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特開2023-157800生成方法、生成装置、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157800
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】生成方法、生成装置、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20231019BHJP
   G06F 111/10 20200101ALN20231019BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F111:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067950
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】原 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】中橋 昭久
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC01
5B146DJ11
(57)【要約】
【課題】高い精度でパラメータを推定する推定式を生成する。
【解決手段】物理現象の条件を示す条件値から、物理現象から得られる観測値を推定する推定式を生成する生成方法は、複数の第一パラメータ値を取得(S201)し、物理現象を模擬したシミュレーションを、複数の第一パラメータ値それぞれを条件値として実施した結果を示す第二パラメータ値を、当該第一パラメータ値と対応付けて取得し(S202)、複数の第一パラメータ値のうち、当該第一パラメータ値に対応付けられた第二パラメータ値が、観測値を含む所定範囲に属する1以上の第一パラメータ値を特定し(S203)、特定した1以上の第一パラメータ値と、1以上の第一パラメータ値それぞれに対応付けられた第二パラメータ値とを用いて推定式を生成し(S204)、出力する(S205)。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理現象の条件を示す条件値から、前記物理現象から得られる観測値を推定する推定式を生成する生成方法であって、
複数の第一パラメータ値を取得し、
前記物理現象を模擬したシミュレーションを、前記複数の第一パラメータ値それぞれを条件値として実施した結果を示す第二パラメータ値を、当該第一パラメータ値と対応付けて取得し、
前記複数の第一パラメータ値のうち、当該第一パラメータ値に対応付けられた前記第二パラメータ値が、前記観測値を含む所定範囲に属する1以上の第一パラメータ値を特定し、
特定した前記1以上の第一パラメータ値と、前記1以上の第一パラメータ値それぞれに対応付けられた前記第二パラメータ値とを用いて前記推定式を生成して出力する
生成方法。
【請求項2】
前記生成方法では、
前記シミュレーションの条件値として用意された複数の第三パラメータ値を取得し、
前記複数の第三パラメータ値それぞれを条件値として前記シミュレーションを実施した結果を示す第四パラメータ値を、当該第三パラメータ値と対応付けて取得し、
前記複数の第三パラメータ値と複数の前記第四パラメータ値とを用いて新たな第三パラメータ値を取得する取得処理を1回以上行い、
前記複数の第三パラメータ値と、前記取得処理により取得した前記新たな第三パラメータ値とを、前記複数の第一パラメータ値として取得し、
前記取得処理では、
前記複数の第三パラメータ値から、前記複数の第三パラメータ値それぞれに対応付けられた前記第四パラメータ値を推定する仮推定式を生成し、
前記物理現象の条件を示す前記新たな第三パラメータ値であって、当該新たな第三パラメータ値から前記仮推定式により推定される推定値が前記所定範囲に属する前記新たな第三パラメータ値を取得する
請求項1に記載の生成方法。
【請求項3】
前記取得処理では、さらに、
前記新たな第三パラメータ値を条件値として実施した前記シミュレーションの結果を示す新たな第四パラメータ値が、前記所定範囲に属しているか否かを判定し、
1回以上の前記取得処理のうちの一の取得処理において前記新たな第四パラメータ値が前記所定範囲に属していないと判定した場合に、
前記新たな第三パラメータ値を前記複数の第三パラメータ値に追加し、かつ、前記新たな第四パラメータ値を前記複数の第四パラメータ値に追加してから、1回以上の前記取得処理のうちの前記一の取得処理の次回の前記取得処理を行う
請求項2に記載の生成方法。
【請求項4】
前記取得処理は、N回を上限として行われ、
N回の前記取得処理のそれぞれにおいて前記新たな第四パラメータ値が前記所定範囲に属していないと判定した場合に、前記1以上の第一パラメータ値を特定して前記推定式を生成する
請求項3に記載の生成方法。
【請求項5】
さらに、
複数の前記第二パラメータ値のうちの予め定められた割合の第二パラメータ値が含まれるように前記所定範囲を決定し、
決定した前記所定範囲を用いて前記推定式を生成する
請求項1~4のいずれか1項に記載の生成方法。
【請求項6】
物理現象の条件を示す条件値から、前記物理現象から得られる観測値を推定する推定式を生成する生成装置であって、
複数の第一パラメータ値を取得し、かつ、前記物理現象を模擬したシミュレーションを、前記複数の第一パラメータ値それぞれを条件値として実施した結果を示す第二パラメータ値を、当該第一パラメータ値と対応付けて取得する取得部と、
前記複数の第一パラメータ値のうち、当該第一パラメータ値に対応付けられた前記第二パラメータ値が、前記観測値を含む所定範囲に属する1以上の第一パラメータ値を特定する特定部と、
特定した前記1以上の第一パラメータ値と、前記1以上の第一パラメータ値それぞれに対応付けられた前記第二パラメータ値とを用いて前記推定式を生成して出力する生成部とを備える
生成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の生成方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成方法、生成装置、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の計算機技術の進展により、物理現象を模擬するための数値解析あるいは数値シミュレーション(単にシミュレーションともいう)が様々な分野で広く用いられるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1では、複数の材質からなる被測定体の温度を計測することにより、測定が困難な熱物性を同定する手法について記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-140693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、物性値などのパラメータを高い精度で推定できないことがあるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、高い精度でパラメータを推定する推定式を生成する生成方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る生成方法は、物理現象の条件を示す条件値から、前記物理現象から得られる観測値を推定する推定式を生成する生成方法であって、複数の第一パラメータ値を取得し、前記物理現象を模擬したシミュレーションを、前記複数の第一パラメータ値それぞれを条件値として実施した結果を示す第二パラメータ値を、当該第一パラメータ値と対応付けて取得し、前記複数の第一パラメータ値のうち、当該第一パラメータ値に対応付けられた前記第二パラメータ値が、前記観測値を含む所定範囲に属する1以上の第一パラメータ値を特定し、特定した前記1以上の第一パラメータ値と、前記1以上の第一パラメータ値それぞれに対応付けられた前記第二パラメータ値とを用いて前記推定式を生成して出力する生成方法である。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生成方法は、高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態における生成装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態における生成方法を示すフロー図である。
