(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157804
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20231019BHJP
H05F 3/02 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G01V3/08 E
H05F3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067963
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】延永 達哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聖也
【テーマコード(参考)】
2G105
5G067
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB04
2G105DD02
2G105EE01
2G105GG01
2G105HH01
2G105JJ05
5G067AA18
5G067DA02
5G067DA40
(57)【要約】
【課題】除電機能を有した物体検出装置を実現すること。
【解決手段】物体検出装置は、励振器10と、励振電極11と、検出電極12と、検出器13と、第1除電回路14と、第2除電回路15を有している。第1除電回路14は、励振器10と励振電極11の間に挿入されている。第1除電回路14は、励振器10と励振電極11の間に直列に接続されたキャパシタC1と、キャパシタC1に並列に接続された除電抵抗R1で構成されている。第2除電回路15は、検出電極12と検出器13の間に挿入されている。第2除電回路15は、検出電極12と検出器13の間に直列に接続されたキャパシタC2と、検出電極12とキャパシタC2の間の端子とグランドとの間に挿入された除電抵抗R2で構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の物体を検出する物体検出装置において、
所定の周波数の電気信号を生成する励振器と、
前記励振器からの電気信号によって励振され電磁場を発生させる励振電極と、
電磁場を検出して電気信号を出力する検出電極と、
前記励振器からの電気信号と前記検出電極からの電気信号とを乗算して差周波数信号である検出信号を出力する検出器と、
前記励振電極または前記検出電極と、電源またはグランドとの間を、直接的または間接的に接続する除電抵抗と、
を有し、
前記励振電極と前記検出電極のうち少なくとも一方は絶縁体に設けられ、
前記検出信号の変動により前記物体を検出するとともに、前記絶縁体に帯電した電荷を前記除電抵抗を介して除電する、
ことを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記励振器と前記励振電極の間にキャパシタを有し、
前記除電抵抗は、前記キャパシタに並列に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記励振器と前記励振電極の間にキャパシタを有し、
前記除電抵抗は、前記励振電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記検出電極と前記検出器の間にキャパシタを有し、
前記除電抵抗は、前記検出電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記除電抵抗の抵抗値は、前記励振器の出力する電気信号の周波数における前記キャパシタのインピーダンスよりも大きい、ことを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記励振器と前記励振電極の間に接続されたキャパシタと、
前記励振器と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続された抵抗と、を有し、
前記除電抵抗は、前記励振電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続されていて、
前記除電抵抗の抵抗値は、前記抵抗の抵抗値以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記検出電極と前記検出器の間に接続されたキャパシタと、
前記検出器と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続された抵抗と、を有し、
前記除電抵抗は、前記検出電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続されていて、
