(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015789
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20230125BHJP
B02C 19/18 20060101ALI20230125BHJP
B02C 23/08 20060101ALI20230125BHJP
C04B 35/622 20060101ALI20230125BHJP
C04B 35/443 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
B09B5/00 M ZAB
B02C19/18 E
B02C23/08 Z
C04B35/622 040
C04B35/443
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119779
(22)【出願日】2021-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000138772
【氏名又は名称】株式会社ヨータイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】今井 一成
【テーマコード(参考)】
4D004
4D067
【Fターム(参考)】
4D004AA19
4D004AC05
4D004BA06
4D004CA04
4D004CA07
4D004CA09
4D004CA13
4D004CA22
4D004CA32
4D004CA34
4D004CB05
4D004CB13
4D004CB21
4D004CB31
4D004CC03
4D004CC11
4D004CC12
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA07
4D067CG06
4D067EE25
4D067EE32
4D067EE47
4D067EE50
4D067GA07
(57)【要約】
【課題】使用済みのマグネシアスピネル耐火物のリサイクルにより、高品位のマグネシア及びスピネルを簡便かつ効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】使用済みのマグネシアスピネル耐火物を高温高圧水蒸気で水和させ、粉化した水和物を得る水和工程と、水和物を酸性水溶液に溶解させ、溶解液と沈殿物とを形成させる溶解工程と、溶解液と沈殿物を分離する分離工程と、を有し、沈殿物を焼成することでスピネルを製造し、溶解液を乾燥焼成することでマグネシアを製造すること、を特徴とする使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みのマグネシアスピネル耐火物を高温高圧水蒸気で水和させ、粉化した水和物を得る水和工程と、
前記水和物を酸性水溶液に溶解させ、溶解液と沈殿物とを形成させる溶解工程と、
前記溶解液と前記沈殿物を分離する分離工程と、を有し、
前記沈殿物を焼成することでスピネルを製造し、
前記溶解液を乾燥焼成することでマグネシアを製造すること、
を特徴とする使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法。
【請求項2】
前記水和物から磁性鉄を除去すること、
を特徴とする請求項1に記載の使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法。
【請求項3】
前記水和工程の予備処理として、前記使用済みのマグネシアスピネル耐火物を粉砕し、粉砕粒の最大粒径を5mm以下にすると共に、磁性鉄を除去すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法。
【請求項4】
前記溶解工程において、前記酸性水溶液にカルボン酸を使用すること、
を特徴とする請求項1~3のうちのいずれかに記載の使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法。
【請求項5】
乾燥させた前記沈殿物の化学成分を測定し、前記焼成によって得られる前記スピネルが所望の成分となるように、アルミナ(Al2O3)を添加すること、
を特徴とする請求項1~4のうちのいずれかに記載の使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法に関し、使用済みのマグネシアスピネル耐火物から高品位のマグネシア及びスピネルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシアスピネル耐火物は耐食性及び耐スポーリング性に優れており、セメントロータリーキルンや製鋼用の二次製錬用容器等に広く使用されている。セメントロータリーキルンの内張り耐火物にはマグネシアクロム耐火物が主に使用されてきたが、クロムフリー化の推進により、クロム廃棄物の問題が生じないマグネシアスピネル耐火物の使用量が増加している。
【0003】
従来、使用済みのマグネシアスピネル耐火物は、マグネシアとスピネルが混在した状態であることから、効率的なリサイクルは殆ど進められていない。また、耐火物が使用された炉で製造されているセメント等の成分や耐火物と同時に使用される鉄等が、耐火物が使用される過程で当該耐火物の内部へ侵入するため、マグネシア或いはスピネルを単体で分離することが困難であった。このような理由から、使用済みのマグネシアスピネル耐火物は廃棄物として処分されることが多く、再利用する場合であっても、低品位のマグネシア原料として製鉄に使用する程度に留まっていた。
