(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157870
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20231019BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231019BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H01L29/78 626A
H01L29/78 618B
H01L29/78 626C
H01L29/78 613Z
H01L29/78 612B
G09F9/30 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064668
(22)【出願日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2022067469
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022075586
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022086755
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】楠 紘慈
(72)【発明者】
【氏名】川島 進
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 英明
(72)【発明者】
【氏名】熱海 知昭
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 元晴
【テーマコード(参考)】
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
5C094AA15
5C094AA22
5C094AA31
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(57)【要約】
【課題】新規な半導体装置を提供する。
【解決手段】縦チャネル型トランジスタを含む単極性の半導体装置。縦チャネル型トランジスタのゲートソース間寄生容量とゲートドレイン間寄生容量のうち、容量値が大きい方をブートストラップ容量に用いることで、占有面積が小さい半導体装置を実現する。縦チャネル型トランジスタの半導体層に酸化物半導体を用いることで、ソースとドレイン間の絶縁耐圧が高くなり、チャネル長を短くすることができる。また、高温環境下でも安定した動作が実現できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は第1端子と電気的に接続され、
前記第1トランジスタのゲートは第2端子と電気的に接続され、
前記第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は第2トランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第2トランジスタのドレインは第3端子と電気的に接続され、
前記第2トランジスタのソースは第4トランジスタのドレインと電気的に接続され、
第3トランジスタのソースまたはドレインの一方は第4端子と電気的に接続され、
前記第3トランジスタのゲートは第5端子と電気的に接続され、
前記第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は前記第4トランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第4トランジスタのソースは、第5トランジスタのドレイン、第6トランジスタのドレイン、および第6端子と電気的に接続され、
前記第5トランジスタのゲートは第7端子と電気的に接続され、
前記第5トランジスタのソースは第8端子と電気的に接続され、
前記第6トランジスタのゲートは第9端子と電気的に接続され、
前記第6トランジスタのソースは第10端子と電気的に接続され、
前記第2トランジスタは、
第1層上に、第1導電層を有し、前記第1導電層上に第1絶縁層を有し、前記第1絶縁層上に第2導電層を有し、
前記第1絶縁層および前記第2導電層に、前記第1導電層と重なる第1開口を有し、
前記第1開口において、前記第1導電層と接する領域と、前記第1絶縁層と接する領域と、前記第2導電層と接する領域と、を有する第1半導体層を有し、
前記第1半導体層は第2絶縁層に覆われ、
前記第2絶縁層上に、前記第1半導体層と重なる領域を有する第3導電層を有し、
前記第1導電層は前記第3端子と電気的に接続され、
前記第2導電層は前記第4トランジスタのドレインと電気的に接続され、
前記第3導電層は前記第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続され、
前記第4トランジスタは、
前記第1層上に、第4導電層を有し、前記第4導電層上に前記第1絶縁層を有し、前記第1絶縁層上に第5導電層を有し、
前記第1絶縁層および前記第5導電層に、前記第4導電層と重なる第2開口を有し、
前記第2開口において、前記第4導電層と接する領域と、前記第1絶縁層と接する領域と、前記第5導電層と接する領域と、を有する第2半導体層を有し、
前記第2半導体層は前記第2絶縁層に覆われ、
前記第2絶縁層上に、前記第2半導体層と重なる領域を有する第6導電層を有し、
前記第5導電層は前記第5トランジスタのドレインと電気的に接続され、
前記第6導電層は前記第3トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続される半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2端子、前記第3端子、および前記第5端子に第1信号が供給され、
前記第1端子、前記第4端子、前記第8端子、および前記第10端子に第2信号が供給され、
前記第7端子に第1入力信号が供給され、
前記第1端子に前記第1入力信号の反転信号が供給され、
前記第9端子に第2入力信号が供給され、
前記第4端子に前記第2入力信号の反転信号が供給され、
前記第6端子に出力信号が供給され、
前記第2信号は前記第1信号よりも低い電位である半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1半導体層と前記第2半導体層のそれぞれは、酸化物半導体を含む半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記酸化物半導体は、インジウムまたは亜鉛の一方または双方を含む半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1絶縁層は、シリコンおよび窒素を含む2層の絶縁層の間に、シリコンおよび酸素を含む絶縁層を有する半導体装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記第1層は、絶縁性基板または絶縁層である半導体装置。
【請求項7】
第1トランジスタのソースまたはドレインの一方およびゲートは第1端子と電気的に接続され、
前記第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は第2トランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第2トランジスタのドレインは第2端子と電気的に接続され、
前記第2トランジスタのソースは、第3トランジスタのドレイン、第4トランジスタのドレイン、および第3端子と電気的に接続され、
前記第3トランジスタのゲートは第4端子と電気的に接続され、
前記第3トランジスタのソースは第5端子と電気的に接続され、
前記第4トランジスタのゲートは第6端子と電気的に接続され、
前記第4トランジスタのソースは第7端子と電気的に接続され、
前記第2トランジスタは、
第1層上に、第1導電層を有し、前記第1導電層上に第1絶縁層を有し、前記第1絶縁層上に第2導電層を有し、
前記第1絶縁層および前記第2導電層に、前記第1導電層と重なる開口を有し、
前記開口において、前記第1導電層と接する領域と、前記第1絶縁層と接する領域と、前記第2導電層と接する領域と、を有する半導体層を有し、
前記半導体層は第2絶縁層に覆われ、
前記第2絶縁層上に、前記半導体層と重なる領域を有する第3導電層を有し、
前記第1導電層は前記第2端子と電気的に接続され、
前記第2導電層は前記第3端子と電気的に接続され、
前記第3導電層は前記第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続される半導体装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1端子および前記第2端子に第1信号が供給され、
前記第5端子、および前記第7端子に第2信号が供給され、
前記第4端子に第1入力信号が供給され、
前記第6端子に第2入力信号が供給され、
前記第3端子に出力信号が供給され、
前記第2信号は前記第1信号よりも低い電位である半導体装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記半導体層は酸化物半導体を含む半導体装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記酸化物半導体は、インジウムまたは亜鉛の一方または双方を含む半導体装置。
【請求項11】
請求項7において、
前記第1絶縁層は、シリコンおよび窒素を含む2層の絶縁層の間に、シリコンおよび酸素を含む絶縁層を有する半導体装置。
【請求項12】
請求項7または請求項8において、
前記第1層は、絶縁性基板または絶縁層である半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等で開示する発明の一態様は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本明細書等で開示する発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に、半導体装置および半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置(例えば、タッチセンサ)、入出力装置(例えば、タッチパネル)、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置であり、半導体素子(トランジスタ、ダイオード、フォトダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等をいう。また、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップ、パッケージにチップを収納した電子部品は半導体装置の一例である。また、記憶装置、表示装置、発光装置、照明装置および電子機器等は、それ自体が半導体装置であり、かつ、それぞれが半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
近年、電子機器の小型化、軽量化に伴い、トランジスタなどを高密度に集積した集積回路の要求が高まっている。トランジスタを高密度に集積する手段の一つとして、トランジスタの微細化および占有面積の低減が進められている。
【0005】
トランジスタに適用可能な半導体材料として、金属酸化物を用いた酸化物半導体が注目されている。例えば、特許文献1では、複数の酸化物半導体層を積層し、当該複数の酸化物半導体層の中で、チャネルとなる酸化物半導体層がインジウム及びガリウムを含み、且つインジウムの割合をガリウムの割合よりも大きくすることにより、電界効果移動度(単に移動度、またはμFEという場合がある)を高めた半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、占有面積が小さい半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、消費電力の少ない半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、信頼性が良好な半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、新規な半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0008】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は第1端子と電気的に接続され、第1トランジスタのゲートは第2端子と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は第2トランジスタのゲートと電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの一方は第3端子と電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの他方は第4端子および第3トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第3トランジスタのゲートは第5端子と電気的に接続され、第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は第6端子と電気的に接続され、第2トランジスタは、第1層上に、第1導電層を有し、第1導電層上に第1絶縁層を有し、第1絶縁層上に第2導電層を有し、第1絶縁層および第2導電層に、第1導電層と重なる開口を有し、開口において、第1導電層と接する領域と、第1絶縁層と接する領域と、第2導電層と接する領域と、を有する半導体層を有し、半導体層を覆う第2絶縁層を有し、第2絶縁層上に、半導体層と重なる領域を有する第3導電層を有し、第1導電層は第3端子と電気的に接続され、第2導電層は第4端子と電気的に接続され、第3導電層は第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続される半導体装置である。
【0010】
また、(1)において、例えば、第5端子に第1入力信号が供給され、第1端子に第1入力信号の反転信号が供給され、第4端子に出力信号が供給され、第2端子および第3端子に第1信号が供給され、第6端子に第2信号が供給される。また、第2信号は第1信号よりも低い電位であればよい。
【0011】
(2)本発明の別の一態様は、第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は、第1端子および第3トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第2端子および第2トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第4トランジスタのソースまたはドレインの一方、および第1トランジスタのゲートと電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの他方は、第3端子および第4トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続され、第2トランジスタのゲートは、第4端子および第4トランジスタのゲートと電気的に接続され、第1トランジスタは、第1層上に、第1導電層を有し、第1導電層上に第1絶縁層を有し、第1絶縁層上に第2導電層を有し、第1絶縁層および第2導電層に、第1導電層と重なる開口を有し、開口において、第1導電層と接する領域と、第1絶縁層と接する領域と、第2導電層と接する領域と、を有する半導体層を有し、半導体層を覆う第2絶縁層を有し、第2絶縁層上に、半導体層と重なる領域を有する第3導電層を有し、第1導電層が第1端子と電気的に接続され、第2導電層が第2端子と電気的に接続され、第3導電層が第3トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続される半導体装置である。
【0012】
また、(2)において、例えば、第1端子に第1信号が供給され、第3端子に第2信号が供給され、第4端子に入力信号が供給され、第2端子に出力信号が供給される。また、第2信号は第1信号よりも低い電位であればよい。
【0013】
(3)本発明の別の一態様は、第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は第1端子と電気的に接続され、第1トランジスタのゲートは第2端子と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は第2トランジスタのゲートと電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの一方は第3端子と電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの他方は第4端子および第3トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第3トランジスタのゲートは第5端子と電気的に接続され、第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は第4トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第4トランジスタのゲートは第6端子と電気的に接続され、第4トランジスタのソースまたはドレインの他方は第7端子と電気的に接続され、第5トランジスタのソースまたはドレインの一方は第8端子と電気的に接続され、第5トランジスタのゲートは第9端子と電気的に接続され、第5トランジスタのソースまたはドレインの他方は第6トランジスタのゲートと電気的に接続され、第6トランジスタのソースまたはドレインの一方は第10端子と電気的に接続され、第6トランジスタのソースまたはドレインの他方は第4端子および第3トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第2トランジスタは、第1層上に、第1導電層を有し、第1導電層上に第1絶縁層を有し、第1絶縁層上に第2導電層を有し、第1絶縁層および第2導電層に、第1導電層と重なる第1開口を有し、第1開口において、第1導電層と接する領域と、第1絶縁層と接する領域と、第2導電層と接する領域と、を有する第1半導体層を有し、第1半導体層は第2絶縁層に覆われ、第2絶縁層上に、第1半導体層と重なる領域を有する第3導電層を有し、第1導電層は第3端子と電気的に接続され、第2導電層は第4端子と電気的に接続され、第3導電層は第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続され、第6トランジスタは、第1層上に、第4導電層を有し、第4導電層上に第1絶縁層を有し、第1絶縁層上に第5導電層を有し、第1絶縁層および第5導電層に、第4導電層と重なる第2開口を有し、第2開口において、第4導電層と接する領域と、第1絶縁層と接する領域と、第5導電層と接する領域と、を有する第2半導体層を有し、第2半導体層は第2絶縁層に覆われ、第2絶縁層上に、第2半導体層と重なる領域を有する第6導電層を有し、第4導電層は第10端子と電気的に接続され、第5導電層は第4端子と電気的に接続され、第6導電層は第5トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続される半導体装置である。
【0014】
また、(3)において、例えば、第2端子、第3端子、第9端子、および第10端子に第1信号が供給され、第7端子に第2信号が供給され、第5端子に第1入力信号が供給され、第1端子に第1入力信号の反転信号が供給され、第6端子に第2入力信号が供給され、第8端子に第2入力信号の反転信号が供給され、第4端子に出力信号が供給される。第2信号は第1信号よりも低い電位であればよい。
【0015】
(4)本発明の別の一態様は、第1トランジスタのソースまたはドレインの一方およびゲートは第1端子と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は第2トランジスタのゲートと電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの一方は第2端子と電気的に接続され、第2トランジスタのソースまたはドレインの他方は第3端子および第3トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第3トランジスタのゲートは第4端子と電気的に接続され、第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は第4トランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第4トランジスタのゲートは第5端子と電気的に接続され、第4トランジスタのソースまたはドレインの他方は第6端子と電気的に接続され、第2トランジスタは、第1層上に、第1導電層を有し、第1導電層上に第1絶縁層を有し、第1絶縁層上に第2導電層を有し、第1絶縁層および第2導電層に、第1導電層と重なる開口を有し、開口において、第1導電層と接する領域と、第1絶縁層と接する領域と、第2導電層と接する領域と、を有する半導体層を有し、半導体層は第2絶縁層に覆われ、第2絶縁層上に、半導体層と重なる領域を有する第3導電層を有し、第1導電層は第2端子と電気的に接続され、第2導電層は第3端子と電気的に接続され、第3導電層は第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続される半導体装置である。
【0016】
また、(4)において、例えば、第1端子および第2端子に第1信号が供給され、第6端子に第2信号が供給され、第4端子に第1入力信号が供給され、第5端子に第2入力信号が供給され、第3端子に出力信号が供給される。第2信号は第1信号よりも低い電位であればよい。
【0017】
(5)本発明の別の一態様は、第1トランジスタのソースまたはドレインの一方は第1端子と電気的に接続され、第1トランジスタのゲートは第2端子と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は第2トランジスタのゲートと電気的に接続され、第2トランジスタのドレインは第3端子と電気的に接続され、第2トランジスタのソースは第4トランジスタのドレインと電気的に接続され、第3トランジスタのソースまたはドレインの一方は第4端子と電気的に接続され、第3トランジスタのゲートは第5端子と電気的に接続され、第3トランジスタのソースまたはドレインの他方は第4トランジスタのゲートと電気的に接続され、第4トランジスタのソースは、第5トランジスタのドレイン、第6トランジスタのドレイン、および第6端子と電気的に接続され、第5トランジスタのゲートは第7端子と電気的に接続され、第5トランジスタのソースは第8端子と電気的に接続され、第6トランジスタのゲートは第9端子と電気的に接続され、第6トランジスタのソースは第10端子と電気的に接続され、第2トランジスタは、第1層上に、第1導電層を有し、第1導電層上に第1絶縁層を有し、第1絶縁層上に第2導電層を有し、第1絶縁層および第2導電層に、第1導電層と重なる第1開口を有し、第1開口において、第1導電層と接する領域と、第1絶縁層と接する領域と、第2導電層と接する領域と、を有する第1半導体層を有し、第1半導体層は第2絶縁層に覆われ、第2絶縁層上に、第1半導体層と重なる領域を有する第3導電層を有し、第1導電層は第3端子と電気的に接続され、第2導電層は第4トランジスタのドレインと電気的に接続され、第3導電層は第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続され、第4トランジスタは、第1層上に、第4導電層を有し、第4導電層上に第1絶縁層を有し、第1絶縁層上に第5導電層を有し、第1絶縁層および第5導電層に、第4導電層と重なる第2開口を有し、第2開口において、第4導電層と接する領域と、第1絶縁層と接する領域と、第5導電層と接する領域と、を有する第2半導体層を有し、第2半導体層は第2絶縁層に覆われ、第2絶縁層上に、第2半導体層と重なる領域を有する第6導電層を有し、第5導電層は第5トランジスタのドレインと電気的に接続され、第6導電層は第3トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続される半導体装置である。
【0018】
また、(5)において、例えば、第2端子、第3端子、および第5端子に第1信号が供給され、第1端子、第4端子、第8端子、および第10端子に第2信号が供給され、第7端子に第1入力信号が供給され、第1端子に第1入力信号の反転信号が供給され、第9端子に第2入力信号が供給され、第4端子に第2入力信号の反転信号が供給され、第6端子に出力信号が供給される。第2信号は第1信号よりも低い電位であればよい。
【0019】
(6)本発明の別の一態様は、第1トランジスタのソースまたはドレインの一方およびゲートは第1端子と電気的に接続され、第1トランジスタのソースまたはドレインの他方は第2トランジスタのゲートと電気的に接続され、第2トランジスタのドレインは第2端子と電気的に接続され、第2トランジスタのソースは、第3トランジスタのドレイン、第4トランジスタのドレイン、および第3端子と電気的に接続され、第3トランジスタのゲートは第4端子と電気的に接続され、第3トランジスタのソースは第5端子と電気的に接続され、第4トランジスタのゲートは第6端子と電気的に接続され、第4トランジスタのソースは第7端子と電気的に接続され、第2トランジスタは、第1層上に、第1導電層を有し、第1導電層上に第1絶縁層を有し、第1絶縁層上に第2導電層を有し、第1絶縁層および第2導電層に、第1導電層と重なる開口を有し、開口において、第1導電層と接する領域と、第1絶縁層と接する領域と、第2導電層と接する領域と、を有する半導体層を有し、半導体層は第2絶縁層に覆われ、第2絶縁層上に、半導体層と重なる領域を有する第3導電層を有し、第1導電層は第2端子と電気的に接続され、第2導電層は第3端子と電気的に接続され、第3導電層は第1トランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続される半導体装置である。
【0020】
また、(6)において、例えば、第1端子および第2端子に第1信号が供給され、第5端子、および第7端子に第2信号が供給され、第4端子に第1入力信号が供給され、第6端子に第2入力信号が供給され、第3端子に出力信号が供給される。第2信号は第1信号よりも低い電位であればよい。
【0021】
また、(1)、(2)、(4)、および(6)における半導体層は、酸化物半導体を含むことが好ましい。また、(3)および(5)における第1半導体層および第2半導体層のそれぞれは、酸化物半導体を含むことが好ましい。酸化物半導体は、インジウムまたは亜鉛の一方または双方を含むことが好ましい。第1絶縁層は、シリコンおよび窒素を含む2層の絶縁層の間に、シリコンおよび酸素を含む絶縁層を有することが好ましい。また、上記第1層として、絶縁性基板または絶縁層を用いてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、占有面積が小さい半導体装置を提供できる。または、消費電力の少ない半導体装置を提供できる。または、信頼性が良好な半導体装置を提供できる。または、新規な半導体装置を提供できる。
【0023】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1(A)は、トランジスタの平面図である。
図1(B)は、トランジスタの断面図である。
図1(C)は、トランジスタの斜視図である。
図1(D)は、トランジスタの等価回路図である。
【
図2】
図2(A)および
図2(B)は、トランジスタの断面図である。
図2(C)乃至
図2(F)は、開口の平面図である。
【
図3】
図3(A)および
図3(B)は、トランジスタの平面図である。
【
図4】
図4(A)は、トランジスタの断面図である。
図4(B)は、トランジスタの等価回路図である。
【
図5】
図5(A)は、トランジスタの平面図である。
図5(B)は、トランジスタの断面図である。
図5(C)は、トランジスタの斜視図である。
図5(D)は、トランジスタの等価回路図である。
【
図7】
図7(A)および
図7(B)は、半導体装置の断面図である。
【
図8】
図8(A)および
図8(B)は半導体装置の回路図である。
図8(C)は、インバータ回路の回路記号である。
【
図9】
図9は、半導体装置の動作例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】
図10(A)および
図10(B)は、半導体装置の動作例を説明するための回路図である。
【
図11】
図11(A)および
図11(B)は、半導体装置の動作例を説明するための回路図である。
【
図22】
図22(A)および
図22(C)はNAND回路の回路記号である。
図22(B)は入力信号と出力信号の組み合わせを示す図である。
【
図23】
図23は、半導体装置の動作例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図24】
図24(A)および
図24(B)は、半導体装置の動作例を説明するための回路図である。
【
図25】
図25(A)および
図25(B)は、半導体装置の動作例を説明するための回路図である。
【
図34】
図34(A)および
図34(C)はNOR回路の回路記号である。
図34(B)は入力信号と出力信号の組み合わせを示す図である。
【
図35】
図35は、半導体装置の動作例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図36】
図36(A)および
図36(B)は、半導体装置の動作例を説明するための回路図である。
【
図37】
図37(A)および
図37(B)は、半導体装置の動作例を説明するための回路図である。
【
図40】
図40(A)は表示装置の斜視図である。
図40(B)は表示装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しとなる説明を省略する場合がある。
【0026】
また、図面などにおいて示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面などに開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層およびレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、発明の理解を容易とするため、記載を省略する場合がある。
【0027】
また、本明細書等において、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成し、その後にエッチング工程(除去工程)を行う場合は、特段の説明がない限り、当該レジストマスクは、エッチング工程終了後に除去するものとする。
【0028】
また、特に平面図(「上面図」ともいう。)および斜視図などにおいて、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
【0029】
本明細書等において、「第1」、「第2」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番または順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において付された序数詞と、特許請求の範囲において付された序数詞が異なる場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
【0030】
また、本明細書等において「電極」、「配線」、および「端子」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」および「配線」の用語は、複数の「電極」および「配線」が一体となって設けられている場合なども含む。また、例えば、「端子」は「配線」または「電極」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。更に、「端子」の用語は、複数の「電極」「配線」「端子」などが一体となって形成されている場合なども含む。そのため、例えば、「電極」は「配線」または「端子」の一部とすることができ、また、例えば、「端子」は「配線」または「電極」の一部とすることができる。また、「電極」、「配線」、および「端子」などの用語は、場合によって、「領域」などの用語に置き換え可能な場合がある。
【0031】
また、本明細書等において、信号の供給とは、配線などに所定の電位を供給することをいう。よって、「信号」を「電位」の用語に読み替えることが可能な場合がある。また、「電位」の用語を「信号」に読み替えることが可能な場合がある。また、「信号」は変動電位であってもよく、固定電位であってもよい。例えば、電源電位であってもよい。
【0032】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0033】
また、本明細書等において、「容量素子」とは、例えば、0Fよりも高い静電容量の値を有する回路素子、0Fよりも高い静電容量の値を有する配線の領域、寄生容量、またはトランジスタのゲート容量とすることができる。また、「容量素子」、「寄生容量」、または「ゲート容量」という用語は、「容量」という用語に言い換えることができる場合がある。逆に、「容量」という用語は、「容量素子」、「寄生容量」、または「ゲート容量」という用語に言い換えることができる場合がある。また、「容量」(3端子以上の「容量」を含む)は、絶縁体と、当該絶縁体を挟んだ一対の導電体と、を含む構成となっている。そのため、「容量」の「一対の導電体」という用語は、「一対の電極」、「一対の導電領域」、「一対の領域」、または「一対の端子」に言い換えることができる。また、「一対の端子の一方」という用語は、「一方の端子」または「第1端子」と呼称する場合がある。また、「一対の端子の他方」という用語は、「他方の端子」または「第2端子」と呼称する場合がある。なお、静電容量の値としては、例えば、0.05fF以上10pF以下とすることができる。また、例えば、1pF以上10μF以下としてもよい。
【0034】
トランジスタの「ソース」および「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合、もしくは、回路動作において電流の方向が変化する場合などで入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、「ソース」および「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0035】
本明細書などにおいて、「ゲート」とは、ゲート電極およびゲート配線の一部または全部のことをいう。ゲート配線とは、少なくとも一つのトランジスタのゲート電極と、別の電極または別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0036】
本明細書などにおいて、「ソース」とは、ソース領域、ソース電極、およびソース配線の一部または全部のことをいう。ソース領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ソース電極とは、ソース領域に接続される部分を含む導電層のことをいう。ソース配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極または別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0037】
本明細書などにおいて、「ドレイン」とは、ドレイン領域、ドレイン電極、およびドレイン配線の一部または全部のことをいう。ドレイン領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ドレイン電極とは、ドレイン領域に接続される部分を含む導電層のことをいう。ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極または別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0038】
また、本明細書等に示すトランジスタは、特に断りがない場合、エンハンスメント型(ノーマリーオフ型)の電界効果トランジスタとする。また、本明細書等に示すトランジスタがnチャネル型トランジスタであり、特に断りがない場合、該トランジスタのしきい値電圧(「Vth」ともいう。)は、0Vよりも大きいものとする。また、本明細書等に示すトランジスタがpチャネル型トランジスタであり、特に断りがない場合、該トランジスタのしきい値電圧(「Vth」ともいう。)は、0V以下であるものとする。また、特に断りがない場合、同じ導電型の複数のトランジスタのVthは、全て等しいものとする。
【0039】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(「非導通状態」または「遮断状態」ともいう)にあるときにソースとドレインの間に流れる電流(「ドレイン電流」または「Id」ともいう。)をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ソースを基準とした時のゲートとソースの間の電位差(「ゲート電圧」または「Vg」ともいう。)がしきい値電圧よりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、Vgがしきい値電圧よりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、VgがVthよりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0040】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0041】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オン電流とは、トランジスタがオン状態(「導通状態」ともいう。)にあるときのIdをいう。オン状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、Vgがしきい値電圧以上である状態、pチャネル型トランジスタでは、Vgがしきい値電圧以下である状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオン電流とは、VgがVth以上であるときのドレイン電流を言う場合がある。
【0042】
また、本明細書等において、高電源電位VDD(以下、単に「VDD」または「電位H」ともいう。)とは、低電源電位VSSよりも高い電位の電源電位を示す。また、低電源電位VSS(以下、単に「VSS」または「電位L」ともいう。)とは、高電源電位VDDよりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位GND(以下、単に「GND」ともいう。)をVDDまたはVSSとして用いることもできる。例えばVDDがGNDの場合には、VSSはGNDより低い電位であり、VSSがGNDの場合には、VDDはGNDより高い電位である。なお、本明細書等では、明示される場合を除き、VSSを基準の電位とする。
【0043】
