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特開2023-157824積層型電子部品及び積層型電子部品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157824
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】積層型電子部品及び積層型電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146961
(22)【出願日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2022-0046939
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヒェグ スーン
(72)【発明者】
【氏名】パク、フイ スン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ジェオン ウーク
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヒー スン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒョ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誘電体層に含まれる誘電体の粒成長を抑制し、誘電体層の電気的特性を効果的に改善させる積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111と、誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体110と、本体上に配置される外部電極131、132を含む。誘電体層は、BaTiO系母材主成分、Dyを含む副成分及び添加剤を含み、添加剤は、Sm、Gd及びTbのうち1つ以上であり、その含有量はDy100molに対して25mol以上50mol未満である。誘電体層はさらに、複数の誘電体結晶粒を含み、複数の誘電体結晶粒の平均粒径をG、誘電体層の平均厚さをtdとするとき、1.75≦td/G≦2.23を満たす。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体;及び
前記本体上に配置される外部電極;を含み、
前記誘電体層は誘電体組成物を含み、
前記誘電体組成物は、BaTiO系母材主成分、Dyを含む副成分及び添加剤を含み、
前記添加剤は、Sm、Gd及びTbのうち1つ以上であり、前記添加剤の含有量は、前記Dyの100molに対して25mol以上50mol未満であり、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の平均粒径をG、前記誘電体層の平均厚さをtdとするとき、
1.75≦td/G≦2.23を満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の平均粒径は、157nm以上200nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記添加剤はTbであり、前記誘電体層の平均厚さをtd、前記誘電体層の下位1%厚さを有する誘電体層の平均厚さをt2とするとき、
t2/td≧0.69を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記添加剤はTbであり、前記誘電体層の平均厚さをtd、前記誘電体層の最小厚さをt3とするとき、
t3/td≧0.62を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
誘電体組成物を含む誘電体グリーンシート上に導電性金属を含む導電性ペーストを印刷する段階;
前記導電性ペーストを印刷した前記誘電体グリーンシートを積層して積層体を形成する段階;
前記積層体を還元性雰囲気で1100℃~1400℃の焼成温度で焼成する段階;及び
前記焼成された積層体を酸化性雰囲気で前記焼成温度より低い温度で再酸化して誘電体層及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体を形成する段階;及び
前記本体上に配置される外部電極を形成する段階;を含み、
前記誘電体組成物は、BaTiO系母材主成分、Dyを含む副成分、及びSm、Gd及びTbのうち1つ以上を含む添加剤を含み、
前記添加剤の含有量は、前記Dyの100molに対して25mol以上50mol未満である、積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記積層体を酸化性雰囲気で再酸化する温度は、前記焼成温度の92.4%以下である、請求項5に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の平均粒径をG、前記誘電体層の平均厚さをtdとするとき、
1.75≦td/G≦2.23を満たす、請求項5に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の平均粒径は、157nm以上200nm以下である、請求項5に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記添加剤はTbであり、前記誘電体層の平均厚さをtd、前記誘電体層の下位1%厚さを有する誘電体層の平均厚さをt2とするとき、
t2/td≧0.69を満たす、請求項5に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記添加剤はTbであり、前記誘電体層の平均厚さをtd、前記誘電体層の最小厚さをt3とするとき、
t3/td≧0.62を満たす、請求項5に記載の積層型電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品及び積層型電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器などの各種電子機器が小型化、高出力化され、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
また、最近では、自動車用電装部品に対する業界の関心が高まり、積層セラミックキャパシタも自動車やインフォテインメントシステムに用いられるために、高信頼性特性が要求されている。
【0005】
積層セラミックキャパシタなどの積層型電子部品は、大きく誘電体層と内部電極及び外部電極で構成されており、誘電体層は主にチタン酸バリウム(BaTiO)系母材主成分と、電気的特性を改善するために少量の副成分及び添加剤を含んでいる。このような副成分及び添加剤は、母材と相互作用して誘電体層に特定の微細構造及び欠陥化学構造を形成することで、高い誘電定数、低い誘電抵抗の劣化率などの積層型電子部品が備えるべき電気的特性を実現する上で、決定的な役割を果たすことができる。
【0006】
したがって、優れた電気的特性を実現し、信頼性を確保するための誘電体の欠陥化学構造及び微細構造を決定するために、副成分及び添加剤の緻密な調節が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの目的の一つは、誘電体層に含まれる誘電体の粒成長を抑制し、誘電体層の電気的特性を効果的に改善させるためである。