図3A】粉体の圧縮せん断試験を示す第一の説明図である。
図3B】粉体の圧縮せん断試験を示す第二の説明図である。
図3C】粉体の圧縮せん断試験を示す第三の説明図である。
図4】シミュレーションにおけるパラメータと推定式との関係を示す説明図である。
図5】実施例における実験計画の条件における応答の一例を示す説明図である。
図6】実施例における実験計画の条件における推定値1の一例を示す説明図である。
図7】実施例における推定式1の精度を示す説明図である。
図8】実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における推定値1の一例を示す説明図である。
図9】実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における応答の一例を示す説明図である。
図10】実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における推定値2の一例を示す説明図である。
図11】実施例における推定式2の精度を示す説明図である。
図12】実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における推定値2の一例を示す説明図である。
図13】実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における応答の一例を示す説明図である。
図14】実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における推定値3の一例を示す説明図である。
図15】実施例における推定式3の精度を示す説明図である。
図16】実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における応答と推定値3の一例を示す説明図である。
図17】実施の形態の変形例における生成方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
シミュレーションは、例えば、工業的な装置または機械が、その使用目的に適った性能を発揮できるか否かを事前に評価することを目的として、装置または機械の設計段階において実施される。そして、実施されたシミュレーションの結果に基づいて、装置または機械の設計の最適化がなされ得る。
【0012】
こうした工業的な装置または機械における物理現象を対象としたシミュレーションを精度よく実施するためには、解析プログラムに与える解析パラメータが適切である必要がある。解析パラメータは、例えば、材料の特性を表す物性値、初期条件または境界条件、もしくは、解析プログラムの中で物理現象を記述するために用いられる物理モデルが含有するモデルパラメータなどである。
【0013】
例えば、電子部品の温度分布を評価するために、熱伝導方程式の推定式などに基づいた伝熱シミュレーションが行われることがある。その場合、境界条件としての流入熱量、流出熱量、材料に関する熱伝導率、比熱、または、密度などの物性値を解析パラメータとして適切に与えない限り、実用に足る解析精度を得ることはできない。
【0014】
しかしながら、一般に実際の工業的な装置または機械を対象とする場合、これらの解析パラメータを事前に全て正確に知ることは困難であることが多い。
【0015】
例えば、熱伝導率または比熱などの熱物性値は比較的容易に計測されることが可能ではあるが、一方、複雑に組み合わされた部品間の熱抵抗、または、自然対流による熱伝達の影響などのように、計測されることが難しいパラメータも多く存在する。
【0016】
また、伝熱のシミュレーションに限らず、例えば粉体のシミュレーションにおいては、一般的に個別要素法などの手法が用いられるが、そこで必要となる解析パラメータとして、粒子間の摩擦係数、転がり抵抗、または、表面エネルギーなどがある。これらは、単体としては測定が非常に難しいパラメータであり、また、複数粉体の組み合わせ、または、粉体と構造物との組み合わせにより変化するパラメータであるので、正確な値をシミュレーションに盛り込むことは容易でない。
【0017】
シミュレーションを実施する際に、事前に正確に知ることができない解析パラメータについては、何らかの仮定値が与えられる。しかしながら、仮定値は、十分な精度を有していないこともあり得る。そのため、シミュレーション自体を実施することが可能であっても、シミュレーションにより得られた結果が目的に適う十分な精度を有しているとは限らない。
【0018】
すなわち、装置または機器の設計に足る十分な精度において物理現象を模擬するためのシミュレーションを実施するためには、未知の解析パラメータの値を的確に推定する必要があるという課題がある。
【0019】
上記の課題に対して、近年、逆問題あるいは逆解析の有用性が注目されている。逆問題または逆解析は、出力から入力を、または結果から原因を求めようとする手法である。言い換えれば、逆問題または逆解析は、入力から出力を、または、原因から結果を直接的に求める順問題または順解析とは逆の概念である。
【0020】
電子部品の温度分布を評価する上記問題についても、逆解析手法を適用することにより、出力である部品各所の温度時刻歴の測定結果から、入力である入熱および放熱の境界条件、または、電子部品の熱物性値を求めることができると期待される。
【0021】
例えば、特許文献1では、複数の材質からなる被測定体の温度を計測することにより、測定が困難な熱物性を同定する手法について記述されている。具体的には、ホットプレート上で加熱された複数材料からなる部材に対して、任意の箇所の温度履歴を計測する。一方で、有限要素法または有限体積法などの計算手法からなるシミュレーションによって、熱物性値の関数である温度推定式であって、任意の時間における温度を示す温度推定式を作成する。その上で、温度推定式から得られる信号と実測温度との差異を示す評価関数を導出し、その評価関数を最小化する解を求めることによって物性値を同定する。なお、特許文献1において、温度推定式は、実験計画法の直交表に基づいて多数のシミュレーションを行い、応答曲面法などの手法を用いて作成される、との記述がある。
【0022】
特許文献1に記述されている概念または手法は、様々な工業的な装置または機械を対象としたシミュレーションにおいて、目的に適う十分な精度が得られるように、未知の解析パラメータの値を的確に推定するために適用することが可能と考えられるが、実用上は以下の問題がある。
【0023】
特許文献1においては、有限要素解析の計算コスト削減のために、入力である推定対象パラメータと出力の関係性を、予め実施しておいたシミュレーションの結果に基づいて温度推定式として定式化しておき、その温度推定式による推定値を実際の観測結果と照らし合わせることで、未知のパラメータの同定が行われている。
【0024】
ここで、温度推定式の精度は、パラメータの同定精度に大きく影響するので、問題の性質に適した定式化の手法を選択することが重要である。具体的には、問題における入力と出力の関係性を適切に表現できるよう、例えば推定式の次数を適切に選択することなどが必要である。
【0025】
しかしながら、推定対象であるパラメータの個数が多い場合、推定式の次数を増やしていくと、推定式の係数の個数が増大してしまう。その結果、係数をシミュレーションの計算結果に基づいて決定する(例えば最小二乗回帰などの手法により決定する)ためには、係数の個数に応じた多数のシミュレーションを、条件を変化させた上で実施する必要がある。
