算出する。t0の値が、0≦t0<Tであるときは、t=t0とする。t0の値が、T≦t0<Δtであるときは、t=Tとする。t0の値が、Δt≦t0<Δt+Tであるときは、t=(T+Δt)-t0とする。ここで、燃焼量の移行を開始するための処理が開始されたときには、燃焼用空気の流量を変化させるための処理が開始された後、前述したように燃焼用空気の流量が特定されるまでの一定時間だけ遅れて、燃料の流量を変化させるための処理が開始されるが、その遅れ時間をTとする。
【0047】
ステップS12では、ステップS08で特定した補正開度と、ステップS10で特定した流量対応値と、ステップS11で算出した流量加減値とに基づいて、燃料流量調整弁13の開度を制御する。これにより、燃料流量調整弁13は、ステップS10で特定した流量対応値に基づいて特定される開度が、ステップS08で特定した補正開度とステップS11で算出した流量加減値とに基づいて補正された開度に制御される。例えば、燃料流量調整弁13は、ステップS10で特定した流量対応値に基づいて特定される開度が、ステップS11で算出した流量加減値に基づいて特定される開度だけ加減算された上で、ステップS08で特定した補正開度の割合(%)が掛け合わされた開度分上乗せされた開度に制御される。なお、燃料流量調整弁13は、ステップS10で特定した流量対応値に基づいて特定される開度が、まずステップS08で特定した補正開度の割合(%)が掛け合わされた開度分上乗せされて、その後にステップS11で算出した流量加減値に基づいて特定される開度だけ加減算された開度に制御されるものであってもよい。
【0048】
ステップS13では、ステップS09で検出した空気流量が、燃焼量bに応じた燃焼用空気流量であるか否かを判定する。ステップS13において、ステップS09で検出した空気流量が、燃焼量bに応じた燃焼用空気流量であると判定されなかったときには、ステップS09に移行する。一方、ステップS13において、ステップS09で検出した空気流量が、燃焼量bに応じた燃焼用空気流量であると判定されたときには、処理を終了する。
【0049】
以上のように、本実施の形態では、供給圧力を一定にするためのガバナを用いずに燃料流量調整弁の開度を制御することで燃料の流量を調整するボイラにおいて、燃焼状態(燃焼量)の移行時に生じる二重遮断弁における圧力損失により、燃料流量調整弁13の一次側に到達する燃料の圧力(供給量)の変動があったとしても、ステップS07で移行後の燃焼量における燃料流量調整弁13に到達する燃料の圧力(移行先燃料供給圧力推定値Pg2´)を算出し、燃料流量調整弁13の補正開度を特定し、その特定した補正開度を用いて燃料流量調整弁13の開度を補正して制御することができる。その結果、空気比を適正範囲に収束させることができ、失火等の燃焼異常の発生や、不完全燃焼に起因する一酸化炭素濃度の増加を抑制することができる。
【0050】
また、流量加減値を算出するための処理は、検出される空気流量が、燃焼量bに応じた燃焼用空気流量に到達するまで行われる(ステップS09~S13)。これにより、一の燃焼量から異なる燃焼量に燃焼量が移行した直後(燃焼用空気の流量が変化した直後)から燃料の流量を変化させることにより、移行期間における空気比を適正な空気比に寄るように調整することができ、燃焼量が移行した際に、燃焼用空気の供給量の変化から一定時間遅れて燃料の流量が変化することに起因して、空気比が一時的に変化してしまうことを防ぎ、その結果、燃焼量の移行時における空気比変動を極力安定させて制御でき、失火等の燃焼異常を抑制でき、不完全燃焼に起因する一酸化炭素濃度の増加も抑制できる。
【0051】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例などについて説明する。
【0052】
上記実施形態における、
図2のステップS06~S08と、当該S06~S08に基づくS12における補正処理については、燃焼量が移行する場合であっても、移行前後における燃焼量の差分が燃焼量100%のうちの例えば10%以内である場合には行わず、10%を超える場合に行うようにしてもよい。これにより、移行時か否かの区別が困難となる燃焼量の細かな変化時には、
