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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157844
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20231019BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20231019BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F01M13/00 E
F01M13/00 L
F02M35/10 301T
F02D45/00 368Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】38
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022753
(22)【出願日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2022066696
(32)【優先日】2022-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
【テーマコード(参考)】
3G015
3G384
【Fターム(参考)】
3G015BD10
3G015BD28
3G015BE02
3G015BF04
3G015BF08
3G015BG01
3G015EA06
3G015FB02
3G015FB06
3G015FE01
3G384BA38
3G384DA42
(57)【要約】
【課題】ブローバイガス(BG)蓄積部へ新気である高温空気を導入するためにBG蓄積部に流入する新気だけを効果的に加熱することでBG蓄積部を効率良く昇温させ、BG蓄積部での凝縮水の発生を効果的に抑制すること。
【解決手段】エンジンシステムは、エンジン1に吸気を導入する吸気通路15と、エンジンから排気を導出する排気通路23と、吸気通路の吸気量を調節する電子スロットル装置18と、エンジンで発生するBGを蓄積するBG蓄積部14,4と、BG蓄積部から吸気通路へBGを流すBG通路32と、BG通路を流れるBG流量を調節するPCV弁33と、BG蓄積部を換気するためにBG蓄積部へ新気を導入する新気導入通路47と、新気を加熱する加熱手段35とを備える。加熱手段からBG蓄積部まで高温空気が流れる高温空気経路部37を備え、高温空気経路部を短縮するために、加熱手段がBG蓄積部の近傍に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに吸気を導入するための吸気通路と、
前記エンジンから排気を導出するための排気通路と、
前記吸気通路を流れる吸気量を調節するための吸気量調節弁と、
前記エンジンで発生するブローバイガスを蓄積するためのブローバイガス蓄積部と、
前記ブローバイガス蓄積部から前記吸気通路へ前記ブローバイガスを流すためのブローバイガス通路と、
前記ブローバイガス通路を流れるブローバイガス流量を調節するためのブローバイガス調節弁と、
前記ブローバイガス蓄積部を換気するために前記ブローバイガス蓄積部へ新気を導入するための新気導入通路と、
前記新気を加熱するための加熱手段と
を備えたエンジンシステムにおいて、
前記加熱手段から前記ブローバイガス蓄積部まで高温空気が流れる高温空気経路部を備え、
前記高温空気経路部を短縮するために、前記加熱手段が前記ブローバイガス蓄積部の近傍に配置される
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンシステムにおいて、
前記加熱手段は、前記新気導入通路の途中に設けられ、
前記新気導入通路は、前記加熱手段より下流に前記高温空気経路部を含み、
前記加熱手段により加熱される前記新気を前記高温空気として前記高温空気経路部を介して前記ブローバイガス蓄積部へ導入するように構成される
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンシステムにおいて、
前記排気通路は、前記エンジンの近傍に位置するエンジン近傍部位を含み、
前記加熱手段は、前記エンジン近傍部位により構成され、前記エンジン近傍部位にて前記排気の熱により加熱される前記新気が前記高温空気として前記高温空気経路部へ流れるように構成される
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジンシステムにおいて、
前記加熱手段は、前記エンジン近傍部位の周囲を囲むシュラウドを更に含み、
前記エンジン近傍部位にて前記排気の熱により加熱される前記新気が前記高温空気として前記シュラウドにより回収され、前記高温空気経路部へ流れるように構成される
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のエンジンシステムにおいて、
前記加熱手段は、前記エンジン近傍部位にて前記排気から受熱する熱交換器を更に含み、
前記熱交換器により加熱される前記新気が前記高温空気として前記高温空気経路部へ流れるように構成される
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項6】
請求項2に記載のエンジンシステムにおいて、
前記加熱手段は、前記新気を電気的に加熱する電気ヒータを含み、
前記電気ヒータにより加熱される前記新気が前記高温空気として前記高温空気経路部へ流れるように構成される
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項7】
請求項2に記載のエンジンシステムにおいて、
前記エンジンは、ヘッドカバーとクランクケースとを含み、前記ヘッドカバーの内部と前記クランクケースの内部とが連通路により連通し、
前記ブローバイガス蓄積部は、前記ヘッドカバーと前記クランクケースにより構成され、
前記高温空気経路部は、前記ヘッドカバー又は前記クランクケースに接続される
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のエンジンシステムにおいて、
前記ブローバイガス蓄積部又は前記ブローバイガス通路には、前記ブローバイガスに含まれるオイルを除去するためのオイル除去手段が設けられる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のエンジンシステムにおいて、
前記ブローバイガス通路には、前記ブローバイガスを前記吸気通路へ圧送するためのポンプが設けられる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項10】
請求項2に記載のエンジンシステムにおいて、
前記高温空気経路部には、前記ブローバイガス蓄積部への前記高温空気の流れを許容すると共に、前記ブローバイガス蓄積部からの前記ブローバイガスの逆流を阻止するための逆止弁が設けられる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項11】
請求項3又は4に記載のエンジンシステムにおいて、
前記吸気量調節弁より下流の前記吸気通路には、吸気圧力を検出するための吸気圧力検出手段が設けられ、
検出される前記吸気圧力と前記ブローバイガス調節弁の開度とに基づいて前記ブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気量を算出し、計測される前記吸気量と算出される前記高温空気量との和により最終的に前記エンジンに導入される最終吸気量を算出するための第1の算出手段が設けられる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項12】
請求項5に記載のエンジンシステムにおいて、
前記吸気通路は、外気を取り込むための吸気入口を含み、
前記吸気入口の近傍には、前記吸気入口に取り込まれる外気量を前記エンジンに導入される吸気量として計測するための吸気量計測手段が設けられ、
前記吸気量調節弁より下流の前記吸気通路には、吸気圧力を検出するための吸気圧力検出手段が設けられ、
検出される前記吸気圧力と前記ブローバイガス調節弁の開度とに基づいて前記ブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気量を算出し、計測される前記吸気量と算出される前記高温空気量との和により最終的に前記エンジンに導入される最終吸気量を算出するための第1の算出手段が設けられる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項13】
請求項3又は4に記載のエンジンシステムにおいて、
前記吸気通路は、外気を取り込むための吸気入口を含み、
前記吸気入口の近傍には、前記吸気入口に取り込まれる外気量を前記エンジンに導入される吸気量として計測するための吸気量計測手段が設けられ、
前記高温空気経路部には、前記ブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気量を計測するための高温空気量計測手段が設けられ、
計測される前記吸気量と計測される前記高温空気量との和により最終的に前記エンジンに導入される最終吸気量を算出するための第2の算出手段が設けられる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項14】
請求項5に記載のエンジンシステムにおいて、
前記吸気通路は、外気を取り込むための吸気入口を含み、
前記吸気入口の近傍には、前記吸気入口に取り込まれる外気量を前記エンジンに導入される吸気量として計測するための吸気量計測手段が設けられ、
前記高温空気経路部には、前記ブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気量を計測するための高温空気量計測手段が設けられ、
計測される前記吸気量と計測される前記高温空気量との和により最終的に前記エンジンに導入される最終吸気量を算出するための第2の算出手段が設けられる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項15】
請求項11に記載のエンジンシステムにおいて、
前記エンジンの暖機状態を検出するための暖機状態検出手段を更に備え、
前記第1の算出手段は、検出される前記暖機状態に基づいて前記高温空気の密度を算出し、算出される前記高温空気量を算出される前記密度に基づいて補正し、計測される前記吸気量と補正される前記高温空気量との和により最終的に前記エンジンに導入される最終吸気量を算出する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項16】
請求項12に記載のエンジンシステムにおいて、
前記エンジンの暖機状態を検出するための暖機状態検出手段を更に備え、
前記第1の算出手段は、検出される前記暖機状態に基づいて前記高温空気の密度を算出し、算出される前記高温空気量を算出される前記密度に基づいて補正し、計測される前記吸気量と補正される前記高温空気量との和により最終的に前記エンジンに導入される最終吸気量を算出する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項17】
請求項2に記載のエンジンシステムにおいて、
前記高温空気経路部には、前記高温空気を冷却するために前記高温空気経路部に前記新気を取り込むための新気取り込み孔が設けられる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のエンジンシステムにおいて、
前記新気取り込み孔には、前記高温空気が所定温度以上となるときに開弁し、前記所定温度未満となるときに閉弁する温度感応式の開閉弁が設けられる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項19】
請求項1又は2に記載のエンジンシステムにおいて、
前記吸気通路は、外気を取り込むための吸気入口を含み、
前記吸気入口の近傍には、前記吸気入口に取り込まれる外気量を前記エンジンに導入される吸気量として計測するための吸気量計測手段が設けられ、
前記新気導入通路は、前記吸気量計測手段を通過した外気を前記新気として前記加熱手段へ導くように前記吸気通路に接続される
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項20】
請求項1又は2に記載のエンジンシステムにおいて、
少なくとも前記ブローバイガス調節弁の開度と前記吸気量調節弁の開度を制御するための制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記吸気量調節弁の開閉制御に合わせて前記ブローバイガス調節弁を開閉制御すると共に、前記吸気量調節弁の開度を増加させるときは、前記ブローバイガス調節弁の開度を前記吸気量調節弁の開度よりも先に増加させ、前記吸気量調節弁の開度を減少させるときは、前記吸気量調節弁の開度を前記ブローバイガス調節弁の開度よりも先に減少させる
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項21】
請求項1又は2に記載のエンジンシステムにおいて、
少なくとも前記ブローバイガス調節弁の開度と前記吸気量調節弁の開度を制御するための制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記吸気量調節弁の開閉制御に合わせて前記ブローバイガス調節弁を開閉制御すると共に、前記吸気量調節弁の開度を増加させるときは、前記ブローバイガス調節弁の開度を増加させると共に、前記ブローバイガス調節弁の開弁率を前記吸気量調節弁の開弁率よりも高くする
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項22】
請求項20に記載のエンジンシステムにおいて、
前記エンジンの暖機状態を検出するための暖機状態検出手段を更に備え、
前記制御手段は、検出される前記暖機状態が完全暖機となる場合は、未暖機となる場合よりも前記ブローバイガス調節弁の開度を減少させるように補正する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項23】
請求項21に記載のエンジンシステムにおいて、
前記エンジンの暖機状態を検出するための暖機状態検出手段を更に備え、
前記制御手段は、検出される前記暖機状態が完全暖機となる場合は、未暖機となる場合よりも前記ブローバイガス調節弁の開度を減少させるように補正する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項24】
請求項1乃至4のいずれかに記載のエンジンシステムにおいて、
前記吸気通路に外気を取り込むための吸気入口と、
前記吸気入口に取り込まれる外気量を前記エンジンに導入される吸気量として計測するために前記吸気通路に設けられる吸気量計測手段と、
前記新気導入通路における前記新気の流れを遮断するための第1遮断弁と、
前記吸気量調節弁より上流の前記吸気通路から前記ブローバイガス蓄積部へ新気を導入するための第2新気導入通路と、
前記第2新気導入通路と前記吸気通路との接続部は、前記吸気量計測手段より下流の前記吸気通路に設けられることと
を備えたことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項25】
請求項24に記載のエンジンシステムにおいて、
前記第2新気導入通路における前記新気の流れを遮断するための第2遮断弁を更に備えたことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項26】
請求項25に記載のエンジンシステムにおいて、
前記ブローバイガス蓄積部の中の圧力を蓄積部内圧として検出するための蓄積部内圧検出手段と、
前記第1遮断弁及び前記第2遮断弁を制御すると共に、検出される前記蓄積部内圧に基づき前記第1遮断弁の故障を診断するためたの第2制御手段と
を更に備え、
前記第2制御手段は、前記第1遮断弁を開弁制御し前記第2遮断弁を閉弁制御しているときに、(1)検出される前記蓄積部内圧が第1所定値より低い高負圧となる場合、又は(2)前記第1遮断弁を開弁から閉弁へ切り替えた前後での前記蓄積部内圧の降下量が第2所定値より小さくなる場合に、前記第1遮断弁を故障と判定する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項27】
請求項25に記載のエンジンシステムにおいて、
前記エンジンの空燃比を算出するための関係要素を検出する空燃比関係要素検出手段と、
前記第1遮断弁、前記第2遮断弁及び前記ブローバイガス調節弁を制御すると共に、検出される前記関係要素に基づいて算出した前記空燃比に基づいて前記第1遮断弁の故障を診断するための第3制御手段と
を更に備え、
前記第3制御手段は、前記第1遮断弁を開弁制御し前記第2遮断弁を閉弁制御しているときに、(1)前記第1遮断弁を開弁から閉弁へ切り替えた前後で算出される前記空燃比の変化、又は(2)前記第1遮断弁を閉弁した後の前記空燃比に基づいて前記第1遮断弁の故障を判定する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項28】
請求項25に記載のエンジンシステムにおいて、
前記ブローバイガス蓄積部の中の圧力を蓄積部内圧として検出するための蓄積部内圧検出手段と、
前記第1遮断弁、前記第2遮断弁及び前記ブローバイガス調節弁を制御すると共に、検出される前記蓄積部内圧に基づき前記ブローバイガス調節弁の故障を診断するための第4制御手段と
を更に備え、
前記第4制御手段は、前記第1遮断弁を開弁制御し前記第2遮断弁を閉弁制御しているときに、(1)前記ブローバイガス調節弁を開弁から閉弁へ切り替えた前後で検出される前記蓄積部内圧の増加量が第5所定値より小さい場合、(2)閉弁した後の前記蓄積部内圧が第6所定値より大きい低負圧の場合、又は(3)閉弁した後の前記蓄積部内圧が前記第6所定値より小さい高負圧の場合に、前記ブローバイガス調節弁を故障と判定する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項29】
請求項28に記載のエンジンシステムにおいて、
前記第4制御手段は、前記ブローバイガス調節弁の故障を判定する前に、前記第1遮断弁が閉状態で故障した閉故障と判定した場合は、前記ブローバイガス調節弁を閉弁制御すること及び前記第2遮断弁を開弁制御することの少なくとも一方を実行する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項30】
請求項25に記載のエンジンシステムにおいて、
前記エンジンの空燃比を算出するための関係要素を検出する空燃比関係要素検出手段と、
前記第1遮断弁、前記第2遮断弁及び前記ブローバイガス調節弁を制御すると共に、検出される前記関係要素に基づいて算出した前記空燃比に基づいて前記ブローバイガス調節弁の故障を診断するための第5制御手段と
を更に備え、
前記第5制御手段は、前記第1遮断弁を開弁制御し前記第2遮断弁を閉弁制御しているときに、(1)前記ブローバイガス調節弁を開弁から閉弁へ切り替えた前後で算出される空燃比補正値の変化、又は(2)前記ブローバイガス調節弁が閉弁した後の前記空燃比補正値に基づいて前記ブローバイガス調節弁の故障を判定する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項31】
請求項30に記載のエンジンシステムにおいて、
前記第5制御手段は、前記ブローバイガス調節弁の故障を判定する前に、前記第1遮断弁が閉状態で故障した閉故障と判定した場合は、前記ブローバイガス調節弁を閉弁制御すること及び前記第2遮断弁を開弁制御することの少なくとも一方を実行する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項32】
請求項25に記載のエンジンシステムにおいて、
前記ブローバイガス蓄積部の中の圧力を蓄積部内圧として検出するための蓄積部内圧検出手段と、
前記第1遮断弁、前記第2遮断弁及び前記ブローバイガス調節弁を制御すると共に、検出される前記蓄積部内圧及び計測される前記吸気量に基づき前記第2遮断弁の故障を診断するための第6制御手段と
を更に備え、
前記第6制御手段は、前記第1遮断弁を閉弁制御し前記第2遮断弁を開弁制御しているときに、(1)検出される前記蓄積部内圧が第1所定値より小さい高負圧となる場合、又は(2)前記第2遮断弁が閉弁した前後での前記吸気量の差が第9所定値より小さい場合に、前記第2遮断弁を故障と判定する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項33】
請求項24に記載のエンジンシステムにおいて、
前記新気導入通路の通路径は、前記第2新気導入通路の通路径よりも大きく設定されることを特徴とするエンジンシステム。
【請求項34】
請求項24に記載のエンジンシステムにおいて、
前記ブローバイガス通路にて前記ブローバイガス調節弁を迂回する第1バイパス通路と、
前記第1バイパス通路を流れるブローバイガス流量を調節するための第2ブローバイガス調節弁と
を更に備えたことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項35】
請求項34に記載のエンジンシステムにおいて、
前記第2ブローバイガス調節弁は通常は開状態となるように構成され、
少なくとも前記ブローバイガス調節弁を制御するための第7制御手段を更に備え、
前記第7制御手段は、前記ブローバイガス調節弁を低温時には開弁制御し、高温時には閉弁制御する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項36】
請求項25に記載のエンジンシステムにおいて、
前記排気通路に設けられ、前記エンジンから排出された排気のエネルギーを受けて回転する過給用のタービンと、
前記吸気通路に設けられ、前記タービンにより駆動されて吸気を過給するコンプレッサと、
