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特開2023-157747送信局、受信局及びデータ通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157747
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】送信局、受信局及びデータ通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/69 20110101AFI20231019BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20231019BHJP
   H04L 27/12 20060101ALI20231019BHJP
   H04L 27/14 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H04B1/69
H04B1/04 Z
H04L27/12 Z
H04L27/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067841
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】522155246
【氏名又は名称】リアライズネットワークエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】竹内 嘉彦
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060EE05
5K060HH01
5K060HH06
5K060HH09
5K060HH22
5K060HH31
5K060HH32
(57)【要約】
【課題】従来のデータ通信システムでは、他システムとの通信干渉を防止することが出来なかった。
【解決手段】一実施の形態にかかる送信局は、時刻信号を受信して現在時刻を示す時刻値を出力する送信側受信部21と、送信を行わないキャリアセンス期間を設けて、自装置が利用する同一周波数帯、かつ同一チャネルで他のシステムが送出する無線信号の有無を判定するキャリアセンス判定部24と、送信側チャープ信号を生成する送信側チャープ信号生成部28と、時刻値が同期時刻設定値に達したことに応じてキャリアセンス判定部24と送信側チャープ信号生成部28を、時刻値が次の同期時刻設定値に達するまでの期間に排他的に動作させる送信側タイミング信号生成部22と、を有し、送信側チャープ信号生成部28は、動作直前のキャリアセンス判定部24の判定結果が他のシステムが送出する無線信号がないと判定された場合に送信側チャープ信号の生成を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信局とチャープ信号を用いたスペクトル拡散方式の通信を行う送信局であって、
1つの前記送信局の通信可能範囲よりも広い広域エリアに対して送信される時刻信号を受信して、受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する送信側受信部と、
自装置が利用する同一周波数帯、かつ同一チャネルで他のシステムが送出する無線信号の有無を判定するキャリアセンス判定部と、
送信側チャープ信号を生成する送信側チャープ信号生成部と、
前記時刻値が同期時刻設定値に達したことに応じて前記キャリアセンス判定部と前記送信側チャープ信号生成部を、前記時刻値が次の同期時刻設定値に達するまでの期間に排他的に動作させる送信側タイミング信号生成部と、を有し、
前記送信側チャープ信号生成部は、動作直前の前記キャリアセンス判定部の判定結果が前記他のシステムが送出する無線信号がないと判定された場合に前記送信側チャープ信号の生成を行う送信局。
【請求項2】
前記送信側チャープ信号生成部は、前記チャープ信号の周波数のうち最も低い周波数をゼロとした場合に、前記チャープ信号の各時刻の周波数を、変化帯域幅を法とする剰余数により決定される周波数を前記チャープ信号の周波数とする請求項1に記載の送信局。
【請求項3】
前記送信側チャープ信号生成部は、予め設定されたオフセット量に応じて周波数シフトされた周波数を出力開始時点の周波数とする前記チャープ信号を出力する請求項2に記載の送信局。
【請求項4】
前記チャープ信号のオフセット量は、オフセット量をfs、多重数の最大数をN、変化帯域幅をB、信号の取り得る番号をnとした場合に、fsn=n×B/Nで表わされる請求項3に記載の送信局。
【請求項5】
データ信号を生成するデータ信号生成部と、
前記データ信号で前記チャープ信号を変調する変調器と、
ローカル信号を生成するローカル信号生成器と、
前記ローカル信号を用いて前記チャープ信号を無線周波数に変換する周波数変換部と、
周波数変換部が出力した信号を用いてアンテナを駆動する増幅器と、
を有する請求項1に記載の送信局。
【請求項6】
前記送信側タイミング信号生成部は、前記送信側チャープ信号生成部を動作させた後に前記キャリアセンス判定部を動作させる請求項1に記載の送信局。
【請求項7】
外部から与えられる前記同期時刻設定値を保持する同期時刻設定値保持部を有する請求項1に記載の送信局。
【請求項8】
