(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157769
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】光源装置および光測定装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/10 20060101AFI20231019BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20231019BHJP
G02F 1/365 20060101ALI20231019BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G01J3/10
G02F1/01 C
G02F1/365
G01N21/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067886
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】太田 彩
【テーマコード(参考)】
2G020
2G059
2K102
【Fターム(参考)】
2G020CB23
2G020CC02
2G020CC26
2G020CC47
2G020CD03
2G059GG01
2G059GG08
2G059GG09
2G059HH01
2G059JJ01
2G059JJ05
2G059JJ17
2G059KK01
2K102BA16
2K102BB01
2K102BB02
2K102BB03
2K102BD02
2K102DA04
2K102DA06
2K102DC07
2K102DC08
2K102DD07
2K102EA21
2K102EB06
2K102EB10
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB22
2K102EB29
(57)【要約】
【課題】光量変動を検出可能な光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置200は、波長掃引光L1を発生する。パルス光源210は、連続スペクトルを含むパルス光を生成する。分割器230は、広帯域パルス光L1aを、波長に応じて空間的に複数n個(n≧2)のビームに分割する。n本のファイバ242は、n個のビームに異なる遅延を与える。カプラ250は、n本のファイバ242から出力されるn個のビームを合波する。光源装置200は、少なくとも分割器230の入射端からn本のファイバ242の出射端までが、連続する導波路206で構成される。光監視装置270は、導波路206を導波する光の一部を取り出して測定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長掃引光を発生する光源装置であって、
連続スペクトルを含むパルス光を生成するパルス光源と、
前記パルス光を、波長に応じて空間的に複数n個(n≧2)のビームに分割する分割器と、
前記n個のビームに異なる遅延を与える複数n本のファイバと、
前記n本のファイバから出力される前記n個のビームを合波するカプラと、
を備え、少なくとも前記分割器の入射端から前記n本のファイバの出射端までが、連続する導波路で構成され、
前記導波路を導波する光の一部を取り出して測定する光監視装置をさらに備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記n本のファイバのうちのm本(1≦m≦n)のファイバに対応するm個の分岐カプラをさらに備え、
前記m個の分岐カプラはそれぞれ、対応するファイバを導波するビームの一部を取り出し、
前記光監視装置は、前記m個の分岐カプラにより取り出された前記m個のビームを測定することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
m≧2であることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記分割器は、
その入射端に前記パルス光を受ける入射側ファイバと、
前記入射側ファイバの出力端と接続された入力導波路と、n個の出力導波路を有し、前記入力導波路を導波する光を、波長に応じて前記n個の出力導波路に分岐する第1アレイ導波路回折格子と、
を含み、
前記入射側ファイバに設けられ、前記入射側ファイバを導波する前記パルス光の一部を取り出す分岐カプラをさらに備え、
前記光監視装置は、前記分岐カプラによって前記入射側ファイバから取り出された光を測定することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
前記光監視装置は、前記分岐カプラによって前記入射側ファイバから取り出された光を、波長に応じてm本(m≧2)のビームに分割するWDM(波長分割多重)カプラを含み、前記WDMカプラにより分割された前記m本のビームそれぞれを測定することを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記カプラは、
前記n本のファイバと接続されるn個の入力導波路と、出力導波路と、を有し、前記n個の入力導波路を導波するn個のビームを合波し、前記出力導波路に出力する第2アレイ導波路回折格子と、
その入射端が前記第2アレイ導波路回折格子の前記出力導波路と接続される出射側ファイバと、
を含み、
前記出射側ファイバに設けられ、前記出射側ファイバを導波する光の一部を取り出す分岐カプラをさらに備え、
前記光監視装置は、前記分岐カプラによって前記出射側ファイバから取り出された光を測定することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項7】
前記光監視装置は、前記分岐カプラによって前記出射側ファイバから取り出された光を、波長に応じてm個(m≧2)のビームに分割するWDM(波長分割多重)カプラを含み、
前記光監視装置は、前記WDMカプラにより分割された前記m個のビームそれぞれを測定することを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記光監視装置は、前記分岐カプラによって前記出射側ファイバから取り出された光の時間波形を測定することを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項9】
前記分割器は、
前記パルス光を受ける入力導波路と、n個の出力導波路を有し、前記入力導波路を導波する光を、波長に応じて前記n個の出力導波路に分岐する第1アレイ導波路回折格子を含み、
