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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157795
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】流体膨張機及び流体膨張ユニット
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20231019BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20231019BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F01K25/10 K
F25B9/00 301
F16K31/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067944
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】502245118
【氏名又は名称】学校法人国士舘
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】大高 敏男
【テーマコード(参考)】
3G081
3H057
【Fターム(参考)】
3G081BA06
3G081BA07
3G081BA08
3G081BB10
3G081BC30
3H057AA02
3H057BB49
3H057CC01
3H057DD05
3H057DD22
3H057HH06
3H057HH11
(57)【要約】
【課題】 取り込む流体の状態量が変動した場合でも、所望の低温空気を得ることができる流体膨張機を提供する。
【解決手段】 流体を内部に導入する導入部41と、流体の圧力を制御可能な絞り装置5と、導入部から内部に導入された流体を膨張させる膨張部42とを備え、絞り装置は、導入部、または、前記膨張部の上流側に設けられ、前記導入部から導入された流体が、絞り装置を通じて膨張部に供給されることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を内部に導入する導入部と、
流体の圧力を制御可能な絞り装置と、
前記導入部から内部に導入された流体を膨張させる膨張部と、
を備え、
前記絞り装置は、前記導入部、または、前記膨張部の上流側に設けられ、
前記導入部から導入された流体が、前記絞り装置を通じて前記膨張部に供給される
ことを特徴とする流体膨張機。
【請求項2】
請求項1に記載の流体膨張機の上流側に位置し、前記流体膨張機に接続された流路を有し、
前記流路を流れる流体が、前記流体膨張機内に供給されることを特徴とする流体膨張ユニット。
【請求項3】
流体を膨張させる膨張部を含む流体膨張機と、
前記流体膨張機の上流側に位置し、前記流体膨張機と接続する流路と、
前記流路に設けられ、流体の圧力を制御可能な絞り装置と
を含み、
前記流路を流れる流体が、前記絞り装置を通じて前記流体膨張機内に供給される
ことを特徴とする流体膨張ユニット。
【請求項4】
前記絞り装置に、制御シーケンス装置が設けられ、該制御シーケンス装置により前記絞り装置の動作が制御されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の流体膨張ユニット。
【請求項5】
前記制御シーケンス装置が、前記流体膨張機の吸入側の流体の温度及び/又は圧力の情報に基づいて動作することを特徴とする請求項4に記載の流体膨張ユニット。
【請求項6】
前記制御シーケンス装置で用いる流体の温度情報が、冷媒の温度情報であることを特徴とする請求項5に記載の流体膨張ユニット。
【請求項7】
前記制御シーケンス装置に用いる温度情報が熱源の温度情報であることを特徴とする請求項5に記載の流体膨張ユニット。
【請求項8】
前記制御シーケンス装置が、流体膨張機の吸入側の圧力の飽和温度情報及び/又は排出側の圧力の飽和温度情報に基づいて動作することを特徴とする請求項5に記載の流体膨張ユニット。
【請求項9】