【0026】
伝熱などの比較的短時間で実施可能なシミュレーションであれば、高次の推定式を導出するために多数のシミュレーションを実施することが可能な場合もある。しかし、実際の製造プロセスへの適用期間の短縮のためには、より少数のシミュレーションで推定式を導出する方が望ましい。また、流体または粉体シミュレーションなどにおける大規模なシミュレーションでは、計算コストが非常に高くなり、実際の開発に適用することが困難となる。
【0027】
したがって、現実的に実施可能なシミュレーションの実施回数のもとで、物性値などのパラメータを高い精度で推定する定式化手法が必要となるが、そのような手法はこれまでに知られていない。
【0028】
このように、物性値などのパラメータを高い精度で推定できないことがあるという問題がある。
【0029】
そこで、本発明は、高い精度でパラメータを推定する推定式を生成する生成方法等を提供する。例えば、本発明によれば、物理現象を模擬するシミュレーションを所望の解析精度において実施するために、未知の解析パラメータの値を的確に推定できる。また、本発明によれば、シミュレーションの計算コストを最小限にするように、解析パラメータを推定する推定式を提供することができる。言い換えれば、本発明によれば、解析パラメータの値を変化させた多数のシミュレーションを実施して得られた結果に基づいて、高い精度で定式化された推定式によって、実際に得られた観測値の統計情報を適切に説明できる解析パラメータの推定値を得ることに寄与する。
【0030】
本発明の一態様に係る生成方法は、物理現象の条件を示す条件値から、前記物理現象から得られる観測値を推定する推定式を生成する生成方法であって、複数の第一パラメータ値を取得し、前記物理現象を模擬したシミュレーションを、前記複数の第一パラメータ値それぞれを条件値として実施した結果を示す第二パラメータ値を、当該第一パラメータ値と対応付けて取得し、前記複数の第一パラメータ値のうち、当該第一パラメータ値に対応付けられた前記第二パラメータ値が、前記観測値を含む所定範囲に属する1以上の第一パラメータ値を特定し、特定した前記1以上の第一パラメータ値と、前記1以上の第一パラメータ値それぞれに対応付けられた前記第二パラメータ値とを用いて前記推定式を生成して出力する生成方法である。
【0031】
上記態様によれば、推定式を生成する根拠として、複数の第一パラメータ値のうちの、当該第一パラメータ値に対応付けられた第二パラメータ値が所定範囲に属するものを用いるので、生成される推定式がパラメータを推定する精度を高めることができる。複数の第一パラメータ値のうちには、当該第一パラメータ値に対応付けられた第二パラメータ値が観測値から比較的大きく離れている第一パラメータ値が含まれていることがある。その場合、仮に、推定式を生成するために複数の第一パラメータ値の全部を根拠として推定式を生成するとすれば、第二パラメータ値が観測値から比較的大きく離れている第一パラメータ値も、推定式の生成に用いられてしまい、推定式の精度を低下させることにつながる。本発明の一態様に係る生成方法では、第二パラメータ値が所定範囲に属する第一パラメータ値を用いて推定式を生成するので、上記のような推定式の精度の低下を抑制することができる。このように、本発明の一態様に係る生成方法は、高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0032】
例えば、前記生成方法では、前記シミュレーションの条件値として用意された複数の第三パラメータ値を取得し、前記複数の第三パラメータ値それぞれを条件値として前記シミュレーションを実施した結果を示す第四パラメータ値を、当該第三パラメータ値と対応付けて取得し、前記複数の第三パラメータ値と複数の前記第四パラメータ値とを用いて新たな第三パラメータ値を取得する取得処理を1回以上行い、前記複数の第三パラメータ値と、前記取得処理により取得した前記新たな第三パラメータ値とを、前記複数の第一パラメータ値として取得し、前記取得処理では、前記複数の第三パラメータ値から、前記複数の第三パラメータ値それぞれに対応付けられた前記第四パラメータ値を推定する仮推定式を生成し、前記物理現象の条件を示す前記新たな第三パラメータ値であって、当該新たな第三パラメータ値から前記仮推定式により推定される推定値が前記所定範囲に属する前記新たな第三パラメータ値を取得してもよい。
【0033】
上記態様によれば、予め用意された複数の第三パラメータ値に、仮推定式による推定値が所定範囲に属する新たな第三パラメータ値を追加したものを複数の第一パラメータ値とするので、複数の第一パラメータ値に、第二パラメータ値が観測値から比較的大きく離れている第一パラメータ値が含まれることが抑制される。これにより、複数の第一パラメータ値を用いて生成される推定式の精度をより一層高めることができる。よって、本発明の一態様に係る生成方法は、より高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0034】
例えば、前記取得処理では、さらに、前記新たな第三パラメータ値を条件値として実施した前記シミュレーションの結果を示す新たな第四パラメータ値が、前記所定範囲に属しているか否かを判定し、1回以上の前記取得処理のうちの一の取得処理において前記新たな第四パラメータ値が前記所定範囲に属していないと判定した場合に、前記新たな第三パラメータ値を前記複数の第三パラメータ値に追加し、かつ、前記新たな第四パラメータ値を前記複数の第四パラメータ値に追加してから、1回以上の前記取得処理のうちの前記一の取得処理の次回の前記取得処理を行ってもよい。
【0035】
上記態様によれば、新たな第三パラメータ値が、当該新たな第三パラメータ値を条件として実施したシミュレーションの結果が所定範囲に属していない場合に、さらに取得処理を行うので、複数の第一パラメータ値に、第二パラメータ値が観測値から比較的大きく離れている第一パラメータ値が含まれることがより一層抑制される。これにより、複数の第一パラメータ値を用いて生成される推定式の精度をより一層高めることができる。よって、本発明の一態様に係る生成方法は、より高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0036】
例えば、前記取得処理は、N回を上限として行われ、N回の前記取得処理のそれぞれにおいて前記新たな第四パラメータ値が前記所定範囲に属していないと判定した場合に、前記1以上の第一パラメータ値を特定して前記推定式を生成してもよい。
【0037】
上記態様によれば、推定式の生成を、取得処理をN回行っても新たな第四パラメータ値が所定範囲に属していない場合に行う。取得処理をN回行っても新たな第四パラメータ値が所定範囲に属していない場合には、それ以上に取得処理を繰り返し行っても、新たな第四パラメータ値が所定範囲に属していないことが起こることがあり、その場合、より高い精度でパラメータ値を推定する推定式を生成することが困難である。その場合には、取得処理を繰り返し行うことを回避することで、処理量の低減および消費電力の低減に寄与する。よって、本発明の一態様に係る生成方法は、消費電力を低減しながら、より高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0038】
例えば、さらに、複数の前記第二パラメータ値のうちの予め定められた割合の第二パラメータ値が含まれるように前記所定範囲を決定し、決定した前記所定範囲を用いて前記推定式を生成してもよい。
【0039】
上記態様によれば、複数の第二パラメータ値のうちの予め定められた割合の第二パラメータ値が含まれるように、より容易に、所定範囲を決定することができる。よって、本発明の一態様に係る生成方法は、より容易に、より高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0040】
