(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157755
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20231019BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20231019BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20231019BHJP
H04N 23/57 20230101ALI20231019BHJP
H04N 23/52 20230101ALI20231019BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20231019BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
G03B17/02
G03B17/55
H04N5/225 700
H04N5/225 430
G03B30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067864
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
2H104
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AD02
2H044AE06
2H044AJ04
2H100EE05
2H104CC04
5C122DA14
5C122EA02
5C122EA57
5C122FB03
5C122FB08
5C122GE06
5C122GE11
5C122GE14
5C122GE17
(57)【要約】
【課題】レンズ鏡筒の軸方向に沿う導電路を有するレンズユニットを要する技術分野において量産性を高める技術を提供する。
【解決手段】レンズユニット(101)において、導電部材(3)は、レンズ鏡筒(2)内に配置されるヒーター(4)にレンズ鏡筒(2)内の段部(2b)で露出して接し、かつレンズ鏡筒(2)の像面側端部で露出している。レンズ鏡筒(2)は、導電部材(3)と一体化しているインサート成形品である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒に配置される電気的機能部品と、
前記レンズ鏡筒の表面に露出して前記電気的機能部品に電気的に接する出力端子および前記レンズ鏡筒における前記出力端子よりも像面側で露出する入力端子を有する導電部材と、
を有し、
前記レンズ鏡筒は、前記導電部材が一体化しているインサート成形品である、レンズユニット。
【請求項2】
前記入力端子が、前記レンズ鏡筒の外周面に露出している、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記入力端子が、前記レンズ鏡筒の像面側の端面に露出している、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記レンズ鏡筒は、第一筒部と、前記第一筒部の軸に交差する方向に沿って外側に拡がる段部を介して物体側に連なる、前記第一筒部よりも大きな径を有する第二筒部と、を含み、
前記入力端子は、前記段部の像面側の面に露出している、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記レンズ鏡筒は、第一筒部と、前記第一筒部の軸に交差する方向に沿って外側に拡がる段部を介して物体側に連なる、前記第一筒部よりも大きな径を有する第二筒部と、を含み、
前記出力端子が、前記段部の物体側の面に露出している、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記レンズ鏡筒は、第一筒部と、前記第一筒部の軸に交差する方向に沿って外側に拡がる段部を介して物体側に連なる、前記第一筒部よりも大きな径を有する第二筒部と、を含み、
前記出力端子が前記第二筒部の内周面に露出している、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記レンズ鏡筒は、第一筒部と、前記第一筒部の軸に交差する方向に沿って外側に拡がる段部を介して物体側に連なる、前記第一筒部よりも大きな径を有する第二筒部と、を含み、
前記出力端子が前記第二筒部の外周面に向けて露出している、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記導電部材は、前記レンズ鏡筒の軸方向に沿って見たときに、前記レンズ鏡筒の周方向に沿って湾曲している形状に形成されている部材である、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記導電部材は、前記レンズ鏡筒の径方向に折り曲げられていてもよい棒状の部材である、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記導電部材は、前記レンズ鏡筒の径方向に折り曲げられていてもよい板状の部材である、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項11】
前記レンズ鏡筒の軸を中心とするn回対称(ただしn≧2)の位置に位置しているn個の前記導電部材を有している、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項12】
前記レンズ鏡筒の軸を中心としたときの非対称の位置にn個(ただしn≧2)の前記導電部材を有している、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項13】
前記電気的機能部品が前記レンズ鏡筒の内側に周設されている、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項14】
前記電気的機能部品が前記レンズ鏡筒の外側に周設されている、請求項7に記載のレンズユニット。
【請求項15】
前記レンズ鏡筒は、前記導電部材における前記入力端子および前記出力端子以外の主要部分を内包している、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項16】