【0008】
本発明のいくつかの目的の一つは、誘電体層が多様な添加剤を含んで粒成長を抑制する場合、誘電体層の粒径散布及び厚さ偏差によって構造的安定性が脆くなるという問題点を改善するためである。
【0009】
本発明のいくつかの目的の一つは、焼成された本体を再酸化する過程で構造的に脆弱な誘電体層が形成されるという問題を解決するためである。
【0010】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、BaTiO系母材主成分、Dyを含む副成分及び添加剤を含み、上記添加剤はSm、Gd及びTbのうち1つ以上であり、上記添加剤の含有量は上記Dy100molに対して25mol以上50mol未満であり、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の平均粒径をG、上記誘電体層の平均厚さをtdとするとき、1.75≦td/G≦2.23を満たすことができる。
【0012】
本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、誘電体組成物を含む誘電体グリーンシート上に導電性金属を含む導電性ペーストを印刷する段階と、上記導電性ペーストを印刷した上記誘電体グリーンシートを積層して積層体を形成する段階と、上記積層体を還元性雰囲気で1100℃~1400℃の焼成温度で焼成する段階と、上記焼成された積層体を酸化性雰囲気で上記焼成温度より低い温度で再酸化して誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体を形成する段階と、上記本体上に配置される外部電極を形成する段階と、を含み、上記誘電体組成物は、BaTiO系母材主成分、Dyを含む副成分及びSm、Gd及びTbのうち1つ以上を含む添加剤を含み、上記添加剤の含有量は、上記Dy100molに対して25mol以上50mol未満であることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の様々な効果の一つは、誘電体層に含まれる両性置換元素の含有量を調節して、緻密かつ均一な粒径を有する誘電体層を形成することで、誘電抵抗(IR)の標準偏差を減少させることである。
【0014】
本発明の様々な効果の一つは、誘電体層に含まれる両性置換元素の含有量を調節し、誘電体層の一層当たりの結晶粒数を調節して構造的安定性を確保することである。
【0015】
本発明の様々な効果の一つは、誘電体層に含まれる両性置換元素の含有量を調節して、再酸化過程で構造的に脆弱な誘電体層が形成される問題を解決するためである。
【0016】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
図2図1のI-I'線に沿った断面図である。
図3図1のII-II'線に沿った断面図である。
図4図1の本体を分解して示した分解斜視図である。
図5a】添加された元素の種類を異ならせて誘電体層の断面を観察した走査電子顕微鏡(SEM)のイメージである。
図5b】添加された元素の種類を異ならせて誘電体層の断面を観察した走査電子顕微鏡(SEM)のイメージである。
図5c】添加された元素の種類を異ならせて誘電体層の断面を観察した走査電子顕微鏡(SEM)のイメージである。
図5d】添加された元素の種類を異ならせて誘電体層の断面を観察した走査電子顕微鏡(SEM)のイメージである。
図6】ペロブスカイト構造のGoldschmidt tolerance factor(t)による誘電抵抗の標準偏差を示したグラフである。
図7】ペロブスカイト構造のGoldschmidt tolerance factor(t)による誘電体の一層当たりの結晶粒数(td/G)を示したグラフである。
図8】酸素分圧による電気伝導度を添加した元素の含有量を異ならせて測定した結果を示したグラフである。
図9】酸素分圧による電気伝導度の傾きを添加した元素の種類を異ならせて測定した結果を示したグラフである。
図10a】熱処理条件に応じたHALT信頼性評価の結果を示したグラフである。
図10b】熱処理条件に応じたHALT信頼性評価の結果を示したグラフである。
図10c】熱処理条件に応じたHALT信頼性評価の結果を示したグラフである。
図11】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の製造方法を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0019】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のために任意で示したため、本発明が必ずしも図示によって限定されるものではない。また、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0020】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0021】
誘電体組成物
本発明の一実施形態に係る誘電体組成物は、BaTiO系母材主成分、Dyを含む副成分及び添加剤を含み、上記添加剤はSm、Gd及びTbのうち1つ以上であり、上記添加剤の含有量は上記Dy100molに対して25mol以上50mol未満であることができる。
【0022】
積層セラミックキャパシタの高容量化及び超薄層化の傾向に伴い、高誘電率を有し、容量形成部内の電気的特性が均一な積層セラミックキャパシタ用組成設計が必須である。
【0023】
このような特性は、添加剤を均一に含有して誘電体層の欠陥化学構造が位置によって変化しないと同時に、誘電体層の粒径散布及び厚さ偏差が少なく、構造的脆弱部が存在しない場合に達成されることができる。
【0024】
一般的に、誘電体層の結晶粒の粒内に対する粒界の電気抵抗が著しく高い特性を有するため、小さくて均一な粒径を有する誘電体層の微細構造が理想的であると考えられる。したがって、本発明では、誘電体層に含まれる添加剤の種類とその含有量を調節し、焼成初期には添加剤の置換反応が比較的遅くて、母材の粒成長を抑制すると同時に、焼成末期にはBaTiO系母材主成分に置換されて欠陥化学構造を形成する。
【0025】
BaTiO系母材主成分は、ペロブスカイト(perovskite)系結晶構造を有し、このようなペロブスカイト構造の安定性は、Goldschmidt structural factor(t)で示すことができる。純粋なBaTiOのペロブスカイト構造のt値は1.06であり、Ti位に置換された元素のサイズが増加するにつれて構造的安定性が低くなって、結果的にt値が減少することが確認できる。特に、Ti位に置換されてGoldschmidt structural factor(t)値が0.9<t<0.92を満たすようにする元素は、Ti位に置換が難しくなるとともに、Ba位への置換が可能となる両性置換特徴を有することが知られている。これらの元素を添加剤として用いると、焼成中の母材の粒成長を抑制して誘電抵抗が大きくて、より緻密な誘電体微細構造が得られると同時に、焼成後には添加剤の欠陥化学的の役割が期待できる。
【0026】
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、BaTiO系母材主成分のTi位に置換される場合、0.9<t<0.92領域を満たすようにするサマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)及びテルビウム(Tb)のうち1つ以上を添加剤として含むことで、誘電体組成物の粒成長を抑制して誘電体層の誘電抵抗の標準偏差を減少させることができる。