また、一般に「電圧」とは、ある電位と基準の電位(例えば、接地電位またはソース電位など)との電位差のことを示す場合が多い。また、「電位」は相対的なものであり、基準となる電位によって配線等に与える電位が変化する場合がある。よって「電圧」と「電位」は互いに言い換えることが可能な場合がある。
【0044】
本明細書等において、「上に」、「下に」、「上方に」、または「下方に」などの配置を示す語句は、構成要素同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている場合がある。また、構成要素同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書等で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。例えば、「導電体の上面に位置する絶縁体」の表現では、示している図面の向きを180度回転することによって、「導電体の下面に位置する絶縁体」と言い換えることができる。
【0045】
また、「上」および「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0046】
本明細書等において、「重なる」などの用語は、構成要素の積層順などの状態を限定するものではない。例えば、「絶縁層Aに重なる電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが形成されている状態に限らず、絶縁層Aの下に電極Bが形成されている状態または絶縁層Aの右側(もしくは左側)に電極Bが形成されている状態などを除外しない。
【0047】
本明細書等において、「隣接」および「近接」の用語は、構成要素が直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層Aに隣接する電極B」の表現であれば、絶縁層Aと電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0048】
本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」または「概略平行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」または「概略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0049】
本明細書等において、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」(これらの同意語を含む)などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
【0050】
本明細書等において、対象物の端部がテーパー形状であるとは、その端部の領域において被形成面(底面)と側面(表面)との成す角度が0度より大きく90度未満であり、端部から連続的に厚さが増加するような断面形状を有することをいう。また、テーパー角とは、対象物の端部における、底面(被形成面)と側面(表面)との成す角をいう。
【0051】
また、本明細書に係る図面等において、X方向、Y方向、およびZ方向を示す矢印を付す場合がある。本明細書等において、「X方向」とはX軸に沿う方向であり、明示する場合を除き順方向と逆方向を区別しない場合がある。「Y方向」および「Z方向」についても同様である。また、X方向、Y方向、およびZ方向は、それぞれが互いに交差する方向である。より具体的には、X方向、Y方向、およびZ方向は、それぞれが互いに直交する方向である。本明細書などでは、X方向、Y方向、またはZ方向の1つを「第1方向」または「第1の方向」と呼ぶ場合がある。また、他の1つを「第2方向」または「第2の方向」と呼ぶ場合がある。また、残りの1つを「第3方向」または「第3の方向」と呼ぶ場合がある。
【0052】
本明細書等において、複数の要素に同じ符号を用いる場合、特に、それらを区別する必要があるときには、符号に“A”、“b”、“_1”、“[n]”、“[m,n]”などの識別用の符号を付記して記載する場合がある。例えば、EL層172を、EL層172R、EL層172G、EL層172B、およびEL層172Wに分けて示す場合がある。
【0053】
(実施の形態1)
本発明の一態様に係るトランジスタ10について説明する。
図1(A)は、トランジスタ10の平面図である。
図1(B)は、
図1(A)にA1-A2の一点鎖線で示した部位の断面図である。
図1(C)は、トランジスタ10の斜視図である。
図1(D)は、トランジスタ10の等価回路図である。トランジスタ10の構成を理解しやすくするため、
図1(A)および
図1(C)では、トランジスタ10の構成要素の記載の一部を省略している。例えば、
図1(A)および
図1(C)において、
図1(B)に示す絶縁層117などの記載を省略している。
【0054】
また、
図2(A)および
図2(B)は、
図1(B)に示すトランジスタ10の拡大図である。また、
図2(C)は、開口112をZ方向から見た図である。
【0055】
トランジスタ10は、基板101上に絶縁層102を有し、絶縁層102上に導電層108を有する。また、導電層108上に絶縁層109を有し、絶縁層109の上に絶縁層110を有し、絶縁層110の上に絶縁層111を有する。また、絶縁層111の上に導電層113を有する。
【0056】
また、導電層108の一部と重なる領域において、導電層113、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口112が設けられている(
図1(B)および
図2(A)参照)。また、開口112に半導体層114を有する。半導体層114は、開口112の底部と重なる領域と、開口112の側面と重なる領域と、を有する。半導体層114は、絶縁層111の側面と接する領域と、絶縁層110の側面と接する領域と、絶縁層109の側面と接する領域と、を有する。また、半導体層114の一部が導電層113と電気的に接続し、半導体層114の他の一部が導電層108と電気的に接続する。
【0057】
また、絶縁層111、導電層113、および半導体層114の上に絶縁層115を有し、絶縁層115の上に導電層116を有する。また、絶縁層115および導電層116の上に絶縁層117を有する。絶縁層115は、半導体層114を介して開口112の側面と重なる領域を有する。導電層116は半導体層114を覆って設けられる。よって、導電層116は、半導体層114の端部を越えて延在する領域を有する。また、導電層116は、絶縁層115および半導体層114を介して開口112の側面と重なる領域を有する。
【0058】
導電層108は、トランジスタ10のソース電極またはドレイン電極の一方として機能する。また、導電層113は、トランジスタ10のソース電極またはドレイン電極の他方として機能する。例えば、導電層108はトランジスタ10のドレイン電極として機能する場合、導電層113はトランジスタ10のソース電極として機能する。
【0059】
半導体層114は、トランジスタ10のチャネルが形成される半導体層として機能し、絶縁層115はゲート絶縁層として機能し、導電層116はゲート電極として機能する。よって、トランジスタ10は、開口112を含む領域に設けられている。
【0060】
トランジスタ10はソース電極とドレイン電極がZ方向に配置される。よって、トランジスタ10のソースとドレインは、それぞれが異なる高さに配置される。言い換えると、トランジスタ10のソースとドレインは、それぞれがZ方向の異なる位置に配置される。このようなトランジスタを、「縦チャネル型トランジスタ」、「縦型チャネルトランジスタ」、「縦型トランジスタ」、または「VFET(Vertical Field Effect Transistor)」ともいう。縦チャネル型トランジスタでは、Idの流れる方向にZ方向(縦方向)を含む。例えば、縦チャネル型トランジスタであるトランジスタ10において、半導体層114の被形成面である導電層108上面とIdの流れる方向がなす角度は、5度以上110度以下、もしくは10度以上90度以下、もしくは30度以上90度以下、もしくは60度以上90度以下となる。
【0061】
縦チャネル型トランジスタは、ソース電極とドレイン電極がZ方向に配置されるため、トランジスタの占有面積を低減できる。半導体装置に縦チャネル型トランジスタを用いることにより、半導体装置の占有面積を著しく低減できる。
【0062】
ここで、本発明の一態様に係るトランジスタ10または半導体装置に用いることができる材料について説明しておく。
【0063】
[基板]
基板101に用いる材料に大きな制限はない。目的に応じて、透光性の有無および加熱処理に耐えうる程度の耐熱性などを勘案して決定すればよい。例えばバリウムホウケイ酸ガラスおよびアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁性基板を用いることができる。また、半導体基板、可撓性基板(フレキシブル基板)、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどを用いてもよい。
【0064】
半導体基板としては、例えば、シリコン、もしくはゲルマニウムなどを材料とした半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、もしくは酸化ガリウムを材料とした化合物半導体基板などがある。また、半導体基板は、単結晶半導体であってもよいし、多結晶半導体であってもよい。
【0065】
本発明の一態様に係るトランジスタ10などを表示装置に用いる場合の基板として、例えば、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の面積が大きなガラス基板を用いることができる。これにより、大型の表示装置を作製できる。また、基板が大型化されることで、1枚の基板からより多くの表示装置を生産でき、生産コストを削減できる。
【0066】
可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネイト(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ポリシロキサン、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ABS樹脂、セルロースナノファイバーなどを用いることができる。
【0067】
基板として上記材料を用いることにより、トランジスタ10を含む軽量な半導体装置を提供できる。また、基板として上記材料を用いることにより、衝撃に強い半導体装置を提供できる。また、基板として上記材料を用いることにより、破損しにくい半導体装置を提供できる。
【0068】
基板に用いる可撓性基板は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。基板に用いる可撓性基板は、例えば、線膨張率が1×10-3/K以下、5×10-5/K以下、または1×10-5/K以下である材質を用いればよい。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可撓性基板として好適である。
【0069】
[導電層]
トランジスタ10のゲート電極、ソース電極およびドレイン電極だけでなく、半導体装置を構成する各種配線および電極などの導電層に用いる導電性材料として、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)等から選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金、または上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。導電性材料の形成方法は特に限定されず、蒸着法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法、CVD(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種形成方法を用いることができる。
【0070】
また、導電性材料として、Cu-X合金(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu-X合金で形成した層は、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可能となる。また、導電性材料として、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一または複数の元素を含むアルミニウム合金を用いてもよい。
【0071】
また、導電層に用いることのできる導電性材料として、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの、酸素を有する導電性材料を用いることもできる。また、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステンなどの、窒素を含む導電性材料を用いることもできる。また、導電層を、酸素を有する導電性材料、窒素を含む導電性材料、前述した金属元素を含む材料を適宜組み合わせた積層構造とすることもできる。
【0072】
例えば、導電層を、シリコンを含むアルミニウム層の単層構造、アルミニウム層上にチタン層を積層する二層構造、窒化チタン層上にチタン層を積層する二層構造、窒化チタン層上にタングステン層を積層する二層構造、窒化タンタル層上にタングステン層を積層する二層構造、チタン層と、そのチタン層上にアルミニウム層を積層し、さらにその上にチタン層を積層する三層構造としてもよい。
【0073】
また、上記の導電性材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、導電層を前述した金属元素を含む材料と酸素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料、酸素を含む導電性材料、および窒素を含む導電性材料を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0074】
例えば、導電層を、インジウムまたは亜鉛の少なくとも一方と酸素とを含む導電層上に、銅を含む導電層を積層し、さらにその上にインジウムまたは亜鉛の少なくとも一方と酸素とを含む導電層を積層する三層構造としてもよい。この場合、銅を含む導電層の側面もインジウムまたは亜鉛の少なくとも一方と酸素とを含む導電層で覆うことが好ましい。また、例えば、導電層としてインジウムまたは亜鉛の少なくとも一方と酸素とを含む導電層を複数積層して用いてもよい。
【0075】
[絶縁層]
各絶縁層は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、アルミニウムシリケートなどから選ばれた絶縁性材料を、単層でまたは積層して用いる。また、酸化物材料、窒化物材料、酸化窒化物材料、窒化酸化物材料のうち、複数の材料を混合した材料を用いてもよい。
【0076】
絶縁性材料の形成方法は特に限定されず、蒸着法、ALD法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種形成方法を用いることができる。
【0077】
なお、本明細書などにおいて、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い材料をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い材料をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)等を用いて測定することができる。
【0078】
例えば、絶縁層102および絶縁層117は、不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いて形成することが好ましい。例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁材料を、単層で、または積層で用いればよい。不純物が透過しにくい絶縁性材料の一例として、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、窒化シリコンなどを挙げることができる。
【0079】
絶縁層102に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、基板101側からの不純物の拡散を抑制し、トランジスタ10の信頼性を高めることができる。すなわち、トランジスタ10を含む半導体装置の信頼性を高めることができる。絶縁層117に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、絶縁層117よりも上側からの不純物の拡散を抑制し、トランジスタ10の信頼性を高めることができる。すなわち、トランジスタ10を含む半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0080】
また、絶縁層としては、平坦化層として機能できる絶縁層を用いてもよい。平坦化層として機能する絶縁層の材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミドアミド、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、およびこれらの前駆体等が挙げられる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low-k材料)、シロキサン樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層してもよい。
【0081】
なお、シロキサン樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi-O-Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基またはアリール基)またはフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。
【0082】
また、絶縁層などの表面にCMP(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を行なってもよい。CMP処理を行うことにより、絶縁層などの表面の凹凸を低減し、この後形成される絶縁層および導電層の被覆性を高めることができる。
【0083】
[半導体層]
半導体層114として、単結晶半導体、多結晶半導体、微結晶半導体、または非晶質半導体などを、単体でまたは組み合わせて用いることができる。半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどを用いることができる。また、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ヒ化ガリウム、窒化物半導体などの化合物半導体を用いてもよい。化合物半導体として、半導体特性を有する有機物、または半導体特性を有する金属酸化物(酸化物半導体ともいう)を用いることができる。なお、これらの半導体材料に、ドーパントとして不純物が含まれてもよい。
【0084】
酸化物半導体はバンドギャップが2eV以上であるため、チャネルが形成される半導体層に金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いたトランジスタ(「OSトランジスタ」ともいう。)は、オフ電流が著しく少ない。よって、OSトランジスタを含む半導体装置の消費電力を低減できる。また、OSトランジスタは高温環境下においても動作が安定し、特性変動が少ない。例えば、高温環境下でもオフ電流がほとんど増加しない。具体的には、室温以上200℃以下の環境温度下でもオフ電流がほとんど増加しない。また、高温環境下でもオン電流が低下しにくい。よって、OSトランジスタを含む半導体装置は、高温環境下においても動作が安定し、高い信頼性が得られる。
【0085】
なお、本実施の形態などでは、トランジスタ10としてOSトランジスタを用いる。OSトランジスタはソースとドレイン間の絶縁耐圧が高いため、チャネル長を短くすることができる。よって、オン電流を大きくすることができる。OSトランジスタは、縦チャネル型トランジスタに好適である。
【0086】
OSトランジスタの半導体層に用いることができる金属酸化物として、例えば、インジウム酸化物、ガリウム酸化物、および亜鉛酸化物が挙げられる。金属酸化物は、少なくともインジウム(In)または亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、金属酸化物は、インジウムと、元素Mと、亜鉛と、の中から選ばれる二または三を有することが好ましい。なお、元素Mは、酸素との結合エネルギーが高い金属元素または半金属元素であり、例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い金属元素または半金属元素である。
【0087】
元素Mとして、具体的には、アルミニウム、ガリウム、スズ、イットリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、ランタン、セリウム、ネオジム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、及びアンチモンなどが挙げられる。金属酸化物が有する元素Mは、上記元素のいずれか一種または複数種であることが好ましく、アルミニウム、ガリウム、スズ、及びイットリウムから選ばれた一種または複数種であることがより好ましく、ガリウムがさらに好ましい。なお、本明細書等において、金属元素と半金属元素をまとめて「金属元素」と呼ぶことがあり、本明細書等に記載の「金属元素」には半金属元素が含まれることがある。
【0088】
例えば、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物)、インジウム錫酸化物(In-Sn酸化物)、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムガリウム酸化物(In-Ga酸化物)、インジウムガリウムアルミニウム酸化物(In-Ga-Al酸化物)、インジウムガリウムスズ酸化物(In-Ga-Sn酸化物)、ガリウム亜鉛酸化物(Ga-Zn酸化物、GZOとも記す)、アルミニウム亜鉛酸化物(Al-Zn酸化物、AZOとも記す。)、インジウムアルミニウム亜鉛酸化物(In-Al-Zn酸化物、IAZOとも記す)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(In-Ga-Zn酸化物、IGZOとも記す)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物、IGZTOとも記す)、インジウムガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(In-Ga-Al-Zn酸化物、IGAZOまたはIAGZOとも記す)などを用いることができる。または、シリコンを含むインジウム錫酸化物、ガリウムスズ酸化物(Ga-Sn酸化物)、アルミニウムスズ酸化物(Al-Sn酸化物)などを用いることができる。
【0089】
金属酸化物に含まれる全ての金属元素の原子数の和に対するインジウムの原子数の割合を高くすることにより、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる。
【0090】
なお、金属酸化物は、インジウムに代えて、または、インジウムに加えて、周期番号が大きい金属元素の一種または複数種を有してもよい。金属元素の軌道の重なりが大きいほど、金属酸化物におけるキャリア伝導は大きくなる傾向がある。よって、周期番号が大きい金属元素を含むことで、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる場合がある。周期番号が大きい金属元素として、第5周期に属する金属元素、及び第6周期に属する金属元素などが挙げられる。当該金属元素として、具体的には、イットリウム、ジルコニウム、銀、カドミウム、スズ、アンチモン、バリウム、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、及びユウロピウムなどが挙げられる。なお、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、及びユウロピウムは、軽希土類元素と呼ばれる。
【0091】
また、金属酸化物は、非金属元素の一種または複数種を有してもよい。金属酸化物が非金属元素を有することで、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる場合がある。非金属元素として、例えば、炭素、窒素、リン、硫黄、セレン、フッ素、塩素、臭素、及び水素などが挙げられる。
【0092】
また、金属酸化物に含まれる主成分元素のうち、金属元素の原子数の和に対する亜鉛の原子数の割合を高くすることにより、結晶性の高い金属酸化物となり、金属酸化物中の不純物の拡散を抑制できる。したがって、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。
【0093】
また、金属酸化物に含まれる主成分元素のうち、金属元素の原子数の和に対する元素Mの原子数の割合を高くすることにより、金属酸化物に酸素欠損が形成されるのを抑制できる。したがって、酸素欠損に起因するキャリア生成が抑制され、オフ電流の小さいトランジスタとすることができる。また、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。
【0094】
半導体層に適用する金属酸化物の組成により、トランジスタの電気特性、および信頼性が異なる。したがって、トランジスタに求められる電気特性、および信頼性に応じて金属酸化物の組成を異ならせることにより、優れた電気特性と高い信頼性を両立した半導体装置が実現できる。
【0095】
OSトランジスタの半導体層にIn-Zn酸化物を用いる場合、インジウムの原子数比が亜鉛の原子数比以上である金属酸化物を適用することが好ましい。例えば、金属元素の原子数比が、In:Zn=1:1、In:Zn=2:1、In:Zn=3:1、In:Zn=4:1、In:Zn=5:1、In:Zn=7:1、In:Zn=10:1、またはこれらの近傍の金属酸化物を用いることができる。
【0096】
OSトランジスタの半導体層にIn-Sn酸化物を用いる場合、インジウムの原子数比がスズの原子数比以上である金属酸化物を適用することが好ましい。例えば、金属元素の原子数比が、In:Sn=1:1、In:Sn=2:1、In:Sn=3:1、In:Sn=4:1、In:Sn=5:1、In:Sn=7:1、In:Sn=10:1、またはこれらの近傍の金属酸化物を用いることができる。
【0097】
OSトランジスタの半導体層にIn-Sn-Zn酸化物を用いる場合、インジウムの原子数比が、スズの原子数比よりも高い金属酸化物を適用することができる。さらには、亜鉛の原子数比が、スズの原子数比よりも高い金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、金属元素の原子数比が、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=3:1:2、In:Sn:Zn=4:2:3、In:Sn:Zn=4:2:4.1、In:Sn:Zn=5:1:3、In:Sn:Zn=5:1:6、In:Sn:Zn=5:1:7、In:Sn:Zn=5:1:8、In:Sn:Zn=6:1:6、In:Sn:Zn=10:1:3、In:Sn:Zn=10:1:6、In:Sn:Zn=10:1:7、In:Sn:Zn=10:1:8、In:Sn:Zn=5:2:5、In:Sn:Zn=10:1:10、In:Sn:Zn=20:1:10、In:Sn:Zn=40:1:10、またはこれらの近傍の金属酸化物を用いることができる。
【0098】
OSトランジスタの半導体層にIn-Al-Zn酸化物を用いる場合、インジウムの原子数比が、アルミニウムの原子数比よりも高い金属酸化物を適用することができる。さらには、亜鉛の原子数比が、アルミニウムの原子数比よりも高い金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、金属元素の原子数比が、In:Al:Zn=2:1:3、In:Al:Zn=3:1:2、In:Al:Zn=4:2:3、In:Al:Zn=4:2:4.1、In:Al:Zn=5:1:3、In:Al:Zn=5:1:6、In:Al:Zn=5:1:7、In:Al:Zn=5:1:8、In:Al:Zn=6:1:6、In:Al:Zn=10:1:3、In:Al:Zn=10:1:6、In:Al:Zn=10:1:7、In:Al:Zn=10:1:8、In:Al:Zn=5:2:5、In:Al:Zn=10:1:10、In:Al:Zn=20:1:10、In:Al:Zn=40:1:10、またはこれらの近傍の金属酸化物を用いることができる。
【0099】
OSトランジスタの半導体層にIn-Ga-Zn酸化物を用いる場合、金属元素の原子数に対するインジウムの原子数比が、ガリウムの原子数比よりも高い金属酸化物を適用することができる。さらには、亜鉛の原子数比が、ガリウムの原子数比よりも高い金属酸化物を用いることが、より好ましい。例えば、金属元素の原子数比が、In:Ga:Zn=2:1:3、In:Ga:Zn=3:1:2、In:Ga:Zn=4:2:3、In:Ga:Zn=4:2:4.1、In:Ga:Zn=5:1:3、In:Ga:Zn=5:1:6、In:Ga:Zn=5:1:7、In:Ga:Zn=5:1:8、In:Ga:Zn=6:1:6、In:Ga:Zn=10:1:3、In:Ga:Zn=10:1:6、In:Ga:Zn=10:1:7、In:Ga:Zn=10:1:8、In:Ga:Zn=5:2:5、In:Ga:Zn=10:1:10、In:Ga:Zn=20:1:10、In:Ga:Zn=40:1:10、またはこれらの近傍の金属酸化物を用いることができる。
【0100】
OSトランジスタの半導体層にIn-M-Zn酸化物を用いる場合、金属元素の原子数に対するインジウムの原子数比が、元素Mの原子数比よりも高い金属酸化物を適用することができる。さらには、亜鉛の原子数比が、元素Mの原子数比よりも高い金属酸化物を用いることが、より好ましい。例えば、金属元素の原子数比が、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=10:1:3、In:M:Zn=10:1:6、In:M:Zn=10:1:7、In:M:Zn=10:1:8、In:M:Zn=5:2:5、In:M:Zn=10:1:10、In:M:Zn=20:1:10、In:M:Zn=40:1:10、またはこれらの近傍の金属酸化物を用いることができる。
【0101】
なお、元素Mとして複数の金属元素を有する場合は、当該金属元素の原子数比の合計を、元素Mの原子数比とすることができる。例えば、元素Mとしてガリウムとアルミニウムを有するIn-Ga-Al-Zn酸化物の場合、ガリウムの原子数比とアルミニウムの原子数比の合計を元素Mの原子数比とすることができる。また、インジウム、元素M、および亜鉛の原子数比が前述の範囲であることが好ましい。
【0102】
金属酸化物に含まれる主成分元素のうち、金属元素の原子数の和に対するインジウムの原子数の割合が、30原子%以上100原子%以下、好ましくは30原子%以上95原子%以下、より好ましくは35原子%以上95原子%以下、より好ましくは35原子%以上90原子%以下、より好ましくは40原子%以上90原子%以下、より好ましくは45原子%以上90原子%以下、より好ましくは50原子%以上80原子%以下、より好ましくは60原子%以上80原子%以下、より好ましくは70原子%以上80原子%以下である金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、半導体層にIn-M-Zn酸化物を用いる場合、インジウム、元素M、および亜鉛の原子数の合計に対する、インジウムの原子数の割合が前述の範囲であることが好ましい。
【0103】
前述した通り、金属酸化物に含まれる主成分元素のうち、金属元素の原子数の和に対するインジウムの原子数の割合を高くすることにより、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる。当該トランジスタを用いることにより、高速動作が可能な回路を作製することができる。さらには回路の占有面積を縮小することが可能となる。例えば、当該トランジスタを大型の表示装置、または高精細な表示装置に適用する際、配線数が増加した場合においても、各配線における信号遅延を低減することができ、表示ムラを抑制することができる。また、回路の占有面積を縮小できるため、表示装置の額縁を狭くすることができる。
【0104】
金属酸化物の組成の分析は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)、または誘導結合高周波プラズマ発光分光法(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いることができる。または、これらの手法を複数組み合わせて分析を行ってもよい。なお、含有率が低い元素は、分析精度の影響により、実際の含有率と分析によって得られた含有率が異なる場合がある。例えば、元素Mの含有率が低い場合、分析によって得られた元素Mの含有率が、実際の含有率より低くなる場合がある。
【0105】
金属酸化物の形成は、スパッタリング法、または原子層堆積法を好適に用いることができる。なお、金属酸化物をスパッタリング法で形成する場合、ターゲットの原子数比と、当該金属酸化物の原子数比が異なる場合がある。特に、亜鉛は、ターゲットの原子数比よりも金属酸化物の原子数比が小さくなる場合がある。具体的には、ターゲットに含まれる亜鉛の原子数比の40%以上90%以下程度となる場合がある。
【0106】
ここで、トランジスタの信頼性について、説明する。トランジスタの信頼性を評価する指標の1つとして、ゲートに電界を印加した状態で保持する、GBT(Gate Bias Temperature)ストレス試験がある。その中でも、ソース電位およびドレイン電位に対して、ゲートに正の電位(正バイアス)を与えた状態で、高温下で保持する試験をPBTS(Positive Bias Temperature Stress)試験、ゲートに負の電位(負バイアス)を与えた状態で、高温下で保持する試験をNBTS(Negative Bias Temperature Stress)試験と呼ぶ。また、光を照射した状態で行うPBTS試験およびNBTS試験をそれぞれ、PBTIS(Positive Bias Temperature Illumination Stress)試験、NBTIS(Negative Bias Temperature Illumination Stress)試験と呼ぶ。
【0107】
nチャネル型のトランジスタにおいては、トランジスタをオン状態とする際にゲートに正の電位が与えられるため、PBTS試験でのしきい値電圧の変動量が、トランジスタの信頼性の指標として着目すべき重要な項目の1つとなる。
【0108】
半導体層にガリウムを含まない、またはガリウムの含有率の低い金属酸化物を用いることにより、正バイアス印加に対する信頼性が高いトランジスタとすることができる。つまり、PBTS試験でのしきい値電圧の変動量が小さいトランジスタとすることができる。また、ガリウムを含む金属酸化物を用いる場合は、インジウムの含有率よりも、ガリウムの含有率を低くすることが好ましい。これにより、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0109】
PBTS試験でのしきい値電圧の変動の1つの要因として、半導体層とゲート絶縁層の界面、または界面近傍における欠陥準位が挙げられる。欠陥準位密度が大きいほど、PBTS試験での劣化が顕著になる。半導体層の、ゲート絶縁層と接する領域におけるガリウムの含有率を低くすることにより、当該欠陥準位の生成を抑制できる。
【0110】
ガリウムを含まない、またはガリウムの含有率の低い金属酸化物を半導体層に用いることによりPBTS試験でのしきい値電圧の変動を抑制できる理由として、例えば、以下のようなことが考えられる。金属酸化物に含まれるガリウムは、他の金属元素(例えば、インジウムまたは亜鉛)と比較して、酸素を誘引しやすい性質を有する。そのため、ガリウムを多く含む金属酸化物と、ゲート絶縁層との界面において、ガリウムがゲート絶縁層中の余剰酸素と結合することにより、キャリア(ここでは電子)トラップサイトを生じさせやすくなると推察される。そのため、ゲートに正の電位を与えた際に、半導体層とゲート絶縁層との界面にキャリアがトラップされることにより、しきい値電圧が変動することが考えられる。
【0111】
より具体的には、半導体層にIn-Ga-Zn酸化物を用いた場合、インジウムの原子数比が、ガリウムの原子数比よりも高い金属酸化物を、半導体層に適用することができる。また、亜鉛の原子数比が、ガリウムの原子数比よりも高い金属酸化物を用いることが、より好ましい。言い換えると、金属元素の原子数比が、In>Ga、且つZn>Gaを満たす金属酸化物を、半導体層に適用することが好ましい。
【0112】
例えば、OSトランジスタの半導体層に、金属元素の原子数比が、In:Ga:Zn=2:1:3、In:Ga:Zn=3:1:2、In:Ga:Zn=4:2:3、In:Ga:Zn=4:2:4.1、In:Ga:Zn=5:1:3、In:Ga:Zn=5:1:6、In:Ga:Zn=5:1:7、In:Ga:Zn=5:1:8、In:Ga:Zn=6:1:6、In:Ga:Zn=10:1:3、In:Ga:Zn=10:1:6、In:Ga:Zn=10:1:7、In:Ga:Zn=10:1:8、In:Ga:Zn=5:2:5、In:Ga:Zn=10:1:10、In:Ga:Zn=20:1:10、In:Ga:Zn=40:1:10、またはこれらの近傍の金属酸化物を用いることができる。
【0113】
OSトランジスタの半導体層は、含有される金属元素の原子数に対するガリウムの原子数の割合が、0原子%より高く50原子%以下、好ましくは0.1原子%以上40原子%以下、より好ましくは0.1原子%以上35原子%以下、より好ましくは0.1原子%以上30原子%以下、より好ましくは0.1原子%以上25原子%以下、より好ましくは0.1原子%以上20原子%以下、より好ましくは0.1原子%以上15原子%以下、より好ましくは0.1原子%以上10原子%以下である金属酸化物を用いることが好ましい。半導体層中のガリウムの含有率を低くすることにより、PBTS試験に対する耐性の高いトランジスタとすることができる。なお、金属酸化物にガリウムを含有させることにより、金属酸化物に酸素欠損(VO:Oxygen Vacancy)が生じにくくなるといった効果を奏する。
【0114】
OSトランジスタの半導体層に、ガリウムを含まない金属酸化物を適用してもよい。例えば、In-Zn酸化物を半導体層に適用することができる。このとき、金属酸化物に含まれる金属元素の原子数に対するインジウムの原子数比を高くすることにより、トランジスタの電界効果移動度を高めることができる。一方、金属酸化物に含まれる金属元素の原子数に対する亜鉛の原子数比を高くすることにより、結晶性の高い金属酸化物となるため、トランジスタの電気特性の変動が抑制され、信頼性を高めることができる。また、半導体層には、酸化インジウムなどの、ガリウムおよび亜鉛を含まない金属酸化物を適用してもよい。ガリウムを含まない金属酸化物を用いることにより、特に、PBTS試験におけるしきい値電圧の変動を極めて小さなものとすることができる。
