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特開2023-157797クランプ機構,クランプ装置,及び工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157797
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】クランプ機構,クランプ装置,及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/117 20060101AFI20231019BHJP
   B23Q 3/12 20060101ALI20231019BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALN20231019BHJP
【FI】
B23B31/117 601K
B23Q3/12 H
B23Q17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067947
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】514238825
【氏名又は名称】吉徑科技股▲分▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】316000286
【氏名又は名称】町田 昌弘
(71)【出願人】
【識別番号】522155464
【氏名又は名称】町田 善弘
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】町田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】町田 善弘
【テーマコード(参考)】
3C016
3C029
3C032
【Fターム(参考)】
3C016FA21
3C029EE05
3C032AA11
(57)【要約】
【課題】 単にクランプ・アンクランプの切り替えを行うのみならず、クランプ時のトルクを制御することができ、クランプ不良を検出する。
【解決手段】 スピンドル200のテーパー面220と工具ホルダー500の502との間に異物DSが挟まると、図4(B)に示すように、ドローバー駆動制御機構600によってドローバー300を回転させても、そのスライド量がクランプ時よりも小さくなる。スライド量は、ドローバー300の回転量に対応し、更にはステッピングモーター610の回転量に対応しており、クランプ不良検出部632によって検出される。スライド量が所定値以下のときは、異物DSが挟まっており、工具ホルダー500のクランプトルクが不十分であると判定できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ対象物のクランプ部分に接触するクランプ面が先端に形成されたスピンドル,
前記スピンドル内で、前記クランプ対象物をクランプするコレット,
前記コレットを駆動するドローバー,
を備えており、
前記コレットと前記ドローバーとの間にネジ機構が設けられており、
前記ドローバーを回転させたときに、前記ネジ機構によって前記コレットが進退することで、前記クランプ対象物のクランプ・アンクランプを行うことを特徴とするクランプ機構。
【請求項2】
前記クランプ対象物が工具ホルダーであり、
前記工具ホルダーのクランプ部分を内側若しくは外側から係止することで、前記工具ホルダーをクランプすることを特徴とする請求項1記載のクランプ機構。
【請求項3】
前記コレットを、
前記ドローバーとの間にネジ機構が設けられた第1の部材,
該第1の部材の主軸方向の進退に応じて動作し、前記クランプ対象物の前記クランプ部分に係止するクランプ爪を有する第2の部材,
によって構成したことを特徴とする請求項1記載のクランプ機構。
【請求項4】
前記クランプ対象物を前記コレットから外すときに、前記クランプ爪が開くように、前記ドローバーの移動を可能とする可動手段を設けたことを特徴とする請求項3記載のクランプ機構。
【請求項5】
クランプ時に、前記クランプ対象物の前記クランプ部分及び前記スピンドルにそれぞれ前記クランプ爪が係止することを特徴とする請求項3記載のクランプ機構。
【請求項6】
前記クランプ対象物を前記コレットから外すときに、前記クランプ爪が開くように、前記ドローバーの移動を可能とする可動手段を設けたことを特徴とする請求項5記載のクランプ機構。
【請求項7】
アンクランプ時に、前記クランプ対象物の前記クランプ部分から前記クランプ爪を外すためのアンクランプ溝を、前記第1の部材に設けたことを特徴とする請求項3記載のクランプ機構。
【請求項8】
前記クランプ爪が、回転中心に向かって付勢手段で付勢されていることを特徴とする請求項7記載のクランプ機構。
【請求項9】
前記クランプ対象物のクランプ部分と前記スピンドルのクランプ面がテーパー面であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のクランプ機構。