前記レンズ鏡筒は、内筒と外筒との二重管構造を有し、
前記内筒および前記外筒の一方の周面に、前記導電部材における前記入力端子および前記出力端子以外の主要部分が露出し、
前記内筒および前記外筒の他方が前記内筒および前記外筒の一方に嵌合して前記主要部分を覆っている、
請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のレンズユニットと撮像素子とを有するカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転の補助、衝突防止および運転の記録などの目的で自動車に車載カメラが搭載されている。このような車載カメラでは、寒冷地でのレンズの氷結、結露および曇りを防止するために、レンズを加温するためのヒーターを有するレンズユニットが求められている。このようなレンズユニットでは、通常、ヒーターはレンズ鏡筒の前部(物体側)に搭載され、ヒーターへの電力供給のための接点はレンズ鏡筒の後部(像面側)に設けられる。よって、当該レンズユニットは、レンズ鏡筒の前部から後部まで通電可能に構成する必要がある。
【0003】
このように、レンズ鏡筒の前部にヒーターを有し、レンズ鏡筒の後部からヒーターに通電可能なレンズユニットには、レンズ鏡筒の軸方向に沿って貫通孔を形成し、当該貫通孔に配線を通すことによってヒーターに通電可能とするレンズユニットが知られている。当該レンズユニットでは、貫通孔の長さを限定することでレンズ鏡筒の加工性の難易度を減少させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、レンズ鏡筒の前後方向に配線を配置する場合に配線またはフレキシブル基板などの通電用の部品を利用する場合、限られたスペースに当該部品を配置する必要がある。このため、組み立ての難易度が大きく上がってしまい、生産性を高めることが困難となる。このように、従来技術には、量産性の観点から改善の余地が残されている。
【0006】
本発明の一態様は、レンズ鏡筒の軸方向に沿う導電路を有するレンズユニットを要する技術分野において量産性を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るレンズユニットは、レンズを保持するレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒に配置される電気的機能部品と、前記レンズ鏡筒の表面に露出して前記電気的機能部品に電気的に接する出力端子および前記レンズ鏡筒における前記出力端子よりも像面側で露出する入力端子を有する導電部材と、を有し、前記レンズ鏡筒は、前記導電部材が前記レンズ鏡筒と一体化しているインサート成形品である。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るカメラモジュールは、上記のレンズユニットと撮像素子とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、レンズ鏡筒の軸方向に沿う導電路を有するレンズユニットを要する技術分野において量産性を高める技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るレンズユニットの組み立て方法を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係るカメラモジュールの構成を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態3に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態3に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態4に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図10】本発明の実施形態4に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態5に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図12】本発明の実施形態5に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態6に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図14】本発明の実施形態6に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【
図15】本発明の実施形態7に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図16】本発明の実施形態7に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【
図17】本発明の実施形態8に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図18】本発明の実施形態8に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【
図19】本発明の実施形態9に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図20】本発明の実施形態9に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【
図21】本発明の実施形態10に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図22】本発明の実施形態10に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
[レンズユニットの構成]
図1は、本発明の実施形態1に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図1に示されるように、レンズユニット101は、レンズL1~L5、レンズ鏡筒2、導電部材3、ヒーター4およびOリング5を有している。