送信局とチャープ信号を用いたスペクトル拡散方式の通信を行う受信局であって、
1つの前記送信局の通信可能範囲よりも広い広域エリアに対して送信される時刻信号を受信して、受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する受信側受信部と、
受信側チャープ信号を生成する受信側チャープ信号生成部と、
前記時刻値を受信して、前記送信局に同期させて前記受信側チャープ信号生成部の動作スケジュールが記述されたタイムスケジュールに基づき前記受信側チャープ信号生成部を動作させる受信側タイミング信号生成部と、
前記受信側チャープ信号を用いて受信信号を変調する変調器と、
前記変調器の出力信号を復調してデータ信号を取得するデータ信号復調部と、
を有する受信局。
【請求項9】
送信局と受信局とを有し、
前記送信局は、
1つの前記送信局の通信可能範囲よりも広い広域エリアに対して送信される時刻信号を受信して、受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する送信側受信部と、
自装置が利用する同一周波数帯、かつ同一チャネルで他のシステムが送出する無線信号の有無を判定するキャリアセンス判定部と、
送信側チャープ信号を生成する送信側チャープ信号生成部と、
前記時刻値が同期時刻設定値に達したことに応じて前記キャリアセンス判定部と前記送信側チャープ信号生成部を、前記時刻値が次の同期時刻設定値に達するまでの期間に排他的に動作させる送信側タイミング信号生成部と、を有し、
前記送信側チャープ信号生成部は、動作直前の前記キャリアセンス判定部の判定結果が前記他のシステムが送出する無線信号がないと判定された場合に前記送信側チャープ信号の生成を行い、
受信局は、
前記時刻信号を受信して、受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する受信側受信部と、
受信側チャープ信号を生成する受信側チャープ信号生成部と、
前記時刻値を受信して、前記送信局に同期させて前記受信側チャープ信号生成部の動作スケジュールが記述されたタイムスケジュールに基づき前記受信側チャープ信号生成部を動作させる受信側タイミング信号生成部と、
前記受信側チャープ信号を用いて受信信号を変調する変調器と、
前記変調器の出力信号を復調してデータ信号を取得するデータ信号復調部と、
を有するデータ通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ送受信システム、データ送信装置及びデータ受信装置に関し、例えば、チャープ信号によりスペクトル拡散された信号を用いてデータの送受信を行うデータ送受信システム、データ送信装置及びデータ受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
雑音、干渉信号の下での良好な通信品質を実現するスペクトル拡散通信の一種に、周波数が時間とともに変化するチャープ信号を拡散信号として用いるスペクトル拡散通信がある。このようなチャープ信号を用いた通信技術の例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、同一チャネル内で送信信号を多重化することができるようにする情報処理装置および方法、送信装置および方法、並びに、受信装置について開示されている。この特許文献1に記載の送信装置は、送信するデータをチャープ変調して送信信号を生成し、複数の送信信号の送信タイミングを時間方向にずらして送信することにより、送信信号を多重化する。また、特許文献1に記載の受信装置は、送信側から送信された、送信タイミングが時間方向にずらされて多重化された複数のチャープ変調された送信信号を受信し、その受信された複数の送信信号のそれぞれを、それぞれの送信タイミングに応じたタイミングにおいてデチャープする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表2017-212810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、自装置が発するチャープ信号が途切れる間がなく、他システムが用いる信号から受ける干渉、或いは、他システムが用いる信号に与える干渉の影響を避けることが出来ない問題があった。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる送信局の一態様は、受信局とチャープ信号を用いたスペクトル拡散方式の通信を行う送信局であって、1つの前記送信局の通信可能範囲よりも広い広域エリアに対して送信される時刻信号を受信して、受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する送信側受信部と、自装置が利用する同一周波数帯、かつ同一チャネルで他のシステムが送出する無線信号の有無を判定するキャリアセンス判定部と、送信側チャープ信号を生成する送信側チャープ信号生成部と、前記時刻値が同期時刻設定値に達したことに応じて前記キャリアセンス判定部と前記送信側チャープ信号生成部を、前記時刻値が次の同期時刻設定値に達するまでの期間に排他的に動作させる送信側タイミング信号生成部と、を有し、前記送信側チャープ信号生成部は、動作直前の前記キャリアセンス判定部の判定結果が前記他のシステムが送出する無線信号がないと判定された場合に前記送信側チャープ信号の生成を行う。
