(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157859
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】差動歯車及びこのような差動歯車を備える駆動トレイン
(51)【国際特許分類】
F16H 48/40 20120101AFI20231019BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F16H48/40
F16H48/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023062434
(22)【出願日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】10 2022 001 304.5
(32)【優先日】2022-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】ブレツガー、フリードリッヒ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】グローネベルク、オリバー
(72)【発明者】
【氏名】カウフホルド、トビアス
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】リム、ユン カイ
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FB02
3J027HA01
3J027HA03
3J027HB07
3J027HC04
3J027HC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】差動歯車を介して2つの車軸を特に簡単で任意選択的に駆動することができるコンパクトな駆動トレインを提供する。
【解決手段】差動歯車(2)は、駆動ホイールと回転駆動可能に係合するための回転駆動輪郭(36)及びピニオン軸(26)の周りを回転できるピニオン歯車(28、30)を有する、回転軸(16)の周りを回転できる入力側(18)と、少なくとも1つのピニオン歯車(28、30)と回転駆動可能に係合する第1軸ホイール(32)及び第2軸ホイール(34)を有する、回転軸(16)の周りを回転できる出力側(24)とを備え、入力側(18)は、回転駆動輪郭(36)が設けられる回転駆動部分(20)と、ピニオン歯車(28、30)が配置される支持部分(22)とを有する回転駆動部分(20)及び支持部分(22)が、任意選択的に、シフト可能な歯止めフリーホイール(64)によって互いに回転駆動可能に連結することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ホイールと回転駆動可能に係合するための回転駆動輪郭(36)及びピニオン軸(26)の周りを回転できる少なくとも1つのピニオン歯車(28,30)を有する、回転軸(16)の周りを回転できる入力側(18)と、少なくとも1つのピニオン歯車(28,30)と回転駆動可能に係合する第1軸ホイール(32)及び第2軸ホイール(34)を有する、回転軸(16)の周りを回転できる出力側(24)とを備え、ここで、入力側(18)は、回転駆動輪郭(36)が設けられる回転駆動部分(20)と、少なくとも1つのピニオン歯車(28,30)が配置される支持部分(22)とを有する差動歯車(2)であって、前記回転駆動部分(20)及び前記支持部分(22)が、任意選択的に、シフト可能な歯止めフリーホイール(64)によって互いに回転駆動可能に連結することができることを特徴とする差動歯車(2)。
【請求項2】
前記歯止めフリーホイール(64)は、アウターレース(66)と、インナーレース(68)と、前記ラジアル方向(8、10)において前記インナーレースとアウターレース(66、68)との間に枢動可能に配置された歯止め(70,72)とを有し、前記歯止め(70、72)は、好ましくは、前記ラジアル方向(8、10)において前記インナーレース及びアウターレース(68、66)上に支持され、特に好ましくは前記軸方向(4、6)に延在している枢動軸(74)を中心に枢動可能であり、及び/又は、歯止めフリーホイール(64)、好ましくは前記歯止めフリーホイール(64)の少なくとも1つの歯止め(70又は72)、及び/又は回転駆動輪郭(36)は、前記少なくとも1つのピニオン歯車(28又は30)とともに前記ラジアル方向(8、10)に入れ子状に配置され、特に好ましくは、前記ピニオン軸(26)に整列して配置されることを特徴とする請求項1に記載の差動歯車(2)。
【請求項3】
前記入力側(18)は歯車ハウジングを形成し、前記第1及び第2軸ホイール(32,34)が前記歯車ハウジング内に配置され、及び/又は、前記第1及び第2軸ホイール(32、34)が前記歯車ハウジング上に、任意選択的に前記軸方向(4、6)やラジアル方向(8、10)に滑り軸受によって支持され得るか、又は支持され、前記歯車ハウジングは、好ましくは、前記第1及び第2軸ホイール(32、34)に割り当てられた車軸(132、134)用の2つのシャフト開口部(48、50)を有し、前記シャフト開口部(48、50)の少なくとも1つは、前記歯車ハウジングの管状軸方向部分(38又は42)に形成され、前記歯車ハウジングは、特に好ましくは、前記ピニオン歯車(28又は30)を収容する軸方向部分(40)よりも小さいラジアル範囲を有することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の差動歯車(2)。
【請求項4】
前記回転駆動部分(20)は、前記支持部分(22)が収容されている前記歯車ハウジングを形成し、前記支持部分(22)は、環状であり、且つ好ましくは滑り軸受によって又は前記歯止めフリーホイール(64)を介して前記ラジアル方向(8、10)を移動でき、及び/又は前記軸方向(4、6)に好ましくは遊びを有して前記歯車ハウジング上に支持され得るか、又は支持され、ここで、前記歯止めフリーホイール(64)の前記インナーレース(68)は、特に好ましくは、前記環状支持部分(22)と一体的に形成され、及び/又は、前記歯止めフリーホイール(64)の前記アウターレース(66)は、前記回転駆動輪郭(36)及び/又は前記歯車ハウジングと一体的に形成されることを特徴とする請求項3に記載の差動歯車(2)。
【請求項5】