前記第1アレイ導波路回折格子と同じPLC(Planer Lightwave Circuit)上に形成され、前記第1アレイ導波路回折格子の前記入力導波路を導波する光の一部を取り出す導波路型分波器をさらに備え、
前記光監視装置は、前記導波路型分波器によって取り出された光を監視することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項10】
前記分割器は、
前記パルス光を受ける入力導波路と、n個の出力導波路を有し、前記入力導波路を導波する光を、波長に応じて前記n個の出力導波路に分岐する第1アレイ導波路回折格子を含み、
前記第1アレイ導波路回折格子と同じPLC(Planer Lightwave Circuit)上に形成され、前記第1アレイ導波路回折格子の前記n個の出力導波路のうちのm個(1≦m≦n)の出力導波路に対応するm個の導波路型分波器をさらに備え、
各導波路型分波器は、対応する出力導波路を導波する光の一部を取り出すように構成され、
前記光監視装置は、前記m個の導波路型分波器によって取り出されたm個のビームを監視することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記カプラは、
前記n本のファイバと接続されるn個の入力導波路と、出力導波路と、を有し、前記n個の入力導波路を導波するn個のビームを合波し、前記出力導波路に出力する第2アレイ導波路回折格子を含み、
前記第2アレイ導波路回折格子と同じPLC(Planer Lightwave Circuit)上に形成され、前記第2アレイ導波路回折格子の前記n個の入力導波路のうちm個(1≦m≦n)の出力導波路に対応するm個の導波路型分波器をさらに備え、
各導波路型分波器は、対応する入力導波路を導波する光の一部を取り出すように構成され、
前記光監視装置は、前記m個の導波路型分波器によって取り出されたm個のビームを監視することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項12】
m≧2であることを特徴とする請求項10または11に記載の光源装置。
【請求項13】
前記カプラは、
前記n本のファイバと接続されるn個の入力導波路と、出力導波路と、を有し、前記n個の入力導波路を導波するn個のビームを合波し、前記出力導波路に出力する第2アレイ導波路回折格子を含み、
前記第2アレイ導波路回折格子と同じPLC(Planer Lightwave Circuit)上に形成され、前記第2アレイ導波路回折格子の前記出力導波路を導波する光の一部を取り出す導波路型分波器をさらに備え、
前記光監視装置は、前記導波路型分波器によって取り出された光を監視することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項14】
前記パルス光源と前記分割器の間に挿入される波長選択フィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の光源装置。
【請求項15】
波長掃引光を発生する請求項1から11のいずれかに記載の光源装置と、
前記波長掃引光を対象物に照射して得られる物体光を測定する受光装置と、
を備えることを特徴とする光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光源装置および光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の成分分析や検査に分光解析が広く用いられる。分光解析では、照射光を対象物に照射し、照射の結果得られる物体光のスペクトルが測定される。そして、物体光のスペクトルと照射光のスペクトルの関係にもとづいて、反射特性(波長依存性)あるいは透過特性などの光学的特性を得ることができる。
【0003】
光学特性の測定手法のひとつとして、波長掃引型の分光法が知られている。波長掃引型の分光器は、波長が経時的に変化する波長掃引光を生成し、検査対象に照射する。波長掃引光は、時間と波長が1対1の関係にあるパルスあるいはパルス列である。そして波長掃引光を検査対象に照射して得られる光の時間波形を受光器によって検出する。受光器の出力波形は、時間軸が波長に対応するスペクトルを表す。
【0004】
図1は、波長掃引型の分光装置10を示す図である。分光装置10は、光源装置20、分光ヘッド30、演算処理装置40を備える。
【0005】
光源装置20は、波長掃引光L1を生成する。波長掃引光L1は、分光ヘッド30に導かれる。分光ヘッド30の照射光学系31は、波長掃引光L1を試料2に照射する。第1受光器32は、波長掃引光L1を試料2に照射した結果得られる光(物体光)L2を検出する。物体光L2は、試料2の反射光または透過光でありうる。
【0006】
照射光学系31において、波長掃引光L1の一部が参照光L3として分岐される。第2受光器33は、参照光L3を測定する。
【0007】
第1受光器32が生成する第1検出信号S1と、第2受光器33が生成する第2検出信号S2は、演算処理装置40に供給される。物体光L2および参照光L3は、波長掃引光L1の時間-波長の1対1の対応関係を引き継いでいる。したがって、第1検出信号S1の時間波形は、時間軸を波長に換算することにより、物体光L2のスペクトルに変換できる。同様に、第2検出信号S2の時間波形は、時間軸を波長に換算することにより、参照光L3のスペクトルに変換できる。演算処理装置40は、参照光L3に対する物体光L2の対応する波長ごとの割合を計算し、試料2の分光特性(反射率や透過率)を測定する。
【0008】
図2は、波長掃引光を生成する光源装置20を示す図である。光源装置20は、パルス光源21、波長選択フィルタ22、分割器23、ディレイライン24、カプラ25、出射側ファイバ26を備える。
【0009】
パルス光源21は、連続スペクトルを有するパルス光を発生する。波長選択フィルタ22は、パルス光に含まれるスペクトル成分のうち、分光に使用する波長帯域を選択する。分割器23は、パルス光を、波長に応じて複数n個の経路に分割する。ディレイライン24は、複数の経路の光(分割光)に、異なる遅延を与える。たとえばディレイライン24は、長さが異なる複数のファイバFB1~FBnを含む。カプラ25は、複数のファイバFB1~FBnから出力される光を空間的に再結合する。再結合された光は、波長掃引光L1として出射側ファイバ26から出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、
図2の波長掃引光の光源装置20について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0012】