【0008】
一実施の形態にかかる受信局の一態様は、送信局とチャープ信号を用いたスペクトル拡散方式の通信を行う受信局であって、1つの前記送信局の通信可能範囲よりも広い広域エリアに対して送信される時刻信号を受信して、受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する受信側受信部と、受信側チャープ信号を生成する受信側チャープ信号生成部と、前記時刻値を受信して、前記送信局に同期させて前記受信側チャープ信号生成部の動作スケジュールが記述されたタイムスケジュールに基づき前記受信側チャープ信号生成部を動作させる受信側タイミング信号生成部と、前記受信側チャープ信号を用いて受信信号を変調する変調器と、前記変調器の出力信号を復調してデータ信号を取得するデータ信号復調部と、を有する。
【0009】
一実施の形態にかかるデータ通信システムの一態様は、送信局と受信局とを有し、前記送信局は、1つの前記送信局の通信可能範囲よりも広い広域エリアに対して送信される時刻信号を受信して、受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する送信側受信部と、自装置が利用する同一周波数帯、かつ同一チャネルで他のシステムが送出する無線信号の有無を判定するキャリアセンス判定部と、送信側チャープ信号を生成する送信側チャープ信号生成部と、前記時刻値が同期時刻設定値に達したことに応じて前記キャリアセンス判定部と前記送信側チャープ信号生成部を、前記時刻値が次の同期時刻設定値に達するまでの期間に排他的に動作させる送信側タイミング信号生成部と、を有し、前記送信側チャープ信号生成部は、動作直前の前記キャリアセンス判定部の判定結果が前記他のシステムが送出する無線信号がないと判定された場合に前記送信側チャープ信号の生成を行い、受信局は、前記時刻信号を受信して、受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する受信側受信部と、受信側チャープ信号を生成する受信側チャープ信号生成部と、前記時刻値を受信して、前記送信局に同期させて前記受信側チャープ信号生成部の動作スケジュールが記述されたタイムスケジュールに基づき前記受信側チャープ信号生成部を動作させる受信側タイミング信号生成部と、前記受信側チャープ信号を用いて受信信号を変調する変調器と、前記変調器の出力信号を復調してデータ信号を取得するデータ信号復調部と、を有する。
【0010】
一実施の形態にかかる送信局、受信局及びデータ通信システムによれば、チャープ信号の生成を停止して他のシステムが発する信号の有無を判定するキャリアセンス判定部を動作させる。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態にかかる送信局、受信局及びデータ通信システムでは、他のシステムとの干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1にかかるデータ通信システムの概略図である。
図2】チャープ信号を時間方向にシフトする多重化した際の課題を説明する図である。
図3】実施の形態1にかかるデータ通信システムの送信局のブロック図である。
図4】実施の形態1にかかるデータ通信システムの受信局のブロック図である。
図5】実施の形態1にかかるデータ通信システムで用いるチャープ信号を説明する図である。
図6】実施の形態1にかかるデータ通信システムにより多重化されたチャープ信号を説明する図である。
図7】実施の形態1にかかるデータ通信システムにおける複素サンプリング点を説明する図である。
図8】実施の形態1にかかるデータ通信システムにおける受信時の複素サンプリング点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0014】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0015】
図1に実施の形態1にかかるデータ通信システムの概略図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかるデータ通信システムは、複数の基地局STと、複数の通信端末TMを有する。基地局STと通信端末TMは、それぞれ送信局にも受信局にもなり得る。具体的には、基地局STから通信端末TMにデータを送信する場合には、基地局STが送信局となり、通信端末TMが受信局となる。また、通信端末TMから基地局STにデータを送信する場合には、通信端末TMが送信局となり、基地局STが受信局となる。
【0016】
また、図1に示した例では、基地局STと通信端末TMとの時刻同期を衛星OBTから送信される測位信号を時刻信号として用いる例を示した。この時刻信号は、1つの送信局の通信可能範囲よりも広い広域エリアに対して送信される。図1に示す例では、基地局STの方が通信端末TMよりも広い通信可能範囲を有しているため、時刻信号として、この基地局STの通信可能範囲よりも広いエリアに対して送信される測位衛星から送出される測位信号を用いた。
【0017】