前記支持部分(22)は、前記歯車ハウジングを形成し、ここで、前記インナーレース(68)は、好ましくは歯車ハウジングと一体的に形成され、及び/又は、前記アウターレース(66)は、好ましくは、前記回転駆動輪郭(36)と一体的に形成されるか、又は前記回転駆動輪郭(36)を有し、前記アウターレース(66)に回転不能な方法で固定されている入力歯車(98)とは別々に形成され、ここで、前記アウターレース(66)又は前記入力歯車(98)は、特に好ましくは、前記ラジアル方向(8、10)に好ましくはころ軸受又はニードル軸受によって配置され、及び/又は、前記軸方向(4、6)において前記歯車ハウジング上に支持され得るか、又は支持され、場合によってはラジアル部分(102)を介して前記アウターレース(66)又は前記入力歯車(98)上に及び/又は前記歯車ハウジングの前記管状軸方向部分(38、42)上に支持され得るか、又は支持されていることを特徴とする請求項3に記載の差動歯車(2)。
【請求項6】
前記回転駆動輪郭(36)は、前記ラジアル方向(8)における外側回転駆動輪郭(36)として又は前記ラジアル方向(10)における内側回転駆動輪郭(36)として形成され、前記内側回転駆動輪郭(36)は、好ましくは、前記回転軸(16)と同軸に配置された管状駆動ホイール(110)と回転駆動可能に係合し、特に好ましくは、前記歯車ハウジング、場合によっては前記歯車ハウジングの管状軸方向部分(38又は42)上に回転可能に取り付けられることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の差動歯車(2)。
【請求項7】
前記軸方向(4、6)において変位できる起動要素(78)は、前記歯止めフリーホイール(64)をシフトさせるために設けられ、前記起動要素(78)は、前記軸方向(4、6)において、好ましくは直接的に、又は前記入力側(18)に固定された支持要素(80)を介して変位可能であるように、前記入力側(18)上に配置され、特に好ましくは、前記起動要素(78)は、前記入力側(18)の周方向の外側(114)又は前記支持要素(80)の管状支持要素部分(84)上に支持され得るか、又は摺動可能に支持される管状支持部分(82)を有することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の差動歯車(2)。
【請求項8】
前記起動要素(78)には、前記起動要素(78)を前記歯止めフリーホイール(64)に対して少なくとも1つの軸方向位置に、好ましくは少なくとも2つ又は少なくとも3つの軸方向位置にロックするためのロック装置(92)が割り当てられ、前記ラッチ装置(92)は、特に好ましくは、前記管状支持部分(82)と前記入力側(18)の前記周方向の外側(114)との間、前記管状支持部分(82)と前記管状支持要素部分(84)との間、又は前記起動要素(78)と前記ラジアル方向(8、10)において前記管状支持要素部分(84)と対向する前記支持要素(80)の第2管状支持要素部分(106)との間に配置され、場合によっては一方に少なくとも1つのばね仕掛けのラッチ要素(94)を、他方にラッチ要素(94)がラッチされ得る2つ以上のラッチ凹部(96)を有することを特徴とする請求項7に記載の差動歯車(2)。
【請求項9】
前記起動要素(78)は、任意選択的に、前記起動要素(78)上の軸方向に突出した起動ピン(90)を介して、前記歯止めフリーホイール(64)の前記歯止め(70、72)と相互作用し、前記起動要素(78)は、特に好ましくは、前記回転駆動部分(20)が第1相対回転方向及び第2相対回転方向において前記歯止め(70、72)を介して前記支持部分(22)に回転駆動可能に結合される第1軸方向位置と、前記回転駆動部分(20)が前記第2相対回転方向ではなく第1相対回転方向において、少なくとも1つの歯止め(70、72)を介して前記支持部分(22)回転駆動可能に結合される第2軸方向位置と、前記回転駆動部分(20)が前記第1相対回転方向においても、前記第2相対回転方向においても前記歯止め(70、72)を介して前記支持部分(22)に回転駆動可能に結合されない第3軸方向位置との間を移動できることを特徴とする請求項7又は8に記載の差動歯車(2)。
【請求項10】
第1駆動ユニット(128)によって、場合によっては電気駆動ユニット、好ましくは電気機械及び/又は内燃機関によって駆動できる第1ホイール軸(120)と、第2ホイール軸(130)とを備える自動車用の駆動トレイン(118)であって、前記第2ホイール軸(130)は、任意選択的に前記請求項のいずれかに記載の差動歯車(2)を介して、第2駆動ユニット(136)によって、場合によっては電気駆動ユニットによって駆動されることができ、前記入力側(18)、特に好ましくは前記回転駆動部分(20)の前記回転駆動輪郭(36)が、好ましくは前記第2駆動ユニット(136)に、特に好ましくは前記第2駆動ユニット(136)の駆動ホイールに回転駆動可能に連結され、前記出力側(24)、特に好ましくは前記第1軸ホイール及び第2軸ホイール(32、34)が、好ましくは前記第2ホイール軸(130)に、特に好ましくは前記第2ホイール軸(130)の第1車軸及び第2車軸(132、134)に回転駆動可能に連結されることを特徴とする駆動トレイン(118)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は差動歯車に関し、前記差動歯車は、駆動ホイールと回転駆動可能に係合するための回転駆動輪郭及びピニオン軸の周りを回転できる少なくとも1つのピニオン歯車を有する、回転軸の周りを回転できる入力側と、少なくとも1つのピニオン歯車と回転駆動可能に係合する第1軸ホイール及び第2軸ホイールを有する、回転軸の周りを回転できる出力側とを備え、ここで、入力側は、回転駆動輪郭が設けられる回転駆動部分と、少なくとも1つのピニオン歯車が配置される支持部分とを有する。また、本発明は、このような差動歯車を備える自動車の駆動トレインに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイール軸を備える自動車は実践から知られており、当該ホイール軸は、コーナリング時などに同じホイール軸のホイールの異なる速度を補償できるように、差動歯車を介して2つの横車軸に分けられる。したがって、既知の差動歯車は、回転軸の周りを回転できる入力側を有し、当該入力側は、駆動ホイールと回転駆動可能に係合するための回転駆動輪郭及びピニオン軸の周りを回転できる少なくとも1つの差動ピニオンを有する。結果として、駆動ユニットの駆動ホイールが差動歯車の入力側を駆動して回転軸の周りを回転させ、一方、ホイールの異なる速度下で上記の補償を達成するように、差動ピニオンも回転軸の周りを回転するとともに、ピニオン軸の周りを回転できる。また、当該差動歯車は、上記の回転軸の周りを回転できる出力側を有する。出力側は、実質的に、少なくとも1つの差動ピニオンと回転駆動可能に係合する第1軸ホイールと第2軸ホイールとによって形成され、ここで、第1軸ホイールは、第1車軸に回転不能に連結され、第2軸ホイールは、ホイール軸の第2車軸に回転不能に連結される。