【0115】
例えば、半導体層に、インジウムと亜鉛を含む酸化物を用いることができる。このとき、金属元素の原子数比が、例えばIn:Zn=2:3、In:Zn=4:1、またはこれらの近傍である金属酸化物を用いることができる。
【0116】
なお、代表的にガリウムを挙げて説明したが、ガリウムに代えて元素Mを用いた場合にも適用できる。半導体層には、インジウムの原子数比が元素Mの原子数比よりも高い金属酸化物を適用することが好ましい。また、亜鉛の原子数比が元素Mの原子数比よりも高い金属酸化物を適用することが好ましい。
【0117】
半導体層に元素Mの含有率が低い金属酸化物を適用することにより、正バイアス印加に対する信頼性が高いトランジスタが実現できる。当該トランジスタを正バイアス印加に対する高い信頼性が求められるトランジスタに適用することにより、高い信頼性を有する半導体装置が実現できる。
【0118】
続いて、光に対するトランジスタの信頼性について、説明する。
【0119】
トランジスタに光が入射することにより、トランジスタの電気特性が変動してしまう場合がある。特に、光が入射しうる領域に適用されるトランジスタは、光照射下での電気特性の変動が小さく、光に対する信頼性が高いことが好ましい。光に対する信頼性は、例えば、NBTIS試験でのしきい値電圧の変動量により評価することができる。
【0120】
半導体層に用いる金属酸化物の元素Mの含有率を高くすることにより、光に対する信頼性の高いトランジスタとすることができる。つまり、NBTIS試験でのしきい値電圧の変動量が小さいトランジスタとすることができる。具体的には、元素Mの原子数比がインジウムの原子数比以上である金属酸化物はバンドギャップがより大きくなり、トランジスタのNBTIS試験でのしきい値電圧の変動量を小さくすることができる。半導体層が有する金属酸化物のバンドギャップは、2.0eV以上が好ましく、さらには2.5eV以上が好ましく、さらには3.0eV以上が好ましく、さらには3.2eV以上が好ましく、さらには3.3eV以上が好ましく、さらには3.4eV以上が好ましく、さらには3.5eV以上が好ましい。
【0121】
例えば、半導体層に、金属元素の原子数比が、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:3、In:M:Zn=1:3:4、またはこれらの近傍の金属酸化物を用いることができる。
【0122】
特に、半導体層として、含有される金属元素の原子数に対する元素Mの原子数の割合が、20原子%以上70原子%以下、好ましくは30原子%以上70原子%以下、より好ましくは30原子%以上60原子%以下、より好ましくは40原子%以上60原子%以下、より好ましくは50原子%以上60原子%以下である金属酸化物を好適に用いることができる。
【0123】
半導体層にIn-Ga-Zn酸化物を用いた場合、金属元素の原子数に対するインジウムの原子数比が、ガリウムの原子数比以下の金属酸化物を適用することができる。例えば、金属元素の原子数比が、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:1.2、In:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=1:3:3、In:Ga:Zn=1:3:4、またはこれらの近傍の金属酸化物を用いることができる。
【0124】
半導体層として、特に、含有される金属元素の原子数に対するガリウムの原子数の割合が、20原子%以上60原子%以下、好ましくは20原子%以上50原子%以下、より好ましくは30原子%以上50原子%以下、より好ましくは40原子%以上60原子%以下、より好ましくは50原子%以上60原子%以下である金属酸化物を好適に用いることができる。
【0125】
半導体層に元素Mの含有率が高い金属酸化物を適用することにより、光に対する信頼性が高いトランジスタとすることができる。当該トランジスタを光に対する高い信頼性が求められるトランジスタに適用することにより、高い信頼性を有する半導体装置とすることができる。
【0126】
半導体層は、2以上の金属酸化物層を有する積層構造としてもよい。半導体層が有する2以上の金属酸化物層は、組成が互いに同じ、または概略同じであってもよい。組成が同じ金属酸化物層の積層構造とすることで、例えば、同じスパッタリングターゲットを用いて形成できるため、製造コストを削減できる。
【0127】
半導体層が有する2以上の金属酸化物層は、組成が互いに異なってもよい。例えば、In:M:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成の第1の金属酸化物層と、当該第1の金属酸化物層上に設けられるIn:M:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成の第2の金属酸化物層と、の積層構造を好適に用いることができる。また、元素Mとして、ガリウムまたはアルミニウムを用いることが特に好ましい。例えば、インジウム酸化物、インジウムガリウム酸化物、およびIGZOの中から選ばれるいずれか一と、IAZO、IAGZO、およびITZO(登録商標)の中から選ばれるいずれか一と、の積層構造などを用いてもよい。
【0128】
半導体層は、結晶性を有する金属酸化物層を用いることが好ましい。例えば、CAAC(c-axis aligned crystal)構造、多結晶構造、微結晶(nc:nano-crystal)構造等を有する金属酸化物層を用いることができる。結晶性を有する金属酸化物層を半導体層に用いることにより、半導体層中の欠陥準位密度を低減でき、信頼性の高い表示装置を実現できる。
【0129】
半導体層に用いる金属酸化物層の結晶性が高いほど、半導体層中の欠陥準位密度を低減できる。一方、結晶性の低い金属酸化物層を用いることで、大きな電流を流すことができるトランジスタを実現することができる。
【0130】
金属酸化物層をスパッタリング法により形成する場合、形成時の基板温度(ステージ温度)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物層を形成することができる。また、形成時に用いる成膜ガス全体に対する酸素ガスの流量の割合(以下、酸素流量比ともいう)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物層を形成することができる。
【0131】
OSトランジスタの半導体層は、結晶性が異なる2以上の金属酸化物層の積層構造であってもよい。例えば、第1の金属酸化物層と、当該第1の金属酸化物層上に設けられる第2の金属酸化物層と、の積層構造とし、第2の金属酸化物層は、第1の金属酸化物層より結晶性が高い領域を有する構成とすることができる。または、第2の金属酸化物層は、第1の金属酸化物層より結晶性が低い領域を有する構成とすることができる。半導体層が有する2以上の金属酸化物層は、組成が互いに同じ、または概略同じであってもよい。組成が同じ金属酸化物層の積層構造とすることで、例えば、同じスパッタリングターゲットを用いて形成できるため、製造コストを削減できる。例えば、同じスパッタリングターゲットを用いて、酸素流量比を異ならせることにより、結晶性が異なる2以上の金属酸化物層の積層構造を形成することができる。
【0132】
本実施の形態に示すトランジスタ10は、導電層113と導電層108の間に設けられる絶縁層の厚さでチャネル長Lが決定される。よって、チャネル長Lが短いトランジスタを精度よく作製できる。また、複数のトランジスタ10間の特性ばらつきも低減される。よって、トランジスタ10を含む半導体装置の動作が安定し、信頼性を高めることができる。また、特性ばらつきが減ると、半導体装置の回路設計自由度が高くなり、動作電圧も低減できる。よって、半導体装置の消費電力を低減できる。
【0133】
半導体層114に酸化物半導体を用いる場合は、絶縁層109と絶縁層111に水素を含む材料を用いることが好ましい。水素を含む絶縁層が酸化物半導体に接することで、該絶縁層が接する領域の酸化物半導体中の酸素欠損が増加し、キャリア濃度が高くなる。よって、当該領域は、ソース領域またはドレイン領域として機能できる。水素を含む絶縁層として、例えば、シリコン、窒素、および水素を含む材料を用いればよい。具体的には、水素を含む窒化シリコンまたは水素を含む窒化酸化シリコンなどを用いればよい。
【0134】
また、半導体層114に酸化物半導体を用いる場合は、半導体層114と接する導電層108、および、半導体層114と接する導電層113として、酸化物半導体の酸素欠損が増加する導電性材料を用いることが好ましい。例えば、窒素を含む導電性材料を用いればよい。例えば、チタンまたはタンタルと、窒素と、を含む導電性材料を用いればよい。また、窒素を含む導電性材料に重ねて、他の導電性材料を設けてもよい。また、導電層108および導電層113として、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物、「ITO」ともいう)、シリコンを含むインジウムスズ酸化物(In-Si-Sn酸化物、「ITSO」ともいう)、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物)、または、タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物(In-W-Zn酸化物)などの酸素を有する導電性材料を用いてもよい。
【0135】
一方で、絶縁層110には水素が低減され酸素を含む材料を用いることが好ましい。例えば、シリコンおよび酸素を含む材料を用いればよい。具体的には、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを用いればよい。酸化物半導体において水素は不純物元素であるため、酸化物半導体である半導体層114と、水素が低減され酸素を含む絶縁層110が接することで、半導体層114の絶縁層110と接する領域のキャリア濃度が低くなる。また、当該領域の酸素欠損が低減され、トランジスタ10の特性が安定し、信頼性が向上する。
【0136】
また、半導体層114に酸化物半導体を用いる場合は、絶縁層110は過剰酸素を含むことが好ましい。本明細書等において、過剰酸素とは、加熱により離脱する酸素のことを示す。また、絶縁層110に過剰酸素を含む材料を用いる場合、絶縁層109と絶縁層111に酸素が透過しにくい材料を用いることが好ましい。酸素が透過しにくい材料として、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方を含む酸化物、シリコンの窒化物などを用いることができる。絶縁層109と絶縁層111に酸素が透過しにくい材料を用いることで、絶縁層110に含まれる過剰酸素が下層または上層に脱離しにくくなる。よって、酸化物半導体に十分な酸素を供給できる。例えば、シリコンおよび窒素を含む2層の絶縁層(絶縁層109、絶縁層111)の間に、シリコンおよび酸素を含む絶縁層(絶縁層110)を有する構成とすればよい。
【0137】
また、半導体層114に酸化物半導体を用いて、絶縁層109と絶縁層111に水素を含む材料を用いる場合、半導体層114の導電層113と接する領域、および、半導体層114の絶縁層111と接する領域が、ソース(ソース領域)またはドレイン(ドレイン領域)の一方として機能する。また、半導体層114の導電層108と接する領域、および、半導体層114の絶縁層109と接する領域が、ソース(ソース領域)またはドレイン(ドレイン領域)の他方として機能する。よって、絶縁層110の厚さtでトランジスタ10のチャネル長Lが決定される(
図2(A)参照)。
【0138】
また、絶縁層109と絶縁層111に、水素を含まないまたは水素が極めて少ない材料を用いてもよい。例えば、水素が極めて少ない窒化シリコンまたは水素が極めて少ない窒化酸化シリコンなどを用いてもよい。この場合は、半導体層114が絶縁層109と接する領域および半導体層114が絶縁層111と接する領域のキャリア濃度が高くならない。よって、半導体層114の導電層113と接する領域が、ソース(ソース領域)またはドレイン(ドレイン領域)の一方として機能する。また、半導体層114の導電層108と接する領域が、ソース(ソース領域)またはドレイン(ドレイン領域)の他方として機能する。この場合、絶縁層109、絶縁層110、および絶縁層111それぞれの厚さを合算した厚さtsがトランジスタ10のチャネル長Lとなる(
図2(A)参照)。
【0139】
なお、本実施の形態では、導電層108と導電層113の間に3層の絶縁層(絶縁層109、絶縁層110、絶縁層111)を有する構成を示しているが、導電層108と導電層113の間の絶縁層の層数はこれに限定されない。導電層108と導電層113の間の絶縁層は1層または2層でもよいし、4層以上であってもよい。
【0140】
また、半導体層114は開口112に設けられているため、開口112の周の長さpがトランジスタ10のチャネル幅Wとなる(
図2(C)参照)。周の長さpは、例えば、絶縁層110の厚さtの半分(t/2)の位置もしくは、厚さtsの半分(ts/2)の位置で求めればよい。なお、必要に応じて、開口112の任意の位置の周の長さをチャネル幅Wとしてもよい。例えば、開口112の最下部の周の長さpをチャネル幅Wとしてもよいし、開口112の最上部の周の長さpをチャネル幅Wとしてもよい。
【0141】
また、
図2(C)では、Z方向から見た開口112の輪郭(平面形状)を円形で示しているが、これに限定されない。例えば、Z方向から見た開口112の輪郭は、楕円形(
図2(D)参照)でもよいし、矩形(
図2(E)参照)でもよい。なお、
図2(E)では角部が湾曲した矩形を示している。また、例えば、Z方向から見た開口112の輪郭は、直線部と曲線部の一方または双方を含む形状(
図2(F)参照)であってもよい。
【0142】
本発明の一態様に係るトランジスタ10は、ゲートとソース間に生じる寄生容量の容量値とゲートとドレイン間に生じる寄生容量の容量値が異なる。具体的には、導電層113と導電層116の間に生じる容量(容量C1)と、導電層108と導電層116の間に生じる容量(容量C2)において、容量C1の容量値が容量C2の容量値よりも大きくなる(
図1(D)および
図2(B)参照)。
【0143】
図3(A)および
図3(B)に、
図1(A)と同様の平面図を示す。本発明の一態様に係るトランジスタ10をZ方向から見ると、導電層116は開口112の周辺部で開口112を取り囲むように導電層113に重なり、開口112の底部で導電層113と重なる。
【0144】
図3(A)において、Z方向から見た時に容量C1として機能する領域にハッチングを付している。導電層113と導電層116が、半導体層114および絶縁層115を介して互いに重なる領域が容量C1として機能する(
図2(B)および
図3(A)参照)。なお、
図3(A)では絶縁層115の記載を省略している。
【0145】
図3(B)において、Z方向から見た時に容量C2として機能する領域にハッチングを付している。開口112の底部において、導電層108と導電層116が、半導体層114および絶縁層115を介して互いに重なる領域が容量C2として機能する(
図2(B)および
図3(B)参照)。なお、
図3(B)では絶縁層115の記載を省略している。
【0146】
図3(A)および
図3(B)より、容量C2として機能する領域の面積よりも、容量C1として機能する領域の面積が大きいことがわかる。容量C2として機能する領域の面積よりも、容量C1として機能する領域の面積を大きくすることにより、容量C2よりも容量C1の容量値が大きくなる。
【0147】
また、容量C2の容量値を変えるため導電層108と導電層116の重畳面積を変えようとすると、開口112の形状を変えることになり、開口112の周の長さpが変化する。周の長さpの変化はトランジスタ10の電気特性に直接影響するため、容量C2の容量値の調整は困難である。
【0148】
一方で、導電層116と導電層113の重畳面積の調整は容易であり、トランジスタ10の電気特性への影響も生じにくい。例えば、導電層116と導電層113の重畳面積を増やすことで、容量C1の容量値を大きくすることができる。
【0149】
また、
図4(A)の断面図に示すように、絶縁層110中に半導体層114に近接する導電層131を設けてもよい。また、導電層131は半導体層114と接することなく設ける。また、導電層131は半導体層114を囲んで設けることが好ましい。導電層131を半導体層114に接することなく、半導体層114に近接して設けることで、導電層131をトランジスタ10のバックゲート電極として機能させることができる。よって、
図4(A)に示すトランジスタ10は、バックゲート(バックゲート電極)を有するトランジスタとして機能する。なお、
図4(B)は、
図4(A)に示すトランジスタ10の等価回路図である。
【0150】
ここで、バックゲート電極について説明しておく。一般に、バックゲート電極は導電層で形成され、ゲート電極とバックゲート電極で半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。よって、バックゲート電極は、ゲート電極と同様に機能させることができる。バックゲート電極の電位は、ゲート電極と同電位としてもよいし、GND電位もしくは任意の電位としてもよい。ゲート電極とバックゲート電極を電気的に接続することで、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。また、バックゲート電極の電位をゲート電極と同じにせず、独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0151】
複数のトランジスタ10を並列に接続することにより、見かけ上のトランジスタ10のチャネル幅Wを大きくすることができる。チャネル幅Wが大きくなることにより、トランジスタ10がオン状態の時のソースとドレイン間の抵抗値が小さくなり、オン状態の時のIdを増やすことができる。
【0152】
図5(A)は、トランジスタ10aおよびトランジスタ10bを含むトランジスタ10の平面図である。
図5(B)は、
図5(A)にA1-A2の一点鎖線で示した部位の断面図である。
図5(C)は、トランジスタ10aおよびトランジスタ10bを含むトランジスタ10の斜視図である。
図5(D)は、トランジスタ10aおよびトランジスタ10bを含むトランジスタ10の等価回路図である。トランジスタ10の構成を理解しやすくするため、
図5(A)および
図5(C)では、トランジスタ10の構成要素の記載の一部を省略している。
【0153】
トランジスタ10aおよびトランジスタ10bは、
図1および
図2を用いて説明したトランジスタ10と同様の構成を有する。トランジスタ10aは、開口112aを含む領域に設けられ、トランジスタ10bは、開口112bを含む領域に設けられている。開口112aおよび開口112bは、開口112と同様に形成できる。
【0154】
導電層108の一部がトランジスタ10aのソース電極またはドレイン電極の一方として機能し、導電層108の他の一部がトランジスタ10bのソース電極またはドレイン電極の一方として機能する。また、導電層113の一部がトランジスタ10aのソース電極またはドレイン電極の他方として機能し、導電層113の他の一部がトランジスタ10bのソース電極またはドレイン電極の他方として機能する。また、導電層116の一部がトランジスタ10aのゲート電極として機能し、導電層116の他の一部がトランジスタ10bのゲート電極として機能する。
【0155】
図5(D)の等価回路図で説明すると、トランジスタ10aのソースまたはドレインの一方と、トランジスタ10bのソースまたはドレインの一方は電気的に接続され、トランジスタ10aのソースまたはドレインの他方と、トランジスタ10bのソースまたはドレインの他方は電気的に接続される。また、トランジスタ10aのゲートとトランジスタ10bのゲートは電気的に接続される。よって、トランジスタ10aおよびトランジスタ10bは、オン状態とオフ状態が同時に切り換わり、1つのトランジスタ10として機能する。
【0156】
<論理回路>
トランジスタ10は、様々な回路に用いることができる。トランジスタ10を用いた論理回路の構成例について説明する。
【0157】
<インバータ回路>
トランジスタ10を用いた論理回路の構成例として、インバータ回路(「NOT回路」または「反転回路」ともいう。)として機能する半導体装置100Aの構成例を説明する。半導体装置100Aは、本発明の一態様に係る半導体装置である。
【0158】
図6は半導体装置100Aの平面図である。
図7(A)は、
図6にA1-A2-A3を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図7(B)は、
図6にA4-A2-A3を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図8(A)および
図8(B)は半導体装置100Aの等価回路図である。
図8(C)に、インバータ回路の回路記号を示す。
【0159】
まず、
図8(A)の等価回路図を用いて、半導体装置100Aの回路構成について説明する。
【0160】
半導体装置100Aは、トランジスタ10[1]、トランジスタ10[2]、およびトランジスタ10[3]と、容量Cbを有する。また、半導体装置100Aは、2つの入力端子(端子INB、端子IN)と1つの出力端子(端子OUT)を有する(
図8(A)参照)。端子INには電位Hまたは電位Lが入力され、端子INBには端子INの反転信号が入力される。
【0161】
本明細書などでは、端子INおよび端子INBに供給される信号を「入力信号」ともいう。端子INおよび端子INBの電位を「入力電位」ともいう。端子OUTに供給される信号を「出力信号」ともいう。端子OUTの電位を「出力電位」ともいう。
【0162】
図8(A)の等価回路に示すように、トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの一方は端子INBと電気的に接続される。また、トランジスタ10[1]のゲートは導電層116[1]と電気的に接続される。また、トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbの一方の端子およびトランジスタ10[2]のゲートと電気的に接続される。トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの他方、容量Cbの一方の端子、およびトランジスタ10[2]のゲートが電気的に接続される領域がノードFNとして機能する。
【0163】
トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの一方は導電層108[2]と電気的に接続される。トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbの他方の端子、端子OUT、およびトランジスタ10[3]のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。また、トランジスタ10[3]のソースまたはドレインの他方は導電層193と電気的に接続される。また、トランジスタ10[3]のゲートは導電層116[3]と電気的に接続される。
【0164】
半導体装置100Aは、端子INに入力された信号の反転信号が端子OUTから出力される。よって、
図8(C)では端子INBの記載は省略している。
【0165】
半導体装置100Aは、nチャネル型トランジスタのみで構成される単極性のインバータ回路である。半導体装置100Aの構成にpチャネル型トランジスタを用いないため、製造コストを低減できる。また、pチャネル型トランジスタを形成するための工程が不要であるため、製造期間が短縮され、歩留まりも向上する。なお、必要に応じて半導体装置100Aにpチャネル型トランジスタを用いてもよい。
【0166】
次に、半導体装置100Aの積層構成例について説明する。半導体装置100Aは、絶縁層102の上に導電層108[1]、導電層108[2]、および導電層108[3]を有する(
図7(A)および
図7(B)参照)。導電層108[1]、導電層108[2]、および導電層108[3]は、前述した導電層108と同様に形成できる。また、絶縁層111の上に導電層113[1]、導電層113[2]、および導電層113[3]を有する。導電層113[1]、導電層113[2]、および導電層113[3]は、前述した導電層113と同様に形成できる。
【0167】
また、半導体装置100Aは、導電層108[1]と重なる領域に開口112[1]を有し、導電層108[2]と重なる領域に開口112[2]を有し、導電層108[3]と重なる領域に開口112[3]を有する。開口112[1]、開口112[2]、および開口112[3]は、前述した開口112と同様に形成できる。
【0168】
また、半導体装置100Aは、導電層113[1]および導電層108[1]の上に、開口112[1]と重なる領域を有する半導体層114[1]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[1]と重なる領域を有する導電層116[1]を有する。また、半導体装置100Aは、導電層113[2]および導電層108[2]の上に、開口112[2]と重なる領域を有する半導体層114[2]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[2]と重なる領域を有する導電層116[2]を有する。また、半導体装置100Aは、導電層113[3]および導電層108[3]の上に、開口112[3]と重なる領域を有する半導体層114[3]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[3]と重なる領域を有する導電層116[3]を有する。
【0169】
半導体層114[1]、半導体層114[2]、および半導体層114[3]は、前述した半導体層114と同様に形成できる。導電層116[1]、導電層116[2]、および導電層116[3]は、導電層116と同時に形成できる。
【0170】
トランジスタ10[1]は、導電層108[1]、半導体層114[1]、導電層113[1]、および導電層116[1]を含んで構成される。トランジスタ10[2]は、導電層108[2]、半導体層114[2]、導電層113[2]、および導電層116[2]を含んで構成される。トランジスタ10[3]は、導電層108[3]、半導体層114[3]、導電層113[3]、および導電層116[3]を含んで構成される。トランジスタ10[1]、トランジスタ10[2]、およびトランジスタ10[3]は、トランジスタ10と同様の構成を有する。また、トランジスタ10[1]、トランジスタ10[2]、およびトランジスタ10[3]にバックゲートを有するトランジスタを用いてもよい。
【0171】
また、半導体装置100Aは、導電層108[1]と重なる領域において、絶縁層115、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口121が設けられている。開口121において、導電層116[2]は導電層108[1]と電気的に接続する。
【0172】
また、導電層116[2]と導電層108[1]を電気的に接続することで、容量Cbとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いることができる。容量Cbとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いることで、容量Cbを別途設ける必要がなくなるため、占有面積の少ない半導体装置を実現できる(
図7(A)および
図8(B)参照)。よって、導電層116[2]と導電層108[1]が電気的に接続することが好ましい。
【0173】
また、半導体装置100Aは、導電層108[3]と重なる領域において、絶縁層115、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口122が設けられている。開口122において、導電層113[2]は導電層108[3]と電気的に接続する。
【0174】
また、半導体装置100Aは、絶縁層117の上に絶縁層187を有する。絶縁層187は、下層に形成されたトランジスタ、容量、配線などによって生じた段差を軽減する平坦化層として機能することが好ましい。平坦化層としては、有機絶縁膜が好適である。また、絶縁層187を無機材料または有機材料を用いて形成した後、絶縁層187にCMP処理等を用いた平坦化処理を行なってもよい。
【0175】
また、半導体装置100Aは、絶縁層187上に導電層191、導電層192、および導電層193を有する。導電層191、導電層192、および導電層193は、他の導電層と同様の材料および方法で形成できる。
【0176】
また、半導体装置100Aは、導電層113[1]と重なる領域、導電層113[2]と重なる領域、および導電層113[3]と重なる領域のそれぞれにおいて、絶縁層187、絶縁層117、および絶縁層115に開口が形成されている。
【0177】
導電層191は、導電層113[1]と重なる開口において導電層113[1]と電気的に接続する。導電層192は、導電層113[2]と重なる開口において導電層113[2]と電気的に接続する。導電層193は、導電層113[3]と重なる開口において導電層113[3]と電気的に接続する。
【0178】
半導体装置100Aにおいて、導電層191が端子INBとして機能し、導電層192が端子OUTとして機能し、導電層116[3]が端子INとして機能する。
【0179】
図8(A)および
図8(B)の回路図で示す半導体装置100Aにおいて、容量Cbとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いる。このため、トランジスタ10[2]として本発明の一態様に係るトランジスタ(縦チャネル型のトランジスタ)を用いることが肝要である。よって、トランジスタ10[2]以外のトランジスタを、他の構造を有するトランジスタで構成してもよい。ただし、占有面積が低減された半導体装置を実現するため、半導体装置100Aに本発明の一態様に係るトランジスタを多く用いることが好ましい。よって、半導体装置100Aに含まれる全てのトランジスタに本発明の一態様に係るトランジスタを用いることが好ましい。
【0180】
続いて、半導体装置100Aの動作例について説明する。
図9は半導体装置100Aの動作例を説明するためのタイミングチャートである。
図10(A)、
図10(B)、
図11(A)、および
図11(B)は、半導体装置100Aの動作例を説明するための回路図である。
【0181】
また、図面などにおいて、配線および電極の電位を示すため、配線および電極に隣接して電位Hを示す“H”、または電位Lを示す“L”を付記する場合がある。また、電位変化が生じた配線および電極には、“H”または“L”を囲み文字で付記する場合がある。また、トランジスタがオフ状態である場合、当該トランジスタに重ねて“×”記号を付記する場合がある。また、電流の流れを示す矢印を付記する場合がある。
【0182】
導電層116[1]および導電層108[2]には電位H(VDD)が供給され、導電層193(導電層113[3])には電位L(VSS)が供給される。初期状態(時刻T1直前の状態)として、端子INB(導電層191および導電層113[1])に電位Hが供給され、端子IN(導電層116[3])に電位Lが供給されているものとする。よって、端子OUT(導電層192および導電層113[2])が電位Hであるものとする。
【0183】
時刻T1(
図9、
図10(A)参照)において、端子INBに電位Lが供給され、端子INに電位Hが供給される。端子INBに電位Lが供給されると、ノードFNの電位が電位Lになり、トランジスタ10[2]がオフ状態になる。また、端子INに電位Hが供給されると、トランジスタ10[3]がオン状態になるため、端子OUTが電位Lになる。
【0184】
時刻T2(
図9、
図10(B)参照)において、端子INBに電位Hが供給され、端子INに電位Lが供給されると、トランジスタ10[3]がオフ状態になる。また、ノードFNの電位が、電位Hからトランジスタ10[1]のVth分低い電位(電位H-Vth)になる。ここで、電位H-Vthの値は、Vth以上とする。よって、トランジスタ10[2]がオン状態となり、端子OUTの電位が上昇する。時刻T2では、ノードFNの電位(トランジスタ10[2]のゲート電位)が電位H-Vthであるので、端子OUTの電位が電位H-Vth-Vthになる。
【0185】
また、端子OUTとノードFNは容量Cbを介して接続(容量結合)している。よって、端子OUTの電位上昇に伴って、ノードFNの電位も上昇する。ノードFNの電位が上昇すると、トランジスタ10[1]がオフ状態になり、ノードFNがフローティング状態になる。容量Cbはブートストラップ容量として機能する。端子OUTとノードFNを容量Cbで容量結合することにより、ノードFNの電位が電位H-Vth+電位H(2×電位H-Vth)まで上昇する(時刻T2a。
図9、
図11(A)参照)。当該電位は電位H+Vthよりも高い電位であるため、端子OUTの電位を電位Hとすることができる。
【0186】
時刻T3(
図9、
図11(B)参照)において、端子INBに電位Lが供給され、端子INに電位Hが供給されると、トランジスタ10[2]がオフ状態になり、トランジスタ10[3]がオン状態になり、端子OUTに電位Lが供給される。
【0187】
前述した通り、本発明の一態様に係る半導体装置100Aは、端子INに入力された信号の反転信号を端子OUTに出力する機能を有する。また、本発明の一態様に係る半導体装置100Aは、ブートストラップ容量として機能する容量Cbを備えることで、端子OUTの電位を確実に電位Hとすることができる。よって、本発明の一態様に係る半導体装置100Aは、伝送損失などによって減衰した入力信号の振幅を増幅して出力する機能を有する。
【0188】
また、半導体装置100Aを構成するトランジスタにトランジスタ10を用いることで、半導体装置100Aの占有面積を低減できる。また、半導体装置100Aを構成するトランジスタにトランジスタ10を用いることで、容量Cbとして容量C1を用いることができる。よって、容量Cbを別途設ける必要が無くなり、半導体装置100Aの占有面積をさらに低減できる。
【0189】
また、本発明の一態様に係る半導体装置100Aは、入力端子として端子INと端子INBを備え、端子INBに端子INの反転信号を入力することにより、トランジスタ10[2]またはトランジスタ10[3]の一方がオフ状態になる。よって、導電層108[2]と導電層193間に流れる電流(「貫通電流」ともいう。)を著しく低減できる。よって、消費電力が低減された半導体装置100Aを実現できる。
【0190】
半導体装置100Aをより確実に動作させるため、ノードFNと導電層116[1]間に生じる寄生容量の容量値は、容量Cbの容量値より少ない方が好ましい。よって、トランジスタ10[1]において、容量C1が端子INBと導電層116[1]の間に配置され、容量C2がノードFNと導電層116[1]の間に配置されることが好ましい(
図12(A)参照)。よって、導電層116[2]が導電層108[1]と電気的に接続することが好ましい。また、導電層113[1]が導電層191と電気的に接続することが好ましい。
【0191】
また、トランジスタ10[3]において、容量C1と容量C2は入れ替わってもよい。なお、トランジスタ10[3]は導電層193側がソースとして機能し、端子OUT側がドレインとして機能する。よって、トランジスタ10[3]のオン状態とオフ状態をより確実に保持するため、容量C1をソース側に配置し、容量C2をドレイン側に配置することが好ましい。よって、導電層116[2]が導電層108[3]と電気的に接続することが好ましい。また、導電層113[3]が導電層193と電気的に接続することが好ましい。
【0192】
図12(B)に、半導体装置100Aの変形例である半導体装置100Aaの等価回路図を示す。半導体装置100Aaは、トランジスタ10[3]において、端子OUT側に容量C1が配置され、導電層193側に容量C2が配置されるように構成される。
【0193】
図13は、半導体装置100Aaの平面図である。
図14(A)は、
図13にA1-A2-A3を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図14(B)は、
図13にA4-A2-A3を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
【0194】
半導体装置100Aaは、導電層113[2]が導電層108[3]と重なる領域を有し、当該領域においてトランジスタ10[3]が形成される。半導体装置100Aでは導電層113[2]と導電層108[3]を電気的に接続させるため、導電層113[2]が導電層108[3]と重なる領域に開口122を設けているが、半導体装置100Aaは、導電層113[2]と導電層108[3]を電気的に接続させる必要がないため、開口122の形成が不要である。よって、半導体装置100Aaは、半導体装置100Aよりも占有面積を低減できる。
【0195】
半導体装置100Aaは、導電層108[3]と重なる領域において、絶縁層115、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口127が設けられている。開口127は、開口121と同じ工程で形成できる。また、絶縁層115上に開口127を覆う導電層132が設けられている。導電層132は、導電層116と同じ材料を用いて同じ工程で形成できる。導電層132は開口127の底部において導電層108[3]と電気的に接続する。また、半導体装置100Aaでは、導電層193は導電層132と重なる開口において導電層132と電気的に接続する。
【0196】
なお、半導体装置100Aaを用いて示した技術思想は、後述する半導体装置100Bおよび半導体装置100Cなどにも適用できる。
【0197】
また、トランジスタ10[1]、トランジスタ10[2]、およびトランジスタ10[3]のそれぞれを、並列に接続された複数のトランジスタで構成してもよい。
図15に半導体装置100Aの回路構成例を示す。
【0198】
図15では、トランジスタ10[1]が並列に接続されたe個(eは2以上の整数)のトランジスタ10(トランジスタ10[1]1、トランジスタ10[1]2乃至トランジスタ10[1]e)で構成される例を示している。また、
図15では、トランジスタ10[2]が並列に接続されたf個(fは2以上の整数)のトランジスタ10(トランジスタ10[2]1、トランジスタ10[2]2乃至トランジスタ10[2]f)で構成される例を示している。また、
図15では、トランジスタ10[3]が並列に接続されたg個(gは2以上の整数)のトランジスタ10(トランジスタ10[3]1、トランジスタ10[3]2乃至トランジスタ10[3]g)で構成される例を示している。なお、e、f、およびgは、それぞれが同数であってもよいし、異なった数であってもよい。また、e、f、およびgのうち2つが同数であってもよい。
【0199】
トランジスタ10[1]に含まれるトランジスタの並列数を増やすことで、半導体装置100Aの動作速度を高めることができる。すなわち、端子INに信号(電位)が入力されてから、該信号に応じた信号が端子OUTから出力されるまでの時間(遅延時間)を短くすることができる。
【0200】