前記吸気通路は、前記コンプレッサより上流の上流側吸気通路と、前記コンプレッサより下流の下流側吸気通路とを含むことと、
前記ブローバイガス蓄積部から前記上流側吸気通路に接続される第2ブローバイガス通路と、
前記下流側吸気通路から前記第2ブローバイガス通路に接続される第2バイパス通路と、
前記第2バイパス通路と前記第2ブローバイガス通路との接続部に設けられ、前記下流側吸気通路を流れる吸気を利用して、前記第2ブローバイガス通路を流れる前記ブローバイガスを前記第2ブローバイガス通路の下流側へ吐出するエゼクタと
を備えたことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項37】
請求項36に記載のエンジンシステムにおいて、
前記第1遮断弁、前記第2遮断弁及び前記ブローバイガス調節弁を制御するための第8制御手段を更に備え、
前記第8制御手段は、低温時において、(1)前記第1遮断弁を開弁制御すると共に前記第2遮断弁を閉弁制御し、更に(2)前記タービン及び前記コンプレッサが作動しない非過給時には、前記ブローバイガス調節弁を開弁制御し、前記タービン及び前記コンプレッサが作動する過給時には、前記ブローバイガス調節弁を閉弁制御する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項38】
請求項36に記載のエンジンシステムにおいて、
前記第1遮断弁、前記第2遮断弁及び前記ブローバイガス調節弁を制御するための第9制御手段を更に備え、
前記第9制御手段は、高温時において、(1)前記第1遮断弁を閉弁制御すると共に前記第2遮断弁を開弁制御し、更に(2)非過給時には、前記ブローバイガス調節弁を微小量に開弁制御し、過給時には、前記ブローバイガス調節弁を閉弁制御する
ことを特徴とするエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、エンジンで発生するブローバイガスを吸気通路へ流してエンジンへ還元するように構成したエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載されるエンジンシステムが知られている。このエンジンシステムは、エンジンに吸気を導入する吸気通路と、吸気通路にて吸気量を調節するスロットル装置と、エンジンから排気を導出する排気通路と、エンジンで発生するブローバイガスを蓄積するブローバイガス蓄積部(ヘッドカバー及びクランクケース)と、クランクケースから吸気通路へブローバイガスを流すブローバイガス通路と、ブローバイガス通路におけるブローバイガス流量を調節する電動式のブローバイガス調節弁(PCV弁)と、クランクケースを換気するためにクランクケース(又はヘッドカバー)へ新気を導入する新気導入通路と、加熱手段により加熱された高温空気をスロットル装置より上流の吸気通路へ導入する高温空気通路と、吸気通路と高温空気通路との接続部に設けられ、吸気通路に導入される外気、高温空気通路からの高温空気又は外気と高温空気との混合空気を吸気通路の下流側へ選択的に流すために流路を変更する流路変更弁と、少なくとも流路変更弁とPCV弁を制御する制御手段(ECU)とを備える。加熱手段は、排気通路のエンジン近傍部位と、その近傍部位の周囲を囲むシュラウドとを含む。エンジン近傍部位で加熱される高温空気は、シュラウドにより回収され、高温空気通路を介してスロットル装置より上流の吸気通路へ導入される。吸気通路へ導入される高温空気の一部はエンジンの燃焼室へ導入され、高温空気の他の一部は新気導入通路を介してクランクケースに取り込まれる。
【0003】
ここで、ECUは、冷間時に高温空気を吸気通路の下流側へ流すように流路変更弁を制御すると共に、PCV弁をエンジンの運転状態に応じた最適開度より所定値大きい開度に制御するようになっている。これにより、冷間時にクランクケースから吸気通路へより多くのブローバイガスが流れてエンジンへ還元される。このとき、より多くのブローバイガスが吸気通路へ還元された分だけより多くの高温空気が新気としてヘッドカバーやクランクケースへ導入され、クランクケースの内部が換気されると共に暖機される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-72046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のエンジンシステムでは、排気通路のエンジン近傍部位からクランクケースまでの高温空気が流れる経路が比較的長くなっていた。このため、エンジン近傍部位で加熱された高温空気は、クランクケースに取り込まれるまでの間に温度が低下してしまい、ヘッドカバーやクランクケースを十分に昇温させることができず、クランクケースで凝縮水が発生するおそれがあった。特に、エンジンの低温始動直後には、凝縮水が発生し易くなってしまう。また、このエンジンシステムでは、シュラウドにより回収された高温空気は、スロットル装置より上流の吸気通路にて吸気通路に導入された外気と混合空気を形成できるが、外気の吸入量が増加すると混合空気の温度は低下してしまう。そして、温度低下した混合空気がブローバイガス蓄積部に導入されると、ブローバイガス蓄積部で凝縮水が発生するおそれがあった。更に、このエンジンシステムでは、ブローバイガス蓄積部であるヘッドカバーやクランクケースへ新気である高温空気を導入するために、新気導入通路と高温空気通路を設けなければならず、その分だけ配管の取り回し工数や部品点数が増え、製造コストが増加することになった。
【0006】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、ブローバイガス蓄積部へ新気である高温空気を導入するために、ブローバイガス蓄積部に流入する新気だけを効果的に加熱することでブローバイガス蓄積部を効率良く昇温させ、ブローバイガス蓄積部での凝縮水の発生を効果的に抑制することを可能としたエンジンシステムを提供することにある。また、この開示技術の第2の目的は、第1の目的に加え、ブローバイガス蓄積部へ新気である高温空気を導入するために、配管の取り回し工数や部品点数を低減し、製造コストの増加を抑えることを可能としたエンジンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、エンジンに吸気を導入するための吸気通路と、エンジンから排気を導出するための排気通路と、吸気通路を流れる吸気量を調節するための吸気量調節弁と、エンジンで発生するブローバイガスを蓄積するためのブローバイガス蓄積部と、ブローバイガス蓄積部から吸気通路へブローバイガスを流すためのブローバイガス通路と、ブローバイガス通路を流れるブローバイガス流量を調節するためのブローバイガス調節弁と、ブローバイガス蓄積部を換気するためにブローバイガス蓄積部へ新気を導入するための新気導入通路と、新気を加熱するための加熱手段とを備えたエンジンシステムにおいて、加熱手段からブローバイガス蓄積部まで高温空気が流れる高温空気経路部を備え、高温空気経路部を短縮するために、加熱手段がブローバイガス蓄積部の近傍に配置されることを趣旨とする。
【0008】
上記技術の構成によれば、エンジンで発生するブローバイガスは、ブローバイガス蓄積部に蓄積される。そして、その蓄積されたブローバイガスは、エンジンの運転時にブローバイガス調節弁を開弁することにより、吸気通路で発生する吸気負圧に引かれてブローバイガス通路を介して吸気通路へ流れ、エンジンへ還元される。このとき、新気導入通路に導入される新気はブローバイガス蓄積部へ導入され、この新気によりブローバイガス蓄積部の中が換気される。ここで、高温空気は、加熱手段からブローバイガス蓄積部まで高温空気経路部を介して流れるが、高温空気経路部を短縮するために加熱手段がブローバイガス蓄積部の近傍に配置される。従って、加熱手段により加熱された高温空気は速やかにブローバイガス蓄積部へ導入されるので、その高温空気の温度低下が抑えられる。
【0009】
上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、加熱手段は、新気導入通路の途中に設けられ、新気導入通路は、加熱手段より下流に高温空気経路部を含み、加熱手段により加熱される新気を高温空気として高温空気経路部を介してブローバイガス蓄積部へ導入するように構成されることを趣旨とする。
【0010】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、新気導入通路の途中には、加熱手段が設けられ、新気導入通路に導入される新気が加熱手段により加熱されて高温空気として高温空気経路部を介してブローバイガス蓄積部へ導入される。従って、加熱手段により加熱される高温空気をブローバイガス蓄積部へ導入するための専用の高温空気通路を設ける必要がなくなる。
【0011】
上記第2の目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、排気通路は、エンジンの近傍に位置するエンジン近傍部位を含み、加熱手段は、エンジン近傍部位により構成され、エンジン近傍部位にて排気の熱により加熱される新気が高温空気として高温空気経路部へ流れるように構成される。
【0012】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、加熱手段が排気通路のエンジン近傍部位により構成され、排気の熱により加熱される新気が高温空気として高温空気経路部へ流れる。従って、新気を加熱するために専用の機器やエネルギーを別途設ける必要がない。
【0013】
上記第2の目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項3に記載の技術において、加熱手段は、エンジン近傍部位の周囲を囲むシュラウドを更に含み、エンジン近傍部位にて排気の熱により加熱される新気が高温空気としてシュラウドにより回収され、高温空気経路部へ流れるように構成されることを趣旨とする。
【0014】
上記技術の構成によれば、請求項3に記載の技術の作用に加え、加熱手段が排気通路のエンジン近傍部位とそれを囲むシュラウドにより構成され、排気の熱により加熱される新気が高温空気としてシュラウドにより回収され、高温空気経路部へ流れる。従って、排気の熱がシュラウドにより効率よく新気へ伝えられると共に、加熱された高温空気が効率よく高温空気経路部へ流れる。
【0015】
上記第2の目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項3又は4に記載の技術において、加熱手段は、エンジン近傍部位にて排気から受熱する熱交換器を更に含み、熱交換器により加熱される新気が高温空気として高温空気経路部へ流れるように構成されることを趣旨とする。
【0016】
上記技術の構成によれば、請求項3又は4に記載の技術の作用に加え、加熱手段が排気通路のエンジン近傍部位とエンジン近傍部位にて排気から受熱する熱交換器により構成され、熱交換器により加熱される新気が高温空気として高温空気経路部へ流れる。
【0017】
上記第2の目的を達成するために、請求項6に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、加熱手段は、新気を電気的に加熱する電気ヒータを含み、電気ヒータにより加熱される新気が高温空気として高温空気経路部へ流れるように構成されることを趣旨とする。
【0018】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、電気ヒータの発熱により加熱される新気が高温空気として高温空気経路部へ流れる。従って、必要に応じて電気ヒータを動作させることにより新気を加熱することが可能となる。
【0019】
上記第2の目的を達成するために、請求項7に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、エンジンは、ヘッドカバーとクランクケースとを含み、ヘッドカバーの内部とクランクケースの内部とが連通路により連通し、ブローバイガス蓄積部は、ヘッドカバーとクランクケースにより構成され、高温空気経路部は、ヘッドカバー又はクランクケースに接続されることを趣旨とする。
【0020】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、加熱手段により加熱される新気は高温空気として高温空気経路部を介してヘッドカバー又はクランクケースに導入され、更に連通路を介してヘッドカバーとクランクケースとの間を流れる。
【0021】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項8に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、ブローバイガス蓄積部又はブローバイガス通路には、ブローバイガスに含まれるオイルを除去するためのオイル除去手段が設けられることを趣旨とする。
【0022】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、ブローバイガス蓄積部又はブローバイガス通路にて、オイル除去手段によりオイルが除去されたブローバイガスが吸気通路へ流れる。
【0023】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項9に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、ブローバイガス通路には、ブローバイガスを吸気通路へ圧送するためのポンプが設けられることを趣旨とする。
【0024】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、エンジンの運転領域が吸気通路で吸気負圧を発生させない領域になっても、ブローバイガス調節弁を開弁し、ポンプを駆動させることにより、ブローバイガス蓄積部からブローバイガス通路を介して吸気通路へブローバイガスが流れると共に、ブローバイガス蓄積部に高温空気が導入される。
【0025】
上記第2の目的を達成するために、請求項10に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、高温空気経路部には、ブローバイガス蓄積部への高温空気の流れを許容すると共に、ブローバイガス蓄積部からのブローバイガスの逆流を阻止するための逆止弁が設けられることを趣旨とする。
【0026】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、高温空気経路部にて、逆止弁により高温空気の順流が担保されると共にブローバイガスの逆流が阻止される。
【0027】
上記第2の目的を達成するために、請求項11に記載の技術は、請求項3又は4に記載の技術において、吸気通路は、外気を取り込むための吸気入口を含み、吸気入口の近傍には、吸気入口に取り込まれる外気量をエンジンに導入される吸気量として計測するための吸気量計測手段が設けられ、吸気量調節弁より下流の吸気通路には、吸気圧力を検出するための吸気圧力検出手段が設けられ、検出される吸気圧力とブローバイガス調節弁の開度とに基づいてブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気量を算出し、計測される吸気量と算出される高温空気量との和により最終的にエンジンに導入される最終吸気量を算出するための第1の算出手段が設けられることを趣旨とする。
【0028】
上記技術の構成によれば、請求項3又は4に記載の技術の作用に加え、第1の算出手段により、エンジンに導入される最終吸気量が、算出される高温空気量と計測される吸気量との和から適正に求められる。
【0029】
上記第2の目的を達成するために、請求項12に記載の技術は、請求項5に記載の技術において、吸気通路は、外気を取り込むための吸気入口を含み、吸気入口の近傍には、吸気入口に取り込まれる外気量をエンジンに導入される吸気量として計測するための吸気量計測手段が設けられ、吸気量調節弁より下流の吸気通路には、吸気圧力を検出するための吸気圧力検出手段が設けられ、検出される吸気圧力とブローバイガス調節弁の開度とに基づいてブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気量を算出し、計測される吸気量と算出される高温空気量との和により最終的にエンジンに導入される最終吸気量を算出するための第1の算出手段が設けられることを趣旨とする。
【0030】
上記技術の構成によれば、請求項5に記載の技術の作用に加え、第1の算出手段により、エンジンに導入される最終吸気量が、算出される高温空気量と計測される吸気量との和から適正に求められる。
【0031】
上記第2の目的を達成するために、請求項13に記載の技術は、請求項3又は4に記載の技術において、吸気通路は、外気を取り込むための吸気入口を含み、吸気入口の近傍には、吸気入口に取り込まれる外気量をエンジンに導入される吸気量として計測するための吸気量計測手段が設けられ、高温空気経路部には、ブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気量を計測するための高温空気量計測手段が設けられ、計測される吸気量と計測される高温空気量との和により最終的にエンジンに導入される最終吸気量を算出するための第2の算出手段が設けられることを趣旨とする。
【0032】
上記技術の構成によれば、請求項3又は4に記載の技術の作用に加え、第2の算出手段により、エンジンに導入される最終吸気量が、計測される高温空気量と計測される吸気量との和から適正に求められる。
【0033】
上記第2の目的を達成するために、請求項14に記載の技術は、請求項5に記載の技術において、吸気通路は、外気を取り込むための吸気入口を含み、吸気入口の近傍には、吸気入口に取り込まれる外気量をエンジンに導入される吸気量として計測するための吸気量計測手段が設けられ、高温空気経路部には、ブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気量を計測するための高温空気量計測手段が設けられ、計測される吸気量と計測される高温空気量との和により最終的にエンジンに導入される最終吸気量を算出するための第2の算出手段が設けられることを趣旨とする。
【0034】
上記技術の構成によれば、請求項5に記載の技術の作用に加え、第2の算出手段により、エンジンに導入される最終吸気量が、計測される高温空気量と計測される吸気量との和から適正に求められる。
【0035】
上記第2の目的を達成するために、請求項15に記載の技術は、請求項11に記載の技術において、エンジンの暖機状態を検出するための暖機状態検出手段を更に備え、第1の算出手段は、検出される暖機状態に基づいて高温空気の密度を算出し、算出される高温空気量を算出される密度に基づいて補正し、計測される吸気量と補正される高温空気量との和により最終的にエンジンに導入される最終吸気量を算出することを趣旨とする。
【0036】
上記技術の構成によれば、請求項11に記載の技術の作用に加え、算出される高温空気量が高温空気の密度に基づいて補正されるので、より適正な高温空気量が求められる。
【0037】
上記第2の目的を達成するために、請求項16に記載の技術は、請求項12に記載の技術において、エンジンの暖機状態を検出するための暖機状態検出手段を更に備え、第1の算出手段は、検出される暖機状態に基づいて高温空気の密度を算出し、算出される高温空気量を算出される密度に基づいて補正し、計測される吸気量と補正される高温空気量との和により最終的にエンジンに導入される最終吸気量を算出することを趣旨とする。
【0038】
上記技術の構成によれば、請求項12に記載の技術の作用に加え、算出される高温空気量が高温空気の密度に基づいて補正されるので、より適正な高温空気量が求められる。
【0039】
上記第2の目的を達成するために、請求項17に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、高温空気経路部には、高温空気を冷却するために高温空気経路部に新気を取り込むための新気取り込み孔が設けられることを趣旨とする。
【0040】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、高温空気経路部を流れる高温空気が、新気取り込み孔から取り込まれる新気により冷却される。
【0041】
上記第2の目的を達成するために、請求項18に記載の技術は、請求項17に記載の技術において、新気取り込み孔には、高温空気が所定温度以上となるときに開弁し、所定温度未満となるときに閉弁する温度感応式の開閉弁が設けられることを趣旨とする。
【0042】
上記技術の構成によれば、請求項17に記載の技術の作用に加え、高温空気が所定温度以上となるときは開閉弁が開弁し、新気取り込み孔から取り込まれる新気により高温空気が冷却される。一方、高温空気が所定温度未満となるときは開閉弁が閉弁し、高温空気が不用意に新気により冷却されない。
【0043】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項19に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、吸気通路は、外気を取り込むための吸気入口を含み、吸気入口の近傍には、吸気入口に取り込まれる外気量をエンジンに導入される吸気量として計測するための吸気量計測手段が設けられ、新気導入通路は、吸気量計測手段を通過した外気を新気として加熱手段へ導くように吸気通路に接続されることを趣旨とする。
【0044】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、新気導入通路は、吸気量計測手段を通過した外気を新気として加熱手段へ導くように吸気通路に接続される。従って、ブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気量とエンジンへ導入される吸気量の両方が、吸気量計測手段により計測される吸気量に含まれる。