図1では、時刻信号の送信元として測位衛星を用いたGPS(Global Positioning System)システムを用いた例について示したが、現時点ではGPS以外にも、GLONASS、Galileo、DBS等の測位衛星によるGNSS(Global Navigation Satellite System、全地球航法衛星システム)を用いても可能である。また、全地球航法衛星ではないが特定エリアの測位衛星である準天頂衛星を用いても可能である。更に、測位衛星を用いたシステムでなくとも、日本国内等の限られたエリアにおいては、複数(少なくとも3局)の測位用基地局を用いて、システムでの通信フレームの時刻同期を実現するための無線ビーコン信号を時刻信号として送信することにより、送受信局間の同期をとることが可能である。
【0018】
ここで、実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、基地局STと通信端末TMとの間の通信にチャープ信号を用いたスペクトル拡散方式の通信信号を用いる。このチャープ信号は、変調に用いる信号であって、周波数がスイープ単位期間T中に帯域幅Bの範囲でスイープされる信号である。このチャープ信号を用いることで、データの多重数を増やすことが出来るため、通信を高速化、もしくは通信容量を増加することが可能になる。
【0019】
特許文献1では、複数の送信局がシフト時間Tsの間隔を開けて順次チャープ信号の生成を開始することで、主信号間の干渉を防止する。しかしながら、特許文献1では送信タイミングが同期されない他システムとの間の通信信号の干渉を防止することができない問題がある。そこで、図2にチャープ信号を時間方向にシフトする多重化した際の課題を説明する図を示す。
【0020】
図2に示す例では、シフト時間Tsの間隔を開けて各チャープ信号の生成が開始される。また、チャープ信号の生成が開始された後は一定のデータ通信が終るまでチャープ信号の生成が継続される。そのため、特許文献1に記載のシステムでは、データ通信が終了するまでの期間に他のシステムの通信信号の有無を確認するキャリアセンス処理を行うタイミングがない問題がある。つまり、特許文献1に記載のシステムでは、通信を実施することが出来ない(電波を出せない)、あるいは他のシステムとの間で通信信号の干渉を防止することが出来ない問題がある。
【0021】
そこで、実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、一定の周期でキャリアセンス処理を実行するためのキャリアセンス期間Tcsを設け、このキャリアセンス期間Tcs中にチャープ信号の生成を停止し、送信処理を停止する。これにより、実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、他のシステムとの間で通信信号の干渉を低減する。
【0022】
また、実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、キャリアセンス期間Tcsを設けるために、チャープ信号の生成タイミングが間欠的になる。そこで、実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、多重数の減少を防ぐための構成をチャープ信号の生成に適用する。
【0023】
以下では、実施の形態1にかかるデータ通信システムを構成する送信局と受信局の構成について詳細に説明する。
【0024】
図3に実施の形態1にかかるデータ送受信システムの送信局1のブロック図を示す。図1に示すように、送信局1は、送信処理装置10、時刻信号受信アンテナ11、送信アンテナ12、キャリアセンスアンテナ13を有する。また、送信処理装置10は、送信側受信部21、送信側タイミング信号生成部22、同期時刻設定値保持部23、キャリアセンス判定部24、ローノイズアンプ25、ローカル発振器26、キャリアセンス周波数変換部27、送信側チャープ信号生成部28、周波数オフセット設定値保持部29、データ信号生成部30、変調器31、送信周波数変換部32、パワーアンプ33、を有する。
【0025】
送信側受信部21は、時刻信号受信アンテナ11により時刻信号を受信し、受信した受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する。より具体的には、送信側受信部21は、GNSS、特定エリアの測位衛星である準天頂衛星、もしくはシステムでの通信フレームの時刻同期を実現するための無線ビーコン信号などを時刻信号として時刻信号受信アンテナ11を介して受信する。そして、送信側受信部21は、この時刻信号を分離することにより時刻同期を実現するための時刻値を抽出する。GNSS等複数の衛星から、当該送信局の位置及び時刻を測位する場合においては、送信側受信部21は、衛星局毎に割り振られた符号により相互分離して受信する仕組みを有する。
【0026】
送信側タイミング信号生成部22は、送信側受信部21が出力する時刻値が同期時刻設定値に達したことに応じてキャリアセンス判定部24と送信側チャープ信号生成部28を、時刻値が次の同期時刻設定値(例えば同期時刻toi)に達するまでの期間に排他的に動作させる。以下の説明では、送信側受信部21は、送信側チャープ信号生成部28を動作させた後にキャリアセンス判定部24を動作させる。また、送信側タイミング信号生成部22がキャリアセンス判定部24に動作開始を指示するタイミングは、同期時刻toiからスイープ単位期間Tが経過した後のタイミングである。ここで、キャリアセンス判定部24が動作するタイミングは以下では特にキャリアセンス期間Tcsと称す。