図2の光源装置20において、分割器23は、アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)を含む。パルス光源21の波長選択のため、光をAWGに入射する前に一度自由空間に出し、波長選択フィルタ22で所望の波長帯域を選択したのちにAWGへ入射する。AWGはシングルモード導波路でありコア径は5~10μm程度である。そのため、光を効率よくAWGへ導入するために、自由空間に出した光は、集光レンズ28によりコア径と同サイズに集光される。したがって、光の集光位置とコアの相対位置がずれてしまうと、そのずれがたとえミクロンオーダーであっても光のAWGへの入射効率が著しく低下する。ここで、光源装置20が置かれる環境温度の変化や、光源装置20自身の発熱による温度の変化により、パルス光源21から空間に取り出される光の位置や、AWGの入射端の位置は、数ミクロン程度は容易に変化しうる。
【0013】
AWGへの入射効率の低下は、波長掃引光L1の光量の低下に他ならない。本発明者らの実験によると、具体的には、ミクロンオーダーの焦点位置のずれによって、20%程度の光量変動が発生する。光量の変動は分光器の性能(再現性、SNR)へ悪影響を与える。たとえば、絶対光量が低下すると、信号ノイズ比(SNR:Signal to Noise Ratio)が低下して検査・計測の誤差が大きくなる。したがって高精度な分光測定のためには、光量の変動をなるべく抑えることが重要となる。
【0014】
また、光の集光位置がAWGの導波路の中心からずれると、AWGに入射できなかった光がAWGを加熱し、AWGの熱負荷が増える。そうすると、AWGの温度が高くなりAWGの波長分波性能が変動し、計測値のずれが生じる。また、温度上昇は、AWGの信頼性の低下の原因にもなる。
【0015】
図1の分光装置10では、分光ヘッド30において、参照光L3の光量が、第2受光器33によって監視されている。しかしながら、参照光L3の光量は、光源装置20の出力光量の変動のほか、分光ヘッド30の光学的なミスアライメントの影響を受けるため、光源装置20での光量変化と、分光ヘッド30のアライメント由来の光量変化とを分離して検出することができない。つまり、参照光L3の光量を監視するのみでは、光源装置20が生成する波長掃引光L1の光量変動を検出できない。
【0016】
またパルス光源21の出射光を監視したとしても、分割器23のAWGへの入射効率の変化を検出できないため、光源装置20から出力される波長掃引光L1の光量変動を検出できない。
【0017】
なお、この問題を当業者の一般的な認識として捉えてはならず、本発明者らが独自に認識したものである。
【0018】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、光量変動を検出可能な光源装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示のある態様は、波長掃引光を発生する光源装置に関する。光源装置は、連続スペクトルを含むパルス光を生成するパルス光源と、パルス光を、波長に応じて空間的に複数n個(n≧2)のビームに分割する分割器と、n個のビームに異なる遅延を与える複数n本のファイバと、n本のファイバから出力されるn個のビームを合波するカプラと、を備える。少なくとも分割器の入射端からn本のファイバの出射端までが、連続する導波路で構成される。光源装置は、導波路を導波する光の一部を取り出して測定する光監視装置をさらに備える。
【0020】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0021】
本開示のある態様によれば、光源装置における光量の変動を正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】波長掃引光を生成する光源装置を示す図である。
【
図5】
図3の光測定装置による分光を説明する図である。
【
図7】
図6における集光レンズの集光位置と、分割器の入射端の相対位置のずれの影響を検証する実験のセットアップを示す図である。
【
図8】
図7のセットアップにおいて、レンズの焦点の位置を、光軸方向に±5μm、変化させたときのスペクトルを示す図である。
【
図9】光量変動に波長依存がある第1の原因を説明する図である。
【
図10】光量変動に波長依存がある第2の原因を説明する図である。
【
図13】試験開始後44分後と792分後において、分光器によって測定したスペクトルを示す図である。
【
図14】
図14(a)は、分光器によって測定した3波長のスペクトルを示す図であり、
図14(b)は、
図12の光監視装置によって測定した3波長のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0024】
一実施形態に係る光源装置は、波長掃引光を発生する。光源装置は、連続スペクトルを含むパルス光を生成するパルス光源と、パルス光を、波長に応じて空間的に複数n個(n≧2)のビームに分割する分割器と、n個のビームに異なる遅延を与える複数n本のファイバと、n本のファイバから出力されるn個のビームを合波するカプラと、を備える。少なくとも分割器の入射端からn本のファイバの出射端までが、連続する導波路で構成される。光源装置は、導波路を導波する光の一部を取り出して測定する光監視装置をさらに備える。
【0025】
「連続する導波路」とは、ファイバやプレーナ光波回路(PLC:Planer Lightwave Circuit)上に形成される導波路などが、自由空間を介在せずに連続しているものをいう。上記光源装置は、連続する導波路から光の一部を取り出して、光量を測定可能となっている。これにより、パルス光源が生成するパルス光の光量の変動に起因する波長掃引光の光量の変動のみでなく、導波路への入射効率の変動(つまり焦点位置の変化)に起因する波長掃引光の光量の変動を正確に検出することができる。
【0026】
なお一般的には、導波路からわざわざ波長掃引光の一部を取り出して監視することは行っておらず、このような工夫は、上述の課題を認識してはじめてなしえたものである。
【0027】
本発明者らは、分割器の入射端と焦点位置の相対位置の変化が、波長掃引光の光量の変化だけでなく、波長掃引光のスペクトルを変化させることを独自に認識した。したがって、波長ごとの光量の変化を検出できる構成とすることが望ましい。
【0028】
一実施形態において、光源装置は、n本のファイバのうちのm本(1≦m≦n)のファイバに対応するm個の分岐カプラをさらに備えてもよい。各分岐カプラは、対応するファイバを導波するビームの一部を取り出す。光監視装置は、m個の分岐カプラにより取り出されたm個のビームを測定してもよい。この構成によれば、分岐カプラを設けたファイバを導波する特定の波長の光を監視できる。
