(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157787
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】コイルユニット
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
H01F38/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067920
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊英
(57)【要約】
【課題】通電時の熱膨張によってコイルの一部に応力が集中することを抑制することができるコイルユニットを得る。
【解決手段】コイルユニット1は、非接触充電システムにおける地上又は電気自動車に配置されるコイルユニット1であって、平板状のコイルケース50と、コイルケース50の表面に渦巻き状に形成されたコイル収容溝内54に収容され、コイルケース50の表面上に渦巻き状に配置されるコイル2と、コイルケース50及びコイル2を収容する装置ケース10と、を備え、コイル2は、コイル収容溝内54に収容された状態でコイル収容溝54の幅方向両側の側面541に当接し、コイル収容溝54の深さHは、コイル2のコイル径Dよりも大きく設定され、コイル2が熱膨張によって伸びたときに、コイル収容溝54の深さ方向へコイルの撓みを許容する撓み代H1が設けられている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に配置された送電側のコイルユニットと電気自動車に配置された受電側のコイルユニットとの間で電力を伝送し、前記電気自動車に搭載されたバッテリを充電する非接触充電システムにおける地上又は電気自動車に配置されるコイルユニットであって、
平板状のコイルケースと、
前記コイルケースの表面に渦巻き状に形成されたコイル収容溝内に収容され、前記コイルケースの表面上に渦巻き状に配置されるコイルと、
前記コイルケース及び前記コイルを収容する装置ケースと、を備え、
前記コイルは、前記コイル収容溝内に収容された状態で前記コイル収容溝の幅方向両側の側面に当接し、
前記コイル収容溝の深さは、前記コイルのコイル径よりも大きく設定され、前記コイルが熱膨張によって伸びたときに、前記コイル収容溝の深さ方向へ前記コイルの撓みを許容する撓み代が設けられているコイルユニット。
【請求項2】
記コイル収容溝の幅は、前記コイルのコイル径よりも小さく設定され、
前記コイルは、前記コイル収容溝の深さ方向の径を長径とする楕円状に変形された状態で前記コイル収容溝に収容され、前記コイルが熱膨張によって伸びたときに、前記コイル収容溝の延在方向への移動が許容される請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記コイル収容溝の幅は、前記コイルのコイル径との差分が0.1mm~0.3mmの範囲内で前記コイル径よりも小さく設定されている請求項2に記載のコイルユニット。
【請求項4】
前記コイルは、ポリエステル繊維によって被覆されたリッツ線で構成されている請求項1又は2に記載のコイルユニット。
【請求項5】
前記コイルケースに取り付けられて前記コイル収容溝の開口部を塞ぐコイルケースカバーを備える請求項1又は2に記載のコイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2に開示されるように、地上に配置された送電側のコイルユニットと電気自動車に配置された受電側のコイルユニットとの間で電力を伝送し、前記電気自動車に搭載されたバッテリを充電する非接触充電システムが知られている。これらの非接触充電システムのコイルユニットでは、渦巻き状に形成されたコイルを保持するために、渦巻き状のコイル収容溝をコイルケースに形成することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2013/142064号公報
【特許文献2】特開2017-103320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非接触充電システムのコイルユニットにおいて、電力伝送用のコイルは、通電時の発熱によりコイル収容溝の内側で熱膨張するため、これにより生じたコイルの撓みによってコイルの一部に応力が集中するという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、通電時の熱膨張によってコイルの一部に応力が集中することを抑制することができるコイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るコイルユニットは、地上に配置された送電側のコイルユニットと電気自動車に配置された受電側のコイルユニットとの間で電力を伝送し、前記電気自動車に搭載されたバッテリを充電する非接触充電システムにおける地上又は電気自動車に配置されるコイルユニットであって、平板状のコイルケースと、前記コイルケースの表面に渦巻き状に形成されたコイル収容溝内に収容され、前記コイルケースの表面上に渦巻き状に配置されるコイルと、前記コイルケース及び前記コイルを収容する装置ケースと、を備え、前記コイルは、前記コイル収容溝内に収容された状態で前記コイル収容溝の幅方向両側の側面に当接し、前記コイル収容溝の深さは、前記コイルのコイル径よりも大きく設定され、前記コイルが熱膨張によって伸びたときに、前記コイル収容溝の深さ方向へ前記コイルの撓みを許容する撓み代が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコイルユニットでは、平板状のコイルケースの表面に渦巻き状のコイル収容溝が形成されており、コイル収容溝内にコイルを収容することで、コイルケースの表面に渦巻き状にコイルが配置される。ここで、通電時のコイルは、発熱による熱膨張によって撓みが生じるため、コイル収容溝内に収容された状態でコイル収容溝の幅方向両側の側面にコイルを当接させることにより、溝幅方向の撓みを規制し、溝の延在方向に沿ったコイルの移動を促すことができる。また、コイル収容溝の深さは、コイルのコイル径よりも大きく設定されており、コイル収容溝の深さ方向の撓みを許容する撓み代が設けられている。かかる構成では、コイルが熱膨張によって伸びたときに、溝の延在方向に沿ったコイルの移動を促すと共にコイル収容溝内において溝の深さ方向の撓みを許容することができる。従って、コイル収容溝のR部でのコイルの撓み抑制による応力が溝の深さ方向に撓んで緩和され、コイルの局所的な折れ曲がりを抑制ことができる。これにより、通電時の熱膨張によってコイルの一部に応力が集中することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るコイルユニットの平面側斜視図であって、一部を分解して示している。