前記除電抵抗の抵抗値は、前記抵抗の抵抗値以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記抵抗の抵抗値に対する前記除電抵抗の抵抗値の比は、4以上である、ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁場によって物体を検出する物体検出装置であって、除電機能を有するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が走行すると車体に静電気が発生し、車両の後部には乱気流、渦流が発生する。乱気流や渦流は負圧を発生させ、走行抵抗となる。そこで特許文献1では、車両後方に所定形状の導電性材料からなる整流板を設け、静電気を空中に放電して車体に帯電することを防止するとともに、車両後方の乱気流、渦流を整流化することが記載されており、それにより走行抵抗を減らし燃料消費の節減を図ることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、車両内に発生した静電気を除去する静電気除去装置が記載されており、車両内のエンジンの吸気管の外面、エンジンクーラント流路管の外面、エンジンオイル流路管の外面に対してそれぞれ接続する第1~3接続部と、第1~3接続部とバッテリのマイナス端子とを並列に接続する第1~3導線と、第1~3導線と接続される導電板と、導電板とバッテリのマイナス端子とを接続する第4導線と、を有した静電気除去装置が記載されている。
【0004】
また、電磁場を利用して人を検知する技術として特許文献3、4がある。特許文献3には、人を励振電極により励振し、2つの検出電極によって人が纏った電磁場を検出し、検出電極により検出した2つの検出信号の位相差により人の位置を検出することが記載されている。特許文献4には、電磁場を発生させる出力電極の周囲に複数の検出電極を配置し、複数の検出電極からの信号の位相差を求め、検出電極の近くに人の指などが近づいた際の位相差の変化によって人を検知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6364576号公報
【特許文献2】特開2015-229392号公報
【特許文献3】特許第5899698号公報
【特許文献4】特許第5853755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、計算された整流板を組み付ける必要があり、設計が煩雑であると同時に車両のデザインを損なうという問題があった。
【0007】
また、特許文献2では、除電のためだけにバッテリのマイナス端子から配線を伸ばして接続部を設ける必要があり、コストが増大してしまう。
【0008】
特許文献3、4を物体の検知に利用することも考えられる。しかし、特許文献3、4は2つの検出電極の一方の信号を基準信号として位相差を検出するため、2つの検出信号の双方が微弱である場合や、ノイズの影響がある場合には、位相差検出が不安定となる懸念があった。
【0009】
また、特許文献3、4では、交流電流を扱うので、通常、励振電極と励振器との間や、検出電極と検出回路の間にコンデンサを挿入する。そのため、励振電極や検出電極の電極面に電荷を分散させる効果はある。しかし、除電するまでには至らない。また、車両走行時に走行風によって帯電した電荷を放電させる効果は見込まれるが、停車時や低速時は十分な放電が得られない懸念がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、除電機能を有した物体検出装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、周囲の物体を検出する物体検出装置において、所定の周波数の電気信号を生成する励振器と、前記励振器からの電気信号によって励振され電磁場を発生させる励振電極と、電磁場を検出して電気信号を出力する検出電極と、前記励振器からの電気信号と前記検出電極からの電気信号とを乗算して差周波数信号である検出信号を出力する検出器と、前記励振電極または前記検出電極と、電源またはグランドとの間を、直接的または間接的に接続する除電抵抗と、を有し、前記励振電極と前記検出電極のうち少なくとも一方は絶縁体に設けられ、前記検出信号の変動により前記物体を検出するとともに、前記絶縁体に帯電した電荷を前記除電抵抗を介して除電する、ことを特徴とする物体検出装置である。
【0012】
本発明において、前記励振器と前記励振電極の間にキャパシタを有し、前記除電抵抗は、前記キャパシタに並列に接続されていてもよい。
【0013】
本発明において、前記励振器と前記励振電極の間にキャパシタを有し、前記除電抵抗は、前記励振電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続されていてもよい。特に、前記除電抵抗は、前記励振電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランドとの間に接続されていてもよい。
【0014】