【請求項10】
前記クランプ対象物をアンクランプ状態で仮保持する仮保持機構を備えたことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のクランプ機構。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載のクランプ機構を備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載のクランプ機構におけるドローバーを回転駆動するドローバー回転駆動機構を備えており、
前記ドローバーの回転量から前記コレットによるクランプ不良を検出するクランプ不良検出手段を備えたことを特徴とするクランプ装置。
【請求項13】
請求項12記載のクランプ装置を備えたことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具などを保持するクランプ機構,クランプ装置,及びそれらを使用するマシニングセンターなどの工作機械の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクランプ装置としては、例えば、下記特許文献1記載の「工具クランプ装置」がある。これは、皿ばね以外に主軸内のドローバーの周囲に付勢用のコイルばねを設け、主軸後部のアンクランプシリンダの後部に仮保持シリンダを設けている。コイルばねは、アンクランプシリンダの動作で皿ばねによるドローバー引込付勢が解除された際にドローバーを弱い力で引込付勢して工具が脱落しないよう動作する。また、仮保持シリンダは、工具を引き抜き操作した際に前方へ移動したドローバーをその位置でロックし、次の工具が挿入されるまでドローバーがコイルばねの作用で後方に移動しないようにしている。
【0003】
下記特許文献2記載の「アンクランプ装置」は、アンクランプ時にプランジャピンを押すと、テーパー面とボールによる倍力機構によってドローバーが下方へ移動し、工具ホルダーが押し出されて、テーパー面と工具ホルダーとの密接状態が解除される。仮保持機構では、仮保持バネによってボールが溝に戻るため、ドローバーが上方に移動し、工具ホルダーも上方に戻り、そのテーパー面は、スピンドル側のテーパー面と再び接触して本来の位置に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-231008号公報
【特許文献2】特開2010-214568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スピンドルテーパー面と工具ホルダーテーパー面との間が密着していればよいが、何らかの原因で加工屑などが入り込むと、テーパー面同士の密着力が低下し、良好に工具ホルダーを保持できない恐れがある。上述した背景技術では、工具ホルダーのクランプ・アンクランプの切り替え動作のみであり、良好に工具ホルダーをクランプできているかどうかを判定することはできない。更に、皿ばねやコイルばねを用いているため、それらの劣化に応じてメンテナンスを行う必要がある。加えて、クランプ・アンクランプの切り替え時に、スピンドルとドローバーとの間のベアリングに衝撃が加わってしまうといった不都合もある。
【0006】
本発明は、かかる点に着目したもので、単にクランプ・アンクランプの切り替えを行うのみならず、クランプ不良を検出することができ、また、メンテナンスの簡略化を図ることができ、更にはベアリングに対する衝撃も生じないクランプ機構,クランプ装置,及びそれらを利用した工作機械を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のクランプ機構は、クランプ対象物のクランプ部分に接触するクランプ面が先端に形成されたスピンドル,前記スピンドル内で、前記クランプ対象物をクランプするコレット,前記コレットを駆動するドローバーを備えており、前記コレットと前記ドローバーとの間にネジ機構が設けられており、前記ドローバーを回転させたときに、前記ネジ機構によって前記コレットが進退することで、前記クランプ対象物のクランプ・アンクランプを行うことを特徴とする。前記クランプ対象物は、例えば工具ホルダーであり、前記工具ホルダーのクランプ部分を内側若しくは外側から係止することで、前記工具ホルダーがクランプされる。
【0008】
主要な形態の一つによれば、前記コレットを、前記ドローバーとの間にネジ機構が設けられた第1の部材,該第1の部材の主軸方向の進退に応じて動作し、前記クランプ対象物の前記クランプ部分に係止するクランプ爪を有する第2の部材,によって構成したことを特徴とする。加えて、前記クランプ対象物を前記コレットから外すときに、前記クランプ爪が開くように、前記ドローバーの移動を可能とする可動手段を設けられている。
【0009】
他の形態によれば、クランプ時に、前記クランプ対象物の前記クランプ部分及び前記スピンドルにそれぞれ前記クランプ爪が係止することを特徴とする。更には、前記クランプ対象物を前記コレットから外すときに、前記クランプ爪が開くように、前記ドローバーの移動を可能とする可動手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