駆動ホイールと回転駆動可能に係合するように設計された回転駆動輪郭は、入力側の回転駆動部分上に設けられ、少なくとも1つの差動ピニオンは入力側の支持部分に配置される。この場合、回転駆動部分と支持部分とは、回転不能な方法で互いに永久に連結されている。差動歯車に追従する2つの車軸を任意選択的に電気駆動ユニットによって駆動できるようにするために、例えば、シフト可能なカップリング装置を駆動ホイールの前方のトルク伝達経路に配置でき、例えば、駆動ユニットを差動歯車に任意選択的に行かせて、車軸に回転可能に連結するか又は連結しない。しかし、設計によっては、これは非常に複雑な設計につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、比較的コンパクトな設計を有し、差動歯車を介して2つの車軸を特に簡単で任意選択的に駆動することができるように、汎用タイプの差動歯車をさらに開発することである。また、本発明の実質的な目的は、このような有利な差動歯車を備える駆動トレインを作成することである。
【0004】
この目的は、請求項1及び10のそれぞれに記載された特徴によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による差動歯車は、差動歯車の回転軸の周りを回転できる入力側を備える。差動歯車の入力側は、駆動ホイールと回転駆動可能に係合するように設計された回転駆動輪郭をさらに有する。当該回転駆動輪郭は、好ましくは歯であり、例えば、外歯又は内歯の形に設計できる螺旋状の歯である。駆動ホイールは、入力側の回転駆動輪郭に適合する回転駆動輪郭を備えるホイールであってもよく、ここで、駆動ホイールは、例えば内燃機関又は電気駆動ユニットによって、好ましくは電気機械によって駆動されて、駆動ホイールを介して差動歯車の入力側を回転軸の周りに回転させることができる。ここでは、入力側の回転軸が駆動ホイールの回転軸に対して横方向に延在することが好ましい。また、入力側は、入力側の他の構成要素に対してピニオン軸中心に回転できる少なくとも1つの差動ピニオンを有する。ピニオン軸は、好ましくは、入力側の回転軸に対して横方向に延在する。また、少なくとも2つの差動ピニオンが設けられたことが好ましく、2つの差動ピニオンは、特に好ましくは、同じピニオン軸上に、場合によっては同一のシャフト上に配置される。また、少なくとも1つの差動ピニオンは、差動かさ歯車として設計されることが好ましい。さらに、差動歯車は、入力側と同様に、前記回転軸の周りを回転できる出力側を有する。出力側は、少なくとも1つの差動ピニオンと回転駆動可能に係合する第1軸ホイール及び第2軸ホイールを有する。第1及び第2軸ホイールは、好ましくは、軸かさ歯車である。さらに、軸ホイールは、好ましくは、それぞれ車軸の回転駆動輪郭に回転駆動可能に係合することができる回転駆動輪郭を有する。差動歯車の入力側は、実質的に、駆動ホイールと回転駆動可能に係合するための回転駆動輪郭が設けられた回転駆動部分と、少なくとも1つの差動ピニオンがピニオン軸の周りを回転できるように配置されている支持部分との2つの部分に分けられている。回転駆動部分又は支持部分が一体的に又は複数の部品として設計されているかにかかわらず、好ましくは、回転駆動部分又は支持部分は、入力側上の、回転不能な方法で互いに永久的に連結されている全てのこれらの構成要素を意味すると理解される。一方では、差動歯車の入力側を介して出力側を簡単に任意選択的に駆動でき、他方では、差動歯車を特にコンパクトに設計することを実現するために、回転駆動部分および支持部分は、任意選択的に、シフト可能な歯止めフリーホイールによって互いに回転駆動可能に連結されることができる。差動歯車の回転駆動部分と支持部分との間にシフト可能な歯止めフリーホイールを使用することのおかげで、シフト可能性は、差動歯車に組み込まれるのに有利であり、ここで、摩擦継ぎ手と比較して、ドラグトルクが発生せず、より高いトルク密度を実現できるという追加の利点がある。また、クロー継ぎ手を備えるものに比べて、著しくより素早くより快適なシフトが可能である。
【0006】
本発明による差動歯車の有利な一実施形態において、シフト可能な歯止めフリーホイールは、アウターレース、インナーレース、及びインナーレースとアウターレースとの間にラジアル方向に枢動可能に配置された歯止めを有する。この実施形態において、歯止めが、インナーレース及びアウターレース上にラジアル方向に支持され得るか、又は支持されていることが好ましい。さらに、歯止めは、それぞれ差動歯車の軸方向に延在する枢動軸の周りを回転でき、その場合、歯止めの枢動軸は、差動歯車の入力側の回転軸と平行に延びる枢動軸であることが有利であることが証明された。原則として、軸方向において、2つのレースの間に配置され、それらレース上に支持され得るか、又は支持されている歯止めを使用することもできるが、本発明による実施形態は、簡略化され信頼性の高いシフト性の観点から、特に効果的であることが証明された。さらに、本実施形態は、回転駆動部分と支持部分との間での特に有利なトルク伝達を可能にし、また軸方向においても特にコンパクトな設計を実現できる。
一方では、特にコンパクトな設計を実現し、他方では、差動歯車の入力側と出力側との間での最も直接的なトルク伝達を実現するために、本発明による差動歯車の好ましい実施形態における歯止めフリーホイール及び/又は回転駆動輪郭は、少なくとも1つの差動ピニオンとともにラジアル方向に入れ子状に配置される。ラジアル方向に入れ子状に配置された歯止めフリーホイールの場合、特に好ましくは、歯止めフリーホイールの少なくとも1つの歯止め、好ましくは複数又は全ての歯止めは、少なくとも1つの差動ピニオンとともにラジアル方向に入れ子状に配置される。また、この実施形態において、特に好ましくは、歯止めフリーホイール及び/又は回転駆動輪郭が1つの差動歯車とともにラジアル方向に入れ子状に配置され、それによって、歯止めフリーホイール及び/又は回転駆動輪郭は、差動ピニオンのピニオン軸と整列して配置される。理想的には、ピニオン軸は、例えば、歯止めフリーホイール及び/又は回転駆動輪郭の軸方向範囲に対して中心軸を形成することができる。
【0007】
本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態では、差動歯車の入力側は歯車ハウジングを形成し、当該歯車ハウジング内に第1軸ホイール及び第2軸ホイールが配置され、及び/又は、当該歯車ハウジング上に第1軸ホイール及び第2軸ホイールが軸方向及び/又はラジアル方向に支持され得るか、又は支持されている。本明細書では、第1軸ホイール及び第2軸ホイールが軸方向及び/又はラジアル方向で滑り軸受によって支持され得るか、又は支持されていることが好ましい。歯車ハウジングは、差動歯車のいわゆる差動バスケットとも呼ばれ得、ここで、少なくとも1つの差動ピニオンも歯車ハウジング内に配置されることが好ましい。本実施形態では、歯車ハウジングは、後でより詳細に説明するように、例えば、差動歯車の入力側の回転駆動部分又は支持部分によって形成されることができる。