本発明において、前記検出電極と前記検出器の間にキャパシタを有し、前記除電抵抗は、前記検出電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続されていてもよい。特に、前記除電抵抗は、前記検出電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランドとの間に接続されていてもよい。
【0015】
また本発明において、前記除電抵抗の抵抗値は、前記励振器の出力する電気信号の周波数における前記キャパシタのインピーダンスよりも大きくしてもよい。
【0016】
本発明において、前記励振器と前記励振電極の間に接続されたキャパシタと、前記励振器と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続された抵抗と、を有し、前記除電抵抗は、前記励振電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続されていて、前記除電抵抗の抵抗値は、前記抵抗の抵抗値以上であってもよい。この場合、特に、前記除電抵抗は、前記励振電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランドとの間に接続されていてもよい。
【0017】
本発明において、前記検出電極と前記検出器の間に接続されたキャパシタと、前記検出器と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続された抵抗と、を有し、前記除電抵抗は、前記検出電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランド、電源、または前記電源と前記グランドの中間電位との間に接続されていて、前記除電抵抗の抵抗値は、前記抵抗の抵抗値以上であってもよい。この場合、特に、前記除電抵抗は、前記検出電極と前記キャパシタとの間の端子と、グランドとの間に接続されていてもよい。
【0018】
また本発明において、前記抵抗の抵抗値に対する前記除電抵抗の抵抗値の比は、4以上であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の物体検出装置によれば、物体の検出に加えて物体検出装置が搭載された物の除電をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の物体検出器の構成について示した図。
【
図14】自動搬送車100に本発明の物体検出装置を搭載した例を示した図。
【
図15】自動搬送車100に本発明の物体検出装置を搭載した例を示した図。
【
図16】第2実施形態の物体検出装置の構成を示した図。
【
図17】第3実施形態の物体検出装置の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図を参照に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の物体検出装置の構成を示した図である。
図1に示すように、第1実施形態の物体検出装置は、励振器10と、励振電極11と、検出電極12と、検出器13と、第1除電回路14、第2除電回路15を有している。第1実施形態の物体検出装置は、自動車1に搭載されており、自動車1の周囲の人や障害物などの物体を検知するものである。
【0023】
励振器10は、所定周波数の電気信号を出力する装置である。電気信号の周波数は、車両の周囲に電磁場を形成可能な周波数であれば任意の周波数でよく、たとえば1~100MHzである。励振器10は、検出器13および励振電極11に接続されており、励振器10から出力された電気信号の一部は検出器13に入力され、他部は励振電極11に入力される。
【0024】
励振電極11は、励振器10からの電気信号に基づき、励振電極11近傍から検出電極12近傍にかけて電磁場を発生させるものである。励振電極11は、
図2に示すように、自動車1の前バンパー2の外側の面に設けられている。前バンパー2は樹脂製であり絶縁体である。
【0025】
励振電極11の材料は、導電性材料であれば任意の材料でよい。たとえば、Alなどのテープ、ITOなどの透明電極、導電性塗料であってもよい。
【0026】
励振電極11の形状は帯状(長尺な長方形)であり、励振電極11の長手方向が前バンパー2の長手方向と揃うように配置されている。なお、励振電極11の形状は長方形に限るものではなく、電磁場を形成可能であって物体を検知したい領域に応じた任意の形状とすることができる。第1実施形態では、バンパー2の近傍の領域を物体検知領域とするため、励振電極11の形状もバンパー2の長手方向に沿った長方形としている。励振電極11を長方形とする場合には、長手方向の長さを励振器10の出力する電気信号の波長の1/6以下とすることが好ましい。電磁波の放射を抑制し、効率的に非放射の電磁場を形成することができる。
【0027】
検出電極12は、その検出電極12近傍の電磁場を検出して電気信号として出力するものである。検出電極12は、
図2に示すように、自動車1の前バンパー2の外側の面に、励振電極11から離間して設けられている。
【0028】