【
図2】実施形態に係るコイルユニットの底面側斜視図であって、一部を分解して示している。
【
図5】コアケースとコアケースに収容されたコアを示す部分拡大図である。
【
図6】
図5のVI-VI線に沿ったコイルユニットの部分断面図である。
【
図7】
図5のVII-VII線に沿ったコイルユニットの部分断面図である。
【
図8】
図5のVIII-VIII線に沿ったコイルユニットの部分断面図である。
【
図9】コイルが収容されたコイルケースの底面図である。
【
図10】
図9のX-X線に沿ったコイルケースの断面図である。
【
図11】コイル収容溝内におけるコイルの応力発生メカニズムを説明するための模式図である。
【
図12】実施形態に係るコイル収容溝を延在方向と直交する方向で切断した拡大断面図であって、溝内に収容される前のコイルと収容された後のコイルの状態を示す概略図である。
【
図13】センサ基板を収容した基板ケースの底面側斜視図である。
【
図14】本実施形態に係る非接触充電システムの概略図である。
【
図15】本実施形態に係るコイルユニットを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る非接触充電システム100と、非接触充電システム100に用いられるコイルユニット1について
図1~
図15を参照して説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、説明の便宜上、各図中に適宜示す上下、左右、前後の矢印で示す方向を、それぞれ上下方向、左右方向、前後方向と定義して説明する。また、各図中においては、図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0010】
図14に示すように、非接触充電システム100は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の電気自動車200を充電するためのシステムである。非接触充電システム100では、地上に配置された送電側のコイルユニット1Aと電気自動車200に配置された受電側のコイルユニット1Bとの間で電力を伝送し、電気自動車200に搭載されたバッテリ300を充電する。電力の伝送方法は、送電側のコイルユニット1Aに収容された一次側のコイル2と、受電側のコイルユニット1Bに収容された二次側のコイル2とを対向して配置し、コイル間の電磁誘導を利用して電力を伝送する。具体的に、商用電源400から送電側のコイルユニット1Aに交流の電力を供給することで一次側のコイル2に誘導電流を流し、磁界を発生させる。発生した磁界は二次側のコイル2に達し、二次側のコイル2に誘導電流が流れることによって電力を伝送する。
【0011】
以下では、電気自動車200に配置された受電側のコイルユニット1Bを中心に構成を説明する。また、送電側のコイルユニット1Aと受電側のコイルユニット1Bを区別しない場合は、単にコイルユニット1として説明する。
【0012】
図15は、受電側のコイルユニット1Bの主要部を示すブロック図である。この図に示すように、コイルユニット1Bは、コイル2、電源回路部3、電力変換部4、制御部5及びセンサコイル部6を有している。電源回路部3は、送電側のコイルユニット1Aから受電した交流電力を利用して制御部5に供給する制御用電源を生成する。
【0013】
電力変換部4は、複数のスイッチング素子を含む整流部4Aを有する。整流部4Aは、送電側のコイルユニット1Aから受電した交流電力を直流電力に変換し、バッテリ300に蓄電する。
【0014】
制御部5は、コイルユニット1Bの各種制御信号を生成する機能を有する。具体的に、制御部5は、充電制御部5A、センサ制御部5B、及びシステム監視制御部5Cを有している。充電制御部5Aは、バッテリ300に充電される電力を制御する。センサ制御部5Bは、送電側のコイルユニット1Aと受電側のコイルユニット1Bの相対的な位置関係を診断する機能を有する。本実施形態の一例では、センサコイル部6に対する通電を制御して、受電側のコイルユニット1Aに設けたセンサコイル部6(不図示)との間の電磁誘導作用によりお互いの相対的な位置関係を診断する。これにより、電気自動車200では、センサ制御部5Bの診断結果に基づいて、送電側のコイルユニット1Aと受電側のコイルユニット1Bとの間の位置合わせを行うことができる。
【0015】
コイルユニット1Bでは、上述したコイル2、電源回路部3、電力変換部4、制御部5及びセンサコイル部6の各構成が装置ケース10に収容されている。装置ケース10は、
図1及び
図2に示すように、コイル2等を収容する収容空間S1,S2が形成されたケース本体12と、ケース本体12の開口部121,122を塞ぐ第1カバー部材14と第2カバー部材16とを有する。
【0016】
ケース本体12は、鉄やアルミニウム合金等の金属材料で形成されており、前後方向及び左右方向に所定の幅を有し、上下方向に扁平な箱状に形成されている。ケース本体12は、前壁部12A、後壁部12B、左壁部12C、右壁部12D、上壁部12E、底壁部12F及び区切り壁部12Gを備えている。区切り壁部12Gは、前壁部12Aの中間部と後壁部12Bの中間部とを繋ぐように前後方向に延在している。上壁部12Eは、区切り壁部12Gの上端部、区切り壁部12Gよりも右側の前壁部12A及び後壁部12Bの上端部、並びに、右壁部12Dの上端部に繋がって一体に設けられている。底壁部12Fは、区切り壁部12Gの下端部、区切り壁部12Gよりも左側の前壁部12A及び後壁部12Bの下端部、並びに、左壁部12Cの下端部に繋がって一体に設けられている。ケース本体12では、上壁部12E、区切り壁部12G及び底壁部12Fの上下左右断面がクランク形状になっている。従って、ケース本体12では、区切り壁部12Gによってケース本体12の内部空間(収容空間)が左右二つに区画され、それら左右の内部空間が互いに上下逆方向に開口するようになっている。