【0008】
本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態では、歯車ハウジングは、第1軸ホイール及び第2軸ホイールに割り当てられた車軸用の2つのシャフト開口部を有する。第1車軸と第1軸ホイールとを回転不能な方法で連結するために、第1シャフト開口部を介して第1軸ホイールに第1車軸を供給することができ、また、第2軸ホイールと第2車軸との対応する回転不能な連結を達成するために、第2シャフト開口部を介して第2軸ホイールに第2車軸を供給することができる。少なくとも1つのシャフト開口部は、歯車ハウジングの管状軸方向部分により形成され、これは、好ましくは、両方のシャフト開口部に適用される。本実施形態においても、管状軸方向部分が、少なくとも1つの差動ピニオンを収容する歯車ハウジングの軸方向部分よりも小さいラジアル方向範囲を有することが好ましい。要するに、歯車ハウジングは、差動歯車を側面から見たときに、前述のピニオン軸に対して実質的に対称又は鏡像対称に設計されることが好ましい。
【0009】
本発明による差動歯車の特に好ましい実施形態では、差動歯車の回転駆動部分により歯車ハウジングが形成される。差動歯車の入力側の支持部分は、回転駆動部分によって形成された歯車ハウジング内に収容され、支持部分は環状に設計され、且つ歯車ハウジング上に、ラジアル方向及び/又は軸方向に支持され得るか、又は支持されている。環状支持部分のラジアル方向における支持能力は、原則として、軸受又はラジアル軸受の任意の実施形態によって達成できるが、ラジアル方向における支持が、滑り軸受によって又は歯止めフリーホイールを介して実現されるのが好ましい。したがって、後者の場合、摺動支持は、互いに対向するアウターレース及びインナーレースの側面を介して行われ、これらの側面がどうしても存在するので、特定の場合に有利であっても、ラジアル支持のための追加の滑り軸受を設ける必要がない。環状支持部分の軸方向における支持又は支持能力は、同様に、滑り軸受を介して行われることができる。また、環状支持部分が少なくとも1つの差動ピニオンと共に、歯車ハウジングに対して軸方向においてある程度変位することが可能であるように、環状支持部分が遊びを有すると、環状支持部分を軸方向に支持する際に有利であると証明される場合がある。
【0010】
本発明による差動歯車の特に有利な実施形態では、歯止めフリーホイールのインナーレースは、環状支持部分と一体的に設計されて、一方では特にコンパクトな設計を保証し、他方では最も直接で信頼性の高いトルク伝達を確保する。
本発明による差動歯車の別の特に好ましい実施形態では、歯止めフリーホイールのアウターレースは、回転駆動輪郭及び/又は回転駆動部分によって形成される歯車ハウジングと一体的に設計されて、コンパクトな設計及び直接的で信頼性の高いトルク伝達を達成する。歯車ハウジングと一体的に構成される歯止めフリーホイールのアウターレースは、好ましくは、実際には歯車ハウジングの1つの部分の機能を部分的に有するアウターレース、即ち歯車ハウジングの内部の画定であり、歯車ハウジングの既に完全に閉じた壁部分の外側から配置されるだけではない意味であると理解される。
【0011】
回転駆動部分が歯車ハウジングを形成する上記の実施形態の変形例の代替として、本発明による差動歯車の別の好ましい実施形態では、差動歯車の入力側の支持部分が歯車ハウジングを形成し、既に上で説明したように、当該歯車ハウジングに第1軸ホイール及び第2軸ホイールが配置され、及び/又は、当該歯車ハウジング上に第1軸ホイール及び第2軸ホイールが支持され得るか、又は支持されている。本実施形態では、シフト可能な歯止めフリーホイールのインナーレースが、特にコンパクトな設計を達成するために、歯車ハウジングと一体的に設計されることがより好ましい。
【0012】
本発明による差動歯車の別の特に有利な実施形態では、差動歯車の入力側の支持部分が歯車ハウジングを形成し、シフト可能な歯止めフリーホイールのアウターレースが、駆動ホイールと回転駆動可能に係合するための回転駆動輪郭と一体的に設計される。任意選択的に、アウターレースは、入力ホイールとは別々に形成され、当該入力ホイールは、回転駆動輪郭を有し、且つアウターレースに回転不能な方法で固定され、例えばアウターレースに溶接又は圧接される。本実施形態では、アウターレースと入力ホイールとを、先に別々に製造してから、回転不能な方法で互いに連結することができる。
【0013】
回転駆動輪郭と一体的に形成されたアウターレースの場合、又はアウターレースとは別々に形成され且つ回転駆動輪郭を有する入力ホイールの場合、本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態におけるアウターレース又は入力ホイールは、ラジアル方向にあり、及び/又は、歯車ハウジング上で軸方向に支持され得るか、又は支持されている。ラジアル方向の支持は、好ましくは、ころ軸受によって提供され、場合によってはニードル軸受によって提供される。その上に、好ましくは、ラジアル方向及び/又は軸方向における支持は、アウターレースに付着されているか又は一体型入力ホイールの1つの部分を形成するラジアル部分を介して行われる。また、ラジアル方向及び/又は軸方向に支持される場合に有利であることが証明され、後者の場合、少なくとも1つの軸方向の支持が、歯車ハウジングの管状軸方向部分上に行われる場合、当該管状軸方向部分には、上記のシャフト開口部が形成され、好ましくは、当該管状軸方向部分は、差動ピニオンを収容する歯車ハウジングの軸方向部分よりも小さいラジアル範囲を有する。
【0014】
本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態では、差動歯車の入力側の回転駆動輪郭は、ラジアル方向に外側回転駆動輪郭として、例えば外歯として設計される。
【0015】
上述の実施形態とは異なり、本発明による差動歯車の別の好ましい実施形態では、入力側の回転駆動輪郭はラジアル方向における内側の回転駆動輪郭として、例えば内歯として設計される。内側回転駆動輪郭は、好ましくは、回転軸と同軸に配置された管状駆動ホイールと回転駆動可能に係合する。管状駆動ホイールは、特に好ましくは、歯車ハウジング上に、場合によっては歯車ハウジングの前述の管状軸方向部分に回転可能に取り付けられる。取付けは、例えばころ軸受又は滑り軸受を介して行われ得る。
【0016】