更に他の形態によれば、アンクランプ時に、前記クランプ対象物の前記クランプ部分から前記クランプ爪を外すためのアンクランプ溝を、前記第1の部材に設けたことを特徴とする。更に他の形態によれば、前記クランプ爪が、回転中心に向かって付勢手段で付勢されていることを特徴とする。更に他の形態としては、前記クランプ対象物のクランプ部分と前記スピンドルのクランプ面がテーパー面であり、あるいは、前記クランプ対象物をアンクランプ状態で仮保持する仮保持機構を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明のクランプ装置は、前記いずれかのクランプ機構におけるドローバーを回転駆動するドローバー回転駆動機構を備えており、前記ドローバーの回転量から前記コレットによるクランプ不良を検出するクランプ不良検出手段を備えたことを特徴とする。本発明の工作機械は、前記いずれかのクランプ機構もしくはクランプ装置を備えたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドローバーとコレットの間のネジ機構によって、コレットによるクランプ対象物のクランプ・アンクランプを行うこととしたので、クランプ不良を検知することができ、また、皿ネジやコイルネジを必要とせず、メンテナンスの簡略化を図ることができ、更にはスピンドルとドローバーとの間にベアリングを用いないことから、クランプ・アンクランプの切り替え時のベアリングに対する衝撃の影響もない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1を示す主軸方向の主要断面図である。
図2】前記実施例の主要部分を拡大して示す断面図及びコレットの主要部品を示す斜視図である。
図3】前記実施例の仮保持及びクランプ時の様子を示す図である。
図4】前記実施例のアンクランプ時及びクランプ不良時の様子を示す図である。
図5】本発明の実施例2を示す主軸方向の主要断面図である。
図6】本発明の実施例3を示す主軸方向の主要断面図である。
図7】本発明の実施例4を示す主軸方向の主要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0015】
図1は、本実施例のクランプ装置の主軸方向に沿った断面を示す。同図は、クランプ機構100から工具ホルダー500を引き抜いた状態を示している。同図の主要部を拡大すると、図2(A)に示すようになる。これらの図において、クランプ機構100は、外側の筐体(ハウジング)110の内側に、スピンドル200が貫通して設けられている。筐体110とスピンドル200の間には、軸受け112が適宜設けられており、これにより、筐体110に対してスピンドル200が回転自在に支持されている。スピンドル200内には、ドローバー300が貫通しており、ドローバー300の先端には、工具ホルダー500をクランプするコレット400が設けられている。
【0016】
以上のうち、スピンドル200は、図示しない駆動源によって主軸回りに回転駆動されるようになっている。その後端(図の右側)内側には、可動溝210が設けられており、前記ドローバー300の突起310が嵌まり込んでいる。この可動溝210により、工具ホルダー500の引き抜き時における突起310の軸方向(図の左右方向)の動きが可能となり、更には、ドローバー300の軸方向の動きが可能となっている。
【0017】
スピンドル200の先端(図の左側)には、テーパー面220が形成されており、これが工具ホルダー500のテーパー面502に当接するようになっている。また、スピンドル200のテーパー面220のコレット側には、クランプ溝230が設けられており、後述するようにコレット400の部品の先が引っ掛かるようになっている。更に、スピンドル200のクランプ溝230の奥には、ボール242,バネ244,バネ抑え246による仮保持機構240が設けられており、これによってコレット400の仮保持が行われるようになっている。仮保持機構240は、主軸の周りに適宜の間隔で複数設けられている。
【0018】
次に、コレット400は、スライド体410と保持円環420を中心に構成されている。これらのうち、スライド体410は、ドローバー300の先端が嵌まり込む円筒部412と、保持円環420を固定する円柱部414を備えている。円筒部412の外側には、上述した仮保持機構240のボール242が嵌まり込む溝416が全周に設けられており、円筒部412の内側には、ドローバー300の先端との間に、ネジ機構430が設けられている。一方、スライド体410の円柱部414には、縮径部に保持円環420の一端が嵌め込まれて固定されている。
【0019】