【0013】
<レンズ鏡筒>
レンズ鏡筒2は、樹脂製である。レンズ鏡筒2の材料の樹脂は、後述の導電部材3とのインサート成形が可能な樹脂であればよい。樹脂は一種でもそれ以上でもよい。このような樹脂材料の例には、レニー(登録商標)およびポリフェニレンサルファイド(PPS)などのスーパーエンジニアリングプラスチックが含まれる。レンズ鏡筒2の樹脂材料は、本実施形態の効果が得られる範囲において、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤およびフィラーなどの添加剤を含んでいてもよい。車載レンズは、自動運転またはドライバーのアシストおよび周辺監視など、車の運用上において搭乗者の安全および安心に関する用途で利用される。そのため、車載レンズには高い信頼性を求められる。上記のスーパーエンジニアリングプラスチックは、高い耐熱性、耐久性および寸法安定性を有し、また金属部品と比べ製造コストが低く、大量生産に向いている。
【0014】
レンズ鏡筒2は、像面側から順に、第一筒部2a、段部2bおよび第二筒部2cを含む。第一筒部2aは、段部2bよりも像面側の部分である。段部2bは、第一筒部2aの軸に交差する方向(例えば当該軸に直交する方向)に沿って外側に拡がる部分である。第二筒部2cは、段部2bから物体側に連なる部分であり、第一筒部2aよりも大きな径を有する。
【0015】
レンズ鏡筒2は、筒内にレンズL1~L5を保持している。レンズL1は、最も物体側に位置するレンズ(前玉レンズ)である。レンズL1は、第二筒部2cにおいて保持されている。以下、レンズL2~L5は、物体側から像面側に向けてこの順で第一筒部2aに保持されている。
【0016】
レンズL1~L5の材料は、十分な光透過性を有しており、一種でもそれ以上でもよい。レンズL1~L5の材料は、低コストおよび大量生産に適していることなどの観点から適宜に決めることができる。レンズL1~L5の材料の例には、ガラス、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリオレフィンが含まれる。
【0017】
<導電部材>
レンズ鏡筒2は、インサート成形品であり、導電部材3がレンズ鏡筒2と一体化している。
図2は、本発明の実施形態1に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
【0018】
導電部材3は、金属製の部品であり、例えば板金である。導電部材3の材料の金属は、導電性または加工性などの観点から適宜に選ぶことができ、一種でもそれ以上でもよく、当該金属の例には、銅およびアルミニウムが含まれる。
【0019】
導電部材3は、像面側から順に、入力端子3a、主要部分3bおよび出力端子3cを含んでいる。導電部材3の正面から見た形状は、略Iの字型である。
【0020】
入力端子3aは、レンズ鏡筒2における出力端子3cよりも像面側で露出しており、より具体的にはレンズ鏡筒2の像面側端部でレンズ鏡筒2の外周面に露出している。入力端子3aは、レンズ鏡筒2の周方向を長手方向とする略矩形の部分であり、レンズ鏡筒2の周方向に沿って湾曲している。
【0021】
出力端子3cは、レンズ鏡筒2の表面に露出しており、より具体的にはレンズ鏡筒2における段部2bの物体側の面に露出している。段部2bの物体側の面の形状は環状であり、出力端子3cの形状は、段部2bの周方向を長手方向とし、レンズ鏡筒2の周方向に沿って湾曲する円弧状である。出力端子3cは、段部2bにおいて、後述するヒーター4に電気的に接している。
【0022】
主要部分3bは、入力端子3aと出力端子3cとを繋ぐ部分であり、レンズ鏡筒2の軸方向を長手方向とする略矩形の部分である。主要部分3bは、レンズ鏡筒2の周方向に沿って湾曲している。このように、導電部材3は、全体的に、レンズ鏡筒2の軸方向に沿って見たときに、レンズ鏡筒2の周方向に沿って湾曲している形状に形成されている。
【0023】
また、主要部分3bは、レンズ鏡筒2の第一筒部2aに内包されており、レンズ鏡筒2の内側および外側のいずれにも露出しない。このように、レンズ鏡筒2は、導電部材3の主要部分3bを内包している。
【0024】
なお、レンズユニット101は、二つの導電部材3を有している。二つの導電部材3は、レンズ鏡筒2の軸を挟んで対向する位置に配置されている。このように、レンズユニット101は、二個の導電部材3を、レンズ鏡筒2の軸を中心とする二回対称の位置に有している。
【0025】
<ヒーター>
ヒーター4は、レンズ鏡筒2内に配置されている。ヒーター4は、通電によって機能を発現する電気的機能部品に該当する。
【0026】
より詳しくは、ヒーター4は、円環状の面ヒーターであり、レンズ鏡筒2内部の段部2bの表面上に、出力端子3cに接して配置されている。ヒーター4は、段部2bとレンズL1との間に介在しており、通電によってレンズL1の周縁部からレンズL1を加温する。このように、ヒーター4は、レンズ鏡筒2の内側に周設されている。
【0027】
<Oリング>
Oリング5は、レンズ鏡筒2の物体側の開口から嵌めこまれており、段部2bと第二筒部2cとの角に位置している。Oリング5は、第二筒部2cの内周面とレンズL1の像面側周縁部との両方に全周にわたって密着し、レンズ鏡筒2の物体側において、レンズ鏡筒2とレンズL1との間の隙間を塞いでいる。
【0028】
[レンズユニットの製造]
図3は、本発明の実施形態1に係るレンズユニットの組み立て方法を説明するための図である。レンズユニット101は以下のようにして製造される。
【0029】
まず、レンズ鏡筒2を用意する。レンズ鏡筒2は、導電部材3を金属部品とするインサート成形によって製造される。導電部材3は、入力端子3aおよび出力端子3cが露出する部分であることから、インサート成形時において、入力端子3aおよび出力端子3cを型内に固定することが可能である。また、導電部材3は、板金であることから、成形時に変形せず、また自動機で型内に組み立て可能な十分な強度を有する。よって、インサート成形で製造されたレンズ鏡筒2は、型によって規定される正確な形状を有し、レンズ鏡筒2において入力端子3aおよび出力端子3cが正確な位置で露出する。
【0030】