図2のステップS06~S08と、当該S06~S08に基づくS12における補正処理が行われてしまうことを防止できる。その結果、燃料流量調整弁13の開度が安定せずにハンチングさせてしまうことを抑制できる。
【0053】
上記実施の形態においては、異なる燃焼状態への移行における移行所要時間Δtが、ボイラ1に関する情報の一つとして記憶部62に記憶されている例を説明したが、これに限らず、移行所要時間Δtは移行前後の燃焼量に基づいて移行開始時にその都度算出されるものであってもよい。
【0054】
上記実施の形態においては、移行先燃料供給圧力推定値Pg2´を算出するために、式を用いる例について説明したが、これに限らず、記憶部62に予め記憶されているテーブルにより特定されるものであってもよい。例えば、現在燃料供給圧力値Pg2毎に、現在の燃焼量と移行先の燃焼量との関係から移行先燃料供給圧力推定値Pg2´を特定可能なテーブルを記憶部62に予め記憶しておき、燃焼量を移行させる際に、現在燃料供給圧力値Pg2に対応するテーブルを参照して、現在の燃焼量と移行先の燃焼量とに対応する移行先燃料供給圧力推定値Pg2´を読み出して特定するものであってもよい。
【0055】
上記実施の形態においては、燃料流量調整弁13の補正開度を特定するにあたり、
図3に示すような、燃焼量の移行後における、移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´に応じた燃料流量調整弁13の補正開度が定められたテーブルを用いる場合について説明したが、これに限らず、移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´に応じて、例えば予め記憶された式を用いてその都度算出するものであってもよい。
【0056】
上記実施の形態においては、燃焼用空気の流量変化を先行させ、燃料の流量調整がフィードバックによる後追いとなる制御を行うボイラに適用する例について説明したが、これに限らず、燃料の流量変化を先行させ、燃焼用空気の流量調整がフィードバックによる後追いとなる制御を行うボイラに適用してもよい。また、このような所謂フィードバック制御を行わないボイラであってもよく、例えば、燃料の流量変化および燃焼用空気の流量変化の各々が、燃焼状態に応じて予め定められた開度や風量に即時に制御されるボイラであってもよい。
【0057】
上記実施の形態においては、ステップS10で特定される燃料の流量対応値から特定される開度を、ステップS08において特定される補正開度と、ステップS11によって算出される流量加減値とを用いて補正して制御する(ステップS12)例について説明したが、これに限らず、ステップS08において特定される補正開度のみを用いて、流量対応値から特定される開度を補正して制御するものでもよい。また、燃料の流量変化を先行させるボイラや、このようなフィードバック制御を行わないボイラにおいても、ステップS08において特定される補正開度のみを用いて、燃焼状態に応じて一義的に定められている燃料流量調整弁13の理論開度(例えば移行先の燃焼状態に応じた理論開度)を補正して制御するものでもよい。
【0058】
上記実施の形態においては、燃焼用空気の流量に応じた燃料の流量対応値から特定される開度を補正するための補正開度を特定する処理が、燃焼状態の移行開始時において行われる例について説明したが、これに限らず、定常時において当該処理が行われるものであってもよい。例えば、所定時間毎に、制御している燃焼状態に応じた圧力損失値ΔPと、現在燃料供給圧力値Pg
2とを特定し、当該特定した現在燃料供給圧力値Pg
2から、制御している燃焼状態に応じた圧力損失値ΔPを差し引いた値を、
図3のテーブルにおける移行先燃料供給圧力推定値Pg