【0045】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項20に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、少なくともブローバイガス調節弁の開度と吸気量調節弁の開度を制御するための制御手段を更に備え、制御手段は、吸気量調節弁の開閉制御に合わせてブローバイガス調節弁を開閉制御すると共に、吸気量調節弁の開度を増加させるときは、ブローバイガス調節弁の開度を吸気量調節弁の開度よりも先に増加させ、吸気量調節弁の開度を減少させるときは、吸気量調節弁の開度をブローバイガス調節弁の開度よりも先に減少させることを趣旨とする。
【0046】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、制御手段は、吸気量調節弁の開度を増加させるときは、ブローバイガス調節弁の開度を吸気量調節弁の開度よりも先に増加させ、吸気量調節弁の開度を減少させるときは、吸気量調節弁の開度をブローバイガス調節弁の開度よりも先に減少させる。従って、吸気通路の吸気量が増加するときも減少するときも、その変化に遅れることなく、ブローバイガス通路をブローバイガスが吸気通路へ流れ易くなる。
【0047】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項21に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、少なくともブローバイガス調節弁の開度と吸気量調節弁の開度を制御するための制御手段を更に備え、制御手段は、吸気量調節弁の開閉制御に合わせてブローバイガス調節弁を開閉制御すると共に、吸気量調節弁の開度を増加させるときは、ブローバイガス調節弁の開度を増加させると共に、ブローバイガス調節弁の開弁率を吸気量調節弁の開弁率よりも高くすることを趣旨とする。
【0048】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、制御手段は、吸気量調節弁の開度を増加させるときは、ブローバイガス調節弁の開度を増加させると共に、ブローバイガス調節弁の開弁率を吸気量調節弁の開弁率よりも高くする。従って、吸気通路の吸気量は増加するが、その増加に遅れることなく、ブローバイガス通路をブローバイガスが吸気通路へ流れ易くなる。
【0049】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項22に記載の技術は、請求項20に記載の技術において、エンジンの暖機状態を検出するための暖機状態検出手段を更に備え、制御手段は、検出される暖機状態が完全暖機となる場合は、未暖機となる場合よりもブローバイガス調節弁の開度を減少させるように補正することを趣旨とする。
【0050】
上記技術の構成によれば、請求項20に記載の技術の作用に加え、制御手段は、エンジンが完全暖機となる場合は、未暖機となる場合よりもブローバイガス調節弁の開度を減少させるように補正するので、吸気通路へ流れるブローバイガスの流量は、エンジンが完全暖機となる場合に未暖機となる場合よりも少なくなる。
【0051】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項23に記載の技術は、請求項21に記載の技術において、エンジンの暖機状態を検出するための暖機状態検出手段を更に備え、制御手段は、検出される暖機状態が完全暖機となる場合は、未暖機となる場合よりもブローバイガス調節弁の開度を減少させるように補正することを趣旨とする。
【0052】
上記技術の構成によれば、請求項21に記載の技術の作用に加え、制御手段は、エンジンが完全暖機となる場合は、未暖機となる場合よりもブローバイガス調節弁の開度を減少させるように補正するので、吸気通路へ流れるブローバイガスの流量は、エンジンが完全暖機となる場合に未暖機となる場合よりも少なくなる。
【0053】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項24に記載の技術は、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術において、吸気通路に外気を取り込むための吸気入口と、吸気入口に取り込まれる外気量をエンジンに導入される吸気量として計測するために吸気通路に設けられる吸気量計測手段と、新気導入通路における新気の流れを遮断するための第1遮断弁と、吸気量調節弁より上流の吸気通路からブローバイガス蓄積部へ新気を導入するための第2新気導入通路と、第2新気導入通路と吸気通路との接続部は、吸気量計測手段より下流の吸気通路に設けられることとを備えたことを趣旨とする。
【0054】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術の作用に加え、新気導入通路における新気の流れを第1遮断弁で遮断することにより、加熱手段により加熱された高温空気のブローバイガス蓄積部への導入が止まる。このとき、吸気量計測手段により計測されて吸気通路へ流れる吸気の一部が新気とし第2新気導入通路を介してブローバイガス蓄積部へ導入される。
【0055】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項25に記載の技術は、請求項24に記載の技術において、第2新気導入通路における新気の流れを遮断するための第2遮断弁を更に備えたことを趣旨とする。
【0056】
上記技術の構成によれば、請求項24に記載の技術の作用に加え、第2新気導入通路における新気の流れを第2遮断弁で遮断することにより、ブローバイガス蓄積部への新気の導入が止まる。
【0057】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項26に記載の技術は、請求項25に記載の技術において、ブローバイガス蓄積部の中の圧力を蓄積部内圧として検出するための蓄積部内圧検出手段と、第1遮断弁及び第2遮断弁を制御すると共に、検出される蓄積部内圧に基づき第1遮断弁の故障を診断するための第2制御手段とを更に備え、第2制御手段は、第1遮断弁を開弁制御し第2遮断弁を閉弁制御しているときに、(1)検出される蓄積部内圧が第1所定値より低い高負圧となる場合、又は(2)第1遮断弁を開弁から閉弁へ切り替えた前後での蓄積部内圧の降下量が第2所定値より小さくなる場合に、第1遮断弁を故障と判定することを趣旨とする。
【0058】
上記技術の構成によれば、請求項25に記載の技術の作用に加え、第2制御手段は、第1遮断弁を開弁制御し第2遮断弁を閉弁制御しているときに、蓄積部内圧検出手段により検出される蓄積部内圧に基づき、第1遮断弁の故障を判定する。
【0059】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項27に記載の技術は、請求項25に記載の技術において、前記エンジンの空燃比を算出するための関係要素を検出する空燃比関係要素検出手段と、第1遮断弁、第2遮断弁及びブローバイガス調節弁を制御すると共に、検出される関係要素に基づいて算出した空燃比に基づいて第1遮断弁の故障を診断するための第3制御手段とを更に備え、第3制御手段は、第1遮断弁を開弁制御し第2遮断弁を閉弁制御しているときに、(1)第1遮断弁を開弁から閉弁へ切り替えた前後で算出される空燃比の変化、又は(2)第1遮断弁を閉弁した後の空燃比に基づいて第1遮断弁の故障を判定することを趣旨とする。
【0060】
上記技術の構成によれば、請求項25に記載の技術の作用に加え、第3制御手段は、第1遮断弁を開弁制御し第2遮断弁を閉弁制御しているときに、算出した空燃比に基づき、第1遮断弁の故障を判定する。
【0061】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項28に記載の技術は、請求項25に記載の技術において、ブローバイガス蓄積部の中の圧力を蓄積部内圧として検出するための蓄積部内圧検出手段と、第1遮断弁、第2遮断弁及びブローバイガス調節弁を制御すると共に、検出される蓄積部内圧に基づきブローバイガス調節弁の故障を診断するための第4制御手段とを更に備え、第4制御手段は、第1遮断弁を開弁制御し第2遮断弁を閉弁制御しているときに、(1)ブローバイガス調節弁を開弁から閉弁へ切り替えた前後で検出される蓄積部内圧の増加量が第5所定値より小さい場合、(2)閉弁した後の蓄積部内圧が第6所定値より大きい低負圧の場合、又は(3)閉弁した後の蓄積部内圧が第6所定値より小さい高負圧の場合に、ブローバイガス調節弁を故障と判定することを趣旨とする。
【0062】
上記技術の構成によれば、請求項25に記載の技術の作用に加え、第4制御手段は、第1遮断弁を開弁制御し第2遮断弁を閉弁制御しているときに、検出される蓄積部内圧に基づき、ブローバイガス調節弁の故障を判定する。
【0063】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項29に記載の技術は、請求項28に記載の技術において、第4制御手段は、ブローバイガス調節弁の故障を判定する前に、第1遮断弁が閉状態で故障した閉故障と判定した場合は、ブローバイガス調節弁を閉弁制御すること及び第2遮断弁を開弁制御することの少なくとも一方を実行することを趣旨とする。
【0064】
上記技術の構成によれば、請求項28に記載の技術の作用に加え、第4制御手段は、ブローバイガス調節弁の故障を判定する前に、第1遮断弁が閉故障と判定した場合は、ブローバイガス調節弁を閉弁制御すること及び第2遮断弁を開弁制御することの少なくとも一方を実行する。従って、第1遮断弁が閉故障となっている場合には、ブローバイガスの吸気通路への還流が止められること及びブローバイガス蓄積部へ、加熱されていない新気が導入されることの少なくとも一方が実行される。
【0065】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項30に記載の技術は、請求項25に記載の技術において、エンジンの空燃比を算出するための関係要素を検出する空燃比関係要素検出手段と、第1遮断弁、第2遮断弁及びブローバイガス調節弁を制御すると共に、検出される関係要素に基づいて算出した空燃比に基づいてブローバイガス調節弁の故障を診断するための第5制御手段とを更に備え、第5制御手段は、第1遮断弁を開弁制御し第2遮断弁を閉弁制御しているときに、(1)ブローバイガス調節弁を開弁から閉弁へ切り替えた前後で算出される空燃比補正値の変化、又は(2)ブローバイガス調節弁が閉弁した後の空燃比補正値に基づいて前記ブローバイガス調節弁の故障を判定することを趣旨とする。
【0066】
上記技術の構成によれば、請求項25に記載の技術の作用に加え、第5制御手段は、第1遮断弁を開弁制御し第2遮断弁を閉弁制御しているときに、算出される空燃比補正値に基づき、ブローバイガス調節弁の故障を判定する。
【0067】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項31に記載の技術は、請求項30に記載の技術において、第5制御手段は、ブローバイガス調節弁の故障を判定する前に、第1遮断弁が閉状態で故障した閉故障と判定した場合は、ブローバイガス調節弁を閉弁制御すること及び第2遮断弁を開弁制御することの少なくとも一方を実行することを趣旨とする。
【0068】
上記技術の構成によれば、請求項30に記載の技術の作用に加え、第5制御手段は、ブローバイガス調節弁の故障を判定する前に、第1遮断弁が閉故障と判定した場合は、ブローバイガス調節弁を閉弁制御すること及び第2遮断弁を開弁制御することの少なくとも一方を実行する。従って、第1遮断弁が閉故障となった場合には、ブローバイガスの吸気通路への還流が止められること及びブローバイガス蓄積部へ、加熱されていない新気が導入されることの少なくとも一方が実行される。
【0069】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項32に記載の技術は、請求項25に記載の技術において、ブローバイガス蓄積部の中の圧力を蓄積部内圧として検出するための蓄積部内圧検出手段と、第1遮断弁、第2遮断弁及びブローバイガス調節弁を制御すると共に、検出される蓄積部内圧及び計測される吸気量に基づき第2遮断弁の故障を診断するための第6制御手段とを更に備え、第6制御手段は、第1遮断弁を閉弁制御し第2遮断弁を開弁制御しているときに、(1)検出される蓄積部内圧が第1所定値より小さい高負圧となる場合、又は(2)第2遮断弁が閉弁した前後での吸気量の差が第9所定値より小さい場合に、第2遮断弁を故障と判定することを趣旨とする。
【0070】
上記技術の構成によれば、請求項25に記載の技術の作用に加え、第6制御手段は、第1遮断弁を閉弁制御し第2遮断弁を開弁制御しているときに、検出される蓄積部内圧及び第2遮断弁が閉弁した前後での吸気量の差に基づき、第2遮断弁の故障を判定する。
【0071】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項33に記載の技術は、請求項24に記載の技術において、新気導入通路の通路径は、第2新気導入通路の通路径よりも大きく設定されることを趣旨とする。
【0072】
上記技術の構成によれば、請求項24に記載の技術の作用に加え、新気導入通路の通路径が第2新気導入通路の通路径よりも大きく設定されるので、第1遮断弁と第2遮断弁の両方が開弁しているときは、新気導入通路を高温空気が流れ、第2新気導入通路を加熱されない新気が流れる。
【0073】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項34に記載の技術は、請求項24に記載の技術において、ブローバイガス通路にてブローバイガス調節弁を迂回する第1バイパス通路と、第1バイパス通路を流れるブローバイガス流量を調節するための第2ブローバイガス調節弁とを更に備えたことを趣旨とする。
【0074】
上記技術の構成によれば、請求項24に記載の技術の作用に加え、ブローバイガス通路に加えて第1バイパス通路が設けられるので、第1バイパス通路の分だけ、ブローバイガス蓄積部から吸気通路へ流れるブローバイガス流量が増える。
【0075】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項35に記載の技術は、請求項34に記載の技術において、第2ブローバイガス調節弁は通常は開状態となるように構成され、少なくともブローバイガス調節弁を制御するための第7制御手段を更に備え、第7制御手段は、ブローバイガス調節弁を低温時には開弁制御し、高温時には閉弁制御することを趣旨とする。
【0076】
上記技術の構成によれば、請求項34に記載の技術の作用に加え、第7制御手段は、低温時にブローバイガス調節弁を開弁制御し、第2ブローバイガス調節弁は通常は開状態となるので、低温時にブローバイガス通路と第1バイパス通路の両方でブローバイガスが流れる。
【0077】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項36に記載の技術は、請求項25に記載の技術において、排気通路に設けられ、エンジンから排出された排気のエネルギーを受けて回転する過給用のタービンと、吸気通路に設けられ、タービンにより駆動されて吸気を過給するコンプレッサと、吸気通路は、コンプレッサより上流の上流側吸気通路と、コンプレッサより下流の下流側吸気通路とを含むことと、ブローバイガス蓄積部から上流側吸気通路に接続される第2ブローバイガス通路と、下流側吸気通路から第2ブローバイガス通路に接続される第2バイパス通路と、第2バイパス通路と第2ブローバイガス通路との接続部に設けられ、下流側吸気通路を流れる吸気を利用して、第2ブローバイガス通路を流れるブローバイガスを前記第2ブローバイガス通路の下流側へ吐出するエゼクタとを備えたことを趣旨とする。
【0078】
上記技術の構成によれば、請求項25に記載の技術の作用に加え、エンジンの運転時であってコンプレッサが非作動の非過給時には、吸気量調節弁より下流の下流側吸気通路で負圧が発生することにより、エンジンで発生してブローバイガス蓄積部に蓄積されたブローバイガスがブローバイガス通路を介して下流側吸気通路へ流れ、エンジンへ還流される。ブローバイガス通路におけるブローバイガス流量は、ブローバイガス調節弁の開度を変えることで調節可能である。一方、エンジンの運転時であってコンプレッサが作動する過給時には、吸気量調節弁より下流の吸気通路に負圧が発生しなくなる。このとき、第2ブローバイガス通路の出口では、上流側吸気通路を流れる吸気により負圧が発生し、その発生負圧が第2ブローバイガス通路に作用する。従って、ブローバイガス蓄積部に蓄積されたブローバイガスは、第2ブローバイガス通路を介して上流側吸気通路へ流れ、コンプレッサから下流側吸気通路を介してエンジンへ還流される。ここで、過給時には、下流側吸気通路から第2バイパス通路を介してエゼクタへ吸気が作動流体として流れることで、第2ブローバイガス通路を流れるブローバイガスがエゼクタから第2ブローバイガス通路の下流側へ吐出される。
【0079】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項37に記載の技術は、請求項36に記載の技術において、第1遮断弁、第2遮断弁及びブローバイガス調節弁を制御するための第8制御手段を更に備え、第8制御手段は、低温時において、(1)第1遮断弁を開弁制御すると共に第2遮断弁を閉弁制御し、更に(2)タービン及びコンプレッサが作動しない非過給時には、ブローバイガス調節弁を開弁制御し、タービン及びコンプレッサが作動する過給時には、ブローバイガス調節弁を閉弁制御することを趣旨とする。
【0080】
上記技術の構成によれば、請求項36に記載の技術の作用に加え、第8制御手段は、低温時において、第1遮断弁を開弁制御すると共に第2遮断弁を閉弁制御し、更に非過給時には、ブローバイガス調節弁を開弁制御し、過給時には、ブローバイガス調節弁を閉弁制御する。従って、低温時において、ブローバイガス蓄積部には、新気導入通路を流れる高温空気のみが流れ込み、ブローバイガス蓄積部が効果的に暖機される。また、非過給時には、ブローバイガス蓄積部からブローバイガス通路を介して下流側吸気通路へブローバイガスが流れ、過給時には、ブローバイガス蓄積部から第2ブローバイガス通路を介して上流側吸気通路へブローバイガスが流れる。
【0081】
上記第1又は第2の目的を達成するために、請求項38に記載の技術は、請求項36に記載の技術において、第1遮断弁、第2遮断弁及びブローバイガス調節弁を制御するための第9制御手段を更に備え、第9制御手段は、高温時において、(1)第1遮断弁を閉弁制御すると共に第2遮断弁を開弁制御し、更に(2)非過給時には、ブローバイガス調節弁を微小量に開弁制御し、過給時には、ブローバイガス調節弁を閉弁制御することを趣旨とする。
【0082】
上記技術の構成によれば、請求項36に記載の技術の作用に加え、第9制御手段は、高温時において、第1遮断弁を閉弁制御すると共に第2遮断弁を開弁制御し、更に非過給時には、ブローバイガス調節弁を微小量に開弁制御し、過給時には、ブローバイガス調節弁を閉弁制御する。従って、高温時において、ブローバイガス蓄積部には、第2新気導入通路を流れる加熱されない新気のみが流れ込み、ブローバイガス蓄積部が換気される。また、非過給時には、ブローバイガス蓄積部からブローバイガス通路を介して下流側吸気通路へ微小量のブローバイガスが流れ、過給時には、ブローバイガス蓄積部から第2ブローバイガス通路のみを介して上流側吸気通路へブローバイガスが流れる。
【発明の効果】
【0083】
請求項1に記載の技術によれば、ブローバイガス蓄積部へ新気である高温空気を導入するために、ブローバイガス蓄積部に流入する新気だけを効果的に加熱することでブローバイガス蓄積部を効率良く昇温させることができ、ブローバイガス蓄積部での凝縮水の発生を効果的に抑制することができる。
【0084】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス蓄積部へ新気である高温空気を導入するために、配管の取り回し工数や部品点数を低減することができ、製造コストの増加を抑えることができる。
【0085】
請求項3に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、新気の加熱に要するコストを抑えることができる。
【0086】
請求項4に記載の技術によれば、請求項3に記載の技術の効果に加え、新気を効率よく加熱することができ、加熱した高温空気を効率よくブローバイガス蓄積部へ導入することができる。
【0087】
請求項5に記載の技術によれば、請求項3又は4に記載の技術の効果に加え、新気を更に効率よく加熱することができ、加熱した高温空気をブローバイガス蓄積部へ導入することができる。
【0088】
請求項6に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、新気を必要に応じて積極的に加熱することができる。
【0089】
請求項7に記載の技術によれば、ヘッドカバーとクランクケースをブローバイガス蓄積部とすることで請求項2と同等の効果を得ることができる。
【0090】
請求項8に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、オイルによる吸気通路の汚損を抑制することができる。
【0091】
請求項9に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、エンジンの運転領域が吸気通路で吸気負圧を発生させない領域になっても、ポンプによりブローバイガスをエンジンへ還元することができると共に、高温空気によりブローバイガス蓄積部の換気と暖機を行うことができる。
【0092】
請求項10に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス蓄積部への高温空気の導入を担保しながら、ブローバイガスの外部への漏洩を防止することができる。
【0093】
請求項11に記載の技術によれば、請求項3又は4に記載の技術の効果に加え、最終吸気量を使用することで、エンジンの各種制御(例えば、空燃比制御等)の精度を向上させることができる。また、高温空気量を計測する手段を省略することができる。
【0094】