【0027】
同期時刻設定値保持部23は、同期時刻設定値を保持する保持部である。この同期時刻設定値は、実施の形態1にかかるデータ通信システムに属する送信局に対して同一値が設定されるものである。また、同期時刻設定値は、外部から書き換えることが可能な構成となっていても良い。
【0028】
ローノイズアンプ25は、キャリアセンスアンテナ13により受信された他システムのヤリア信号を送信処理装置10内に伝達する。ローカル発振器26は、他システムのキャリア信号を内部で処理可能なIF周波数に変換する際に用いるローカル信号を生成する。キャリアセンス周波数変換部27は、ローカル発振器26から出力されるローカル信号を用いて他システムで利用されているキャリア信号の周波数を送信処理装置10内で処理可能なIF周波数に変換する。キャリアセンス周波数変換部27が出力信号をキャリアセンス判定部24に出力される。また、キャリアセンス周波数変換部27によりIF周波数に変換されるキャリア信号は、送信局1が利用するキャリア信号と同一周波数帯かつ同一チャネルのものとなり、キャリアセンス判定部24に出力される。
【0029】
キャリアセンス判定部24は、自システムが利用する周波数帯及びチャネルと同一の周波数帯かつチャネルを利用する他システムの無線信号の有無を判定する。キャリアセンス判定部24は、検出された他キャリアの信号レベルが、規定される信号レベルを超えることが特定された場合、データ信号生成部30及び送信側チャープ信号生成部28に対して、同期時刻toiを開始時刻とするデータ送信を停止し、さらにその先の同期時刻toi+1での送信の可否を判定する動作に移行する。
【0030】
ここで、図3では、送信アンテナ12とキャリアセンスアンテナ13を別に示したが、送信期間とキャリアセンス期間は重複しないため、時分割で、信号送信及びキャリアセンス受信を切り替えることにより送信アンテナ12とキャリアセンスアンテナ13を1つのアンテナを共用する構成としてもよい。
【0031】
送信側チャープ信号生成部28は、送信側チャープ信号を生成する。また、周波数オフセット設定値保持部29には、周波数オフセット設定値が保持される。実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、送信局毎に送信側チャープ信号生成部28の動作開始時点(例えば同期時刻toi)におけるチャープ信号の開始周波数のシフト量が設定される。周波数オフセット設定値保持部29に保持される周波数オフセット設定値はこのオフセット量を指定する値である。この周波数オフセット設定値は、外部から書き換えることが可能な値である。
【0032】
データ信号生成部30は、受信局に送信するデータを生成する。データ信号生成部30は、送信側タイミング信号生成部22が送信側チャープ信号生成部28を動作させるタイミングであって、キャリアセンス判定部24が他システムのキャリア信号がないと判定した場合にデータ信号を生成する。
【0033】
変調器31は、データ信号でチャープ信号を変調する。送信周波数変換部32は、ローカル信号を用いてチャープ信号を無線周波数に変換する。パワーアンプ33は、周波数変換部が出力した信号を用いて送信アンテナ12を駆動する。
【0034】
続いて、実施の形態1にかかるデータ通信システムの受信局2について詳細に説明する。図4に実施の形態1にかかるデータ通信システムの受信局2のブロック図を示す。図4に示すように、受信局2は、受信処理装置40、受時刻信号受信アンテナ41、受信アンテナ42を有する。また、受信処理装置40は、受信側受信部51、受信側タイミング信号生成部52、タイミングスケジュール保持部53、ローノイズアンプ54、周波数変換部55、ローカル発振器56、周波数オフセット設定値保持部57、受信側チャープ信号生成部58、変調器59、データ信号復調部60を有する。
【0035】
受信側受信部51は、送信局1の送信側受信部21と実質的に同じ動作をするものである。つまり、受信側受信部51は、受時刻信号受信アンテナ41により時刻信号を受信し、受信した受信した信号を復調して現在時刻を示す時刻値を出力する。より具体的には、受信側受信部51は、GNSS、特定エリアの測位衛星である準天頂衛星、もしくはシステムでの通信フレームの時刻同期を実現するための無線ビーコン信号などを時刻信号として受時刻信号受信アンテナ41を介して受信する。そして、受信側受信部51は、この時刻信号を分離することにより時刻同期を実現するための時刻値を抽出する。GNSS等複数の衛星から、当該送信局の位置及び時刻を測位する場合においては、受信側受信部51は、衛星局毎に割り振られた符号により相互分離して受信する仕組みを有する。
【0036】
受信側タイミング信号生成部52は、時刻値を受信して、送信局1に同期させて受信側チャープ信号生成部58の動作スケジュールが記述されたタイムスケジュールに基づき受信側チャープ信号生成部58を動作させる。受信局2では、このタイムスケジュールをタイミングスケジュール保持部53に保持する。タイムスケジュールは、外部から書き換え可能なものであってもよい。また、受信側タイミング信号生成部52は、タイムスケジュールに従ってデータ信号復調部60の動作を制御する。