【0029】
一実施形態において、m≧2であってもよい。これにより、複数の波長の光量を個別に監視することができ、波長依存性のある光量変動を正確に検出できる。
【0030】
一実施形態において、分割器は、その入射端にパルス光を受ける入射側ファイバと、第1アレイ導波路回折格子と、を含んでもよい。第1アレイ導波路回折格子は、入射側ファイバの出力端と接続された入力導波路と、n個の出力導波路を有し、入力導波路を導波する光を、波長に応じてn個の出力導波路に分岐する。光源装置は、入射側ファイバに設けられ、入射側ファイバを導波するパルス光の一部を取り出す分岐カプラをさらに備えてもよい。光監視装置は、分岐カプラによって入射側ファイバから取り出された光を測定してもよい。
【0031】
一実施形態において、光監視装置は、分岐カプラによって入射側ファイバから取り出された光を、波長に応じてm本(m≧2)のビームに分割するWDM(波長分割多重)カプラを含み、WDMカプラにより分割されたm本のビームそれぞれを測定してもよい。これにより、複数の波長の光量を個別に監視することができ、波長依存性のある光量変動を正確に検出できる。
【0032】
一実施形態において、カプラは、第2アレイ導波路回折格子と、出射側ファイバと、を含んでもよい。第2アレイ導波路回折格子は、n本のファイバと接続されるn個の入力導波路と、出力導波路と、を有し、n個の入力導波路を導波するn個のビームを合波し、出力導波路に出力する。出射側ファイバは、その入射端が第2アレイ導波路回折格子の出力導波路と接続される。光源装置は、出射側ファイバに設けられ、出射側ファイバを導波する光の一部を取り出す分岐カプラをさらに備えてもよい。光監視装置は、分岐カプラによって出射側ファイバから取り出された光を測定してもよい。
【0033】
一実施形態において、光監視装置は、分岐カプラによって出射側ファイバから取り出された光を、波長に応じてm個(m≧2)のビームに分割するWDM(波長分割多重)カプラを含んでもよい。光監視装置は、WDMカプラにより分割されたm個のビームそれぞれを測定してもよい。
【0034】
一実施形態において、m≧2であってもよい。この場合、複数の波長の光量を個別に監視することができ、波長依存性のある光量変動を正確に検出できる。
【0035】
一実施形態において、光監視装置は、分岐カプラによって出射側ファイバから取り出された光の時間波形を測定してもよい。出射側ファイバを導波する光は、正または負のチャープを有する波長掃引光であり、時間と波長が1対1の対応関係を有する。したがって、時間波形を測定することで、波長ごとの光量変動を正確に検出できる。
【0036】
一実施形態において、分割器は、第1アレイ導波路回折格子を含んでもよい。第1アレイ導波路回折格子は、パルス光を受ける入力導波路と、n個の出力導波路を有し、入力導波路を導波する光を、波長に応じてn個の出力導波路に分岐する。光源装置は、第1アレイ導波路回折格子と同じPLC(Planer Lightwave Circuit)上に形成され、第1アレイ導波路回折格子の入力導波路を導波する光の一部を取り出す導波路型分波器をさらに備えてもよい。光監視装置は、導波路型分波器によって取り出された光を監視してもよい。
【0037】
一実施形態において、分割器は、第1アレイ導波路回折格子を含んでもよい。第1アレイ導波路回折格子は、パルス光を受ける入力導波路と、n個の出力導波路を有し、入力導波路を導波する光を、波長に応じてn個の出力導波路に分岐する。光源装置は、第1アレイ導波路回折格子と同じPLC(Planer Lightwave Circuit)上に形成され、第1アレイ導波路回折格子のn個の出力導波路のうちのm個(1≦m≦n)の出力導波路に対応するm個の導波路型分波器をさらに備えてもよい。各導波路型分波器は、対応する出力導波路を導波する光の一部を取り出すように構成されてもよい。光監視装置は、m個の導波路型分波器によって取り出されたm個のビームを監視してもよい。
【0038】
一実施形態において、カプラは、第2アレイ導波路回折格子を含んでもよい。第2アレイ導波路回折格子は、n本のファイバと接続されるn個の入力導波路と、出力導波路と、を有し、n個の入力導波路を導波するn個のビームを合波し、出力導波路に出力する。光源装置は、第2アレイ導波路回折格子と同じPLC(Planer Lightwave Circuit)上に形成され、第2アレイ導波路回折格子のn個の入力導波路のうちm個(1≦m≦n)の出力導波路に対応するm個の導波路型分波器をさらに備えてもよい。各導波路型分波器は、対応する入力導波路を導波する光の一部を取り出すように構成されてもよい。光監視装置は、m個の導波路型分波器によって取り出されたm個のビームを監視してもよい。
【0039】
一実施形態において、m≧2であってもよい。この場合、複数の波長の光量を個別に監視することができ、波長依存性のある光量変動を正確に検出できる。
【0040】
一実施形態において、カプラは、第2アレイ導波路回折格子を含んでもよい。第2アレイ導波路回折格子は、n本のファイバと接続されるn個の入力導波路と、出力導波路と、を有し、n個の入力導波路を導波するn個のビームを合波し、出力導波路に出力する。光源装置は、第2アレイ導波路回折格子と同じPLC(Planer Lightwave Circuit)上に形成され、第2アレイ導波路回折格子の出力導波路を導波する光の一部を取り出す導波路型分波器をさらに備えてもよい。光監視装置は、導波路型分波器によって取り出された光を監視してもよい。
【0041】
一実施形態において、光源装置は、パルス光源と分割器の間に挿入される波長選択フィルタをさらに備えてもよい。
【0042】
一実施形態に係る光測定装置は、波長掃引光を発生する上述のいずれかの光源装置と、波長掃引光を対象物に照射して得られる物体光を測定する受光装置と、を備えてもよい。
【0043】
(実施形態)
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示の本質的なものであるとは限らない。
【0044】
図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。
【0045】
図3は、実施形態に係る光測定装置100を示す図である。光測定装置100は、光源装置200、分光ヘッド300および演算処理装置400を備える。
【0046】
光源装置200は、波長が経時的に変化する波長掃引光L1を発生する。波長掃引光L1は、時間と波長が一対一の関係で対応付けられる。これを波長掃引光L1は「波長の一意性を有する」という。
【0047】
図4は、波長掃引光L1を示す図である。
図4の上段は、波長掃引光L1の強度(時間波形)I