請求項12に記載の技術によれば、請求項5に記載の技術の効果に加え、最終吸気量を使用することで、エンジンの各種制御(例えば、空燃比制御等)の精度を向上させることができる。また、高温空気量を計測する手段を省略することができる。
【0095】
請求項13に記載の技術によれば、請求項3又は4に記載の技術の効果に加え、最終吸気量を使用することで、エンジンの各種制御(例えば、空燃比制御等)の精度を向上させることができる。また、高温空気量計測手段により高温空気量を計測する分だけ最終吸気量の算出精度を向上させることができる。
【0096】
請求項14に記載の技術によれば、請求項5に記載の技術の効果に加え、最終吸気量を使用することで、エンジンの各種制御(例えば、空燃比制御等)の精度を向上させることができる。また、高温空気量計測手段により高温空気量を計測する分だけ最終吸気量の算出精度を向上させることができる。
【0097】
請求項15に記載の技術によれば、請求項11に記載の技術の効果に加え、最終吸気量の算出精度を向上させることができ、延いてはエンジンの各種制御の精度を更に向上させることができる。
【0098】
請求項16に記載の技術によれば、請求項12に記載の技術の効果に加え、最終吸気量の算出精度を向上させることができ、延いてはエンジンの各種制御の精度を更に向上させることができる。
【0099】
請求項17に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、過剰に温度の高い高温空気がブローバイガス蓄積部へ導入されることを防止することができる。
【0100】
請求項18に記載の技術によれば、請求項17に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス蓄積部へ導入される高温空気を適温以下に保つことができる。
【0101】
請求項19に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、吸気量計測手段により計測される吸気量を、最終的にエンジンに導入される最終吸気量としてそのままエンジンの各種制御に使用することができる。
【0102】
請求項20に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス蓄積部におけるブローバイガス換気率を最大限に引き出すことができる。
【0103】
請求項21に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス蓄積部におけるブローバイガス換気率を最大限に引き出すことができる。
【0104】
請求項22に記載の技術によれば、請求項20に記載の技術の効果に加え、凝縮水の発生が少なくなる完全暖機後には、ブローバイガス中のオイルミストは増加するが、ブローバイガス流量が少なくなる分だけ吸気通路へ流れるオイルミストを抑制することができる。
【0105】
請求項23に記載の技術によれば、請求項21に記載の技術の効果に加え、凝縮水の発生が少なくなる完全暖機後には、ブローバイガス中のオイルミストは増加するが、ブローバイガス流量が少なくなる分だけ吸気通路へ流れるオイルミストを抑制することができる。
【0106】
請求項24に記載の技術によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の技術の効果に加え、高温空気によりブローバイガス蓄積部を昇温させてから、第1遮断弁により高温空気の流れを遮断することで、吸気量計測手段により計測された新気のみによりブローバイガス蓄積部を換気することができ、吸気量計測手段により計測された吸気量をエンジンの空燃比制御に有効に反映させることができ、空燃比制御の精度を確保することができる。
【0107】
請求項25に記載の技術によれば、請求項24に記載の技術の効果に加え、ブローバイ蓄積部への、加熱されない新気の導入を第2遮断弁により任意に止めることができ、必要に応じてブローバイ蓄積部へ新気を導入することができる。
【0108】
請求項26に記載の技術によれば、請求項25に記載の技術の効果に加え、第1遮断弁の故障を診断することができ、第1遮断弁を適正に制御し、第1遮断弁の故障に早期に対処することができる。
【0109】
請求項27に記載の技術によれば、請求項25に記載の技術の効果に加え、第1遮断弁の故障を診断することができ、第1遮断弁を適正に制御し、第1遮断弁の故障に早期に対処することができる。
【0110】
請求項28に記載の技術によれば、請求項25に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス調節弁の故障を診断することができ、ブローバイガス調節弁を適正に制御し、ブローバイガス調節弁の故障に早期に対処することができる。
【0111】
請求項29に記載の技術によれば、請求項28に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス蓄積部へ高温空気が導入されない場合に、ブローバイ蓄積部の中のブローバイガスの消費を抑え、ブローバイガス蓄積部の中を加熱されない新気により換気することができる。
【0112】
請求項30に記載の技術によれば、請求項25に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス調節弁の故障を診断することができ、ブローバイガス調節弁を適正に制御し、ブローバイガス調節弁の故障に早期に対処することができる。
【0113】
請求項31に記載の技術によれば、請求項30に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス蓄積部へ高温空気が導入されない場合に、ブローバイ蓄積部の中のブローバイガスの消費を抑え、ブローバイガス蓄積部の中を加熱されない新気により換気することができる。
【0114】
請求項32に記載の技術によれば、請求項25に記載の技術の効果に加え、第2遮断弁の故障を診断することができ、第2遮断弁を適正に制御し、第2遮断弁の故障に早期に対処することができる。
【0115】
請求項33に記載の技術によれば、請求項24に記載の技術の効果に加え、第1遮断弁と第2遮断弁の両方が開弁しているときは、加熱されない新気よりも高温空気を多くブローバイガス蓄積部へ導入することができ、ブローバイガス蓄積部を昇温させることができる。
【0116】
請求項34に記載の技術によれば、請求項24に記載の技術の効果に加え、ブローバイガス蓄積部の換気効率を向上させることができる。
【0117】
請求項35に記載の技術によれば、請求項34に記載の技術の効果に加え、低温時にブローバイガス蓄積部の換気効率を向上させることができる。
【0118】
請求項36に記載の技術によれば、請求項25に記載の技術の効果に加え、過給時には、エゼクタにより、第2ブローバイガス通路によるブローバイガス還流性能を向上させることができる。
【0119】
請求項37に記載の技術によれば、請求項36に記載の技術の効果に加え、低温時において、ブローバイガス蓄積部の換気効率を向上させることができ、過給時にはエンジンの出力を低下させることなくブローバイガス蓄積部を換気することができる。
【0120】
請求項38に記載の技術によれば、請求項36に記載の技術の効果に加え、高温時において、空燃比が過剰リッチにならないように制御することができ、過給時にはエンジンの出力を低下させることなくブローバイガス蓄積部を換気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1】第1実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図2】第1実施形態に係り、最終吸気量算出制御の内容を示すフローチャート。
図3】第1実施形態に係り、PCV開度と吸気圧力に応じた基準PCV通過空気量を求めるために参照される基準PCV通過空気量マップ。
図4】第1実施形態に係り、冷却水温度に応じた密度補正係数を求めるために参照される密度補正係数マップ。
図5】第1実施形態に係り、PCV弁と電子スロットル装置の協調制御の内容を示すフローチャート。
図6】第1実施形態に係り、アクセル開度と冷却水温度に応じた目標スロットル開度を求めるために参照される目標スロットル開度マップ。
図7】第1実施形態に係り、アクセル開度と冷却水温度に応じた目標PCV開度を求めるために参照される目標PCV開度マップ。
図8】第1実施形態に係り、エンジンの低温始動アイドル時の協調制御につき、各種パラメータの挙動を示すタイムチャート。
図9】第1実施形態に係り、HV走行時の協調制御につき、各種パラメータの挙動を示すタイムチャート。
図10】第1実施形態に係り、HV走行時の協調制御につき、各種パラメータの挙動を示すタイムチャート。
図11】第1実施形態に係り、HV走行時の協調制御につき、各種パラメータの挙動を示す図10に準ずるタイムチャート。
図12】第2実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図13】第2実施形態に係り、最終吸気量算出制御の内容を示すフローチャート。
図14】第3実施形態に係り、高温空気経路部とシュラウドとの接続部近傍を概略的に示す断面図。
図15】第3実施形態の変形例に係り、高温空気経路部とシュラウドとの接続部近傍を示す図14に準ずる断面図。
図16】第3実施形態の変形例に係り、高温空気経路部とシュラウドとの接続部近傍を示す図14に準ずる断面図。
図17】第4実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図18】第5実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図19】第6実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図20】第6実施形態に係り、エンジンのヘッドカバーとエンジンブロックの一部を示す断面図。
図21】第7実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図22】第8実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図23】第8実施形態に係り、第1故障診断制御の内容を示すフローチャート。
図24】第9実施形態に係り、第2故障診断制御の内容を示すフローチャート。
図25】第10実施形態に係り、第3故障診断制御の内容を示すフローチャート。
図26】第11実施形態に係り、第4故障診断制御の内容を示すフローチャート。
図27】第12実施形態に係り、第5故障診断制御の内容を示すフローチャート。
図28】第13実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図29】第14実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図30】第14実施形態に係り、エゼクタを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0122】
以下、エンジンシステムをハイブリッド自動車(HV)に具体化した幾つかの実施形態について詳細に説明する。
【0123】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0124】
[エンジン及びその関連構成について]
図1に、この実施形態におけるガソリンエンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」と言う。)を概略構成図により示す。図1に示すように、このエンジンシステムを構成するエンジン1は、複数の気筒を含むエンジンブロック2を含む。各気筒には、それぞれピストン3が往復動可能に設けられる。エンジンブロック2の下部には、クランクケース4が設けられる。クランクケース4は、オイルパン5と共に構成される。クランクケース4の中には、クランクシャフト6が回転可能に支持され、各ピストン3がコンロッド7を介してクランクシャフト6に連結される。
【0125】
各気筒にて、各ピストン3の上側には燃焼室8が形成される。各燃焼室8に対応して、エンジンブロック2の上部には、吸気ポート9及び排気ポート10がそれぞれ形成される。吸気ポート9には吸気バルブ11が、排気ポート10には排気バルブ12がそれぞれ設けられる。各吸気バルブ11及び各排気バルブ12は、周知の動弁機構13により、クランクシャフト6の回転に連動して開閉するように構成される。これら吸気バルブ11及び排気バルブ12が開閉することにより、吸気ポート9から燃焼室8へ外気(吸気)が吸入され、燃焼室8から排気ポート10へ燃焼後の排気が排出される。エンジンブロック2の上部には、動弁機構13等を覆うヘッドカバー14が設けられる。
【0126】
吸気ポート9には、燃焼室8に吸気を導入するための吸気通路15が接続される。この吸気通路15は、外気を取り込むための吸気入口15aを含む。吸気入口15aには、エアクリーナ16が設けられる。吸気通路15には、スロットル弁17を含む電動式の電子スロットル装置18が設けられる。電子スロットル装置18は、吸気通路15を流れる吸気量を調節する。電子スロットル装置18より下流の吸気通路15は、サージタンクを含む周知の吸気マニホルド(図示略)から構成される。電子スロットル装置18は、HVの運転席に設けられたアクセルペダル19の操作に応答してモータ(図示略)によりスロットル弁17を開閉駆動するように構成される。電子スロットル装置18は、この開示技術における吸気量調節弁の一例に相当する。エアクリーナ16により浄化された外気は、吸気通路15において、電子スロットル装置18及び吸気ポート9を介して各燃焼室8へ吸気として導入される。燃焼室8に導入される吸気量は、スロットル弁17の開度に応じて調節される。エンジンブロック2には、各燃焼室8のそれぞれに燃料を噴射供給するためのインジェクタ20が設けられる。各インジェクタ20から各燃焼室8へ噴射された燃料は吸気と共に混合気を形成する。エンジンブロック2の上部には、各燃焼室8にて混合気に点火するための点火プラグ21が設けられる。点火プラグ21は、イグナイタ22から高電圧が印加されることで動作するようになっている。
【0127】
排気ポート10には、燃焼室8から排気を導出するための排気通路23が接続される。エンジン1の直下流の排気通路23は、排気マニホールド(図示略)から構成され、更にその下流の排気通路23には、排気を浄化するための触媒コンバータ24が設けられる。各燃焼室8で生じた燃焼後の排気は、排気ポート10から排気通路23へ導出され、排気マニホールド及び触媒コンバータ24等を介して外部へ排出される。
【0128】
[ブローバイガス還元装置について]
この実施形態において、エンジンシステムは、各燃焼室8で発生したブローバイガスを電子スロットル装置18より下流の吸気通路15へ流してエンジン1へ還元するためのブローバイガス還元装置(以下、「BGV装置」と言う。)を備える。このBGV装置は、エンジン1で発生するブローバイガスを蓄積するためのブローバイガス蓄積部(以下、「BG蓄積部」)と、そのBG蓄積部から吸気通路15へブローバイガスを流すためのブローバイガス通路(以下、「BG通路」と言う。)32と、BG通路32を流れるブローバイガス流量を調節するためのPCV弁33とを備える。
【0129】
この実施形態では、BG蓄積部は、クランクケース4とヘッドカバー14(以下、「ヘッドカバー14等」と言う。)により構成される。クランクケース4の内部とヘッドカバー14の内部は、エンジンブロック2に設けられた連通路2aにより互いに連通する。BG通路32の一端は、クランクケース4に接続され、その他端は、電子スロットル装置18(スロットル弁17)より下流の吸気通路15(吸気マニホルド)に接続される。このBG通路32は、ホース等の配管で構成される。BG通路32の一端、すなわちクランクケース4との間には、ブローバイガスに含まれるオイルを除去するためのオイルセパレータ34が設けられる。このオイルセパレータ34は、ブローバイガスに含まれる潤滑油等のオイルをブローバイガスから分離して捕捉する機能を有する。オイルセパレータ34は、この開示技術におけるオイル除去手段の一例に相当する。PCV弁33は、開度可変に構成された周知の電動式の弁であり、オイルセパレータ34より下流のBG通路32に設けられる。PCV弁33は、この開示技術におけるブローバイガス調節弁の一例に相当する。
【0130】
この実施形態のBGV装置は、新気導入通路47と加熱手段35を更に備える。新気導入通路47は、BG蓄積部であるヘッドカバー14及びクランクケース4の内部を換気するためにヘッドカバー14及びクランクケース4の内部へ新気を導入するための通路である。加熱手段35は、新気を加熱するための手段である。この実施形態において、加熱手段35は、新気導入通路47の途中に設けられ、加熱手段35により加熱される新気を高温空気として新気導入通路47を介してヘッドカバー14及びクランクケース4の内部へ導入するように構成される。
【0131】
この実施形態で、排気通路23は、エンジン1の近傍に位置するエンジン近傍部位23aを含み、エンジン近傍部位23aは、例えば、排気マニホールドより構成される。エンジン近傍部位23aには、その周囲を囲むシュラウド36が設けられる。この実施形態では、加熱手段35は、これらエンジン近傍部位23aとシュラウド36により構成される。また、この実施形態で、新気導入通路47の出口側は、ヘッドカバー14に接続される。そして、新気導入通路47は、シュラウド36からヘッドカバー14までの高温空気が流れる高温空気経路部37と、シュラウド36とエンジン近傍部位23aとの間の隙間から構成される。エンジン近傍部位23aにて排気の熱により加熱される新気は、高温空気としてシュラウド36により回収され、高温空気経路部37へ流れるように構成される。ここで、加熱手段35は、高温空気経路部37を短縮するためにヘッドカバー14の近傍に配置され、高温空気経路部37を介してヘッドカバー14に接続される。ここで、高温空気経路部37の長さ、すなわち、エンジン近傍部位23aからヘッドカバー14まで高温空気が流れる経路の長さは、エンジン近傍部位23aにて加熱される高温空気の温度低下を、例えば「数℃」程度に留めることができる長さとすることができる。
【0132】
そして、ブローバイガスを燃焼室8へ還元するために、エンジン1の運転時にPCV弁33を開弁することにより、クランクケース4からBG通路32を介して吸気通路15へブローバイガスが流れる。このとき、エンジン近傍部位23aにて排気の熱により加熱される新気は高温空気としてシュラウド36により回収され、高温空気経路部37を介してヘッドカバー14の中へ導入され、更に連通路2aを介してクランクケース4の中へ導入され、ヘッドカバー14及びクランクケース4の内部がそれぞれ高温空気により暖機されると共に換気される。
【0133】
この実施形態で、高温空気経路部37には、高温空気の中の異物を除去するために、エアフィルタ38が設けられる。また、エアフィルタ38より下流の高温空気経路部37には、逆止弁39が設けられる。この逆止弁39は、ヘッドカバー14への高温空気の流れを許容すると共に、ヘッドカバー14からのブローバイガスの逆流を阻止するように構成される。
【0134】
[エンジンシステムの電気的構成について]
次に、このエンジンシステムの電気的構成について説明する。このエンジンシステムは、電子制御装置(ECU)50を更に備える。また、吸気入口15aの近傍であって、エアクリーナ16には、外気の温度を吸気温度THAとして検出するための吸気温センサ51が設けられる。また、エアクリーナ16の直下流には、吸気入口15aに取り込まれる外気量を吸気通路15に導入される吸気量Ga1として計測するための第1のエアフローメータ52が設けられる。第1のエアフローメータ52は、この開示技術における吸気量計測手段の一例に相当する。電子スロットル装置18には、スロットル弁17の開度(スロットル開度)TAを検出するためのスロットルセンサ53が設けられる。電子スロットル装置18より下流の吸気通路15(サージタンク)には、吸気圧力PMを検出するための吸気圧センサ54が設けられる。吸気圧センサ54は、この開示技術における吸気圧力検出手段の一例に相当する。エンジンブロック2には、クランクシャフト6の回転角度(クランク角度)をエンジン回転数NEとして検出するための回転数センサ55が設けられる。エンジンブロック2には、その内部を流れる冷却水の温度(冷却水温度)THWを検出するための水温センサ56が設けられる。水温センサ56は、この開示技術において、エンジン1の暖機状態を検出するための暖機状態検出手段の一例に相当する。また、触媒コンバータ24より上流の排気通路23には、排気中の酸素濃度Oxを検出するための酸素センサ57が設けられる。酸素センサ57は、エンジン1の空燃比を算出するための関係要素としての酸素濃度Oxを検出するためのこの開示技術の「空燃比関係要素検出手段」の一例に相当する。加えて、運転席のアクセルペダル19には、運転者による同ペダル19の操作量をアクセル開度ACCとして検出するためのアクセルセンサ58が設けられる。アクセル開度ACCは、エンジン1に関する運転者の出力要求を反映する。これら各種センサ等51~58は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段の一例にも相当する。
【0135】
ECU50は、各種センサ等51~58により検出等された吸気温度THA、吸気量Ga1、スロットル開度TA、吸気圧力PM、エンジン回転数NE、冷却水温度THW、酸素濃度Ox、アクセル開度ACCに基づき、空燃比制御を含む燃料噴射制御、点火時期制御、最終吸気量算出制御及びPCV弁33と電子スロットル装置18の協調制御を実行するようになっている。ここで、燃料噴射制御では、ECU50は、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ20を制御し、エンジン1へ燃料を供給するようになっている。エンジン1は、この燃料の供給を受けて駆動力を発生するようになっている。また、ECU50は、エンジン1の減速時には、所定の条件下で、インジェクタ20からの燃料噴射を停止してエンジン1に対する燃料の供給を遮断(燃料カット)するようになっている。点火時期制御では、ECU50は、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ22を動作させて点火プラグ21を制御するようになっている。最終吸気量算出制御では、ECU50は、吸気圧センサ54の検出値、PCV弁33の開度及び第1のエアフローメータ52の計測結果に基づいて最終的にエンジン1に導入される最終吸気量Gaを算出するようになっている。また、PCV弁33と電子スロットル装置18の協調制御では、ECU50は、PCV弁33及び電子スロットル装置18をエンジン1の運転状態に応じて協調的に制御するようになっている。この実施形態で、ECU50は、この開示技術における第1の算出手段及び制御手段の一例に相当する。