検出電極12の材料は、励振電極11の材料と同様に導電性材料であれば任意であり、励振電極11の材料と同一としてもよいし異なる材料としてもよい。
【0029】
検出電極12の形状は、励振電極11と同様に帯状であり、検出電極12の長手方向が前バンパー2の長手方向と揃うように配置されている。励振電極11と検出電極12の間隔は、励振電極11によって形成される電磁場の範囲内に検出電極12が位置するのであれば任意の距離でよい。この励振電極11と検出電極12の間隔は、ある程度の大きさの電気抵抗が確保できる間隔であればよく、たとえば100kΩ以上の電気抵抗であることが好ましい。なお、検出電極12の形状は長方形に限るものではなく、電磁場を検出可能であって、物体を検知したい領域に応じた形状であれば任意の形状とすることができる。第1実施形態では、バンパー2の近傍の領域を物体検知領域とするため、検出電極12の形状もバンパー2の長手方向に沿った長方形としている。検出電極12を長方形とする場合には、長手方向の長さを励振器10の出力する電気信号の波長の1/6以下とすることが好ましい。電磁波の放射を抑制し、効率的に非放射の電磁場を形成することができる。
【0030】
励振電極11や検出電極12を複数の導電体で構成し、それら複数の導電体が容量結合、磁界結合などの非接触な電気的結合をするように構成してもよい。これにより、励振電極11や検出電極12の配置自由度を高めることができ、電磁場の形成領域の制御が容易となる。たとえば、
図3に示すように、前バンパー2の内側の面に励振器10と接続する第1励振電極110を設け、外側の面に第2励振電極111と第3励振電極112を設け、第1励振電極110と第2励振電極111、第3励振電極112が容量結合によって電気的に接続された構成としてもよい。
図3(a)は前バンパー2の断面、(b)は前バンパー2の表面側を見た図である。
【0031】
検出器13は、検出電極12および励振器10に接続されている。検出器13は、検出電極12からの電気信号と励振器10からの電気信号を乗算して差周波数信号(以下、検出信号とする)を生成し出力する装置である。ここで、検出電極12は励振電極11によって形成される電磁場を検出するものであり、その電磁場は励振器10からの電気信号によって形成されるものであるから、検出電極12からの電気信号の周波数は励振器10からの電気信号の周波数と同じである。検出電極12からの電気信号と励振器10からの電気信号の差周波数は0であるから、検出信号は直流信号である。
【0032】
なお、第1実施形態の物体検出装置では、励振電極11、検出電極12を自動車1の前バンパーに設けているが、自動車1の絶縁体の部分であれば任意の位置に設けてよい。たとえば、後バンパーに設けることで、自動車の後方の物体を検知できるようにしてもよい。また、励振電極11や検出電極12を透明導電性材料とすることで、リアガラスなどのガラスに励振電極11や検出電極12を設けることもできる。また、リアガラスなどに設けられている熱線自体を励振電極11や検出電極とすることもできる。励振電極11、検出電極12を設ける絶縁体は、抵抗率が1MΩ・m以上であることが好ましい。
【0033】
また、励振電極11と検出電極12の両方を絶縁体に設ける必要はなく、一方のみを絶縁体に設け、他方は導電体に設けてもよい。ただし、両方を絶縁体に設ける方が電磁場の形成領域を所望の範囲に限定することが容易となり、物体の検知精度の向上を図ることができる。
【0034】
第1除電回路14は、前バンパー2に帯電した電荷を、励振電極11を介して除電する回路である。第1除電回路14は、励振器10と励振電極11の間に挿入されている。第1除電回路14は、
図4に示すように、励振器10と励振電極11の間に直列に接続されたキャパシタC1と、キャパシタC1に並列に接続された除電抵抗R1で構成されている。除電抵抗R1は、励振器10の出力する電気信号の周波数fにおけるキャパシタC1のインピーダンスZcよりも大きくすることが好ましい。すなわち、R1>1/(2π・f・C1)となるようにR1を設定することが好ましい。このように設定することで、第1除電回路14を挿入することによる物体検出装置の動作への影響を小さくすることができる。より好ましくはR1≧10/(2π・f・C1)である。キャパシタC1は励振器10から励振電極11への直流成分をカットできるのであれば任意でよく、たとえば100pF~1μFである。
【0035】
第1除電回路14の回路構成は、
図4に替えて
図5~8の構成としてもよい。要するに、励振電極11と電源VDDやグランドとが、除電抵抗を介して直接的または間接的に接続された構成であればよい。
【0036】
図5のように、励振電極11とキャパシタC1の間の端子とグランドとの間に除電抵抗R1を挿入してもよい。
【0037】
また、
図6のように、
図5において除電抵抗R1の一端をグランドに替えて電源VDDに接続してもよい。
【0038】
また、
図7のように、励振電極11とキャパシタC1の間の端子と、電源VDDとグランドの中間電位Vcに、除電抵抗R1を挿入してもよい。中間電位Vcは、グランドと電源VDDの間に直列に挿入された抵抗RB1、RB2による分圧によって設定されている。