本発明の一態様に係る半導体装置100Aは、高い入力インピーダンスと低い出力インピーダンスを有する半導体装置である。トランジスタ10[2]の並列数を増やすことで、半導体装置100Aの端子OUTから電位Hを出力する時の出力インピーダンスをより低くすることができる。また、トランジスタ10[3]の並列数を増やすことで、半導体装置100Aの端子OUTから電位Lを出力する時の出力インピーダンスをより低くすることができる。
【0201】
また、本発明の一態様に係るトランジスタ10を
図16(A)乃至(C)それぞれに示すインバータ回路に用いてもよい。
図16(A)乃至(C)に示すインバータ回路は、1つの入力端子(端子IN)と1つの出力端子(端子OUT)を有する。
【0202】
図16(A)に示すインバータ回路は、半導体装置100Aのトランジスタ10[2]およびトランジスタ10[3]の接続構成と似た構成を有する。
図16(A)に示すインバータ回路は、トランジスタ10[2]のゲートおよびソースまたはドレインの一方が導電層108[2]と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方が、端子OUTおよびトランジスタ10[3]のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。また、トランジスタ10[3]のソースまたはドレインの他方が導電層193と電気的に接続され、トランジスタ10[3]のゲートが端子INと電気的に接続される。
【0203】
図16(A)に示すインバータ回路は、端子INに電位Lが供給された場合に、端子OUTに供給される電位が電位Hよりもトランジスタ10[2]のVth分低い電位になる。また、端子INに電位Hが供給された場合に、導電層108[2]と導電層193の間に貫通電流が生じやすい。ただし、
図16(A)に示すインバータ回路は、インバータ回路を構成するトランジスタの数を減らすことができる。また、
図16(A)に示すインバータ回路に含まれるトランジスタとして、本発明の一態様に係る縦チャネル型のトランジスタを用いることで、占有面積の少ないインバータ回路を実現できる。
【0204】
なお、半導体装置100Aにおいて出力電位の低下が許容できるのであれば、トランジスタ10[2]の容量C2をトランジスタ10[2]のソース側(端子OUT側)に設け、容量C1をトランジスタ10[2]のドレイン側に設けてもよい。この場合、導電層108[2]が導電層192(端子OUT)と電気的に接続され、導電層113[2]に電位H(VDD)が供給される。なお、当該技術思想は、半導体装置100Aだけでなく、半導体装置100Aa、ならびに、後述する半導体装置100Bおよび半導体装置100Cなどにも適用できる。
【0205】
図16(B)に示すインバータ回路は、
図8(A)に示す半導体装置100Aが有するトランジスタ10[1]のソースまたはドレインの一方をトランジスタ10[1]のゲートと電気的に接続し、端子INBを設けない構成を有する。具体的には、導電層191(または導電層113[1])が導電層116[1]と電気的に接続された構成を有する。
【0206】
図16(B)に示すインバータ回路は、端子INに電位Hが供給された場合に、導電層108[2]と導電層193間に貫通電流が生じやすい。その一方で、ブートストラップ容量(容量Cb)を有することで、端子INに電位Lが供給された場合に、端子OUTから確実に電位Hを出力できる。また、
図8(A)に示す半導体装置100Aよりも入力端子の数が少ないため、より占有面積の少ないインバータ回路を実現できる。
【0207】
図16(C)に示すインバータ回路は、
図16(B)に示す半導体装置100Aからトランジスタ10[1]を除き、
図16(A)に示すインバータ回路の構成を付加した構成を有する。
図16(C)に示すインバータ回路は、トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの一方が、導電層108[2]、トランジスタ10[4]のソースまたはドレインの一方、およびトランジスタ10[4]のゲートと電気的に接続される。また、トランジスタ10[2]のゲートが、容量Cbの一方の端子、トランジスタ10[4]のソースまたはドレインの他方、およびトランジスタ10[5]のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。また、トランジスタ10[5]のソースまたはドレインの他方がトランジスタ10[3]のソースまたはドレインの他方および導電層193と電気的に接続される。また、トランジスタ10[3]のゲートとトランジスタ10[5]のゲートが端子INと電気的に接続される。
【0208】
図16(C)に示すインバータ回路に含まれるトランジスタとして、本発明の一態様に係る縦チャネル型のトランジスタを用いることが好ましい。少なくとも、
図16(C)に示すインバータ回路のトランジスタ10[2]に本発明の一態様に係る縦チャネル型のトランジスタを用いることが好ましい。具体的には、トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの一方とゲートとの間に容量C2が配置され、トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方とゲートとの間に容量C1が配置されるように本発明の一態様に係るトランジスタを配置すればよい。
【0209】
容量C2よりも容量値が大きい容量C1をトランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方とゲートとの間に配置することで、容量C1を容量Cbとして用いることができる。よって、容量Cbを別途設ける必要がなくなり、占有面積の少ないインバータ回路を実現できる。
【0210】
図16(C)に示すインバータ回路は、端子INに電位Hが供給された場合に、導電層108[2]と導電層193間に貫通電流が生じやすい。その一方で、ブートストラップ容量(容量Cb)を有することで、端子INに電位Lが供給された場合に、端子OUTから確実に電位Hを出力できる。
【0211】
<NAND回路>
トランジスタ10を用いた論理回路の構成例として、NAND回路(「否定論理積回路」ともいう。)として機能する半導体装置100Bの構成例を説明する。半導体装置100Bは、本発明の一態様に係る半導体装置である。
【0212】
図17は半導体装置100Bの平面図である。
図18(A)は、
図17にA1-A2-A3を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図18(B)は、
図17にA4-A5を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図19は、
図17にA2-A6を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図21(A)および
図21(B)は、半導体装置100Bの等価回路図である。
図22(A)は、NAND回路の回路記号である。また、
図22(B)は、端子IN1および端子IN2に入力される信号と、端子OUTに出力される信号の組み合わせを示す図である。
図22(C)に、NAND回路、NOT回路、およびAND回路の回路記号を示す。
【0213】
まず、
図21(A)の等価回路図を用いて、半導体装置100Bの回路構成例について説明する。
【0214】
半導体装置100Bは、トランジスタ10[1]、トランジスタ10[2]、トランジスタ10[3]、トランジスタ10[4]、トランジスタ10[5]、およびトランジスタ10[6]と、容量Cbaおよび容量Cbbと、を有する。また、半導体装置100Bは、4つの入力端子(端子IN1、端子IN1B、端子IN2、端子IN2B)と1つの出力端子(端子OUT)を有する(
図21(A)参照)。端子IN1には電位Hまたは電位Lが入力され、端子IN1Bには端子IN1の反転信号が入力される。また、端子IN2には電位Hまたは電位Lが入力され、端子IN2Bには端子IN2の反転信号が入力される。
【0215】
なお、本明細書などでは、端子INおよび端子INBと同様に、端子IN1、端子IN1B、端子IN2、および端子IN2Bに供給される信号を「入力信号」ともいう。
【0216】
トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの一方は端子IN1Bと電気的に接続される。また、トランジスタ10[1]のゲートは導電層116[1]と電気的に接続される。また、トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbaの一方の端子およびトランジスタ10[2]のゲートと電気的に接続される。トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの他方、容量Cbaの一方の端子、およびトランジスタ10[2]のゲートが電気的に接続される領域がノードFNaとして機能する。
【0217】
トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの一方は導電層108[2]と電気的に接続される。トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbaの他方端子、端子OUT、およびトランジスタ10[3]のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。また、トランジスタ10[3]のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ10[4]のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。また、トランジスタ10[4]のソースまたはドレインの他方は、導電層193と電気的に接続される。また、トランジスタ10[3]のゲートは端子IN1と電気的に接続され、トランジスタ10[4]のゲートは端子IN2と電気的に接続される。
【0218】
トランジスタ10[5]のソースまたはドレインの一方は端子IN2Bと電気的に接続される。また、トランジスタ10[5]のゲートは導電層116[5]と電気的に接続される。また、トランジスタ10[5]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbbの一方の端子およびトランジスタ10[6]のゲートと電気的に接続される。トランジスタ10[5]のソースまたはドレインの他方、容量Cbbの一方の端子、およびトランジスタ10[6]のゲートが電気的に接続される領域がノードFNbとして機能する。
【0219】
トランジスタ10[6]のソースまたはドレインの一方は導電層108[6]と電気的に接続される。トランジスタ10[6]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbbの他方の端子、端子OUT、およびトランジスタ10[3]のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。
【0220】
半導体装置100Bは、端子IN1および端子IN2に入力された信号の組み合わせによって、端子OUTに出力される信号が決定される。よって、半導体装置100Bの回路記号を示す
図22(A)および
図22(C)では、端子IN1Bおよび端子IN2Bの記載は省略している。
【0221】
図22(B)に示すように、半導体装置100Bでは、端子IN1および端子IN2に電位Hが入力されると、端子OUTに電位Lが出力される。また、端子IN1および端子IN2の一方または双方に電位Lが入力されると、端子OUTに電位Hが出力される。
【0222】
また、NAND回路である半導体装置100Bの端子OUTに、NOT回路である半導体装置100Aの端子INを接続することで、AND回路を実現できる(
図22(C)参照)。
【0223】
図21(A)に示すように、半導体装置100Bは、nチャネル型トランジスタのみで構成される単極性のNAND回路である。半導体装置100Bの構成にpチャネル型トランジスタを用いないため、製造コストを低減できる。また、pチャネル型トランジスタを形成するための工程が不要であるため、製造期間が短縮され、歩留まりも向上する。なお、必要に応じて半導体装置100Bにpチャネル型トランジスタを用いてもよい。
【0224】
次に、
図17乃至
図19を用いて半導体装置100Bの平面構成例および積層構成例について説明する。
【0225】
半導体装置100Bは、絶縁層102の上に導電層108[1]、導電層108[2]、導電層108[3]、導電層108[4]、導電層108[5]、および導電層108[6]を有する(
図18(A)、(B)および
図19参照)。導電層108[1]乃至導電層108[6]は、前述した導電層108と同様に形成できる。また、絶縁層111の上に導電層113[1]、導電層113[2]、導電層113[3]、導電層113[4]、および導電層113[5]を有する。導電層113[1]乃至導電層113[5]は、前述した導電層113と同様に形成できる。
【0226】
また、半導体装置100Bは、導電層108[1]と重なる領域に開口112[1]を有し、導電層108[2]と重なる領域に開口112[2]を有し、導電層108[3]と重なる領域に開口112[3]を有し、導電層108[4]と重なる領域に開口112[4]を有し、導電層108[5]と重なる領域に開口112[5]を有し、導電層108[6]と重なる領域に開口112[6]を有する。開口112[1]乃至開口112[6]は、前述した開口112と同様に形成できる。
【0227】
また、半導体装置100Bは、導電層113[1]および導電層108[1]の上に、開口112[1]と重なる領域を有する半導体層114[1]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[1]と重なる領域を有する導電層116[1]を有する。また、半導体装置100Bは、導電層113[2]および導電層108[2]の上に、開口112[2]と重なる領域を有する半導体層114[2]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[2]と重なる領域を有する導電層116[2]を有する。
【0228】
また、半導体装置100Bは、導電層113[3]および導電層108[3]の上に、開口112[3]と重なる領域を有する半導体層114[3]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[3]と重なる領域を有する導電層116[3]を有する。また、半導体装置100Bは、導電層113[4]および導電層108[4]の上に、開口112[4]と重なる領域を有する半導体層114[4]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[4]と重なる領域を有する導電層116[4]を有する。
【0229】
また、半導体装置100Bは、導電層113[5]および導電層108[5]の上に、開口112[5]と重なる領域を有する半導体層114[5]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[5]と重なる領域を有する導電層116[5]を有する。また、半導体装置100Bは、導電層113[2]および導電層108[6]の上に、開口112[6]と重なる領域を有する半導体層114[6]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[6]と重なる領域を有する導電層116[6]を有する。
【0230】
半導体層114[1]乃至半導体層114[6]は、前述した半導体層114と同様に形成できる。導電層116[1]乃至導電層116[6]は、前述した導電層116と同様に形成できる。
【0231】
また、半導体装置100Bは、導電層108[1]と重なる領域において、絶縁層115、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口121が設けられている(
図17および
図18(A)参照)。開口121において、導電層116[2]は導電層108[1]と電気的に接続する。
【0232】
また、半導体装置100Bは、導電層108[2]と重なる領域において、絶縁層115、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口125が設けられている(
図17および
図18(A)参照)。開口125において、導電層116[7]は導電層108[2]と電気的に接続する。
【0233】
また、半導体装置100Bは、導電層108[5]と重なる領域において、絶縁層115、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口124が設けられている(
図17および
図18(B)参照)。開口124において、導電層116[6]は導電層108[5]と電気的に接続する。
【0234】
また、半導体装置100Bは、導電層108[3]と重なる領域において、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口122が設けられている(
図17および
図19参照)。開口122において、導電層113[2]は導電層108[3]と電気的に接続する。
【0235】
また、半導体装置100Bは、導電層108[4]と重なる領域において、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口123が設けられている(
図17および
図19参照)。開口123において、導電層113[3]は導電層108[4]と電気的に接続する。
【0236】
また、導電層116[2]と導電層108[1]を電気的に接続することで、容量Cbaとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いることができる。容量Cbaとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いることで、容量Cbaを別途設ける必要がなくなるため、占有面積の少ない半導体装置を実現できる(
図18(A)参照)。よって、導電層116[2]と導電層108[1]が電気的に接続することが好ましい。
【0237】
また、導電層116[6]と導電層108[5]を電気的に接続することで、容量Cbbとしてトランジスタ10[6]の容量C1を用いることができる。容量Cbbとしてトランジスタ10[6]の容量C1を用いることで、容量Cbbを別途設ける必要がなくなるため、占有面積の少ない半導体装置を実現できる(
図18(B)参照)。よって、導電層116[6]と導電層108[5]が電気的に接続することが好ましい。
【0238】
また、半導体装置100Bは、半導体装置100Aと同様に絶縁層117の上に絶縁層187を有する。絶縁層187は、下層に形成されたトランジスタ、容量、配線などによって生じた段差を軽減する平坦化層として機能することが好ましい。
【0239】
また、半導体装置100Bは、絶縁層187上に導電層191、導電層192、導電層193、および導電層194を有する(
図18(A)、(B)および
図19参照)。導電層191乃至導電層194は、他の導電層と同様の材料および方法で形成できる。
【0240】
また、半導体装置100Bは、導電層113[1]と重なる領域、導電層113[2]と重なる領域、導電層113[4]と重なる領域、および導電層113[5]と重なる領域のそれぞれにおいて、絶縁層187、絶縁層117、および絶縁層115に開口が形成されている。
【0241】
導電層191は、導電層113[1]と重なる開口において導電層113[1]と電気的に接続する。導電層192は、導電層113[2]と重なる開口において導電層113[2]と電気的に接続する。導電層193は、導電層113[4]と重なる開口において導電層113[4]と電気的に接続する。導電層194は、導電層113[5]と重なる開口において導電層113[5]と電気的に接続する。
【0242】
半導体装置100Bにおいて、導電層191が端子IN1Bとして機能し、導電層116[3]が端子IN1として機能する。また、導電層194が端子IN2Bとして機能し、導電層116[4]が端子IN2として機能し、導電層192が端子OUTとして機能する。
【0243】
図20は
図17に示す平面構成の変形例である。
図20の平面構成では、導電層116[1]が導電層116[5]および導電層116[7]を兼ねている。また、
図20の平面構成では、導電層108[2]が導電層108[6]を兼ねている。
【0244】
また、
図20にA1-A2-A3を通る一点鎖線で示した部位の断面図が、
図18(A)に示す断面図に相当する。この時、
図18(A)に示す導電層116[7]を導電層116[1]と読み替えればよい。また、
図20にA4-A5を通る一点鎖線で示した部位の断面図が、
図18(B)に示す断面図に相当する。この時、
図18(B)に示す導電層116[5]を導電層116[1]と読み替えればよい。また、
図18(B)に示す導電層108[6]を導電層108[2]と読み替えればよい。また、
図20にA2-A6を通る一点鎖線で示した部位の断面図が、
図19に示す断面図に相当する。
【0245】
1つの導電層を導電層116[1]、導電層116[5]、および導電層116[7]として用いることで、半導体装置100Bの占有面積をより低減できる。1つの導電層を導電層108[2]および導電層108[6]として用いることで、半導体装置100Bの占有面積をさらに低減できる。
【0246】
図21(A)および
図21(B)の回路図で示す半導体装置100Bにおいて、容量Cbaとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いる。このため、トランジスタ10[2]として本発明の一態様に係るトランジスタ(縦チャネル型のトランジスタ)を用いることが肝要である。また、容量Cbbとしてトランジスタ10[6]の容量C1を用いる。このため、トランジスタ10[6]として本発明の一態様に係るトランジスタ(縦チャネル型のトランジスタ)を用いることが肝要である。
【0247】
よって、トランジスタ10[2]およびトランジスタ10[6]以外のトランジスタを、他の構造を有するトランジスタで構成してもよい。ただし、占有面積が低減された半導体装置を実現するため、半導体装置100Bに本発明の一態様に係るトランジスタを多く用いることが好ましい。よって、半導体装置100Bに含まれる全てのトランジスタに本発明の一態様に係るトランジスタを用いることが好ましい。
【0248】
続いて、半導体装置100Bの動作例について説明する。
図23は半導体装置100Bの動作例を説明するためのタイミングチャートである。
図24(A)、
図24(B)、
図25(A)、および
図25(B)は、半導体装置100Bの動作例を説明するための回路図である。
【0249】
導電層116[1]、導電層116[7](導電層108[2])、導電層116[5]、および導電層108[6]には電位H(VDD)が供給され、導電層193(導電層113[4])には電位L(VSS)が供給される。初期状態(時刻T1直前の状態)として、端子IN1(導電層116[3])に電位H(端子IN1B(導電層191および導電層113[1])に電位L)が供給され、端子IN2(導電層116[4])に電位H(端子IN2B(導電層194および導電層113[5])に電位L)が供給されているものとする。よって、端子OUT(導電層192および導電層113[2])が電位Hであるものとする。
【0250】
時刻T1(
図23および
図24(A)参照)において、端子IN1に電位H(端子IN1Bに電位L)が供給されると、トランジスタ10[3]がオン状態になる。また、ノードFNaの電位が電位Lになり、トランジスタ10[2]がオフ状態になる。また、時刻T1において、端子IN2に電位H(端子IN2Bに電位L)が供給されると、トランジスタ10[4]がオン状態になる。また、ノードFNbの電位が電位Lになり、トランジスタ10[6]がオフ状態になる。トランジスタ10[2]およびトランジスタ10[6]がオフ状態になり、トランジスタ10[3]およびトランジスタ10[4]がオン状態になるため、端子OUTの電位が電位Lになる。
【0251】
時刻T2(
図23および
図24(B)参照)において、端子IN2Bに電位H(端子IN2に電位L)が供給されると、トランジスタ10[4]がオフ状態になる。また、ノードFNbの電位が、電位Hからトランジスタ10[5]のVth分低い電位(電位H-Vth)になる。ここで、電位H-Vthの値は、Vth以上とする。よって、トランジスタ10[6]がオン状態となり、端子OUTの電位が上昇する。時刻T2では、ノードFNbの電位(トランジスタ10[6]のゲート電位)が電位H-Vthであるので、端子OUTの電位が電位H-Vth-Vthになる。
【0252】
また、端子OUTとノードFNbは容量Cbbを介して接続(容量結合)している。よって、端子OUTの電位上昇に伴って、ノードFNbの電位も上昇する。ノードFNbの電位が上昇すると、トランジスタ10[5]がオフ状態になり、ノードFNbがフローティング状態になる。容量Cbbはブートストラップ容量として機能する。端子OUTとノードFNbを容量Cbbで容量結合することにより、ノードFNbの電位が電位H-Vth+電位H(2×電位H-Vth)まで上昇する(時刻T2a。
図23および
図25(A)参照)。当該電位は電位H+Vthよりも高い電位であるため、端子OUTの電位を電位Hとすることができる。
【0253】
時刻T3において端子IN1に電位Lが供給され、端子IN2に電位Hが供給される場合は、トランジスタ10[2]を介して端子OUTに電位Hが供給される。時刻T4において端子IN1および端子IN2ともに電位Lが供給される場合も、端子OUTに電位Hが供給される。
【0254】
時刻T5において端子IN1および端子IN2ともに電位Hが供給されると、トランジスタ10[2]およびトランジスタ10[6]がオフ状態になり、トランジスタ10[3]およびトランジスタ10[4]がオン状態になり、端子OUTに電位Lが供給される(
図23および
図25(B)参照)。
【0255】
前述した通り、本発明の一態様に係る半導体装置100Bは、端子IN1および端子IN2に入力された信号の組み合わせによって、端子OUTに出力される信号を決定する機能を有する。または、半導体装置100Bは、端子IN1Bおよび端子IN2Bに入力された信号の組み合わせによって、端子OUTに出力される信号を決定する機能を有するともいえる。また、本発明の一態様に係る半導体装置100Bは、ブートストラップ容量として機能する容量Cbaおよび容量Cbbを備えることで、端子OUTの電位を確実に電位Hとすることができる。
【0256】
半導体装置100Bを構成するトランジスタにトランジスタ10を用いることで、半導体装置100Bの占有面積を低減できる。また、半導体装置100Bを構成するトランジスタにトランジスタ10を用いることで、容量Cbaおよび容量Cbbとして容量C1を用いることができる。よって、容量Cbaおよび容量Cbbを別途設ける必要が無くなり、半導体装置100Bの占有面積をさらに低減できる。
【0257】
また、本発明の一態様に係る半導体装置100Bは、入力端子として端子IN1および端子IN1Bを備え、端子IN1Bに端子IN1の反転信号を入力することにより、導電層116[7](導電層108[2])と導電層193(導電層113[4])間の貫通電流を著しく低減できる。また、入力端子として端子IN2および端子IN2Bを備え、端子IN2Bに端子IN2の反転信号を入力することにより、導電層108[6]と導電層193(導電層113[4])間の貫通電流を著しく低減できる。よって、消費電力が低減された半導体装置100Bを実現できる。
【0258】
半導体装置100Bをより確実に動作させるため、ノードFNaと導電層116[1]間に生じる寄生容量の容量値は、容量Cbaの容量値より少ない方が好ましい。よって、トランジスタ10[1]において、容量C1が端子IN1Bと導電層116[1]の間に配置され、容量C2がノードFNaと導電層116[1]の間に配置されることが好ましい(
図26参照)。よって、導電層116[2]が導電層108[1]と電気的に接続することが好ましい。また、導電層113[1]が導電層191と電気的に接続することが好ましい。
【0259】
同様に、ノードFNbと導電層116[5]間に生じる寄生容量の容量値は、容量Cbbの容量値より少ない方が好ましい。よって、トランジスタ10[5]において、容量C1が端子IN2Bと導電層116[5]の間に配置され、容量C2がノードFNbと導電層116[5]の間に配置されることが好ましい。よって、導電層116[6]が導電層108[5]と電気的に接続することが好ましい。また、導電層113[5]が導電層194と電気的に接続することが好ましい。
【0260】
また、トランジスタ10[3]において、容量C1と容量C2は入れ替わってもよい。なお、トランジスタ10[3]はトランジスタ10[4]側がソースとして機能し、端子OUT側がドレインとして機能する。トランジスタ10[3]のオン状態とオフ状態をより確実に保持するため、容量C1をソース側に配置し、容量C2をドレイン側に配置することが好ましい。よって、導電層113[3]が導電層108[4]と電気的に接続することが好ましい。また、導電層108[3]が導電層113[2]と電気的に接続することが好ましい。
【0261】
また、トランジスタ10[4]において、容量C1と容量C2は入れ替わってもよい。なお、トランジスタ10[4]は導電層193側がソースとして機能し、トランジスタ10[3]側がドレインとして機能する。トランジスタ10[4]のオン状態とオフ状態をより確実に保持するため、容量C1をソース側に配置し、容量C2をドレイン側に配置することが好ましい。よって、導電層113[4]が導電層193と電気的に接続することが好ましい。また、導電層108[4]が導電層113[3]と電気的に接続することが好ましい。
【0262】
なお、容量Cbaとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いることにより、トランジスタ10[2]の容量C2は、導電層108[2]とノードFNaの間に配置される。容量Cbbとしてトランジスタ10[6]の容量C1を用いることにより、トランジスタ10[6]の容量C2は、導電層108[6]とノードFNbの間に配置される。
【0263】
また、
図15を用いて説明した半導体装置100Aの回路構成例のように、トランジスタ10[1]乃至トランジスタ10[6]の一部もしくは全部を、並列に接続された複数のトランジスタで構成してもよい。
【0264】
また、本発明の一態様に係るトランジスタ10を
図27(A)に示すNAND回路に用いてもよい。
図27(A)に示すNAND回路は、2つの入力端子(端子IN1、端子IN2)と1つの出力端子(端子OUT)を有する。
【0265】
図27(A)に示すNAND回路は、半導体装置100Bからトランジスタ10[5]およびトランジスタ10[6]を除き、トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの一方をトランジスタ10[1]のゲートと電気的に接続した構成を有する。
【0266】
図27(A)に示すNAND回路は、端子IN1と端子IN2の双方に電位Hが供給される場合、導電層108[2]と導電層193間に貫通電流が生じやすい。その一方で、ブートストラップ容量(容量Cba)を有することで、端子IN1および端子IN2の一方または双方に電位Lが供給された場合に、端子OUTから確実に電位Hを出力できる。また、
図21(A)に示す半導体装置100Bよりも回路を構成するトランジスタ数が少ないため、占有面積の少ないNAND回路を実現できる。
【0267】
また、
図27(A)に示すNAND回路に含まれるトランジスタとして、本発明の一態様に係る縦チャネル型のトランジスタを用いることが好ましい。本発明の一態様に係る縦チャネル型のトランジスタを用いることで、占有面積の少ないNAND回路を実現できる。
【0268】
加えて、少なくとも、
図27(A)に示すNAND回路のトランジスタ10[2]に本発明の一態様に係る縦チャネル型のトランジスタを用いることが好ましい。具体的には、
図27(B)に示すようにトランジスタ10[2]のソースまたはドレインの一方とゲートとの間に容量C2が配置され、トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方とゲートとの間に容量C1が配置されるように本発明の一態様に係るトランジスタを配置すればよい。
【0269】
容量C2よりも容量値が大きい容量C1をトランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方とゲートとの間に配置することで、容量C1を容量Cbaとして用いることができる。よって、容量Cbaを別途設ける必要がなくなり、占有面積の少ないNAND回路を実現できる。
【0270】
<NOR回路>
トランジスタ10を用いた論理回路の構成例として、NOR回路(「否定論理和回路」ともいう。)として機能する半導体装置100Cの構成例を説明する。半導体装置100Cは、本発明の一態様に係る半導体装置である。
【0271】
図28は半導体装置100Cの平面図である。
図29(A)は、
図28にA1-A2を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図29(B)は、
図28にA3-A4を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図30(A)は、
図28にA5-A6を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図30(B)は、
図28にA7-A8を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図31は、
図28にA9-A10を通る一点鎖線で示した部位の断面図である。
図33(A)および
図33(B)は、半導体装置100Bの等価回路図である。
図34(A)は、NOR回路の回路記号である。また、
図34(B)は、端子IN1および端子IN2に入力される信号と、端子OUTに出力される信号の組み合わせを示す図である。
図34(C)に、NOR回路、NOT回路、およびOR回路の回路記号を示す。
【0272】
まず、
図33(A)の等価回路図を用いて、半導体装置100Cの回路構成例について説明する。
【0273】
半導体装置100Cは、トランジスタ10[1]、トランジスタ10[2]、トランジスタ10[3]、トランジスタ10[4]、トランジスタ10[5]、およびトランジスタ10[6]と、容量Cbaおよび容量Cbbと、を有する。また、半導体装置100Cは、4つの入力端子(端子IN1、端子IN1B、端子IN2、端子IN2B)と1つの出力端子(端子OUT)を有する(
図33(A)参照)。端子IN1には電位Hまたは電位Lが入力され、端子IN1Bには端子IN1の反転信号が入力される。また、端子IN2には電位Hまたは電位Lが入力され、端子IN2Bには端子IN2の反転信号が入力される。
【0274】
トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの一方は端子IN1Bと電気的に接続される。また、トランジスタ10[1]のゲートは導電層116[1]と電気的に接続される。また、トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbaの一方の端子およびトランジスタ10[2]のゲートと電気的に接続される。トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの他方、容量Cbaの一方の端子、およびトランジスタ10[2]のゲートが電気的に接続される領域がノードFNaとして機能する。
【0275】
トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの一方は導電層108[2]と電気的に接続される。トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbaの他方の端子、およびトランジスタ10[4]のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。
【0276】
トランジスタ10[3]のソースまたはドレインの一方は端子IN2Bと電気的に接続される。また、トランジスタ10[3]のゲートは導電層116[3]と電気的に接続される。また、トランジスタ10[3]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbbの一方の端子およびトランジスタ10[4]のゲートと電気的に接続される。トランジスタ10[3]のソースまたはドレインの他方、容量Cbbの一方の端子、およびトランジスタ10[4]のゲートが電気的に接続される領域がノードFNbとして機能する。
【0277】
トランジスタ10[4]のソースまたはドレインの他方は、容量Cbbの他方の端子、端子OUT、およびトランジスタ10[5]のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ10[5]のゲートは端子IN1と電気的に接続され、ソースまたはドレインの他方は導電層196と電気的に接続される。
【0278】
トランジスタ10[6]のゲートは端子IN2と電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方は、端子OUT、およびトランジスタ10[4]のソースまたはドレインの他方、および容量Cbbの他方の端子と電気的に接続される。トランジスタ10[6]のソースまたはドレインの他方は、導電層198と電気的に接続される。
【0279】
半導体装置100Cは、端子IN1および端子IN2に入力された信号の組み合わせによって、端子OUTに出力される信号が決定される。よって、半導体装置100Cの回路記号を示す
図34(A)および
図34(C)では、端子IN1Bおよび端子IN2Bの記載は省略している。
【0280】
図34(B)に示すように、半導体装置100Cでは、端子IN1および端子IN2のどちらか一方または双方に電位Hが入力されると、端子OUTに電位Lが出力される。また、端子IN1および端子IN2の双方に電位Lが入力されると、端子OUTに電位Hが出力される。
【0281】
また、NOR回路である半導体装置100Cの端子OUTに、NOT回路である半導体装置100Aの端子INを接続することで、OR回路を実現できる(
図34(C)参照)。
【0282】
図33(A)に示すように、半導体装置100Cは、nチャネル型トランジスタのみで構成される単極性のNOR回路である。半導体装置100Cの構成にpチャネル型トランジスタを用いないため、製造コストを低減できる。また、pチャネル型トランジスタを形成するための工程が不要であるため、製造期間が短縮され、歩留まりも向上する。なお、必要に応じて半導体装置100Cにpチャネル型トランジスタを用いてもよい。
【0283】
次に、
図28乃至
図31を用いて半導体装置100Cの平面構成例および積層構成例について説明する。
【0284】
半導体装置100Cは、絶縁層102の上に導電層108[1]、導電層108[2]、導電層108[3]、導電層108[4]、導電層108[5]、および導電層108[6]を有する(
図29(A)、
図29(B)、
図30(A)、
図30(B)および