【0136】
この実施形態のBGV装置では、第1のエアフローメータ52を通過した外気(吸気)に加え、第1のエアフローメータ52を通過しない高温空気(新気)がエンジン1の燃焼室8に吸入される。そのため、第1のエアフローメータ52で計測される吸気量Ga1のみを最終吸気量Gaとして空燃比制御に使用したのでは、空燃比が悪化してしまう。そこで、この実施形態で、ECU50は、正確な最終吸気量Gaを求めるために、次のような「最終吸気量算出制御」を実行するようになっている。
【0137】
[最終吸気量算出制御について]
次に、ECU50が実行する最終吸気量算出制御について説明する。図2に、その制御の内容をフローチャートにより示す。
【0138】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ100で、ECU50は、吸気温センサ51、第1のエアフローメータ52、吸気圧センサ54及び水温センサ56の検出又は計測の結果に基づき、吸気温度THA、吸気量Ga1、吸気圧力PM及び冷却水温度THWをそれぞれ読み込む。また、ECU50は、PCV弁33の制御指令値に基づき、PCV弁33の開度(PCV開度)Tpcvを取り込む。
【0139】
次に、ステップ110で、ECU80は、PCV開度Tpcvと吸気圧力PMとに基づき基準PCV通過空気量Gapcvを算出する。ECU50は、例えば、図3に示すような基準PCV通過空気量マップを参照することにより、PCV開度Tpcvと吸気圧力PMに応じた基準PCV通過空気量Gapcvを求めることができる。この基準PCV通過空気量Gapcvは、高温空気経路部37を流れる高温空気量に相当する。このマップにおいて、基準PCV通過空気量Gapcvは、吸気負圧が大きくなるほど曲線的に増加収束し、かつ、PCV開度Tpcvが大きくなるほど増加するように設定される。
【0140】
次に、ステップ120で、ECU80は、吸気温度THAと冷却水温度THWに基づき高温空気の密度補正係数Khdを算出する。ECU50は、例えば、図4に示すような密度補正係数マップを参照することにより、冷却水温度THWに応じた密度補正係数Khdを求めることができる。このマップにおいて、密度補正係数Khdは、冷却水温度THWが「25℃」のときに「1.0」となり、「25℃」より低くなるほど「1.0」より増加し、「25℃」より高くなるほど「1.0」より減少するように設定される。
【0141】
次に、ステップ130で、ECU80は、次式(1)により、算出される基準PCV通過空気量Gapcvを、吸気温度THAと密度補正係数Khdにより補正することで、補正後の基準PCV通過空気量Gapcvに相当する補正後の高温空気量Ga2を算出する。
Ga2=Gapcv*[(273+25)/(273+THA)]*Khd ・・・式(1)
【0142】
そして、ステップ140で、ECU80は、次式(2)により、計測される吸気量Ga1と補正後の高温空気量Ga2との和により最終的にエンジン1に導入される最終吸気量Gaを算出する。その後、ECU50は処理をステップ100へ戻す。
Ga=Ga1+Ga2 ・・・式(2)
【0143】
上記最終吸気量算出制御によれば、ECU50は、検出される吸気圧力PMとPCV開度Tpcvとに基づいてヘッドカバー14へ導入される高温空気量Ga2を算出し、計測される吸気量Ga1と算出される高温空気量Ga2との和により最終的にエンジン1の燃焼室8に導入される最終吸気量Gaを算出するようになっている。
【0144】
加えて、上記最終吸気量算出制御によれば、ECU50は、検出される冷却水温度THW(エンジン1の暖機状態)に基づき密度補正係数Khdを算出し、算出される高温空気量Ga2を密度補正係数Khdに基づき補正し、計測される吸気量Ga1と補正される高温空気量Ga2との和により最終吸気量Gaを算出するようになっている。
【0145】
[PCV弁と電子スロットル装置の協調制御について]
次に、ECU50が実行するPCV弁33と電子スロットル装置18の協調制御について説明する。図5に、その制御の内容をフローチャートにより示す。
【0146】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ200で、ECU50は、吸気温センサ51、水温センサ56及びアクセルセンサ58の検出値に基づき吸気温度THA、冷却水温度THW及びアクセル開度ACCを取り込む。
【0147】
次に、ステップ210で、ECU50は、アクセル開度ACCと冷却水温度THWに応じた目標スロットル開度TTAを求める。ECU50は、例えば、図6に示すような目標スロットル開度マップを参照することにより、アクセル開度ACCと冷却水温度THWに応じた目標スロットル開度TTAを求めることができる。このマップにおいて、目標スロットル開度TTAは、アクセル開度ACCが全閉から全開へ向けて大きくなるほど、全閉から全開へ向けて大きくなり、かつ、「-40℃~80℃」の範囲の冷却水温度THWに応じて増減するように設定される。
【0148】
次に、ステップ220で、ECU50は、アクセル開度ACCと冷却水温度THWに応じた目標PCV開度TTpcvを算出する。ECU50は、例えば、図7に示すような目標PCV開度マップを参照することにより、アクセル開度ACCと冷却水温度THWに応じた目標PCV開度TTpcvを求めることができる。このマップにおいて、目標PCV開度TTpcvは、アクセル開度ACCが全閉から全開へ向けて大きくなるほど大きくなり、かつ、「-40℃~80℃」の範囲の冷却水温度THWに応じて増減するように設定される。
【0149】
次に、ステップ230で、ECU50は、ブローバイガスを還元するために、電子スロットル装置18を目標スロットル開度TTAに制御し、PCV弁33を目標PCV開度TTpcvに制御すると共に、電子スロットル装置18とPCV弁33を協調制御する。
【0150】
[協調制御の具体例1について]
ここで、上記ステップ230における電子スロットル装置18とPCV弁33の協調制御の具体例1について説明する。図8に、エンジン1の低温始動アイドル時の協調制御につき、各種パラメータの挙動をタイムチャートにより示す。図9に、HV走行時の協調制御につき、各種パラメータの挙動をタイムチャートにより示す。図8において、(A)はエンジン回転数NEの変化を、(B)はスロットル開度TAの変化を、(C)はPCV開度Tpcvの変化をそれぞれ示す。図9において、(A)はアクセル開度ACCの変化を、(B)はスロットル開度TAの変化を、(C)はPCV開度Tpcvの変化をそれぞれ示す。
【0151】
図8(A)~(C)において、破線は常温時の変化を示し、実線は極低温始動時の変化を示す。この具体例1では、PCV弁33によるブローバイガス換気率を最大限に引き出すことができる電子スロットル装置18との協調制御を実行するようになっている。HV走行時には、図9において、最終吸気量Gaを増加させるために、時刻t3で、電子スロットル装置18に開弁要求がある場合は、図9(B),(C)に示すように、時刻t3で、PCV弁33の開弁制御を先行させ、PCV弁33が全開となった後、時刻t4で、電子スロットル装置18を開弁制御するようになっている。一方、低温始動アイドル時には、図8に示すように、最終吸気量Gaを減少させるために、時刻t2で、電子スロットル装置18に閉弁要求がある場合は、図8(B),(C)に実線で示すように、電子スロットル装置18の閉弁制御を先行させ、電子スロットル装置18が全閉になった後、時刻t3で、PCV弁33を閉弁制御するようになっている。一方、HV走行時には、図9に示すように、最終吸気量Gaを減少させるために、時刻t6で、電子スロットル装置18に閉弁要求がある場合は、図9(B),(C)に示すように、電子スロットル装置18の閉弁制御を先行させ、電子スロットル装置18が全閉になった後、時刻t7で、PCV弁33を閉弁制御するようになっている。
【0152】
すなわち、この具体例1では、ECU50は、電子スロットル装置18の開閉制御に合わせてPCV弁33を開閉制御すると共に、電子スロットル装置18の開度を増加させるときは、PCV弁33の開度を電子スロットル装置18の開度よりも先に増加させ、電子スロットル装置18の開度を減少させるときは、電子スロットル装置18の開度をPCV弁33の開度よりも先に減少させるようになっている。
【0153】
[協調制御の具体例2について]
次に、上記ステップ230における電子スロットル装置18とPCV弁33の協調制御の具体例2について説明する。図10に、HV走行時の協調制御につき、各種パラメータの挙動をタイムチャートにより示す。図10において、(A)はアクセル開度ACCの変化を、(B)はスロットル開度TAの変化を、(C)はPCV開度Tpcvの変化をそれぞれ示す。図10(B),(C)において、破線は冷却水温度THW又はエンジンオイルの温度が低い場合(低水(油)温の場合)を示し、実線は冷却水温度THW又はエンジンオイルの温度が高い場合(高水(油)温の場合)を示す。
【0154】
図10に示すように、この具体例2では、上記した具体例1に対し、低外気温度及び低冷却水温度に応じてブローバイガス流量を制御し、完全暖機後は、ブローバイガス流量を通常(従来)の流量に制御し、ブローバイガス増加によるエンジンオイル消費増加を抑制するようになっている。
【0155】
すなわち、この具体例2では、ECU50は、図10(C)に示すように、検出される冷却水温度THWが低くなるほど、すなわち低水(油)温ほど高水(油)温よりもPCV開度Tpcvを増加させるように補正するようになっている。
【0156】
[協調制御の具体例3について]
次に、上記ステップ230における電子スロットル装置18とPCV弁33の協調制御の具体例3について説明する。図11に、HV走行時の協調制御につき、各種パラメータの挙動を図10に準ずるタイムチャートにより示す。
【0157】
図11に示すように、この具体例3では、冷却水温度THWが低いときは高いときに比べ、吸気量増加要求があった場合は、PCV弁33の開弁率が電子スロットル装置18の開弁率より高くなるように制御している。
【0158】
すなわち、この具体例3では、ECU50は、図11(B),(C)に時刻t1~t2,t3~t4に示すように、低水(油)温時に電子スロットル装置18の開度を増加させるときは、PCV弁33の開度を増加させると共に、PCV弁33の開弁率を電子スロットル装置18の開弁率よりも高くなるように設定している。
【0159】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、エンジン1で発生するブローバイガスは、ヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)に蓄積される。そして、その蓄積されたブローバイガスは、エンジン1の運転時にPCV弁33を開弁することにより、吸気通路15で発生する吸気負圧に引かれてBG通路32を介して吸気通路15へ流れ、エンジン1へ還元される。このとき、新気導入通路47に導入される新気は加熱手段35であるエンジン近傍部位23a及びシュラウド36により加熱され、高温空気としてヘッドカバー14及びクランクケース4へ導入され、この高温空気によりヘッドカバー14及びクランクケース4の中が換気されると共に暖機される。ここで、高温空気は、加熱手段35であるエンジン近傍部位23a及びシュラウド36からBG蓄積部であるヘッドカバー14まで高温空気経路部37を介して流れるが、高温空気経路部37を短縮するためにエンジン近傍部位23a及びシュラウド36がヘッドカバー14の近傍に配置される。従って、エンジン近傍部位23a及びシュラウド36により加熱された高温空気は速やかにヘッドカバー14へ導入されるので、その高温空気の温度低下が抑えられる。このため、ヘッドカバー14及びクランクケース4へ新気である高温空気を導入するために、ヘッドカバー14及びクランクケース4に流入する新気だけを効果的に加熱することでヘッドカバー14及びクランクケース4を効率良く昇温させることができ、ヘッドカバー14及びクランクケース4での凝縮水の発生を効果的に抑制することができる。また、この実施形態では、加熱された高温空気と外気との混合空気がヘッドカバー14等へ導入される従来例とは異なり、加熱された高温空気のみが新気として直接ヘッドカバー14及びクランクケース4に導入されるので、その意味でも高温空気の温度低下を抑えることができ、ヘッドカバー14等での凝縮水の発生を抑制することができる。
【0160】
この実施形態の構成によれば、加熱手段35であるエンジン近傍部位23a及びシュラウド36は、新気導入通路47の途中に設けられ、新気導入通路47は、エンジン近傍部位23a及びシュラウド36より下流に高温空気経路部37を含み、エンジン近傍部位23a及びシュラウド36により加熱される新気を高温空気として高温空気経路部37を介してヘッドカバー14及びクランクケース4へ導入するように構成される。このため、ヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)へ新気である高温空気を導入するために、高温空気通路等の配管の取り回し工数や部品点数を低減することができ、BGV装置を含むエンジンシステムの製造コストの増加を抑えることができる。
【0161】
この実施形態の構成によれば、加熱手段35により加熱される新気は高温空気として高温空気経路部37を介してヘッドカバー14に導入され、更に連通路2aを介してヘッドカバー14とクランクケース4との間を流れる。このため、ヘッドカバー14とクランクケース4をBG蓄積部とすることで上記と同等の効果を得ることができる。
【0162】
この実施形態の構成によれば、加熱手段35が排気通路23のエンジン近傍部位23aにより構成され、排気の熱により加熱される新気が高温空気として高温空気経路部37へ流れる。従って、新気を加熱するために専用の機器やエネルギーを別途設ける必要がない。このため、新気の加熱に要するコストを抑えることができる。
【0163】
この実施形態の構成によれば、新気を高温空気に加熱するための加熱手段35として、排気通路23のエンジン近傍部位23aを利用しているので、排気通路23からの放熱を有効利用することができ、比較的簡易な改造でヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)での凝縮水発生を抑制することができる。また、高温空気経路部37が短いので、高温空気をヘッドカバー14へ効率よく導くことができる。
【0164】
この実施形態の構成によれば、加熱手段35が排気通路23のエンジン近傍部位23aとそれを囲むシュラウド36により構成され、排気の熱により加熱される新気が高温空気としてシュラウド36により回収され、高温空気経路部37へ流れる。従って、排気の熱がシュラウド36により効率よく新気へ伝えられると共に、加熱された高温空気が効率よく高温空気経路部37へ流れる。このため、新気を効率よく加熱することができ、加熱した高温空気を効率よくヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)へ導入することができる。
【0165】
この実施形態の構成によれば、BG通路32にて、オイルセパレータ34(オイル除去手段)によりオイルが除去されたブローバイガスが吸気通路15へ流れる。このため、オイルによる吸気通路15の汚損を抑制することができる。
【0166】
この実施形態の構成によれば、高温空気経路部37にて、逆止弁39により高温空気の順流が担保されると共にブローバイガスの逆流が阻止される。このため、ヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)への高温空気の導入を担保しながら、ブローバイガスの外部への漏洩を防止することができる。
【0167】
この実施形態の構成によれば、ECU50により、エンジン1に導入される最終吸気量Gaが、算出される基準PCV通過空気量Gapcv(高温空気量Ga2)と計測される吸気量Ga1との和から適正に求められる。このため、最終吸気量Gaを使用することで、エンジン1の各種制御(例えば、空燃比制御等)の精度を向上させることができる。また、高温空気量を計測する手段を省略することができる。すなわち、基準PCV通過空気量Gapcvと吸気量Ga1の両方を考慮してエンジン1に導入される最終吸気量Gaを求めることができる。しかも、高温空気量Ga2を計測する手段が不要になるので、従前のエンジンシステムに対し、追加部品のコストを最小限に抑えることができる。
【0168】
この実施形態の構成によれば、算出される基準PCV通過空気量Gapcv(高温空気量Ga2)が高温空気の密度に基づいて補正されるので、より適正な基準PCV通過空気量Gapcv(高温空気量Ga2)が求められる。このため、最終吸気量Gaの算出精度を向上させることができ、延いてはエンジン1の各種制御の精度を更に向上させることができる。
【0169】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、電子スロットル装置18のスロットル開度TAを増加させるときは、PCV弁33の開度を電子スロットル装置18の開度よりも先に増加させ、電子スロットル装置18の開度を減少させるときは、電子スロットル装置18の開度をPCV弁33の開度よりも先に減少させる。従って、吸気通路15の吸気量Ga1が増加するときも減少するときも、その変化に遅れることなく、BG通路32をブローバイガスが吸気通路15へ流れ易くなる。このため、ヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)におけるブローバイガス換気率を最大限に引き出すことができる。すなわち、PCV弁33と電子スロットル装置18の協調制御により、ブローバイガス換気率を最大限に引き出すことができる。
【0170】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、電子スロットル装置18の開度を増加させるときは、PCV弁33の開度を増加させると共に、PCV弁33の開弁率を電子スロットル装置18の開弁率よりも高くする。従って、吸気通路15の吸気量Ga1は増加するが、その増加に遅れることなく、BG通路32をブローバイガスが吸気通路15へ流れ易くなる。この意味でも、ヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)におけるブローバイガス換気率を最大限に引き出すことができる。
【0171】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、エンジン1が完全暖機となる場合は、未暖機となる場合よりもPCV弁33の開度を減少させるように補正するので、吸気通路15へ流れるブローバイガスの流量は、エンジン1が完全暖機となる場合に未暖機となる場合よりも少なくなる。このため、凝縮水の発生が少なくなる完全暖機後には、ブローバイガス中のオイルミストは増加するが、ブローバイガス流量が少なくなる分だけ吸気通路15へ流れるオイルミストを抑制することができる。すなわち、この実施形態の構成によれば、吸気温度THA及び冷却水温度THWが低くなるほど、ブローバイガス流量を増やし、完全暖機後は、ブローバイガス流量を通常流量に戻してブローバイガス流量増加によるオイル消費増加を抑制することができる。また、ブローバイガスには、クランクケース4の中のオイルミストが含まれるので、クランクケース4に新気を導入しない換気要求無し条件下では、オイル消費を抑制することができる。更に、オイルミストは高温ほど増加する(高温ほど粘性が低下し飛散し易くなる)ので、凝縮水の発生が少なくなる冷却水温度THWの高温時ほど、ブローバイガスの減少を制御することができる。
【0172】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0173】
この実施形態では、エンジンシステムと最終吸気量算出制御の内容の点で第1実施形態と構成が異なる。すなわち、図12に、この実施形態のエンジンシステムを概略構成図により示す。この実施形態では、図12に示すように、高温空気経路部37において、エアフィルタ38の直下流に、高温空気経路部37を流れてヘッドカバー14へ導入される高温空気量Ga2を計測するための第2のエアフローメータ59が設けられる。ECU50は、各種センサ等51~59により検出等される吸気温度THA、吸気量Ga1、スロットル開度TA、吸気圧力PM、エンジン回転数NE、冷却水温度THW、酸素濃度Ox、アクセル開度ACC及び高温空気量Ga2に基づき、空燃比制御を含む燃料噴射制御、点火時期制御、最終吸気量算出制御及びPCV弁と電子スロットル装置の協調制御を実行するようになっている。この実施形態では、第2のエアフローメータ59は、この開示技術における高温空気量計測手段の一例に相当する。また、この実施形態では、ECU50は、この開示技術における第2の算出手段と制御手段の一例に相当する。
【0174】
[最終吸気量算出制御について]
ECU50が実行する最終吸気量算出制御について説明する。図13に、その制御の内容をフローチャートにより示す。
【0175】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ300で、ECU50は、第1のエアフローメータ52及び第2のエアフローメータ59の計測結果に基づき、吸気量Ga1及び高温空気量Ga2をそれぞれ読み込む。
【0176】