2´に当てはめ、燃料流量調整弁13の補正開度を特定し、燃焼量空気の流量に応じた燃料の流量対応値から特定される開度を補正してもよい。また、燃料の流量変化を先行させるボイラや、このようなフィードバック制御を行わないボイラにおいても、同様の処理により燃料流量調整弁13の補正開度を特定し、燃焼状態に応じて一義的に定められている燃料流量調整弁13の理論開度を補正して制御するものでもよい。これにより、低燃焼状態に制御されている状態であったとしても、例えば、二重遮断弁の上流側の圧力の変動など、燃焼状態の変化以外を要因として燃料流量調整弁13の一次側に到達する燃料の圧力の変動があったとしても、空気比を適性範囲に収束させることができる。なお、定常時においては、上記のように圧力損失値ΔPを用いて算出されるPg
2´に基づいて燃料流量調整弁13の補正開度を特定するものに限らず、圧力損失値ΔPを用いずに所定時間毎に検出される現在燃料供給圧力値Pg
2に基づいて燃料流量調整弁13の補正開度を特定し、燃焼用空気の流量に応じた燃料の流量対応値から特定される開度を補正するための補正開度、もしくは燃焼状態に応じて一義的に定められている燃料流量調整弁13の理論開度を補正して制御するものでもよい。すなわち、移行時と定常時とで、燃料流量調整弁13の補正開度の特定方法を切り替えるようにしてもよい。
【0059】
上記実施の形態においては、燃料流量調整弁13の一次側を流通する燃料の圧力を、圧力センサ15を用いて検出する例について説明したが、これに限らず、例えば、燃料供給路5にオリフィス等を複数箇所に設けて差圧を検出し、当該差圧に基づいて燃料の供給流量を検出するものであってもよい。
【0060】
上記の実施形態においては、移行先燃料供給圧力推定値Pg2´の算出に、圧力損失値ΔP(ΔPa、ΔPb)として、燃料供給路5における二重遮断弁を通過する際の圧力損失を用いる例について説明したが、二重遮断弁における圧力損失に限らず、これに替えてあるいは加えて、燃料供給路5上に設けられている他の機材を通過する際の圧力損失を用いるようにしてもよい。移行先燃料供給圧力推定値Pg2´の算出の際には、例えば、上述したように燃料供給路5にオリフィスなどが設けられる場合に、燃料供給路5の開閉弁11および12の、上流もしくは下流に設けられたオリフィスを通過する際の圧力損失を用いるようにしてもよい。また、開閉弁11および12の上流側に燃料の異物を捉えるストレーナを設け、当該ストレーナを通過する際の圧力損失を用いるようにしてもよい。すなわち、移行後の燃焼量における前記燃料流量調整弁の一次側の圧力を特定する圧力特定手段は、少なくとも、例えば、現在燃料供給圧力値Pg2と、移行前の燃焼量(現在の燃焼量)および移行後の燃焼量(目標燃焼量)各々の圧力損失値ΔPとに基づき、燃料流量調整弁の一次側の圧力である移行先燃料供給圧力推定値Pg2´を特定するものであれば、上述したように燃料供給路5上に他の機材が設けられている場合には、当該他の機材を通過する際の圧力損失をも用いて(加味して)、燃料流量調整弁の一次側の圧力である移行先燃料供給圧力推定値Pg2´を特定するものも包含するといえる。
【0061】
上記実施の形態においては、燃焼量が段階的に異なる複数種類の燃焼状態のいずれかに制御するボイラである場合について説明したが、これに限らず、燃焼量を細かく制御可能な、所謂比例制御のボイラにも適用できる。その場合、上記実施の形態において、ステップS06において特定される燃焼量に応じた圧力損失値ΔPは、予め記憶されている場合について説明したが、燃焼量の変化毎に当該変化後の燃焼量に対応する圧力損失値ΔPを算出するものでもよい。例えば、燃焼量100%、60%、20%各々に対応する圧力損失値ΔPを記憶し、燃焼量80%の圧力損失値ΔPについては、燃焼量100%、60%各々の圧力損失値ΔPの差分のうち半分を、燃焼量60%の圧力損失値ΔPに加算することにより算出するようにしてもよい。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 ボイラ
2 ボイラ本体
3 送風機
4 煙道
5 燃料供給路
6 制御装置
61 制御部
62 記憶部
7 ダンパ
8 燃焼用空気減圧部材
9 空気流量検出部
11 開閉弁
12 開閉弁
13 燃料流量調整弁
15 圧力センサ(圧力検出部)
20 バーナ
30 空気供給路