次いで、レンズL5から順次レンズをレンズ鏡筒2内に配置していく。レンズ鏡筒2へのレンズL1~L5の配置は、レンズ鏡筒の製造における公知の方法で実施すればよい。たとえば、
図3に示されるように、レンズL1~L5は、互いに間隔環を介してレンズ鏡筒2内に配置されてもよい。
【0031】
次いで、円環状のヒーター4を段部2bに載せる。ヒーター4は、段部2bに露出する出力端子3cに接触した状態でレンズ鏡筒2内に配置される。
【0032】
次いで、レンズL1を物体側からレンズ鏡筒2内に挿入し、段部2bに載置し、レンズ鏡筒2内に固定する。レンズL1の固定も、レンズ鏡筒の製造における公知の方法で実施すればよい。
【0033】
このように、レンズユニット101は、ヒーター4を配置する以外は、通常のレンズ鏡筒の製造と同様にして製造することが可能である。ヒーター4も、前玉レンズとレンズ鏡筒との隙間を塞ぐためのOリングなどのシール部材をレンズ鏡筒2に配置するのと同様の方法でレンズ鏡筒2に配置することが可能である。ヒーター4の配置は、ヒーター側の接点の位置合わせおよび当該接点の入力端子への接着によって実施することが可能である。
【0034】
[レンズユニットの特徴]
従来技術では、レンズ鏡筒に設けられた貫通孔にリード線またはフレキシブル基板などの柔軟な部品を挿通させる必要がある。大量生産が求められる車載カメラ用のレンズユニットは、自動組み立て機で組み立てを行う必要があるが、柔軟な配線またはフレキシブル基板の組込みは難易度が高く、自動組み立て機を用いる組み立ての実施が困難である。
【0035】
レンズユニット101では、レンズ鏡筒2と導通回路を構成する導電部材3とが一部品となっている。このため、レンズユニット101の組立工程において、レンズ鏡筒の軸方向に沿って配線を通す、難易度の高い工程を割愛することができる。また、レンズ鏡筒2と導通回路を構成する導電部材3とが一部品となっていることから、レンズユニットの部品点数がより少なくなる。さらに、レンズ鏡筒2の製造によって、高い組み立て精度で導電部材3をレンズ鏡筒2内に一体化することができる。よって、人手を用いた組立と比較して、組立の作業による構造のバラツキを低減させることができる。
【0036】
以上より、レンズユニット101は、自動組み立て機を用いる組み立てに適用することが可能であり、レンズユニットを高い組み立て精度で、かつ高い生産性で製造することが可能である。
【0037】
また、本実施形態では、導電部材3は、全体的にレンズ鏡筒2の周方向に沿って湾曲している形状に形成されており、また第一筒部2aの全長にわたって配置されている。よって、レンズ鏡筒2の寸法安定性の向上の観点から有利である。
【0038】
また、導電部材3の入力端子3aおよび出力端子3cは、いずれも、レンズ鏡筒2の周方向に細長な形状を有する。このため、インサート成形時の型内での導電部材3の位置決めを容易かつ確実にする観点から有利である。
【0039】
[カメラモジュール]
図4は、本発明の実施形態1に係るカメラモジュールの構成を模式的に示す図である。
図4に示されるように、カメラモジュール10は、レンズユニット101、ケーシング11および撮像素子12を有する。カメラモジュール10は、車載用カメラに用いられる。
【0040】
ケーシング11は、筐体であり、レンズユニット101のレンズ鏡筒2が挿入される開口部を有する。レンズユニット101は、当該開口部に挿入され、レンズ鏡筒2の段部でケーシング11の開口縁部に当接した状態でケーシング11に固定されている。
【0041】
撮像素子12は、ケーシング11の底における、レンズ鏡筒2の軸を中心とする位置に固定されている。撮像素子12は、イメージセンサであり、その例には、CMOS(相補型金属酸化物半導体)カメラおよびCCD(電荷結合素子)カメラが含まれる。
【0042】
カメラモジュール10は、その他に、レンズユニット101を作動させる種々の構成を含んでいる。たとえば、カメラモジュール10は、入力端子3aに接続される不図示の配線および電源をさらに備えている。
【0043】
カメラモジュール10は、レンズユニット101を有する。レンズユニット101は、前述したように従来技術に比べて、高い精度で簡易に組み立て可能である。したがって、カメラモジュール10も、従来技術に比べて高い生産性で製造することが可能である。
【0044】
また、カメラモジュール10において、レンズL1が最も大きな径を有する。このように物体側により大きな径のレンズの径が配置されるレンズの配置のカメラモジュール10の用途は、車載用カメラのうち、車外監視用の車載用カメラの用途に好適である。
【0045】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。以下の実施形態において、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0046】
〔実施形態2〕
図5は、本発明の実施形態2に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図6は、本発明の実施形態2に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
図5および
図6に示されるように、レンズユニット102は、導電部材3に代えて導電部材23を有する以外は、実施形態1のレンズユニット101と同様の構成を有している。
【0047】
導電部材23は、入力端子23a、主要部分23bおよび出力端子23cを含む。入力端子23aは、レンズ鏡筒2における出力端子23cよりも像面側で露出しており、より具体的にはレンズ鏡筒2の段部2bの像面側の面に露出している。入力端子23aの形状は、段部2bの周方向を長手方向とし、当該周方向に沿って湾曲する円弧状である。出力端子23cは、レンズ鏡筒2の段部2bの物体側の面に露出している。出力端子23cの形状も、段部2bの周方向を長手方向とし、当該周方向に沿って湾曲する円弧状である。主要部分23bは、入力端子23aと出力端子23cとを繋ぐ部分であり、レンズ鏡筒2の周方向に沿って湾曲している。
【0048】
レンズユニット102は、レンズユニット101と同様に自動組み立てを適用して製造することが可能であり、レンズユニット101と同様にしてカメラモジュールに搭載することが可能である。