【0037】
ローノイズアンプ54は、受信アンテナ42を介して受信される受信信号を受信局2内に伝達する。周波数変換部55は、ローカル発振器56が生成するローカル信号を用いて受信信号の周波数を受信局2で処理可能なIF周波数に変換する。変調器59は、受信側チャープ信号生成部58が出力するチャープ信号を用いて変調して、変調後の信号をデータ信号復調部60に出力する。この受信側チャープ信号生成部58では、受信用チャープ信号を受信信号に掛け合わせることで復調処理を行うことで受信信号に含まれる送信用チャープ信号が取り除かれる。また、復調後の信号は、送信局毎に設定された固有の周波数シフト量を有する信号により周波数多重化されたデータ信号である。データ信号復調部60では、周波数多重化されたデータ信号を一括して復調する。
【0038】
受信側チャープ信号生成部58は、受信側チャープ信号を生成する。このチャープ信号は、送信側チャープ信号と逆の勾配を持つチャープ信号である。受信局2では、このような受信側チャープ信号を用いることで複数局の同時受信を行っているが、マッチドフィルタを用いる復調方法もある。また、受信側チャープ信号生成部58は、生成開始時点での周波数が基本チャープ信号に対して周波数オフセット設定値保持部57に保持された周波数オフセット設定値の大きさに応じた周波数オフセット量を有するチャープ信号を生成する。
【0039】
続いて、実施の形態1にかかるデータ通信システムで用いられるチャープ信号について説明する。そこで、図5に実施の形態1にかかるデータ通信システムで用いるチャープ信号を説明する図を示す。図5で示したチャープ信号は、送信局1で生成される送信側チャープ信号の一例である。
【0040】
図5に示すように、実施の形態1にかかる送信局1では、送信側チャープ信号生成部28が生成するチャープ信号は、スイープ単位期間Tをかけて周波数が変化帯域幅Bの範囲をスイープするチャープ信号を生成する。ここで、以下の説明では、チャープ信号のうち変化帯域幅Bの最低周波数をスタートしてスイープ単位期間Tの終了時点の周波数が変化帯域幅Bの最高周波数に達する信号を基本チャープ信号と称す。
【0041】
また、送信側チャープ信号生成部28では、周波数オフセット設定値に基づきチャープ信号の生成開始時点の周波数が変化帯域幅Bの範囲内でオフセットされた周波数となるチャープ信号を生成する。図5ではこのようなオフセットを有するチャープ信号を、周波数オフセットfsを有するチャープ信号として示した。
【0042】
ここで、実施の形態1にかかる送信側チャープ信号生成部28で生成されるチャープ信号の時刻tにおける周波数fc(t)は、(1)式で表わされる。
【数1】
ここでfo(t)は、基本チャープ信号の時刻tにおける周波数であり、Bはチャープ信号の変化帯域幅Bである。また、基本チャープ信号の時刻0(生成開始時点)の周波数は0Hzとする。つまり、送信側チャープ信号生成部28が生成するチャープ信号は、チャープ信号の周波数のうち最も低い周波数をゼロとした場合に、チャープ信号の各時刻の周波数を、変化帯域幅を法とする剰余数により決定される周波数を有する。このようなチャープ信号は、周波数オフセットを有するチャープ信号であっても変化帯域幅Bの範囲内で周波数が変化するものとなる。
【0043】
また、図5に示すように、実施の形態1にかかる送信局1は、同期時刻toiの周期で繰り返されるように設定され、同期時刻toiが到来する毎に1つのスイープ単位期間Tと、1つのキャリアセンス期間Tcsとが繰り返し実行されるように構成される。図5に示すように、送信局1は、キャリアセンス期間Tcsにおいては、チャープ信号を用いた通信は行わずに、キャリアセンス判定部24を用いたキャリアセンス処理を行う。そして、キャリアセンス処理において他のシステムの無線信号のうち同時刻で自システムと同一周波数帯、かつ、同一チャネルの無線信号がなければ、次の同期時刻toiから再度チャープ信号を用いた通信を行う。一方、送信局1は、キャリアセンス処理において他のシステムの無線信号のうち自システムと同一周波数帯、かつ、同一チャネルの無線信号があると判断した場合は、次の同期時刻toiが到来してもチャープ信号を用いた通信は行わずにキャリアセンス処理を継続する。
【0044】
実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、送信局毎に異なる周波数オフセット設定値を設定することで多重化を行う。そこで、この多重化について説明する。そこで、図6に実施の形態1にかかるデータ通信システムにより多重化されたチャープ信号を説明する図を示す。
【0045】
図6に示すように、実施の形態1にかかるデータ通信システムにおいて多重化を行う場合、送信局毎に異なる大きさの周波数オフセット設定値を与えることで、同期時刻toiにおける周波数が異なる複数のチャープ信号を生成する。これにより、実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、同一時刻において複数の周波数のチャープ信号が混在する状態となり、チャープ信号の数に応じた多重数の多重化を実現する。図6に示す例では、多重数Nが12となる例を示した。
【0046】