前記絞り装置に、膨張弁が用いられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の流体膨張ユニット。
【請求項10】
前記絞り装置が、パルスモーターバルブを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の流体膨張ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体膨張機及び流体膨張ユニットに関し、詳しくは、冷却空気を必要とする冷凍・空調分野や、作動流体を膨張させてエネルギー回生する動力・エネルギーシステム等に利用可能な流体装置に用いる流体膨張機及び流体膨張ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の冷却を目的とする冷熱サイクルシステムは、環境負荷が少ないことから広い分野での応用が期待され、多くの提案がなされている(例えば、特許文献1)。これらの中でもエアーサイクルシステムを実現する流体装置としては、例えば、図1に示すような、空気を圧縮させて高温高圧空気とする圧縮機2、高温高圧空気を冷却させる熱交換器3、所定の低温空気を得るための流体膨張機4、発電機8で構成された流体装置1を例示することができる。
【0003】
そして、上記一般的なエアーサイクルシステムの流体装置1による空気冷却は、図2に示すエアーサイクルシステムのサイクル線図における[1]~[4]の行程に沿って行われる。
【0004】
具体的には、吸入した空気を流体圧縮機2により圧縮して高温・高圧にする工程([1]~[2])、高温・高圧の空気を熱交換器3で放熱させて冷却する工程([2]~[3])、流体膨張機4によって流体を膨張させて低温空気を得る工程([3]~[4])により行われる。また、上記工程に伴う流体圧縮機2及び流体膨張機4の動作により、発電機8を回転させて発電させることもできる。なお、[4]~[1]の工程は、対象物を冷却させる行程で、作動流体を大気とする場合は、密閉サイクルとはせずに開放サイクルとして動作させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-265349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記構成の従来のエアーサイクルシステムの流体装置1においては、流体圧縮機2に取り込む空気の状態量(圧力や温度)の変化によって、流体膨張機4により得られる冷却空気の量や温度が変動するため、利用分野が限られるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、取り込む流体の状態量が変動した場合でも、安定して所望の低温空気を得ることが可能な流体膨張機及び流体膨張ユニットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記目的を達成するため、下記の形態を有する流体膨張装置が提供される。
【0009】
第1に、本発明の流体膨張機は、流体を内部に導入する導入部と、
流体の圧力を制御可能な絞り装置と、
前記導入部から内部に導入された流体を膨張させる膨張部と、
を備え、
前記絞り装置は、前記導入部、または、前記膨張部の上流側に設けられ、
前記導入部から導入された流体が、前記絞り装置を通じて前記膨張部に供給される
ことを特徴とする。
第2に、本発明の流体膨張ユニットは、前記第1の発明の流体膨張機の上流側に位置し、前記流体膨張機に接続された流路を有し、
前記流路を流れる流体が、前記流体膨張機内に供給されることを特徴とする。
第3に、本発明の流体膨張ユニットは、流体を膨張させる膨張部を含む流体膨張機と、
前記流体膨張機の上流側に位置し、前記流体膨張機と接続する流路と、
前記流路に設けられ、流体の圧力を制御可能な絞り装置と
を含み、
前記流路を流れる流体が、前記絞り装置を通じて前記流体膨張機内に供給される
ことを特徴とする。
第4に、上記第2又は第3の発明の流体膨張ユニットにおいて、前記絞り装置に、制御シーケンス装置が設けられ、該制御シーケンス装置により前記絞り装置の動作が制御されていることが好ましい。