本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態では、軸方向、即ち差動歯車の回転軸の方向に変位可能な起動要素が設けられて、歯止めフリーホイールをシフトさせる。起動要素は、好ましくは、直接的に又は入力側に付着された支持要素を介して軸方向を変位可能に入力側に配置される。作動要素が入力側に直接配置されている場合、追加の支持要素を省略することができ、これにより差動歯車の設計をさらに簡素化することができる。これに対して、作動要素が入力側に固定された支持要素を介して入力側に配置される場合、入力側は、適切な形状又は構造を有する必要はない。むしろ、これは、対応して構成された支持要素によって達成でき、当該支持要素は、入力側に固定され、例えば、単純な板金部品又は管状及び/又は同軸上に配置された板金部品であってもよい。
【0017】
本発明による差動歯車の別の好ましい実施形態では、歯止めフリーホイールをシフトさせるための起動要素は、入力側の周方向の外側又は前述の支持要素の管状支持要素部分上に摺動可能に支持されるか、又は支持されている管状支持部分を有する。
【0018】
本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態では、シフト可能な歯止めフリーホイールを所定のシフト位置に狙い通りに移動させて、所定のシフト位置に保持することができるようにするために、起動要素には、歯止めフリーホイールに対して少なくとも1つの軸方向位置に、好ましくは少なくとも2つの又は少なくとも3つの軸方向位置に起動要素をラッチするためのラッチ装置が割り当てられる。
【0019】
本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態では、前述のラッチ装置は、起動要素の管状支持部分と入力側の周方向の外側との間に配置される。
【0020】
本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態では、起動要素をラッチするためのラッチ装置は、起動要素の管状支持部分と管状支持要素部分との間に配置される。
【0021】
本発明による差動歯車の別の特に好ましい実施形態では、ラッチ装置は、起動要素と、ラジアル方向において管状支持要素部分と対向して配置された支持要素の第2管状支持要素部分との間に配置される。本実施形態は、起動要素が管状支持要素部分上にラジアル方向に確実に支持されるとともに、軸方向にガイドされることができ、支持要素の第2管状支持要素部分を介してラッチすることができるという点で有利である。本実施形態では、支持要素は、リムが2つの管状支持要素部分によって形成されるU字状横断面を有し、当該管状支持要素部分は、一方の側で連結リムを介して互いに連結されている。
【0022】
本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態では、起動要素には、起動要素をラッチするためのラッチ装置が割り当てられており、ラッチ装置は、一方では2つの以上のラッチ凹部にラッチすることができ、他方ではラッチ溝にラッチすることができる少なくとも1つのばね予張力が加えられたラッチ要素、例えばボールを有する。ばね予張力は、対応するばね要素を介して加えられることができる。ばね要素の実施形態にかかわらず、ラッチ要素がラジアル方向に予張力が加えられることが好ましい。
【0023】
本発明による差動歯車のさらなる有利な実施形態では、起動要素は、歯止めフリーホイールの歯止めと相互作用する。この場合、当該起動要素と歯止めとは、互いに直接相互作用することが好ましい。また特に好ましくは、当該相互作用は、起動要素上の 軸方向に突出した起動ピンを介して行われる。そのため、好ましくは、各歯止めには、起動要素上の起動ピンが割り当てられている。
【0024】
本発明による差動歯車の別の特に有利な実施形態では、起動要素は、少なくとも3つの軸方向位置、即ち第1軸方向位置と、第2軸方向位置と、第3軸方向位置との間を移動又は変位することができる。第1軸方向位置において、回転駆動部分は、第1相対回転方向及び第2相対回転方向において、歯止めを介して支持部分に回転駆動可能に結合される。この場合、好ましく、歯止めの枢動位置で歯止めに予張力が加えられた場合、歯止めによりこの枢動位置に回転駆動カップリングが発生される。第2軸方向位置において、回転駆動部分は、第2の相対回転方向ではなく第1相対回転方向において、少なくとも1つの歯止めを介して支持部に回転駆動可能に結合される。しかし、第3軸方向位置において、回転駆動部分は、第1相対回転方向においても第2相対回転方向においても、少なくとも1つの歯止めを介して支持部に回転駆動可能に結合されていない。
【0025】
自動車用の本発明による駆動トレインは、第1駆動ユニットによって、場合によっては電気駆動ユニットによって、好ましくは電気機械及び/又は内燃機関によって駆動できる第1ホイール軸と、第2ホイール軸とを有する。好ましくは、駆動トレインは、ハイブリッド車用の駆動トレインである。任意選択的に、駆動トレインの第2ホイール軸は、本発明によるタイプの差動歯車を介して、第2駆動ユニットによって、場合によっては電気駆動ユニットによって、好ましくは電気機械によって駆動されてもよい。結果として、本発明による差動歯車により、特に簡単な方法での全ホイール駆動としての駆動トレインの任意の操作を可能にする駆動トレインを作成することができる。
【0026】
本発明による駆動トレインの好ましい実施形態では、差動歯車の入力側、好ましくは回転駆動部分の回転駆動輪郭は、第2駆動ユニット、好ましくは当該第2駆動ユニットの駆動ホイールに回転駆動可能に連結される。
【0027】
本発明による駆動トレインの特に好ましい実施形態では、差動歯車の出力側、好ましくは第1軸ホイール及び第2軸ホイールは、第2ホイール軸、好ましくは当該第2ホイール軸の第1車軸及び第2車軸に回転駆動可能に連結される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】差動歯車の第1実施形態の斜視図及び部分断面図である。
【
図3】差動歯車の第2実施形態の斜視図及び部分断面図である。
【
図5】差動歯車の第3実施形態の側面の断面図である。
【
図6】差動歯車の第4実施形態の側面の面図である。
【
図7】差動歯車、特に
図1~6のいずれかによる差動歯車を備えた駆動トレインの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、例示的な実施形態を用いて、本発明について詳細に説明する。
【0030】
添付図面において、差動歯車2の互いに対向する方向、即ち軸方向4,6、ラジアル方向8,10、及び周方向12,14を対応する矢印で示し、ここで、差動歯車2は、軸方向4と6に延在する回転軸16を有する。
【0031】
【0032】