【0017】
かかる構成のケース本体12には、底壁部12F、区切り壁部12G、左壁部12C、前壁部12A及び後壁部12Bによって側壁部分が構成された第1収容空間S1が形成される。第1収容空間S1は、上方側に開口する第1開口部121を有しており、第1開口部121は、ケース本体12と同一の金属材料で形成された矩形板状の第1カバー部材14によって塞がれる。第1収容空間S1の内部には、コイル2が接続される配線基板9が収容される。この配線基板9には、上述の電源回路部3、電力変換部4、制御部5が実装されている。
【0018】
また、ケース本体12には、上壁部12E、区切り壁部12G、右壁部12D、前壁部12A及び後壁部12Bによって側壁部分が構成された第2収容空間S2が形成される。第2収容空間S2は、下方側に開口する第2開口部122を有しており、第2開口部122は、樹脂材料で形成された第2カバー部材16によって塞がれる。この第2カバー部材16は、上方側に開口した扁平な矩形箱状に形成されている。第2カバー部材16は、第2収容空間S2の側壁部分と底壁部分(上壁部12E)の中央部とに一体形成された複数のボス部(符号省略)を介して、外周縁部と底面の中央部とがケース本体12にネジ固定される。
【0019】
第2収容空間S2の内部には、格子枠状に形成されたコアケース20が収容される。コアケース20は、ケース本体12の上壁部12Eに固定される。また、上壁部12Eに固定されたコアケース20に対して、コア40(
図2では図示省略)、コイルケース50、コイル2、基板ケース60がこの順に重ねて配置され、第2収容空間S2に収容される。以下、ケース本体12の第2収容空間S2と、当該第2収容空間S2に収容されるコアケース20、コア40、コイルケース50、コイル2及び基板ケース60について詳細に説明する。
【0020】
(ケース本体)
図3は、ケース本体12を下方側から見た下面図である。この図に示すケース本体12の下面側は、例えば、作業台80(
図7等参照)の上で第2収容空間S2の内部に各部材の組付けを行う作業工程においては、作業台80の上方側に向けて配置される。
【0021】
図3に示すように、ケース本体12は、第2収容空間S2内で上壁部12Eから突出して設けられた複数の凸部18を有している。複数の凸部18は、上壁部12Eの中央部を中心に放射状に配置されている。各凸部18は、上壁部12Eの一部を押し出したように形成されており、第2収容空間S2内に突出した角筒状に形成されている。各凸部18は、後述するコアケース20を上壁部12Eに固定した際に、コアケース20の貫通穴24を通ってコア40に接触する構成となっている。また、複数の凸部18において、コアケース20と対向する表面には、ネジ孔17が形成されている。ネジ孔17の内周面には雌ネジが形成され、後述する金属ネジ34(
図5等参照)が螺合する。
【0022】
複数の凸部18が配置されていない上壁部12Eの中央側と外周側には、複数の差込口19が形成されている。差込口19は、上壁部12Eの一部を押し出したように形成されており、第2収容空間S2の深さ方向(コイルユニット1の上方側)に窪んだ矩形凹部で構成されている。この差込口19には、後述する基板ケース60に設けられた柱状の固定脚部66(
図7参照。)が挿入される。
【0023】
(コアケース)
図4は、コアケース20を下方側から見た下面図である。この図に示すコアケース20の下面側は、例えば、作業台80の上で第2収容空間S2の内部に組付けを行う作業工程においては、作業台80の上方側に向けて配置される。
【0024】
図4に示されるように、コアケース20は、前後方向及び左右方向に所定の幅を有し、上下方向に所定の厚みを有する樹脂製の板状部材である。コアケース20の中央部分には、コアケース20を上下方向に貫通する矩形状の開口部22が形成されている。当該開口部22の周囲には、コアケース20を上下方向に貫通する複数の貫通穴24が形成されている。複数の貫通穴24は、開口部22を中心に放射状に配置されており、ケース本体12に設けられた凸部18に対応している。コアケース20は、後述する金属ネジ34(金属製のネジ)を用いてケース本体12の上壁部12Eに固定される。コアケース20がケース本体12に固定されると、複数の貫通穴24のそれぞれに、上壁部12Eから突出した凸部18が挿通される。かかる構成のコアケース20は、全体として格子枠状に形成されていると換言することができる。
【0025】
コアケース20は、貫通穴24の内側に複数の第1固定部26を有しており、複数の第1固定部26を介してケース本体12の上壁部12E(凸部18)に固定される(
図7参照)。また、貫通穴24の外側、即ち、コアケース20の外周部及び内周部(開口部22の周縁)には、複数の第2固定部28が設けられている。コアケース20は、コアケース20に対して重ねられるコイルケース50及び基板ケース60と、複数の第2固定部28を介して固定される(
図8参照)。コアケース20の外周部及び内周部には、更に、複数の接着剤充填部30が設けられている。複数の接着剤充填部30は、一例として、コアケース20の外周部から外側に突出した四つの接着剤充填部30と、コアケース20の内周部から内側に突出した二つの接着剤充填部30とで構成されている。各接着剤充填部30は、内部に接着剤を充填可能な矩形フレーム状に形成されている。この接着剤充填部30には、後述する基板ケース60に設けられた柱状の固定脚部66が挿通された状態で、接着剤Yが充填される。かかる構成では、ケース本体12、コアケース20及び基板ケース60が、接着剤充填部30を介して互いに接着固定される(
図8参照)。各固定部の詳細については、後述する。