第5に、上記第4の発明の流体膨張ユニットにおいて、前記制御シーケンス装置が、前記流体膨張機の吸入側の流体の温度及び/又は圧力の情報に基づいて動作することが好ましい。
第6に、上記第5の発明の流体膨張ユニットにおいて、前記制御シーケンス装置に用いる流体の温度情報が冷媒の温度情報であることが好ましい。
第7に、上記第5の発明の流体膨張ユニットにおいて、前記制御シーケンス装置に用いる温度情報が熱源の温度情報であることが好ましい。
第8に、上記第5の発明の流体膨張ユニットにおいて、前記制御シーケンス装置が、流体膨張機の吸入側の圧力の飽和温度情報及び/又は排出側の圧力の飽和温度情報に基づいて動作することが好ましい。
第9に、上記第2又は第3の発明の流体膨張ユニットにおいて、前記絞り装置に、膨張弁が用いられていることが好ましい。
第10に、上記第2又は第3の発明の流体膨張ユニットにおいて、前記絞り装置が、パルスモーターバルブを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流体膨張機及び流体膨張ユニットは、上記の構成により、流体膨張機単体の効率向上に寄与し、所望温度の冷却流体を効率よく提供可能なエアーサイクルシステムを構成して性能向上を図ることができる。これにより、従来地球環境負荷が大きい冷媒を用いて冷却を行っていた、例えば、家庭用空調機やビル空調機、家庭用/業務用冷凍冷蔵庫分野に、環境負荷を与えない冷却空気を効率よく提供することが可能となる。
【0011】
また、廃熱回収してエネルギー回生させるランキンサイクルシステムに適用することにより、上記と同様の効果が得られるとともに、流体膨張機の流体吸入側における作動流体の状態量変動が起きても、膨張途中で湿り蒸気が発生しないように制御することが可能となり、良好な軸出力を得ることが可能となる。
【0012】
即ち、本発明の流体膨張機及び流体膨張ユニットによれば、エアーサイクルシステムを利用する冷凍装置等の効率向上を図るとともに、環境負荷がない冷凍装置として、既存の冷凍・冷却分野に置き換えることが可能となる。また、ランキンサイクルを用いたエネルギー回生システムに用いることにより、熱源の温度変動に対応した高効率のシステムを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】エアーサイクルシステムに適用した、従来の流体装置を示す概略図である。
図2】一般的な流体膨張機を用いた流体装置をエアーサイクルシステムに適用したサイクル線図と、本発明の流体膨張ユニットを用いた流体装置をエアーサイクルシステムに適用したサイクル線図を示したph線図である。
図3】エアーサイクルシステムに適用した、本発明の流体膨張ユニットを用いた流体装置の実施形態を示す概略図である。
図4】膨張弁を用いた絞り装置の一実施形態を示す概略図である。
図5】本発明の流体膨張ユニットを用いた流体装置をエアーサイクルシステムに適用したサイクル線図を示したph線図である。
図6】ランキンサイクルシステムに適用した、一般的な流体装置を示す概略説明図である。
図7】一般的な流体膨張機を用いた流体装置をランキンサイクルシステムに適用したサイクル線図を示したph線図である。
図8】絞り装置を内蔵した流体膨張機(容積式膨張機)の実施形態を示す概略断面図である。
図9】一般的な流体膨張機を用いた流体装置をランキンサイクルシステムに適用したサイクル線図と、本発明の流体膨張機を用いた流体装置をランキンサイクルシステムに適用したサイクル線図を示したph線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の流体膨張ユニットを実施形態に基づいて詳細に説明する。本発明の流体膨張ユニットは、エアーサイクルシステムと、ランキンサイクルシステムに適用が可能である。まず、エアーサイクルシステムに適用する流体膨張ユニットについて説明する。図3は、エアーサイクルシステムに本発明の流体膨張ユニットを用いた流体装置の実施形態を示す概略図である。
【0015】
本実施形態の流体膨張ユニットは、流体を膨張させる膨張部を含む流体膨張機と、流体膨張機の上流側に位置し、流体膨張機と接続する流路と、該流路に設けられ、流体の圧力を制御可能な絞り装置とを含み、流路を流れる流体が、絞り装置を通じて流体膨張機内に供給されるものである。