一方、保持円環420は、図2(B)に示すように、図の左側の先端にクランプ爪422が設けられている。すなわち、保持円環420の左側の開口部分が外側に曲折しており、更にスリット424が軸方向に複数(図示の例では3つ)形成されている。これにより、クランプ爪422が、径方向に揺動して開閉可能となっている。保持円環420の後ろ側(図の右側)には、係止突起426が設けられており、これがドローバー300の溝232内でスライドし、あるいは溝側面に引っ掛かかるようになっている。
【0020】
工具ホルダー500は、その先端(図1の左側)に適宜の工具(図示せず)が取り付けられるようになっており、反対側は、テーパー面502とプルスタット504が設けられている。これらの構成は公知である。
【0021】
一方、図1に示すように、ドローバー300の後端(図の右側)には、ドローバー駆動制御機構600が設けられている。ドローバー駆動制御機構600は、駆動源としてステッピングモーター610を使用しており、その回転駆動がギア手段ないしベルト手段により適宜の回転速度に調整された後、クラッチ620を介してドローバー300に伝達されるようになっている。ステッピングモーター610の回転駆動は、ドローバー制御装置630によって制御されており、ステッピングモーター610の回転量,すなわちスライド量は、クランプ不良検出部632によって検出されるようになっている。
【0022】
次に、ドローバー300の回転とコレット400の基本的な動作を説明する。ドローバー駆動制御機構600を回転させると、その先端のネジ機構430によってコレット400が軸方向にスライドする。すなわち、スライド体410と保持円環420が、主軸方向にスライドする。保持円環420が先端方向にスライドすると、その先端側のクランプ爪422が、スピンドル200のクランプ溝230に引っ掛かるようになり、保持円環420は開いた状態となる(図1図2参照)。これに対し、保持円環420が後端方向にスライドすると、その先端側のクランプ爪422が、スピンドル200のクランプ溝230から外れ、保持円環420は、閉じた状態となる(後述する図3参照)。このときのコレット400のスライド量は、ステッピングモーター610の回転量に対応していることから、ドローバー制御装置630のクランプ不良検出部632で検出される。なお、工具ホルダー500の引き抜き時は、ドローバー300のスライド動作が、後端側の突起310と、スピンドル200側の可動溝210とによって可能となっている。
【0023】
次に、図3図4も参照しながら、本実施例の動作を説明する。
<仮保持> 上述した図1ないし図2の状態から、図3(A)に矢印F3Aで示すように工具ホルダー500をスピンドル200の先端開口から挿入すると、工具ホルダー500のプルスタット504がコレット400のスライド体410の先端に当たり、コレット400及びドローバー300を後ろ方向に押すようになる。すると、コレット400の保持円環420のクランプ爪422が閉じて、プルスタット504を係止して掴み込むとともに、スライド体410外周の溝416に仮保持機構240のボール242が嵌まり込むようになり、工具ホルダー500が仮保持された状態となる。一方、工具ホルダー500のテーパー面502が、スピンドル200のテーパー面220に当接する。なお、ドローバー300は、後ろ側の突起310がスピンドル200の可動溝210の右側に当たるまで後退する(矢印P3A参照)。
【0024】
<クランプ> 次に、この状態で、図3(B)に矢印F3Bで示すように、ドローバー駆動制御機構600によりドローバー300を回転させると、ドローバー300先端とコレット400のスライド体410内側にネジ機構430が設けられていることから、矢印F3Cで示すように、ドローバー300がスライド体410に入り込むようになる。そして、ドローバー300の後ろ側の突起310が、スピンドル200の可動溝210の左側に当たると、ドローバー300の矢印F3C方向の動きは止まる(矢印P3B参照)。
【0025】
一方、前記ドローバー300の回転によってコレット400が矢印F3Dの方向に引き込まれるようになる。これにより、コレット400のクランプ爪422がプルスタット504を強く咬むようになり、仮保持状態からクランプ状態(固定状態)となる。この状態では、ドローバー300後端の突起310が、スピンドル200の可動溝210の左側に当接した状態となっているので、工具ホルダー500を引き抜こうとしても、ドローバー300及びコレット400が動かず、クランプ爪422が開かない。従って、工具ホルダー500は、クランプされた状態を維持する。
【0026】
そして、ドローバー駆動制御機構600をOFFとして、スピンドル200を回転させると、スピンドル200,ドローバー300,工具ホルダー500が一体となって、筐体110(図1参照)に対して回転し、工具ホルダー500に取り付けられた工具による加工が行われる。
【0027】
<アンクランプ> 次に、工具ホルダー500を外すときは、図4(A)に示すように、ドローバー駆動制御機構600によりドローバー300を前回とは逆のF4A方向に回転させる。すると、ドローバー300先端とコレット400のスライド体410内側のネジ機構430により、ドローバー300がスライド体410から離れるように、矢印F4B方向にスライドし、これにより、クランプ状態からアンクランプ状態ないし仮保持状態となる。