【0026】
コアケース20の下面は、各貫通穴24の周囲を囲うように不連続に立設された壁部32によって、マス目状に仕切られている。壁部32によって仕切られた各区画は、それぞれがコア収容部を構成しており、各区画の内側に平板状のコア40(
図5参照)が収容される。これにより、コアケース20の開口部22を中心に複数のコア40が放射状に配置される。各コア40は、貫通穴24を塞ぐように配置される。
【0027】
図5には、コアケース20の下面側から見た複数のコア40の収納状態が示されている。また、
図6には、
図5のVI-VI線位置で切断した場合のコイルユニット1の断面が示されている。なお、
図6の断面は、第2収容空間S2の内部に組付けを行う作業工程を想定して図示されており、作業台80の上に置かれたケース本体12に対し、紙面下方側から、コアケース20、コア40、コイルケース50、コイル2、基板ケース60がこの順で重ねられて収容された場合の上下関係を示している。
【0028】
図5及び
図6に示すように、各コア40は、矩形板状のフェライトコアで構成されている。複数のコア40は、コアケース20の下面(ケース本体12の上壁部12Eと対向する面とは反対側の面)側に配置される。各コア40の収納状態では、コア40の周囲を囲むように複数の壁部32が配置される。また、コア40は、コアケース20に形成された貫通穴24を塞ぐように配置される。貫通穴24の深さは、ケース本体12の凸部18の高さ寸法と略同一に設定されており、凸部18が貫通穴24に挿通された状態では、凸部18の高さ位置がコアケース20の下面の高さと略同一に設定されている。従って、コア40によって貫通穴24が塞がれると、貫通穴24に挿通された凸部18がコア40に接触する。これにより、コア40で発生する熱を凸部18を介してケース本体12へ伝達する放熱経路が形成され、コアの冷却効率が高められている。
【0029】
ここで、コア収容部に収容された各コア40は、封止樹脂Xによって封止されている。封止樹脂Xは、コア40とコアケース20の下面との間、コア40と複数の壁部32との間、及び、隣接するコア40同士の隙間を封止するように充填される。これらの封止樹脂Xは、コアケース20にコア40を収容する工程において充填される。具体的には、ケース本体12の上壁部12Eにコアケース20を固定した後、貫通穴24の内側面241と貫通穴24に挿通された凸部18の側面との間に形成される空間部に封止樹脂Xを充填する。その後、コアケース20の下面にコア40を重ねることでコア40とコアケース20の下面との間が封止される。更に、コア40と複数の壁部32との間に形成される間隙と、隣接するコア40同士の間に形成される隙間とに追加の封止樹脂Xを充填する。かかる構成では、コア40の外周部が封止樹脂Xによって封止されるため、封止樹脂Xが緩衝材となり外部から入力される衝撃や振動を吸収する。また、急激な温度変化によってコア40が熱膨張した場合においても、コアケース20との間に封止樹脂Xが介在することにより、コア40に対する応力の発生を抑制する。これにより、コア40の保護性能が高められている。
【0030】
貫通穴24の内側面241は、貫通穴24の内側に向かって傾斜されているため、貫通穴24の内側面と凸部18の側面との間に形成される空間部の形状は、先細りしたすり鉢状になる。そのため、封止樹脂Xの充填時においては、重力方向に従って封止樹脂Xがスムーズに流し込まれる。従って、余剰分の樹脂が生じにくい構造になっており、樹脂量を最適化することができる。また、空間部に空隙が生じることも抑制することができる。
【0031】
本実施形態では更に、コア40とケース本体12の凸部18との間と、コア40とコイルケース50の間の両方に、シート状の放熱部材42を配置している。この放熱部材42は、例えば、シート状の基材の表面に熱伝導率に優れるゲルを塗布して構成される。係る構成の放熱部材42も封止樹脂Xと同様に緩衝材としての機能を備えている。
【0032】
(ケース本体に対するコアケースの固定)
次に、
図7を参照して、ケース本体12に対するコアケース20の固定について説明する。
図7には、
図5のVII-VII線位置で切断した場合のコイルユニット1の断面が示されている。なお、
図7の断面も
図6と同様に、第2収容空間S2の内部に組付けを行う作業工程を想定して、作業台80の上に載置された状態が図示されている。
【0033】
図7に示すように、コアケース20とケース本体12の上壁部12Eは、コアケース20の貫通穴24の内側に設けた複数の第1固定部26を介して金属ネジ34によって固定されている。第1固定部26は、貫通穴24の内側面241から内側に突出して設けられた板状の小片で構成されている。第1固定部26は、ケース本体12の凸部18に形成したネジ孔17に対応する位置に取付孔261が貫通形成されている。この第1固定部26には、金属ネジ34が取付孔261に挿通される。金属ネジ34は、凸部18のネジ孔17に螺合することにより、コアケース20をケース本体12の上壁部12Eに固定する。かかる構成では、金属ネジ34が貫通穴24の内側に配置されるため、金属ネジ34が、コア40の端部から離れた位置に配置される。
【0034】
ここで、一般的な金属ネジ34は、鉄などの強磁性体材料で形成されることが多いため、コイル2の周囲で生じた磁界の影響を受けて磁化されやすい部品となっている。従って、金属製のケース本体12とコアケース20とを固定する固定点では、金属ネジ34がコア40の端部の近傍に配置されると、コイルの内周側又は外周側の端部で生じた磁束がコアの端部を回り込むようにして金属ネジ34に到達し、磁化された金属ネジ34により、ケース本体12が磁化の影響を受ける場合がある。このように、ケース本体12に磁束が到達すると、スチール等の強磁性体でケース本体12を形成した場合、コイル2の電磁誘導作用による誘導加熱によりケース本体12が発熱してしまう。これに対して、本実施形態では、金属ネジ34をコア40の端部から離れた位置に配置することができるため、上記のようなコイル2の電磁誘導作用によるケース本体12の発熱を抑制することができる。
【0035】
(コアケースに対するコイルケース及び基板ケースの固定)