【0016】
図3に示すエアーサイクルシステムの流体装置1は、流体の吸入口11を有する流体圧縮機2と、熱交換器3と、流体膨張ユニット6を備えており、これら各々が流路61により接続されている。また、流体膨張ユニット6は、流体膨張機4と、流路61内の流体の圧力を制御するための絞り装置5、また、発電機8を備えている。
【0017】
エアーサイクルシステムの流体装置1には流体として空気が吸入口11から導入される。流体装置1における流体圧縮機2は、空気を取り込み、圧縮できる圧縮機であれば特に限定なく用いることができ、例えば、遠心式空気圧縮機を好適に用いることができる。流体圧縮機2は、通常、電動機又は原動機等で駆動させるが、流体圧縮機2の同一回転軸上に連結された流体膨張機4の回転で得られる軸動力を用いて駆動させることもできる。流体圧縮機2により圧縮された空気は高温、高圧となり、この状態で熱交換器3へ導入される。熱交換器3では、空気の熱が放熱器31(コンデンサ)により放熱されて冷却される。熱交換器3は、高温の空気の熱を効率よく放熱できるものであれば特に制限されるものではなく、図3に示すような空冷式のほか、水冷式や他の冷媒を用いた熱交換器を用いることができる。
【0018】
冷却された空気は流体膨張ユニット6に導入される。本実施形態の流体膨張ユニット6は、流体を膨張させる膨張部42を含む流体膨張機4と、流体膨張機4の上流側に接続する流路61と、該流路61に設けられた絞り装置5とから構成されている。流体膨張機4は、流体を膨張させる膨張部42を含むものであれば特に限定されないが、通常、遠心式膨張機や容積式膨張機等の流体膨張機を用いることができ、メンテナンス容易性等の観点から容積式膨張機を好適に用いることができる。容積式膨張機としては、揺動式膨張機、回転ピストン式膨張機、ロータリーベーン式膨張機、スクロール式膨張機、スクリュー式膨張機、ピストン・クランク式膨張機等を例示することができ、これらの中でも、特に揺動式膨張機を好適に用いることができる。流体膨張機4に導入された空気は、急激な膨張により更に冷却され、所定の温度の低温流体として吐出部43を経て排出口12から排出され、冷却等に利用される。また、必要に応じて、流体圧縮機2及び流体膨張機4の駆動力により発電機8を回転させて電力を得ることもできる。
【0019】
本実施形態の流体膨張装置では、流体膨張機4の上流側に接続された流路61に絞り装置5を設け、絞り装置5により、流体膨張機4に導入される流体の圧力を制御することにより、排出される流体の温度や量を調整することが可能となる。
【0020】
絞り装置5としては、流体の圧力を制御できれば構造は特に限定されるものではないが、例えば、図4に示すような膨張弁を用いた絞り装置5を好適に用いることができる。図4に示す絞り装置5は、流入口510と吐出口511を有し、内部にバネ522と弁521からなる弁機構52を備えた本体51と、ベローズ531により内部空間が上下に分割された密閉部53を有している。また、密閉部53には、流体温度を検知可能な感温筒54が接続されており、密閉部53のベローズ531の上部空間には、温度変化により体積が変化する体積変化気体532が封入されている。
【0021】
そして、感温筒54により検知した流体の温度に応じて、ベローズ531上部の体積が変化してベローズ531が上下し、ベローズ531に接続された弁521の開閉度が変化する。例えば、感温筒54が加熱されて密閉部53内のベローズ531上側の体積変化気体532が膨張すると、ベローズ531が押し下げれて弁521の開度が増加する。これにより、流体の流量は増加して圧力比γは減少する。なお、圧力比:γは、流体の膨張弁入力圧力:Pi、流体の膨張弁出力圧力:Poにおいて、γ=Pi/Poで表される。
【0022】
