(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157783
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】物体検出装置および物体検出システム
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20231019BHJP
G01S 13/04 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G01V3/12 A
G01S13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067908
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聖也
【テーマコード(参考)】
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB13
2G105DD02
2G105EE02
2G105GG01
2G105HH04
2G105JJ05
2G105KK06
5J070AB15
5J070AE07
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】検知範囲の広い物体検出装置を実現すること。
【解決手段】物体検出装置は、励振器10と、励振電極11と、検出電極12と、検出器13と、を有している。励振電極11は、自動車1の前バンパー2の外側の面に設けられている。前バンパー2は樹脂製であり絶縁体である。検出電極12は、自動車1の前バンパー2の外側の面に、励振電極11から離間して設けられている。検出器13は、検出電極12および励振器10に接続されている。検出器13は、検出電極12からの電気信号と励振器10からの電気信号を乗算して差周波数信号を生成し出力する装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の物体を検出する物体検出装置において、
所定の周波数の電気信号を生成する励振器と、
前記励振器からの電気信号によって励振され電磁場を発生させる励振電極と、
電磁場を検出して電気信号を出力する検出電極と、
前記励振器からの電気信号と前記検出電極からの電気信号とを乗算して差周波数信号である検出信号を出力する検出器と、
を有し、
前記励振電極と前記検出電極のうち少なくとも一方は絶縁体に設けられ、
前記検出信号の変動により前記物体を検出する、
ことを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記励振電極または前記検出電極は、2以上の互いに分離した導電体で構成され、それら導電体が互いに非接触な電気的結合をしている、ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
複数の前記検出電極と、各前記検出電極にそれぞれ接続された複数の前記検出器を有し、
各前記検出器の前記検出信号から前記物体の位置を検出する、ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項4】
互いに周波数の異なる電気信号を生成する複数の前記励振器と、各前記励振器にそれぞれ接続された複数の前記励振電極を有し、
前記検出器は、各前記励振器のうち1つからの電気信号と前記検出電極からの電気信号とを乗算して差周波数信号である検出信号を出力し、
前記検出信号の周波数成分から前記物体の位置を検出する、ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記物体検出装置はバンパーを有する車両に搭載され、
前記励振電極および前記検出電極は、前記車両のバンパーに設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記物体検出装置は自動搬送車に搭載され、
前記自動搬送車は、荷物を載置する台座部を有し、
前記励振電極および前記検出電極は、前記台座部の側面もしくは前記自動搬送車の外郭部に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記物体検出装置はロボットアームに搭載され、
前記励振電極および前記検出電極は、前記ロボットアームの腕に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の物体検出装置と、検出対象である前記物体に設けられた導電性部材と、を有した物体検出システム。
【請求項9】