次に、
図8を参照して、コアケース20に対するコイルケース50及び基板ケース60の固定について説明する。
図8には、
図5のVIII-VIII線位置で切断した場合のコイルユニット1の断面が示されている。なお、
図8の断面は、
図6及び
図7と同様に、第2収容空間S2の内部に組付けを行う作業工程を想定して、作業台80の上に載置された状態が図示されている。
【0036】
図8に示すように、コアケース20には、コイルケース50と基板ケース60がこの順に重ねられて固定される。コイルケース50及び基板ケース60は、コアケース20の貫通穴24の外側に設けた複数の第2固定部28を介して、樹脂ネジ44(樹脂製のネジ)と接着剤Yを用いて固定されている。複数の第2固定部28は、コアケース20の外周部と内周部(開口部22の周縁)に沿って配置されている。各第2固定部28は、コアケース20に貫通形成されたボス部を構成しており、内周面には雌ネジが形成され、樹脂ネジ44が螺合される。コアケース20に対し、コイルケース50及び基板ケース60を重ねると、第2固定部28の上には、コイルケース50に形成された第1マウント部52が重ねて配置される。また、第1マウント部52の上には、基板ケース60に形成された第2マウント部64が重ねて配置される。
【0037】
コイルケース50の第1マウント部52は、第2マウント部64との対向面に形成された凹部521と、凹部521の底面に貫通形成された取付孔522と、を有している。一方、基板ケース60の第2マウント部64は、第1マウント部52との対向面に形成された嵌合凸部641と、当該嵌合凸部641に貫通形成された取付孔642と、取付孔642の周囲を囲うように立設された環状の接着剤充填壁部643と、を有している。
【0038】
樹脂ネジ44は、基板ケース60側から、第2マウント部64の取付孔642と第1マウント部52の取付孔522に挿通され、コアケース20の第2固定部28に螺合する。この状態では、第1マウント部52の凹部521に第2マウント部64の嵌合凸部641が嵌合されているため、樹脂ネジ44による接合部の機械的強度が相乗的に高められている。また、第2マウント部64の接着剤充填壁部643の内側に樹脂ネジ44の頭部が収容される。この接着剤充填壁部643には、接着剤Yが充填される。これにより、ケース本体12に固定されたコアケース20に対して、コイルケース50と基板ケース60とが樹脂ネジ44及び接着剤Yにより固定される。
【0039】
図7に示すように、基板ケース60からケース本体12側に延びる固定脚部66は、コアケース20に設けられた接着剤充填部30に挿通される。固定脚部66の先端側は、ケース本体12の上壁部12Eに形成された差込口19に挿入されている。そして、接着剤充填部30の内部空間には、接着剤Yが充填される。これにより、ケース本体12、コアケース20及び基板ケース60が接着剤充填部30を介して互いに接着固定される。
【0040】
ところで、コアケース20の第2固定部28を介して形成される固定点は、コアケース20、コイルケース50及び基板ケース60の各ケースの外周部及び内周部の端部同士を固定している。これらの固定点の位置は、コイルケース50に収容されたコイル2の内周側及び外周側の端部の近傍に位置している。従って、上述したように、これらの固定点の位置に金属ネジが配置されると、コイル2の電磁誘導作用による誘導加熱によってケース本体12が発熱する場合がある。これに対して、本実施形態では、コアケース20、コイルケース50及び基板ケース60のこのような端部同士を樹脂ネジ44と接着剤Yで固定することにより、ケース本体12の発熱を抑制している。また、樹脂ネジ44と接着剤Yを組み合わせて使用することで、これらの固定点の接合強度を金属ネジによるネジ止めと同等にすることができる。
【0041】
本実施形態では更に、コアケース20とコイルケース50の対向面と、コイルケース50と基板ケース60の対向面とがそれぞれ接着剤Yで固定されている。
図7に示すように、コアケース20とコイルケース50の対向面では、コアケース20側の対向面に線状に延びる接着溝46が形成されている。この接着溝46は、コアケース20の外周部に沿って配置されている。一方、コイルケース50側の対向面には、線状に延びる線状凸部48がケースの外周部に沿って配置される。そして、コアケース20の接着溝46に接着剤Yを充填した後、コアケース20に対してコイルケース50を重ねることにより、コイルケース50の線状凸部48がコアケース20の接着溝46に挿入される。かかる構成により、コイルケース50は、接着溝46によって溝幅方向の移動が規制された状態でコアケース20に接着固定される。
【0042】
コイルケース50と基板ケース60の対向面においても同様であり、コイルケース50側の対向面には、線状に延びる接着溝46がケースの外周部に沿って配置され、基板ケース60側の対向面には、線状に延びる線状凸部48がケースの外周部に沿って配置される。そして、コイルケース50の接着溝46に接着剤Yを充填した後、コイルケース50に対して基板ケース60を重ねることにより、基板ケース60の線状凸部48がコイルケース50の接着溝46に挿入される。
【0043】
このようにして、コアケース20に対して重ねて配置されるコイルケース50及び基板ケース60は、接着溝46によって溝幅方向の移動が互いに規制されるため、外部の衝撃や振動によるケース間の位置ずれを抑制することができる。なお、各ケース間の対向面に設けられる接着溝46と線状凸部48の上下関係は、本実施形態の構成と逆にしてもよい。例えば、コアケース20とコイルケース50間では、コアケース側に線状凸部48を配置し、コイルケース50側に接着溝46を形成してもよい。
【0044】
(コイルケース)
次に、
図9及び
図10を参照して、コイル2及びコイルケース50の詳細について説明する。
図9は、コイルケース50を下方側から見た下面(底面)図である。この図に示すコアケース20の下面側は、第2収容空間S2の内部に組付けを行う作業工程においては、作業台80の上方側に向けて配置される側である。また、
図10は、
図9のX-X線位置で切断したコイルケースの断面を示している。
【0045】