WS(t)を、下段は波長掃引光L1の波長λの時間変化を示す。この例において、波長掃引光L1は1個のパルス光であり、その前縁部において主波長がλ
1、後縁部において主波長がλ
nであり、1パルス内で波長がλ
1からλ
nの間で経時的に変化する。この例では、波長掃引光L1は、時間とともに振動数が増加する、言い換えると時間とともに波長が短くなる正のチャープパルス(λ
1>λ
n)である。なお、波長掃引光L1は、時間とともに波長が長くなる負のチャープパルスであってもよい(λ
1<λ
n)。後述するように、波長掃引光L1は、波長ごとに、時間的に孤立したパルス(波束)からなるパルス列であってもよい。
【0048】
図3に戻る。分光ヘッド300は、照射光学系310および受光装置320を備える。照射光学系310は、光源装置200から波長掃引光L1を受ける。照射光学系310は、コリメータ312、ビームスプリッタ314、ミラー316を含む。コリメータ312は、出射側ファイバ258から出射する波長掃引光L1をコリメートする。ビームスプリッタ314は、波長掃引光L1の一部を、試料2に向ける。またビームスプリッタ314は、波長掃引光L1の一部を参照光L3として取り出す。ミラー316は、参照光L3を受光装置320に向ける。
【0049】
受光装置320は、第1受光器322、第2受光器324、A/Dコンバータ326,328を含む。第1受光器322は、波長掃引光L1を試料2に照射して得られる物体光L2を検出する。物体光L2は、反射光であってもよいし、透過光であってもよい。
【0050】
A/Dコンバータ326は、第1受光器322の出力信号S1をデジタル信号D1に変換する。第2受光器324は、参照光L3を検出する。A/Dコンバータ328は、第2受光器324の出力信号S2をデジタル信号D2に変換する。デジタル信号D1が示す物体光L2の時間波形IOBJ(t)およびデジタル信号D2が示す参照光L3の時間波形IREF(t)は、演算処理装置400に取り込まれる。
【0051】
波長掃引型の分光法では、波長掃引光L1における時刻と波長は1対1の対応関係を有する。この対応関係は、当然ながら参照光L3も有しており、また物体光L2にも引き継がれる。この時間と波長の対応関係を利用して、演算処理装置400は、物体光L2の時間波形IOBJ(t)を、周波数ドメインのスペクトルIOBJ(λ)に変換する。また演算処理装置400は、参照光L3の時間波形IREF(t)を、スペクトルに変換し、適切にスケーリングすることで、参照スペクトルIREF(λ)を計算する。
【0052】
演算処理装置400の処理は特に限定されないが、一例として演算処理装置400は、参照スペクトルIREF(λ)と物体光L2のスペクトルIOBJ(λ)にもとづいて、対象物OBJの透過率T(λ)もしくは反射率R(λ)を計算することができる。
T(λ)=IOBJ(λ)/IREF(λ)
R(λ)=IOBJ(λ)/IREF(λ)
【0053】
図5は、
図3の光測定装置100による分光を説明する図である。上述のように、波長掃引光L1は、時間tと波長λが1対1で対応しているから、その時間波形I
REF(t)は、周波数ドメインのスペクトルI
REF(λ)に変換することができる。
【0054】
物体光L2の時間波形IOBJ(t)も、時間tと波長λが1対1で対応したものとなる。したがって演算処理装置400は、受光装置320の出力が示す物体光L2の波形IOBJ(t)を、物体光L2のスペクトルIOBJ(λ)に変換することができる。
【0055】
演算処理装置400は、2つのスペクトルIOBJ(λ)とIREF(λ)の比IOBJ(λ)/IREF(λ)にもとづいて、対象物OBJの透過スペクトルT(λ)を計算することができる。
【0056】
波長掃引光L1における時間tの波長λの関係が、λ=f(t)なる関数で表されるとする。最も簡易には、波長λは、時間tに対して、一次関数にしたがってリニアに変化する。物体光L2の時間波形IOBJ(t)が、ある時刻txにおいて低下するとき、透過スペクトルT(λ)は、波長λx=f(tx)に吸収スペクトルを有することを意味する。
【0057】
なお、演算処理装置400における処理はこれに限定されない。時間の2つの時間波形IOBJ(t)とIREF(t)の比T(t)=IOBJ(t)/IREF(t)を演算した後に、この時間波形T(t)の変数tをλに変換することで、透過スペクトルT(λ)を算出してもよい。
【0058】
以上が光測定装置100の基本構成および動作である。続いて、光源装置200の構成を説明する。
【0059】
光源装置200は、パルス光源210、波長選択部220、分割器230、ディレイライン240、カプラ250および光監視装置270を備える。
【0060】
パルス光源210は、広帯域な連続スペクトルを有する広帯域パルス光L1aを出射する。広帯域パルス光L1aのスペクトルは、たとえば900nm~1300nmの範囲において、少なくとも10nm、好ましくは50nm、より好ましくは100nmの波長域にわたって連続している。広帯域パルス光L1aの波長域の幅は、分光に必要な波長域をカバーしていればよい。
【0061】
たとえばパルス光源210は、超短パルスレーザと、非線形素子を含みうる。超短パルスレーザとしては、ゲインスイッチレーザ、マイクロチップレーザ、ファイバレーザ等が例示される。
【0062】
非線形素子は、非線形現象によって、超短パルスレーザが生成する超短パルスのスペクトル幅をさらに広げる。非線形素子としてはファイバが好適であり、たとえば、フォトニッククリスタルファイバやその他の非線形ファイバを用いることができる。ファイバのモードとしてはシングルモードの場合が好適であるが、マルチモードであっても十分な非線形性を示すものであれば、使用することができる。
【0063】
パルス光源210として、SLD(Superluminescent Diode)光源のような他の広帯域パルス光源を使用してもよい。
【0064】
非線形素子から出力される広帯域パルス光L1aは、フェムト秒~ナノ秒オーダーのパルス幅を有する。分割器230、ディレイライン240およびカプラ250は、広帯域パルス光L1aを受け、波長掃引光L1に変換する。
【0065】
パルス光源210が生成する広帯域パルス光L1aは、一旦、自由空間に放射される。波長選択部220は、広帯域パルス光L1aの中から、測定に使用する波長帯域を選択し、使用しない波長帯域を除去する。たとえば波長選択部220は、レンズ222、波長選択フィルタ224、集光レンズ226を含む。
【0066】
レンズ222は、広帯域パルス光L1aをコリメートする。波長選択フィルタ224は、測定に使用する波長帯域を透過し、使用しない波長帯域を反射または吸収によって除去する。集光レンズ226は、波長選択フィルタ224の透過光を、分割器230の入射端に集光する。