前記導電性部材は、Alテープである、ことを特徴とする請求項8に記載の物体検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁場によって物体を検出する物体検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両周辺の障害物を検知する手段として、超音波センサが広く利用されている(特許文献1~3)。特許文献1には、自動車の前後のバンパー部に超音波センサを複数設けることで、駐車時などに自動車前後の障害物を検知することが記載されている。特許文献2には、さらに車両の前輪の横方向にも超音波センサを設けて検知エリアの拡大を図ることが記載されている。また、特許文献3には、工場などで稼働する自動搬送車の前後左右の側面に超音波センサを取り付け、障害物の検知、衝突回避に利用することが記載されている。
【0003】
また、電磁場を利用して人を検知する技術として特許文献4、5がある。特許文献4には、人を励振電極により励振し、2つの検出電極によって人が纏った電磁場を検出し、検出電極により検出した2つの検出信号の位相差により人の位置を検出することが記載されている。特許文献5には、電磁場を発生させる出力電極の周囲に複数の検出電極を配置し、複数の検出電極からの信号の位相差を求め、検出電極の近くに人の指などが近づいた際の位相差の変化によって人を検知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5271202号公報
【特許文献2】特開2014-71852号公報
【特許文献3】特開平1-292506号公報
【特許文献4】特許第5899698号公報
【特許文献5】特許第5853755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、超音波センサによる障害物の検知では、以下のような問題点があった。超音波センサから発する超音波は末広がり状の直進性を有し、円錐状に広がる。そのため、障害物の探知エリアがスポット的で狭く、隣接する超音波センサの間のエリアに死角を生じやすかった。特に、超音波センサの近傍に死角が生じやすかった。
【0006】
死角を減らすためには超音波センサを多数設けることが考えられるが、センサ数や信号線、消費電力が増え、システムが複雑となってしまう。また、超音波センサを多数設けると、その凹凸によって見栄えが悪くなるという問題もある。
【0007】
さらに、超音波センサは、障害物が開口率の高い金網フェンス、細いポールなどであったり、鋭角な障害物であったり、強風環境、著しく高温または低温な環境などの場合、障害物の検知が困難であった。
【0008】
特許文献4、5を物体の検知に利用することも考えられる。しかし、特許文献4、5は2つの検出電極の一方の信号を基準信号として位相差を検出するため、2つの検出信号の双方が微弱である場合や、ノイズの影響がある場合には、位相差検出が不安定となる懸念があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、検知範囲の広い物体検出装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、周囲の物体を検出する物体検出装置において、所定の周波数の電気信号を生成する励振器と、前記励振器からの電気信号によって励振され電磁場を発生させる励振電極と、電磁場を検出して電気信号を出力する検出電極と、前記励振器からの電気信号と前記検出電極からの電気信号とを乗算して差周波数信号である検出信号を出力する検出器と、を有し、前記励振電極と前記検出電極のうち少なくとも一方は絶縁体に設けられ、前記検出信号の変動により前記物体を検出する、ことを特徴とする物体検出装置である。
【0011】
本発明において、前記励振電極または前記検出電極は、2以上の互いに分離した導電体で構成され、それら導電体が互いに非接触な電気的結合をしていてもよい。
【0012】
本発明において、複数の前記検出電極と、各前記検出電極にそれぞれ接続された複数の前記検出器を有し、各前記検出器の前記検出信号から前記物体の位置を検出してもよい。
【0013】
本発明において、互いに周波数の異なる電気信号を生成する複数の前記励振器と、各前記励振器にそれぞれ接続された複数の前記励振電極を有し、前記検出器は、各前記励振器のうち1つからの電気信号と前記検出電極からの電気信号とを乗算して差周波数信号である検出信号を出力し、前記検出信号の周波数成分から前記物体の位置を検出してもよい。
【0014】
本発明において、前記物体検出装置はバンパーを有する車両に搭載され、前記励振電極および前記検出電極は、前記車両のバンパーに設けられていてもよい。
【0015】
本発明において、前記物体検出装置は自動搬送車に搭載され、前記自動搬送車は、荷物を載置する台座部を有し、前記励振電極および前記検出電極は、前記台座部の側面もしくは前記自動搬送車の外郭部に設けられていてもよい。