【0028】
この状態では、ドローバー300後端の突起310が、スピンドル200の可動溝210の右側に当接した状態となっている(矢印P4A参照)。このため、工具ホルダー500を矢印F4C方向に引き抜くと、ドローバー300及びコレット400が動くことができ、クランプ爪422が開いて、工具ホルダー500は、図1に示す外された状態となる。
【0029】
<クランプ不良>ところで、スピンドル200と工具ホルダー500との間、例えばスピンドル200のテーパー面220と工具ホルダー500のテーパー面502との間に切削屑などの異物DSが挟まることがある。この場合、ドローバー駆動制御機構600によってドローバー300を回転させても、コレット400によるクランプのトルクが不十分となる恐れがある。
【0030】
上述したように、通常であれば、クランプ状態では、図3(B)に矢印P3Bで示したように、ドローバー300の後ろ側の突起310が、スピンドル200の可動溝210の左側に当たるものの、ドローバー300のスライド量が、僅かであるがクランプ時とは異なるようになる。
【0031】
これに対し、本実施例では、ドローバー300のスライドは、コレット400との間のネジ機構430による回転によって行われることから、ドローバー300の回転量がクランプ不良検出部632によって検出されている。そして、異物DSが挟まるなどの原因でドローバー300の回転量が所定値からずれて許容値を超えているときは、工具ホルダー500のクランプトルクが不十分であると判定できる。そこで、ドローバー制御装置630は、その旨の警告を行う,スピンドル200の回転を停止する,などの制御を行う。
【実施例0032】
次に、図5を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応するものには、同一の符号にアルファベットを付して、説明を省略する(実施例3以下についても同様)。同図(A)はクランプ時の様子を示し、同図(B)はアンクランプ時の様子を示す。本実施例は、基本的な構造や動作は前記実施例1と同様であるが、コレット400Aのスライド体410Aが長く、ドローバー300Aが短くなっており、ネジ機構430Aが後端側に設けられている。また、コレット400Aのスライド体410Aと、保持円環420Aの形状が異なっており、仮保持機構240Aとともに、回り止め用のピン241Aがスライド体410Aのピン溝247A対して設けられている。
【0033】
<クランプ> ドローバー駆動制御機構600Aによりドローバー300Aを回転させると、ネジ機構430Aによってドローバー300Aがスライド体410Aに入り込むようになる。そして、ドローバー300Aの後ろ側の突起310Aが、スピンドル200Aの可動溝210Aの左側に当たると、ドローバー300Aの動きは止まるとともに、コレット400Aのスライド体410Aが引き込まれるようになる。これにより、同図(A)に示すように、コレット400Aのクランプ爪422Aがプルスタット504Aを強く咬むようになり、仮保持状態からクランプ状態(固定状態)となる。この状態では、ドローバー300A後端の突起310Aが、スピンドル200Aの可動溝210Aの左側に当接した状態となっているので、工具ホルダー500Aを引き抜こうとしても、ドローバー300A及びコレット400Aが動かず、クランプ爪422Aが開かない。従って、工具ホルダー500Aは、クランプされた状態を維持する。
【0034】
<アンクランプ> 次に、工具ホルダー500Aを外すときは、図5(A)に示すように、ドローバー駆動制御機構600Aによりドローバー300Aを前回とは逆の方向に回転させる。すると、ネジ機構430Aにより、ドローバー300Aがスライド体410Aから離れるようにスライドし、これにより、クランプ状態からアンクランプ状態ないし仮保持状態となる。この状態では、ドローバー300A後端の突起310Aが、スピンドル200Aの可動溝210Aの右側に当接した状態となっている。このため、工具ホルダー500Aを引き抜くと、ドローバー300A及びコレット400Aが動くことができ、クランプ爪422Aが開いて、工具ホルダー500Aが外れるようになる。
【実施例0035】
次に、図6を参照しながら、本発明の実施例3について説明する。同図(A)はクランプ完了時の様子を示し、同図(B)はアンクランプ時の様子を示す。同図(C)は、同図(B)の#6-#6線に沿って矢印方向に見た断面の概略を示す。前記実施例では、工具ホルダー500Aを外側からコレット400Aで係止してクランプしたが、本実施例では、工具ホルダー500Bの内側からコレット400Bでクランプするようになっている。すなわち、スピンドル200Bの先端内側にテーパー面220Bが設けられており、これに工具ホルダー500Bのテーパー面502Bが接するようになっている。また、本実施例では、ドローバー300Bは、後端側の突起310Bがスピンドル200B側に挟まれている。このため、ドローバー300は、スピンドル200Bに対して、回転はするもののスライドはしない。