差動歯車2は、回転軸16の周りを回転できる入力側18を有する。回転軸16の周りを回転できる入力側18は、実質的に回転駆動部分20及び支持部分22から構成される。さらに、差動歯車2は、回転軸16の周りを回転できる出力側24を有する。また、差動歯車2の入力側18は、ピニオン軸26の周りを回転できる少なくとも1つの差動ピニオン28を有し、ここで、2つの差動ピニオン28,30は、図示の実施形態では、同じピニオン軸26の周りを回転できるように設けられている。また、ピニオン軸26は、差動歯車2の回転軸16に対して横方向に、直角に延在し、2つの差動ピニオン28,30は、差動かさ歯車として設計される。一方、出力側24は、軸方向6に互いに対向して設置された第1軸ホイール32及び第2軸ホイール34を有し、第1軸ホイール32及び第2軸ホイール34は、出力側24に属するので、回転軸16の周りを回転でき、且つ差動ピニオン28及び差動ピニオン30の両方と回転駆動可能に係合する。
【0033】
入力側18は、駆動ユニットの駆動ホイールと回転駆動可能に係合するための回転駆動輪郭36(詳細に図示せず)を有する。回転駆動輪郭36は、入力側18の回転駆動部分20に設けられ、ここで、回転駆動輪郭36は、ラジアル方向8において外向きの回転駆動輪郭36であるため、外側回転駆動輪郭36である。図示の実施形態では、回転駆動輪郭36は歯、本明細書では外歯として設計されており、外歯は、例えば、螺旋状の歯として設計される。一方、2つの差動ピニオン28,30は、支持部分22に配置される。
【0034】
差動歯車2の入力側18も同様に歯車ハウジングを形成し、ここで、歯車ハウジングは、いわゆる差動バスケットとも呼ばれ得る。歯車ハウジングは、実質的に軸方向6に互いに続く3つの軸方向部分、即ち、管状軸方向部分38形態の第1軸方向部分と、差動ピニオン28,30及び軸ホイール32,34を収容する軸方向部分40形態の第2軸方向部分と、管状軸方向部分42形態の第3軸方向部分とを有する。図から分かるように、ハウジングの端部を形成する2つの管状軸方向部分38,42は、中心軸方向部分40よりも小さいラジアル方向8,10における延在部を有する。第1軸ホイール及び第2軸ホイール32,34は、入力側18によって形成された歯車ハウジング内に配置されるだけでなく、好ましくは軸方向4,6及びラジアル方向8,10において、滑り軸受によって支持され得るか、又は支持されている。そのため、第1軸ホイール32は、軸受け44を介して軸方向4に支持されるとともに、歯車ハウジング上にラジアル方向8,10に支持される。一方、第2軸ホイール34は、軸方向6において及びラジアル方向8,10において、軸受け46を介して歯車ハウジング上に支持されている。
【0035】
図2から分かるように、入力側18によって形成された歯車ハウジングは、第1軸ホイール32に割り当てられた第1車軸(図示せず)用の軸方向4を向く第1シャフト開口部48と、第2車軸(図示せず)用の軸方向6を向く第2シャフト開口部50とを有し、ここで、第1シャフト開口部48は、管状軸方向部分38内に形成され、第2シャフト開口部50は、管状軸方向部分42内に形成される。
【0036】
図1及び2に示した実施形態では、入力側18の回転駆動部分20は、上記歯車ハウジングを形成し、歯車ハウジングは、ここでは実質的に同じ構造である2つのハウジング半部52,54から構成され、2つのハウジング半部52,54は、環状ハウジングパーツ56の介在で固定され、ここでは例えばねじ連結部58によって互いに固定されている。また、ハウジング半部52,54は、軸方向4,6において、環状ディスク60を介して環状ハウジングパーツ56上に支持されている。
【0037】
入力側18の前述の支持部分22は、回転駆動部分20によって形成された歯車ハウジング内に収容される。支持部分22は、環状であり、且つラジアル方向8,10に延在するシャフト62を有し、シャフト62上に、ピニオン軸26の周りを回転可能にピニオン歯車28,30が取り付けられている。原則として、2つのピニオン歯車28,30のそれぞれに、それら自体の独自のシャフトが割り当てられてもよい。環状支持部分22は、軸方向4,6において、入力側18の回転駆動部分20によって形成された歯車ハウジング上に支持されることができ、支持部分22は、軸方向4,6において、歯車ハウジングの内部に遊びをもって配置される。図示の実施形態では、支持部分22は、軸方向4において、環状ディスク60のラジアル方向10に突出した部分上に支持され得るか、又は支持されており、且つ、軸方向6において、対向する環状ディスク60のラジアル方向10に突出した部分上に支持され得るか、又は支持されている。
【0038】
入力側18と出力側24との間にトルクを伝達するために必要な場合にのみ、回転駆動部20と支持部22とを回転駆動可能に連結するために、回転駆動部分20と支持部分22との間にシフト可能な歯止めフリーホイール64を配置し、これにより、回転駆動部20と支持部22とを任意選択的に回転駆動可能に連結することができる。歯止めフリーホイール64は、アウターレース66及びインナーレース68を有し、アウターレース66は、ラジアル方向8において、インナーレース68を外側で囲んでいる。枢動可能な歯止め70、72は、ラジアル方向8,10において、アウターレースとインナーレース66、68の間に配置されている。歯止め70、72は、アウターレース66と回転駆動可能に連結され、前記歯止め70、72は、それぞれ解除位置からロック位置に枢動可能である。歯止め70、72は、軸方向4,6に延在している枢動軸74を中心に枢動でき、歯止め70は、解放位置からロック位置へ、及びその逆に、72とは反対方向に枢動可能である。また、歯止め70、72は、ラジアル方向8,10において、ラジアル方向8,10で互いにに対向するインナーレース68及びアウターレース66の側面上支持されることができる。歯止め70、72も対応するばね要素76を介してそれらのロック位置に予張力を加える。
【0039】
特に、回転駆動輪郭36は、環状ハウジングパーツ56のラジアル方向8において外側を向く側面に設けられるので、歯止めフリーホイール64のアウターレース66は、歯車ハウジングの環状ハウジングパーツ56と一体的に形成されるため、回転駆動輪郭36と一体的に形成される。さらに、歯止めフリーホイール64のインナーレース68は、環状支持部分22と一体的に形成されて、特にコンパクトな設計を実現する。原則として、支持部分22は、ラジアル方向8において、追加のラジアル軸受、好ましくは滑り軸受によって歯車ハウジング上に指示され得るか、又は支持されているが、図示の実施形態では、環状支持部分22は、ラジアル方向8において歯止めフリーホイール64によって支持され、より正確には、アウターレース66及びインナーレース68のラジアル方向8,10において互いに対向する側面上に支持され、そのため、この方法によりも滑り軸受が生成され、歯止めフリーホイール64は二重機能を有する。