【0016】
本発明において、前記物体検出装置はロボットアームに搭載され、前記励振電極および前記検出電極は、前記ロボットアームの腕に設けられていてもよい。
【0017】
また他の本発明は、本発明の物体検出装置と、検出対象である前記物体に設けられた導電性部材と、を有した物体検出システムである。
【0018】
本発明において、前記導電性部材は、Alテープであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の物体検出装置によれば、物体の検知範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の物体検出器の構成について示した図。
【
図6】壁4に第1実施形態の物体検出装置を設けた例を示した図。
【
図7】自動搬送車100に本発明の物体検出装置を搭載した例を示した図。
【
図8】自動搬送車100に本発明の物体検出装置を搭載した例を示した図。
【
図9】ロボットアーム200に本発明の物体検出装置を搭載した例を示した図。
【
図10】第2実施形態の物体検出器の構成について示した図。
【
図11】第3実施形態の物体検出器の構成について示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図を参照に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の物体検出装置の構成を示した図である。
図1に示すように、第1実施形態の物体検出装置は、励振器10と、励振電極11と、検出電極12と、検出器13と、を有している。第1実施形態の物体検出装置は、自動車1に搭載されており、自動車1の周囲の人や障害物などの物体を検知するものである。
【0023】
励振器10は、所定周波数の電気信号を出力する装置である。電気信号の周波数は、車両の周囲に電磁場を形成可能な周波数であれば任意の周波数でよく、たとえば1~100MHzである。励振器10は、検出器13および励振電極11に接続されており、励振器10から出力された電気信号の一部は検出器13に入力され、他部は励振電極11に入力される。
【0024】
励振電極11は、励振器10からの電気信号に基づき、励振電極11近傍から検出電極12近傍にかけて電磁場を発生させるものである。励振電極11は、
図2に示すように、自動車1の前バンパー2の外側の面に設けられている。前バンパー2は樹脂製であり絶縁体である。
【0025】
励振電極11の材料は、導電性材料であれば任意の材料でよい。たとえば、Alなどのテープ、ITOなどの透明電極、導電性塗料であってもよい。
【0026】
励振電極11の形状は帯状(長尺な長方形)であり、励振電極11の長手方向が前バンパー2の長手方向と揃うように配置されている。なお、励振電極11の形状は長方形に限るものではなく、電磁場を形成可能であって物体を検知したい領域に応じた任意の形状とすることができる。第1実施形態では、バンパー2の近傍の領域を物体検知領域とするため、励振電極11の形状もバンパー2の長手方向に沿った長方形としている。励振電極11を長方形とする場合には、長手方向の長さを励振器10の出力する電気信号の波長の1/6以下とすることが好ましい。電磁波の放射を抑制し、効率的に非放射の電磁場を形成することができる。
【0027】
検出電極12は、その検出電極12近傍の電磁場を検出して電気信号として出力するものである。検出電極12は、
図2に示すように、自動車1の前バンパー2の外側の面に、励振電極11から離間して設けられている。
【0028】
検出電極12の材料は、励振電極11の材料と同様に導電性材料であれば任意であり、励振電極11の材料と同一としてもよいし異なる材料としてもよい。
【0029】
検出電極12の形状は、励振電極11と同様に帯状であり、検出電極12の長手方向が前バンパー2の長手方向と揃うように配置されている。励振電極11と検出電極12の間隔は、励振電極11によって形成される電磁場の範囲内に検出電極12が位置するのであれば任意の距離でよい。この励振電極11と検出電極12の間隔は、ある程度の大きさの電気抵抗が確保できる間隔であればよく、たとえば100kΩ以上の電気抵抗であることが好ましい。なお、検出電極12の形状は長方形に限るものではなく、電磁場を検出可能であって、物体を検知したい領域に応じた形状であれば任意の形状とすることができる。第1実施形態では、前バンパー2の近傍の領域を物体検知領域とするため、検出電極12の形状も前バンパー2の長手方向に沿った長方形としている。検出電極12を長方形とする場合には、長手方向の長さを励振器10の出力する電気信号の波長の1/6以下とすることが好ましい。電磁波の放射を抑制し、効率的に非放射の電磁場を形成することができる。
【0030】