図2に示すph線図には、エアーサイクルシステムにおいて、本実施形態の流体膨張ユニット6を用いた流体装置のサイクル線図を示している。図2のサイクル線図において、[1]は吸気時の流体の状態(温度:T1)、[2]は流体圧縮機2により圧縮された状態(温度:T2)、[3]は熱交換器3により放熱された状態(温度:T3)、[3’]は絞り装置5により圧力調整された状態(温度:T3)、[4’]は流体膨張機4により更に低温に調整された状態(温度:T4’)を示しており、[3]から[3’]の行程は、絞り装置5による等エンタルピ変化を表している。このように、流体膨張機4の前段の流路61に設けた絞り装置5により等エンタルピで圧力のみを降下させることにより、[4’]で所望する冷却空気温度T4’を得ることが可能となる。なお、[3]から[4]は従来の流体膨張機4のサイクル線図であって、膨張による温度制御がなされないため冷却空気温度がT4となり、過膨張による過冷却により所望の流体温度が得られていない。
【0023】
図5のph線図には、上記図2の工程のより具体的な温度変化を示している。まず、流体圧縮機2に40℃の空気を取り込み([1])、流体圧縮機2で圧縮して130℃の圧縮空気としている([2])。その後放熱器31で放熱し([3])、流体膨張装置において、絞り装置5で圧力を調整した空気を流体膨張機4に導入して([3’])、所望する0℃の低温空気を得ている([4’])。これは、絞り装置5により空気の圧力を調整した後に膨張させたことで得られた低温空気であり、絞り装置5を用いない従来の流体膨張機4では、所望する0℃の空気を得ることはできていない([4])。このような本発明の流体膨張ユニット6の構成により、例えば、流体圧縮機2に取り込む空気の温度が40℃以下に低くなっても過冷却されることなく、所望する0℃の低温空気を得ることが可能となる。
【0024】
絞り装置5の絞り値は、流体膨張機4前段の流体の状態によって適宜設定することができる。例えば、流体膨張ユニット6の前段の流体の状態が、膨張後の作動流体の温度が所望の温度よりも低くなる場合、又は図5における[1]の温度、あるいは[2]又は[3]の温度が所定の温度よりも低くなる場合には、絞り装置5の絞り値を大に設定することが考慮される。また、逆に流体膨張ユニット6の前段の流体の状態が、膨張後の温度が所望の温度よりも高くなる場合、又は[1]の温度、あるいは[2]又は[3]の温度が所定の温度よりも高くなる場合には、絞り装置5の絞り値を小に設定することが考慮される。
【0025】
なお、絞り装置5の配置は、上記流体膨張ユニット6の構成のように、流体膨張機4とは別体に設ける構成や、流体膨張機4内に設けて一体とした流体膨張機4とする構成等、流体装置1の用途等に応じて適宜設計することができる。絞り装置5を流体膨張機4内に設ける構成とすることにより、流体膨張装置の小形化を図ることができるため好ましい。
【0026】
また、絞り装置5には絞り値を制御するための制御シーケンス装置を設けることができる。制御シーケンス装置は、流体膨張ユニット6の前段の流体の温度又は圧力の少なくともいずれかを監視し、その情報に基づいて予め設定しておいた条件に基づいて絞り装置5を動作させることができる装置である。また、絞り装置5の動作は、制御シーケンス装置で測定した温度や圧力の情報に基づいてパルスモーターバルブ(PMV)を介して膨張弁等を駆動させることにより行うことができる。パルスモーターバルブ(PMV)は、ステッピングモータ又はサーボモータ等を用いてバルブの開度を制御する機構を有し、感温筒54の代わりに温度センサ、圧力センサを用いて所定の開度に調整するものである。これにより、流体装置1に導入される流体の状態量の変動に応じて、流体膨張ユニット6に導入する流体の圧力調整を自動的に行うことができ、より正確かつ確実に所望の低温空気を得ることが可能となる。
【0027】
エアーサイクルシステムは環境負荷がないことから、広い分野での応用が期待されるシステムである。しかしながら、通常、流体の状態変化に応じて所望の冷却流体を得ることが困難であるため、取り込む空気の状態量が変動しても所望の低温空気が得られる必要がある。そこで、流体膨張機4の流体吸入側に絞り装置5を配設して、エンタルピ損失させずに適切な圧力比に調節可能とすることにより、高効率な冷熱サイクルを有する流体装置1とすることが可能となる。
【0028】
次に、本発明の流体膨張装置を用いた流体装置1のランキンサイクルシステムへの適用について説明する。図6に、ランキンサイクルシステムに適用した一般的な流体装置1の構成を示し、図7に、ランキンサイクルシステムに適用した一般的な流体装置1のサイクル線図を加筆したph線図を示す。