【0049】
レンズユニット102では、レンズ鏡筒2の段部2bの厚さ程度の長さの導通路が導電部材23によって形成される。したがって、レンズユニット102は、カメラモジュールにおいて段部2bの像面側の面が対向する部分に、ヒーター4への電力供給用の配線が配置される形態に適用可能である。
【0050】
〔実施形態3〕
図7は、本発明の実施形態3に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図8は、本発明の実施形態3に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
図7および
図8に示されるように、レンズユニット103は、導電部材3に代えて導電部材33を有する以外は、実施形態1のレンズユニット101と同様の構成を有している。
【0051】
導電部材33は、入力端子3aに代えて入力端子33aを有する以外は、実施形態1の導電部材3と同様の構成を有している。入力端子33aは、第一筒部2aの像面側端部において、主要部分3bの端から第一筒部2aの径方向内側に延在している。入力端子33aの形状は、第一筒部2aの周方向を長手方向とし、レンズ鏡筒2の周方向に沿って湾曲する円弧状である。このように、入力端子33aは、レンズ鏡筒2における出力端子3cよりも像面側で露出しており、より具体的にはレンズ鏡筒2の像面側の端面に露出している。
【0052】
レンズユニット103は、レンズユニット101と同様に自動組み立てを適用して製造することが可能であり、レンズユニット101と同様にしてカメラモジュールに搭載することが可能である。
【0053】
レンズユニット103では、入力端子33aがレンズユニットの像面側の端面に配置される。レンズユニット103は、カメラモジュールにおいて、レンズユニットの像面側端面を支持する部分にヒーター4への電力供給用の配線が配置される形態に適用可能である。
【0054】
〔実施形態4〕
図9は、本発明の実施形態4に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図10は、本発明の実施形態4に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
図9および
図10に示されるように、レンズユニット104は、二つの導電部材3に代えて導電部材43を有する以外は、実施形態1のレンズユニット101と同様の構成を有している。
【0055】
導電部材43は、入力端子3aに代えて入力端子43aを有し、出力端子3cに代えて出力端子43cを有する以外は、実施形態1の導電部材3と同様の構成を有している。入力端子43aおよび出力端子43cは、いずれも、第一筒部2aの周方向の一方の方向に延在している以外は、入力端子3aおよび出力端子3cと同様に、レンズ鏡筒2の周方向に沿って湾曲する形状を有している。二つの導電部材43は、互いに並列している。このように、レンズユニット104は、レンズ鏡筒2の軸を中心としたときの非対称の位置に二つの導電部材43を有している。
【0056】
レンズユニット104は、レンズユニット101と同様に自動組み立てを適用して製造することが可能であり、レンズユニット101と同様にしてカメラモジュールに搭載することが可能である。
【0057】
レンズユニット104は、レンズ鏡筒2の周方向における一部分に集中して導電部材43を有する。よって、レンズユニット104は、カメラモジュールにおいて、ヒーター4への電力供給用の配線の配置の自由度が比較的低い形態に適用可能である。
【0058】
〔実施形態5〕
図11は、本発明の実施形態5に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図12は、本発明の実施形態5に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
図11および
図12に示されるように、レンズユニット105は、導電部材3に代えて導電部材53を有する以外は、実施形態1のレンズユニット101と同様の構成を有している。
【0059】
導電部材53は、主要部分3bに代えて主要部分53bを有し、出力端子3cに代えて出力端子53cを有する以外は、実施形態1の導電部材3と同様の構成を有している。主要部分53bは、段部2b内で外側に向けて折れ曲がって第二筒部2cの内周面まで至る、略L字型の部分である。出力端子53cは、主要部分53bの端から起立し、第二筒部2cの内周面に露出している。出力端子53cは、第二筒部2cの周方向を長手方向とする略矩形の部分であり、当該周方向に沿って湾曲している。
【0060】
レンズユニット105は、レンズユニット101と同様に自動組み立てを適用して製造することが可能であり、レンズユニット101と同様にしてカメラモジュールに搭載することが可能である。
【0061】
レンズユニット105は、ヒーター4の外周部でヒーター4に接する。レンズユニット105は、厚さが大きなヒーターなど、レンズ鏡筒2の軸に沿う方向に出力端子との接点を有する電気的機能部品に適用可能である。また、レンズユニット105は、第一筒部2aから段部2bを経て第二筒部2cに至る導電部材53を有することから、レンズ鏡筒2の寸法安定性を高める観点からより有利である。
【0062】
〔実施形態6〕
図13は、本発明の実施形態6に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図14は、本発明の実施形態6に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
図13および
図14に示されるように、レンズユニット106は、レンズ鏡筒2に代えてレンズ鏡筒62を有し、導電部材3に代えて導電部材63を有し、Oリング5に代えて押さえ環65を有している。それ以外は、レンズユニット106は、実施形態1のレンズユニット101と同様の構成を有している。
【0063】
レンズ鏡筒62は、略同径の筒状体であり、その内周側に、レンズ鏡筒62の径方向外側に拡がる段部62bを有する。段部62bは、レンズ鏡筒62の内周面に、全周にわたって形成されてもよいし、レンズ間に配置される環状のスペーサ(間隔環)によって形成されてもよい。レンズL1は、ヒーター4を介して段部62bで、レンズ鏡筒62の軸方向において係止されている。