本発明の一態様に係る生成装置は、物理現象の条件を示す条件値から、前記物理現象から得られる観測値を推定する推定式を生成する生成装置であって、複数の第一パラメータ値を取得し、かつ、前記物理現象を模擬したシミュレーションを、前記複数の第一パラメータ値それぞれを条件値として実施した結果を示す第二パラメータ値を、当該第一パラメータ値と対応付けて取得する取得部と、前記複数の第一パラメータ値のうち、当該第一パラメータ値に対応付けられた前記第二パラメータ値が、前記観測値を含む所定範囲に属する1以上の第一パラメータ値を特定する特定部と、特定した前記1以上の第一パラメータ値と、前記1以上の第一パラメータ値それぞれに対応付けられた前記第二パラメータ値とを用いて前記推定式を生成して出力する生成部とを備える生成装置である。
【0041】
上記態様によれば、上記生成方法と同様の効果を奏する。
【0042】
本発明の一態様に係るプログラムは、上記の生成方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0043】
上記態様によれば、上記生成方法と同様の効果を奏する。
【0044】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0045】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0046】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0047】
(実施の形態)
本実施の形態において、高い精度でパラメータを推定する推定式を生成する生成装置および生成方法などについて説明する。
【0048】
図1は、本実施の形態における生成装置10の構成を示すブロック図である。
【0049】
生成装置10は、物理現象の条件を示す条件値から、その物理現象から得られる観測値を推定する推定式を生成する。
【0050】
図1に示されるように、生成装置10は、機能部として、取得部11と、特定部12と、生成部13とを備える。生成装置10が備える機能部は、生成装置10が備えるプロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit))(不図示)が、メモリ(不図示)を用いてプログラムを実行することで実現され得る。
【0051】
取得部11は、複数の第一パラメータ値を取得する。また、取得部11は、物理現象を模擬したシミュレーションを、複数の第一パラメータ値それぞれを条件値として実施した結果を示す第二パラメータ値を、当該第一パラメータ値と対応付けて取得する。なお、シミュレーションを実施する主体は、生成装置10(より具体的には例えば取得部11)であってもよいし、生成装置10と異なる装置(シミュレータ装置ともいう)(不図示)であってもよい。シミュレーションを実施する主体がシミュレータ装置である場合、取得部11は、複数の第一パラメータ値をシミュレータ装置に送信し、送信した複数の第一パラメータ値を用いてシミュレータ装置が実施したシミュレーションの結果である第二パラメータ値を受信することで、第二パラメータ値を取得する。以降でも同様である。
【0052】
取得部11は、複数の第一パラメータ値を取得するときには、事前に用意された複数のパラメータ値(第三パラメータ値ともいう)を用いて上記複数の第一パラメータ値を取得することもできる。
【0053】
具体的には、取得部11は、シミュレーションの条件値として事前に用意された複数の第三パラメータ値を取得し、複数の第三パラメータ値それぞれを条件値としてシミュレーションを実施した結果を示す第四パラメータ値を、当該第三パラメータ値と対応付けて取得する。そして、取得部11は、複数の第三パラメータ値と複数の第四パラメータ値とを用いて新たな第三パラメータ値を取得する処理(取得処理ともいう)を、N回を上限として1回以上行う。ここで、Nは、取得処理が行われる回数の上限を意味する数値であり、1以上の整数であって、予め定められた整数である。ここでは、Nが2である場合を例として説明する。
【0054】
取得処理では、複数の第三パラメータ値から、複数の第三パラメータ値それぞれに対応付けられた第四パラメータ値を推定する推定式(仮推定式ともいう)を生成し、物理現象の条件を示す新たな第三パラメータ値を取得する。新たな第三パラメータ値は、当該新たな第三パラメータ値から仮推定式により推定される推定値が所定範囲に属するパラメータ値である。そして、取得部11は、複数の第三パラメータ値と、取得処理により取得した新たな第三パラメータ値とを、上記複数の第一パラメータ値として取得する。ここで、所定範囲は、複数の第二パラメータ値のうちの予め定められた割合の第二パラメータ値が含まれるように決定され得る。上記割合は、例えば75%であり、この場合を例として説明するが、70%~90%程度で任意に決定されてよい。
【0055】
なお、取得部11は、取得処理において、さらに、新たな第三パラメータ値を条件値として実施したシミュレーションの結果を示す新たな第四パラメータ値が、所定範囲に属しているか否かを判定し、1回以上行われる取得処理のうちの一の取得処理において新たな第四パラメータ値が所定範囲に属していないと判定した場合に、新たな第三パラメータ値を複数の第三パラメータ値に追加し、かつ、新たな第四パラメータ値を複数の第四パラメータ値に追加してから、1回以上行われる取得処理のうちの上記一の取得処理の次回の取得処理を行ってもよい。また、取得部11は、N回の取得処理それぞれにおいて新たな第四パラメータ値が所定範囲に属していないと判定した場合に、1以上の第一パラメータ値を特定して推定式を生成するようにしてもよい。
【0056】
特定部12は、複数の第一パラメータ値のうちから、推定式の生成に用いる第一パラメータ値を特定する。具体的には、特定部12は、取得部11が取得した複数の第一パラメータ値のうち、当該第一パラメータ値に対応付けられた第二パラメータ値が、物理現象から得られる観測値を含む所定範囲に属する1以上の第一パラメータ値を特定する。
【0057】
生成部13は、推定式を生成する。生成部13は、特定部12が特定した1以上の第一パラメータ値と、1以上の第一パラメータ値それぞれに対応付けられた第二パラメータ値とを用いて推定式を生成して出力する。
【0058】
以上のように構成された生成装置10が実行する処理(生成方法ともいう)を以下で説明する。
【0059】
図2は、本実施の形態における生成方法を示すフロー図である。ここでは、Nが2である場合を一例として説明する。Nが2である場合、取得処理を2回を上限として実行され得る。後述のステップS103~S111の処理が1回目の取得処理に相当し、後述のステップS112~S121の処理が2回目の取得処理に相当する。
【0060】
ステップS101において、取得部11は、シミュレーションの条件値として用意された実験計画を取得する。実験計画は、例えば、不明な解析パラメータである物性値または特性値(条件値に相当)を含む初期実験計画モデルであり、実験計画法によって作成されたものであり得る。シミュレーションの実施に必要な1以上の条件値の組を条件ともいう。実験計画には、複数の条件が含まれ得る。ステップS101で取得部11が取得する実験計画に含まれる条件値は、第三パラメータ値に相当する。
【0061】
実験計画法(Design of Experiments:DOE)には、古典的な直交計画法、中心複合計画法およびSpaceFilling計画法というように、目的に応じて多種の方法がある。直交計画法は、交互作用が強く働く場合に精度が低い傾向があり、また、SpaceFilling計画法は、実験回数が多い傾向がある。複雑なプロセスにおいては、一般に、交互作用が強く働き、実験またはシミュレーションに多くの時間を要することが想定される。そのような場合には、初期実験計画モデルの作成は、例えば中心複合計画法を用いて行われる。以降では、中心複合計画法を用いて初期実験計画モデルを作成する場合を例として説明する。
【0062】