【0029】
図6に示す一般的な流体装置1は、高温領域の廃熱を回収してエネルギー回生させて発電する装置である。具体的には、ポンプ7で昇圧された冷媒(動作流体)に、熱交換器3で100~200℃程度の排熱を回収させて高温、高圧のスチーム状態とし([4]~[1]:熱交換工程)、この冷媒を流体膨張機4に導入して([1]~[2]:膨張行程)膨張エネルギーにより発電機8の稼働動力を得ている。また、この流体装置1では、冷媒は流体膨張機4での膨張(放熱)後に、排熱器9により更に20~45℃に冷却され([2]~[3]:冷却工程)液体に戻されて再びポンプ7に導入されて循環される。
【0030】
一方、上記流体装置1においては、流体膨張機4(密閉形容積膨張機)の流体吸入側の温度や圧力が、回収する熱源の温度変動等の影響で変動してしまうことがある。そして、この変動により過膨張が発生してエネルギー損失の原因になったり、膨張過程途中で湿り蒸気になり、発電機8への軸出力が低下することがある。
【0031】
そこで、本発明では、図8に示すような流体膨張ユニット6として、絞り装置5を内部に設置した流体膨張機4を用い、流体膨張機4前段の流体の温度や圧力に応じて等エンタルピで圧力を制御することで、上記問題を解決している。また、絞り装置5の動作には、パルスモーターバルブ(PMV)を好適に用いることができる。
【0032】
なお、本実施形態のランキンサイクルシステムに適用する流体膨張機4における絞り装置5の構成、配置等に関しては、上記エアーサイクルシステムで用いられる流体膨張ユニット6の絞り装置5と同様の構成のものを用いることができ、例えば、絞り装置5を流体膨張機4前段の流路61に設けたり、絞り装置5の絞り値を制御するための制御シーケンス装置を設けることができる。
【0033】
ランキンサイクルシステムに適用する流体膨張装ユニットに設ける制御シーケンス装置は、流体装置1中の流体の温度又は圧力の少なくともいずれかを監視し、その情報に基づいて絞り装置5を動作させることができるほか、流体の温度情報として冷媒の温度情報や熱源の温度情報に基づいて動作させることができる。さらに、制御シーケンス装置は、流体膨張機4の吸入側の圧力の飽和温度情報又は排出側の圧力の飽和温度情報のいずれかに基づいて動作させることもできる。
【0034】
図9には、ランキンサイクルシステムのph線図に、一般的な流体装置を適用したサイクル線図と、本発明の流体膨張ユニット6を用いた流体装置1を適用したサイクル線図を示しており、本発明の流体膨張ユニット6を用いた膨張行程のサイクル線図を実線で、従来の流体膨張機を用いた膨張行程のサイクル線図を破線で示している。
【0035】
このサイクル線図からもわかるように、例えば、流体膨張機4の流体の圧力が低くなったとき、過膨張による損失が発生しないように、絞り装置5により流体の状態を等エンタルピ変化させて流体膨張機4に導入することができる。また、流体膨張機4の前段の流体状態の過熱量が小さいとき、膨張行程の途中から湿ることがないように絞り装置5を制御することによりエネルギー損失を抑制することができ、良好な軸出力を得ることが可能となる。
【0036】
流体装置1に対して、上記構成の本発明の流体膨張ユニット6を用いることにより、エアーサイクルシステムを利用する冷凍装置等の効率向上を図るとともに、環境負荷が少ない冷凍装置として、既存の冷凍・冷却分野に置き換えることが可能となる。また、ランキンサイクルを用いたエネルギー回生システムに用いることにより、熱源の温度変動に対応した高効率のシステムとすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 流体装置
11 吸入口
12 排出口
2 流体圧縮機
3 熱交換器
31 放熱器
4 流体膨張機
41 導入部
42膨張部
43 吐出部
5 絞り装置
51 本体
510 流入口
511 吐出口
52 弁機構
521 弁
522 バネ
53 密閉部
531 ベローズ
532 体積変化気体
54 感温筒
6 流体膨張ユニット
61 流路
7 ポンプ
8 発電機
9 排熱器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9