【0064】
導電部材63は、主要部分3bに代えて主要部分63bを有し、出力端子3cに代えて出力端子63cを有する以外は、実施形態1の導電部材3と同様の構成を有している。主要部分63bは、レンズ鏡筒62の像面側端部においてレンズ鏡筒62の径方向外側に折れ曲がって入力端子3aに繋がる略L字型の部分である。出力端子63cは、物体側の端縁が段部62bに露出しており、それ以外は出力端子3cと同様である。
【0065】
押さえ環65は、レンズL1の周縁部に物体側から当接している。押さえ環65は、例えばその内周面に第一ねじ部を有し、当該第一ねじ部を、レンズ鏡筒62の外周面の物体側端部に形成されている第二ねじ部に螺合させることによってレンズ鏡筒62に固定されている。押さえ環65は、レンズL1の周縁部を押圧して当該周縁部に密着している。
【0066】
レンズユニット106は、レンズユニット101と同様に自動組み立てを適用して製造することが可能であり、レンズユニット101と同様にしてカメラモジュールに搭載することが可能である。
【0067】
レンズユニット106は、若干の形状の相違はあるものの、基本的な構造はレンズユニット101と同じである。このようなレンズユニット106を有するカメラモジュールの用途は、車載用カメラのうち、自動運転または走行状態の自動制御のためのセンシング用の車載用カメラの用途に好適である。
【0068】
〔実施形態7〕
図15は、本発明の実施形態7に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図16は、本発明の実施形態7に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
図15および
図16に示されるように、レンズユニット107は、導電部材3に代えて導電部材73を有する以外は、実施形態1のレンズユニット101と同様の構成を有している。
【0069】
導電部材73は、一様な丸棒状の部材である。導電部材73の一端はレンズ鏡筒2の像面側端面に露出しており、他端はレンズ鏡筒2内における段部2bに露出し、ヒーター4に接している。導電部材73の一端が入力端子に相当し、導電部材73の他端が出力端子に相当している。
【0070】
レンズユニット107は、レンズユニット101と同様に自動組み立てを適用して製造することが可能であり、レンズユニット101と同様にしてカメラモジュールに搭載することが可能である。
【0071】
レンズユニット107は、棒状の導電部材73を有することから、レンズ鏡筒2の軸方向における強度向上の観点からより有利である。また、レンズユニット107は、導電部材73の入手の容易さおよび金型内での固定の容易さの観点から、製造コストの削減および生産性の向上の観点からもより有利である。
【0072】
〔実施形態8〕
図17は、本発明の実施形態8に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図18は、本発明の実施形態8に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
図17および
図18に示されるように、レンズユニット108は、導電部材3に代えて導電部材83を有する以外は、実施形態1のレンズユニット101と同様の構成を有している。
【0073】
導電部材83は、レンズ鏡筒2の軸に沿う長手方向を有し、レンズ鏡筒2の径方向に折り曲げられている板状の部材である。導電部材83は、入力端子83a、主要部分3bおよび出力端子83cを有する。入力端子83aは、導電部材83の像面側端部においてレンズ鏡筒2の径方向外側に段折りに折られた部分であり、レンズ鏡筒2の外周面に露出している。出力端子83cは、導電部材83の物体側端部においてレンズ鏡筒2の径方向外側に折り曲げられた部分であり、レンズ鏡筒2の段部2bの物体側表面に露出している。
【0074】
レンズユニット108は、レンズユニット101と同様に自動組み立てを適用して製造することが可能であり、レンズユニット101と同様にしてカメラモジュールに搭載することが可能である。
【0075】
レンズユニット108は、適宜に折り曲げられた板状の導電部材83を有する。したがって、レンズユニット108は、導電部材83の入手の容易さおよび金型内での固定の容易さの観点から、製造コストの削減および生産性の向上の観点からより有利である。
【0076】
〔実施形態9〕
図19は、本発明の実施形態9に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図20は、本発明の実施形態9に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
図19および
図20に示されるように、レンズユニット109は、レンズ鏡筒2に代えてレンズ鏡筒92を有し、導電部材3に代えて導電部材63を有する以外は、実施形態1のレンズユニット101と同様の構成を有している。
【0077】
レンズ鏡筒92は、内筒921と外筒922との二重管構造を有している。
【0078】
内筒921は、第一筒部921a、第一筒部921aの径方向外側に拡がる段部921b、および、段部921bの外周縁部から物体側へ延在する第二筒部921c、を含む。段部921bは、貫通孔921dを有する。貫通孔921dは、後述の出力端子63cを挿通可能に形成されており、貫通孔921dの平面視したときの形状は、円弧状である。
【0079】
外筒922は、第一筒部922a、および、第一筒部922aの径方向外側に拡がる段部922b、を含む。外筒922は、導電部材93を一体的に有するインサート成形品である。
【0080】
導電部材63は、出力端子63cが段部922bの表面から突出しているが、主要部分63bは第一筒部922aに内包されている。入力端子3aは、第一筒部922aの像面側の外周面に露出している。
【0081】
レンズ鏡筒92は、内筒921に外筒922を、外筒922の物体側の開口から挿入することによって構成される。当該挿入により、外筒922の導電部材63の出力端子63cは、内筒921の貫通孔921dを挿通して内筒921の段部921bの表面に露出する。このように、二重管構造の一方の管構造体のみがインサート成形品であり、他方はインサート成形品ではない場合(単なる樹脂成形品である場合など)も、本発明におけるインサート成形品に該当する。