【0040】
また、歯止めフリーホイール64、特にそのアウターレース66及びインナーレース68、及び回転駆動輪郭36は、回転駆動部分20と支持部分22との間の可能な限り最も直接的で信頼性の高いトルク伝達を達成するために、ピニオン歯車28,30とともにラジアル方向8,10に入れ子状に配置される。特に、歯止め70、72は、ピニオン歯車28,30とともにラジアル方向8,10に入れ子状に配置される。
図1及び2に示すように、止めフリーホイール64、特にそのレース66、68及び/又は回転駆動輪郭36が、ピニオン軸26に整列して配置されているか、又は当該ピニオン軸26上に配置あされている場合に、特に有利であることが証明された。図示された実施形態では、
図2による側面図において、ピニオン軸26は、歯止めフリーホイール64用の対称軸又は中心軸を形成する。
【0041】
歯止めフリーホイール64を異なるシフト位置にシフトさせることを可能にするために、歯止めフリーホイール64には、軸方向4,6に変位可能な起動要素78が割り当てられる。原則として、起動要素78は、差動歯車2の入力側18上に直接配置されることができるが、
図1及び2による実施形態では、起動要素78は、入力側18に固定された支持要素80を介して軸方向4,6に変位できるため、入力側18上に間接的に配置される。
【0042】
起動要素78は、ラジアル方向8,10及び軸方向4,6に摺動方法で支持要素80の管状支持要素部分84上に支持され得るか、又は支持されている管状支持部分82を有する。その後、支持要素80は、歯車ハウジング、本明細書ではハウジング半部54に固定され、好ましくは板金又は成形された板金部品として設計され、ここで、管状支持要素部分84は、軸方向4,6に延在している。起動要素78は、その歯止めフリーホイール64から離れる側面に軸方向6において支持部分82に隣接するラジアル部分86を有し、ラジアル部分86を介して起動要素78が作動装置によって軸方向4,6に把持され、移動することができる。軸方向4で支持部分82に隣接する起動要素78の別のラジアル部分88には、軸方向4に突出する起動要素78の起動ピン90が設けられ、起動ピン90は、歯止め70、72を対応する解放位置又はロック位置に変換できるために、歯止めフリーホイール64の歯止め70、72と直接相互作用することができる。各歯止め70、72には、いずれの場合も起動ピン90が割り当てられている。
【0043】
したがって、起動要素78は、軸方向4において、
図1及び2に示す第1軸方向位置と、第2軸方向位置と、第3軸方向位置との間で変位可能である。第1軸方向位置では、回転駆動部分20は、第1相対回転方向及び第2相対回転方向において、歯止め70、72を介して支持部分22に回転駆動可能に結合され、ここで、歯止め70、72は、前述のばね要素76によってそれらのロック位置に保持される。第2軸方向位置では、回転駆動部分20は、第2相対回転方向ではなく、第1相対回転方向において歯止め70又は歯止め72を介して支持部分22に回転駆動可能に結合される。しかし、第3軸方向位置では、回転駆動部分20は、第1相対回転方向においても、第2相対回転方向においても、歯止め70、72を介して支持部分22に回転駆動可能に結合されない。回転駆動輪郭36に割り当てられた駆動ホイール(図示せず)が電気機械によって駆動される場合、前述の説明から分かるように、第1軸方向位置のおかげで、電気機械は、差動歯車2の出力側24によって駆動できる発電機としても動作できることができる。
【0044】
歯止めフリーホイール64の様々なシフト位置を特に狙い方法で設定及び保持できるようにするために、起動要素78には、歯止めフリーホイール64に対して少なくとも1つの軸方向位置、好ましくは少なくとも2つ又は少なくとも3つの軸方向位置に起動要素78をラッチするためのラッチ装置92も割り当てられ、ここで、ラッチ装置92は、図示の実施形態では、第1、第2及び第3軸方向位置におけるラッチを可能にする。
図1及び2による実施形態では、ラッチ装置92は、ラジアル方向8,10において、起動要素78の管状支持部分82と支持要素80の管状支持要素部分84との間に配置され、これらの部分の間で動作させる。ラッチ装置92は、一方にラジアル方向8又は10においてばね予張力が加えられたラッチ要素94を有し、他方に、ラッチ要素94がそれぞれの軸方向位置に達したときにラッチすることができる2つ以上のラッチ凹部96を有する。
【0045】
図3及び4は、動歯車2の第2実施形態を示し、第2実施形態における差動歯車2は、実質的に、
図1及び2による差動歯車に対応し、そのため、以下にその相違点について実質的に説明し、同じ又は類似のパーツには同一の符号が使用され、それ以外の場合には、上記説明を適宜適用する。
【0046】
第1実施形態とは対照的に、第2実施形態における歯車ハウジングは、入力側18によって形成されるが、本明細書では入力側18の支持部22によって形成される。歯止めフリーホイール64のインナーレース68は、歯車ハウジングを形成する支持部分22と一体的に形成される。これに対して、アウターレース66は、回転駆動輪郭36を有する入力側18に回転駆動部分20の入力歯車98とは別に形成され、ここで、回転駆動部分20の入力歯車98は、例えばねじによって歯止めフリーホイール64のアウターレース66に回転不能な方法で固定される。入力歯車98は、本明細書では例示的に管状であり、且つ回転駆動輪郭36が設けられているラジアル方向8における外側部分100と、外側部分100と一体的に形成されたラジアル部分102の形態であるラジアル方向10における外側部分100に隣接する内側部分とを有する。入力歯車98は、ラジアル方向10においてラジアル軸受104を介して内向きに支持部分22によって形成された歯車ハウジング上に、より正確には歯車ハウジングの 管状軸方向部分38上に支持され得るか、又は支持されており、ラジアル軸受104は、本明細書ではころ軸受又はニードル軸受として例示的に設計される。また、対向する軸方向4,6において、入力歯車98は、歯車ハウジングに直接又は間接的に支持されて固定される。
【0047】
図3及び4による第2実施形態にも支持要素80及びラッチ装置92が設けられるが、ラッチ装置92は、ラジアル方向8,10において、起動要素78のラジアル部分88と、ラジアル方向8,10において管状支持要素部分84と対向する第2管状支持要素部分106との間にラッチ要素94及びラッチ凹部 96と一緒に配置される。本実施形態では、2つの管状支持要素部84及び106が一体構造又は板金部を形成し、ここで、2つの部分84及び106は、ラジアル部分108を介して互いに連結されている。
【0048】
また、