図31参照)。導電層108[1]乃至導電層108[6]は、前述した導電層108と同様に形成できる。また、絶縁層111の上に導電層113[1]乃至導電層113[7]を有する。導電層113[1]乃至導電層113[7]は、前述した導電層113と同様に形成できる。
【0285】
また、半導体装置100Cは、導電層108[1]と重なる領域に開口112[1]を有し、導電層108[2]と重なる領域に開口112[2]を有し、導電層108[3]と重なる領域に開口112[3]を有し、導電層108[4]と重なる領域に開口112[4]を有し、導電層108[5]と重なる領域に開口112[5]を有し、導電層108[6]と重なる領域に開口112[6]を有する。開口112[1]乃至開口112[6]は、前述した開口112と同様に形成できる。
【0286】
また、半導体装置100Cは、導電層113[1]および導電層108[1]の上に、開口112[1]と重なる領域を有する半導体層114[1]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[1]と重なる領域を有する導電層116[1]を有する。また、半導体装置100Cは、導電層113[2]および導電層108[2]の上に、開口112[2]と重なる領域を有する半導体層114[2]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[2]と重なる領域を有する導電層116[2]を有する。
【0287】
また、半導体装置100Cは、導電層113[3]および導電層108[3]の上に、開口112[3]と重なる領域を有する半導体層114[3]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[3]と重なる領域を有する導電層116[3]を有する。また、半導体装置100Cは、導電層113[4]および導電層108[4]の上に、開口112[4]と重なる領域を有する半導体層114[4]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[4]と重なる領域を有する導電層116[4]を有する。
【0288】
また、半導体装置100Cは、導電層113[5]および導電層108[5]の上に、開口112[5]と重なる領域を有する半導体層114[5]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[5]と重なる領域を有する導電層116[5]を有する。また、半導体装置100Cは、導電層113[6]および導電層108[6]の上に、開口112[6]と重なる領域を有する半導体層114[6]を有し、絶縁層115の上に、半導体層114[6]と重なる領域を有する導電層116[6]を有する。
【0289】
半導体層114[1]乃至半導体層114[6]は、前述した半導体層114と同様に形成できる。導電層116[1]乃至導電層116[6]は、前述した導電層116と同様に形成できる。
【0290】
また、半導体装置100Cは、導電層108[1]と重なる領域において、絶縁層115、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口121が設けられている(
図28および
図29(A)参照)。開口121において、導電層116[2]は導電層108[1]と電気的に接続する。
【0291】
また、半導体装置100Cは、導電層108[2]と重なる領域において、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口122が設けられている。開口122において、導電層113[7]は導電層108[2]と電気的に接続する(
図28および
図30(A)参照)。
【0292】
また、半導体装置100Cは、導電層108[3]と重なる領域において、絶縁層115、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口123が設けられている(
図28および
図29(B)参照)。開口123において、導電層116[4]は導電層108[3]と電気的に接続する。
【0293】
また、半導体装置100Cは、導電層108[4]と重なる領域において、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口124が設けられている。開口124において、導電層113[2]は導電層108[4]と電気的に接続する(
図28および
図30(A)参照)。
【0294】
また、半導体装置100Cは、導電層108[5]と重なる領域において、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口125が設けられている。開口125において、導電層113[4]は導電層108[5]と電気的に接続する(
図28および
図30(B)参照)。
【0295】
また、半導体装置100Cは、導電層108[6]と重なる領域において、絶縁層111、絶縁層110、および絶縁層109に開口126が設けられている。開口126において、導電層113[4]は導電層108[6]と電気的に接続する(
図28および
図30(B)参照)。導電層108[5]と導電層108[6]は、導電層113[4]を介して電気的に接続される。
【0296】
導電層116[2]と導電層108[1]を電気的に接続することで、容量Cbaとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いることができる。容量Cbaとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いることで、容量Cbaを別途設ける必要がなくなるため、占有面積の少ない半導体装置を実現できる(
図29(A)参照)。よって、導電層116[2]と導電層108[1]が電気的に接続することが好ましい。
【0297】
また、導電層116[4]と導電層108[3]を電気的に接続することで、容量Cbbとしてトランジスタ10[4]の容量C1を用いることができる。容量Cbbとしてトランジスタ10[4]の容量C1を用いることで、容量Cbbを別途設ける必要がなくなるため、占有面積の少ない半導体装置を実現できる(
図29(B)参照)。よって、導電層116[4]と導電層108[3]が電気的に接続することが好ましい。
【0298】
また、半導体装置100Cは、半導体装置100Aおよび半導体装置100Bと同様に絶縁層117の上に絶縁層187を有する。絶縁層187は、下層に形成されたトランジスタ、容量、配線などによって生じた段差を軽減する平坦化層として機能することが好ましい。
【0299】
また、半導体装置100Cは、絶縁層187上に導電層191乃至導電層198を有する(
図28、
図29(A)、
図29(B)、
図30(A)、
図30(B)、および
図31参照)。導電層191乃至導電層198は、他の導電層と同様の材料および方法で形成できる。
【0300】
また、半導体装置100Cは、導電層113[1]と重なる領域、導電層113[3]と重なる領域、導電層113[4]と重なる領域、導電層113[5]と重なる領域、導電層113[6]と重なる領域、および導電層113[7]と重なる領域のそれぞれにおいて、絶縁層187、絶縁層117、および絶縁層115に開口が形成されている。
【0301】
また、半導体装置100Cは、導電層116[5]と重なる領域および導電層116[6]と重なる領域のそれぞれにおいて、絶縁層187および絶縁層117に開口が形成されている。
【0302】
導電層191は、導電層113[1]と重なる開口において導電層113[1]と電気的に接続する。導電層192は、導電層113[4]と重なる開口において導電層113[4]と電気的に接続する。導電層193は、導電層113[7]と重なる開口において導電層113[7]と電気的に接続する。
【0303】
導電層194は、導電層113[3]と重なる開口において導電層113[3]と電気的に接続する。導電層195は、導電層116[5]と重なる開口において導電層116[5]と電気的に接続する。導電層196は、導電層113[5]と重なる開口において導電層113[5]と電気的に接続する。
【0304】
導電層197は、導電層116[6]と重なる開口において導電層116[6]と電気的に接続する。導電層198は、導電層113[6]と重なる開口において導電層113[6]と電気的に接続する。
【0305】
半導体装置100Cにおいて、導電層191が端子IN1Bとして機能し、導電層194が端子IN2Bとして機能し、導電層195が端子IN1として機能し、導電層197が端子IN2として機能し、導電層192が端子OUTとして機能する。
【0306】
図32は、
図28に示す平面構成の変形例である。
図32にA1-A2を通る一点鎖線で示した部位の断面図が、
図29(A)に示す断面図に相当する。また、
図32にA3-A4を通る一点鎖線で示した部位の断面図が、
図29(B)に示す断面図に相当する。
図32にA5-A6を通る一点鎖線で示した部位の断面図が、
図30(A)に示す断面図に相当する。
図32にA7-A8を通る一点鎖線で示した部位の断面図が、
図30(B)に示す断面図に相当する。
図32にA9-A10を通る一点鎖線で示した部位の断面図が、
図31に示す断面図に相当する。
【0307】
図33(A)および
図33(B)の回路図で示す半導体装置100Cにおいて、容量Cbaとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いる。このため、トランジスタ10[2]として本発明の一態様に係るトランジスタ(縦チャネル型のトランジスタ)を用いることが肝要である。また、容量Cbbとしてトランジスタ10[4]の容量C1を用いる。このため、トランジスタ10[4]として本発明の一態様に係るトランジスタ(縦チャネル型のトランジスタ)を用いることが肝要である。
【0308】
よって、トランジスタ10[2]およびトランジスタ10[4]以外のトランジスタを、他の構造を有するトランジスタで構成してもよい。ただし、占有面積が低減された半導体装置を実現するため、半導体装置100Cに本発明の一態様に係るトランジスタを多く用いることが好ましい。よって、半導体装置100Cに含まれる全てのトランジスタに本発明の一態様に係るトランジスタを用いることが好ましい。
【0309】
続いて、半導体装置100Cの動作例について説明する。
図35は半導体装置100Cの動作例を説明するためのタイミングチャートである。
図36(A)、
図36(B)、
図37(A)、および
図37(B)は、半導体装置100Cの動作例を説明するための回路図である。
【0310】
半導体装置100Cにおいて、導電層116[1]、導電層113[7](導電層193および導電層108[2])、および導電層116[3]には電位H(VDD)が供給され、導電層196(導電層113[5])および導電層198(導電層113[6])には電位L(VSS)が供給される。
【0311】
初期状態(時刻T1直前の状態)として、端子IN1(導電層195および導電層116[5])に電位L(端子IN1Bに電位H)が供給され、端子IN2に電位L(端子IN2Bに電位H)が供給されているものとする。よって、端子OUTが電位Hであるものとする。
【0312】
時刻T1(
図35および
図36(A)参照)において、端子IN1に電位H(端子IN1Bに電位L)が供給されると、トランジスタ10[5]がオン状態になる。また、ノードFNaの電位が電位Lになり、トランジスタ10[2]がオフ状態になる。また、時刻T1において、端子IN2に電位H(端子IN2Bに電位L)が供給されると、トランジスタ10[6]がオン状態になる。また、ノードFNbの電位が電位Lになり、トランジスタ10[4]がオフ状態になる。トランジスタ10[2]およびトランジスタ10[4]がオフ状態になり、トランジスタ10[5]およびトランジスタ10[6]がオン状態になるため、端子OUTの電位が電位Lになる。
【0313】
時刻T2(
図35および
図36(B)参照)において、端子IN1に電位L(端子IN1Bに電位H)が供給されると、トランジスタ10[5]がオフ状態になる。また、ノードFNaの電位が、電位Hからトランジスタ10[1]のVth分低い電位(電位H-Vth)になる。ここで、電位H-Vthの値は、Vth以上とする。よって、トランジスタ10[2]がオン状態となり、トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方の電位が上昇する。時刻T2では、ノードFNaの電位(トランジスタ10[2]のゲート電位)が電位H-Vthであるので、トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方の電位が電位H-Vth-Vthになる。
【0314】
また、時刻T2において、端子IN2に電位L(端子IN2Bに電位H)が供給されると、トランジスタ10[6]がオフ状態になる。また、ノードFNbの電位が、電位Hからトランジスタ10[3]のVth分低い電位(電位H-Vth)になる。ここで、電位H-Vthの値は、Vth以上とする。よって、トランジスタ10[4]がオン状態となり、端子OUTの電位が上昇する。時刻T2では、ノードFNbの電位(トランジスタ10[6]のゲート電位)が電位H-Vthであるので、端子OUTの電位が電位H-Vth-Vthになる。
【0315】
トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方とノードFNaは容量Cbaを介して接続(容量結合)している。よって、トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方の電位上昇に伴って、ノードFNaの電位も上昇する。ノードFNaの電位が上昇すると、トランジスタ10[1]がオフ状態になり、ノードFNaがフローティング状態になる。容量Cbaはブートストラップ容量として機能する。トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方とノードFNaを容量Cbaで容量結合することにより、ノードFNaの電位が電位H-Vth+電位H(2×電位H-Vth)まで上昇する(時刻T2a。
図35および
図37(A)参照)。当該電位は電位H+Vthよりも高い電位であるため、トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方の電位を電位Hとすることができる。
【0316】
また、端子OUTとノードFNbは容量Cbbを介して接続(容量結合)している。よって、端子OUTの電位上昇に伴って、ノードFNbの電位も上昇する。ノードFNbの電位が上昇すると、トランジスタ10[3]がオフ状態になり、ノードFNbがフローティング状態になる。容量Cbbはブートストラップ容量として機能する。端子OUTとノードFNbを容量Cbbで容量結合することにより、ノードFNbの電位が電位H-Vth+電位H(2×電位H-Vth)まで上昇する。当該電位は電位H+Vthよりも高い電位であるため、端子OUTの電位を電位Hとすることができる。
【0317】
時刻T3において端子IN2に電位H(端子IN2Bに電位L)が供給されると、トランジスタ10[6]がオン状態になる。また、ノードFNbの電位が電位Lになり、トランジスタ10[4]がオフ状態になる。トランジスタ10[6]を介して端子OUTと導電層113[6]が導通状態になり、端子OUTに電位Lが供給される(
図35および
図37(B)参照)。
【0318】
前述した通り、本発明の一態様に係る半導体装置100Cは、端子IN1および端子IN2に入力された信号の組み合わせによって、端子OUTに出力される信号を決定する機能を有する。または、半導体装置100Cは、端子IN1Bおよび端子IN2Bに入力された信号の組み合わせによって、端子OUTに出力される信号を決定する機能を有するともいえる。また、本発明の一態様に係る半導体装置100Cは、ブートストラップ容量として機能する容量Cbaおよび容量Cbbを備えることで、端子OUTの電位を確実に電位Hとすることができる。
【0319】
半導体装置100Cを構成するトランジスタにトランジスタ10を用いることで、半導体装置100Cの占有面積を低減できる。また、半導体装置100Cを構成するトランジスタにトランジスタ10を用いることで、容量Cbaおよび容量Cbbとして容量C1を用いることができる。よって、容量Cbaおよび容量Cbbを別途設ける必要が無くなり、半導体装置100Cの占有面積をさらに低減できる。
【0320】
また、本発明の一態様に係る半導体装置100Cは、入力端子として端子IN1および端子IN1Bを備え、端子IN1Bに端子IN1の反転信号を入力することにより、導電層113[7](導電層108[2])と導電層196(導電層113[5])間の貫通電流が著しく低減される。また、入力端子として端子IN2および端子IN2Bを備え、端子IN2Bに端子IN2の反転信号を入力することにより、導電層113[7](導電層108[2])と導電層193(導電層113[6])間の貫通電流を著しく低減できる。よって、消費電力が低減された半導体装置100Cを実現できる。
【0321】
半導体装置100Cをより確実に動作させるため、ノードFNaと導電層116[1]間に生じる寄生容量の容量値は、容量Cbaの容量値より少ない方が好ましい。よって、トランジスタ10[1]において、容量C1が端子IN1Bと導電層116[1]の間に配置され、容量C2がノードFNaと導電層116[1]の間に配置されることが好ましい(
図38参照)。よって、導電層116[2]が導電層108[1]と電気的に接続することが好ましい(
図29(A)参照)。また、導電層113[1]が導電層191と電気的に接続することが好ましい。
【0322】
同様に、ノードFNbと導電層116[3]間に生じる寄生容量の容量値は、容量Cbbの容量値より少ない方が好ましい。よって、トランジスタ10[3]において、容量C1が端子IN2Bと導電層116[3]の間に配置され、容量C2がノードFNbと導電層116[3]の間に配置されることが好ましい。よって、導電層116[4]が導電層108[3]と電気的に接続することが好ましい(
図29(B)参照)。また、導電層113[3]が導電層194と電気的に接続することが好ましい。
【0323】
また、トランジスタ10[5]において、容量C1と容量C2は入れ替わってもよい。なお、トランジスタ10[5]はトランジスタ10[4]側がドレインとして機能し、導電層196側がソースとして機能する。トランジスタ10[5]のオン状態とオフ状態をより確実に保持するため、容量C1をソース側に配置し、容量C2をドレイン側に配置することが好ましい。よって、導電層113[4]が導電層108[5]と電気的に接続することが好ましい。また、導電層196が導電層113[5]と電気的に接続することが好ましい。
【0324】
また、トランジスタ10[6]において、容量C1と容量C2は入れ替わってもよい。なお、トランジスタ10[6]はトランジスタ10[4]側がドレインとして機能し、導電層198側がソースとして機能する。トランジスタ10[6]のオン状態とオフ状態をより確実に保持するため、容量C1をソース側に配置し、容量C2をドレイン側に配置することが好ましい。よって、導電層113[4]が導電層108[6]と電気的に接続することが好ましい(
図30(B)参照)。また、導電層198が導電層113[6]と電気的に接続することが好ましい。
【0325】
なお、容量Cbaとしてトランジスタ10[2]の容量C1を用いることにより、トランジスタ10[2]の容量C2は、導電層108[2]とノードFNaの間に配置される。容量Cbbとしてトランジスタ10[6]の容量C1を用いることにより、トランジスタ10[6]の容量C2は、導電層108[6]とノードFNbの間に配置される。
【0326】
また、
図15を用いて説明した半導体装置100Aの回路構成例のように、トランジスタ10[1]乃至トランジスタ10[6]の一部もしくは全部を、並列に接続された複数のトランジスタで構成してもよい。
【0327】
また、本発明の一態様に係るトランジスタ10を
図39(A)に示すNOR回路に用いてもよい。
図39(A)に示すNOR回路は、2つの入力端子(端子IN1、端子IN2)と1つの出力端子(端子OUT)を有する。
【0328】
図39(A)に示すNOR回路は、半導体装置100Cからトランジスタ10[3]およびトランジスタ10[4]を除き、トランジスタ10[1]のソースまたはドレインの一方をトランジスタ10[1]のゲートと電気的に接続した構成を有する。また、導電層113[2]、導電層108[5]、導電層108[6]、および導電層192が電気的に接続される(図示せず)。
【0329】
図39(A)に示すNOR回路は、端子IN1に電位Hが供給された場合に、導電層108[2]と導電層196間に貫通電流が生じやすい。その一方で、ブートストラップ容量(容量Cba)を有することで、端子IN1に電位Lが供給された場合に、端子OUTから確実に電位Hを出力できる。また、半導体装置100Cよりも回路を構成するトランジスタ数が少ないため、占有面積の少ないNOR回路を実現できる。
【0330】
また、
図39(A)に示すNOR回路に含まれるトランジスタとして、本発明の一態様に係る縦チャネル型のトランジスタを用いることが好ましい。本発明の一態様に係る縦チャネル型のトランジスタを用いることで、占有面積の少ないNOR回路を実現できる。
【0331】
加えて、少なくとも、
図39(A)に示すNOR回路のトランジスタ10[2]に本発明の一態様に係る縦チャネル型のトランジスタを用いることが好ましい。具体的には、
図39(B)に示すようにトランジスタ10[2]のソースまたはドレインの一方とゲートとの間に容量C2が配置され、トランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方とゲートとの間に容量C1が配置されるように本発明の一態様に係るトランジスタを配置すればよい。
【0332】
容量C2よりも容量値が大きい容量C1をトランジスタ10[2]のソースまたはドレインの他方とゲートとの間に配置することで、容量C1を容量Cbaとして用いることができる。よって、容量Cbaを別途設ける必要がなくなり、占有面積の少ないNOR回路を実現できる。
【0333】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0334】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記の実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)について説明する。
【0335】
OSトランジスタに用いる金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を有することが好ましく、インジウムおよび亜鉛を有することがより好ましい。例えば、金属酸化物は、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、イットリウム、スズ、シリコン、ホウ素、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウム、およびコバルトから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。特に、Mは、ガリウム、アルミニウム、イットリウム、アンチモン、およびスズから選ばれた一種または複数種であることが好ましく、ガリウムがより好ましい。
【0336】
金属酸化物は、スパッタリング法、有機金属化学気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などの化学気相成長法、または、ALD法などにより形成できる。
【0337】
以降では、金属酸化物の一例として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、および亜鉛(Zn)を含む酸化物について説明する。なお、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、および亜鉛(Zn)を含む酸化物を、In-Ga-Zn酸化物と呼ぶ場合がある。
【0338】
<結晶構造の分類>
酸化物半導体の結晶構造としては、アモルファス(completely amorphousを含む)、CAAC(c-axis-aligned crystalline)、nc(nanocrystalline)、CAC(cloud-aligned composite)、単結晶(single crystal)、および多結晶(poly crystal)等が挙げられる。
【0339】
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)スペクトルを用いて評価することができる。例えば、GIXD(Grazing-Incidence XRD)測定で得られるXRDスペクトルを用いて評価することができる。なお、GIXD法は、薄膜法またはSeemann-Bohlin法ともいう。また、以下では、GIXD測定で得られるXRDスペクトルを、単に、XRDスペクトルと記す場合がある。
【0340】
例えば、石英ガラス基板では、XRDスペクトルのピークの形状がほぼ左右対称である。一方で、結晶構造を有するIn-Ga-Zn酸化物膜では、XRDスペクトルのピークの形状が左右非対称である。XRDスペクトルのピークの形状が左右非対称であることは、膜中または基板中の結晶の存在を明示している。別言すると、XRDスペクトルのピークの形状で左右対称でないと、膜または基板は非晶質状態であるとは言えない。
【0341】
また、膜または基板の結晶構造は、極微電子線回折法(NBED:Nano Beam Electron Diffraction)によって観察される回折パターン(極微電子線回折パターンともいう)にて評価することができる。例えば、石英ガラス基板の回折パターンでは、ハローが観察され、石英ガラスは、非晶質状態であることが確認できる。また、室温成膜したIn-Ga-Zn酸化物膜の回折パターンでは、ハローではなく、スポット状のパターンが観察される。このため、室温成膜したIn-Ga-Zn酸化物は、単結晶または多結晶でもなく、非晶質状態でもない、中間状態であり、非晶質状態であると結論することはできないと推定される。
【0342】
〔酸化物半導体の構造〕
なお、酸化物半導体は、構造に着目した場合、上記とは異なる分類となる場合がある。例えば、酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体として、例えば、上述のCAAC-OS、およびnc-OSがある。また、非単結晶酸化物半導体には、多結晶酸化物半導体、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、非晶質酸化物半導体、等が含まれる。
【0343】
ここで、上述のCAAC-OS、nc-OS、およびa-like OSの詳細について、説明を行う。
【0344】
[CAAC-OS]
CAAC-OSは、複数の結晶領域を有し、当該複数の結晶領域はc軸が特定の方向に配向している酸化物半導体である。なお、特定の方向とは、CAAC-OS膜の厚さ方向、CAAC-OS膜の被形成面の法線方向、またはCAAC-OS膜の表面の法線方向である。また、結晶領域とは、原子配列に周期性を有する領域である。なお、原子配列を格子配列とみなすと、結晶領域とは、格子配列の揃った領域でもある。さらに、CAAC-OSは、a-b面方向において複数の結晶領域が連結する領域を有し、当該領域は歪みを有する場合がある。なお、歪みとは、複数の結晶領域が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。つまり、CAAC-OSは、c軸配向し、a-b面方向には明らかな配向をしていない酸化物半導体である。
【0345】
なお、上記複数の結晶領域のそれぞれは、1つまたは複数の微小な結晶(最大径が10nm未満である結晶)で構成される。結晶領域が1つの微小な結晶で構成されている場合、当該結晶領域の最大径は10nm未満となる。また、結晶領域が多数の微小な結晶で構成されている場合、当該結晶領域の最大径は、数十nm程度となる場合がある。
【0346】
また、In-Ga-Zn酸化物において、CAAC-OSは、インジウム(In)、および酸素を有する層(以下、In層)と、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、および酸素を有する層(以下、(Ga,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムとガリウムは、互いに置換可能である。よって、(Ga,Zn)層にはインジウムが含まれる場合がある。また、In層にはガリウムが含まれる場合がある。なお、In層には亜鉛が含まれる場合もある。当該層状構造は、例えば、高分解能TEM(Transmission Electron Microscope)像において、格子像として観察される。
【0347】
CAAC-OS膜に対し、例えば、XRD装置を用いて構造解析を行うと、θ/2θスキャンを用いたOut-of-plane XRD測定では、c軸配向を示すピークが2θ=31°またはその近傍に検出される。なお、c軸配向を示すピークの位置(2θの値)は、CAAC-OSを構成する金属元素の種類、組成等により変動する場合がある。
【0348】
また、例えば、CAAC-OS膜の電子線回折パターンにおいて、複数の輝点(スポット)が観測される。なお、あるスポットと別のスポットとは、試料を透過した入射電子線のスポット(ダイレクトスポットともいう。)を対称中心として、点対称の位置に観測される。
【0349】
上記特定の方向から結晶領域を観察した場合、当該結晶領域内の格子配列は、六方格子を基本とするが、単位格子は正六角形とは限らず、非正六角形である場合がある。また、上記歪みにおいて、五角形、七角形等の格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないこと、金属原子が置換することで原子間の結合距離が変化すること、などによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0350】
なお、明確な結晶粒界が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、電界効果移動度の低下等を引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、およびIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
【0351】
CAAC-OSは、結晶性が高く、明確な結晶粒界が確認されない酸化物半導体である。よって、CAAC-OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入および/または欠陥の生成等によって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物および欠陥(酸素欠損等)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0352】
[nc-OS]
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。別言すると、nc-OSは、微小な結晶を有する。なお、当該微小な結晶の大きさは、例えば、1nm以上10nm以下、特に1nm以上3nm以下であることから、当該微小な結晶をナノ結晶ともいう。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSおよび非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、XRD装置を用いて構造解析を行うと、θ/2θスキャンを用いたOut-of-plane XRD測定では、結晶性を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、ナノ結晶よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し、ナノ結晶の大きさと近いかナノ結晶より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、ダイレクトスポットを中心とするリング状の領域内に複数のスポットが観測される電子線回折パターンが取得される場合がある。
【0353】
[a-like OS]
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。また、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、膜中の水素濃度が高い。
【0354】
[酸化物半導体の構成]
次に、上述のCAC-OSの詳細について、説明を行う。なお、CAC-OSは材料構成に関する。
【0355】
[CAC-OS]
CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つまたは複数の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0356】
さらに、CAC-OSとは、第1の領域と、第2の領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、当該第1の領域が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。つまり、CAC-OSは、当該第1の領域と、当該第2の領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。
【0357】
ここで、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSを構成する金属元素に対するIn、Ga、およびZnの原子数比のそれぞれを、[In]、[Ga]、および[Zn]と表記する。例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSにおいて、第1の領域は、[In]が、CAC-OS膜の組成における[In]よりも大きい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、CAC-OS膜の組成における[Ga]よりも大きい領域である。または、例えば、第1の領域は、[In]が、第2の領域における[In]よりも大きく、且つ、[Ga]が、第2の領域における[Ga]よりも小さい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、第1の領域における[Ga]よりも大きく、且つ、[In]が、第1の領域における[In]よりも小さい領域である。
【0358】
具体的には、上記第1の領域は、インジウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物等が主成分である領域である。また、上記第2の領域は、ガリウム酸化物、ガリウム亜鉛酸化物等が主成分である領域である。つまり、上記第1の領域を、Inを主成分とする領域と言い換えることができる。また、上記第2の領域を、Gaを主成分とする領域と言い換えることができる。
【0359】
なお、上記第1の領域と、上記第2の領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0360】
また、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSとは、In、Ga、Zn、およびOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とする領域と、一部にInを主成分とする領域とが、それぞれモザイク状であり、これらの領域がランダムに存在している構成をいう。よって、CAC-OSは、金属元素が不均一に分布した構造を有していると推測される。
【0361】
CAC-OSは、例えば基板を意図的に加熱しない条件で、スパッタリング法により形成することができる。また、CAC-OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスとして、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、および窒素ガスの中から選ばれたいずれか一つまたは複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比は低いほど好ましい。例えば、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好ましくは0%以上10%以下とする。
【0362】
また、例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、Inを主成分とする領域(第1の領域)と、Gaを主成分とする領域(第2の領域)とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0363】
ここで、第1の領域は、第2の領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、第1の領域を、キャリアが流れることにより、金属酸化物としての導電性が発現する。従って、第1の領域が、金属酸化物中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0364】
一方、第2の領域は、第1の領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、第2の領域が、金属酸化物中に分布することで、リーク電流を抑制することができる。
【0365】
したがって、CAC-OSをトランジスタに用いる場合、第1の領域に起因する導電性と、第2の領域に起因する絶縁性とが、相補的に作用することにより、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSに付与することができる。つまり、CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。導電性の機能と絶縁性の機能とを分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。よって、CAC-OSをトランジスタに用いることで、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および良好なスイッチング動作を実現することができる。
【0366】
また、CAC-OSを用いたトランジスタは、信頼性が高い。従って、CAC-OSは、表示装置をはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
【0367】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、CAC-OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0368】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0369】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0370】