【0036】
コレット400Bは、ほぼ円筒状のスライド体410Bと、その外側の保持円環420Bとによって構成されており、その先端側のクランプ爪422Bの動きによって工具ホルダー500Bがクランプされるようになっている。ドローバー300Bの先端外側と、コレット400Bのスライド体410Bの内側にはネジ機構430Bが設けられており、これにより、ドローバー300Bが回転すると、スライド体410Bが主軸方向にスライドするようになっている。
【0037】
上述した工具ホルダー500Bの後部は円筒状となっており、その内側には、クランプ溝506Bが設けられている。一方、スライド体410Bの外周には、アンクランプ溝418Bが設けられている。保持円環420Bは、前側にクランプ爪422Bが設けられており、後ろ側はスピンドル200Bに保持されている。クランプ爪422Bは、図2(B)に示したクランプ爪422と同様に、縮径した状態から拡径して、工具ホルダー500Bのクランプ溝506Bに係止する。スライド体410Bの後端側には、ピン溝247Bが設けられており、ピン241Bによってスライド体410Bが回り止めされている。
【0038】
<クランプ> 工具ホルダー500Bをスピンドル200Bの先端に挿入した状態で、ドローバー駆動制御機構600Bによりドローバー300Bを回転させると、ネジ機構430Bによってスライド体410Bが、同図(A)のように後ろ側にスライドする。すると、クランプ爪422Bがスライド体410Bのアンクランプ溝418Bに沿って拡径し、工具ホルダー500Bのクランプ溝506Bの側面507Bに当接して係止する。これにより、工具ホルダー500Bがクランプされる。
【0039】
<アンクランプ> 次に、工具ホルダー500Bを外すときは、ドローバー駆動制御機構600Bによりドローバー300Bを前回とは逆の方向に回転させる。すると、図6(B)に示すように、ネジ機構430Bにより、スライド体410Bが前方向に押し出される。これにより、工具ホルダー500Bのクランプ溝506Bの側面507Bに係止しているクランプ爪422Bが縮径して元に戻り、スライド体410Bのアンクランプ溝418Bに入り込む。これにより、工具ホルダー500Bのクランプ溝506Bからクランプ爪422Bが外れ、クランプ状態からアンクランプ状態ないし仮保持状態となる。そして、工具ホルダー500Bを引くと、スピンドル200Bから引き抜くことができる。
【実施例0040】
次に、図7を参照して、本発明の実施例4を説明する。同図(A)はクランプ完了時の様子を示し、同図(B)はアンクランプ時の様子を示す。同図(C)は、同図(B)の#7-#7線に沿って矢印方向に見た断面の概略を示す。本実施例では、前記実施例と同様に、工具ホルダー500Cの内側からコレット400Cでクランプするようになっている。また、本実施例では、ドローバー300Cは、後端側の突起310Cがスピンドル200C側に挟まれている。このため、ドローバー300Cは、スピンドル200Cに対して、回転はするもののスライドはしない。
【0041】
コレット400Cは、ほぼ円筒状のスライド体410Cと、その外側の保持円環420Cとによって構成されており、その先端側のクランプ爪422Cの動きによって工具ホルダー500Cがクランプされるようになっている。ドローバー300Cの先端外側と、コレット400Cのスライド体410Cの内側にはネジ機構430Cが設けられており、これにより、ドローバー300Cが回転すると、スライド体410Cが主軸方向にスライドするようになっている。
【0042】
保持円環420Cには、バネ固定ピン450Cが設けられている。図示の例では、同図(C)に示すように、主軸に直交する断面で見たときに、120度の間隔で3つのバネ固定ピン450Cが設けられている。一方、スライド体410C外側には、前記バネ固定ピン450Cからクランプ爪422Cに向かって、アンクランプ溝418Cが設けられており、このアンクランプ溝418C内において、バネ固定ピン450Cからクランプ爪422Cに至るアンクランプバネ428Cが延設されている。アンクランプバネ428Cは、クランプ爪422Cを主軸の方向ないし回転中心の方向に付勢している。上述した実施例のクランプ爪が縮径方向となっているのと同じである。アンクランプ溝418Cには、傾斜面419Cが設けられており、これにより、クランプ爪422Cがアンクランプバネ428Cのバネ力に抗して外側に押されるようになっている。
【0043】
<クランプ> 工具ホルダー500Cをスピンドル200Cの先端に挿入した状態で、ドローバー駆動制御機構600Cによりドローバー300Cを回転させると、ネジ機構430Cによってスライド体410Cが引き込まれ、同図(A)のように後ろ側にスライドする。すると、クランプ爪422Cがスライド体410Cのアンクランプ溝418Cの傾斜面419Cに当たって外側に押し出される。このため、クランプ爪422Cの先端が、工具ホルダー500Cのクランプ溝506Cに入り込むとともに、その側面507Cに当たって係止する。これにより、工具ホルダー500Cがクランプされる。