【0004】
このような背景において、使用済みのマグネシアスピネル耐火物のリサイクルにより、高品位のマグネシア原料及びスピネル原料を得ることができれば、省資源の観点からも非常に有意義である。
【0005】
これに対し、例えば、特許文献1(特開2015-171706号公報)においては、使用済みの耐火物を再利用する使用済み耐火物の再利用方法であって、色調の差に基づいて使用済みの耐火物を化学成分が異なる材質毎に分別、回収する分別回収ステップを含むことを特徴とする使用済み耐火物の再利用方法、が提案されている。
【0006】
上記特許文献1に記載の使用済み耐火物の再利用方法においては、色調の差に基づいて使用済みの耐火物を材質毎に分別する際に、色彩分別機を利用することで、人手作業に頼ることなく高精度に大量の使用済み耐火物を材質毎に分別することができる、とされている。
【0007】
また、特許文献2(特開2013-1606号公報)においては、使用済みのマグネシアカーボンレンガを粉砕する粉砕ステップと、前記粉砕ステップによって生成された粉砕物を水に投入し、浮遊選鉱法を利用して該水から浮上物を分離、回収する回収ステップと、前記回収ステップによって回収された浮上物を耐火物原料として使用する再利用ステップと、を含むことを特徴とする使用済みマグネシアカーボンレンガの再利用方法、が提案されている。
【0008】
上記特許文献2に記載の使用済みマグネシアカーボンレンガの再利用方法においては、使用済みのマグネシアカーボンレンガから高純度の黒鉛を容易に分離、回収して、耐火物原料として再使用することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-171706号公報
【特許文献2】特開2013-1606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の使用済み耐火物の再利用方法では色調の差に基づいて使用済みの耐火物を材料毎に分別できるのみであり、使用済みのマグネシアスピネル耐火物をリサイクルする方法については開示されていない。
【0011】
また、上記特許文献2に記載の使用済みマグネシアカーボンレンガの再利用方法は対象となる耐火物がマグネシアカーボンレンガに限定されており、使用済みのマグネシアスピネル耐火物のリサイクルに用いることはできない。
【0012】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、使用済みのマグネシアスピネル耐火物のリサイクルにより、高品位のマグネシア及びスピネルを簡便かつ効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、使用済みのマグネシアスピネル耐火物を原料として高品位のマグネシア及びスピネルを製造する方法について鋭意研究を重ねた結果、水和によりマグネシアスピネル耐火物を粉化すること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
即ち、本発明は、
使用済みのマグネシアスピネル耐火物を高温高圧水蒸気で水和させ、粉化した水和物を得る水和工程と、
前記水和物を酸性水溶液に溶解させ、溶解液と沈殿物とを形成させる溶解工程と、
前記溶解液と前記沈殿物を分離する分離工程と、を有し、
前記沈殿物を焼成することでスピネルを製造し、
前記溶解液を乾燥焼成することでマグネシアを製造すること、
を特徴とする使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法、を提供する。
【0015】
本発明の使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法の最大の特徴は、水和反応を利用することにある。水和反応によって水酸化マグネシウムを生成することで、マグネシウムを酸に溶解させることができる。加えて、水和反応によって使用済みマグネシアスピネル耐火物を粉化させることで、酸性水溶液への溶解を効率的に行うことができる。その結果、溶解液を原料としてマグネシアを製造し、沈殿物を原料としてスピネルを製造することができ、これらの製造を簡便かつ効率的に行うことができる。
【0016】
本発明の使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法においては、前記水和物から磁性鉄を除去すること、が好ましい。水和物から磁性鉄を除去することで、高品位のマグネシア及びスピネルを得ることができる。ここで、使用済みマグネシアスピネル耐火物が水和によって粉化されていることで、当該マグネシアスピネル耐火物の内部に入り込んだ磁性鉄も容易に分離除去することができる。磁性鉄の分離除去には磁石等を使用することができる。
【0017】
また、本発明の使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法においては、前記水和工程の予備処理として、前記使用済みのマグネシアスピネル耐火物を粉砕し、粉砕粒の最大粒径を5mm以下にすると共に、磁性鉄を除去すること、が好ましい。使用済みマグネシアスピネル耐火物は一辺が200mm以上あるものが多いが、最大粒径を5mm以下にすることで、水和の時間を短縮することができる。また、水和工程の予備処理としてマグネシアスピネル耐火物に付着している鉄を除鉄機等で除去することで、最終的に得られるマグネシア及びスピネルの品位を高めることができる。
【0018】