ステップS102において、取得部11は、ステップS101で取得した初期実験計画モデルに基づいて、物性値または特性値からなる解析パラメータを条件値として設定し、実験条件の全ての組合せが完了するまでシミュレーション(初期シミュレーションともいう)を実施する。そして、取得部11は、初期シミュレーションの結果(つまり応答)を取得する。応答は、目的関数として用いられ得る。例えば、伝熱に関するシミュレーションの場合、応答は、各部における温度などである。ステップS102で取得部11が取得するシミュレーションの結果を示す値は、第四パラメータ値に相当する。
【0063】
ステップS103において、取得部11は、ステップS102で得られた応答に対して応答曲面法を適用し、応答曲面法に基づいて、解析パラメータから得られる応答を予測する推定式(推定式1という)を導出する。推定式1は、仮推定式の一例である。また、取得部11は、導出した推定式1と解析パラメータとを用いて、応答を推定する。推定式1により推定された応答を示す値を推定値1という。
【0064】
また、取得部11は、導出した推定式1を用いて、実際の物理現象から得られた観測値が、シミュレーションの結果として得られるような解析パラメータを導出する。解析パラメータの解として、複数の解が存在する場合には、例えば、全ての解析パラメータに対して数万から数百万条件のランダムサンプリングを行い、観測値に比較的近い推定値を得ることができる条件を複数抽出する。
【0065】
ステップS104において、取得部11は、ステップS103で解として得られた複数の解析パラメータの中から推定式1の精度を確認するためのシミュレーション(確認シミュレーションともいう)に用いる1以上の条件を抽出する。条件の抽出の方法に関しては、同様の解析パラメータをできるだけ選ばないよう、クラスタリングしてから抽出することが望ましい。クラスタリングの手法は多々あるが、例えばKmeans法などを用いる。
【0066】
ステップS105において、取得部11は、ステップS104で抽出した複数の条件を用いて、確認シミュレーションを実施する。
【0067】
ステップS106において、取得部11は、ステップS105で得た確認シミュレーションの結果と、ステップS103で推定式1から得た推定値1とを比較することで、推定式1の精度を算定する。また、取得部11は、算定した推定式1の精度が所定より高いか否かを判定する。ここで、推定式1の精度が所定より高い、とは、推定式1が物理現象の条件から観測値を推定する推定式として十分な精度を有していること、言い換えれば、推定式1が物理現象の条件から観測値を推定する推定式として実用に足ることを意味し得る。推定式1の精度が所定より高いと判定した場合(ステップS106でYes)、ステップS127に進み、そうでない場合(ステップS106でNo)、ステップS111へ進む。なお、推定式1の精度は、推定式1により推定された推定値とシミュレーションの結果を示す値との誤差、または、RMSE(Root Mean Squared Error)などの評価指標を用いて評価され得る。
【0068】
ステップS111において、取得部11は、ステップS105で実施した確認シミュレーションの条件である解析パラメータと、その応答とを、実験計画に追加する。上記条件は、新たな第三パラメータ値に相当し、上記応答は、新たな第四パラメータ値に相当する。
【0069】
ステップS112において、取得部11は、ステップS111で解析パラメータと応答とが追加された実験計画を用いて、解析パラメータから得られる応答を予測する推定式(推定式2という)を導出する。推定式2は、仮推定式の一例である。また、取得部11は、導出した推定式2と解析パラメータとを用いて、応答を推定する。推定式2により推定された応答を示す値を推定値2という。そして、取得部11は、導出した推定式2を用いて、実際の物理現象から得られた観測値が、シミュレーションの結果(つまり応答)として得られるような解析パラメータを導出する。本ステップにおける推定式2の導出、および、解析パラメータの導出の方法は、ステップS103における方法と同様である。
【0070】
ステップS113において、取得部11は、ステップS112で得られた複数の解析パラメータの中から推定式2の精度を確認するための確認シミュレーションに用いる1以上の条件を抽出する。本ステップの処理は、ステップS104における処理で推定式1を推定式2に代えたものに相当する。
【0071】
ステップS114において、取得部11は、ステップS113で抽出した複数の条件を用いて、確認シミュレーションを実施する。本ステップの処理は、ステップS105における処理で推定式1を推定式2に代えたものに相当する。
【0072】
ステップS115において、取得部11は、ステップS114で得た確認シミュレーションの結果と、ステップS112で推定式2から得た推定値2とを比較することで、推定式2の精度を算定する。また、取得部11は、算定した推定式2の精度が所定より高いか否かを判定する。推定式2の精度が所定より高いと判定した場合(ステップS115でYes)、ステップS127に進み、そうでない場合(ステップS115でNo)、ステップS121へ進む。本ステップの処理は、ステップS106における処理で推定式1を推定式2に代えたものに相当する。
【0073】
ステップS121において、取得部11は、ステップS114で実施した確認シミュレーションの条件である解析パラメータと、その応答とを、実験計画に追加する。追加後の実験計画に含まれる条件と、当該条件に対応する応答とは、それぞれ、第一パラメータ値と第二パラメータ値とに相当する。
【0074】
ステップS122において、特定部12は、実験計画に含まれている条件のうち、推定式を導出するために使用する条件を特定する。特定される条件は、当該条件を用いたシミュレーションの応答が所定範囲に属する条件である。特定部12は、特定した条件を含む実験計画を、新たな実験計画として取得する。言い換えれば、特定部12は、実験計画に含まれている条件のうち、特定した条件以外の条件を排除することで、新たな実験計画を取得する、とも言える。
【0075】
本ステップの目的は、観測値付近の推定式の精度を向上させることである。本ステップでは、観測値から大きく離れた出力を表す解析パラメータの条件を排除することが必要である。推定式に使用するデータ数は、RMSE(Root Mean Squared Error)などの精度指標を用いて選定されることが望ましい。
【0076】
ステップS123において、生成部13は、ステップS122で取得した新たな実験計画を用いて、解析パラメータから得られる応答を予測する推定式(推定式3という)を導出する。また、生成部13は、導出した推定式3と解析パラメータとを用いて、応答を推定する。推定式3により推定された応答を示す値を推定値3という。
【0077】
ステップS124において、生成部13は、ステップS123で得られた複数の解析パラメータの中から推定式3の精度を確認するための確認シミュレーションに用いる1以上の条件を抽出する。本ステップの処理は、ステップS104における処理で推定式1を推定式3に代えたものに相当する。
【0078】
ステップS125において、生成部13は、ステップS124で抽出した複数の条件を用いて、確認シミュレーションを実施する。本ステップの処理は、ステップS105における処理で推定式1を推定式3に代えたものに相当する。
【0079】
ステップS126において、生成部13は、ステップS125で得た確認シミュレーションの結果と、ステップS123で推定式3から得た推定値3とを比較することで、推定式3の精度を算定する。また、生成部13は、算定した推定式3の精度が所定より高いか否かを判定する。推定式3の精度が所定より高いと判定した場合(ステップS126でYes)、ステップS127に進み、そうでない場合(ステップS126でNo)、ステップS128へ進む。本ステップの処理は、ステップS106における処理で推定式1を推定式3に代えたものに相当する。
【0080】