図9及び
図10に示されるように、コイルケース50は、前後方向及び左右方向に所定の幅を有し、上下方向に所定の厚みを有する樹脂製の板状部材である。コイルケース50の中央部分には、コイルケース50を上下方向に貫通する矩形状の開口部51が形成されている。コイルケース50の上面側は、組付け状態で、コアケース20と対向する。コイルケース50の上面側は、フラットな平面状に形成されており、外周部を構成する四辺のそれぞれに上述の線状凸部48が形成されている。また、コイルケース50の外周部と内周部(開口部51の周縁)に沿って、上述の複数の第1マウント部52が設けられている。
【0046】
コイルケース50の下面側は、組付け状態で、基板ケース60と対向する。コイルケース50の下面側には、コイルケース50の外周部及び内周部に沿って上述の接着溝46が形成されている。また、外周部の接着溝46と内周部の接着溝46の間には、渦巻き状に形成されたコイル収容溝54が形成されている。
【0047】
コイル収容溝54は一例として、基板ケース60側(下方側)に開口した矩形溝状に形成されており、コイル2を形成する線材が内側に挿入される。本実施形態において、コイル2は、表皮効果による巻線抵抗の増大を防ぐためにリッツ線24で構成されている。リッツ線24は、複数の線材(細線)を撚り合わせて形成されており、コイルケース50のコイル収容溝54内に挿入されることで、渦巻状に形成されたコイル2を形成する。このようにして、コイルケース50の表面上には、コイル2が渦巻き状に配置される。コイル2の両端2A,2Bについて、コイル2の中央空間側に配置された一端2Aは、コイル収容溝54の中央空間側の一端54Aからコイルケース50の開口部51を通ってコイルケース50の上面の左端部側に引き出される。一方、コイル2の外周部側の他端2Bは、コイル収容溝54の外周部側の一端54Bからコイルケース50の下面の左端部側に引き出される。このようにコイル2が配置されたコイルケース50がケース本体12の第2収容空間S2に収容されると、コイル2の両端部2A,2Bは、第2収容空間S2の左側の壁部を構成するケース本体12の区切り壁部12G側に延在し、区切り壁部12Gに形成された挿通孔13(
図3参照)を通って第1収容空間S1内に案内される。第1収容空間S1内に案内されたコイル2の両端部2A,2Bは、第1収容空間S1に収容された配線基板9に接続される。
【0048】
(コイル収容溝内におけるコイルの収容状態)
次に、コイルケース50のコイル収容溝54内におけるコイル2の収容状態について説明する。本実施形態では、通電時におけるコイル2の熱膨張を考慮して、コイル収容溝54の深さHの寸法とコイル収容溝54の幅Wの寸法が設定されている。
【0049】
図11には、本実施形態のコイル収容溝54ではなく、比較例としてのコイル収容溝500が模式的に示されている。また、コイル収容溝500において、円弧状に延びるR部が符号「501」で示されており、R部501の一端に繋がって直線状に延びる直線部が符号「502」で示されている。比較例としてのコイル収容溝500は、コイルケース(符号省略)の表面に渦巻き状に形成されている。コイル収容溝500の溝幅方向の寸法は、内部に収容されるコイル2のコイル径Dよりも大きく設定されている。従って、コイル収容溝500内にコイル2が収容された状態では、コイル収容溝500において、溝幅方向に対向して配置された側面511とコイル2との間に隙間が存在する。なお、ここでいうコイル径Dとは、コイル収容溝500に収容される前の状態におけるコイル2の外径寸法である。
【0050】
まず、
図11を参照して、コイル収容溝500内に収容したコイル2に発生する応力のメカニズムについて説明する。通電時の発熱を想定して、コイル2に急激な温度変化を加えると、コイル収容溝500内で熱膨張したコイル2が撓み、局所的なコイル2の折れ曲がりを生じさせることがある。発明者は、このような局所的な折れ曲がりを発生させる原因が、渦巻き状のコイル2において、コイル収容溝500のR部501に収容された部位と直線部502に収容された部位とでコイル2の撓み方に違いが生じることにあることを発見した。
【0051】
即ち、コイル収容溝500のR部501では、内部に収容されたコイル2がR部の曲率に沿って曲げられている。従って、コイル2は熱膨張によって延在方向に伸びようとするが、R部501の湾曲によってコイル2の撓みが規制されている。その一方で、コイル収容溝500の直線部502では、内部に収容されたコイル2は、熱膨張で延在方向に伸びる際、コイル収容溝500内で溝幅方向に対向して配置された側面511と壁と並行しており、コイル2の撓みが規制させにくい状態である。従って、直線部502では、R部501のような応力がコイル2に生じないため、熱膨張時のコイル2の撓みが規制されず、R部501で生じる撓み量よりも、直線部502における撓み量の方が大きくなる。これにより、特に、R部501と直線部502との境界部分においてコイル2の撓み量が著しく変わり、その結果、局所的なコイル2の折れ曲がりを生じさせる。
【0052】
そこで、発明者は、コイル径Dに対してコイル収容溝54の深さH及び溝の幅Wを規定することにより、コイル収容溝54内においてコイル2にかかる応力を緩和することを考案した。
【0053】
以下、
図12を参照して、本実施形態に係るコイル収容溝54の詳細について説明する。この図に示すように、コイル収容溝54は、溝幅方向に対向して配置された一対の側面541と、一対の側面541を繋ぐ底面542と、によって矩形溝状に形成されている。コイルケース50に基板ケース60を重ねた状態では、コイル収容溝54の開口部543は、基板ケース60の対向面によって塞がれる。なお、コイル収容溝の形状は、矩形溝状に限定されない。例えば、溝の底面が円弧状の曲面で構成されてもよい。
【0054】
本実施形態では、コイル収容溝54の深さHがコイル2のコイル径Dよりも大きく設定されている。また、コイル収容溝54の幅Wがコイル径Dよりも小さく設定されている。
【0055】