【0027】
以下、本発明の一実施形態による誘電体組成物の各成分について詳細に説明する。
【0028】
a)主成分
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、BaTiO系母材主成分を含む。具体的には、BaTiO系母材主成分は、BaTiO、(Ba、Ca)(Ti、Ca)O、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O、Ba(Ti、Zr)O及び(Ba、Ca)(Ti、Sn)Oのうち1つ以上を含むことができる。
【0029】
より具体的な例として、BaTiO、(Ba1-xCa)(Ti1-yCa)O(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.5)、Ba(Ti1-yZr)O(ここで、0<y≦0.5)及び(Ba1-xCa)(Ti1-ySn)O(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)からなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0030】
b)副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物はDyを含む副成分を含むことができる。
【0031】
上記副成分は、希土類元素としてジスプロシウム(Dy)を含むことができるが、これに制限されるものではない。上記希土類元素は、ABO構造のA-siteを置換してドナー(donor)役割を果たすことで、酸素空孔の濃度を減らして信頼性を向上させる。また、希土類元素は結晶粒界で電子の流れを防ぐ障壁として作用し、リーク電流の増加を抑制する役割を果たす。
【0032】
上記副成分は、原子価可変アクセプタ元素及び原子価固定アクセプタ元素のうち1つ以上を含むことができる。原子価可変アクセプタ元素及び原子価固定アクセプタ元素は、主にABO3構造のB-siteを置換してアクセプタ(acceptor)の役割を果たし、電子濃度を減らす役割を果たすことができる。したがって、希土類元素のA-site固溶による誘電体層の半導体化を抑制する役割を果たすことができる。また、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下及び高温耐電圧の特性を向上させる役割を果たすことができる。このとき、上記原子価可変アクセプタはMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち1つ以上を含み、上記原子価固定アクセプタは、Mg及びZrのうち1つ以上を含むことができる。
【0033】
上記副成分は、Baを含む酸化物または炭酸塩を含むことができる。Baを含む酸化物または炭酸塩は、誘電体組成物内で焼結促進、誘電率調節などの役割を果たすことができる。
【0034】
上記副成分は、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、及びSiを含むガラス(Glass)化合物のうち少なくとも1つを含むことができる。Si及びAlの少なくとも1つを含む酸化物及びSiを含むガラス(Glass)化合物は、誘電体組成物が適用された積層型電子部品の焼成温度の低下及び高温耐電圧の特性を向上させる役割を果たす。
【0035】
c)添加剤
本発明の一実施形態によると、誘電体組成物は添加剤を含むことができ、上記添加剤はSm、Gd及びTbのうち1つ以上であり、上記添加剤の含有量は上記Dy100molに対して25mol以上50mol未満であることができる。
【0036】
上記添加剤が誘電体組成物に含まれる場合、上記添加剤元素は、BaTiO系母材のTi位には置換が難しく、Ba位には置換が可能である。これによって、添加剤は誘電体組成物の粒成長を抑制すると同時に欠陥化学構造を形成して、誘電抵抗の標準偏差を減少させることができる。
【0037】
上記添加剤の含有量がDy100molに対して25mol未満である場合、誘電体組成物の粒成長が十分に抑制できず、焼成後の誘電体層の誘電抵抗の標準偏差を減少させることが難しいことがある。
【0038】
上記添加剤の含有量がDy100molに対して50mol以上である場合、後述するように焼成後の誘電体層内の電子の濃度が増加するようになって、誘電抵抗の標準偏差を減少させ難い場合がある。
【0039】
したがって、本発明の一実施形態によると、上記添加剤の含有量を上記Dy100molに対して25mol以上50mol未満に調節することで、誘電体組成物の粒成長を十分に抑制し、誘電体層内の酸素空孔及び電子濃度の増加を抑制して、誘電抵抗の標準偏差を減少させることができる。
【0040】
図8は、酸素分圧による電気伝導度を添加した元素の含有量を異ならせて測定した結果を示したグラフである。
【0041】
具体的に図8は、Gd元素をDy100molに対して25mol添加した場合(○0.25)、50mol添加した場合(△0.5)、75mol添加した場合(□0.75)に分けて酸素分圧による電気伝導度を特定したものである。図8を参照すると、Dyに対してGdの含有量が増加する場合、酸素分圧による電気伝導度の傾きが正(+)から負(-)に変化することが確認できる。特に、Dy元素100molに対してGd元素が50mol以上の場合、酸素分圧による電気伝導度の傾きが負(-)の値を有することが確認できる。
【0042】
図9は、酸素濃度による電気伝導度の傾きの変化を添加した元素の種類を異ならせて測定した結果を示したグラフである。
【0043】
図8及び図9を参照すると、Dy元素に対してGd、Sm元素添加量が増加するにつれて添加剤が焼成後、Ba位を置換して誘電体内の有効電子ドナー(effective donor)濃度を増加させ、副成分として有効電子アクセプタ(effective acceptor)の濃度を徐々に超えて、誘電体の酸素濃度による電気伝導度の変化が電子アクセプタ優性(acceptor dominant)から電子ドナー優性(donor dominant)に変化する様子を示す。具体的には、添加剤の含有量がDy100molに対して25molである場合、誘電体内の有効電子アクセプタ濃度が優性であるため、酸素濃度が増加するにつれて電気伝導度が増加する量の相関関係を有するのに対し、添加剤の含有量がDy100molに対して75mol以上である場合、ドナー濃度が優性であるため、酸素濃度が増加するにつれて電気伝導度が減少する負の相関関係を示す。Dy100molに対して50molの添加剤が含有された場合、有効電子アクセプタ及び電子ドナーの濃度が類似して酸素分圧変化による電気伝導度が不変であるフェルミ準位の固定現象が観察される。
【0044】
一方、積層型電子部品に電圧が持続的に印加される場合、誘電体に含有された酸素空孔及び電子などの電荷キャリヤ(electric charge carrier)が内部電極に隣接した誘電体の両端に移動して、局部的な電気的特性の変化を引き起こす。このような誘電体の電気的特性の変化は、図8及び9の酸素濃度による誘電体の抵抗変化と同一の熱力学的状態であり、該当添加剤の含有量が不足または過度であって誘電体が外部電圧印加に応じて急激な電気的物性変化を示す場合、誘電体微細構造の緻密化による電気的抵抗の改善を期待することは困難である。図8のグラフはDy元素の含有量を調節し、図9のグラフはSmまたはGdの含有量を調節して得た結果であるが、添加剤がTb、Sm、Gdのうち1つ以上である場合も同様に理解できる。