ステップS127において、生成部13は、推定式を出力する。生成部13が出力する推定式は、ステップS127の処理を行っている時点で得られている推定式のうちの最後に得られた推定式である。すなわち、生成部13が出力する推定式は、推定式1の精度が所定より高いと判定(ステップS106でYes)した後にステップS127の処理を行う場合には推定式1であり、推定式2の精度が所定より高いと判定(ステップS115でYes)した後にステップS127の処理を行う場合には推定式2であり、推定式3の精度が所定より高いと判定(ステップS126でYes)した後にステップS127の処理を行う場合には推定式3である。
【0081】
ステップS128において、取得部11は、ステップS125で実施した確認シミュレーションの条件である解析パラメータと、その応答とを、実験計画に追加する。その後、ステップS122に進み、再び、新たな実験計画の取得を行う。
【0082】
図2に示される一連の処理により、生成装置10は、高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0083】
(実施例)
以下に上記実施の形態の具体的な実施例を示す。本実施例では、粉体の圧縮工程を事例として記述するが、開示技術がこれにより限定されるものではない。
【0084】
圧縮装置の1つであるロールプレス装置は、工業用途で幅広く利用され、フィルム、紙、不織布、金属箔または鋼板などの材料を圧延成形する目的で用いられている。ロールプレス装置は、その他にも、シート表面の艶出し、張り合わせまたは繊維材料の絞り(脱水)など、成形以外の用途に適用されることも多い。また、単純な板材の圧延以外にも、ステンレス、鉄、ニッケル、アルミニウムなどの金属の粉体をロールプレス装置に連続的に供給することで成形する方法もよく知られている。
【0085】
このロールプレス装置を用いた粉体圧縮プロセスに関して、個別要素法による粉体のシミュレーションを適用するためには、粉体にまつわる物性値(具体的には、粒子間の摩擦係数、もしくは、粒子と構造物材料との間の摩擦係数、転がり抵抗、または、粒子のヤング率もしくは真密度など多数のパラメータ)が必要である。
【0086】
本発明を、このロールプレス装置を用いた粉体圧縮プロセスに対して適用するのも可能ではあるが、プロセスが大規模であり、多数のシミュレーションを実施するには効率的ではないので、問題を簡素化し、より簡易的な実験において物性を同定する方法をとる。
【0087】
例えば、少量の粉体をサンプルとして用いた圧縮せん断試験で物性値を同定する方法がある。上記方法について、以下で図3A図3Bおよび図3Cを参照しながら説明する。
【0088】
図3A図3Bおよび図3Cは、粉体の圧縮せん断試験を示す説明図である。
【0089】
図3Aに示されるように、圧縮せん断試験機は、杵21と臼22と底板23とを有する円筒状のセルを備える。圧縮せん断試験機は、杵21が垂直に押し出されることでセル内に充填させた粉体24が圧縮される過程(圧縮過程ともいう)を模擬することができる(図3B参照)。また、圧縮せん断試験機は、底板23が水平に押し出されることでセル内に充填させた粉体24がせん断される過程(せん断過程ともいう)を模擬することができる(図3C参照)。
【0090】
杵21、および、底板23には、ロードセルが設置されており、それぞれにかかる荷重が測定できるようになっている。
【0091】
まず、杵21が一定速度で粉体24を圧縮していく(図3B参照)。このとき、杵21にかかる反力がロードセルによって計測され、結果として反力の時刻歴のデータが取得される。反力が、指定された圧縮荷重に達した時点で、その荷重が維持された状態で底板23が一定速度で水平に移動を始める(図3C参照)。このとき、底板23に設置したロードセルによって、せん断力の時刻歴データが取得される。
【0092】
図4は、シミュレーションにおけるパラメータと推定式との関係を示す説明図である。
【0093】
図4に示されるように、粉体の圧縮せん断試験の入力は、粉体材料の粉体物性と、壁面物性と、粉体-壁面間特性とである。また、粉体の圧縮せん断試験の出力は、粉体材料の圧縮特性およびせん断特性である。
【0094】
ここで、入力である粉体物性、壁面物性および粉体-壁面間特性と、出力である圧縮特性およびせん断特性との関係を示す関係式を以下のように設定する。
【0095】
第1関係式:圧縮特性=f1(粉体物性,壁面物性,粉体-壁面間特性)
【0096】
第2関係式:せん断特性=f2(粉体物性,壁面物性,粉体-壁面間特性)
【0097】
ここで、粉体物性と壁面物性とは、それぞれの材料のヤング率、ポアソン比、粒子同士の摩擦係数または転がり抵抗などを示す。粉体-壁面間特性は、粒子と壁面との間の摩擦係数または転がり抵抗などを示す。
【0098】
圧縮特性とせん断特性とは、それぞれロードセルによって測定された力の時刻歴データである。圧縮特性とせん断特性とは、粉体物性と、壁面物性と、粉体-壁面間特性との関数として表現される。
【0099】
圧縮特性とせん断特性とを示すパラメータを推定すべく、実験計画に基づくシミュレーション結果から、この関数と同等の意義を有する推定式を精度よく求めることが目的である。
【0100】
本来であれば、求めたい物性値または特性値の数に合わせて、プロセス条件を変えた場合の実測値または別の観測点での実測値を収集し、それぞれの実測値に対する応答をシミュレーションにより取得し、得られた複数の予測式から物性値を一意に決めることが望ましい。ここでは簡単のため、粉体の、ある圧縮量に対する圧縮力を応答の一例として、図2のフロー図に則って推定式を導出する処理を説明する。
【0101】
前提として、圧縮力の実際の実験における観測値は、23[N]であるとする。生成装置10は、与えられた条件から上記観測値を推定できる、精度の高い推定式を導出する。この推定式は、最適な物性値を得ることに寄与する。
【0102】
推定式の目標精度は、RMSEが10以下であることとする。また、観測値に対する推定値の誤差が±5[N]以内になる(つまり、23±5[N]の範囲に含まれる)物性値を得ることを目的とする。
【0103】
図5は、実施例における実験計画の条件における応答の一例を示す説明図である。
【0104】
図5は、初期実験計画の一例であり、ステップS101で生成装置10が取得する実験計画に相当する。
【0105】
図5に示される実験計画には、48個の条件である条件#1~#48が含まれている。1つの条件には、制御変数として用いる物性として、ヤング率、摩擦係数、転がり抵抗などである7種類の物性値が、「物性1」~「物性7」として含まれている。
【0106】
また、実験計画には、条件#1~#48それぞれを用いて実施されたシミュレーション(ステップS102)により得られた応答である圧縮力も含まれている。
【0107】
取得部11は、図5に示される実験計画に基づいて推定式1を導出する(ステップS103)。推定式1は、実験計画に含まれる条件#1~#48と、上記条件それぞれを用いてシミュレーションで得られた圧縮力から、応答曲面法を用いて各制御変数の2次の項まで使用し、ステップワイズ法による変数選択により導出される。
【0108】
取得部11は、このように導出された推定式1を用いて、図5に示される条件#1~#48の物性値から推定される応答(推定値1ともいう)を取得する。
【0109】
図6は、実施例における実験計画の条件における推定値1の一例を示す説明図である。
【0110】
図6において、条件#1~#48とその圧縮力は、図5におけるものと同じである。また、図6において、条件#1~#48の条件から推定される推定値1が示されている。
【0111】
ここで、取得部11は、推定式1の精度について評価する。
【0112】
図7は、実施例における推定式1の精度を示す説明図である。図7において、横軸をシミュレーションにより得られた値(つまり、図6の圧縮力)とし、縦軸を推定値1として、図6に示される条件#1~#48についての圧縮力と推定値1とを示す点がプロットされている。図7における点線は、傾きが1であり、切片が0である直線である。プロットされている点の位置が、点線に近いほど、推定式1の精度が高いことを示す。言い換えれば、図7に示されるグラフが、推定式1の精度を示すRMSEの傾向を図示している。推定式1によって得られる推定式1のRMSEは23.5である。