図7の場合、実質的な除電抵抗はR1+(RB1//RB2)となる。ここで//は並列抵抗の意味である。そのため、R1は0以上の任意の値に設定することができる。ただし、より安定した動作のためには、
図6や
図7の場合よりも
図5のように除電抵抗R1の一端をグランドに接続する方が好ましい。
【0039】
また、
図8のように、励振電極11とキャパシタC1の間の端子とグランドとの間に除電抵抗R11を挿入し、キャパシタC1と励振器10の間の端子とグランドとの間に抵抗R12を挿入した構成としてもよい。ここで、R11≧R12である。これは、キャパシタC1と抵抗R12によるハイパスフィルタ(HPF)に除電抵抗R11を追加した構成である。除電抵抗R11の追加によるHPFへの影響を軽減するためには、K=R11/R12を4以上とすることが好ましい。Kが4以上であれば、(R11//R12)/R12(=K/(1+K))を0.8以上とすることができ、R11//R12がR12に十分に近づくので、R11追加によるHPFへの影響を十分に低減できる。より好ましくは9以上である。なお、
図8において、除電抵抗R11、抵抗R12の一端をグランドに替えて電源VDDや中間電位Vcに接続してもよい。
【0040】
第2除電回路15は、前バンパー2に帯電した電荷を、検出電極12を介して除電する回路である。第2除電回路15は、検出電極12と検出器13の間に挿入されている。第2除電回路15は、
図9に示すように、検出電極12と検出器13の間に直列に接続されたキャパシタC2と、検出電極12とキャパシタC2の間の端子とグランドとの間に挿入された除電抵抗R2で構成されている。除電抵抗R2は、除電抵抗R1と同様に設定されていることが好ましい。つまり、励振器10の出力する電気信号の周波数fにおけるキャパシタC1のインピーダンスZcよりも大きくすることが好ましい。すなわち、R2>1/(2π・f・C2)となるようにR2を設定することが好ましい。このように設定することで、第2除電回路15を挿入することによる物体検出装置の動作への影響を小さくすることができる。より好ましくはR2≧10/(2π・f・C2)である。キャパシタC2は検出電極12から検出器13への直流成分をカットできるのであれば任意でよく、たとえば100pF~1μFである。
【0041】
第2除電回路15の回路構成は、
図9に替えて
図10~12の構成としてもよい。要するに、検出電極12と電源VDDやグランドとが、除電抵抗を介して直接的または間接的に接続された構成であればよい。
【0042】
図10のように、
図9において除電抵抗R2の一端をグランドに替えて電源VDDに接続してもよい。
【0043】
また、
図11のように、検出電極12とキャパシタC2の間の端子と、電源VDDとグランドの中間電位Vcに、除電抵抗R2を挿入してもよい。中間電位Vcは、
図7と同様に、グランドと電源VDDの間に直列に挿入された抵抗RB1、RB2による分圧によって設定されている。中間電位Vcは、第1除電回路14における値と同一でもよいし変えてもよい。ただし、より安定した動作のためには、
図10や
図11の場合よりも
図9のように除電抵抗R2の一端をグランドに接続する方が好ましい。
【0044】
また、
図12のように、検出電極12とキャパシタC2の間の端子とグランドとの間に除電抵抗R21を挿入し、キャパシタC2と検出器13の間の端子とグランドとの間に抵抗22を挿入した構成としてもよい。ここで、R21≧R22である。これは、
図8と同様の構成であり、キャパシタC2と抵抗R22によるハイパスフィルタ(HPF)に除電抵抗R21を追加した構成である。除電抵抗R21の追加によるHPFへの影響を軽減するためには、K=R21/R22を4以上とすることが好ましい。より好ましくは9以上である。なお、
図12において、除電抵抗R21、抵抗R22の一端をグランドに替えて電源VDDや中間電位Vcに接続してもよい。
【0045】
なお、第1除電回路14と第2除電回路15の両方を設ける必要はなく、一方のみとしてもよい。ただし、効率的に除電するためには両方に設けることが好ましい。また、第1除電回路14のC1や第2除電回路15のC2は、バンドパスフィルタ(BPF)などの他の回路の構成要素を兼ねていてもよい。特に、C1は、励振器10の出力する電気信号に重畳されたDCオフセットを除去するためのコンデンサとすることができる。また、C2は、検出電極12からの電気信号のうち周波数がfの成分を抽出するためのBPFの構成要素とすることができる。
【0046】
次に、第1実施形態の物体検出装置における物体検出の動作について説明する。
【0047】
第1実施形態の物体検出装置では、励振器10から出力された電気信号によって励振電極11から検出電極12にかけてその近傍に電磁場を形成する。電磁場は、自動車1の前方、前バンパー2に沿って一定の距離まで形成される(