【0045】
したがって、本発明の一実施形態では、Sm、Gd及びTbのうち1つ以上である添加剤の含有量をDy100molに対して50mol未満に調節することで、誘電体の電気的特性偏差を抑制するとともに、外部電界印加による誘電体の誘電抵抗減少現象を緩和することができる。
【0046】
添加剤含有量の下限値は特に制限されず、誘電体粒径に応じて調節されることができる。但し、誘電体の粒成長を十分に抑制するために、添加剤はDy100molに対して25mol以上含まれることが好ましい。
【0047】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、図2は、図1のI-I'線に沿った断面図であり、図3は、図1のII-II'線に沿った断面図であり、図4は、図1の本体を分解して示した分解斜視図である。
【0048】
図1図4を参照すると、本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層は誘電体組成物を含み、上記誘電体組成物は、BaTiO系母材主成分、Dyを含む副成分及び添加剤を含み、上記添加剤はSm、Gd及びTbのうち1つ以上であり、上記添加剤の含有量は、上記Dy100molに対して25mol以上50mol未満であることができる。
【0049】
以下、上述した誘電体組成物で説明した内容と重複する部分は、重複を避けるために省略する。また、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、上述の誘電体組成物を利用する様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用できる。
【0050】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0051】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体状またはこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮によって、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0052】
本体110は、第1方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、第3方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0053】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0054】
誘電体層111は、上述した誘電体組成物を用いて形成することができる。
【0055】
一方、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの上部及び下部に形成されたカバー部112、113を含むことができる。
【0056】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0057】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0058】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一材料を含むことができる。
【0059】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0060】
一方、カバー部112、113の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の平均厚さtcは15μm以下であることができる。また、本発明の一実施形態によると、Sm、Gd及びTbのうち一つ以上である添加剤の含有量をDy100molに対して25mol以上50mol未満に調節することで、信頼性を向上させることができるため、カバー部112、113の平均厚さtcが15μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。
【0061】
カバー部112、113の平均厚さtcは、第1方向サイズを意味することができ、容量形成部Acの上部または下部で等間隔の5つの地点で測定したカバー部112、113の第1方向サイズを平均した値であることができる。
【0062】
また、上記容量形成部Acの側面には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0063】
マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されるマージン部114及び第5面5に配置されるマージン部115を含む。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0064】
マージン部114、115は、図3に示したように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切った断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0065】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0066】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することで形成されたものであることができる。
【0067】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0068】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層される。
【0069】
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0070】
図2を参照すると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。
【0071】
このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置される誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0072】
図3を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成することができる。内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を用いることができる。
【0073】
例えば、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。
【0074】
上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0075】
一方、内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はない。
【0076】