コイル収容溝54の深さHがコイル2のコイル径Dよりも大きく設定されることにより、コイル収容溝54内には、熱膨張時における深さ方向のコイル2の撓みを許容する撓み代H1が設けられる。従って、熱膨張によって延びたコイル2がコイル収容溝54の深さ方向に撓むことを許容することができ、コイル2の一部又は全部がコイルケース50から脱落することを抑制することができる。
【0056】
その一方で、コイル収容溝54の幅Wがコイル径Dよりも小さく設定されることにより、コイル2は、コイル収容溝54内に収容された状態でコイル収容溝54の幅方向両側の側面541に当接する。また、この状態において、コイル2が、コイル収容溝54の深さ方向の径を長径とする楕円状に変形された状態で収容される。このようにコイル2が楕円形状でコイル収容溝54に収容されることにより、コイル収容溝54の幅方向へのコイル2の撓みを抑制することができる。
【0057】
かかる構成では、熱膨張によって延びるコイル2が溝幅方向に撓もうとすることを一対の側面541で規制することができる。また、コイル2の両側を一対の側面541でガイドすることにより、熱膨張によって延びるコイル2がコイル収容溝54の延在方向に沿って移動することを促すことができる。
【0058】
このようにして、通電によりコイル2が熱膨張した際に、溝の延在方向に沿ったコイル2の移動を促すと共にコイル収容溝54内において溝の深さ方向の撓みを許容することができる。そのため、コイル収容溝54のR部でのコイル2の撓み抑制による応力が溝の深さ方向に撓んで緩和され、コイル2の局所的な折れ曲がりを生じにくくすることができる。また、組付け時の工程において、コイル収容溝54内にコイル2が保持された状態でコイルケース50の表裏を裏返すことができる。
【0059】
ここで、コイル2のコイル径D及び、コイル収容溝54の寸法一例を下記に示す。コイル径Dは、コイル収容溝54に収容される前の状態におけるコイル2の外径寸法である。コイル径Dは、非接触充システム(コイルユニット)の容量帯によって変わるが、一例としては3.1mm~3.6mmである。コイルの撓み代H1は、コイル2が撓むと電気性能の低下に繋がるため、電気性能の許容範囲内で設定される。コイルの撓み代H1の設定値の一例としては0.3mm程度である。そして、コイル収容溝54の深さは、コイル径Dに、コイルの撓み代H1を加えた寸法となる。
【0060】
コイル収容溝54の幅Wは、コイル2のコイル径Dとの差分が0.1mm~0.3mmの範囲内でコイル径Dよりも小さく設定されていることが好ましく、コイル収容溝54の幅Wとコイル2のコイル径Dとの差分が0.2mmに設定される(コイル収容溝54の幅Wが、コイル径Dよりも片側0.1mmずつ小さく設定される)ことがより好ましい。
【0061】
コイル2をリッツ線で構成した場合において、表面を被覆する被覆材21の種類は特に限定されない。例えば、マイラーリッツ線のように、ポリエステル等を含む絶縁性を有するフィルム材で被覆材21を構成してもよいし、ポリエステル等を含む繊維で被覆材21を構成してもよい。被覆材21が絶縁性を有するフィルム材で構成される場合、コイル2の絶縁距離が容易に確保でき、コイルケース50を小型化可能である点において好適である。また、被覆材21を繊維で構成する場合、フィルム被覆されたリッツ線と比較して柔軟な変形が可能であるため、熱膨張時におけるコイル2に局所的なストレスがかかることを抑制する点において好適である。本実施形態の一例では、コイル2の被覆材21がポリエステル繊維によって構成されている。
【0062】
(基板ケース)
次に、
図13を参照して、基板ケース60の詳細について説明する。基板ケース60は、前後方向及び左右方向に所定の幅を有し、上下方向に所定の厚みを有する樹脂製の板状部材である。基板ケース60の中央部分には、基板ケース60を上下方向に貫通する矩形状の開口部62が形成されている。基板ケース60の上面側は、組付け状態で、コイルケース50と対向する。基板ケース60の上面側は、フラットな平面状に形成されており、上述したコイル収容溝54の開口部543を塞ぐように構成されている。また、基板ケース60の上面側は、外周部を構成する四辺のそれぞれに上述の線状凸部48が形成されている。また、基板ケース60の外周部と内周部(開口部62の周縁)に沿って、上述の複数の第2マウント部64が設けられている。
【0063】
基板ケース60外周部と内周部(開口部62の周縁)には、更に、上述した複数の固定脚部66が設けられている。各固定脚部66は、柱状に形成され、基板ケース60からケース本体12側に延びている。
【0064】
基板ケース60の下面側は、組付け状態で、第2カバー部材16と対向する。この基板ケース60の下面部側の表面は、第2カバー部材16側に突出した複数のリブ68によって格子状に区画されている。リブ68の先端は、基板ケース60に第2カバー部材16を重ねた状態において第2カバー部材16をケース本体12の内側から支持可能に構成されている。
【0065】
また、リブ68によって区画された区画内には、センサ基板70が収容されている。センサ基板70には、上述したセンサ制御部5Bによって通電が制御されるセンサコイル部6が実装されている。かかる構成により、センサ基板70の周囲がリブ68によって囲まれるため、外部の衝撃からセンサ基板70を保護することができる。
【0066】
以上、コイルユニット1を構成するコアケース20、コア40、コイルケース50、コイル2、基板ケース60の各構成について説明したが、これらの部材は、ケース本体12の第2収容空間S2にこの順に組付けを行うことができる。
【0067】
即ち、作業台80(
図7等参照)の上で第2収容空間S2の第2開口部122を上に向けてケース本体12を載置したあと、コアケース20を上壁部12Eに固定する。そして、コアケース20にコア40を収容して封止樹脂Xで封止した後、コイルケース50を上から重ねて組付ける。なお、コイルケース50には、予めコイル2を保持した状態でコアケース20の上に重ねられてもよいし、コイルケース50をコアケース20上に重ねた後にコイル収容溝54にコイル2を納めてもよい。その後、コイルケース50の上に基板ケース60を重ね、コアケース20、コイルケース50及び基板ケース60を樹脂ネジ44と接着剤Yを用いて固定する。最後に第2開口部122を第2カバー部材16で塞ぐことにより、第2収容空間S2への組付けが完了する。