ここで、多重数をN(N=0~N-1)とする場合にn番目のチャープ信号に設定する周波数オフセット設定値について説明する。周波数オフセット設定値により指定されるn番目のチャープ信号の周波数オフセットfsnは、(2)式で表わされる。
【数2】
【0047】
ここで、上記説明では、多重数の上限をNとしただけで、N=0~N-1のすべてを常に多重化する必要はなく、実際に利用する場合、必要な多重数に対応してnは離散的な整数をとればよい。また、隣接する番号のチャープ信号に設定される周波数オフセットfsの差fdは、通常各チャープ信号に重畳される情報の帯域幅bの2倍程度以上とすることが通例である(fdΔ≧2b)が、OFDM変調の場合も同様に、各チャープ信号同士が直交するよう配置し、多重化チャープ信号間の干渉を軽減する様決定してもよい。この場合、直交化の最小条件は、チャープ信号のスイープ単位期間をTとしたとき、fd=1/T≒bとなる。さらに、ここで次に述べる理由から等間隔の周波数間隔でチャープ信号を並べるのが有効ではあるが、相互の周波数間隔が情報の帯域幅bに比べて広く取れるのであれば、不等間隔であってもかまわない。
【0048】
ここで、等間隔の周波数間隔でチャープ信号を並べることの有効性について以下で説明する。チャープ信号でデジタル処理するプロセスにおいて、チャープ信号全体の情報帯域幅はBであるため、サンプリング定理により複素サンプリングした際の複素サンプリング間隔tdは、変化帯域幅Bの逆数となる。なお、実数サンプリングの場合は2Bの逆数でサンプリングして、イメージ周波数の応答を除去することでも算出可能である。複素サンプリング間隔tdは、(3)式で表わすことができる。
【数3】
【0049】
続いて、複素サンプリング間隔tdでサンプリングされた時刻mtdにおけるチャープ信号の離散サンプリング値S(mtd)は(4)式により与えられる。
【数4】
【0050】
ここで、A(mtd)は時刻mtdにおける信号の振幅(実数)、2πf(mtd)・mtdはチャープ信号の位相項となる。また、f(mtd)は時刻mtdにおける瞬時周波数であり、mはサンプリングポイント数をMとしたとき、m=0,1,・・・Mにて与えられる。
【0051】
さらに、(4)式において、時刻mtdにおける瞬時周波数f(mtd)が(5)式で与えられるf’(mtd)である場合について検討する。
【数5】
そして、(5)式を(4)式に代入して、さらに(3)式の関係を用いると、瞬時周波数f’(mtd)である場合のサンプリング値S’(mtd)は、(6)式で表わされる。
【数6】
(6)式から変化帯域幅Bで帯域制限されたチャープ信号を、(3)式で与えられるサンプリング間隔で信号を複素サンプリングした場合、各時刻の瞬時周波数は、変化帯域幅Bだけ周波数シフトしても等価となることがわかる。
【0052】
この(6)式の関係を用いると、図5で示される、基本チャープ信号の各時刻の周波数を変化帯域幅Bを法とする剰余数だけ周波数オフセットした周波数を持つチャープ信号は、(3)式で示すサンプリング間隔で複素サンプリングすることにより、基本チャープ信号の各時刻の周波数を、単純に周波数オフセットfsnだけ周波数をオフセットした周波数を持つチャープ信号と等価となることがわかる。このことを説明する図を図7に示す。
【0053】
図7では、周波数オフセットfsに応じて基本チャープ信号の周波数をオフセットしたチャープ信号に対して複素サンプリング間隔tdでサンプリングしたサンプリング値は、チャープ信号の各時刻の周波数fc(t)を、変化帯域幅Bを法とする剰余数により決定される周波数を有するチャープ信号のサンプリング値と等価となることを示した。
【0054】
ここで、基本チャープ信号を、振幅および位相を用いた複素表記にすると、基本チャープ信号Co(mtd)は、(7)式で表わすことができる。
【数7】
ここで、チャープ信号Co(mtd)は時刻mtdでサンプリングされた基本チャープ信号Co(複素表示)、Ao(mtd)は時刻mtdでの基本チャープ信号Coの信号振幅(実数)、(2πfo(mtd)・mtd)は時刻mtdでの基本チャープ信号Coの信号位相(fo(mtd)は基本チャープ信号の周波数を示す変数)である。
【0055】
また、(7)式同様に、n番目のチャープ信号に関して、変化帯域幅Bを法とする剰余数だけ周波数オフセットした周波数を持つn番目のチャープ信号Cn(t)は時刻mtdでサンプリングすることにより、(8)式で表される。
【数8】
ここで、チャープ信号Cn(mtd)は時刻mtdでサンプリングされたn番目のチャープ信号Cn(複素表示)、An(mtd)は時刻mtdでのn番目のチャープ信号Cnの信号振幅(実数)、(2πfn(mtd)・mtd)は時刻mtdでのn番目のチャープ信号Cnの信号位相(fn(mtd)はn番目のチャープ信号の周波数を示す変数)である。
この(8)式は、(6)式の関係を考慮すると(9)式と等価と考えることができる。
【数9】
ここで、(fn(mtd)+B)は時刻mtdでの信号位相である。
そして、(3)式の関係から、(9)式で示されるチャープ信号は、(10)式のようにさらに変形することができる。
【数10】
【0056】
そして、周波数間隔を一定とした場合、チャープ信号のオフセット周波数fsnがn×B/Nである関係を(10)式に適用すると、n番目のチャープ信号は(11)式で表わされる。
【数11】