【0082】
レンズユニット109は、レンズユニット101と同様に自動組み立てを適用して製造することが可能であり、レンズユニット101と同様にしてカメラモジュールに搭載することが可能である。
【0083】
レンズユニット109は、内筒921と外筒922との二重管構造でレンズ鏡筒92が構成されている。内筒921は、すべてのレンズL1~L5を保持しており、これらのレンズの調芯を行った後に外筒922に嵌めこむことも可能である。このように、レンズユニット109は、製造工程の自由度を高める観点からより有利である。
【0084】
〔実施形態10〕
図21は、本発明の実施形態10に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
図22は、本発明の実施形態10に係るレンズユニットにおける導電部材の配置を説明するための斜視図である。
図21および
図22に示されるように、レンズユニット110は、導電部材3に代えて導電部材113を有し、ヒーター4に代えてヒーター114を有する以外は、実施形態1のレンズユニット101と同様の構成を有している。
【0085】
導電部材113は、入力端子3a、主要部分113bおよび出力端子113cを有する。主要部分113bは、第一筒部2aの物体側端部でレンズ鏡筒2の径方向外側へ折れ曲がり、段部2bの外周部に至る略L字型の部分である。出力端子113cは、主要部分113bの段部2b外周部からレンズ鏡筒2の軸方向に沿って物体側に延在する部分であり、段部2bの第二筒部2cの外側の表面に露出している。このように、出力端子113cは、第二筒部2cの外周面に向けて露出している。
【0086】
ヒーター114は、第二筒部2cの外周面における像面側で第二筒部2cに巻き付けられており、出力端子113cと接している。このように、ヒーター114は、レンズ鏡筒2の外側に周設されている。
【0087】
レンズユニット110は、レンズユニット101と同様に自動組み立てを適用して製造することが可能であり、レンズユニット101と同様にしてカメラモジュールに搭載することが可能である。
【0088】
レンズユニット110は、レンズ鏡筒2を介してレンズL1などの物体側のレンズを主に加温することが可能である。よって、レンズ鏡筒2内にヒーター用の空間を配置する必要がなくなり、体積のより大きいヒーターを使用可能である。また、レンズユニット110の製造において、ヒーター114を任意のタイミングで配置することが可能であり、製造工程の自由度を高める観点からより有利である。
【0089】
〔その他の実施形態〕
本発明の実施形態に係るカメラユニットの用途は、車載用カメラの用途でなくてもよい。また、電気的機能部品は、ヒーターに限らず、カメラユニットの用途または電気的機能部品を搭載することへの要求に応じて、適宜に決めればよい。たとえば、電気的機能部品は、ウォッシャー液を供給および除去するための部品であってもよいし、発光ダイオード(LED)などの電力供給を要する光学素子であってもよい。また、本発明の実施形態に係るレンズユニットは、前述の説明から明らかなように、様々な態様を含み、したがって様々なカメラモジュールの仕様に対応可能である。
【0090】
ヒーターは、その平面形状が円環状でなくてもよく、またレンズ鏡筒の周方向の全周にわたって連続して配置されていなくてもよい。たとえば、ヒーターは、複数の円弧状のヒーターの集合であってもよく、この場合、各ヒーターは当該周方向において断続的に配置されていてもよい。
【0091】
導電部材の設置数は2でなくてもよい。たとえば、導電部材は、一つでもよいし、三つ以上であってもよい。三つ以上の導電部材を有する場合、各導電部材の位置は、レンズ鏡筒の軸を中心としたときに互いに対称の位置であってもよいし、非対称の位置であってもよい。
【0092】
棒状の導電部材は、レンズ鏡筒の径方向に対して適宜に折り曲げられていてもよい。
【0093】
導電部材は、インサート成形品として、主要部分がレンズ鏡筒に内包されているが、主要部分もレンズ鏡筒の内周面または外周面に露出していてもよい。
【0094】
カメラモジュールの構成は、レンズユニットを搭載可能であればよく、限定されない。よって、本発明において、カメラモジュールは、種々の形態を採り得る。
【0095】
また、二重管構造のレンズ鏡筒では、内筒および外筒の一方の周面に主要部分が露出し、他方が一方に嵌合して主要部分を覆ってもよい。このような二重管構造を採用する場合では、インサート成形時における導電部材の固定を容易かつ確実にする観点からより有利である。
【0096】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明における第一の態様のレンズユニット(101)は、レンズを保持するレンズ鏡筒(2)と、レンズ鏡筒に配置される電気的機能部品(ヒーター4)と、レンズ鏡筒の表面に露出して電気的機能部品に電気的に接する出力端子(3c)およびレンズ鏡筒における出力端子よりも像面側で露出する入力端子(3a)を有する導電部材(3)と、を有し、レンズ鏡筒は、導電部材がレンズ鏡筒と一体化しているインサート成形品である。この構成によれば、従来の配線を貫通孔に通す場合に比べて、レンズ鏡筒の軸方向に沿う導電路を有するレンズユニットの量産性を高めることができる。
【0097】
本発明における第二の態様のレンズユニットは、前述の第一の態様において、入力端子が、レンズ鏡筒の外周面に露出していてもよい。この構成は、カメラモジュールにおいて電源との接続を容易にする観点からより一層効果的である。
【0098】
本発明における第三の態様のレンズユニットは、前述の第一の態様において、入力端子が、レンズ鏡筒の像面側の端面に露出していてもよい。この構成は、レンズユニットの端面を支持する構造を有するカメラモジュールにおいて、レンズユニットの支持を電源との接点に利用することができる。
【0099】