【0068】
(作用並びに効果)
ケース本体12の第2収容空間S2では、平板状のコア40を収容するコアケース20がケース本体12に固定されており、当該コアケース20に対して、コア40、コイルケース50及びコイル2がこの順で重ねられている。かかる構成によれば、コイルユニット1のコア40は、コイルケース50とは別に設けられたコアケース20に収容されることで、コイルケース50の影響を受けずにケース本体12に固定することができる。これにより、コア40に生じる応力を抑制することができる。また、コア40、コイルケース50及びコイル2の各部材は、コアケース20に対してこの順に重ねて配置されるため、ケース本体12に対して一方向からの作業によって組み付けることが可能になり、組立時の工程を簡単にすることができる。
【0069】
コアケース20では、各コア40が、コアケース20の壁部32によって周囲を囲まれた状態で収容され、壁部32の内側の空間が封止樹脂Xによって封止されている。従って、コア40と壁部32との間には封止樹脂Xが介在した状態となり、封止樹脂Xが緩衝材となってコア40の熱膨張による変形を吸収する。また、外部の衝撃からもコア40を保護することができる。
【0070】
ケース本体12に設けた凸部18がコアケース20の貫通穴24を通ってコア40に接触する。これにより、コア40で発生する熱が凸部18を介してケース本体12側へ効率良く伝達されるため、コア40の冷却効率を向上させることができる。
【0071】
コアケース20とコイルケース50は、コイル2の内周側及び外周側に位置する端部同士が複数の固定点で固定されている。本実施形態では、これらの各固定点が樹脂ネジ44によって固定されているため、コイル2で発生する磁束がケース本体12に到達することを抑制することができる。このため、ケース本体12をスチール等の強磁性体で形成した場合でもコイル2の電磁誘導作用によるケース本体12の発熱を抑制することができる。また、樹脂ネジ44と接着剤Yを用いて固定するため、固定部の接合強度を金属ネジによるネジ止めと同等にすることができる。
【0072】
コイルケース50とコアケース20は、コアケース20側に形成された接着溝46に接着剤Yを充填し、当該接着溝46にコアケース20側に形成した線状凸部48を挿入することで互いに固定されている。これにより、外部の衝撃や振動によるケース間の位置ずれを抑制することができる。
【0073】
基板ケース60では、センサ基板70の周囲がリブ68によって囲まれているため、外部の衝撃からセンサ基板70を保護できる。また、格子状のリブ68によってコイルユニット1の内側から第2カバー部材16が支持されるため、外部から入力される荷重による第2カバー部材16の割れを防止できる。
【0074】
基板ケース60は、ケース本体12側に延びる柱状の固定脚部66を介して接着剤Yによってケース本体12に固定されている。これにより、ケース本体12とセンサ基板70との間に配置されるコアケース20及びコイルケース50を安定して保持することができ、外部の衝撃や作動時の振動によるコア40やコイル2の位置ずれを抑制することができる。
【0075】
本実施形態では、平板状のコイルケース50の表面に渦巻き状のコイル収容溝54が形成されており、コイル収容溝54内にコイル2を収容することで、コイルケース50の表面に渦巻き状にコイル2が配置される。
【0076】
このコイル収容溝54は、コイル収容溝54の幅方向両側の側面541が内部に収容されるコイル2の側面に当接するように構成されている。また、コイル収容溝54の深さHは、コイル2のコイル径Dよりも大きく設定され、コイル2が熱膨張によって伸びたときに、コイル収容溝54の深さ方向へコイル2の撓みを許容する撓み代H1が設けられている。
【0077】
ここで、通電時のコイル2は、発熱による熱膨張によって撓みが生じるため、コイル収容溝54内に収容された状態でコイル収容溝54の幅方向両側の側面541にコイル2を当接させることにより、溝幅方向の撓みを規制し、溝の延在方向に沿ったコイル2の移動を促すことができる。撓み代H1を設けることにより、コイル2が熱膨張によって伸びたときに、コイル収容溝54の延在方向に沿ったコイル2の移動を促すと共にコイル収容溝54内において溝の深さ方向の撓みを許容することができる。かかる構成では、コイル収容溝54のR部でのコイル2の撓み抑制による応力が溝の深さ方向に撓んで緩和され、コイル2の局所的な折れ曲がりを抑制ことができる。これにより、通電時の熱膨張によってコイル2の一部に応力が集中することを抑制することができる。
【0078】
また、コイル収容溝54の幅Wがコイル径Dよりも小さく設定され、収容されたコイル2の形状がコイル収容溝54の深さ方向の径を長径とする楕円状に変形された状態になる。これにより、コイル収容溝54の延在方向に沿ったコイル2の移動をより一層効果的に促すことができる。
【0079】
コイル2がポリエステル繊維によって被覆されたリッツ線で構成されているため、例えば、マイラーリッツ線のようにフィルム被覆されたリッツ線と比較して柔軟な変形が可能となっている。これにより、熱膨張時の撓みによってコイル2の一部に局所的なストレスが生じることを効果的に抑制することができる。
【0080】
コイル収容溝54の開口部543が基板ケース60(コイルケースカバー)で塞がれることにより、コイル2の熱膨張時において、コイル収容溝54の深さ方向に撓んだ部位が溝から飛び出して折れ曲がることを抑制することができる。
[補足説明]
【0081】
上記実施形態では、電気自動車200に配置される受電側のコイルユニット1Bを中心に説明したが、本発明の構成は、地上側に配置される送電側のコイルユニット1Aにも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 コイルユニット(1A,1B)
2 コイル
10 装置ケース
50 コイルケース
54 コイル収容溝
60 基板ケース(コイルケースカバー)
100 非接触充電システム
200 電気自動車
300 バッテリ
D コイル径
H コイル収容溝の深さ
H1 撓み代
W コイル収容溝の幅