図3及び4による第2実施形態では、歯止めフリーホイール64は、ラジアル方向8,10において、ピニオン歯車28,30と少なくとも部分的に入れ子状に配置され、ピニオン歯車28,30も、少なくともわずかに回転駆動輪郭36に適合する。
【0049】
図5は、
図3及び4による実施形態に実質的に対応する差動歯車2の第3実施形態を示し、したがって、以下に相違点のみについて説明し、同じ又は類似のパーツには同一の符号が使用され、それ以外の場合には上記説明を適用する。
【0050】
図3および
図4による第2実施形態とは対照的に、回転駆動輪郭36は、歯止めフリーホイール64のアウターレース66と一体的に形成され、その結果、回転駆動輪郭36とピニオン歯車28,30とのラジアル入れ子の意味でのより大きな軸方向重なり合いを達成できる。しかし、前述のラジアル部分102は、その後、例えば溶接により、歯止めフリーホイール64のアウターレース66に固定される。そうでなければ、ラジアル部分102は、
図3及び
図4に示す支持に対応する歯車ハウジング上にラジアル方向8,10及び軸方向4,6で支持される。
【0051】
図6は、少なくとも部分的な表現における差動歯車2の第4実施形態を示しており、第4の実施形態における差動歯車2は、前述の実施形態における差動歯車2に実質的に対応しており、以下では、相違点のみを説明し、同じ又は類似のパーツには同一の符号が使用され、それ以外の場合には、上記説明を適宜適用する。ピニオン歯車28,30、シャフト62及びアクスル歯車32,34は、単に明確にするために省略されただけである。
【0052】
第4実施形態では、回転駆動部分20の回転駆動輪郭36は、ラジアル方向10における内側の回転駆動輪郭36として、したがって例えば内歯として設計されている。第4実施形態では、回転駆動輪郭36も、歯止めフリーホイール64のインナーレース68と一体的に形成される。ラジアル方向10において内側を向く内側の回転駆動輪郭36は、管状駆動ホイール110に回転駆動可能に係合され、管状駆動ホイール110は、入力側18及び出力側24と同軸に配置され、好ましくは電気機械によって駆動され得る。管状駆動ホイール110は、ラジアル軸受112を介して歯車ハウジング上に、より正確には歯車ハウジングの管状軸方向部分38上に支持され、取り付けられている。ラジアル軸受112は、ラジアル方向8,10において、回転駆動輪郭36とともに入れ子状に配置される。
【0053】
図6からも分かるように、起動要素78の支持部分82は、追加の支持要素上に配置されず、入力側、本明細書では入力側18の支持部分22に直接配置されることにより、軸方向46において変位可能に配置される。この目的のために、起動要素78の支持部分82は、周方向12,14に沿って延在する外側114上に支持されている。ラジアル方向8,10において、当該周方向の外側114と起動要素78の支持部分82との間に、上記の構成要素を備えているラッチ装置92は、即ちラッチ要素94及びラッチ凹部96が配置されている
図6による有利な実施形態では、周方向の外側114は、支持部分22によって形成された歯車ハウジングのフランジ状のラジアル部分116のラジアル方向8を向く側面上に形成される。
【0054】
図7は、自動車用の駆動トレイン118、特にハイブリッド車の概略図を示し、ここで、駆動トレイン118は、全ホイール駆動又は四ホイール駆動に適している。したがって、駆動トレイン118は、実質的に、その端部が自動車のホイール126に連結される2つの車軸122,124によって画定される第1ホイール軸120を有する。第1ホイール軸120は、第1駆動ユニット128によって駆動されることができ、ここで、第1駆動ユニット128は、内燃機関及び/又は電気駆動ユニット、好ましくは電気機械であり得る。ここで特に好ましいのは、電気機械と内燃機関との組合せとしてのハイブリッド駆動ユニットである。
【0055】
また、駆動トレイン118は、第2ホイール軸130を有し、ここで、第2ホイール軸130は、実質的に、第1車軸132及び第2車軸134によって画定され、自動車又は駆動トレイン118のホイール126は、第1車軸132及び第2車軸134の外側端部に順番に配置される。本発明によるタイプの差動歯車2は、第1車軸132と第2車軸134との間に配置され、第1の車軸132は、第1シャフト開口部48を通過して回転不能な方法で第1車軸32に連結するようにギヤハウジング内に突出している。反対軸方向4において、第2車軸134は、回転不能な方法で第2軸ホイール34に連結されるように歯車ハウジングの第2シャフト開口部50内に突出している。第2ホイール軸130又はその車軸132,134は、任意選択的に、差動歯車2を介して第2駆動ユニット136によって駆動されることができ、第2駆動ユニット136は、好ましくは電気駆動ユニット、特に好ましくは電気機械であり、その後、電気機械は、発電機としても有利に動作することができる。このような第2ホイール軸130の駆動を保証にするために、回転駆動部分20の回転駆動輪郭36は、第2駆動ユニット136の駆動ホイール(図示せず)に回転駆動可能に連結されており、第1軸ホイール32及び第2軸ホイール34は、既に説明したように、第2ホイール軸130の第1車軸132および第2車軸134に回転駆動可能に連結される。
【符号の説明】
【0056】
2 差動歯車
4l 軸方向
6 軸方向
8 ラジアル方向
10 ラジアル方向
12 周方向
14 周方向
16 回転軸
18 入力側
20 回転駆動部分
22 支持部分
24 出力側
26 ピニオン軸
28 ピニオン歯車
30 ピニオン歯車
32 第1軸ホイール
34 第2軸ホイール
36 回転駆動輪郭
38 管状軸方向部分
40 軸方向部分
42 管状軸方向部分
44 軸受け
46 軸受け
48 第1シャフト開口部
50 第2シャフト開口部
52 ハウジング半部
54 ハウジング半部
56 環状ハウジングパーツ
58 ねじ連結部
60 環状ディスク
62 シャフト
64 歯止めフリーホイール
66 アウターレース
68 インナーレース
70 歯止め
72 歯止め
74 枢動軸
76 ばね要素
78 起動要素
80 支持要素
82 支持部分
84 管状支持要素部分
86 ラジアル部分
88 ラジアル部分
90 起動ピン
92 ラッチ装置
94 ラッチ要素
96 ラッチ凹部
98 入力歯車
100 外側部分
102 ラジアル部分
104 ラジアル軸受
106 第2管状支持要素部分
108 ラジアル部分
110 駆動ホイール
112 ラジアル軸受
114 周方向の外側
116 ラジアル部分
118 駆動トレイン
120 第1ホイール軸
122 車軸
124 車軸
126 ホイール
128 第1駆動ユニット
130 第2ホイール軸
132 第1車軸
134 第2車軸
136 第2駆動ユニット
【外国語明細書】