特に、チャネルが形成される半導体層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、および亜鉛(Zn)を含む酸化物(「IGZO」とも記す)を用いることが好ましい。または、半導体層としては、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、および亜鉛(Zn)を含む酸化物(「IAZO」とも記す)を用いてもよい。または、半導体層としては、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、および亜鉛(Zn)を含む酸化物(「IAGZO」とも記す)を用いてもよい。
【0371】
トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。例えば、酸化物半導体のキャリア濃度は1×1017cm-3以下、好ましくは1×1015cm-3以下、さらに好ましくは1×1013cm-3以下、より好ましくは1×1011cm-3以下、さらに好ましくは1×1010cm-3未満であり、1×10-9cm-3以上である。なお、酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。なお、キャリア濃度の低い酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ場合がある。
【0372】
高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0373】
酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0374】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物は、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。なお、酸化物半導体中の不純物とは、例えば、酸化物半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物と言える。
【0375】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0376】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンまたは炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体中のシリコンまたは炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0377】
酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0378】
酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が高くなり、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。または、酸化物半導体において、窒素が含まれると、トラップ準位が形成される場合がある。この結果、トランジスタの電気特性が不安定となる場合がある。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体中の窒素濃度を、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下にする。
【0379】
酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中の水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満にする。
【0380】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0381】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0382】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るトランジスタ10および半導体装置100(半導体装置100A、半導体装置100Aa、半導体装置100B、および半導体装置100C)などを用いることができる表示装置200の構成例について説明する。
【0383】
図40(A)に、表示装置200の斜視図を示す。表示装置200は、基板152と基板101とが貼り合わされた構成を有する。
図40(A)では、基板152を破線で示している。
【0384】
表示装置200は、表示部235、接続部140、第1駆動回路部231、第2駆動回路部232、配線165等を有する。
図40(A)では表示装置200にIC(集積回路)178およびFPC179が実装されている例を示している。そのため、
図40(A)に示す構成は、表示装置200と、ICと、FPCと、を有する表示モジュールということもできる。
【0385】
接続部140は、表示部235の外側に設けられる。接続部140は、表示部235の一辺または複数の辺に沿って設けることができる。接続部140は、単数であっても複数であってもよい。
図40(A)では、表示部の四辺を囲むように接続部140が設けられている例を示す。接続部140では、発光デバイスの共通電極と、導電層とが電気的に接続されており、共通電極に電位を供給することができる。
【0386】
配線165は、表示部235、第1駆動回路部231、および第2駆動回路部232に、信号および電力を供給する機能を有する。当該信号および電力は、FPC179を介して外部から配線165に入力される、またはIC178から配線165に入力される。
【0387】
図40(A)では、COG(Chip On Glass)方式またはCOF(Chip On Film)方式等により、基板101にIC178が設けられている例を示す。IC178は、例えば走査線駆動回路または信号線駆動回路などを有してもよい。なお、表示装置200および表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、COF方式等により、FPCに実装してもよい。
【0388】
表示部235は、m行(mは1以上の整数)n列(nは1以上の整数)のマトリクス状に配置された複数の画素230を有する。また、複数の画素230は、例えば、画素230a、画素230b、および画素230cに分類される。画素230a、画素230b、および画素230cは、それぞれ異なる色の光を呈する機能を有する。例えば、画素230aが赤色(R)の光を呈する機能を有し、画素230bが緑色(G)の光を呈する機能を有し、画素230cが青色(B)の光を呈する機能を有してもよい。または、例えば、画素230aが黄色(Y)の光を呈する機能を有し、画素230bがシアン(C)の光を呈する機能を有し、画素230cがマゼンタ(M)の光を呈する機能を有してもよい。
【0389】
1つの画素230a、1つの画素230b、および1つの画素230cで1つの画素240を構成することで、フルカラー表示を実現できる。よって、画素230は副画素として機能する。また、
図40(A)に示す表示装置200では、副画素として機能する画素230をストライプ配列で配置する例を示している。1つの画素240を構成する副画素の数は3つに限られず、4つ以上としてもよい。例えば、R、G、B、白色(W)の光を呈する4つの副画素を有してもよい。または、R、G、B、Yの4色の光を呈する4つの副画素を有してもよい。
【0390】
図40(B)は、表示装置200を説明するブロック図である。表示装置200は、表示部235、第1駆動回路部231、および第2駆動回路部232を有する。
図40(B)では、1行n列目の画素230を画素230[1,n]と示し、m行1列目の画素230を画素230[m,1]と示し、m行n列目の画素230を画素230[m,n]と示している。また、表示部235に含まれる任意の画素230を画素230[r,s]と示す場合がある。rは1以上m以下の整数であり、sは1以上n以下の整数である。
【0391】
第1駆動回路部231に含まれる回路は、例えば走査線駆動回路として機能する。第2駆動回路部232に含まれる回路は、例えば信号線駆動回路として機能する。なお、表示部235を挟んで第1駆動回路部231と向き合う位置に、何らかの回路を設けてもよい。表示部235を挟んで第2駆動回路部232と向き合う位置に、何らかの回路を設けてもよい。なお、第1駆動回路部231および第2駆動回路部232に含まれる回路をまとめて、周辺駆動回路233という。
【0392】
周辺駆動回路233には、シフトレジスタ回路、レベルシフタ回路、インバータ回路、ラッチ回路、アナログスイッチ回路、マルチプレクサ回路、デマルチプレクサ回路、論理回路等の様々な回路を用いることができる。周辺駆動回路233に、本発明の一態様に係るトランジスタ10および半導体装置100などを用いることができる。なお、周辺駆動回路が有するトランジスタと画素230に含まれるトランジスタを同じ工程で形成してもよい。
【0393】
また、表示装置200は、各々が略平行に配設され、且つ、第1駆動回路部231に含まれる回路によって電位が制御されるm本の配線236と、各々が略平行に配設され、且つ、第2駆動回路部232に含まれる回路によって電位が制御されるn本の配線237と、を有する。
【0394】
なお、
図40(B)では、画素230に配線236と配線237が接続している例を示している。ただし、配線236と配線237は一例であり、画素230と接続する配線は、配線236と配線237に限らない。
【0395】
<画素回路の構成例>
図41(A)乃至(D)、
図42(A)乃至(D)、
図43(A)、および
図43(B)に画素230の構成例を示す。画素230は画素回路51(画素回路51A、画素回路51B、画素回路51C、画素回路51D、画素回路51E、画素回路51F、画素回路51G、画素回路51H、画素回路51I、または画素回路51J)および発光素子61を有する。
【0396】
本実施の形態などで説明する発光素子(発光デバイスともいう)とは、有機EL素子(OLED(Organic Light Emitting Diode)ともいう)などの自発光型の表示素子をいう。なお画素回路に電気的に接続される発光素子は、LED(Light Emitting Diode)、マイクロLED、QLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)、半導体レーザー等の、自発光型の発光素子とすることが可能である。
【0397】
図41(A)に示す画素回路51Aは、トランジスタ52A、トランジスタ52B、および容量53を有する2Tr1C型の画素回路である。
【0398】
トランジスタ52Aのソースまたはドレインの一方は配線SLと電気的に接続され、トランジスタ52Aのゲートは配線GLと電気的に接続される。トランジスタ52Aのソースまたはドレインの一方は、トランジスタ52Bのゲートおよび容量53の一方の端子と電気的に接続される。トランジスタ52Bのソースまたはドレインの一方は配線ANOと電気的に接続される。トランジスタ52Bのソースまたはドレインの他方は、容量53の他方の端子および発光素子61のアノードと電気的に接続される。発光素子61のカソードは、配線VCOMと電気的に接続される。トランジスタ52Aのソースまたはドレインの他方、トランジスタ52Bのゲート、および容量53の一方の端子が電気的に接続される領域が、ノードNDとして機能する。
【0399】
配線GLは配線236に相当し、配線SLは配線237に相当する。配線VCOMは、発光素子61に電流を供給するための電位を与える配線である。トランジスタ52Aは、配線GLの電位に基づいて、配線SLとトランジスタ52Bのゲート間の導通状態または非導通状態を制御する機能を有する。例えば、配線ANOにはVDDが供給され、配線VCOMにはVSSが供給される。
【0400】
トランジスタ52Aをオン状態にすることで、配線SLからノードNDに画像信号が供給される。その後、トランジスタ52Aをオフ状態にすることで、画像信号がノードNDに保持される。ノードNDに供給された画像信号を確実に保持するため、トランジスタ52Aはオフ電流が少ないトランジスタを用いることが好ましい。例えば、トランジスタ52AとしてOSトランジスタを用いることが好ましい。
【0401】
トランジスタ52Bは発光素子61に流れる電流量を制御する機能を有する。容量53は、トランジスタ52Bのゲート電位を保持する機能を有する。発光素子61が射出する光の強度は、トランジスタ52Bのゲート(ノードND)に供給される画像信号に応じて制御される。
【0402】
図41(B)に示す画素回路51Bは、トランジスタ52A、トランジスタ52B、トランジスタ52C、および容量53を有する3Tr1C型の画素回路である。
図41(B)に示す画素回路51Bは、
図41(A)に示す画素回路51Aにトランジスタ52Cを追加した構成を有する。
【0403】
トランジスタ52Cのソースまたはドレインの一方は、トランジスタ52Bのソースまたはドレインの他方と電気的に接続される。トランジスタ52Cのゲートは、配線GLと電気的に接続される。トランジスタ52Cのソースまたはドレインの他方は、配線V0と電気的に接続される。例えば、配線V0には基準電位が供給される。
【0404】
トランジスタ52Cは、配線GLの電位に基づいて、トランジスタ52Bのソースまたはドレインの他方と配線V0間の導通状態または非導通状態を制御する機能を有する。配線V0は、基準電位を与えるための配線である。トランジスタ52Bにnチャネル型トランジスタを用いる場合は、トランジスタ52Cを介して与えられる配線V0の基準電位によって、トランジスタ52Bのゲート-ソース間電位のばらつきを抑制できる。
【0405】
また配線V0を用いて、画素パラメータの設定に用いることのできる電流値を取得できる。より具体的には、配線V0は、トランジスタ52Bに流れる電流、または発光素子61に流れる電流を、外部に出力するためのモニタ線として機能させることができる。配線V0に出力された電流は、ソースフォロア回路などにより電圧に変換され、外部に出力することができる。または、A-Dコンバータなどによりデジタル信号に変換され、外部に出力することができる。
【0406】
図41(C)に示す画素回路51Cは、上記画素回路51Aのトランジスタ52Aおよびトランジスタ52Bに、バックゲートを有し該バックゲートがゲートと電気的に接続するトランジスタを適用した場合の例である。また、
図41(D)に示す画素回路51Dは、画素回路51Bに当該トランジスタを適用した場合の例である。これにより、トランジスタが流すことのできる電流を増大させることができる。なお、ここでは全てのトランジスタに、ゲートとバックゲートが電気的に接続されたトランジスタを適用したが、これに限られない。また、ゲートとバックゲートを有し、且つこれらが異なる配線と電気的に接続されるトランジスタを適用してもよい。例えば、ゲートまたはバックゲートの一方とソースとが電気的に接続されたトランジスタを用いることで、信頼性を高めることができる。
【0407】
図42(A)に示す画素回路51Eは、
図41(B)に示す画素回路51Bにトランジスタ52Dを追加した構成を有する。
図42(A)に示す画素回路51Eは、トランジスタ52A、トランジスタ52B、トランジスタ52C、トランジスタ52D、および容量53を有する4Tr1C型の画素回路である。
【0408】
トランジスタ52Dのソースまたはドレインの一方はノードNDと電気的に接続され、他方は配線V0と電気的に接続されている。
【0409】
また、画素回路51Eには、配線GL1、配線GL2、および配線GL3が電気的に接続されている。配線GL1はトランジスタ52Aのゲートと電気的に接続され、配線GL2はトランジスタ52Cのゲートと電気的に接続され、配線GL3はトランジスタ52Dのゲートと電気的に接続されている。なお、本実施の形態などにおいて、配線GL1、配線GL2、および配線GL3をまとめて配線GLと呼ぶ場合がある。よって、配線GLは1本に限らず、複数本の場合がある。
【0410】
トランジスタ52Cとトランジスタ52Dを同時に導通状態とさせることで、トランジスタ52Bのソースとゲートが同電位となり、トランジスタ52Bを非導通状態とすることができる。これにより、発光素子61に流れる電流を強制的に遮断することができる。このような画素回路は、表示期間と消灯期間を交互に設ける表示方法を用いる場合に適している。
【0411】
図42(B)に示す画素回路51Fは、上記画素回路51Eに容量53Aを追加した場合の例である。容量53Aは保持容量として機能する。
図42(A)に示す画素回路51Eは、4Tr1C型の画素回路である。また、
図42(B)に示す画素回路51Fは、4Tr2C型の画素回路である。
【0412】
図42(C)に示す画素回路51G、および
図42(D)に示す画素回路51Hは、それぞれ上記画素回路51Eまたは画素回路51Fに、バックゲートを有するトランジスタを適用した場合の例である。トランジスタ52A、トランジスタ52C、トランジスタ52Dには、ゲートとバックゲートが電気的に接続されたトランジスタが適用され、トランジスタ52Bには、ゲートまたはバックゲートの一方がソースと電気的に接続されたトランジスタが適用されている。
【0413】
図43(A)に示す画素回路51Iは、トランジスタ52A、トランジスタ52B、トランジスタ52C、トランジスタ52D、トランジスタ52E、トランジスタ52F、および容量53を有する6Tr1C型の画素回路である。
【0414】
トランジスタ52Aのソースまたはドレインの一方は配線SLと電気的に接続され、トランジスタ52Aのゲートは配線GL1と電気的に接続される。トランジスタ52Dのソースまたはドレインの一方は配線ANOと電気的に接続され、トランジスタ52Dのゲートは配線GL2と電気的に接続される。トランジスタ52Dのソースまたはドレインの他方はトランジスタ52Bのソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ52Bのソースまたはドレインの他方は、トランジスタ52Aのソースまたはドレインの他方、および、トランジスタ52Fのソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ52Fのゲートは配線GL3と電気的に接続される。
【0415】
トランジスタ52Eのソースまたはドレインの一方は、トランジスタ52Dのソースまたはドレインの他方、および、トランジスタ52Bのソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ52Eのソースまたはドレインの他方は、トランジスタ52Bのゲート、および、容量53の一方の端子と電気的に接続される。容量53の他方の端子は、トランジスタ52Fのソースまたはドレインの他方、発光素子61のアノード、およびトランジスタ52Cのソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ52Eのゲートおよびトランジスタ52Cのゲートは配線GL4と電気的に接続される。トランジスタ52Cのソースまたはドレインの他方は、配線V0と電気的に接続される。トランジスタ52Eのソースまたはドレインの他方、トランジスタ52Bのゲート、および、容量53の一方の端子が電気的に接続される領域が、ノードNDとして機能する。
【0416】
また、
図43(B)に示すように、画素回路51Jが有するトランジスタにバックゲートを有するトランジスタを用いてもよい。トランジスタ52A、トランジスタ52C、トランジスタ52D、トランジスタ52E、およびトランジスタ52Fには、ゲートとバックゲートが電気的に接続されたトランジスタが適用され、トランジスタ52Bには、バックゲートがソースまたはドレインの他方と電気的に接続されたトランジスタが適用されている。
【0417】
トランジスタ52A、トランジスタ52C、トランジスタ52D、トランジスタ52E、およびトランジスタ52Fとして、本発明の一態様に係るトランジスタ10を用いることができる。
【0418】
本発明の一態様に係るトランジスタ10を表示装置の画素回路に用いることで、画素回路の占有面積を低減できる。よって、表示装置の精細度を高めることができる。例えば、精細度が1000ppi以上、好ましくは2000ppi以上、より好ましくは3000ppi以上、さらに好ましくは4000ppi以上、さらに好ましくは5000ppi以上、さらに好ましくは6000ppi以上であって、10000ppi以下、9000ppi以下、または8000ppi以下である表示装置を実現できる。
【0419】
また、画素回路の占有面積が低減することで、表示装置の画素数を多く(解像度を高く)することができる。例えば、HD(画素数1280×720)、FHD(画素数1920×1080)、WQHD(画素数2560×1440)、WQXGA(画素数2560×1600)、4K2K(画素数3840×2160)、または8K4K(画素数7680×4320)といった極めて高い解像度の表示装置を実現できる。
【0420】
よって、本発明の一態様に係るトランジスタ10を表示装置の画素回路に用いることで、表示装置の表示品位を高めることができる。また、EL素子を用いたボトムエミッション型の表示装置では、画素の開口率を高めることができる。開口率の高い画素は、開口率の低い画素と同じ輝度の発光を、開口率の低い画素よりも少ない電流密度で実現できる。よって、表示装置の信頼性を高めることができる。
【0421】
<画素レイアウト>
図44(A)乃至(G)、および
図45(A)乃至(K)を用いて、主に、
図40(A)とは異なる画素レイアウトについて説明する。副画素の配列に特段の限定はなく、様々な画素レイアウトを適用できる。副画素の配列として、例えば、ストライプ配列、Sストライプ配列、マトリクス配列、デルタ配列、ベイヤー配列、ペンタイル配列などが挙げられる。
【0422】
【0423】
なお、副画素の平面形状として、例えば、三角形、四角形(長方形、正方形を含む)、五角形などの多角形、これら多角形の角が丸い形状、楕円形、または円形などが挙げられる。
【0424】
副画素(画素230)が有する画素回路51は、発光領域と重ねて配置されてもよく、発光領域の外側に配置されてもよい。
【0425】
図44(A)に示す画素240には、Sストライプ配列が適用されている。
図44(A)に示す画素240は、画素230a、画素230b、および画素230cの3種類の副画素で構成される。
【0426】
図44(B)に示す画素240は、角が丸い略台形の平面形状を有する画素230aと、角が丸い略三角形の平面形状を有する画素230bと、角が丸い略四角形または略六角形の平面形状を有する画素230cと、を有する。また、画素230aは、画素230bよりも発光面積が広い。このように、各副画素の形状およびサイズはそれぞれ独立に決定することができる。例えば、信頼性の高い発光デバイスを有する副画素ほど、サイズを小さくすることができる。
【0427】
図44(C)に示す画素240A、および画素240Bには、ペンタイル配列が適用されている。
図44(C)では、画素230aおよび画素230bを有する画素240Aと、画素230bおよび画素230cを有する画素240Bと、が交互に配置されている例を示す。
【0428】
図44(D)乃至
図44(F)に示す画素240A、および画素240Bは、デルタ配列が適用されている。画素240Aは上の行(1行目)に、2つの副画素(画素230a、および画素230b)を有し、下の行(2行目)に、1つの副画素(画素230c)を有する。画素240Bは上の行(1行目)に、1つの副画素(画素230c)を有し、下の行(2行目)に、2つの副画素(画素230a、および画素230b)を有する。
【0429】
図44(D)は、各副画素が、角が丸い略四角形の平面形状を有する例であり、
図44(E)は、各副画素が、円形の平面形状を有する例であり、
図44(F)は、各副画素が、角が丸い略六角形の平面形状を有する例である。
【0430】
図44(F)では、各副画素が、最密に配列した六角形の領域の内側に配置されている。各副画素は、その1つの副画素に着目したとき、6つの副画素に囲まれるように、配置されている。また、同じ色の光を呈する副画素が隣り合わないように設けられている。例えば、画素230aに着目したとき、これを囲むように3つの画素230bと3つの画素230cが、交互に配置されるように、それぞれの副画素が設けられている。
【0431】
図44(G)は、各色の副画素がジグザグに配置されている例である。具体的には、平面視において、列方向に並ぶ2つの副画素(例えば、画素230aと画素230b、または、画素230bと画素230c)の上辺の位置がずれている。
【0432】
図44(A)乃至
図44(G)に示す各画素において、例えば、画素230aを赤色の光を呈する副画素Rとし、画素230bを緑色の光を呈する副画素Gとし、画素230cを青色の光を呈する副画素Bとすることが好ましい。なお、副画素の構成はこれに限定されず、副画素が呈する色とその並び順は適宜決定することができる。例えば、画素230bを赤色の光を呈する副画素Rとし、画素230aを緑色の光を呈する副画素Gとしてもよい。
【0433】
フォトリソグラフィ法では、加工するパターンが微細になるほど、光の回折の影響を無視できなくなるため、露光によりフォトマスクのパターンを転写する際に忠実性が損なわれ、レジストマスクを所望の形状に加工することが困難になる。そのため、フォトマスクのパターンが矩形であっても、角が丸まったパターンが形成されやすい。したがって、副画素の平面形状が、多角形の角が丸い形状、楕円形、または円形などになることがある。
【0434】
また、レジストマスクを用いてEL層を島状に加工する場合、EL層上に形成したレジスト膜は、EL層の耐熱温度よりも低い温度で硬化する必要がある。そのため、EL層の材料の耐熱温度およびレジスト材料の硬化温度によっては、レジスト膜の硬化が不十分になる場合がある。硬化が不十分なレジスト膜は、加工時に所望の形状から離れた形状をとることがある。その結果、EL層の平面形状が、多角形の角が丸い形状、楕円形、または円形などになることがある。例えば、平面形状が正方形のレジストマスクを形成しようとした場合に、円形の平面形状のレジストマスクが形成され、EL層の平面形状が円形になることがある。
【0435】
なお、EL層の平面形状を所望の形状とするために、設計パターンと、転写パターンとが、一致するように、あらかじめマスクパターンを補正する技術(OPC(Optical Proximity Correction:光近接効果補正)技術)を用いてもよい。具体的には、OPC技術では、マスクパターン上の図形コーナー部などに補正用のパターンを追加する。
【0436】
図45(A)乃至
図45(I)に示すように、画素は副画素を4種類有する構成とすることができる。
【0437】
図45(A)乃至
図45(C)に示す画素240は、ストライプ配列が適用されている。
【0438】
図45(A)は、各副画素が、長方形の平面形状を有する例であり、
図45(B)は、各副画素が、2つの半円と長方形をつなげた平面形状を有する例であり、
図45(C)は、各副画素が、楕円形の平面形状を有する例である。
【0439】
図45(D)乃至
図45(F)に示す画素240は、マトリクス配列が適用されている。
【0440】
図45(D)は、各副画素が、正方形の平面形状を有する例であり、
図45(E)は、各副画素が、角が丸い略正方形の平面形状を有する例であり、
図45(F)は、各副画素が、円形の平面形状を有する例である。
【0441】
図45(G)および
図45(H)では、1つの画素240が、2行3列に配置された副画素で構成されている例を示す。
【0442】
図45(G)に示す画素240は、画素240内の上の行(1行目)に、3つの副画素(画素230a、画素230b、画素230c)を有し、下の行(2行目)に、1つの副画素(画素230d)を有する。言い換えると、画素240は、左の列(1列目)に、画素230aを有し、中央の列(2列目)に画素230bを有し、右の列(3列目)に画素230cを有し、さらに、この3列にわたって、画素230dを有する。
【0443】
図45(H)に示す画素240は、上の行(1行目)に、3つの副画素(画素230a、画素230b、画素230c)を有し、下の行(2行目)に、3つの画素230dを有する。言い換えると、画素240は、画素240内の左の列(1列目)に、画素230aおよび画素230dを有し、中央の列(2列目)に画素230bおよび画素230dを有し、右の列(3列目)に画素230cおよび画素230dを有する。
図45(H)に示すように、上の行と下の行との副画素の配置を揃える構成とすることで、製造プロセスで生じうるゴミなどを効率よく除去することが可能となる。したがって、表示品位の高い表示装置を提供することができる。
【0444】
図45(I)では、1つの画素240が、3行2列に配置された副画素で構成されている例を示す。
【0445】
図45(I)に示す画素240は、画素240内の上の行(1行目)に、画素230aを有し、中央の行(2行目)に、画素230bを有し、1行目から2行目にわたって画素230cを有し、下の行(3行目)に、1つの副画素(画素230d)を有する。言い換えると、画素240は、画素240内の左の列(1列目)に、画素230a、および画素230bを有し、右の列(2列目)に画素230cを有し、さらに、この2列にわたって、画素230dを有する。
【0446】
図45(A)乃至
図45(I)に示す画素240は、画素230a、画素230b、画素230c、および画素230dの4つの副画素で構成される。
【0447】
画素230a、画素230b、画素230c、および画素230dは、それぞれ異なる色の光を発する発光デバイスを有する構成とすることができる。画素230a、画素230b、画素230c、および画素230dとして、R、G、B、白色(W)の4色の副画素、R、G、B、Yの4色の副画素、または、R、G、B、赤外光(IR)の副画素などが挙げられる。
【0448】
図45(A)乃至
図45(I)に示す各画素240において、例えば、画素230aを赤色の光を呈する副画素Rとし、画素230bを緑色の光を呈する副画素Gとし、画素230cを青色の光を呈する副画素Bとし、画素230dを白色の光を呈する副画素W、黄色の光を呈する副画素Y、または近赤外光を呈する副画素IRのいずれかとしてもよい。このような構成とする場合、
図45(G)および
図45(H)に示す画素240では、R、G、Bのレイアウトがストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。また、
図45(I)に示す画素240では、R、G、BのレイアウトがいわゆるSストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。
【0449】
なお、画素240は、受光素子(受光デバイスともいう)を有する副画素を有してもよい。
【0450】
図45(A)乃至
図45(I)に示す各画素240において、画素230a乃至画素230dのいずれか一つを、受光デバイスを有する副画素としてもよい。
【0451】
図45(A)乃至
図45(I)に示す各画素240において、例えば、画素230aを赤色の光を呈する副画素Rとし、画素230bを緑色の光を呈する副画素Gとし、画素230cを青色の光を呈する副画素Bとし、画素230dを、受光デバイスを有する副画素Sとしてもよい。このような構成とする場合、
図45(G)および
図45(H)に示す画素240では、R、G、Bのレイアウトがストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。また、
図45(I)に示す画素240では、R、G、BのレイアウトがいわゆるSストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。
【0452】
受光デバイスを有する副画素Sが検出する光の波長は特に限定されない。副画素Sは、可視光および赤外光の一方または双方を検出する構成とすることができる。
【0453】
図45(J)および
図45(K)に示すように、1つの画素240が5種類の副画素を有する構成としてもよい。
【0454】
図45(J)では、1つの画素240が、2行3列に配置された副画素で構成されている例を示す。
【0455】
図45(J)に示す画素240は、画素240内の上の行(1行目)に、3つの副画素(画素230a、画素230b、画素230c)を有し、下の行(2行目)に、2つの副画素(画素230d、画素230e)を有する。言い換えると、画素240は、画素240内の左の列(1列目)に、画素230a、画素230dを有し、中央の列(2列目)に画素230bを有し、右の列(3列目)に画素230cを有し、さらに、2列目から3列目にわたって、画素230eを有する。
【0456】
図45(K)では、1つの画素240が、3行2列に配置された副画素で構成されている例を示す。
【0457】
図45(K)に示す画素240は、画素240内の上の行(1行目)に、画素230aを有し、中央の行(2行目)に、画素230bを有し、1行目から2行目にわたって画素230cを有し、下の行(3行目)に、2つの副画素(画素230d、画素230e)を有する。言い換えると、画素240は、左の列(1列目)に、画素230a、画素230b、画素230dを有し、右の列(2列目)に画素230c、画素230eを有する。
【0458】
図45(J)および
図45(K)に示す各画素240において、例えば、画素230aを赤色の光を呈する副画素Rとし、画素230bを緑色の光を呈する副画素Gとし、画素230cを青色の光を呈する副画素Bとすることが好ましい。このような構成とする場合、
図45(J)に示す画素240では、RGBのレイアウトがストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。また、
図45(K)に示す画素240では、RGBのレイアウトがいわゆるSストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。
【0459】
図45(J)および
図45(K)に示す各画素240において、例えば、画素230dと画素230eのうち、少なくとも一方に、受光デバイスを有する副画素Sを適用してもよい。画素230dと画素230eの両方に受光デバイスを用いる場合、受光デバイスの構成が互いに異なっていてもよい。例えば、互いに検出する光の波長域の少なくとも一部が異なっていてもよい。具体的には、画素230dと画素230eのうち、一方は主に可視光を検出する受光デバイスを有し、他方は主に赤外光を検出する受光デバイスを有してもよい。
【0460】
図45(J)および
図45(K)に示す各画素240において、例えば、画素230dと画素230eのうち、一方に、受光デバイスを有する副画素Sを適用し、他方に、光源として用いることが可能な発光デバイスを有する副画素を適用してもよい。例えば、画素230dと画素230eのうち、一方は赤外光を呈する副画素IRとし、他方は赤外光を検出する受光デバイスを有する副画素Sとしてもよい。
【0461】
副画素R、G、B、IR、Sを有する画素では、副画素R、G、Bを用いて画像を表示しながら、副画素IRを光源として用いて、副画素Sにて副画素IRが発する赤外光の反射光を検出できる。
【0462】
以上のように、本発明の一態様の表示装置は、画素240に様々な副画素(画素230)のレイアウトを適用できる。また、画素240に発光デバイスと受光デバイスの双方を有する構成を適用してもよい。この場合においても、様々なレイアウトを適用できる。
【0463】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0464】
(実施の形態4)
本実施の形態では、発光素子61に用いることができる発光デバイスについて説明する。
【0465】
図46(A)に示すように、発光デバイスは、一対の電極(下部電極761および上部電極762)の間に、EL層763を有する。EL層763は、層780、発光層771、および、層790などの複数の層で構成することができる。
【0466】
発光層771は、少なくとも発光物質(発光材料ともいう)を有する。
【0467】
下部電極761が陽極であり、上部電極762が陰極である場合、層780は、正孔注入性の高い物質を含む層(正孔注入層)、正孔輸送性の高い物質を含む層(正孔輸送層)、および、電子ブロック性の高い物質を含む層(電子ブロック層)のうち一つまたは複数を有する。また、層790は、電子注入性の高い物質を含む層(電子注入層)、電子輸送性の高い物質を含む層(電子輸送層)、および、正孔ブロック性の高い物質を含む層(正孔ブロック層)のうち一つまたは複数を有する。下部電極761が陰極であり、上部電極762が陽極である場合、層780と層790は互いに上記と逆の構成になる。
【0468】
一対の電極間に設けられた層780、発光層771、および層790を有する構成は単一の発光ユニットとして機能することができ、本明細書では
図46(A)の構成をシングル構造と呼ぶ。
【0469】
図46(B)は、
図46(A)に示す発光デバイスが有するEL層763の変形例である。具体的には、
図46(B)に示す発光デバイスは、下部電極761上の層781と、層781上の層782と、層782上の発光層771と、発光層771上の層791と、層791上の層792と、層792上の上部電極762と、を有する。
【0470】
下部電極761が陽極であり、上部電極762が陰極である場合、例えば、層781を正孔注入層、層782を正孔輸送層、層791を電子輸送層、層792を電子注入層とすることができる。また、下部電極761が陰極であり、上部電極762が陽極である場合、層781を電子注入層、層782を電子輸送層、層791を正孔輸送層、層792を正孔注入層とすることができる。このような層構造とすることで、発光層771に効率よくキャリアを注入し、発光層771内におけるキャリアの再結合の効率を高めることができる。
【0471】
なお、
図46(C)および
図46(D)に示すように、層780と層790との間に複数の発光層(発光層771、772、773)が設けられる構成もシングル構造のバリエーションである。なお、
図46(C)および
図46(D)では、発光層を3層有する例を示すが、シングル構造の発光デバイスにおける発光層は、2層であってもよく、4層以上であってもよい。また、シングル構造の発光デバイスは、2つの発光層の間に、バッファ層を有してもよい。バッファ層として、例えば、キャリア輸送層(正孔輸送層および電子輸送層)を用いることができる。
【0472】
図46(E)および
図46(F)に示すように、複数の発光ユニット(発光ユニット763aおよび発光ユニット763b)が電荷発生層785(中間層ともいう)を介して直列に接続された構成を本明細書ではタンデム構造と呼ぶ。なお、タンデム構造をスタック構造と呼んでもよい。タンデム構造とすることで、高輝度発光が可能な発光デバイスとすることができる。また、タンデム構造は、シングル構造と比べて、同じ輝度を得るために必要な電流を低減できるため、信頼性を高めることができる。
【0473】
なお、
図46(D)および
図46(F)は、表示装置が、発光デバイスと重なる層764を有する例である。
図46(D)は、層764が、
図46(C)に示す発光デバイスと重なる例であり、
図46(F)は、層764が、
図46(E)に示す発光デバイスと重なる例である。
図46(D)および
図46(F)では、上部電極762側に光を取り出すため、上部電極762には、可視光を透過する導電膜を用いる。
【0474】
層764は、色変換層およびカラーフィルタ(着色層)の一方または双方を用いることができる。
【0475】
図46(C)および