励振電極11や検出電極12を複数の導電体で構成し、それら複数の導電体が容量結合、磁界結合などの非接触な電気的結合をするように構成してもよい。これにより、励振電極11や検出電極12の配置自由度を高めることができ、電磁場の形成領域の制御が容易となる。たとえば、
図3に示すように、前バンパー2の内側の面に励振器10と接続する第1励振電極110を設け、外側の面に第2励振電極111と第3励振電極112を設け、第1励振電極110と第2励振電極111、第3励振電極112が容量結合によって電気的に接続された構成としてもよい。
図3(a)は前バンパー2の断面、(b)は前バンパー2の表面側を見た図である。
【0031】
検出器13は、検出電極12および励振器10に接続されている。検出器13は、検出電極12からの電気信号と励振器10からの電気信号を乗算して差周波数信号(以下、検出信号とする)を生成し出力する装置である。ここで、検出電極12は励振電極11によって形成される電磁場を検出するものであり、その電磁場は励振器10からの電気信号によって形成されるものであるから、検出電極12からの電気信号の周波数は励振器10からの電気信号の周波数と同じである。検出電極12からの電気信号と励振器10からの電気信号の差周波数は0であるから、検出信号は直流信号である。
【0032】
なお、第1実施形態の物体検出装置では、励振電極11、検出電極12を自動車1の前バンパーに設けているが、自動車1の絶縁体の部分であれば任意の位置に設けてよい。たとえば、後バンパーに設けることで、自動車の後方の物体を検知できるようにしてもよい。また、励振電極11や検出電極12を透明導電性材料とすることで、リアガラスなどのガラスに励振電極11や検出電極12を設けることもできる。また、リアガラスなどに設けられている熱線自体を励振電極11や検出電極とすることもできる。励振電極11、検出電極12を設ける絶縁体は、抵抗率が1MΩ・m以上であることが好ましい。
【0033】
また、励振電極11と検出電極12の両方を絶縁体に設ける必要はなく、一方のみを絶縁体に設け、他方は導電体に設けてもよい。ただし、両方を絶縁体に設ける方が電磁場の形成領域を所望の範囲に限定することが容易となり、物体の検知精度の向上を図ることができる。
【0034】
次に、第1実施形態の物体検出装置の動作について説明する。
【0035】
第1実施形態の物体検出装置では、励振器10から出力された電気信号によって励振電極11から検出電極12にかけてその近傍に電磁場を形成する。電磁場は、自動車1の前方、前バンパー2に沿って一定の距離まで形成される(
図4参照)。検出電極12は、この電磁場を電気信号として検出する。そして、検出器13は、検出電極12からの電気信号と励振器10からの電気信号とを乗算して検出信号を生成し出力する。
【0036】
第1実施形態の物体検出装置では、前バンパー2近傍の電磁場形成領域が物体の検知範囲となる。前バンパー2に人や障害物などの物体が近づき、電磁場の形成領域に物体が侵入すると、電磁場が変動して検出電極12が検出する電気信号の振幅と位相が変化し、検出器13からの検出信号の出力が変化する。したがって、検出信号の出力の変動を計測することによって自動車1前方の物体を検知することができる。また、励振器10からの電気信号を基準としているので振幅が大きく安定しており、検出電極12からの電気信号に対するわずかな位相変化を高感度にとらえることができる。特に、検出電極12からの電気信号に対して、励振器10の出力する周波数と同じ周波数成分をバンドパスフィルタなどで抽出し、抽出した信号をsin波状から矩形波状に2値化する処理を、検出器13に入力した直後に適用することで、検出電極12からの位相変化をより高感度に検出することができる。そのため、物体も安定して高感度に検知することができる。また、物体が励振電極11や検出電極12に接触すると検出信号が大きく変動するので、物体の接触も検知することが可能である。また、物体の検知範囲は電磁場が形成されている範囲であり、その範囲は励振電極11、検出電極12の範囲によって容易に設定することができる。そのため、物体の検知範囲を広く取ることができ、死角を低減することができる。
【0037】
以上、第1実施形態の物体検出装置によれば、物体を広範囲に検知することができ、死角を低減することができる。また、安定して高感度に物体を検出することができる。また、超音波センサなど従来の物体検出装置では検出が困難であった物体、たとえば、開口率の大きな金網フェンス、細いポール、鋭角な物体なども検出が可能である。また、周囲の環境に依存することなく物体の検出を行うことができ、たとえば、強風環境、著しく高温または低温な環境でも物体を検出することができる。
【0038】
(変形例1)