従って、周波数オフセットしたチャープ信号は、基本チャープ信号Coを、単純に周波数オフセットfsnだけ周波数シフトした信号に各々の情報信号が重畳された信号として扱うことができることがわかる。
【0057】
また、(7)式及び(11)式において、n番目(n=0~N-1)のチャープ信号に乗せる情報信号An(t)自体を複素振幅に拡張しても、(7)式、(11)式と同様に、複素サンプリング間隔mtdでサンプリングすることにより、n番目のチャープ信号C(t)nのサンプリング値Cn(mtd)は、(12)式で表わすことができる。
【数12】
(12)式において、nはn=0~N-1に、An(mtd)は複素振幅を持つ情報信号に拡張される。
【0058】
ここで、実施の形態1にかかるデータ通信システムにおける、チャープ信号の送受信を考えると、(12)式で与えられたチャープ信号を送信局1で生成し、受信局2で送信側受信側間の伝搬遅延を考慮したサンプリング時刻の原点と、基本チャープ信号の瞬時周波数fo(t)が既知であるとすれば、受信側で、送信信号(7)式と各時刻で複素共役となる(13)式で与えられる瞬時周波数を持つ逆位相傾斜のチャープ信号Ci(mtd)を掛け合わせる場合、各サンプリング時刻毎にCi(mtd)を掛け合わされた受信信号Cr(mtd)は、n=0を例をとれば、(14)式の様に変形される。
【数13】
【数14】
ここで、(14)式は、n=0となる基本チャープ信号に対応するものであり、Lossは、送信側受信側間の伝搬損失である。(12)式で与えられる受信信号は、チャープ信号の周波数搬送波が除去され、情報信号Ao(t)を複素サンプリング間隔tdでサンプリングしたA(t)o(mtd)として検出される。
【0059】
周波数オフセットした周波数により情報信号をもつチャープ信号Cn(t)についても時刻mtdでサンプリングした信号は、基本チャープ信号同様に(13)式で表わされる受信側チャープ信号を掛け合わせることにより、
【数15】
となり、固定周波数fsnを搬送波とする情報信号An(mtd)を持つ信号に変換される。これら(14)式、(15)式で与えられる複素サンプリング間隔tdでサンプリングされた多重化信号は、例えば各々の搬送波に対応するデジタルフィルタで分離し、各情報信号を復調することができることがわかる。
【0060】
ここで、図8に実施の形態1にかかるデータ通信システムにおける受信時の複素サンプリング点を説明する図を示す。図8は、(3)式のサンプリング間隔tdで受信信号を複素サンプリングした後、復調時に(13)式の信号を掛け合わせた後の多重化信号の概略を示す説明図である。
【0061】
また、図8に示す例は、逆傾斜のチャープ信号を表す(13)式を受信信号にかけることにより復調しているが、マッチドフィルタを用いることによっても自システムのチャープ信号の検出できる。更に、図8では、周波数変化率が時間に対して一定なリニアチャープ信号の例を示したが、周波数変化率が時間と共に変化するノンリニアチャープ信号を用いても周波数変化率が既知であれば、変化帯域幅Bを法とする剰余数により決定される周波数を有するチャープ信号を用いることにより、同様な効果を得ることができる。
【0062】
上記説明より、実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、送信局1において他通信期間中にキャリアセンス処理を行うためのキャリアセンス期間Tcsを設けることで他システムが自システムと同一周波数帯、かつ、同一チャネルを用いた通信を行っているか否かを判断する。そして、自システムと同一周波数帯、かつ、同一チャネルを用いた通信が行われている場合は、自システムの通信を一時的に停止する。これにより、実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、他システムとの間で生じる干渉を抑制することができる。
【0063】
また、実施の形態1にかかるデータ通信システムでは、変化帯域幅を法とする剰余数により決定される周波数を有するチャープ信号を用いることにより、多重数を犠牲にすることなくキャリアセンスを行うことが可能になる。
【0064】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1 送信局
2 受信局
10 送信処理装置
11 時刻信号受信アンテナ
12 送信アンテナ
13 キャリアセンスアンテナ
21 送信側受信部
22 送信側タイミング信号生成部
23 同期時刻設定値保持部
24 キャリアセンス判定部
25 ローノイズアンプ
26 ローカル発振器
27 キャリアセンス周波数変換部
28 送信側チャープ信号生成部
29 周波数オフセット設定値保持部
30 データ信号生成部
31 変調器
32 送信周波数変換部
33 パワーアンプ
40 受信処理装置
41 受時刻信号受信アンテナ
42 受信アンテナ
51 受信側受信部
52 受信側タイミング信号生成部
53 タイミングスケジュール保持部
54 ローノイズアンプ
55 周波数変換部
56 ローカル発振器
57 周波数オフセット設定値保持部
58 受信側チャープ信号生成部
59 変調器
60 データ信号復調部
B 変化帯域幅
T スイープ単位期間
Tcs キャリアセンス期間
toi 同期時刻
Ts シフト時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8