【0044】
<アンクランプ> 次に、工具ホルダー500Cを外すときは、同図(B)に示すように、ドローバー駆動制御機構600Cによりドローバー300Cを前回とは逆の方向に回転させる。すると、ネジ機構430Cにより、スライド体410Cが前方向に押し出される。このため、アンクランプバネ428Cの作用によってクランプ爪422Cがアンクランプ溝418C側に引き戻される。すると、クランプ爪422Cの先端と、工具ホルダー500Cのクランプ溝506Cとの係合がはずれ、クランプ状態からアンクランプ状態となる。このため、スピンドル200Cから工具ホルダー500Cを引き抜くことができる。
【0045】
以上のように、上記実施例1~4によれば、次のような効果が得られる。
a,ネジ機構を利用してコレットによるクランプ・アンクランプを行うこととし、油圧を使用しないので、いわゆるビビりがなく、強力な切削などの作業を良好に行うことができる。また、ネジ機構を駆動するモータの負荷はクランプ時・アンクランプ時のみであることから、ネジ寿命も長い。
b,クランプ・アンクランプをサーボモータにより行うこととしたので、クランプ時のトルク制御,異物の噛みこみ検知,クランプ不良検出を行うことができる。例えば、噛みこみが「0.005」のとき、テーパー角度によっては7倍となり、ネジリードと合わせてサーボモータの位置検出が可能である。
c,サラばねやコイルばねを使用しないため、ばね破損やバランス崩れが回避でき、それらのメンテナンスが不要である。
d,スピンドルとドローバーとの間にベアリングが存在せず、ベアリングに負荷がかからない。従って、ベアリングに対するクランプ・アンクランプ切り替えの衝撃も生じない。
e,アンクランプ時に工具ホルダーの仮保持を行い、反力を含めてスピンドル部分で構造を完結することとしたので、スピンドルと筐体とのベアリングに影響しない。
f,各種のコレットに適用可能である。
【0046】
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した各部の形状・寸法は一例であり、同様の機能を奏するように設計変更可能である。例えば、仮保持機構・ピン・キーなどの機械要素は、必要に応じて設けてよい。
(2)前記実施例では、ステッピングモーター610を使用して、コレット400を駆動するドローバーのスライド量からクランプ不良を検出することとしたが、通常のモーターを使用してクランプ・アンクランプのみを行うことを妨げるものではない。
(3)本発明のクランプ機構100の適用対象としては、例えば、マシニングセンターのATC(オートマチック・ツール・チャンジャー:自動工具交換装置)における工具ホルダーの交換に好適であるが、各種のクランプ機構に適用することができる。従って、クランプする対象も、工具ホルダーに限定されない。
(4)前記実施例では、ドローバー300の外周面と、スライド体410の内周面との間にネジ機構430を設けたが、逆に、ドローバー300の内周面と、スライド体410の外周面との間にネジ機構430を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、ドローバーとコレットの間のネジ機構によって、コレットによるクランプ対象物のクランプ・アンクランプを行うこととしたので、クランプ不良を検知することができ、また、皿ネジやコイルネジを必要とせず、メンテナンスの簡略化を図ることができ、更にはスピンドルとドローバーとの間にベアリングを用いないことから、クランプ・アンクランプの切り替え時のベアリングに対する衝撃の影響もなく、マシニングセンターのATCなどに好適である。
【符号の説明】
【0048】
100:クランプ機構
110:筐体
112:軸受け
200,200A~200C:スピンドル
210,210A:可動溝
220,220B:テーパー面
230:クランプ溝
232:溝
240,240A:仮保持機構
241A,241B:ピン
242:ボール
244:バネ
246:バネ抑え
247A,247B:ピン溝
300,300A~300C:ドローバー
310,310A~310C:突起
400,400A~400C:コレット
410,410A~410C:スライド体
412:円筒部
414:円柱部
416:溝
418B,418C:アンクランプ溝
419C:傾斜面
420,420A~420C:保持円環
422,422A~422C:クランプ爪
424:スリット
426:係止突起
428C:アンクランプバネ
430,430A~430C:ネジ機構
450C:バネ固定ピン
500,500A~500C:工具ホルダー
502,502B:テーパー面
504,504A:プルスタット
506B,506C:クランプ溝
507B,507C:側面
600,600A~600C:ドローバー駆動制御機構
610:ステッピングモーター
620:クラッチ
630:ドローバー制御装置
632:クランプ不良検出部
DS:異物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7