【0067】
分割器230は、入射側ファイバ238および第1AWG232を含む。第1AWG232は、入力導波路234と、複数n個(n≧2)の出力導波路236を有する。第1AWG232は、入射側ファイバ238を介して、広帯域パルス光L1aを受ける。入力導波路234を導波する光を、波長に応じて、n個の出力導波路236に分岐する。
【0068】
ディレイライン240は、複数n本のファイバ242_1~242_nを含む。ファイバ242_1~242_nは、異なる長さを有し、分割器230によって分割された複数のビームに対して、異なる遅延を与える。
【0069】
分割前の広帯域パルス光L1aが、時間とともに周波数が上昇する(波長が短くなる)正のチャープパルス(アップチャープパルス)であるとする。この場合、パルスの前縁部に最長波長λ1の成分が含まれ、パルスの後縁部に最短波長λnの成分が含まれている。
【0070】
複数のファイバ242_1~242_nは、異なる長さl1~lnを有している。λ1が最長波長、λnが最短波長であるとすると、波長掃引光L1を、広帯域パルス光L1aと同じ正のチャープパルスとするためには、11<l2<…<lnの関係を満たしていればよい。一例として、n=20の場合、20本のファイバ242の長さl1~l20は、1m~20mまで、1m刻みで増加してもよい。
【0071】
ファイバ242_1~242_nは、波長毎に異なる群遅延特性を有する必要はなく、同一のファイバ(同一のコア/クラッド材料のファイバ)を使用することができる。この意味で、ファイバ242は、マルチモードファイバを使用することが可能であり、この場合、意図しない非線形光学効果を防止することができる点において有利である。
【0072】
カプラ250は、ディレイライン240によって異なる遅延が付与された複数のビームを再結合する。たとえばカプラ250は、第2AWG252および出射側ファイバ258を含む。第2AWG252は、n個の入力導波路254と、出力導波路256を有する。n個の入力導波路254は、n本のファイバ242_1~242_nが接続される。第2AWG252は、n個の入力導波路254を導波するn個のビームを合波し、出力導波路256に出力する。出射側ファイバ258の入射端は、出力導波路256と接続される。
【0073】
出射側ファイバ258は分光ヘッド300まで伸びており、出射側ファイバ258の出射端は、分光ヘッド300と接続されている。
【0074】
ファイバ242によって十分に大きな遅延を与えるとき、波長λ1~λnそれぞれの波束が時間的に分離し、波長掃引光L1は、波長λ1~λnに対応するn個のパルスを含むパルス列となる。
【0075】
この光源装置200は、分割器230の入射端から、カプラ250の出射端までが、連続する導波路206で構成される。つまり分割器230の入射端からカプラ250の出射端の間において、光は一度も自由空間に放出されない。
【0076】
カプラ250をAWG以外の光学素子で構成してもよい。その場合、分割器230の入射端からディレイライン240の出射端の間が、連続する導波路206となる。つまり、光源装置200は、少なくとも分割器230の入射端からディレイライン240(ファイバ242)の出射端までが、連続する導波路206で構成されると言える。
【0077】
光監視装置270は、導波路206に導波する光の一部を取り出して測定する。導波路206からの光の取り出し箇所は特に限定されず、たとえば
図3の(i)~(viii)のいずれかの箇所から、光を取り出すことができる。
【0078】
(i)、(iv)、(v)、(viii)は、ファイバからの光の取り出しを表している。ファイバから光の一部を取り出すには、分岐カプラを用いることができる。
【0079】
(ii)、(iii)、(vi)、(vii)は、AWGからの光の取り出しを表している。AWGからの光の一部を取り出すには、AWGと同じPLC(Planer Lightwave Circuit)上に形成した導波路型分波器を利用することができる。
【0080】
光監視装置270は、光源装置200内の導波路206から取り出された光を監視する。たとえば光監視装置270は、監視している光の変動が、所定の条件を満たすとき、アラートを発生してもよい。
【0081】
以上が光源装置200の構成である。
【0082】
光源装置200の利点は、いくつかの比較技術との対比によって明確となる。第1の比較技術では、第2受光器324によって参照光L3を監視し、参照光L3の変動を検出するものである。この場合、分光ヘッド300内の自由空間に放出された参照光を監視することとなる。したがって、検出結果は、分光ヘッド300の周囲環境の変動(温度、振動)や、光軸調整の影響を受けることとなり、光源装置200が生成する波長掃引光L1の絶対光量は測定できない。
【0083】
第2の比較技術は、パルス光源210から自由空間に放射される広帯域パルス光L1aを監視するものである。この場合、広帯域パルス光L1aの光量の変動は検出できるが、集光レンズ226の焦点と分割器230の入射端の位置ズレに起因する波長掃引光L1の光量の変動を検出できないため、波長掃引光L1の絶対光量を測定できない。
【0084】
第1、第2の比較技術に比べて、実施形態に係る光源装置200によれば、パルス光源210が生成する広帯域パルス光L1aの光量の変動に起因する波長掃引光L1の光量の変動のみでなく、導波路206すなわち分割器230の入射端への入射効率の変動(つまり集光レンズ226の焦点位置の変化)に起因する波長掃引光L1の光量の変動を正確に検出することができる。
【0085】
また、光監視装置270が監視する光は、連続する導波路206から取り出される。つまり自由空間中の光を監視するものでないため、周囲環境の変動(温度、振動)や光軸調整の影響を受けないという利点がある。
【0086】
光源装置200における光量の絶対量の低下している状況では、分割器230の入力端と集光レンズ226の焦点位置がずれている可能性が高く、分割器230における発熱が増加する可能性がある。光監視装置270によって、光量の低下を検出した場合には、アラートを発生することで、アライメントがずれた状態で光源装置200を動作し続けるのを防止できる。
【0087】
本開示は、
図3から把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本開示の範囲を狭めるためではなく、本開示や本発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0088】
(実施例1)
図6は、実施例1に係る光源装置200Aを示す図である。光監視装置270Aは、