そして、ステップ310で、ECU80は、次式(3)により、それぞれ計測される吸気量Ga1と高温空気量Ga2との和により最終的にエンジン1に導入される最終吸気量Gaを算出する。その後、ECU50は処理をステップ300へ戻す。
Ga=Ga1+Ga2 ・・・式(3)
【0177】
上記最終吸気量算出制御によれば、ECU50は、計測される吸気量Ga1と計測される高温空気量Ga2との和により最終的にエンジン1の燃焼室8に導入される最終吸気量Gaを算出するようになっている。
【0178】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、第1実施形態と対し次のような作用及び効果が得られる。すなわち、ECU50により、エンジン1に導入される最終吸気量Gaが、計測される高温空気量Ga2と計測される吸気量Ga1との和から適正に求められる。このため、最終吸気量Gaを使用することで、エンジン1の各種制御(例えば、空燃比制御等)の精度を向上させることができる。また、第2のエアフローメータ59により高温空気量Ga2を計測する分だけ最終吸気量Gaの算出精度を向上させることができる。
【0179】
この実施形態でも、高温空気量Ga2と吸気量Ga1の両方を考慮してエンジン1に導入される最終吸気量Gaを求めることができる。また、高温空気量Ga2を計測するために第2のエアフローメータ59を使用するので、その分だけ部品コストが増加するが、高温空気量Ga2を間接的に算出して求める第1実施形態の場合よりも最終吸気量Gaをより高精度に求めることができる。
【0180】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0181】
この実施形態では、BGV装置の構成の点で前記各実施形態と異なる。前記各実施形態では、シュラウド36からヘッドカバー14までの高温空気経路部37の長さが短いので、必要以上に温度の高い高温空気がヘッドカバー14の中に流入し、その中のエンジンオイルに焼き(硬化)が生じたり、エアフィルタ38等に熱害が生じたりするおそれがあった。熱害を避けるために高温空気経路部37における高温空気の流量を絞ることも考えられるが、その流量を絞ると、逆に高温空気の温度が上昇してしまう。そこで、この実施形態では、その熱害の対策を講じた。
【0182】
すなわち、図14には、この実施形態に係り、図1又は図12に示すのと同様の構成において、高温空気経路部37とシュラウド36との接続部近傍を概略的に断面図により示す。この実施形態で、高温空気経路部37には、高温空気を冷却するために高温空気経路部37に新気(外気)を取り込むための新気取り込み孔37aが設けられる。この実施形態では、二つの新気取り込み孔37aが設けられるが、一つであっても、三つ以上であってもよい。新気取り込み孔37aの内径は、高温空気経路部37における高温空気の最大流量に合わせて適宜設定することができる。
【0183】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記各実施形態の作用及び効果に加え、高温空気経路部37を流れる高温空気が、新気取り込み孔37aから取り込まれる新気により冷却される。このため、過剰に温度の高い高温空気がヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)へ導入されることを防止することができる。この結果、ヘッドカバー14及びクランクケース4の中での、過剰に温度の高い高温空気によるオイル焼き(硬化)やエアフィルタ38の溶損などの熱害を抑制することができる。
【0184】
[第3実施形態の変形例について]
第3実施形態では、新気取り込み孔37aが常に開いているので、極低温時にも新気が高温空気経路部37に取り込まれ、高温空気の温度が不必要にも低下してしまう。そこで、この変形例では、それを対策した。
【0185】
すなわち、図15図16には、この変形例に係り、高温空気経路部37とシュラウド36との接続部近傍を図14に準ずる断面図により示す。図15図16に示すように、この変形例では、高温空気経路部37に新気取り込み孔37aが一つ設けられ、その孔37aには、高温空気経路部37を流れる高温空気が所定温度以上となるとき図16に示すように開弁し、所定温度未満となるとき図15に示すように閉弁する温度感応式の開閉弁40が設けられる。この開閉弁40は、例えば、バイメタル、形状記憶合金又はサーモワックス等の板材から形成され、その一端部が高温空気経路部37に固定され、その反対側の開放端部が揺動可能となっている。
【0186】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの変形例のエンジンシステムの構成によれば、第3実施形態の作用及び効果に加え、高温空気が所定温度以上となるときは開閉弁40が開弁し、新気取り込み孔37aから取り込まれる新気により高温空気が冷却される。一方、高温空気が所定温度未満となるときは開閉弁40が閉弁し、高温空気が不用意に新気により冷却されない。このため、高温空気が必要以上に高温になるときだけ開閉弁40を開弁して新気を取り込み、高温空気を適温以下にすることができる。すなわち、BG蓄積部へ導入される高温空気を適温以下に保つことができる。
【0187】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0188】
この実施形態では、BGV装置の構成の点で前記各実施形態と異なる。図17に、この実施形態のエンジンシステムを概略構成図により示す。この実施形態では、特に加熱手段35の構成の点で前記各実施形態と異なる。すなわち、加熱手段35は、図17に示すように、排気通路23のエンジン近傍部位23aとシュラウド36に加え、エンジン近傍部位23aにて排気から受熱する熱交換器41を更に含む。この実施形態で、熱交換器41は、シュラウド36の上側面にて伝熱可能に取り付けられる。周知のように、熱交換器41は、その内部に新気が流れる流路と、その流路の中に配置される多数のフィンとを含み、それらフィンにシュラウド36から熱が伝わり、流路を流れる新気を輻射熱により効率的に加熱するように構成される。
【0189】
前記各実施形態のBGV装置では、エアクリーナ16及び第1のエアフローメータ52を通過した外気(吸気)に加え、エアクリーナ16及び第1のエアフローメータ52を通過しない高温空気(新気)が高温空気経路部37を介してBG蓄積部(ヘッドカバー14及びクランクケース4の内部)へ導入され、ブローバイガスと共にBG通路32を介して吸気通路15へ流れ、エンジン1の燃焼室8に導入される。そのため、前記各実施形態では、高温空気経路部37にエアフィルタ38を設けると共に、高温空気経路部37を介してクランクケース4へ導入される高温空気量を算出又は第2のエアフローメータ59により計測し、算出又は計測される高温空気量を、第1のエアフローメータ52で計測される吸気量Ga1に加算することで、燃焼室8に導入される最終吸気量Gaを求めるようになっていた。
【0190】
これに対し、この実施形態では、高温空気経路部37におけるエアフィルタ38、逆止弁39及び第2のエアフローメータ59を省略する代わりに、新気導入通路47を次のように構成した。すなわち、熱交換器41は、新気の入口と出口を含み、その出口に高温空気経路部37の入口が接続される。この実施形態のBGV装置は、熱交換器41へ新気を案内するための新気案内経路部42を更に含む。新気案内経路部42は、入口42aと出口42bを含み、その入口42aが、第1のエアフローメータ52より下流の吸気通路15に接続される。これにより、新気案内経路部42が、第1のエアフローメータ52を通過した外気を新気として熱交換器41へ案内するように構成される。新気案内経路部42の出口42bは、熱交換器41の入口に接続される。このように、この実施形態では、新気導入通路47が、新気案内経路部42と高温空気経路部37とから構成され、両経路部42,37の間に加熱手段35を構成するエンジン近傍部位23a、シュラウド36及び熱交換器41が設けられる。
【0191】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記各実施形態に対し、加熱手段35が排気通路23のエンジン近傍部位23aと、シュラウド36と、エンジン近傍部位23aにて排気から受熱する熱交換器41とにより構成され、熱交換器41により加熱される新気が高温空気として高温空気経路部37へ流れる。このため、新気を更に効率よく加熱することができ、加熱した高温空気をヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)へ導入することができる。
【0192】
この実施形態の構成によれば、新気導入通路47は、第1のエアフローメータ52を通過した外気を新気として熱交換器41(加熱手段35)へ導くように吸気通路15に接続される。従って、ヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)へ導入される高温空気量とエンジン1の燃焼室8へ導入される吸気量の両方が、第1のエアフローメータ52により計測される吸気量Ga1に含まれる。このため、第1のエアフローメータ52により計測される吸気量Ga1を、最終的にエンジン1に導入される最終吸気量Gaとしてそのままエンジン1の各種制御に使用することができる。
【0193】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0194】
この実施形態では、BGV装置の構成の点で第4各実施形態と異なる。図18に、この実施形態のエンジンシステムを概略構成図により示す。第4実施形態では、エンジン1の運転領域が、吸気通路15にて吸気負圧が発生しない領域になると、PCV弁33を開弁制御してもBG通路32にてブローバイガスの流を確保できない。そこで、この実施形態では、図18に示すように、BG通路32に電動式のPCVポンプ43を設ける。そして、ECU50は、エンジン1の運転領域が、吸気通路15で吸気負圧が発生しない領域になる場合に、PCVポンプ43を駆動制御してBG通路32にてブローバイガスの流れを確保するようにしている。
【0195】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、第4実施形態に対し次のような作用及び効果が得られる。すなわち、エンジン1の運転領域が吸気通路15で吸気負圧を発生させない領域になっても、PCV弁33を開弁し、PCVポンプ43を駆動させることにより、ヘッドカバー14及びクランクケース4(BG蓄積部)からBG通路32を介して吸気通路15へブローバイガスが流れると共に、ヘッドカバー14及びクランクケース4に高温空気が導入される。このため、エンジン1の運転領域が吸気通路15で吸気負圧を発生させない領域になっても、PCVポンプ43によりブローバイガスをエンジン1へ還元することができると共に、高温空気によりヘッドカバー14及びクランクケース4の換気と暖機を行うことができる。
【0196】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0197】
この実施形態では、BGV装置の構成の点で前記第4及び第5の実施形態と異なる。図19に、この実施形態のエンジンシステムを概略構成図により示す。前記第4及び第5の実施形態では、熱交換器41、シュラウド36及び高温空気経路部37等の高温部品が排気通路23のエンジン近傍部位23aの上側面に配置され、エンコパに露出していた。そのため、それら高温部品が他の部品と干渉し、熱害を発生させるおそれがあった。そのため、高温部品を覆うカバーを設けるなどの熱害対策が必要になった。
【0198】
そこで、この実施形態では、図19に示すように、熱交換器41及び高温空気経路部37を、エンジン近傍部位23a(排気マニホールド)とエンジンブロック2との間のスペースに収容することで、熱害対策を緩和した。ここで、高温空気経路部37の入口は熱交換器41の出口に接続され、高温空気経路部37の出口はクランクケース4に接続される。この場合、熱交換器41及び高温空気経路部37を一つのブロックで構成して排気通路23に設置することもできる。熱交換器41を排気マニホールドに設置した場合、振動吸収対策が必要になるので、高温空気経路部37を蛇腹配管で構成することもできる。
【0199】
また、この実施形態では、高温空気経路部37をクランクケース4に接続し、高温空気をクランクケース4の内部に導入して換気するようにしたので、ブローバイガスはヘッドカバー14からBG通路32を介して吸気通路15へ流すように構成した。すなわち、この実施形態では、図19に示すように、高温空気(新気)がクランクケース4の中に導入されるので、クランクケース4の中に蓄積されたブローバイガスは、高温空気による換気により、連通路2aを介してヘッドカバー14へ流れ、BG通路32を介して吸気通路15へ流れる。そこで、ヘッドカバー14には、BG通路32の入口がPCV弁33を介して接続され、BG通路32の出口が吸気通路15に接続される。そして、エンジン1の運転時にPCV弁33が開弁することで、ヘッドカバー14の中のブローバイガスが、BG通路32を介して吸気通路15へ流れ、エンジン1の燃焼室8へ導入される。
【0200】
図20には、エンジン1のヘッドカバー14とエンジンブロック2の一部を断面図により示す。この実施形態では、ブローバイガスがヘッドカバー14からBG通路32へ流れるので、ブローバイガスの流路であるヘッドカバー14の中には、ブローバイガスに含まれるオイルを除去するためのオイル分離構造44が設けられる。この実施形態では、図20に示すように、エンジンブロック2には、ピストン3を挟んで2系統の連通路2aが設けられる。図20において、左側の連通路2a(L)は、ブローバイガスをクランクケース4からヘッドカバー14へ流すガス抜き機能を有し、その連通路2a(L)の上端には、ヘッドカバー14の中で上方へ突出する延長管45が設けられる。一方、図20において、右側の連通路2a(R)は、ブローバイガスの中からオイルを除去するオイル落とし機能を有し、その連通路2a(R)の上端は、左側の連通路2a(L)の上端と同じ高さに位置し、そこには延長管45は設けられていない。右側の連通路2a(R)へ落とされたオイルは、オイルパン5に集められる。すなわち、図20に示すように、左側の連通路2a(L)に設けられた延長管45の上端と、右側の連通路2a(R)の上端との間には、高低差ΔHが設けられる。この高低差ΔHにより、左側の連通路2a(L)と右側の連通路2a(R)との間で機能分けがなされ、ブローバイガス中のオイルを除去できるようになっている。
【0201】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、第4及び第5の実施形態とは異なり、熱交換器41及び高温空気経路部37を、エンジン近傍部位23a(排気マニホールド)とエンジンブロック2との間のスペースに収容した。このため、前記第4及び第5の実施形態に対し、エンコパ内の他の部品の熱害対策を緩和することができる。
【0202】
この実施形態の構成によれば、ヘッドカバー14(BG蓄積部)にて、オイル分離構造44(オイル除去手段)によりオイルが除去されたブローバイガスが吸気通路15へ流れる。このため、オイルによる吸気通路15の汚損を抑制することができる。
【0203】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0204】
この実施形態では、加熱手段35の構成の点で前記各実施形態と異なる。図21に、この実施形態のエンジンシステムを概略構成図により示す。すなわち、この実施形態では、図21に示すように、加熱手段35は、エンジン近傍部位23a(排気マニホールド)、シュラウド36及び熱交換器41ではなく、新気を電気的に加熱する電気ヒータ46により構成される。電気ヒータ46は、高温空気経路部37に導入される新気を、電気的発熱により加熱するように構成される。電気ヒータ46は、ヘッドカバー14までの高温空気経路部37を短縮するためにヘッドカバー14の近傍に配置され、高温空気経路部37を介してヘッドカバー14に接続される。そして、吸気通路15から新気案内経路部42へ導入される新気は、電気ヒータ46により加熱され、高温空気として高温空気経路部37を介してヘッドカバー14へ導入されるように構成される。新気案内経路部42の入口42aは、第1のエアフローメータ52より下流にて吸気通路15に接続される。
【0205】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記各実施形態に対し、加熱手段35が新気を電気的に加熱する電気ヒータ46により構成され、電気ヒータ46の発熱により加熱される新気が高温空気として高温空気経路部37へ流れる。従って、必要に応じて電気ヒータ46を動作させることにより新気を加熱することが可能となる。このため、新気を必要に応じて積極的に加熱することができる。
【0206】
この実施形態では、加熱手段35が電気ヒータ46で構成され、ヘッドカバー14の近傍に配置されることから、電気ヒータ46により効果的に加熱した高温空気を効率よくヘッドカバー14及びクランクケース4の中へ導入することができ、ブローバイガスの換気率を向上させることができる。これにより、ヘッドカバー14及びクランクケース4の中での凝縮水の発生を抑制することができる。また、この実施形態では、実質的には、新気導入通路47の途中に電気ヒータ46を設け、同通路47の一部を高温空気経路部37として使用するだけなので、従前のエンジンシステムに対し変更規模が小さく構成部品点数が少ないことから、HVへの搭載性が勝る。
【0207】
<第8実施形態>
次に、第8実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0208】
[エンジンシステムについて]
この実施形態では、新気導入通路に関する構成の点で前記第1実施形態と異なる。図22に、この実施形態のエンジンシステムを概略構成図により示す。第1実施形態では、図1に示すように、ヘッドカバー14及びクランクケース4(ブローバイガス蓄積部)を換気するために、第1のエアフローメータ52(吸気量計測手段)で計測されない新気がヘッドカバー14等へ導入されていた。そのため、PCV弁33(ブローバイガス調節弁)を通過するブローバイガス流量(ヘッドカバー14等へ導入される新気量とほぼ等しい)を、PCV弁33の開度と吸気圧力PMの差圧との積により求めて補正することにより対応していた。この場合、BG通路32が詰まることで、ヘッドカバー14等へ導入される新気量の低下が予想される。そこで、この実施形態では、エンジンシステムを次のように構成することで上記課題に対策するようにした。
【0209】
すなわち、この実施形態では、図22に示すように、エアフィルタ38より下流の新気導入通路47には、同通路47における新気の流れを遮断するための電動式の第1遮断弁71が設けられる。また、電子スロットル装置18より上流の吸気通路15からヘッドカバー14へ新気を導入するための第2新気導入通路72が設けられる。第2新気導入通路72と吸気通路15との接続部73は、第1のエアフローメータ52より下流の吸気通路15に設けられる。この実施形態では、新気導入通路47の第1通路径Φ1は、第2新気導入通路72の第2通路径Φ2よりも大きく設定される。ここで、第2新気導入通路72が常に開放していては、同通路72を流れる新気によって、低温時にも新気導入通路47を流れる加熱された新気の量が減少してしまう。そこで、第2新気導入通路72における新気の流れを任意に遮断するための電動式の第2遮断弁74が設けられる。更に、この実施形態では、クランクケース4には、クランクケース4の中の圧力をクランクケース内圧CPMとして検出するためのクランクケース内圧センサ60が設けられる。この内圧センサ60は、クランクケース内圧CPMを検出し、その検出値をECU50へ出力するようになっている。クランクケース内圧CPMは、この開示技術の「蓄積部内圧」の一例に相当し、クランクケース内圧センサ60は、この開示技術の「蓄積部内圧検出手段」の一例に相当する。
【0210】
第1遮断弁71及び第2遮断弁74は、ECU50に接続される。ECU50は、エンジン1の運転状態に基づいて第1遮断弁71、第2遮断弁74及びPCV弁33を制御するようになっている。また、ECU50は、検出されるクランクケース内圧CPMに基づきPCV弁33の故障を診断するようになっている。すなわち、この実施形態のECU50は、「第1故障診断制御」を実行するようになっている。ECU50は、この開示技術における「第4制御手段」の一例に相当する。
【0211】
[第1故障診断制御について]
次に、ECU50が実行する第1故障診断制御について説明する。図23に、この制御の内容をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、ECU50は、ステップ400で、第1遮断弁71を開弁及び第2遮断弁74を閉弁に制御中か否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ410へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、他の故障を判定又は本故障判定を終了する。
【0212】
ステップ410では、ECU50は、各種センサ等51~60の検出値に基づき、エンジン回転数NE、吸気圧力PM、スロットル開度TAの変化量(スロットル開度変化量)ΔTA、クランクケース内圧CPM、PCV弁33の開度(PCV開度)Tpcv、空燃比補正値Kafを取り込む。
【0213】
ここで、ECU50は、スロットル開度変化量ΔTAは、前回取り込んだスロットル開度TAと今回取り込んだスロットル開度TAとの差から求めることができる。更に、ECU50は、エンジン1の空燃比を補正するために、空燃比補正値Kafを、算出される最終吸気量Gaに基づいて算出するようになっている。
【0214】
次に、ステップ420で、ECU50は、第1遮断弁71は正常か否かを判断する。ECU50は、別途実行する他の故障診断制御(後述する第3又は第4の故障診断制御)により第1遮断弁71の故障を診断するようになっている。ECU50は、このステップ420の判断結果が肯定となる場合は処理を430へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ510へ移行する。