図13参照)。検出電極12は、この電磁場を電気信号として検出する。そして、検出器13は、検出電極12からの電気信号と励振器10からの電気信号とを乗算して検出信号を生成し出力する。
【0048】
第1実施形態の物体検出装置では、前バンパー2近傍の電磁場形成領域が物体の検知範囲となる。前バンパー2に人や障害物などの物体が近づき、電磁場の形成領域に物体が侵入すると、電磁場が変動して検出電極12が検出する電気信号の振幅と位相が変化し、検出器13からの検出信号の出力が変化する。したがって、検出信号の出力の変動を計測することによって自動車1前方の物体を検知することができる。また、励振器10からの電気信号を基準としているので振幅が大きく安定しており、検出電極12からの電気信号に対するわずかな位相変化を高感度にとらえることができる。特に、検出電極12からの電気信号に対して、励振器10の出力する周波数と同じ周波数成分をバンドパスフィルなどで抽出し、抽出した信号をsin波状から矩形波状に2値化する処理を、検出器13に入力した直後に適用することで、検出電極12からの位相変化をより高感度に検出することができる。そのため、物体も安定して高感度に検知することができる。また、物体が励振電極11や検出電極12に接触すると検出信号が大きく変動するので、物体の接触も検知することが可能である。また、物体の検知範囲は電磁場が形成されている範囲であり、その範囲は励振電極11、検出電極12の範囲によって容易に設定することができる。そのため、物体の検知範囲を広く取ることができ、死角を低減することができる。
【0049】
次に、第1実施形態の物体検出装置における除電の動作について説明する。
【0050】
自動車1の衝突を回避したい箇所は、自動車1の前後バンパーの四隅やフェンダーの曲面部のように、ボディの凸状となっている部分である。そのような箇所に物体検出装置を搭載することが有効であり、第1実施形態の物体検出装置では前バンパー2に励振電極11、検出電極12を設けてこれに対応している。
【0051】
一方、第1実施形態の物体検出装置が搭載されている自動車1は、その移動による走行風、振動、摺動などによって樹脂部に静電気が発生(正の電荷が帯電)する。上記の衝突を回避したい箇所は、このような静電気の発生しやすい箇所でもある。帯電した電荷は、走行風との斥力を発生させるため、自動車1の走行性能低下を招く。
【0052】
そこで第1実施形態の物体検出装置では、第1除電回路14、第2除電回路15を設けることによって物体の検知機能に加えて除電機能を設け、前バンパー2に帯電した電荷を除去できるようにしている。具体的には、次のようにして除電することができる。
【0053】
図4の第1除電回路14においては、前バンパー2に帯電した電荷を励振電極11に集め、励振電極11から除電抵抗R1を介して励振器10に電荷を吸収させて除電することができる。より詳細には励振器10を駆動する電源VDDや励振器10のグランドに電荷を逃がすことができる。
図5の第1除電回路14においては、励振電極11から除電抵抗R1を介してグランドに電荷を逃がすことができ、
図6の第1除電回路14においては、励振電極11から除電抵抗R1を介して電源VDDに電荷を逃がすことができ、
図7の第1除電回路14においては、励振電極11から除電抵抗R1を介して中間電位Vcに電荷を逃がすことができる。また、
図8の第1除電回路14においては、励振電極11から除電抵抗R12を介してグランドに電荷を逃がすことができる。
【0054】
また、
図9~12の第2除電回路15も同様に、前バンパー2に帯電した電荷を検出電極12に集め、検出電極12から除電抵抗R2、R21を介してグランド、電源VDD、または中間電位Vcに電荷を逃がすことができる。
【0055】
以上、第1実施形態の物体検出装置によれば、物体を広範囲に検知することができる。さらに、励振電極11、検出電極12を搭載している自動車1の樹脂部(前バンパー2)の除電も効率的に行うことができる。したがって、物体検出による障害物との衝突回避だけでなく、除電による走行性能向上も可能となっている。また、自動車1に搭載された各種機器が静電気の影響を受けることを軽減することができる。また、自動車1の利用者が静電放電によりショックを受けることを抑制することができる。
【0056】
(変形例)
第1実施形態では、物体検出装置を自動車1に設けていたが、本発明の物体検出装置は物体を検知しつつ除電も行いたい任意の移動体、静止体に設けることができる。
【0057】
図14は、自動搬送車100に本発明の物体検出装置を搭載した例である。
図14のように、自動搬送車100は、荷物101を載置する平板状の台座部102を有しており、台座部8の下面側には車輪104が設けられ、台座部102の上面端部には自動搬送車100の移動を制御する制御部103を有している。また、自動搬送車100は4つの物体検出装置を搭載しており、台座部102の4つの側面それぞれに、励振電極11と検出電極12が設けられている。台座部102側面の励振電極11、検出電極12によって自動搬送車100の四方(前方、後方、右方、左方)にそれぞれ電磁場を形成することができ、四方に存在する障害物を検知することができ、障害物の大まかな方向(前方、後方、右方、左方のいずれであるか)を検知することができる。