図3における位置(i)から取り出された光を監視する。入射側ファイバ238には、分岐カプラ280Aが設けられる。分岐カプラ280Aは、2つの出力ファイバを有し、一方の出力ファイバは、第1AWG232と接続され、他方の出力ファイバは、光監視装置270Aと接続される。光監視装置270Aには、入射側ファイバ238を導波する光の一部が入射する。
【0089】
光監視装置270Aは、光検出器272および演算処理装置274を含む。光検出器272は、分岐カプラ280Aにより導波路206から取り出された光を検出する。演算処理装置274は、光検出器272の出力にもとづいて、光源装置200Aの出力である波長掃引光L1の絶対光量の変動を検出する。
【0090】
(実施例2)
実施例2では、波長掃引光L1の絶対光量の変動に加えて、またはそれに代えて、波長掃引光L1のスペクトルの変動を検出する技術を説明する。はじめに、スペクトル変動を検出すべき理由を説明する。
【0091】
図7は、
図6における集光レンズ226の集光位置と、分割器230の入射端の相対位置のずれの影響を検証する実験のセットアップ900を示す図である。このセットアップ900において、シングルモードファイバ902は、
図6の入射側ファイバ238を模したものとなっている。シングルモードファイバ902の出射光が、分光器904によって測定される。
【0092】
図8は、
図7のセットアップにおいて、集光レンズ226の焦点の位置を、光軸方向に±5μm、変化させたときのスペクトルを示す図である。本発明者らは、
図8に示されるように、焦点とシングルモード導波路の相対位置ずれによる光量変動が、波長依存を有することを独自に見出した。
【0093】
特に、
図8にみられるスペクトルの波長依存は、長波長側と短波長側で相補的に発生する。つまり、長波長側の強度が増加するとき、短波長側の強度が低下し、反対に、長波長側の強度が低下するとき、短波長側の強度が増加している。このように波長依存がある場合、実施例1のように、全波長を一括して監視する方法では、分光測定に使用する幅広い波長領域(例えば900nm~1300nm)の局所的な光量変動を検知できない。なぜなら、短波長側と長波長側の強度の増減が相殺し合うため、波長領域全体の光量はほとんど変化しないからである。
【0094】
図9は、光量変動に波長依存がある第1の原因を説明する図である。波長依存の原因のひとつは、シングルモード導波路のモードフィールド径(MFD)の波長依存性である。上段は、焦点位置が適切な状態を、下段は、焦点位置がずれている場合を示す。シングルモード導波路内の光が伝搬する領域の幅(MFD)は波長によって異なるため、下段のように、焦点位置がずれた際に波長毎に入射効率の低下の度合いが異なることとなる。あるいは、広帯域パルス光L1aの集光径が波長によって異なる場合も、同じ理屈で、波長依存が生ずる。
【0095】
図10は、光量変動に波長依存がある第2の原因を説明する図である。波長依存の原因の別のひとつは、集光レンズ226へのビームの入射角度が波長によって異なる場合に起こりうる。ビームの入射角が波長依存性を有すると、焦点位置FPがずれる。たとえば、パルス光源210からの広帯域パルス光L1aの放射角度が波長によって異なる場合に、このような焦点位置FPのずれが生じうる。
【0096】
902aはクラッドを、902bはコアを示している。
図10の上段と下段は、光軸方向の焦点位置が異なる2つの状態を示す。焦点位置がずれると、コア902bに対する結合効率が波長ごとに変化する。一般的には、集光位置ずれdは、ビームの入射角度θが微小な場合、集光レンズの焦点距離fを用いて、d≒fθ程度である。
【0097】
逆に言えば、波長掃引光L1のスペクトル変動を正確に監視することができれば、焦点位置のずれや、パルス光源210からの放射角の変動を推定できると言える。実施例2では、波長掃引光L1の波長依存の光量変動、すなわちスペクトル変動を検出可能な光源装置200Bについて説明する。
【0098】
図11は、実施例2に係る光源装置200Bを示す図である。光源装置200Bの光監視装置270Bは、分岐カプラ280Aによって分岐された光を、波長ごとに分離して測定する。
【0099】
コストが許す場合には、光監視装置270Bを、
図7に示すように分光器904で構成してもよい。ただし、スペクトル変動は、波長毎にランダムに発生するわけではなく、
図8に示すように、短波長側の変動と、長波長側の変動が、対称的に発生するケースが多い。この場合には、短波長側と長波長側それぞれについて、少なくとも1波長ずつ、強度を測定すれば十分であるといえる。たとえば、
図8の例では、中心波長(1080nm)、短波長側で1波長帯域(たとえば980nm)、長波長側で1波長帯域(たとえば1180nm)の3波長程度を監視すれば十分である。
【0100】
たとえば光監視装置270Bは、WDMカプラ276、複数の光検出器272、演算処理装置274を含む。WDMカプラ276は、分岐カプラ280によって取り出された光を、波長に応じて複数m個(m≧2)のビームに分岐する。mは、監視したい波長帯域の個数であり、2~6程度とすることができる。複数の光検出器272は、分岐カプラ280によって分岐された光の強度を検出する。これにより、波長ごとの光量を測定し、スペクトルの変動を検出することができる。
【0101】
(実施例3)
図12は、実施例3に係る光源装置200Cを示す図である。光監視装置270Cは、
図3における位置(iv)から取り出された光を監視する。
図12では、入射側ファイバ238が省略され、集光レンズ226によって集光されたビームが、第1AWG232の入射端に結合するように構成される。
【0102】
n本のファイバ242のうち、監視したい波長のビームが導波するm本(1≦m≦n)に、分岐カプラ280Cが設けられる。
【0103】
光監視装置270Cは、複数m個の光検出器272および演算処理装置274を含む。各光検出器272は、対応する分岐カプラ280Cによって分岐された光を監視する。この構成により、波長ごとの光量を測定し、スペクトルの変動を検出することができる。
【0104】
図12の光源装置200Cについて検証した実験について説明する。実験では、出射側ファイバ258の出射端に、分光器を接続し、波長掃引光L1のスペクトルの経時的な変化を測定した。スペクトルの測定点数mは3であり、908nm、1067nm、1297nmの3波長に対応するファイバ242に分岐カプラ280Cを接続した。
【0105】
実験では、光源装置200内の温度を、意図的に経時的に変動させ、ビームの焦点位置と分割器230の入射端の位置ずれを意図的に誘発することで、スペクトル変動を発生させている。
【0106】