本発明における第四の態様のレンズユニットは、前述の第一の態様において、レンズ鏡筒は、第一筒部(2a)と、第一筒部の軸に交差する方向に沿って外側に拡がる段部(2b)を介して物体側に連なる、第一筒部よりも大きな径を有する第二筒部(2c)と、を含み、入力端子は、段部の像面側の面に露出していてもよい。この構成は、レンズユニットの段部に対向する位置に電源との接点を有するカメラモジュールに適用するのに有利である。
【0100】
本発明における第五の態様のレンズユニットは、前述の第一から第四の態様において、レンズ鏡筒は、第一筒部と、第一筒部の軸に交差する方向に沿って外側に拡がる段部を介して物体側に連なる、第一筒部よりも大きな径を有する第二筒部と、を含み、出力端子が、段部の物体側の面に露出していてもよい。この構成は、段部に載置されるヒーターなどの電気的機能部品と出力端子との接触性を高める観点からより一層効果的である。
【0101】
本発明における第六の態様のレンズユニットは、前述の第一から第四の態様において、レンズ鏡筒は、第一筒部と、第一筒部の軸に交差する方向に沿って外側に拡がる段部を介して物体側に連なる、第一筒部よりも大きな径を有する第二筒部と、を含み、出力端子が第二筒部の内周面に露出していてもよい。この構成は、レンズ鏡筒の軸方向に対して側方(径方向)から出力端子を接触させるべき電気的機能部品を有するレンズユニットに適用するのに有利である。
【0102】
本発明における第七の態様のレンズユニットは、前述の第一から第四の態様において、レンズ鏡筒は、第一筒部と、第一筒部の軸に交差する方向に沿って外側に拡がる段部を介して物体側に連なる、第一筒部よりも大きな径を有する第二筒部と、を含み、出力端子が第二筒部の外周面に向けて露出していてもよい。この構成は、レンズ鏡筒の外周面上に配置される電気的機能部品への通電を実現する観点からより一層効果的である。
【0103】
本発明における第八の態様のレンズユニットは、前述の第一から第七の態様において、導電部材は、レンズ鏡筒の軸方向に沿って見たときに、レンズ鏡筒の周方向に沿って湾曲している形状に形成されている部材であってもよい。この構成は、レンズ鏡筒の強度向上の観点からより一層効果的である。
【0104】
本発明における第九の態様のレンズユニットは、前述の第一から第七の態様において、導電部材は、レンズ鏡筒の径方向に折り曲げられていてもよい棒状の部材であってもよい。この構成は、レンズユニットの生産性を高める観点からより一層効果的である。
【0105】
本発明における第十の態様のレンズユニットは、前述の第一から第七の態様において、導電部材は、レンズ鏡筒の径方向に折り曲げられていてもよい板状の部材であってもよい。この構成は、レンズユニットの生産性を高める観点からより一層効果的である。
【0106】
本発明における第十一の態様のレンズユニットは、前述の第一から第十の態様において、レンズ鏡筒の軸を中心とするn回対称(ただしn≧2)の位置に位置しているn個の導電部材を有していてもよい。この構成は、温度変化などの通電によるレンズ鏡筒への影響を抑制する観点からより一層効果的である。
【0107】
本発明における第十二の態様のレンズユニットは、前述の第一から第十の態様において、レンズ鏡筒の軸を中心としたときの非対称の位置にn個(ただしn≧2)の導電部材を有していてもよい。この構成は、レンズユニットへ通電するための配線(入力端子に接続されるべき配線)の配置の自由度が低い構造のカメラモジュールへの適用に有利である。
【0108】
本発明における第十三の態様のレンズユニットは、前述の第一から第十二の態様において、電気的機能部品がレンズ鏡筒の内側に周設されていてもよい。この構成は、レンズユニットにおけるレンズに対して電気的機能を発現させるのに好適である。
【0109】
本発明における第十四の態様のレンズユニットは、前述の第七の態様において、電気的機能部品がレンズ鏡筒の外側に周設されていてもよい。この構成は、レンズユニットにおけるレンズに対する電気的機能を緩和させる観点からより一層効果的である。
【0110】
本発明における第十五の態様のレンズユニットは、前述の第一から第十四の態様において、レンズ鏡筒は、導電部材における入力端子および出力端子以外の主要部分(3b)を内包していてもよい。この構成は、レンズユニットにおける通電のロスを抑制する観点からより一層効果的である。
【0111】
本発明における第十六の態様のレンズユニットは、前述の第一から第十四の態様において、レンズ鏡筒は、内筒(921)と外筒(922)との二重管構造を有し、内筒および外筒の一方の周面に、導電部材における入力端子および出力端子以外の主要部分が露出し、内筒および外筒の他方が内筒および外筒の一方に嵌合して主要部分を覆っていてもよい。この構成は、レンズユニットの製造時における製造工程の自由度を高める観点からより一層効果的である。
【0112】
本発明における一態様のカメラモジュール(10)は、前述の第一から第十六の態様のいずれかのレンズユニットと撮像素子(12)とを有する。この構成によれば、レンズ鏡筒の軸方向に沿う導電路を有するレンズユニットを搭載するカメラモジュールにおいて、従来の配線を貫通孔に通す場合に比べて、量産性を高めることができる。
【0113】
このような構成によれば、車載用カメラに好適なレンズユニットを高い組み立て精度で量産することが可能である。これにより、自動車の自動運転などの自動化を推進する環境が整備されることが期待される。よって、本発明は、技術革新の拡大と持続可能な産業化の推進とに関する持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献することが期待される。
【0114】
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
2、62、92 レンズ鏡筒
2a、921a、922a 第一筒部
2b、62b、921b、922b 段部
2c、921c、922c 第二筒部
3、23、33、43、53、63、73、83、113 導電部材
3a、23a、33a、43a、83a 入力端子
3b、23b、53b、63b、113b 主要部分
3c、23c、33c、43c、53c、63c、83c、113c 出力端子
4、114 ヒーター
5 Oリング
10 カメラモジュール
11 ケーシング
12 撮像素子
65 押さえ環
101~110 レンズユニット
921d 貫通孔
L1~L5 レンズ