図46(D)において、発光層771、発光層772、および発光層773に、同じ色の光を発する発光物質、さらには、同じ発光物質を用いてもよい。例えば、発光層771、発光層772、および発光層773に、青色の光を発する発光物質を用いてもよい。青色の光を呈する副画素においては、発光デバイスが発する青色の光を取り出すことができる。また、赤色の光を呈する副画素および緑色の光を呈する副画素においては、
図46(D)に示す層764として色変換層を設けることで、発光デバイスが発する青色の光をより長波長の光に変換し、赤色または緑色の光を取り出すことができる。また、層764は、色変換層と着色層との双方を用いることが好ましい。発光デバイスが発する光の一部は、色変換層で変換されずにそのまま透過してしまうことがある。色変換層を透過した光を、着色層を介して取り出すことで、所望の色の光以外を着色層で吸収し、副画素が呈する光の色純度を高めることができる。
【0476】
図46(C)および
図46(D)において、発光層771、発光層772、および発光層773に、それぞれ異なる色の光を発する発光物質を用いてもよい。発光層771、発光層772、および発光層773がそれぞれ発する光が補色の関係である場合、白色発光が得られる。例えば、シングル構造の発光デバイスは、青色の光を発する発光物質を有する発光層、および、青色よりも長波長の可視光を発する発光物質を有する発光層を有することが好ましい。
【0477】
図46(D)に示す層764として、カラーフィルタを設けてもよい。白色光がカラーフィルタを透過することで、所望の色の光を得ることができる。
【0478】
例えば、シングル構造の発光デバイスが3層の発光層を有する場合、赤色(R)の光を発する発光物質を有する発光層、緑色(G)の光を発する発光物質を有する発光層、および、青色(B)の光を発する発光物質を有する発光層を有することが好ましい。発光層の積層順は、陽極側からR、G、B、または、陽極側からR、B、Gなどとすることができる。このとき、RとGまたはBとの間にバッファ層が設けられていてもよい。
【0479】
例えば、シングル構造の発光デバイスが2層の発光層を有する場合、青色(B)の光を発する発光物質を有する発光層、および、黄色(Y)の光を発する発光物質を有する発光層を有する構成が好ましい。当該構成をBYシングル構造と呼称する場合がある。
【0480】
白色の光を発する発光デバイスは、2種類以上の発光物質を含むことが好ましい。白色発光を得るには、2以上の発光物質の各々の発光が補色の関係となるような発光物質を選択すればよい。例えば、第1の発光層の発光色と第2の発光層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光デバイス全体として白色発光する発光デバイスを得ることができる。また、発光層を3つ以上有する発光デバイスの場合も同様である。
【0481】
なお、
図46(C)、
図46(D)においても、
図46(B)に示すように、層780と、層790とを、それぞれ独立に、2層以上の層からなる積層構造としてもよい。
【0482】
図46(E)および
図46(F)において、発光層771と、発光層772とに、同じ色の光を発する発光物質、さらには、同じ発光物質を用いてもよい。例えば、各色の光を呈する副画素が有する発光デバイスにおいて、発光層771と、発光層772に、それぞれ青色の光を発する発光物質を用いてもよい。青色の光を呈する副画素においては、発光デバイスが発する青色の光を取り出すことができる。また、赤色の光を呈する副画素および緑色の光を呈する副画素においては、
図46(F)に示す層764として色変換層を設けることで、発光デバイスが発する青色の光をより長波長の光に変換し、赤色または緑色の光を取り出すことができる。また、層764は、色変換層と着色層との双方を用いることが好ましい。
【0483】
各色の光を呈する副画素に、
図46(E)または
図46(F)に示す構成の発光デバイスを用いる場合、副画素によって、異なる発光物質を用いてもよい。具体的には、赤色の光を呈する副画素が有する発光デバイスにおいて、発光層771と、発光層772に、それぞれ赤色の光を発する発光物質を用いてもよい。同様に、緑色の光を呈する副画素が有する発光デバイスにおいて、発光層771と、発光層772に、それぞれ緑色の光を発する発光物質を用いてもよい。青色の光を呈する副画素が有する発光デバイスにおいて、発光層771と、発光層772に、それぞれ青色の光を発する発光物質を用いてもよい。このような構成の表示装置は、タンデム構造の発光デバイスが適用されており、かつ、SBS(Side By Side)構造であるといえる。そのため、タンデム構造のメリットと、SBS構造のメリットの両方を併せ持つことができる。これにより、高輝度発光が可能であり、信頼性の高い発光デバイスを実現することができる。
【0484】
図46(E)および
図46(F)において、発光層771と、発光層772とに、異なる色の光を発する発光物質を用いてもよい。発光層771が発する光と、発光層772が発する光が補色の関係である場合、白色発光が得られる。
図46(F)に示す層764として、カラーフィルタを設けてもよい。白色光がカラーフィルタを透過することで、所望の色の光を得ることができる。
【0485】
なお、
図46(E)および
図46(F)において、発光ユニット763aが1層の発光層771を有し、発光ユニット763bが1層の発光層772を有する例を示すが、これに限られない。発光ユニット763aおよび発光ユニット763bは、それぞれ、2層以上の発光層を有してもよい。
【0486】
図46(E)および
図46(F)では、発光ユニットを2つ有する発光デバイスを例示したが、これに限られない。発光デバイスは、発光ユニットを3つ以上有してもよい。なお、発光ユニットを2つ有する構成を2段タンデム構造と、発光ユニットを3つ有する構成を3段タンデム構造と、それぞれ呼称してもよい。
【0487】
図46(E)および
図46(F)において、発光ユニット763aは、層780a、発光層771、および、層790aを有し、発光ユニット763bは、層780b、発光層772、および、層790bを有する。
【0488】
下部電極761が陽極であり、上部電極762が陰極である場合、層780aおよび層780bは、それぞれ、正孔注入層、正孔輸送層、および、電子ブロック層のうち一つまたは複数を有する。また、層790aおよび層790bは、それぞれ、電子注入層、電子輸送層、および、正孔ブロック層のうち一つまたは複数を有する。下部電極761が陰極であり、上部電極762が陽極である場合、層780aと層790aは互いに上記と逆の構成になり、層780bと層790bも互いに上記と逆の構成になる。
【0489】
下部電極761が陽極であり、上部電極762が陰極である場合、例えば、層780aは、正孔注入層と、正孔注入層上の正孔輸送層と、を有し、さらに、正孔輸送層上の電子ブロック層を有してもよい。また、層790aは、電子輸送層を有し、さらに、発光層771と電子輸送層との間の正孔ブロック層を有してもよい。また、層780bは、正孔輸送層を有し、さらに、正孔輸送層上の電子ブロック層を有してもよい。また、層790bは、電子輸送層と、電子輸送層上の電子注入層と、を有し、さらに、発光層772と電子輸送層との間の正孔ブロック層を有してもよい。下部電極761が陰極であり、上部電極762が陽極である場合、例えば、層780aは、電子注入層と、電子注入層上の電子輸送層と、を有し、さらに、電子輸送層上の正孔ブロック層を有してもよい。また、層790aは、正孔輸送層を有し、さらに、発光層771と正孔輸送層との間の電子ブロック層を有してもよい。また、層780bは、電子輸送層を有し、さらに、電子輸送層上の正孔ブロック層を有してもよい。また、層790bは、正孔輸送層と、正孔輸送層上の正孔注入層と、を有し、さらに、発光層772と正孔輸送層との間の電子ブロック層を有してもよい。
【0490】
タンデム構造の発光デバイスを作製する場合、2つの発光ユニットは、電荷発生層785を介して積層される。電荷発生層785は、少なくとも電荷発生領域を有する。電荷発生層785は、一対の電極間に電圧を印加したときに、2つの発光ユニットの一方に電子を注入し、他方に正孔を注入する機能を有する。
【0491】
タンデム構造の発光デバイスの一例として、
図47(A)乃至
図47(C)に示す構成が挙げられる。
【0492】
図47(A)は、発光ユニットを3つ有する構成である。
図47(A)では、複数の発光ユニット(発光ユニット763a、発光ユニット763b、および発光ユニット763c)がそれぞれ電荷発生層785を介して、直列に接続されている。また、発光ユニット763aは、層780aと、発光層771と、層790aと、を有し、発光ユニット763bは、層780bと、発光層772と、層790bと、を有し、発光ユニット763cは、層780cと、発光層773と、層790cと、を有する。なお、層780cは、層780aおよび層780bに適用可能な構成を用いることができ、層790cは、層790aおよび層790bに適用可能な構成を用いることができる。
【0493】
図47(A)において、発光層771、発光層772、および発光層773は、同じ色の光を発する発光物質を有すると好ましい。具体的には、発光層771、発光層772、および発光層773が、それぞれ赤色(R)の発光物質を有する構成(いわゆるR\R\Rの3段タンデム構造)、発光層771、発光層772、および発光層773が、それぞれ緑色(G)の発光物質を有する構成(いわゆるG\G\Gの3段タンデム構造)、または発光層771、発光層772、および発光層773が、それぞれ青色(B)の発光物質を有する構成(いわゆるB\B\Bの3段タンデム構造)とすることができる。なお、「a\b」は、aの光を発する発光物質を有する発光ユニット上に、電荷発生層を介して、bの光を発する発光物質を有する発光ユニットが設けられていることを意味し、a、bは、色を意味する。
【0494】
図47(A)において、発光層771、発光層772、および発光層773のうち、一部または全てに異なる色の光を発する発光物質を用いてもよい。発光層771、発光層772、および発光層773の発光色の組み合わせは、例えば、いずれか2つが青色(B)、残りの一つが黄色(Y)の構成、並びに、いずれか一つが赤色(R)、他の一つが緑色(G)、残りの一つが青色(B)の構成が挙げられる。
【0495】
なお、それぞれ同じ色の光を発する発光物質は、上記の構成に限定されない。例えば、
図47(B)に示すように、複数の発光層を有する発光ユニットを積層したタンデム型の発光デバイスとしてもよい。
図47(B)は、2つの発光ユニット(発光ユニット763a、および発光ユニット763b)が電荷発生層785を介して直列に接続された構成である。また、発光ユニット763aは、層780aと、発光層771a、発光層771b、および発光層771cと、層790aと、を有し、発光ユニット763bは、層780bと、発光層772a、発光層772b、および発光層772cと、層790bと、を有する。
【0496】
図47(B)においては、発光層771a、発光層771b、および発光層771cについて、補色の関係となる発光物質を選択し、発光ユニット763aを白色発光(W)が可能な構成とする。また、発光層772a、発光層772b、および発光層772cについても、補色の関係となる発光物質を選択し、発光ユニット763bを白色発光(W)が可能な構成とする。すなわち、
図47(B)に示す構成は、W\Wの2段タンデム構造である。なお、補色の関係となる発光物質の積層順については、特に限定はない。実施者が適宜最適な積層順を選択することができる。また、図示しないが、W\W\Wの3段タンデム構造、または4段以上のタンデム構造としてもよい。
【0497】
タンデム構造の発光デバイスを用いる場合、黄色(Y)の光を発する発光ユニットと、青色(B)の光を発する発光ユニットとを有するB\YまたはY\Bの2段タンデム構造、赤色(R)と緑色(G)の光を発する発光ユニットと、青色(B)の光を発する発光ユニットとを有するR・G\BまたはB\R・Gの2段タンデム構造、青色(B)の光を発する発光ユニットと、黄色(Y)の光を発する発光ユニットと、青色(B)の光を発する発光ユニットとをこの順で有するB\Y\Bの3段タンデム構造、青色(B)の光を発する発光ユニットと、黄緑色(YG)の光を発する発光ユニットと、青色(B)の光を発する発光ユニットとをこの順で有するB\YG\Bの3段タンデム構造、青色(B)の光を発する発光ユニットと、緑色(G)の光を発する発光ユニットと、青色(B)の光を発する発光ユニットとをこの順で有するB\G\Bの3段タンデム構造などが挙げられる。なお、「a・b」は、1つの発光ユニットがaの光を発する発光物質とbの光を発する発光物質とを有することを意味する。
【0498】
図47(C)に示すように、1つの発光層を有する発光ユニットと、複数の発光層を有する発光ユニットと、を組み合わせてもよい。
【0499】
具体的には、
図47(C)に示す構成においては、複数の発光ユニット(発光ユニット763a、発光ユニット763b、および発光ユニット763c)がそれぞれ電荷発生層785を介して直列に接続された構成である。また、発光ユニット763aは、層780aと、発光層771と、層790aと、を有し、発光ユニット763bは、層780bと、発光層772a、発光層772b、および発光層772cと、層790bと、を有し、発光ユニット763cは、層780cと、発光層773と、層790cと、を有する。
【0500】
例えば、
図47(C)に示す構成において、発光ユニット763aが青色(B)の光を発する発光ユニットであり、発光ユニット763bが赤色(R)、緑色(G)、および黄緑色(YG)の光を発する発光ユニットであり、発光ユニット763cが青色(B)の光を発する発光ユニットである、B\R・G・YG\Bの3段タンデム構造などを適用することができる。
【0501】
例えば、発光ユニットの積層数と色の順番は、陽極側からB、Yの2段構造、Bと発光ユニットXとの2段構造、B、Y、Bの3段構造、B、X、Bの3段構造が挙げられ、発光ユニットXにおける発光層の積層数と色の順番は、陽極側からR、Yの2層構造、R、Gの2層構造、G、Rの2層構造、G、R、Gの3層構造、または、R、G、Rの3層構造などとすることができる。また、2つの発光層の間に他の層が設けられていてもよい。
【0502】
次に、発光デバイスに用いることができる材料について説明する。
【0503】
下部電極761と上部電極762のうち、光を取り出す側の電極には、可視光を透過する導電膜を用いる。また、光を取り出さない側の電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。また、表示装置が赤外光を発する発光デバイスを有する場合には、光を取り出す側の電極には、可視光および赤外光を透過する導電膜を用い、光を取り出さない側の電極には、可視光および赤外光を反射する導電膜を用いることが好ましい。
【0504】
光を取り出さない側の電極にも可視光を透過する導電膜を用いてもよい。この場合、反射層と、EL層763との間に当該電極を配置することが好ましい。つまり、EL層763の発光は、当該反射層によって反射されて、表示装置から取り出されてもよい。
【0505】
発光デバイスの一対の電極を形成する材料として、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを適宜用いることができる。当該材料として、具体的には、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、インジウム、スズ、モリブデン、タンタル、タングステン、パラジウム、金、白金、銀、イットリウム、ネオジムなどの金属、およびこれらを適宜組み合わせて含む合金が挙げられる。また、当該材料として、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物)、シリコンを含むインジウムスズ酸化物(In-Si-Sn酸化物)、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物)、およびタングステンを含むインジウム亜鉛酸化物(In-W-Zn酸化物)などを挙げることができる。また、当該材料として、アルミニウム、ニッケル、およびランタンの合金(Al-Ni-La)等のアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)、並びに、銀とマグネシウムの合金、および、銀とパラジウムと銅の合金(Ag-Pd-Cu、APCとも記す)等の銀を含む合金が挙げられる。その他、当該材料として、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム)、ユウロピウム、イッテルビウムなどの希土類金属およびこれらを適宜組み合わせて含む合金、グラフェン等が挙げられる。
【0506】
発光デバイスには、微小光共振器(マイクロキャビティ)構造が適用されていることが好ましい。したがって、発光デバイスが有する一対の電極の一方は、可視光に対する透過性および反射性を有する電極(半透過・半反射電極)であることが好ましく、他方は、可視光に対する反射性を有する電極(反射電極)であることが好ましい。発光デバイスがマイクロキャビティ構造を有することで、発光層から得られる発光を両電極間で共振させ、発光デバイスから射出される光を強めることができる。
【0507】
可視光に対して透過性を有する電極の光の透過率は、40%以上とする。例えば、発光デバイスに可視光に対して透過性を有する電極を用いる場合には、可視光(波長400nm以上750nm未満の光)の透過率が40%以上である電極を用いることが好ましい。半透過・半反射電極の可視光の反射率は、10%以上95%以下、好ましくは30%以上80%以下とする。反射電極の可視光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。また、これらの電極の抵抗率は、1×10-2Ωcm以下が好ましい。
【0508】
発光デバイスは少なくとも発光層を有する。また、発光デバイスは、発光層以外の層として、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子ブロック材料、電子注入性の高い物質、またはバイポーラ性の物質(電子輸送性および正孔輸送性が高い物質)等を含む層をさらに有してもよい。例えば、発光デバイスは、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電荷発生層、電子ブロック層、電子輸送層、および電子注入層のうち1層以上を有する構成とすることができる。
【0509】
発光デバイスには低分子化合物および高分子化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。発光デバイスを構成する層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0510】
発光層は、1種または複数種の発光物質を有する。発光物質として、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、または赤色などの発光色を呈する物質を適宜用いる。また、発光物質として、近赤外光を発する物質を用いることもできる。
【0511】
発光物質として、蛍光材料、燐光材料、TADF材料、および量子ドット材料などが挙げられる。
【0512】
蛍光材料として、例えば、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、フェナントレン誘導体、およびナフタレン誘導体などが挙げられる。
【0513】
燐光材料として、例えば、4H-トリアゾール骨格、1H-トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、またはピリジン骨格を有する有機金属錯体(特にイリジウム錯体)、電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属錯体(特にイリジウム錯体)、白金錯体、および希土類金属錯体等が挙げられる。
【0514】
発光層は、発光物質(ゲスト材料)に加えて、1種または複数種の有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)を有してもよい。1種または複数種の有機化合物として、正孔輸送性の高い物質(正孔輸送性材料)および電子輸送性の高い物質(電子輸送性材料)の一方または双方を用いることができる。正孔輸送性材料として、後述の、正孔輸送層に用いることができる正孔輸送性の高い材料を用いることができる。電子輸送性材料として、後述の、電子輸送層に用いることができる電子輸送性の高い材料を用いることができる。また、1種または複数種の有機化合物として、バイポーラ性材料、またはTADF材料を用いてもよい。
【0515】
発光層は、例えば、燐光材料と、励起錯体を形成しやすい組み合わせである正孔輸送性材料および電子輸送性材料と、を有することが好ましい。このような構成とすることにより、励起錯体から発光物質(燐光材料)へのエネルギー移動であるExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)を用いた発光を効率よく得ることができる。発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光を得ることができる。この構成により、発光デバイスの高効率、低電圧駆動、長寿命を同時に実現できる。
【0516】
正孔注入層は、陽極から正孔輸送層に正孔を注入する層であり、正孔注入性の高い材料を含む層である。正孔注入性の高い材料として、芳香族アミン化合物、および、正孔輸送性材料とアクセプター性材料(電子受容性材料)とを含む複合材料などが挙げられる。
【0517】
正孔輸送性材料として、後述の、正孔輸送層に用いることができる正孔輸送性の高い材料を用いることができる。
【0518】
アクセプター性材料としては、例えば、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を用いることができる。具体的には、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化タングステン、酸化マンガン、および、酸化レニウムが挙げられる。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。また、フッ素を含む有機アクセプター性材料を用いることもできる。また、キノジメタン誘導体、クロラニル誘導体、および、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプター性材料を用いることもできる。
【0519】
例えば、正孔注入性の高い材料として、正孔輸送性材料と、上述の元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物(代表的には酸化モリブデン)とを含む材料を用いてもよい。
【0520】
正孔輸送層は、正孔注入層によって、陽極から注入された正孔を発光層に輸送する層である。正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む層である。正孔輸送性材料は、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましい。なお、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものも用いることができる。正孔輸送性材料は、π電子過剰型複素芳香族化合物(例えばカルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フラン誘導体など)、芳香族アミン(芳香族アミン骨格を有する化合物)等の正孔輸送性の高い材料が好ましい。
【0521】
電子ブロック層は、発光層に接して設けられる。電子ブロック層は、正孔輸送性を有し、かつ、電子をブロックすることが可能な材料を含む層である。電子ブロック層には、上記正孔輸送性材料のうち、電子ブロック性を有する材料を用いることができる。
【0522】
電子ブロック層は、正孔輸送性を有するため、正孔輸送層と呼ぶこともできる。また、正孔輸送層のうち、電子ブロック性を有する層を、電子ブロック層と呼ぶこともできる。
【0523】
電子輸送層は、電子注入層によって、陰極から注入された電子を発光層に輸送する層である。電子輸送層は、電子輸送性材料を含む層である。電子輸送性材料は、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものも用いることができる。電子輸送性材料として、キノリン骨格を有する金属錯体、ベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、オキサゾール骨格を有する金属錯体、チアゾール骨格を有する金属錯体等の他、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリン配位子を有するキノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、その他含窒素複素芳香族化合物を含むπ電子不足型複素芳香族化合物等の電子輸送性の高い材料を用いることができる。
【0524】
正孔ブロック層は、発光層に接して設けられる。正孔ブロック層は、電子輸送性を有し、かつ、正孔をブロックすることが可能な材料を含む層である。正孔ブロック層には、上記電子輸送性材料のうち、正孔ブロック性を有する材料を用いることができる。
【0525】
正孔ブロック層は、電子輸送性を有するため、電子輸送層と呼ぶこともできる。また、電子輸送層のうち、正孔ブロック性を有する層を、正孔ブロック層と呼ぶこともできる。
【0526】
電子注入層は、陰極から電子輸送層に電子を注入する層であり、電子注入性の高い材料を含む層である。電子注入性の高い材料として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。電子注入性の高い材料として、電子輸送性材料とドナー性材料(電子供与性材料)とを含む複合材料を用いることもできる。
【0527】
電子注入性の高い材料の最低空軌道(LUMO:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位は、陰極に用いる材料の仕事関数の値との差が小さい(具体的には0.5eV以下)であることが好ましい。
【0528】
電子注入層には、例えば、リチウム、セシウム、イッテルビウム、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaFx、Xは任意数)、8-(キノリノラト)リチウム(略称:Liq)、2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPP)、2-(2-ピリジル)-3-ピリジノラトリチウム(略称:LiPPy)、4-フェニル-2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPPP)、リチウム酸化物(LiOx)、炭酸セシウム等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物を用いることができる。また、電子注入層は、2以上の積層構造としてもよい。当該積層構造として、例えば、1層目にフッ化リチウムを用い、2層目にイッテルビウムを設ける構成が挙げられる。
【0529】
電子注入層は、電子輸送性材料を有してもよい。例えば、非共有電子対を備え、電子不足型複素芳香環を有する化合物を、電子輸送性材料に用いることができる。具体的には、ピリジン環、ジアジン環(ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環)、トリアジン環の少なくとも1つを有する化合物を用いることができる。
【0530】
なお、非共有電子対を備える有機化合物のLUMO準位は、-3.6eV以上-2.3eV以下であると好ましい。また、一般にCV(サイクリックボルタンメトリ)、光電子分光法、光吸収分光法、逆光電子分光法等により、有機化合物の最高被占有軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)準位およびLUMO準位を見積もることができる。
【0531】
例えば、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:BPhen)、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)、ジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジン(略称:HATNA)、2,4,6-トリス[3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:TmPPPyTz)等を、非共有電子対を備える有機化合物に用いることができる。なお、NBPhenはBPhenと比較して、高いガラス転移点(Tg)を備え、耐熱性に優れる。
【0532】
電荷発生層は、上述の通り、少なくとも電荷発生領域を有する。電荷発生領域は、アクセプター性材料を含むことが好ましく、例えば、上述の正孔注入層に適用可能な、正孔輸送性材料とアクセプター性材料とを含むことが好ましい。
【0533】
電荷発生層は、電子注入性の高い材料を含む層を有することが好ましい。当該層は、電子注入バッファ層と呼ぶこともできる。電子注入バッファ層は、電荷発生領域と電子輸送層との間に設けられることが好ましい。電子注入バッファ層を設けることで、電荷発生領域と電子輸送層との間の注入障壁を緩和することができるため、電荷発生領域で生じた電子を電子輸送層に容易に注入することができる。
【0534】
電子注入バッファ層は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むことが好ましく、例えば、アルカリ金属の化合物またはアルカリ土類金属の化合物を含む構成とすることができる。具体的には、電子注入バッファ層は、アルカリ金属と酸素とを含む無機化合物、または、アルカリ土類金属と酸素とを含む無機化合物を有することが好ましく、リチウムと酸素とを含む無機化合物(酸化リチウム(Li2O)など)を有することがより好ましい。その他、電子注入バッファ層には、上述の電子注入層に適用可能な材料を好適に用いることができる。
【0535】
電荷発生層は、電子輸送性の高い材料を含む層を有することが好ましい。当該層は、電子リレー層と呼ぶこともできる。電子リレー層は、電荷発生領域と電子注入バッファ層との間に設けられることが好ましい。電荷発生層が電子注入バッファ層を有さない場合、電子リレー層は、電荷発生領域と電子輸送層との間に設けられることが好ましい。電子リレー層は、電荷発生領域と電子注入バッファ層(または電子輸送層)との相互作用を防いで、電子をスムーズに受け渡す機能を有する。
【0536】
電子リレー層は、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)などのフタロシアニン系の材料、または、金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0537】
なお、上述の電荷発生領域、電子注入バッファ層、および電子リレー層は、断面形状、または特性などによって明確に区別できない場合がある。
【0538】
なお、電荷発生層は、アクセプター性材料の代わりに、ドナー性材料を有してもよい。例えば、電荷発生層は、上述の電子注入層に適用可能な、電子輸送性材料とドナー性材料とを含む層を有してもよい。
【0539】
発光ユニットを積層する際、2つの発光ユニットの間に電荷発生層を設けることで、駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0540】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0541】
(実施の形態5)
本実施の形態では、発光素子61の形成方法の一例について説明する。
【0542】
図48(A)に、発光素子61の平面概略図を示す。発光素子61は、赤色を呈する発光素子61R、緑色を呈する発光素子61G、および青色を呈する発光素子61Bをそれぞれ複数有する。
図48(A)では、各発光素子の区別を簡単にするため、各発光素子の発光領域内にR、G、Bの符号を付している。また、
図48(A)では、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の3つの発光色を有する構成について例示したがこれに限定されない。例えば、4つ以上の色を有する構成としてもよい。
【0543】
発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bは、それぞれマトリクス状に配列している。
図48(A)は、一方向に同一の色の発光素子を配置する、いわゆるストライプ配置を示しているが、発光素子の配置方法はこれに限定されない。
【0544】
発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bとしては、OLED(Organic Light Emitting Diode)、またはQOLED(Quantum-dot Organic Light Emitting Diode)などの有機ELデバイスを用いることが好ましい。EL素子が有する発光物質としては、蛍光を発する物質(蛍光材料)、燐光を発する物質(燐光材料)、無機化合物(量子ドット材料など)、熱活性化遅延蛍光を示す物質(熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料)などが挙げられる。
【0545】
図48(B)は、
図48(A)中の一点鎖線A1-A2に対応する断面概略図である。
図48(B)には、発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bの断面を示している。発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bは、それぞれ絶縁体363上に設けられ、画素電極として機能する導電体171、および共通電極として機能する導電体173を有する。絶縁体363としては、無機絶縁膜および有機絶縁膜の一方または双方を用いることができる。絶縁体363として、無機絶縁膜を用いることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜などの酸化物絶縁膜および窒化物絶縁膜が挙げられる。
【0546】
発光素子61Rは、画素電極として機能する導電体171と共通電極として機能する導電体173との間に、EL層172Rを有する。EL層172Rは、少なくとも赤色の波長域にピークを有する光を発する発光物質を有する。発光素子61Gが有するEL層172Gは、少なくとも緑色の波長域にピークを有する光を発する発光物質を有する。発光素子61Bが有するEL層172Bは、少なくとも青色の波長域にピークを有する光を発する発光物質を有する。
【0547】
EL層172R、EL層172G、およびEL層172Bは、それぞれ発光物質を含む層(発光層)のほかに、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、および正孔輸送層のうち、一以上を有していてもよい。
【0548】
画素電極として機能する導電体171は、発光素子毎に設けられている。また、共通電極として機能する導電体173は、各発光素子に共通な一続きの層として設けられている。画素電極として機能する導電体171と共通電極として機能する導電体173のいずれか一方に可視光に対して透光性を有する導電膜を用い、他方に反射性を有する導電膜を用いる。画素電極として機能する導電体171を透光性、共通電極として機能する導電体173を反射性とすることで、下面射出型(ボトムエミッション型)の表示装置とすることができ、反対に画素電極として機能する導電体171を反射性、共通電極として機能する導電体173を透光性とすることで、上面射出型(トップエミッション型)の表示装置とすることができる。なお、画素電極として機能する導電体171と共通電極として機能する導電体173の双方を透光性とすることで、両面射出型(デュアルエミッション型)の表示装置とすることもできる。
【0549】
例えば、発光素子61Rがトップエミッション型である場合、発光素子61Rから射出される光175Rは、導電体173側に射出される。発光素子61Gがトップエミッション型である場合、発光素子61Gから射出される光175Gは、導電体173側に射出される。発光素子61Bがトップエミッション型である場合、発光素子61Bから射出される光175Bは、導電体173側に射出される。
【0550】
画素電極として機能する導電体171の端部を覆って、絶縁体272が設けられている。絶縁体272の端部は、テーパー形状であることが好ましい。絶縁体272には、絶縁体363に用いることができる材料と同様の材料を用いることができる。
【0551】
絶縁体272は、隣接する発光素子61が意図せず電気的に短絡し、誤発光することを防ぐために設ける。また、EL層172の形成にメタルマスクを用いる場合、メタルマスクが導電体171に接触しないようにする機能も有する。
【0552】
EL層172R、EL層172G、およびEL層172Bは、それぞれ画素電極として機能する導電体171の上面に接する領域と、絶縁体272の表面に接する領域と、を有する。また、EL層172R、EL層172G、およびEL層172Bの端部は、絶縁体272上に位置する。
【0553】
図48(B)に示すように、異なる色の発光素子間において、2つのEL層の間に隙間が設けられている。このように、EL層172R、EL層172G、およびEL層172Bが、互いに接しないように設けられていることが好ましい。これにより、隣接する2つのEL層を介して電流が流れ、意図しない発光が生じること(クロストークともいう)を好適に防ぐことができる。そのため、コントラストを高めることができ、表示品位の高い表示装置を実現できる。
【0554】
EL層172R、EL層172G、およびEL層172Bは、メタルマスクなどのシャドーマスクを用いた真空蒸着法などにより、作り分けることができる。または、フォトリソグラフィ法により、これらを作り分けてもよい。フォトリソグラフィ法を用いることで、メタルマスクを用いた場合では実現することが困難である高い精細度の表示装置を実現することができる。さらに、隣接するEL層間のリーク電流が低減されるため、極めて鮮やかで、コントラストが高く、表示品位の高い表示装置を実現できる。
【0555】
例えばメタルマスクを用いた形成方法では、隣接する発光素子61間の距離を10μm未満にすることは困難であるが、フォトリソグラフィ法を用いることで、8μm以下、3μm以下、2μm以下、または、1μm以下にまで狭めることができる。ここで、隣接する発光素子61間の距離は、隣接する2つの画素電極の端部から端部までの距離で規定できる。または、隣接する発光素子61間の距離は、隣接する2つのEL層の端部から端部までの距離で規定できる。
【0556】
なお、本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いることなく作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0557】
隣接する発光素子61間の間隔を上記のように縮小することにより、2つの発光素子間に存在しうる非発光領域の面積を大幅に縮小することができ、開口率を100%に近づけることが可能となる。例えば、開口率は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、さらには90%以上であって、100%未満を実現することもできる。