図13は、試験開始後44分後(i)と792分後(ii)において、分光器によって測定したスペクトルを示す図である。全波長域にわたって数%の変動が生じ、その変動割合には波長依存があることが分かる。
【0107】
図14(a)は、分光器によって測定した3波長の光量の時間変動を示す図であり、
図14(b)は、
図12の光監視装置270Cによって測定した3波長の光量の時間変動を示す図である。
図14(a)に示す3波長は、光監視装置270Cにより測定した3波長(
図14(b)の908nm,1067nm,1297nm)と最も近い3点(913,1067,1297nm)を選んでいる。
【0108】
図14(a)、(b)の対比から分かるように、
図12の光監視装置270によれば、分光器で測定した場合と同等の精度で、波長毎の光量の変動を測定できることが実証された。
【0109】
なお
図12では、ファイバ242の分割器230側の位置(
図3の位置(iv))に、分岐カプラ280Cを挿入したがその限りでなく、ファイバ242のカプラ250側の位置(
図3の位置(v))に分岐カプラ280Cを挿入し、ディレイラインによる遅延付与後のビームを測定するようにしてもよい。
【0110】
(実施例4)
図15は、実施例4に係る光源装置200Dを示す図である。光監視装置270Dは、
図3における位置(viii)から取り出された光を監視する。光源装置200Dは、出射側ファイバ258に設けられ、出射側ファイバ258を導波する光の一部を取り出す分岐カプラ280Dを備える。
図15において、入射側ファイバ238は省略してもよい。
【0111】
光監視装置270Dは、光検出器272および演算処理装置274を含む。各光検出器272は、分岐カプラ280Dによって分岐された光を監視する。ここで分岐カプラ280Dによって分岐された光は、ディレイライン240を通過した波長掃引光L1の一部であるから、時間軸と波長が1対1で対応する。そこで光検出器272によって、分岐カプラ280Dによって取り出された光の時間波形を測定してもよい。演算処理装置274は、光検出器272によって測定した時間波形を、スペクトル情報に変換し、各波長の光量を検出してもよい。
【0112】
あるいは、
図15の光源装置200Dにおいて、光監視装置270Dに代えて、
図11の光監視装置270Bを用いてもよい。
【0113】
(実施例5)
図16は、実施例5に係る光源装置200Eを示す図である。光監視装置270Eは、
図3における位置(ii)から取り出された光を監視する。
【0114】
光源装置200Eは、第1AWG232と同じPLC上に形成された導波路型分波器282Eをさらに備える。導波路型分波器282Eは、第1AWG232の入力導波路234を導波する光の一部を、外部に取り出す。
【0115】
光監視装置270Eは、導波路型分波器282Eによって取り出された光を監視する。光監視装置270Eは、
図6の光監視装置270A、または
図11の光監視装置270Bと同様に構成することができる。
【0116】
(実施例6)
図17は、実施例6に係る光源装置200Fを示す図である。光監視装置270Fは、
図3における位置(iii)から取り出された光を監視する。
【0117】
光源装置200Fは、第1AWG232と同じPLC上に形成された導波路型分波器282Fをさらに備える。導波路型分波器282Fは、第1AWG232のn個の出力導波路236のうちのm個の出力導波路236それぞれを導波する光の一部を、外部に取り出す。
【0118】
光監視装置270Fは、導波路型分波器282Fによって取り出された光を監視する。光監視装置270Fは、
図12の光監視装置270Cと同様に構成することができる。
【0119】
(実施例7)
実施例7に係る光源装置について、
図3を参照して説明する。光監視装置270は、
図3における位置(vi)から取り出された光を監視する。光源装置は、第2AWG252と同じPLC上に形成されたm個の導波路型分波器を備える。各導波路型分波器は、対応する入力導波路254を導波する光の一部を分岐する。実施例7において、光監視装置270は、
図12の光監視装置270Cと同様に構成できる。
【0120】
(実施例8)
実施例8に係る光源装置について、
図3を参照して説明する。光監視装置270は、
図3における位置(vii)から取り出された光を監視する。光源装置は、第2AWG252と同じPLC上に形成された導波路型分波器を備える。導波路型分波器は、第2AWG252の出力導波路256を導波する光の一部を分岐する。実施例8において、光監視装置270は、
図15の光監視装置270D、あるいは
図12の光源装置200Cと同様に構成できる。
【0121】
(変形例)
上述した実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なことが当業者に理解される。以下、こうした変形例について説明する。
【0122】
実施例において、カプラ250を、第2AWG252で構成したが、カプラ250の構成はそれに限定されず、その他の公知技術を用いてもよいし、将来利用可能な別の技術を用いてもよい。カプラ250において、導波路206から光が自由空間内に放射される場合には、光監視装置270は、自由空間に放射されるより前の導波路206から取り出した光を監視するようにすればよい。
【0123】
また波長選択部220は省略してもよい。この場合、パルス光源210と分割器230を、自由空間を利用せずに、入射側ファイバ238で接続することも可能である。
【0124】
実施形態では、光源装置200と分光ヘッド300の間が、ファイバで接続されていたがその限りでなく、自由空間を利用して、波長掃引光L1を光源装置200から分光ヘッド300に供給してもよい。
【0125】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0126】
L1 波長掃引光
L1a 広帯域パルス光
L2 物体光
2 試料
L3 参照光
100 光測定装置
200 光源装置
206 導波路
210 パルス光源
220 波長選択部
222 レンズ
224 波長選択フィルタ
226 集光レンズ
230 分割器
232 第1AWG
234 入力導波路
236 出力導波路
238 入射側ファイバ
240 ディレイライン
242 ファイバ
250 カプラ
252 第2AWG
254 入力導波路
256 出力導波路
258 出射側ファイバ
270 光監視装置
272 光検出器
274 演算処理装置
276 WDMカプラ
280 分岐カプラ
282 導波路型分波器
300 分光ヘッド
310 照射光学系
312 コリメータ
314 ビームスプリッタ
316 ミラー
320 受光装置
322 第1受光器
324 第2受光器
326,328 A/Dコンバータ
400 演算処理装置