第1実施形態の物体検出装置を用いて物体を検出するに際して、物体の検出したい位置に導電性部材を設けてもよい。たとえば、検知対象の物体にAlなどの金属テープを貼ったり、導電性塗料を塗ったりする。第1実施形態の物体検出装置では、金属の検知感度が高いため、物体に導電性部材を設けることにより、物体の検知がより確実となる。たとえば、障害物にAlテープを貼ることで障害物の接近をより精度良く検出することができ、自動車1と障害物との衝突を回避することができる。具体的には、
図5に示すように、コの字型の壁で囲まれた車庫3に、第1実施形態の物体検出装置を搭載して前方と後方の物体を検知できるようにした自動車1を誘導する例である。この場合、車庫3の壁面にAlテープ14を貼りつけることで車庫3の壁面を高感度に検出することができ、車庫3の壁と接触しないように自動車1を車庫3内に誘導することができる。
【0039】
(変形例2)
第1実施形態では、自動車1に物体検出装置を搭載して自動車1の周囲の障害物を検知しているが、逆に自動車1の周囲の障害物に物体検出装置を搭載し、自動車1を検知するようにしてもよい。たとえば、
図6に示すように、障害物である壁4に第1実施形態の物体検出装置5を設け、物体検出装置5によって自動車1を検出した場合に警報装置6によって自動車1側に壁4の接近を知らせることで、壁4との衝突を回避することができる。この際、自動車1にAlテープ14など導電性材料を設けることで変形例1と同様に自動車1を高感度に検知することができる。
【0040】
(変形例3)
第1実施形態では、物体検出装置を自動車1に設けていたが、本発明の物体検出装置は任意の移動体、静止体に設けることができる。
【0041】
図7は、自動搬送車100に本発明の物体検出装置を搭載した例である。
図7のように、自動搬送車100は、荷物101を載置する平板状の台座部102を有しており、台座部8の下面側には車輪104が設けられ、台座部102の上面端部には自動搬送車100の移動を制御する制御部103を有している。また、自動搬送車100は4つの物体検出装置を搭載しており、台座部102の4つの側面それぞれに、励振電極11と検出電極12が設けられている。台座部102側面の励振電極11、検出電極12によって自動搬送車100の四方(前方、後方、右側方、左側方)にそれぞれ電磁場を形成することができ、四方に存在する障害物を検知することができ、障害物の大まかな方向(前方、後方、右側方、左側方のいずれであるか)を検知することができる。
【0042】
なお、障害物の方向を検知する必要がない場合は、
図8のように、台座部102の各側面の励振電極11と検出電極12をそれぞれ連続させて一続きの環状にしてもよい。障害物の方向を検知することはできないが、障害物の存在は検知することができる。
【0043】
また、
図9は、ロボットアーム200に本発明の物体検出装置を搭載した例である。
図9のように、ロボットアーム200は直方体上の腕201を有しており、腕201の4つの面において、対向する2つの面に励振電極11を設け、他の2面に検出電極12を設けている。ロボットアーム200に本発明の物体検出装置を搭載することにより、ロボットアーム200の周囲の物体を簡易に検知することが可能となり、ロボットアーム200が人や物に衝突することを回避したり、ロボットアーム200同士の衝突を回避したりすることが可能となる。また、ロボットアーム200に超音波センサを設けた従来の方法では、検知範囲が狭いことから多数の超音波センサを設ける必要があり、重量が増加して慣性力が増大するため、ロボットアーム200の制御性が劣化したり、超音波センサが脱落したりするなどの懸念があった。しかし、本発明では励振電極11や検出電極12がシート状で軽いため慣性力の増加はわずかであり、そのような懸念はない。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態の物体検出装置は、
図10に示すように、検出電極12を検出電極12A~12Dの4つに分割し、それぞれに対応した4つの検出器13A~13Dを設けた構成であり、他は第1実施形態と同様である。検出電極12A~Dは、それぞれ長方形状であり、バンパー2の長手方向に所定間隔で配列されている。検出器13A~Dは、検出電極12A~Dにそれぞれ接続されており、励振器10に共通に接続されている。
【0045】
第2実施形態の物体検出装置では、物体から検出電極12A~12Dまでの距離に応じて検出電極12A~12Dが出力する電気信号の位相が変化し、物体に近い検出電極12A~12Dほど検出電極12A~12Dが出力する電気信号の位相変化量が大きくなる。そのため、検出器13A~13Dから出力される検出信号は、対応する検出電極12A~12Dが物体に近いほど出力が大きくなる。たとえば、障害物が検出電極12Dに最も近い場合、検出器13Dからの出力が最も大きくなる。このように、第2実施形態の物体検出装置では、検出電極12A~12Dと検出する物体の位置とが対応しているため、物体の位置を検知することができる。