【0113】
次に、取得部11は、推定式1の精度を確認するため、確認シミュレーションに用いる条件を抽出する(ステップS104)。
【0114】
取得部11は、評価する対象である圧縮力に関して、実際の実験における観測値である23[N]の近傍を応答とする物性値の組み合わせを抽出する。ここでは、推定値1が、23[N]を中心として±5[N]の範囲に含まれる4つの条件が抽出されたとする。
【0115】
図8は、実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における推定値1の一例を示す説明図である。
【0116】
図8において、抽出された条件は、条件#49~#52の4個である。
【0117】
次に、取得部11は、確認シミュレーションを実施する(ステップS105)。
【0118】
図9は、実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における応答の一例を示す説明図である。
【0119】
図9には、抽出された条件#49~#52を用いて実施された確認シミュレーションによって得られた圧縮力が示されている。
【0120】
ここで、取得部11は、推定式1の精度が高いか否かを判定する(ステップS106)。
【0121】
図9に示されるように、確認シミュレーションの条件から抽出された条件#49~#52において、シミュレーションから得られる応答(それぞれ、50、47、47および60)は、推定値1と大きく乖離しており、23±5[N]の範囲に含まれていない。よって、取得部11は、推定式1の精度が高くないと判定する。
【0122】
次に、取得部11は、確認シミュレーションの結果を実験計画に追加して、推定式2を導出する(ステップS111、S112)。推定式2は、初期の実験計画に含まれる条件#1~#48に、確認シミュレーションの条件から抽出された4個の条件の応答#49~#52を追加したものを用いて、推定式1と同様に、応答曲面法を用いて、各制御変数の2次の項まで使用し、ステップワイズ法による変数選択により導出される。
【0123】
図10は、実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における推定値2の一例を示す説明図である。
【0124】
ここで、取得部11は、推定式2の精度について評価する。
【0125】
図10において、条件#1~#52のそれぞれについて、推定式2により算出された推定値2が示されている。
【0126】
図11は、実施例における推定式2の精度を示す説明図である。図11において、横軸をシミュレーションにより得られた値(つまり、図10の圧縮力)とし、縦軸を推定値2として、図10に示される52個の条件(つまり条件#1~#52)ごとの圧縮力と推定値2とを示す点がプロットされている。図11におけるグラフの表示方法は、図7と同様である。推定式2によって得られる推定値2のRMSEは23.6であり、初期実験計画に基づいて得た推定値1のRMSEである23.5とほぼ同じである。よって、推定式1に対して推定式2の精度はほとんど向上していないといえる。
【0127】
次に、取得部11は、推定式2の精度を確認するため、確認シミュレーションに用いる条件を抽出する(ステップS113)。
【0128】
推定式1の場合と同様に、ここで評価する圧縮力に関して、実際の実験における観測値である23[N]の近傍を応答とする物性値の組み合わせを抽出する。ここでは、推定値2が、23[N]を中心として±5[N]の範囲に含まれる4つの条件が抽出されたとする。
【0129】
図12は、実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における推定値2の一例を示す説明図である。
【0130】
図12において、抽出された条件は、条件#53~#56の4個である。
【0131】
次に、取得部11は、確認シミュレーションを実施する(ステップS114)。
【0132】
図13は、実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における応答の一例を示す説明図である。
【0133】
ここで、取得部11は、推定式2の精度が高いか否かを判定する(ステップS115)。
【0134】
図13には、抽出された条件#53~#56を用いて実施された確認シミュレーションによって得られた圧縮力が示されている。
【0135】
図13に示されるように、確認シミュレーションの条件から抽出された条件#53~#56において、シミュレーションから得られる応答(それぞれ、37、29、50および40)は、推定値2と大きく乖離しており、23±5[N]の範囲に含まれていない。よって、取得部11は、推定式2の精度が高くないと判定する。
【0136】
このように、確認シミュレーションによって条件を追加しても推定式の精度が向上しないことがある。推定式の精度が悪い場合、推定式の精度を向上させるために、推定式の次数を増やすことが考えられる。しかしながら、次数を増やした場合、実験計画が大きく拡大され、シミュレーションの実施回数が多くなることが考えられるので望ましくない。
【0137】
このような場合、推定式を構築するためのデータ範囲を狭めることで、観測値周辺の推定式の精度を向上させることができることがある。
【0138】
本事施例においては、観測値である目標値23[N]に対して、シミュレーションの応答である圧縮力の値が大きく外れている条件を、推定式を構築するためのデータ群から排除して推定式3を導出する。
【0139】
具体的には、取得部11が確認シミュレーションの条件から抽出された条件#53~#56を実験計画に追加(ステップS121)する。そして、特定部12が、全ての条件#1~#56のうちの約75%の条件を特定する(ステップS122)。言い換えれば、全ての条件#1~#56の中から、上記のように特定されなかった約25%の条件を排除する。
【0140】
特定される条件は、例えば、当該条件からシミュレーションにより得られる応答である圧縮力が、観測値である23[N]に近いほうから数えて約75%に相当する分の条件である。言い換えれば、上記圧縮力が、観測値である23[N]から遠い約25%に相当する分の条件を排除する。ここでは、シミュレーションにより得られる応答である圧縮力が150[N]を超えたデータが、上記25%分に相当するものであったのでこれらが排除され、その結果として残った43個の条件から推定式3を導出する(ステップS123)。
【0141】
図14は、実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における推定値3の一例を示す説明図である。
【0142】
ここで、生成部13は、推定式3の精度について評価する。
【0143】
図15は、実施例における推定式3の精度を示す説明図である。図15において、横軸をシミュレーションにより得られた値(つまり、図14の圧縮力)とし、縦軸を推定値3として、図15に示される56個の条件ごとの圧縮力と推定値3とを示す点がプロットされている。図15におけるグラフの表示方法は、図7と同様である。
【0144】
図15に示されるように、シミュレーションにより得られた圧縮力が150[N]より小さい範囲において、シミュレーションにより得られた値と推定値3とが非常に良い一致を示すことがわかる。これに対して、圧縮力が150[N]を超える範囲では、シミュレーションにより得られた値と推定値3とが大きく乖離しており、推定式の精度が低いことがわかる。また、シミュレーションにより得られた圧縮力が、150[N]より小さい範囲に含まれる43個の条件に関しては、RMSEが8.4であり、推定値1のRMSEである23.5(図7参照)、および、推定値2のRMSEである23.6(図11参照)と比較して、精度が非常に高いと言える。