【0215】
ステップ430では、ECU50は、スロットル開度変化量ΔTAの絶対値が所定の第1基準値A1より小さいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、エンジン1が定常運転であるとして処理を440へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、エンジン1が過渡運転であるとして処理をステップ530へ移行する。
【0216】
ステップ440では、ECU50は、吸気圧力PMが所定の第2基準値B1より小さいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、吸気圧力PMが高負圧であるとして処理を450へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、吸気圧力PMが低負圧又は大気圧であるとして処理をステップ530へ移行する。
【0217】
ステップ450では、ECU50は、PCV開度Tpcvが所定の第3基準値C1より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理を460へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ530へ移行する。
【0218】
ステップ460では、ECU50は、PCV弁33を全閉に制御する。
【0219】
次に、ステップ470で、ECU50は、クランクケース内圧CPMを再度取り込む。
【0220】
次に、ステップ480で、ECU50は、今回取り込んだクランクケース内圧CPM(i)と前回取り込んだクランクケース内圧CPM(i-1)との差圧が所定の第4基準値D1より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、クランクケース内圧CPMの増加量が第4基準値D1より大きいとして処理を490へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、同内圧CPMの増加量が第4基準値D1より小さいとして処理をステップ540へ移行する。ここで、第4基準値D1は、この開示技術の「第5所定値」の一例に相当する。
【0221】
ステップ490では、ECU50は、PCV弁33を正常判定する。
【0222】
次に、ステップ500で、ECU50は、PCV弁33を、別途算出される目標PCV開度TTpcvに制御して、PCV弁故障判定を完了する。
【0223】
一方、ステップ480から移行してステップ540では、ECU50は、クランクケース内圧CPMが所定のマイナス第5基準値E1より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、クランクケース内圧CPMが低負圧又は大気圧であるとして処理を550へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、クランクケース内圧CPMが高負圧であるとして処理をステップ560へ移行する。ここで、マイナス第5基準値E1は、この開示技術の「第6所定値」の一例に相当する。
【0224】
ステップ550では、ECU50は、PCV弁33を閉故障判定した後、処理をステップ500へ移行する。
【0225】
一方、ステップ560では、ECU50は、PCV弁33を開故障判定した後、処理をステップ500へ移行する。
【0226】
一方、ステップ420から移行してステップ510では、ECU50は、第1遮断弁71が開故障か否かを判断する。ECU50は、別途実行する他の故障診断制御(後述する第3又は第4の故障診断制御)により第1遮断弁71の開故障を判定するようになっている。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理を430へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ520へ移行する。
【0227】
ステップ520では、ECU50は、PCV弁33を全閉制御又は第2遮断弁74を開弁制御した後、他の故障を判定又は本故障判定を終了する。ECU50は、PCV弁33を全閉制御すると共に第2遮断弁74を開弁制御することもできる。
【0228】
一方、ステップ430~450から移行してステップ530では、ECU50は、判定を保留した後、処理をステップ400へ戻す。
【0229】
上記した第1故障診断制御によれば、ECU50(第4制御手段)は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、(1)PCV弁33(ブローバイガス調節弁)を開弁から閉弁へ切り替えた前後で検出されるクランクケース内圧CPM(蓄積部内圧)の増加量が第4基準値D1(第5所定値)より小さい場合、(2)閉弁した後のクランクケース内圧CPMがマイナス第5基準値E1(第6所定値)より大きい低負圧の場合、又は(3)閉弁した後のクランクケース内圧CPMがマイナス第5基準値E1より小さい高負圧の場合に、PCV弁33を故障と判定するようになっている。
【0230】
より詳しくは、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、(1)PCV弁33(ブローバイガス調節弁)を開弁から閉弁へ切り替えた前後で検出されるクランクケース内圧CPM(蓄積部内圧)の増加量が第4基準値D1(第5所定値)より大きい場合にPCV弁33が正常と判定し、(2)検出されるクランクケース内圧CPMの増加量が第4基準値D1より小さい場合はPCV弁33が閉状態で故障した閉故障と判定し、更に(3)検出されるクランクケース内圧CPMがマイナス第5基準値E1(第6所定値)より大きい低負圧の場合はPCV弁33が閉故障と判定し、(4)クランクケース内圧CPMがマイナス第5基準値E1より小さい高負圧の場合はPCV弁33が開状態で故障した開故障と判定するようになっている。
【0231】
また、上記した第1故障診断制御によれば、ECU50は、PCV弁33の故障を判定する前に、第1遮断弁71が閉状態で故障した閉故障と判定した場合は、PCV弁33を閉弁制御すること及び第2遮断弁74を開弁制御することの少なくとも一方を実行するようになっている。
【0232】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、新気導入通路47における新気の流れを第1遮断弁71で遮断することにより、加熱手段35により加熱された高温空気のヘッドカバー14及びクランクケース4(ブローバイガス蓄積部)への導入が止まる。このとき、第1のエアフローメータ52(吸気量計測手段)により計測されて吸気通路15へ流れる吸気の一部が新気とし第2新気導入通路72を介してヘッドカバー14等へ導入される。このため、高温空気によりヘッドカバー14等の内部を昇温させてから、第1遮断弁71により高温空気の流れを遮断することで、第1のエアフローメータ52により計測された新気のみによりヘッドカバー14等を換気することができ、第1のエアフローメータ52により計測された最終吸気量Gaをエンジン1の空燃比制御に有効に反映させることができ、空燃比制御の精度を確保することができる。
【0233】
この実施形態の構成によれば、第2新気導入通路72における新気の流れを第2遮断弁74で遮断することにより、ヘッドカバー14等への新気の導入が止まる。このため、ヘッドカバー14等への、加熱されない新気の導入を第2遮断弁74により任意に止めることができ、必要に応じてヘッドカバー14等へ新気を導入することができる。
【0234】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、検出されるクランクケース内圧CPMに基づき、PCV弁33が正常か、閉故障か又は開故障かを判定する。このため、PCV弁33が故障か正常かを診断することができ、PCV33を適正に制御し、PCV33の故障に早期に対処することができる。
【0235】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、PCV弁33の故障を判定する前に、第1遮断弁71が閉故障と判定した場合は、PCV弁33を閉弁制御すること及び第2遮断弁74を開弁制御することの少なくとも一方を実行する。従って、第1遮断弁71が閉故障となっている場合には、ブローバイガスの吸気通路15への還流が止められること及びヘッドカバー14等へ、加熱されていない新気が導入されることの少なくと一方が実行される。このため、ヘッドカバー14等へ高温空気が導入されない場合に、ヘッドカバー14等の中のブローバイガスの消費を抑え、ヘッドカバー14等の中を加熱されない新気により換気することができる。
【0236】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、新気導入通路47の第1通路径Φ1が第2新気導入通路72の第2通路径Φ2よりも大きく設定されるので、第1遮断弁71と第2遮断弁74の両方が開弁しているときは、新気導入通路47を高温空気が流れ、第2新気導入通路72を加熱されない新気が流れる。このため、第1遮断弁71と第2遮断弁74の両方が開弁しているときは、加熱されない新気よりも高温空気を多くヘッドカバー14等(ブローバイガス蓄積部)へ導入することができ、ヘッドカバー14等を昇温させることができる。
【0237】
<第9実施形態>
次に、第9実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0238】
この実施形態では、故障診断制御の内容の点で前記第8実施形態と異なる。この実施形態では、PCV弁33の故障を、クランクケース内圧CPMではなく、空燃比補正値Kafに基づいて診断するように構成される。図24に、その「第2故障診断制御」の内容をフローチャートに示す。図24では、図23のステップ460の代わりにステップ465が、ステップ470の代わりにステップ600が、ステップ480の代わりにステップ610が、ステップ540の代わりにステップ620が設けられる。図24のフローチャートにおいて、その他のステップの内容は図23のフローチャートのそれと同じである。ここで、ECU50は、エンジン1の運転状態及び空燃比補正値Kafに基づいてPCV弁33の故障を診断するための「第2故障診断制御」を実行するようになっている。
【0239】
[第2故障診断制御について]
図24に示すフローチャートのルーチンにおいて、ECU50は、ステップ465で、PCV弁33を全閉制御するが、燃料噴射量制御における基本燃料噴射量は、インジェクタ20を開状態のままに制御する。
【0240】
次に、ステップ600で、ECU50は、空燃比補正値Kafを再度取り込む。
【0241】
次に、ステップ610で、ECU50は、今回取り込んだ空燃比補正値Kaf(i)と前回取り込んだ空燃比補正値Kaf(i-1)との差が所定のマイナス第6基準値F1より小さいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、燃料噴射制御につき燃料噴射量を減量補正するものとして処理を490へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、燃料噴射量に補正の変動がないとして処理をステップ620へ移行する。ここで、マイナス第6基準値F1は、この開示技術の「第7所定値」の一例に相当する。
【0242】
そして、ステップ610から移行してステップ620では、空燃比補正値Kafが所定の第7基準値G1より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、空燃比補正値Kafが「1.0」近傍であるとして処理を560へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、空燃比補正値Kafが小さい(燃料噴射量の減量補正が大きい)として処理をステップ550へ移行する。ここで、第7基準値G1は、この開示技術の「第8所定値」の一例に相当する。
【0243】
上記した第2故障診断制御によれば、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、(1)PCV弁33(ブローバイガス調節弁)を開弁から閉弁へ切り替えた前後で算出される空燃比補正値の変化、又は(2)PCV弁33が閉弁した後の空燃比補正値に基づいてPCV弁33の故障を判定するようになっている。この実施形態のECU50は、この開示技術の「第5制御手段」の一例に相当する。
【0244】
より詳しくは、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、(1)PCV弁33を開弁から閉弁へ切り替えた前後で算出される空燃比補正値KLafの差がマイナス第6基準値F1(第7所定値)より小さい場合にPCV弁33が正常と判定し、(2)空燃比補正値Kafの差がマイナス第6基準値F1より大きい場合にPCV弁33が故障と判定し、更に(3)PCV弁33が閉弁した後の空燃比補正値Kafが第7基準値G1(第8所定値)より小さい場合にPCV弁33が閉故障と判定し、(4)空燃比補正値Kafが第7基準値G1より大きい場合にPCV弁33が開故障と判定するようになっている。
【0245】
また、上記した第1故障診断制御によれば、ECU50は、PCV弁33の故障を判定する前に、第1遮断弁71が閉状態で故障した閉故障と判定した場合は、PCV弁33を閉弁制御すること及び第2遮断弁74を開弁制御することの少なくとも一方を実行するようになっている。
【0246】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記第8実施形態と異なり次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、算出される空燃比補正値Kafに基づき、PCV弁33が正常か、閉故障か又は開故障かを判定する。このため、PCV弁33が故障か正常かを診断することができ、PCV弁33を適正に制御し、PCV弁33の故障に早期に対処することができる。
【0247】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、PCV弁33の故障を判定する前に、第1遮断弁71が閉状態で故障した閉故障と判定した場合は、PCV弁33を閉弁制御すること及び第2遮断弁74を開弁制御することの少なくとも一方を実行する。従って、第1遮断弁71が閉故障となっている場合には、ブローバイガスの吸気通路15への還流が止められること及びヘッドカバー14等へ、加熱されていない新気が導入されることの少なくとも一方が実行される。このため、ヘッドカバー14等へ高温空気が導入されない場合に、ヘッドカバー14等の中のブローバイガスの消費を抑え、ヘッドカバー14等の中を加熱されない新気により換気することができる。
【0248】
<第10実施形態>
次に、第10実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0249】
この実施形態では、BGV装置と故障診断制御の内容の点で前記第8及び第9の実施形態と異なる。この実施形態では、図22に示すBGV装置において、BG通路32を流れるブローバイガス流量を調節するために、電動式のPCV弁33ではなく、BG通路32に作用するブローバイガスや吸気圧力に感応して開閉する圧力感応式のPCV弁33Mが設けられる。すなわち、この実施形態では、ECU50は、PCV弁33Mの開閉を制御しないようになっている。
【0250】
また、この実施形態では、PCV弁33Mの故障ではなく、第1遮断弁71の故障をクランクケース内圧CPMに基づいて診断するように構成される。図25に、その「第3故障診断制御」の内容をフローチャートに示す。図25では、図23のステップ420の代わりにステップ700が設けられ、ステップ460の代わりにステップ710が、ステップ480~ステップ560の代わりに、ステップ720~ステップ760が設けられる。図25のフローチャートにおいて、その他のステップの内容は図23のフローチャートのそれと同じである。ここで、ECU50は、エンジン1の運転状態及びクランクケース内圧CPMに基づいて第1遮断弁71の故障を診断するために「第3故障診断制御」を実行するようになっている。
【0251】
[第3故障診断制御について]
図25に示すフローチャートのルーチンにおいて、ECU50は、ステップ700で、クランクケース内圧CPMが所定のマイナス第8基準値H1より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、クランクケース内圧CPMが低負圧であるとして処理をステップ430へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、クランクケース内圧CPMが高負圧であるとして処理をステップ760へ移行する。ここで、マイナス第8基準値H1は、この開示技術の「第1所定値」の一例に相当する。
【0252】
ステップ700からステップ430へ移行した後、ステップ710では、ECU50は、第1遮断弁71を閉弁制御する。
【0253】
次に、ステップ470では、ECU50は、クランクケース内圧CPMを再度取り込む。
【0254】
次に、ステップ720で、ECU50は、今回取り込んだクランクケース内圧CPM(i)と前回取り込んだクランクケース内圧CPM(i-1)との差圧が所定のマイナス第9基準値J1より小さいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、クランクケース内圧CPMに圧力降下があったものとして処理を730へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、クランクケース内圧CPMに圧力降下がなかったもとして処理をステップ750へ移行する。ここで、マイナス第9基準値J1は、この開示技術の「第2所定値」の一例に相当する。
【0255】
そして、ステップ730では、ECU50は、第1遮断弁71を正常判定する。
【0256】
次に、ステップ740では、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御した後、第1遮断弁71の故障判定を完了する。
【0257】
一方、ステップ750では、ECU50は、第1遮断弁71を開故障判定した後、処理をステップ740へ移行する。
【0258】
一方、ステップ700から移行してステップ760では、ECU50は、第1遮断弁71を閉故障判定した後、処理をステップ740へ移行する。
【0259】
上記した第3故障診断制御によれば、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、(1)検出されるクランクケース内圧CPM(蓄積部内圧)がマイナス第8基準値H1(第1所定値)より低い高負圧となる場合、又は(2)第1遮断弁71を開弁から閉弁へ切り替えた前後でのクランクケース内圧CPMの降下量がマイナス第9基準値J1(第2所定値)より小さい場合に、第1遮断弁71を故障と判定するようになっている。この実施形態のECU50は、この開示技術において、第1遮断弁71及び第2遮断弁74を制御すると共に、検出されるクランクケース内圧CPMに基づき第1遮断弁71の故障を診断するためのこの開示技術の「第2制御手段」の一例に相当する。
【0260】
より詳しくは、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、(1)検出されるクランクケース内圧CPM(蓄積部内圧)がマイナス第8基準値H1(第1所定値)より低い高負圧となる場合に第1遮断弁71が閉故障と判定し、(2)第1遮断弁71を開弁から閉弁へ切り替えた前後でのクランクケース内圧CPMの降下量がマイナス第9基準値J1(第2所定値)より小さい場合に第1遮断弁71が開故障と判定し、(3)クランクケース内圧CPMの降下量がマイナス第9基準値J1より大きい場合に第1遮断弁71が正常と判定するようになっている。
【0261】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記第8及び第9の実施形態と異なり、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、クランクケース内圧センサ60により検出されるクランクケース内圧CPMに基づき、第1遮断弁71の閉故障か、開故障か又は正常かを判定する。このため、第1遮断弁71が故障か正常かを診断することができ、第1遮断弁71を適正に制御し、第1遮断弁71の故障に早期に対処することができる。
【0262】
<第11実施形態>
次に、第11実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0263】
この実施形態では、故障診断制御の内容の点で前記第10実施形態と異なる。この実施形態では、第1遮断弁71の故障を、クランクケース内圧CPMではなく、空燃比補正値Kafに基づいて診断するように構成される。図26に、その「第4故障診断制御」の内容をフローチャートに示す。図26では、図25のステップ700及びステップ760が省略され、図25のステップ470の代わりにステップ800が設けられ、ステップ720の代わりにステップ810~ステップ830が設けられる。図26のフローチャートにおいて、その他のステップの内容は図25のフローチャートのそれと同じである。ここで、ECU50は、エンジン1の運転状態及び空燃比補正値Kafに基づいて第1遮断弁71の故障を診断するための「第4故障診断制御」を実行するようになっている。
【0264】
[第4故障診断制御について]
図26に示すフローチャートのルーチンにおいて、ECU50は、ステップ710から移行してステップ800では、ECU50は、空燃比補正値Kafを再度取り込む。
【0265】