【0046】
なお、第2実施形態では検出電極12と検出器13を4つとした例を示したが、4つに限らず2以上の任意の数でよい。
【0047】
(第3実施形態)
第3実施形態は、
図11に示すように、互いに周波数の異なる4つの励振器10A~10Dを設け、励振器10A~10Dにそれぞれ接続する励振電極11A~11Dを設けた構成であり、他は第1実施形態と同様である。励振電極11A~11Dは、それぞれ長方形状であり、バンパー2の長手方向に所定間隔で配列されている。検出器13は、検出電極12と接続され、励振器10A~10Dのうち1つ(10Dとする)と接続されている。
【0048】
第3実施形態の物体検出装置では、励振電極11A~11Dから出力される電磁場の周波数が互いに異なっている。以下、励振電極11A~11Dの周波数をf1~f4とする。そして、励振電極11A~11Dから物体までの距離に応じて検出電極12が出力する電気信号の各周波数成分(f1~f4)が変化し、検出電極12が出力する電位信号において物体に近い励振電極11A~11Dに対応する周波数成分の出力が大きくなる。たとえば、障害物が励振電極11Bに最も近い場合、検出器13からの出力のf1-f4、f2-f4、f3-f4、直流(f4-f4)の4つの成分のうち、周波数f2-f4が最も出力が大きくなる。このように、第2実施形態の物体検出装置では、各周波数成分と検出する物体の位置とが対応しているため、物体の位置を検知することができる。
【0049】
なお、第3実施形態では、励振器10と励振電極11を4つとした例を示したが、4つに限らず2以上の任意の数でよい。
【0050】
(付記)
(技術案1)
周囲の物体を検出する物体検出装置において、
所定の周波数の電気信号を生成する励振器と、
前記励振器からの電気信号によって励振され電磁場を発生させる励振電極と、
電磁場を検出して電気信号を出力する検出電極と、
前記励振器からの電気信号と前記検出電極からの電気信号とを乗算して差周波数信号である検出信号を出力する検出器と、
を有し、
前記励振電極と前記検出電極のうち少なくとも一方は絶縁体に設けられ、
前記検出信号の変動により前記物体を検出する、
ことを特徴とする物体検出装置。
(技術案2)
前記励振電極または前記検出電極は、2以上の互いに分離した導電体で構成され、それら導電体が互いに非接触な電気的結合をしている、ことを特徴とする技術案1に記載の物体検出装置。
(技術案3)
複数の前記検出電極と、各前記検出電極にそれぞれ接続された複数の前記検出器を有し、
各前記検出器の前記検出信号から前記物体の位置を検出する、ことを特徴とする技術案1または技術案2に記載の物体検出装置。
(技術案4)
互いに周波数の異なる電気信号を生成する複数の前記励振器と、各前記励振器にそれぞれ接続された複数の前記励振電極を有し、
前記検出器は、各前記励振器のうち1つからの電気信号と前記検出電極からの電気信号とを乗算して差周波数信号である検出信号を出力し、
前記検出信号の周波数成分から前記物体の位置を検出する、ことを特徴とする技術案1または技術案2に記載の物体検出装置。
(技術案5)
前記物体検出装置はバンパーを有する車両に搭載され、
前記励振電極および前記検出電極は、前記車両のバンパーに設けられている、ことを特徴とする技術案1から技術案4までのいずれかに記載の物体検出装置。
(技術案6)
前記物体検出装置は自動搬送車に搭載され、
前記自動搬送車は、荷物を載置する台座部を有し、
前記励振電極および前記検出電極は、前記台座部の側面もしくは前記自動搬送車の外郭部に設けられている、ことを特徴とする技術案1から技術案4までのいずれかに記載の物体検出装置。
(技術案7)
前記物体検出装置はロボットアームに搭載され、
前記励振電極および前記検出電極は、前記ロボットアームの腕に設けられている、ことを特徴とする技術案1から技術案4までのいずれかに記載の物体検出装置。
(技術案8)
技術案1から技術案7までのいずれか1項に記載の物体検出装置と、検出対象である前記物体に設けられた導電性部材と、を有した物体検出システム。
(技術案9)
前記導電性部材は、Alテープである、ことを特徴とする技術案8に記載の物体検出システム。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車両やロボットアームの衝突回避に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:自動車
2:前バンパー
10、10A~10D:励振器
11、11A~11D:励振電極
12、12A~12D:検出電極
13、13A~13D:検出器
100:自動搬送車
200:ロボットアーム