但し、一般的に内部電極を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に内部電極の厚さが0.35μm以下である場合には、信頼性が低下するおそれがあった。
【0077】
さらに、本発明の一実施形態によると、Sm、Gd及びTbのうち1つ以上である添加剤の含有量をDy100molに対して25mol以上50mol未満に調節することで、信頼性を向上させることができるため、内部電極121、122の平均厚さが0.35μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。
【0078】
したがって、内部電極121、122の平均厚さが0.35μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になり、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0079】
内部電極121、122の厚さteは、第1及び第2内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0080】
内部電極121、122の厚さteは、本体110の第3及び第1方向の断面(L-T断面)を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Eletron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。
【0081】
例えば、本体110の第2方向(L方向)の中央部で切断した第3及び第1方向の断面(W-T断面)を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Eletron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された任意の内部電極121、122について、第3方向に等間隔の30つの地点でその厚さを測定して平均値を測定されることができる。
【0082】
上記等間隔の30つの地点は、内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Acで測定することができる。
【0083】
誘電体層111の厚さtdは、上記第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0084】
内部電極の厚さteと同様に、誘電体層111の平均厚さtdも本体110の第3及び第1方向の断面(L-T断面)を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Eletron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。
【0085】
例えば、本体110の第2方向(L方向)の中央部で切断した第3及び第1方向の断面(W-T断面)を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Eletron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された任意の誘電体層111について、第3方向に等間隔の30つの地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0086】
上記等間隔の30つの地点は、内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Acで測定されることができる。
【0087】
誘電体層111は、本発明の一実施形態による誘電体組成物を含むことができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100の誘電体層111は誘電体組成物を含み、上記誘電体組成物は、BaTiO系母材主成分、Dyを含む副成分及び添加剤を含み、上記添加剤はSm、Gd及びTbのうち1つ以上であり、上記添加剤の含有量は上記Dy100molに対して25mol以上50mol未満であることができる。これにより、誘電体層111の電気的特性の偏差を抑制するとともに、外部電界印加による積層型電子部品100の誘電抵抗の減少現象を緩和することができる。
【0088】
一方、誘電体層111に含まれる誘電体組成物の他の主成分及び副成分は、本発明の一実施形態による誘電体組成物と同一であることができるため、これに対する説明は、重複を避けるために省略する。
【0089】
一方、積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要があり、誘電体層及び内部電極の厚さが薄くなるほど信頼性が低下し、絶縁抵抗、破壊電圧などの特性が低下する可能性がある。
【0090】
したがって、誘電体層及び内部電極の厚さが薄くなるほど、本発明による信頼性の向上効果が増加されることができる。
【0091】
特に、本発明の一実施形態によると、誘電体組成物に含まれたDy元素の含有量と、Sm、Gd、Tbのうち1つ以上を含む添加剤含有量との間の相関関係を制御することで、絶縁抵抗を向上させ、絶縁抵抗の標準偏差を減少させることができるため、内部電極121、122の厚さteまたは誘電体層111の厚さtdが0.41μm以下である場合に、本発明による絶縁抵抗及び結晶粒サイズ当たりの誘電率の向上効果が顕著になることがある。
【0092】
図6は、Goldschmidt tolerance factor(t)による誘電抵抗の標準偏差を示したグラフであり、図7は、Goldschmidt tolerance factor(t)による誘電体の一層当たりの結晶粒数(td/G)を示したグラフである。
【0093】
図7を参照すると、誘電体組成物は、焼成後に複数の誘電体結晶粒を含む誘電体層を形成することができ、ペロブスカイト構造のGoldschmidt structural factor(t)の値を小さくするほど誘電体母材のTi位への置換が難しいため、誘電体層の一層当たりの粒径数も増加する傾向にある。
【0094】
したがって、誘電体組成物がTb、Gd、及びSmのうち1つ以上を含む場合、同一酸化数を有する他の元素に比べてペロブスカイト構造のGoldschmidt structural factor(t)値を小さくして、緻密な粒径を有する誘電体層を形成することができる。
【0095】
図7を参照すると、誘電体組成物が添加剤としてSmを含む場合(x)、誘電体層の一層当たりの結晶粒数(td/G)は2.23、誘電体組成物が添加剤としてGdを含む場合(□)、誘電体の一層当たりの結晶粒数(td/G)は2.03、誘電体組成物が添加剤としてTbを含む場合(△)、誘電体の一層当たりの結晶粒数(td/G)は1.75に相当する。一方、添加剤を含まない場合(〇)、誘電体の一層当たりの結晶粒数(td/G)は1.61に相当する。このとき、図6を参照すると、誘電体の一層当たりの結晶粒数(td/G)が1.75未満である場合(〇)、初期HALT信頼性の評価の誘電抵抗の標準偏差が大きいことが確認できる。したがって、一実施形態によると、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の平均粒径をG、上記誘電体層の平均厚さをtdとするとき、1.75≦td/Gを満たすことが好ましい。
【0096】