【0558】
さらに、EL層自体のパターン(加工サイズともいえる)についても、メタルマスクを用いた場合に比べて極めて小さくすることができる。また、例えばEL層の作り分けにメタルマスクを用いた場合では、EL層の中央と端で厚さのばらつきが生じるため、EL層の面積に対して、発光領域として使用できる有効な面積は小さくなる。一方、上記作製方法では、均一な厚さに成膜した膜を加工することでEL層を形成するため、EL層内で厚さを均一にでき、微細なパターンであっても、そのほぼ全域を発光領域として用いることができる。そのため、上記作製方法によれば、高い精細度と高い開口率を兼ね備えることができる。
【0559】
FMMを用いて形成された有機膜は、端部に近いほど厚さが薄くなるような、極めてテーパー角の小さな(例えば0度より大きく30度未満)膜となる場合が多い。そのため、FMMを用いて形成された有機膜は、その側面と上面が連続的につながるため、側面を明確に確認することは困難である。一方、本発明の一態様においては、FMMを用いることなく加工されたEL層を有するため、明確な側面を有する。特に、本発明の一態様は、EL層のテーパー角が、30度以上120度以下、好ましくは60度以上120度以下である部分を有することが好ましい。
【0560】
共通電極として機能する導電体173上には、発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bを覆って、保護層271が設けられている。保護層271は、上方から各発光素子に水などの不純物が拡散することを防ぐ機能を有する。
【0561】
保護層271としては、例えば、少なくとも無機絶縁膜を含む単層構造または積層構造とすることができる。無機絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜などの酸化物膜または窒化物膜が挙げられる。または、保護層271としてインジウムガリウム酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)などの半導体材料を用いてもよい。なお、保護層271としては、ALD法、CVD法、およびスパッタリング法を用いて形成すればよい。なお、保護層271として、無機絶縁膜を含む構成について例示したがこれに限定されない。例えば、保護層271として、無機絶縁膜と、有機絶縁膜との積層構造としてもよい。
【0562】
なお、本明細書中において、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)等を用いて測定することができる。
【0563】
保護層271として、インジウムガリウム亜鉛酸化物を用いる場合、ウェットエッチング法、またはドライエッチング法を用いて加工することができる。例えば、保護層271として、IGZOを用いる場合、シュウ酸、リン酸、または混合薬液(例えば、リン酸、酢酸、硝酸、および水の混合薬液(混酸アルミニウムエッチング液ともいう))などの薬液を用いることができる。なお、当該混酸アルミニウムエッチング液は、体積比にて、リン酸:酢酸:硝酸:水=53.3:6.7:3.3:36.7およびその近傍の配合とすることができる。
【0564】
なお、
図48(B)に示す構造をSBS構造と呼称してもよい。
【0565】
図48(C)には、上記とは異なる例を示している。具体的には、
図48(C)では、白色の光を呈する発光素子61Wを有する。発光素子61Wは、画素電極として機能する導電体171と共通電極として機能する導電体173との間に白色の光を呈するEL層172Wを有する。
【0566】
EL層172Wとしては、例えば、それぞれの発光色が補色の関係になるように選択された、2以上の発光層を積層した構成とすることができる。また、発光層間に電荷発生層を挟持した、積層型のEL層を用いてもよい。
【0567】
図48(C)には、3つの発光素子61Wを並べて示している。左の発光素子61Wの上部には着色層264Rが設けられている。着色層264Rは、赤色の光を透過するバンドパスフィルタとして機能する。同様に、中央の発光素子61Wの上部には緑色の光を透過する着色層264Gが設けられ、右の発光素子61Wの上部には、青色の光を透過する着色層264Bが設けられている。これにより、表示装置はカラーの画像を表示することができる。
【0568】
ここで、隣接する2つの発光素子61W間において、EL層172Wと、共通電極として機能する導電体173とがそれぞれ分離されている。これにより、隣接する2つの発光素子61Wにおいて、EL層172Wを介して電流が流れて意図しない発光が生じることを防ぐことができる。特に、EL層172Wとして、2つの発光層の間に電荷発生層が設けられる積層型のEL層を用いた場合では、精細度が高いほど、すなわち隣接画素間の距離が小さいほど、クロストークの影響が顕著となり、コントラストが低下してしまうといった問題がある。そのため、このような構成とすることで、高い精細度と、高いコントラストを兼ね備える表示装置を実現できる。
【0569】
EL層172Wおよび共通電極として機能する導電体173の分離は、フォトリソグラフィ法により行うことが好ましい。これにより、発光素子間の間隔を狭めることができるため、例えばメタルマスク等のシャドーマスクを用いた場合と比較して、高い開口率の表示装置を実現することができる。
【0570】
なお、ボトムエミッション型の発光素子の場合は、画素電極として機能する導電体171と絶縁体363との間に、着色層を設ければよい。
【0571】
図48(D)には、上記とは異なる例を示している。具体的には、
図48(D)は、発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bの間に絶縁体272が設けられていない構成である。当該構成とすることで、開口率の高い表示装置とすることができる。また、絶縁体272を設けないことで、発光素子61の凹凸が低減されるため、表示装置の視野角が向上する。具体的には、視野角を150度以上180度未満、好ましくは160度以上180度未満にできる。
【0572】
また、保護層271は、EL層172R、EL層172G、およびEL層172Bの側面を覆っている。当該構成とすることで、EL層172R、EL層172G、およびEL層172Bの側面から入り込みうる不純物(代表的には水など)を抑制することができる。また、隣接する発光素子61間のリーク電流が低減されるため、彩度およびコントラスト比が向上し、かつ、消費電力が低減する。
【0573】
また、
図48(D)に示す構成においては、導電体171、EL層172R、および導電体173の上面形状が一致または概略一致する。このような構造は、導電体171、EL層172R、および導電体173を形成したのち、レジストマスクなどを用いて一括して形成することができる。このようなプロセスは、導電体173をマスクとして、EL層172R、および導電体173を加工することから、セルフアラインパターニングと呼称することもできる。なお、ここではEL層172Rについて説明したが、EL層172G、およびEL層172Bについても同様の構成とすることができる。
【0574】
また、
図48(D)においては、保護層271上に、さらに保護層273が設けられる構造である。例えば、保護層271を被覆性の高い膜を成膜可能な装置(代表的にはALD装置など)を用いて形成し、保護層273を保護層271よりも被覆性の低い膜が成膜される装置(代表的には、スパッタリング装置など)にて形成することにより、保護層271と、保護層273との間に領域275を設けることができる。なお、別言すると、領域275は、EL層172RとEL層172Gとの間、およびEL層172GとEL層172Bとの間に位置する。
【0575】
なお、領域275は、例えば空気、窒素、酸素、二酸化炭素、および第18族元素(代表的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等)の中から選ばれるいずれか一または複数を有する。また、領域275には、例えば保護層273の成膜時に用いる気体が含まれる場合がある。例えば、スパッタリング法により保護層273を成膜する場合、領域275には上記の第18族元素のいずれか一または複数が含まれる場合がある。なお、領域275に気体が含まれる場合、ガスクロマトグラフィー法等により気体の同定等を行うことができる。または、スパッタリング法により保護層273を成膜する場合、保護層273の膜中にもスパッタリング時に用いたガスが含まれる場合がある。この場合、保護層273をエネルギー分散型X線分析(EDX分析)等により解析した際に、アルゴン等の元素が検出される場合がある。
【0576】
また、領域275の屈折率が、保護層271の屈折率より低い場合、EL層172R、EL層172G、またはEL層172Bから発せられる光が、保護層271と領域275との界面で反射する。これにより、EL層172R、EL層172G、またはEL層172Bから発せられる光が、隣接する画素に入射することを抑制できる場合がある。これにより、近隣画素からの異なる発光色の混入が抑制できるため、表示装置の表示品位を高めることができる。
【0577】
なお、
図48(D)に示す構成の場合、発光素子61Rと発光素子61Gとの間の領域、または、発光素子61Gと発光素子61Bとの間の領域(以下では、単に発光素子間の距離とする)を狭くすることができる。具体的には、発光素子間の距離を、1μm以下、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは、200nm以下、100nm以下、90nm以下、70nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、または10nm以下とすることができる。別言すると、EL層172Rの側面とEL層172Gの側面との間隔、またはEL層172Gの側面とEL層172Bの側面との間隔が1μm以下の領域を有し、好ましくは0.5μm(500nm)以下の領域を有し、さらに好ましくは100nm以下の領域を有する。
【0578】
また、例えば、領域275が気体を有する場合、発光素子の間を素子分離しつつ、且つ各発光素子からの光の混色またはクロストークなどを抑制できる。
【0579】
また、領域275は空間であってもよいし、充填材で埋めてもよい。充填材としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。また、充填材として、フォトレジストを用いてもよい。充填材として用いるフォトレジストは、ポジ型のフォトレジストであってもよいし、ネガ型のフォトレジストであってもよい。
【0580】
図49(A)には、上記とは異なる例を示している。具体的には、
図49(A)に示す構成は、
図48(D)に示す構成と、絶縁体363の構成が異なる。絶縁体363は、発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bの加工の際に、上面の一部が削れ、凹部を有する。また、当該凹部には、保護層271が形成される。別言すると、断面視において、導電体171の下面よりも保護層271の下面の方が下に位置する領域を有する。当該領域を有することで、下方から発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bに入り込みうる不純物(代表的には、水など)を好適に抑制することができる。なお、上記の凹部としては、発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bの加工の際に各発光素子の側面に付着しうる不純物(残渣物ともいう)をウェットエッチングなどにより除去する際に形成されうる。上記の残渣物を除去したのち、各発光素子の側面を保護層271で覆うことにより、信頼性の高い表示装置とすることができる。
【0581】
また、
図49(B)には、上記とは異なる例を示している。具体的には、
図49(B)に示す構成は、
図49(A)に示す構成に加え、絶縁体276と、マイクロレンズアレイ277と、を有する。絶縁体276は、接着層としての機能を有する。なお、絶縁体276の屈折率がマイクロレンズアレイ277の屈折率よりも低い場合、マイクロレンズアレイ277は、発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bから発せられる光を集光することができる。これにより、表示装置の光取り出し効率を高めることができる。特に、ユーザが表示装置の表示面の正面から当該表示面を見る場合において、明るい画像を視認することができ、好適である。なお、絶縁体276としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤等の各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
【0582】
また、
図49(C)には、上記とは異なる例を示している。具体的には、
図49(C)に示す構成は、
図49(A)に示す構成における発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bに替えて、3つの発光素子61Wを有する。また、3つの発光素子61Wの上方に絶縁体276を有し、絶縁体276の上方に着色層264R、着色層264G、および着色層264Bを有する。具体的には、左の発光素子61Wと重なる位置に赤色の光を透過する着色層264Rが設けられ、中央の発光素子61Wと重なる位置に緑色の光を透過する着色層264Gが設けられ、右の発光素子61Wと重なる位置に青色の光を透過する着色層264Bが設けられている。これにより、半導体装置はカラーの画像を表示することができる。
図49(C)に示す構成は、
図48(C)に示す構成の変形例でもある。
【0583】
また、
図49(D)には、上記とは異なる例を示している。具体的には、
図49(D)に示す構成は、保護層271が導電体171およびEL層172の側面に隣接して設けられている。また、導電体173は、各発光素子に共通な一続きの層として設けられている。また、
図49(D)に示す構成では、領域275が充填材で埋められていることが好ましい。
【0584】
発光素子61に微小光共振器(マイクロキャビティ)構造を付与することにより発光色の色純度を高めることができる。発光素子61にマイクロキャビティ構造を付与するには、導電体171と導電体173間の距離dとEL層172の屈折率nの積(光学距離)が、波長λの2分の1のm倍(mは1以上の整数)になるように構成すればよい。距離dは数式1で求めることができる。
【0585】
d=m×λ/(2×n) ・・・ 数式1。
【0586】
数式1より、マイクロキャビティ構造の発光素子61は、発光する光の波長(発光色)に応じて距離dが決定される。距離dは、EL層172の厚さに相当する。よって、EL層172GはEL層172Bよりも厚く設けられ、EL層172RはEL層172Gよりも厚く設けられる場合がある。
【0587】
なお、厳密には、距離dは、反射電極として機能する導電体171における反射領域から、発光する光に対する透過性および反射性を有する電極(半透過・半反射電極)として機能する導電体173における反射領域までの距離である。例えば、導電体171が銀と透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)の積層であり、ITOがEL層172側にある場合、ITOの膜厚を調整することで発光色に応じた距離dを設定できる。すなわち、EL層172R、EL層172G、およびEL層172Bの厚さが同じであっても、該ITOの厚さを変えることで、発光色に適した距離dを得ることができる。
【0588】
しかしながら、導電体171および導電体173における反射領域の位置を厳密に決定することが困難な場合がある。この場合、導電体171と導電体173の任意の位置を反射領域と仮定することで、充分にマイクロキャビティの効果を得ることができるものとする。
【0589】
発光素子61は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などにより構成される。発光素子61の詳細な構成例については、他の実施の形態で説明する。マイクロキャビティ構造において光の取り出し効率を高めるため、反射電極として機能する導電体171から発光層までの光学距離をλ/4の奇数倍にすることが好ましい。当該光学距離を実現するため、発光素子61を構成する各層の厚さを適宜調整することが好ましい。
【0590】
また、光を導電体173側へ射出する場合は、導電体173の反射率が透過率よりも大きいことが好ましい。導電体173の光の透過率を好ましくは2%以上50%以下、より好ましくは2%以上30%以下、さらに好ましくは2%以上10%以下にするとよい。導電体173の透過率を小さく(反射率を大きく)することで、マイクロキャビティの効果を高めることができる。
【0591】
図50(A)には、上記とは異なる例を示している。具体的には、
図50(A)に示す構成は、発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bのそれぞれにおいて、EL層172が導電体171の端部を越えて延在している。例えば、発光素子61RにおいてEL層172Rが導電体171の端部を越えて延在している。また、発光素子61GにおいてEL層172Gが導電体171の端部を越えて延在している。発光素子61BにおいてEL層172Bが導電体171の端部を越えて延在している。
【0592】
また、発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bのそれぞれにおいて、EL層172と保護層271は、絶縁体270を介して重なる領域を有する。また、隣接する発光素子61の間の領域において、保護層271の上に絶縁体278が設けられている。
【0593】
絶縁体278としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。また、絶縁体278として、フォトレジストを用いてもよい。絶縁体278として用いるフォトレジストは、ポジ型のフォトレジストであってもよいし、ネガ型のフォトレジストであってもよい。
【0594】
また、発光素子61R、発光素子61G、発光素子61B、および絶縁体278の上に共通層174が設けられ、共通層174上に導電体173が設けられている。共通層174は、EL層172Rと接する領域と、EL層172Gと接する領域と、EL層172Bと接する領域と、を有する。共通層174は、発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bで共有されている。
【0595】
共通層174としては、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子輸送層、および電子注入層のうち1つ以上を適用することができる。例えば、共通層174は、キャリア注入層(正孔注入層または電子注入層)であってもよい。また、共通層174は、EL層172の一部と言うこともできる。なお、共通層174は必要に応じて設ければよい。共通層174を設ける場合、EL層172に含まれる層のうち、共通層174と同じ機能を有する層を設けなくてもよい。
【0596】
また、導電体173上に保護層273が設けられ、保護層273上に絶縁体276が設けられている。
【0597】
また、
図50(B)には、上記とは異なる例を示している。具体的には、
図50(B)に示す構成は、
図50(A)に示す構成における発光素子61R、発光素子61G、および発光素子61Bに替えて、3つの発光素子61Wを有する。また、3つの発光素子61Wの上方に絶縁体276を有し、絶縁体276の上方に着色層264R、着色層264G、および着色層264Bを有する。具体的には、左の発光素子61Wと重なる位置に赤色の光を透過する着色層264Rが設けられ、中央の発光素子61Wと重なる位置に緑色の光を透過する着色層264Gが設けられ、右の発光素子61Wと重なる位置に青色の光を透過する着色層264Bが設けられている。これにより、半導体装置はカラーの画像を表示することができる。
図50(B)に示す構成は、
図49(C)に示す構成の変形例でもある。
【0598】
また、
図50(C)に示すように、絶縁体363の上に発光素子61R、発光素子61G、および受光素子71を設けてもよい。
図50(C)に示す受光素子71は、発光素子61のEL層172を光電変換層として機能する活性層182(「受光層」ともいう。)に置き換えることで実現できる。活性層182は、入射した光の波長および強度に応じて抵抗値が変化する機能を有する。活性層182は、EL層172と同様の物質で形成できる。なお、活性層182としてシリコンなどの無機材料を用いてもよい。
【0599】
受光素子71は、表示装置の外部から保護層273、導電体173、および共通層174を介して入射した光Linを検出する機能を有する。受光素子71と重ねて、光Linの入射側に任意の波長域の光を透過する着色層を設けてもよい。
【0600】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0601】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置を適用可能な電子機器について説明する。
【0602】
本発明の一態様に係る半導体装置を、電子機器の表示部に適用することができる。したがって、表示品位の高い電子機器を実現できる。または、極めて高精細な電子機器を実現できる。または、信頼性の高い電子機器を実現できる。
【0603】
本発明の一態様に係る半導体装置などを用いた電子機器として、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、置き時計、壁掛け時計、コードレス電話子機、トランシーバ、自動車電話、携帯電話、携帯情報端末、タブレット型端末、携帯型ゲーム機、パチンコ機などの固定式ゲーム機、電卓、電子手帳、電子書籍端末、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナー、加湿器、除湿器などの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、チェーンソー等の工具、煙感知器、透析装置等の医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム、電力の平準化とスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、燃料を用いたエンジン、または蓄電体からの電力を用いた電動機により推進する移動体なども、電子機器の範疇に含まれる場合がある。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型または大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機、惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
【0604】
本発明の一態様に係る電子機器は、二次電池(バッテリ)を有していてもよく、非接触電力伝送を用いて、二次電池を充電することができると好ましい。
【0605】
二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などが挙げられる。
【0606】
本発明の一態様に係る電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像および情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナおよび二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0607】
本発明の一態様に係る電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0608】
本発明の一態様に係る電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0609】
さらに、複数の表示部を有する電子機器においては、表示部の一部を主として画像情報を表示し、別の一部を主として文字情報を表示する機能、または複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立体的な画像を表示する機能等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器においては、静止画または動画を撮影する機能、撮影した画像を自動または手動で補正する機能、撮影した画像を記録媒体(外部または電子機器に内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能等を有することができる。なお、本発明の一態様の電子機器が有する機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0610】
本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置は、高精細な画像を表示することができる。そのため、特に携帯型の電子機器、装着型の電子機器(ウェアラブル機器)、および電子書籍端末などに好適である。例えば、VR(Virtual Reality)機器またはAR(Augmented Reality)機器などに好適である。
【0611】
図51(A)は、ファインダー8100を取り付けた状態のカメラ8000の外観を示す図である。
【0612】
カメラ8000は、筐体8001、表示部8002、操作ボタン8003、シャッターボタン8004等を有する。またカメラ8000には、着脱可能なレンズ8006が取り付けられている。なお、カメラ8000は、レンズ8006と筐体とが一体となっていてもよい。
【0613】
カメラ8000は、シャッターボタン8004を押す、またはタッチパネルとして機能する表示部8002をタッチすることにより撮像することができる。
【0614】
筐体8001は、電極を有するマウントを有し、ファインダー8100のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0615】
ファインダー8100は、筐体8101、表示部8102、ボタン8103等を有する。
【0616】
筐体8101は、カメラ8000のマウントと係合するマウントにより、カメラ8000に取り付けられている。ファインダー8100はカメラ8000から受信した映像等を表示部8102に表示させることができる。
【0617】
ボタン8103は、電源ボタン等としての機能を有する。
【0618】
カメラ8000の表示部8002、およびファインダー8100の表示部8102に、本発明の一態様に係る半導体装置を適用できる。なお、ファインダー8100は、カメラ8000に内蔵されていてもよい。
【0619】
図51(B)は、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示す図である。
【0620】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体8203、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バッテリ8206が内蔵されている。
【0621】
ケーブル8205は、バッテリ8206から本体8203に電力を供給する。本体8203は無線受信機等を備え、受信した映像情報を表示部8204に表示させることができる。また、本体8203はカメラを備え、使用者の眼球またはまぶたの動きの情報を入力手段として用いることができる。
【0622】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に、使用者の眼球の動きに伴って流れる電流を検知可能な複数の電極が設けられ、視線を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流により、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部8201には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使用者の生体情報を表示部8204に表示する機能、使用者の頭部の動きに合わせて表示部8204に表示する映像を変化させる機能などを有していてもよい。
【0623】
表示部8204に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置を適用できる。
【0624】
図51(C)乃至
図51(E)は、ヘッドマウントディスプレイ8300の外観を示す図である。ヘッドマウントディスプレイ8300は、筐体8301と、表示部8302と、バンド状の固定具8304と、一対のレンズ8305と、を有する。
【0625】
使用者は、レンズ8305を通して、表示部8302の表示を視認することができる。なお、表示部8302を湾曲して配置させると、使用者が高い臨場感を感じることができるため好ましい。また、表示部8302の異なる領域に表示された別の画像を、レンズ8305を通して視認することで、視差を用いた3次元表示等を行うこともできる。なお、表示部8302を1つ設ける構成に限られず、表示部8302を2つ設け、使用者の片方の目につき1つの表示部を配置してもよい。
【0626】
表示部8302に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置を適用できる。本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置は、極めて高い精細度を実現することも可能である。例えば、
図51(E)のようにレンズ8305を用いて表示を拡大して視認される場合でも、使用者に画素が視認されにくい。つまり、表示部8302を用いて、使用者に現実感の高い映像を視認させることができる。
【0627】
図51(F)は、ゴーグル型のヘッドマウントディスプレイ8400の外観を示す図である。ヘッドマウントディスプレイ8400は、一対の筐体8401と、装着部8402と、緩衝部材8403と、を有する。一対の筐体8401内には、それぞれ、表示部8404およびレンズ8405が設けられる。一対の表示部8404に互いに異なる画像を表示させることで、視差を用いた3次元表示を行うことができる。
【0628】
使用者は、レンズ8405を通して表示部8404を視認することができる。レンズ8405はピント調整機構を有し、使用者の視力に応じて位置を調整することができる。表示部8404は、正方形または横長の長方形であることが好ましい。これにより、臨場感を高めることができる。
【0629】
装着部8402は、使用者の顔のサイズに応じて調整でき、かつ、ずれ落ちることのないよう、可塑性および弾性を有することが好ましい。また、装着部8402の一部は、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していることが好ましい。これにより、別途イヤフォン、スピーカなどの音響機器を必要とせず、装着しただけで映像と音声を楽しむことができる。なお、筐体8401内に、無線通信により音声データを出力する機能を有していてもよい。
【0630】
装着部8402と緩衝部材8403は、使用者の顔(額、頬など)に接触する部分である。緩衝部材8403が使用者の顔と密着することにより、光漏れを防ぐことができ、より没入感を高めることができる。緩衝部材8403は、使用者がヘッドマウントディスプレイ8400を装着した際に使用者の顔に密着するよう、柔らかな素材を用いることが好ましい。例えばゴム、シリコーンゴム、ウレタン、スポンジなどの素材を用いることができる。また、スポンジ等の表面を布、革(天然皮革または合成皮革)、などで覆ったものを用いると、使用者の顔と緩衝部材8403との間に隙間が生じにくく光漏れを好適に防ぐことができる。また、このような素材を用いると、肌触りが良いことに加え、寒い季節などに装着した際に、使用者に冷たさを感じさせないため好ましい。緩衝部材8403または装着部8402などの、使用者の肌に触れる部材は、取り外し可能な構成とすると、クリーニングまたは交換が容易となるため好ましい。
【0631】
図52(A)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0632】
表示部7000に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置を適用できる。
【0633】
図52(A)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチ、および、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。または、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることでテレビジョン装置7100を操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7111が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネルおよび音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作することができる。
【0634】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機およびモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0635】
図52(B)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0636】
表示部7000に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置を適用できる。
【0637】
図52(C)および
図52(D)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0638】
図52(C)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、およびスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイク等を有することができる。
【0639】
図52(D)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0640】
図52(C)および
図52(D)において、表示部7000に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置を適用できる。
【0641】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0642】
表示部7000にタッチパネルを適用することで、表示部7000に画像または動画を表示するだけでなく、使用者が直感的に操作することができ、好ましい。また、路線情報もしくは交通情報などの情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によりユーザビリティを高めることができる。
【0643】
また、
図52(C)および
図52(D)に示すように、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400は、ユーザが所持するスマートフォン等の情報端末機7311または情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7000に表示される広告の情報を、情報端末機7311または情報端末機7411の画面に表示させることができる。また、情報端末機7311または情報端末機7411を操作することで、表示部7000の表示を切り替えることができる。
【0644】
また、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311または情報端末機7411の画面を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数のユーザが同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0645】
図52(E)に示す情報端末7550は、筐体7551、表示部7552、マイク7557、スピーカ部7554、カメラ7553、および操作スイッチ7555などを有する。表示部7552に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置を適用できる。また、表示部7552は、タッチパネルとしての機能を有する。また、情報端末7550は、筐体7551の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。情報端末7550は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット型情報端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、電子書籍端末等として用いることができる。
【0646】
図52(F)に腕時計型の情報端末の一例を示す。情報端末7660は、筐体7661、表示部7662、バンド7663、バックル7664、操作スイッチ7665、入出力端子7666などを備える。また、情報端末7660は、筐体7661の内側にアンテナおよびバッテリなどを備える。情報端末7660は、移動電話、電子メール、文章閲覧および作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0647】
また、表示部7662はタッチセンサを備え、指またはスタイラスなどで画面に触れることで操作できる。例えば、表示部7662に表示されたアイコン7667に触れることで、アプリケーションを起動できる。操作スイッチ7665は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行および解除、省電力モードの実行および解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、情報端末7660に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作スイッチ7665の機能を設定することもできる。
【0648】
また、情報端末7660は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、情報端末7660は入出力端子7666を備え、入出力端子7666を介して他の情報端末とデータの送受信を行うことができる。また入出力端子7666を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7666を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0649】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0650】
101 基板
102 絶縁層
108 導電層
109 絶縁層
110 絶縁層
111 絶縁層
112 開口
113 導電層
114 半導体層
115 絶縁層
116 導電層
117 絶縁層
121 開口
122 開口