【0058】
なお、障害物の方向を検知する必要がない場合は、
図15のように、台座部102の各側面の励振電極11と検出電極12をそれぞれ連続させて一続きの環状にしてもよい。障害物の方向を検知することはできないが、障害物の存在は検知することができる。
【0059】
このような自動搬送車100では、移動によって台座部102などの樹脂部は静電気を帯び、金属などの良導体に接近、接触すると静電気を放電する。この放電は荷物101が電子機器である場合や自動搬送車100に搭載されている電子機器に損傷を与える可能性がある。そこで第1実施形態の物体検出装置を自動搬送車100に搭載すれば、障害物を検知するとともに静電気を除電することができ、荷物101である電子機器の損傷や自動搬送車100自体の損傷を抑制することができる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態の物体検出装置は、
図16に示すように、検出電極12を検出電極12A~12Dの4つに分割し、それぞれに対応した4つの検出器13A~13Dを設けた構成であり、第2除電回路15は、4つの検出電極12A~12Dとそれぞれに対応した4つの検出器13A~13Dとの間にそれぞれ設けられており、他は第1実施形態と同様である。検出電極12A~Dは、それぞれ長方形状であり、バンパー2の長手方向に所定間隔で配列されている。検出器13A~Dは、検出電極12A~Dにそれぞれ接続されており、励振器10に共通に接続されている。
【0061】
第2実施形態の物体検出装置では、物体から検出電極12A~12Dまでの距離に応じて検出電極12A~12Dが出力する電気信号の位相が変化し、物体に近い検出電極12A~12Dほど検出電極12A~12Dが出力する電気信号の位相変化量が大きくなる。そのため、検出器13A~13Dから出力される検出信号は、対応する検出電極12A~12Dが物体に近いほど出力が大きくなる。たとえば、障害物が検出電極12Dに最も近い場合、検出器13Dからの出力が最も大きくなる。このように、第2実施形態の物体検出装置では、検出電極12A~12Dと検出する物体の位置とが対応しているため、物体の位置を検知することができる。
【0062】
また、第2実施形態の物体検出装置では、第1除電回路14と4つの第2除電回路15によって効率的に除電を行うことができる。
【0063】
なお、第2実施形態では検出電極12と検出器13を4つとした例を示したが、4つに限らず2以上の任意の数でよい。
【0064】
(第3実施形態)
第3実施形態は、
図17に示すように、互いに周波数の異なる4つの励振器10A~10Dを設け、励振器10A~10Dにそれぞれ接続する励振電極11A~11Dを設けた構成であり、第1除電回路14は、4つの励振器10A~10Dとそれぞれに対応する励振電極11A~11Dとの間にそれぞれ設けられており、他は第1実施形態と同様である。励振電極11A~11Dは、それぞれ長方形状であり、バンパー2の長手方向に所定間隔で配列されている。検出器13は、検出電極12と接続され、励振器10A~10Dのうち1つ(10Dとする)と接続されている。
【0065】
第3実施形態の物体検出装置では、励振電極11A~11Dから出力される電磁場の周波数が互いに異なっている。以下、励振電極11A~11Dの周波数をf1~f4とする。そして、励振電極11A~11Dから物体までの距離に応じて検出電極12が出力する電気信号の各周波数成分(f1~f4)が変化し、検出電極12が出力する電位信号において物体に近い励振電極11A~11Dに対応する周波数成分の出力が大きくなる。たとえば、障害物が励振電極11Bに最も近い場合、検出器13からの出力のf1-f4、f2-f4、f3-f4、直流(f4-f4)の4つの成分のうち、周波数f2-f4が最も出力が大きくなる。このように、第2実施形態の物体検出装置では、各周波数成分と検出する物体の位置とが対応しているため、物体の位置を検知することができる。
【0066】
また、第3実施形態の物体検出装置では、4つの第1除電回路14と第2除電回路15によって効率的に除電を行うことができる。
【0067】
なお、第3実施形態では、励振器10と励振電極11を4つとした例を示したが、4つに限らず2以上の任意の数でよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、自動車が障害物を検知しつつ静電気を除電することに利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1:自動車
2:前バンパー
10、10A~10D:励振器
11、11A~11D:励振電極
12、12A~12D:検出電極
13、13A~13D:検出器
14:第1除電回路
15:第2除電回路
100:自動搬送車
C1、C2:キャパシタ
R1、R2、R11、R21:除電抵抗
R12、R22:抵抗