td/G値の上限は特に限定されない。但し、td/Gが2.23を超えるように調節するために、Goldschmidt structural factor(t)値を0.9以下に調節する添加剤を添加する場合、両性置換特徴を有することが難しい場合があり、母材の粒成長の抑制による誘電抵抗値を向上させることは困難であることができる。したがって、td/G≦2.23を満たすことが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100のG及びtdは、1.75≦td/G≦2.23を満たすことができる。
【0097】
図5a、5b、5c、5dは、添加された元素の種類を異ならせて誘電体層の断面を観察した走査電子顕微鏡(SEM)のイメージである。
【0098】
図5a~5dを参照すると、添加された元素の種類によって複数の誘電体結晶粒の粒径が異なることが確認できる。
【0099】
図5aは、添加剤を含まない場合(平均粒径217nm)、図5bは、添加剤としてTbを含む場合(平均粒径200nm)、図5cは、添加剤としてGdを含む場合(平均粒径172nm)、図5dは、添加剤としてSmを含む場合(平均粒径157nm)に相当する。
【0100】
ペロブスカイト構造のGoldschmidt structural factor(t)値が小さいほど、複数の誘電体結晶粒の平均粒径が小さくなるため、誘電抵抗の標準偏差を効果的に減少させることができる。
【0101】
一実施形態において、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の平均粒径は200nm以下であることができる。これにより、誘電体結晶粒を微粒化して誘電抵抗の標準偏差を効果的に減少させることができる。
【0102】
複数の誘電体結晶粒の平均粒径の下限は特に限定されない。但し、両性置換特徴を有する添加剤元素のうち、ペロブスカイト構造のGoldschmidt structural factor(t)を最も小さくする元素は、サマリウム(Sm)であるため、複数の誘電体結晶粒の平均粒径は157nm以上であることが好ましい。
【0103】
複数の誘電体結晶粒の平均粒径は、容量形成部の幅-厚さ方向の断面(W-T断面)の10ヶ所で測定した粒径の算術平均であることができる。上記10ヶ所の位置は、積層型電子部品のT軸に垂直でありながら中心を通る切断面に対してW軸方向に等間隔の10ヶ所で測定した値の算術平均であることができる。上記複数の誘電体結晶粒の粒径は、走査電子顕微鏡(SEM、Jeol社のJSM-7400F)を用いて切断面を撮影した後、イメージ分析プログラム(Mediacybernetics社のイメージプロプラスver4.5)を用いて計算したW軸方向の長さを意味することができる。
【0104】
図10a、10b、及び10cは、熱処理条件に応じたHALT信頼性評価の結果を示したグラフである。
【0105】
後述する焼成された積層体を酸化性雰囲気で焼成温度よりも低い温度で再酸化して誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体を形成する段階(S4)を経る場合、再酸化温度によって誘電体層の厚さ分布が決定されることができ、これによって、HALT信頼性に差が発生する可能性がある。
【0106】
図10aは、焼成温度の92.4%の温度で再酸化して本体を製造した積層型電子部品のHALT信頼性評価であり、図10bは、焼成温度の94.1%の温度で再酸化して本体を製造した積層型電子部品のHALT信頼性評価であり、図10cは、焼成温度の95.8%の温度で再酸化して本体を製造した積層型電子部品のHALT信頼性評価に相当する。
【0107】
図10a、10b、10cを参照すると、再酸化温度が焼成温度の92.4%以下である図10aの場合、HALT信頼性評価において、failが11%に過ぎない一方、再酸化温度が焼成温度の92.4%を超える図10b及び図10cの場合、HALT信頼性評価において、failが38%以上であることを確認することができる。
【0108】
一方、焼成温度の92.4%の温度で再酸化して本体を製造した場合、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記誘電体層の下位1%厚さを有する誘電体層の平均厚さをt2とするとき、t2/td≧0.69を満たすことができ、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記誘電体層の最小厚さをt3とするとき、t3/td≧0.62を満たすことができる。これにより、構造的に脆弱な誘電体層が形成されることを最小限に抑えて、HALT信頼性を向上させることができる。
【0109】
一実施形態において、上記添加剤はテルビウム(Tb)であり、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記誘電体層の下部1%厚さを有する誘電体層の平均厚さをt2とするとき、t2/td≧0.69を満たすことができる。一実施形態において、上記添加剤はテルビウム(Tb)であり、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記誘電体層の最小厚さをt3とするとき、t3/td≧0.62を満たすことができる。
【0110】
これにより、高い再酸化温度によって構造的に脆弱な誘電体層が形成されることを最小限に抑えて、積層型電子部品のHALT信頼性を向上させることができる。
【0111】
一方、上記誘電体層の平均厚さtd、誘電体層の下位1%厚さを有する誘電体層の平均厚さt2、及び誘電体層の最小厚さt3は、上記複数の誘電体結晶粒の平均粒径を測定する方法と同様の方法で測定することができる。
【0112】
また、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtpは20μm以下であることができる。
【0113】
外部電極131、132は本体110に配置され、内部電極121、122と連結される。
【0114】
図2に示したように、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0115】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0116】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を用いても形成することができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0117】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0118】
電極層131a、132aに対するより具体的な例として、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0119】
なお、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0120】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を用いることができ、特に限定しない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0121】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0122】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0123】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして、積層数を増加させる必要があるため、0603(長さ×幅、0.6mm×0.3mm)以下のサイズを有する積層型電子部品において本発明による信頼性及び絶縁抵抗向上の効果がより顕著になることができる。