次に、ステップ810で、ECU50は、今回取り込んだ空燃比補正値Kaf(i)と前回取り込んだ空燃比補正値Kaf(i-1)との差が所定のマイナス第10基準値K1より小さいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、燃料噴射量が減量補正されたこととして処理を730へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、燃料噴射量に補正変動がないこととして処理をステップ820へ移行する。ここで、マイナス第10基準値K1は、この開示技術の「第3所定値」の一例に相当する。
【0266】
そして、ステップ820では、ECU50は、空燃比補正値Kafが所定の第11基準値L1より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、空燃比補正値Kafが「1.0」近傍であるとして処理を750へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、空燃比補正値Kafが小さい(燃料噴射量の減量補正が大きい)ものとして処理をステップ830へ移行する。ここで、第11基準値L1は、この開示技術の「第4所定値」の一例に相当する。
【0267】
そして、ステップ830では、ECU50は、第1遮断弁71を閉故障判定した後、処理をステップ740へ移行する。
【0268】
上記した第4故障診断制御によれば、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、(1)第1遮断弁71を開弁から閉弁へ切り替えた前後で算出される空燃比の変化、又は(2)第1遮断弁71を閉弁した後の空燃比に基づいて第1遮断弁71の故障を判定するようになっている。この実施形態のECU50は、この開示技術の「第3制御手段」の一例に相当する。
【0269】
より詳しくは、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、(1)第1遮断弁71を開弁から閉弁へ切り替えた前後で算出される空燃比補正値Kafの差がマイナス第10基準値K1(第3所定値)より大きい場合に第1遮断弁71が正常と判定し、(2)空燃比補正値Kafの差がマイナス第10基準値K1より小さい場合に第1遮断弁71が閉状態で故障した閉故障と判定し、更に(3)第1遮断弁71を閉弁制御した後の空燃比補正値Kafが第11基準値L1(第4所定値)より大きい場合に第1遮断弁71が閉故障と判定し、(4)空燃比補正値Kafが第11基準値L1より小さい場合に第1遮断弁71が開状態で故障した開故障と判定するようになっている。
【0270】
第1遮断弁71が閉弁すると、エンジン1に吸入される実吸気量が減少するため、開状態のときの基本噴射量では、過剰(空燃比リッチ)となり、空燃比がストイキに制御されると、空燃比補正値Kafは燃料噴射量が減量される側に補正される。第1遮断弁71が開故障又は閉故障となる場合は、実吸気量の変化が発生しないので、空燃比補正値Kafは変動しない。従って、空燃比補正値Kafの絶対値が小さい場合は、実吸気量の低下が大きいので、第1遮断弁71を閉故障判定することが可能となる。一方、空燃比補正値Kafの絶対値が小さくない場合は、第1遮断弁71を開故障判定することが可能となる。
【0271】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記第10実施形態と異なり、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、ECU50は、第1遮断弁71を開弁制御し第2遮断弁74を閉弁制御しているときに、算出した空燃比補正値Kafに基づき、第1遮断弁71が正常か、開故障か又は閉故障かを判定する。このため、第1遮断弁71が故障か正常かを診断することができ、第1遮断弁71を適正に制御し、第1遮断弁71の故障に早期に対処することができる。
【0272】
<第12実施形態>
次に、第12実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0273】
この実施形態では、故障診断制御の内容の点で前記第8~第11の実施形態と異なる。この実施形態では、第2遮断弁74の故障を、別途算出される最終吸気量Gaに基づいて診断するように構成される。図27に、その「第5故障診断制御」の内容をフローチャートに示す。図27では、図25のステップ440が省略され、図25のステップ400、710、470、720~760の代わりにステップ900~970が設けられる。図27のフローチャートにおいて、その他のステップの内容は図25のフローチャートのそれと同じである。ここで、ECU50は、エンジン1の運転状態及び最終吸気量Gaに基づいて第2遮断弁74の故障を診断するための「第5故障診断制御」を実行するようになっている。
【0274】
[第5故障診断制御について]
図27に示すフローチャートのルーチンにおいて、ECU50は、ステップ900で、第1遮断弁71を閉弁及び第2遮断弁74を閉弁に制御中か否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ410へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、他の故障を判定又は本故障判定を終了する。
【0275】
次に、ステップ410、700、430及び450の処理を実行した後、ステップ910では、ECU50は、第2遮断弁74を閉弁制御する。
【0276】
次に、ステップ920では、ECU50は、最終吸気量Gaを再度取り込む。
【0277】
次に、ステップ930で、ECU50は、前回取り込んだ最終吸気量Ga(i-1)と今回取り込んだ最終吸気量Ga(i)との差が所定の第12基準値M1より大きいか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は、最終吸気量Gaに降下があるとして処理を940へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、最終吸気量Gaに降下がないとして処理をステップ960へ移行する。ここで、第12基準値M1は、この開示技術の「第9所定値」の一例に相当する。
【0278】
そして、ステップ940では、ECU50は、第2遮断弁74を正常判定する。
【0279】
次に、ステップ950では、ECU50は、第2遮断弁74を開弁制御した後、第2遮断弁74の故障判定を完了する。
【0280】
一方、ステップ960では、ECU50は、第2遮断弁74を開故障判定した後、処理をステップ950へ移行する。
【0281】
一方、ステップ700から移行してステップ970では、ECU50は、第2遮断弁74を閉故障判定した後、処理をステップ950へ移行する。
【0282】
上記した第5故障診断制御によれば、ECU50は、第1遮断弁71を閉弁制御し第2遮断弁74を開弁制御しているときに、(1)検出されるクランクケース内圧CPMが所定のマイナス第8基準値H1(第1所定値)より小さい高負圧となる場合、又は(2)第2遮断弁74が閉弁した前後での最終吸気量Gaの差が所定の第12基準値M1(第9所定値)より小さい場合に、第2遮断弁74を故障と判定するようになっている。この実施形態のECU50は、この開示技術の「第6制御手段」の一例に相当する。
【0283】
より詳しくは、ECU50は、第1遮断弁71を閉弁制御し第2遮断弁74を開弁制御しているときに、(1)検出されるクランクケース内圧CPMが所定のマイナス第8基準値H1(第1所定値)より小さい高負圧となる場合に第2遮断弁74が閉状態で故障した閉故障と判定し、(2)第2遮断弁74が閉弁した前後での最終吸気量Gaの差が所定の第12基準値M1(第9所定値)より小さい場合に第2遮断弁74が開故障と判定し、(3)最終吸気量Gaの差が第12基準値M1より大きい場合に第2遮断弁74が正常と判定するようになっている。
【0284】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記第8~第11の実施形態と異なり、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、ECU50は、第1遮断弁71を閉弁制御し第2遮断弁74を開弁制御しているときに、検出されるクランクケース内圧CPM及び計測される最終吸気量Gaに基づき、第2遮断弁74が閉故障か、開故障か又は正常か判定する。このため、第2遮断弁74が故障か正常かを診断することができ、第2遮断弁74を適正に制御し、第2遮断弁74の故障に早期に対処することができる。
【0285】
<第13実施形態>
次に、第13実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0286】
この実施形態では、主としてBGV装置の構成の点で前記第8~第12の実施形態と異なる。図28に、この実施形態のエンジンシステムを概略構成図により示す。図28に示すように、この実施形態のBGV装置は、BG通路32においてPCV弁33を迂回する第1バイパス通路76と、第1バイパス通路76を流れるブローバイガス流量を調節するための第2PCV弁77とを更に備える。第2PCV弁77は、圧力感応式の弁であって、この実施形態の「第2ブローバイガス調節弁」の一例に相当する。この第2PCV弁77は通常は開状態となるように構成される。
【0287】
そして、この実施形態では、ECU50は、少なくともPCV弁33を制御し、PCV弁33を低温時には開弁制御し、高温時には閉弁制御するようになっている。この点でこの実施形態のECU50は、この開示技術の「第7制御手段」の一例に相当する。
【0288】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記第8~第12の実施形態と異なり、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、BG通路32に加えて第1バイパス通路76が設けられるので、第1バイパス通路76の分だけ、ヘッドカバー14等(ブローバイガス蓄積部)から吸気通路15へ流れるブローバイガス流量が増える。このため、ヘッドカバー14等の換気効率を向上させることができる。
【0289】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、低温時にPCV弁33を開弁制御し、第2PCV弁77は通常は開状態となるので、低温時にBG通路32と第1バイパス通路76の両方でブローバイガスが流れる。このため、低温時にヘッドカバー14等の換気効率を向上させることができる。
【0290】
<第14実施形態>
次に、第14実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0291】
この実施形態では、エンジンシステムとBGV装置の構成の点で前記各実施形態と異なる。図29に、この実施形態のエンジンシステムを概略構成図により示す。図29に示すように、この実施形態のエンジンシステムは、排気通路23に設けられ、エンジン1から排出された排気のエネルギーを受けて回転する過給用のタービン26と、吸気通路15に設けられ、タービン26により駆動されて吸気を過給するコンプレッサ27とを更に備え、吸気通路15は、コンプレッサ27より上流の上流側吸気通路15Aと、コンプレッサ27より下流の下流側吸気通路15Bとを含む。タービン26とコンプレッサ27は、過給機28を構成する。
【0292】
この実施形態では、エンジン近傍部位23aは、排気通路23に設けられるタービン26により構成され、そのタービン26の周囲を囲むようにシュラウド36が設けられる。この実施形態では、加熱手段35は、エンジン近傍部位23aであるタービン26とシュラウド36により構成される。また、この実施形態で、新気導入通路47の出口側は、ヘッドカバー14に接続される。そして、新気導入通路47は、シュラウド36からヘッドカバー14までの高温空気が流れる高温空気経路部37と、シュラウド36とタービン26との間の隙間から構成される。タービン26にて排気の熱により加熱される新気は、高温空気としてシュラウド36により回収され、高温空気経路部37へ流れるように構成される。
【0293】
また、この実施形態のBGV装置は、ブローバイガス蓄積部31から上流側吸気通路15Aに接続される第2BG通路48と、下流側吸気通路15Bから第2BG通路48に接続される第2バイパス通路49と、第2バイパス通路49と第2BG通路48との接続部に設けられ、下流側吸気通路15Bを流れる吸気を利用して、第2BG通路48を流れるブローバイガスを第2BG通路48の下流側へ吐出するエゼクタ61とを更に備える。ここで、第2BG通路48は、オイルセパレータ34からエゼクタ61までの上流側第2BG通路48Aと、エゼクタ61からコンプレッサ27までの下流側第2BG通路48Bとを含む。この実施形態のエゼクタ61は、圧力感応式の開度可変なエゼクタとして構成される。
【0294】
図30に、この実施形態のエゼクタ61を断面図により示す。図29図30に示すように、エゼクタ61は、第2バイパス通路49が接続される第1入口61aと、上流側第2BG通路48Aが接続される第2入口61bと、下流側第2BG通路48Bが接続される出口61cとを含み、第1入口61aと出口61cとの間をつなぐ流路61dにはノズル61eが設けられる。そして、下流側吸気通路15Bから第2バイパス通路49へ流れる吸気の一部を作動流体としてノズル61eへ流すことで、ノズル61eの下流に負圧を発生させ、その負圧の作用により上流側第2BG通路48Aから第2入口61bに流れ込むブローバイガスをノズル61eから出口61cへ吐出させるようになっている。
【0295】
すなわち、この実施形態のエゼクタ61は、第2BG通路48を流れるブローバイガスをコンプレッサ27の入口27aへ向けて圧送するようになっている。また、エゼクタ61の流路61dの中には、軸状の弁体62と、弁体62を開弁方向へ付勢する開弁スプリング63とが設けられる。エゼクタ61において、弁体62の閉弁方向は、第2バイパス通路49に吸気が流れる方向と一致する。従って、エゼクタ61は、過給機28の作動に伴い下流側吸気通路15Bの圧力が上昇し、第2バイパス通路49を介して第1入口61aの圧力が上昇するに連れて開弁スプリング63の付勢力に抗して弁体62の開度が小さくなり、ノズル61eで発生する負圧が小さくなり、エゼクタ61の出口61cから吐出されるブローバイガス流量が抑えられるようになっている。
【0296】
[ブローバイガス還流制御について]
上記のように構成したエンジンシステムにつき、ECU50は、次のようなブローバイガス還流制御を実行するようになっている。すなわち、ECU50は、(1)低温時には、第1遮断弁71を開弁制御すると共に第2遮断弁74を閉弁制御し、(2)タービン26及びコンプレッサ27が作動しない、すなわち過給機28が作動しない非過給時には、PCV弁33を開弁制御し、(3)過給機28が作動する過給時には、PCV弁33を閉弁制御するようになっている。この点で、この実施形態のECU50は、この開示技術の「第8制御手段」の一例に相当する。
【0297】
加えて、この実施形態では、ECU50は、(1)高温時には、第1遮断弁71を閉弁制御すると共に第2遮断弁74を開弁制御し、(2)非過給時には、PCV弁33を微小量に開弁制御し、(3)過給時には、PCV弁33を閉弁制御するようになっている。この点で、ECU50は、この開示技術の「第9制御手段」の一例に相当する。
【0298】
[エンジンシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のエンジンシステムの構成によれば、前記各実施形態と異なり、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、エンジン1の運転時であってコンプレッサ27が非作動の非過給時には、電子スロットル装置18より下流の下流側吸気通路15Bで負圧が発生することにより、エンジン1で発生してヘッドカバー14等(ブローバイガス蓄積部(31)に蓄積されたブローバイガスがBG通路32を介して下流側吸気通路15Bへ流れ、エンジン1へ還流される。BG通路32におけるブローバイガス流量は、PCV弁33の開度を変えることで調節可能である。一方、エンジン1の運転時であってコンプレッサ27が作動する過給時には、下流側吸気通路15Bに負圧が発生しなくなる。このとき、第2BG通路48の出口では、上流側吸気通路15Aを流れる吸気により負圧が発生し、その発生負圧が第2BG通路48に作用する。従って、ヘッドカバー14等(ブローバイガス蓄積部31)に蓄積されたブローバイガスは、第2BG通路48を介して上流側吸気通路15Aへ流れ、コンプレッサ27から下流側吸気通路15Bを介してエンジン1へ還流される。ここで、過給時には、下流側吸気通路15Bから第2バイパス通路49を介してエゼクタ61へ吸気が作動流体として流れることで、第2BG通路48を流れるブローバイガスがエゼクタ61から第2BG通路の下流側(下流側第2BG通路48B)へ吐出される。このため、過給時には、エゼクタ61により、第2BG通路48によるブローバイガス還流性能を向上させることができる。
【0299】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、低温時において、第1遮断弁71を開弁制御すると共に第2遮断弁74を閉弁制御し、更に非過給時には、PCV弁33を開弁制御し、過給時には、PCV弁33を閉弁制御する。従って、低温時において、ヘッドカバー14等(ブローバイガス蓄積部31)には、新気導入通路47を流れる加熱された高温空気のみが流れ込み、ヘッドカバー14等が効果的に暖機される。また、非過給時には、ヘッドカバー14等からBG通路32を介して下流側吸気通路15Bへブローバイガスが流れ、過給時には、ヘッドカバー14等から第2BG通路48を介して上流側吸気通路15Aへブローバイガスが流れる。このため、低温時において、ヘッドカバー14等(ブローバイガス蓄積部31)の換気効率を向上させることができ、過給時にはエンジン1の出力を低下させることなくヘッドカバー14等を換気することができる。
【0300】
この実施形態の構成によれば、ECU50は、高温時において、第1遮断弁71を閉弁制御すると共に第2遮断弁74を開弁制御し、更に非過給時には、PCV弁33を微小量に開弁制御し、過給時には、PCV弁33を閉弁制御する。従って、高温時において、ヘッドカバー14等(ブローバイガス蓄積部31)には、第2新気導入通路72を流れる加熱されない新気のみが流れ込み、ヘッドカバー14等が換気される。また、非過給時には、ヘッドカバー14等からBG通路32を介して下流側吸気通路15Bへ微小量のブローバイガスが流れ、過給時には、ヘッドカバー14等から第2BG通路48のみを介して上流側吸気通路15Aへブローバイガスが流れる。このため、高温時において、空燃比が過剰リッチにならないように制御することができ、過給時にはエンジン1の出力を低下させることなくヘッドカバー14等を換気することができる。
【0301】
<別の実施形態>
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0302】
(1)前記第1及び第2の実施形態では、高温空気経路部37にエアフィルタ38と逆止弁39を設け、第2実施形態では、更に第2のエアフローメータ59を設けたが、例えば、燃料噴射制御を特に行わない簡易な構成のエンジンを備えたエンジンシステムでは、高温空気経路部からエアフィルタ、逆止弁及び第2のエアフローメータを省略することもできる。
【0303】
(2)前記第10及び第11の実施形態では、第2及び第3の故障診断制御において、図25及び図26のフローチャートのステップ740で、第2遮断弁74を開弁制御するように構成した。これに対し、ステップ740で、PCV弁33を閉弁制御したり、第2遮断弁74を開弁制御すると共にPCV弁33を閉弁制御したりするように構成することもできる。
【0304】
(3)前記第8~第12の実施形態で説明した各故障診断制御を、第13及び第14の実施形態のエンジンシステムに適宜具体化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0305】
この開示技術は、エンジンで発生するブローバイガスを吸気通路へ流してエンジンへ還元すると共に新気を加熱手段により加熱した高温空気をブローバイガス蓄積部へ導入するように構成したエンジンシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0306】
1 エンジン
2a 連通路
4 クランクケース(ブローバイガス蓄積部)
14 ヘッドカバー(ブローバイガス蓄積部)
15 吸気通路
15A 上流側吸気通路
15B 下流側吸気通路
15a 吸気入口
18 電子スロットル装置(吸気量調節弁)
23 排気通路
23a エンジン近傍部位
26 タービン
27 コンプレッサ
31 BG蓄積部(ブローバイガス蓄積部)
32 BG通路(ブローバイガス通路)
33 PCV弁(ブローバイガス調節弁)
34 オイルセパレータ(オイル除去手段)
35 加熱手段
36 シュラウド
37 高温空気経路部
37a 新気取り込み孔
39 逆止弁
40 開閉弁
41 熱交換器
42 新気案内経路部
42a 入口
42b 出口
43 PCVポンプ
44 オイル分離構造(オイル除去手段)
46 電気ヒータ
47 新気導入通路
48 第2BG通路(第2ブローバイガス通路)
49 第2バイパス通路
50 ECU(制御手段、第1の算出手段、第2の算出手段、第2~第9の制御手段)
52 第1のエアフローメータ(吸気量計測手段)
54 吸気圧センサ(吸気圧力検出手段)
56 水温センサ(暖機状態検出手段)
57 酸素センサ(空燃比関係要素検出手段)
59 第2のエアフローメータ(高温空気量計測手段)
60 クランクケース内圧センサ(蓄積部内圧検出手段)
61 エゼクタ
71 第1遮断弁
72 第2新気導入通路
73 接続部
74 第2遮断弁
76 第1バイパス通路
77 第2PCV弁(第2ブローバイガス調節弁)
図1
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