【0145】
次に、生成部13は、推定式3の精度を確認するため、確認シミュレーションに用いる条件を抽出する(ステップS124)。
【0146】
ここでは、評価する対象である圧縮力に関して、実測による観測値を23[N]に最も近い値を示す条件を導出する。
【0147】
次に、生成部13は、確認シミュレーションを実施する(ステップS125)。
【0148】
図16は、実施例における実験計画と確認シミュレーションとの条件における応答と推定値3の一例を示す説明図である。
【0149】
図16には、推定式3から得られる最適な条件である条件#57と、条件#57に基づいて推定式3から得られる推定値3と、条件#57に基づいてシミュレーションから得られる圧縮力とが示されている。
【0150】
ここで、生成部13は、推定式3の精度が高いか否かを判定する(ステップS126)。
【0151】
図16に示されるように、条件#57に関して、観測値である23[N]に対して、推定値3が23[N]であり、また、シミュレーションから得られる圧縮力が26[N]であり25±5[N]の範囲に含まれている。生成部13は、推定式3を出力する。
【0152】
このように、生成装置10は、シミュレーションから得られる圧縮力に比較的近い推定値3を算定できる推定式3を導出することができる。
【0153】
(実施の形態の変形例)
本変形例において、高い精度でパラメータを推定する推定式を生成する生成装置および生成方法について、別の形態を説明する。
【0154】
本変形例における生成装置10は、上記実施の形態における生成装置10と同様である。
【0155】
図17は、本変形例における生成方法を示すフロー図である。
【0156】
ステップS201において、取得部11は、複数の第一パラメータ値を取得する。
【0157】
ステップS202において、取得部11は、複数の第二パラメータ値を取得する。具体的には、取得部11は、物理現象を模擬したシミュレーションを、ステップS201で取得した複数の第一パラメータ値それぞれを条件値として実施した結果を示す第二パラメータ値を、当該第一パラメータ値と対応付けて取得する。
【0158】
ステップS203において、特定部12は、ステップS201で取得した複数の第一パラメータ値のうち、当該第一パラメータ値に対応付けられた第二パラメータ値が、観測値を含む所定範囲に属する1以上の第一パラメータ値を特定する。
【0159】
ステップS204において、生成部13は、ステップS203で特定した1以上の第一パラメータ値と、上記1以上の第一パラメータ値それぞれに対応付けられた第二パラメータ値とを用いて推定式を生成する。
【0160】
ステップS205において、生成部13は、ステップS204で生成した推定式を出力する。
【0161】
以上のように、上記実施の形態または上記変形例の生成方法によれば、推定式を生成する根拠として、複数の第一パラメータ値のうちの、当該第一パラメータ値に対応付けられた第二パラメータ値が所定範囲に属するものを用いるので、生成される推定式がパラメータを推定する精度を高めることができる。複数の第一パラメータ値のうちには、当該第一パラメータ値に対応付けられた第二パラメータ値が観測値から比較的大きく離れている第一パラメータ値が含まれていることがある。その場合、仮に、推定式を生成するために複数の第一パラメータ値の全部を根拠として推定式を生成するとすれば、第二パラメータ値が観測値から比較的大きく離れている第一パラメータ値も、推定式の生成に用いられてしまい、推定式の精度を低下させることにつながる。本発明の一態様に係る生成方法では、第二パラメータ値が所定範囲に属する第一パラメータ値を用いて推定式を生成するので、上記のような推定式の精度の低下を抑制することができる。このように、本発明の一態様に係る生成方法は、高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0162】
また、予め用意された複数の第三パラメータ値に、仮推定式による推定値が所定範囲に属する新たな第三パラメータ値を追加したものを複数の第一パラメータ値とするので、複数の第一パラメータ値に、第二パラメータ値が観測値から比較的大きく離れている第一パラメータ値が含まれることが抑制される。これにより、複数の第一パラメータ値を用いて生成される推定式の精度をより一層高めることができる。よって、本発明の一態様に係る生成方法は、より高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0163】
また、新たな第三パラメータ値が、当該新たな第三パラメータ値を条件として実施したシミュレーションの結果が所定範囲に属していない場合に、さらに取得処理を行うので、複数の第一パラメータ値に、第二パラメータ値が観測値から比較的大きく離れている第一パラメータ値が含まれることがより一層抑制される。これにより、複数の第一パラメータ値を用いて生成される推定式の精度をより一層高めることができる。よって、本発明の一態様に係る生成方法は、より高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0164】
また、推定式の生成を、取得処理をN回行っても新たな第四パラメータ値が所定範囲に属していない場合に行う。取得処理をN回行っても新たな第四パラメータ値が所定範囲に属していない場合には、それ以上に取得処理を繰り返し行っても、新たな第四パラメータ値が所定範囲に属していないことが起こることがあり、その場合、より高い精度でパラメータ値を推定する推定式を生成することが困難である。その場合には、取得処理を繰り返し行うことを回避することで、処理量の低減および消費電力の低減に寄与する。よって、本発明の一態様に係る生成方法は、消費電力を低減しながら、より高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0165】
また、複数の第二パラメータ値のうちの予め定められた割合の第二パラメータ値が含まれるように、より容易に、所定範囲を決定することができる。よって、本発明の一態様に係る生成方法は、より容易に、より高い精度でパラメータを推定する推定式を生成することができる。
【0166】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記実施の形態の生成装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0167】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、物理現象の条件を示す条件値から、前記物理現象から得られる観測値を推定する推定式を生成する生成方法であって、複数の第一パラメータ値を取得し、前記物理現象を模擬したシミュレーションを、前記複数の第一パラメータ値それぞれを条件値として実施した結果を示す第二パラメータ値を、当該第一パラメータ値と対応付けて取得し、前記複数の第一パラメータ値のうち、当該第一パラメータ値に対応付けられた前記第二パラメータ値が、前記観測値を含む所定範囲に属する1以上の第一パラメータ値を特定し、特定した前記1以上の第一パラメータ値と、前記1以上の第一パラメータ値それぞれに対応付けられた前記第二パラメータ値とを用いて前記推定式を生成して出力する生成方法を実行させるプログラムである。
【0168】
以上、一つまたは複数の態様に係る生成装置などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明に係る生成方法は、物性値などの解析パラメータが不明な場合において、解析パラメータと実測値の関係式を精度よく導出する場合に有用である。
【符号の説明】
【0170】
10 生成装置
11 取得部
12 特定部
13 生成部
21 杵
22 臼
23 底板
24 粉体
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17