【0124】
したがって、本体の第3及び第4面間の距離をL、上記第5及び第6面間の距離をWと定義するとき、上記Lは0.6mm以下であり、上記Wは0.3mm以下であることができる。すなわち、0603(長さ×幅、0.6mm×0.3mm)サイズ以下の積層型電子部品であることができる。
【0125】
積層型電子部品の製造方法
図11は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の製造方法を示した模式図である。
【0126】
以下では、図11を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の製造方法について詳細に説明するが、誘電体組成物及び積層型電子部品と重複する説明は省略する。
【0127】
本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、誘電体組成物を含む誘電体グリーンシート上に導電性金属を含む導電性ペーストを印刷する段階(S1)と、上記導電性ペーストを印刷した上記誘電体グリーンシートを積層して積層体を形成する段階(S2)と、上記積層体を還元性雰囲気で1100℃~1400℃の焼成温度で焼成する段階(S3)と、上記焼成された積層体を酸化性雰囲気で上記焼成温度より低い温度で再酸化して誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体を形成する段階(S4)と、上記本体上に配置される外部電極を形成する段階(S5)と、を含み、上記誘電体組成物は、BaTiO系母材主成分、Dyを含む副成分及びSm、Gd及びTbのうち1つ以上を含む添加剤を含み、上記添加剤の含有量は、上記Dy100molに対して25mol以上50mol未満であることができる。
【0128】
本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、誘電体組成物を含む誘電体グリーンシート上に導電性金属を含む導電性ペーストを印刷する段階(S1)を含むことができる。
【0129】
本発明の一実施形態によると、誘電体組成物を含む誘電体グリーンシートが設けられる。上記誘電体グリーンシートは、セラミック粉末、バインダ、溶剤などを混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法で数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することができる。上記セラミックグリーンシートは、この後に焼結されて図2に示したように、一誘電体層111を形成することができる。
【0130】
誘電体グリーンシートに含まれる誘電体組成物は、上述した本願発明の誘電体組成物と同一成分を有することができる。
【0131】
次に、上記誘電体グリーンシート上に導電性金属を含む導電性ペーストを塗布して内部電極パターンを形成することができる。内部電極パターンを形成する方法は特に制限されないが、スクリーン印刷法やグラビア印刷法によって形成されることができる。
【0132】
この後、上記導電性ペーストを印刷した上記誘電体グリーンシートを積層して、積層体を形成する段階(S2)を含むことができる。
【0133】
上記内部電極パターンが印刷されたグリーンシートを積層し、積層方向から加圧して圧着させることができる。これにより、内部電極パターンが形成された積層体を形成することができる。
【0134】
次に、上記積層体を還元性雰囲気で1100℃~1400℃の焼成温度に焼成する段階(S3)を含むことができる。
【0135】
上記積層体を1つの積層型電子部品に対応する領域ごとに切断することができる。このとき、内部電極パターンの一端が側面を介して交互に露出するように切断することができる。この後、チップ化した積層体を焼成することができる。上記焼成工程は、還元性雰囲気で行うことができ、好ましい焼成温度は1100℃~1400℃であることができる。また、焼成工程は、昇温速度を調節して行うことができる。
【0136】
次に、上記焼成された積層体を酸化性雰囲気で上記焼成温度より低い温度で再酸化して誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体を形成する段階(S4)を含むことができる。
【0137】
内部電極がNiを含む場合、焼成工程は、Niが酸化することを防ぐために還元雰囲気で行われる。したがって、誘電体層に酸素欠陥が多数発生することがある。
【0138】
このような酸素欠陥は、誘電体層を半導体化することができ、信頼性を低下させる可能性がある。したがって、多数形成された酸素欠陥を補償するために、酸化性雰囲気で焼成された積層体を再酸化する段階(S4)を行うことができる。
【0139】
このとき、焼成温度より低い温度で再酸化段階を行うことができる。これにより、誘電体層及び内部電極の追加焼成現象を抑制して、構造的に脆弱な誘電体層が形成される現象を防止し、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0140】
本発明の一実施形態による積層型電子部品で説明したように、積層体を酸化性雰囲気で再酸化する温度は、上記焼成温度の92.4%以下であることが好ましい場合がある。上記再酸化する温度が上記焼成温度の92.4%を超える場合、誘電体層及び内部電極の過度の追加焼成によってHALT信頼性が悪くなるおそれがある。
【0141】
一方、積層体を酸化性雰囲気で再酸化する温度の下限は特に制限されない。但し、焼成工程後に誘電体層に多数形成された酸素欠陥を十分に補償するために、焼成温度の76%以上であることが好ましい。
【0142】
一実施形態によると、上記焼成された積層体を酸化性雰囲気で上記焼成温度より低い温度で再酸化して誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体を形成する段階(S4)、上記焼成温度の92.4%以下の温度で行うことで構造的に脆弱な誘電体層の形成を抑制し、HALT信頼性を向上させることができる。
【0143】
次に、上記本体上に配置される外部電極を形成する段階(S5)を含むことができる。このとき、本体の側面を覆いながら、本体の側面に露出した内部電極と電気的に連結されるように外部電極を形成することができる。外部電極は単一層または複数の層からなることができ、形成方法及び成分は上述したとおりである。
【0144】
(実施例)
下記表1は、誘電体組成物に含まれる添加剤の種類に応じて焼成後(焼成温度1190℃)の誘電体層の微細構造を測定し、初期HALT信頼性評価の絶縁抵抗の散布を評価したものである。
【0145】
下記表1の試験番号1~4で評価した積層型電子部品は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の製造方法によって、焼成温度の92.4%以下の温度で再酸化(熱処理条件:LT)して形成された。
【0146】
複数の誘電体結晶粒の平均粒径Gは、上述したように容量形成部の第1方向-第3方向の断面(W-T断面)を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した後、イメージ分析プログラム(Mediacybernetics社のイメージプロプラスver4.5)を用いて10ヶ所で測定した結晶粒の第3方向サイズを測定して算術平均値を取り、上記10ヶ所の位置は積層型電子部品のT軸に垂直でありながら中心を通る切断面についてW軸方向に等間隔の10ヶ所で測定した。
【0147】
誘電体層の平均厚さtdは、上述したように本体110の第2方向(L方向)の中央部で切断した第3及び第1方向の断面(W-T断面)を走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンしたイメージから抽出された任意の誘電体層111について、第3方向に等間隔の30つの地点でその厚さを測定して平均値を測定した。
【0148】
初期HALT信頼性評価の絶縁抵抗の散布は、115℃の高温環境で7.56Vの電圧を72.0hrの間印加し、初期(0hr~10hr)区間で絶縁抵抗の標準偏差/平均(CV)値が0.3以下である場合を優秀、0.6以下である場合を良好、0.6を超過する場合を不十分と評価した。
【0149】
【表1】
【0150】
試験番号1の場合、副成分としてDyを含む場合に該当し、添加剤元素を添加しない場合に該当する。
【0151】
試験番号2~4の場合、副成分がDyを含む場合に該当し、添加剤元素をDy100molに対して25mol添加した場合である。
【0152】
表1によると、ペロブスカイト構造のGoldschmidt structural factor(t)値を小さくするSm元素(試験番号4)に行くほど誘電体層の平均粒径が小さくなることが確認でき、誘電体層の一層当たりの粒径数(td/G)が増加することを確認することができる。
【0153】
試験番号1は、誘電体組成物が副成分としてDyを含むこと以外に添加剤が添加されていない場合であり、焼結後の誘電体層の複数の誘電体結晶粒の平均粒径が200nmを超え、誘電体層の一層当たりの結晶粒数(td/G)が1.75未満である場合として、初期HALT信頼性評価の絶縁抵抗の散布が不十分であることが確認できる。
【0154】
試験番号2は、誘電体組成物が副成分としてDyを含み、添加剤としてDy100molに対して25molのTbを含む場合であり、試験番号3は、副成分としてDyを含み、添加剤としてDy100molに対して25molのGdを含む場合であり、試験番号4は副成分としてDyを含み、添加剤としてDy100molに対して25molのSmを含む場合に該当する。
【0155】
試験番号2~4の場合、焼結後誘電体層の複数の誘電体結晶粒の平均粒径Gが157nm以上200nm以下であるか、誘電体層の一層当たりの粒径数(td/G)が1.75以上2.23以下の場合であって、初期HALT信頼性評価の絶縁抵抗の散布が良好または優秀であることが確認できる。
【0156】
したがって、一実施形態による積層型電子部品の上記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の平均粒径は、157nm以上200nm以下に調節することで、誘電体層の結晶粒を微粒化して信頼性を向上させ、絶縁抵抗の散布を改善することができる。
【0157】
また、一実施形態に係る積層型電子部品の上記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の平均粒径をG、上記誘電体層の平均厚さをtdとするとき、1.75≦td/G≦2.23を満たすことで、誘電体層の結晶粒を微粒化して信頼性を向上させ、絶縁抵抗の散布を改善することができる。
【0158】
下記表2は、Tbを添加剤として含む場合、焼成された積層体を酸化性雰囲気で上記焼成温度より低い温度で再酸化して誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体を形成する段階(S4)の再酸化熱処理条件を異ならせて積層型電子部品を製造した後、誘電体層の微細構造を測定し、HALT信頼性を評価したものである。
【0159】
再酸化熱処理条件は、焼成温度の92.4%のLT、焼成温度の94.1%のIT、焼成温度の95.8%のHTに分けられた。
【0160】
下記表2のHALT信頼性評価は、400個の積層型電子部品のサンプルに対して、115℃の高温環境で7.56Vの電圧を72.0hrの間印加して行われ、絶縁破壊(Fail)が起きた積層型電子部品の個数の割合(HALT Fail%)を測定した。
【0161】
【表2】
【0162】
試験番号1の場合、熱処理条件がLTの場合であり、焼成後の微細構造において、t2/tdは0.69であり、t3/tdは0.62に相当し、HALT Fail%が11%であることが確認できる。したがって、高い再酸化温度によって構造的に脆弱な誘電体が形成されることを抑制し、HALT信頼性を向上させることができることを確認することができる。
【0163】
試験番号2の場合、熱処理条件がITである場合であり、焼成後の微細構造において、t2/tdは0.68であり、t3/tdは0.60に相当し、HALT Fail%が38%であることが確認できる。また、試験番号3の場合、熱処理条件がHTである場合であり、焼成後の微細構造において、t2/tdは0.61であり、t3/tdは0.55に相当し、HALT Fail%が100%であることが確認できる。すなわち、試験番号2及び3の場合、再酸化温度が高いため、誘電体及び内部電極に過度の焼成を引き起こして、構造的に脆弱な誘電体層が形成される。これによって、HALT Fail%が増加することが確認できる。
【0164】
したがって、一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、積層体を酸化性雰囲気で再酸化する温度は、焼成温度の92.4%以下に調節することで、構造的に脆弱な誘電体層が形成されることを抑制してHALT信頼性を向上させることができる。
【0165】
また、一実施形態に係る積層型電子部品は、上記誘電体層の平均厚さをtd、上記誘電体層の下位1%厚さを有する誘電体層の平均厚さをt2、上記誘電体層の最小厚さをt3とするとき、t2/td≧0.69及びt3/td≧0.62を満たすことで、構造的に脆弱な誘電体層の比重を最小化してHALT信頼性を向上させることができる。
【0166】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0167】
また、本開示で用いられた「一実施形態」という表現は、互いに同一実施形態を意味するものではなく、それぞれ異なる固有の特徴を強調しながら説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0168】
本開示で用いられた用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本開示を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0169】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極
131a、132a 電極層
131b、132b めっき層
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図11