また、本発明の使用済みマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法においては、前記溶解工程において、前記酸性水溶液にマグネシウムとの沈殿物を形成しないものを用いることができる。溶解工程に使用する酸性水溶液は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の酸性水溶液を用いることができるが、最も好ましい酸性水溶液は酢酸などのカルボン酸であり、酢酸などのカルボン酸を用いた場合は後の乾燥焼成で発生するガスが燃焼し、有害なガスが発生しない。
【0019】
酸性水溶液の添加量は水和したマグネシア相当の水素イオン量を含むものであればよく、50wt%程度の水溶液とすることが好ましい。50wt%程度の水溶液とすることで、過度の発熱が抑制され、後の分離と焼成工程での処理が容易になる。酢酸を用いる場合、30~50wt%の水溶液とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明のマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法においては、乾燥させた前記沈殿物の化学成分を測定し、前記焼成によって得られる前記スピネルが所望の成分となるように、アルミナ(Al2O3)を添加すること、が好ましい。アルミナの添加によって組成を調整することで、使用済みマグネシアスピネル耐火物を用いた場合であっても、要求される化学成分のスピネルを得ることができる。
【0021】
更に、本発明のマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法においては、前記溶解液に硫酸マグネシウムを添加し、前記溶解液に溶解しているカルシウムを硫酸カルシウム沈殿物とし、前記硫酸カルシウム沈殿物を前記溶解液から分離除去した後に、前記乾燥焼成を行うこと、が好ましい。溶解液からカルシウムを除去することで、高品位なマグネシアを得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、使用済みのマグネシアスピネル耐火物のリサイクルにより、高品位のマグネシア及びスピネルを簡便かつ効率的に製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明のマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法の工程図である。本発明のマグネシアスピネル耐火物のリサイクル方法は、使用済みのマグネシアスピネル耐火物を水和させる水和工程と、水和物を酸性水溶液に溶解させる溶解工程と、溶解液と沈殿物を分離する分離工程と、を有し、更に、得られた沈殿物からスピネルを製造する工程と、得られた溶解液からマグネシアを製造する工程と、を有している。以下、各工程について詳述する。
【0026】
(1)水和工程
水和工程は使用済みのマグネシアスピネル耐火物を水和し、酸性水溶液への溶解に適した水和物を得るための工程である。使用済みのスピネル耐火物は、主に、MgO(ペリクレース)、MgAl2O4(スピネル)、鉄及び鉄の酸化物(Fe、MgFe2O4、Fe3O4)、アルカリ塩類(KCl、K2SO4)からなっている。回収した使用済みのマグネシアスピネル耐火物は水和の前処理として水洗し、表面に付着した不純物を除去することが好ましい。
【0027】
不純物を除去したマグネシアスピネル耐火物をそのまま水和させてもよいが、使用済みのマグネシアスピネル耐火物は一辺が200mm以上となっていることが多く、水和に長時間を要する。ここで、使用済みのマグネシアスピネル耐火物の最大粒径が5mm以下となるように破砕しておくことで、水和の時間を短縮することができる。粉砕の方法は特に限定されないが、従来公知の種々の粉砕方法から不純物の混入が抑制される方法を選択することが好ましい。また、粉砕したマグネシアスピネル耐火物から除鉄機を用いて鉄を除去することが好ましい。
【0028】
破砕後の使用済みマグネシアスピネル耐火物は、オートクレーブを用いた水和により粉化させる。この際、MgO+H2O→Mg(OH)2が進行し、酸に溶解する水酸化マグネシウムを生成させることができる。当該処理を行わない場合、MgOは強酸溶液で煮沸しないと溶解させることができない。オートクレーブによる処理においては、高温かつ長時間で水和反応がより進行するが、一定の温度及び時間を超えるとその効果が頭打ちとなるため、適当な処理温度及び処理時間を設定することが好ましい。例えば、15%以上の粉化を得る場合、140℃では36時間、150℃では24時間の処理が必要である。よって、処理温度を140℃とする場合は処理時間を36時間以上とすることが好ましく、処理温度を150℃とする場合は処理時間を24時間以上とすることが好ましい。ここで、最も好ましい処理条件は150℃で48時間である。
【0029】
水和によって粉化させた使用済みマグネシアスピネル耐火物はそのまま溶解工程に用いることもできるが、磁石等を用いて磁性鉄を除去することが好ましい。水和物から磁性鉄を除去することで、高品位のマグネシア及びスピネルを得ることができる。ここで、使用済みマグネシアスピネル耐火物が水和によって粉化されていることで、当該マグネシアスピネル耐火物の内部に入り込んだ磁性鉄も容易に分離除去することができる。
【0030】
(2)溶解工程
溶解工程は、水和した使用済みマグネシアスピネル耐火物を酸性水溶液に溶解させる工程である。水和工程で得られた水和マグネシアスピネル耐火物に酸性水溶液を投入し、冷却しながら攪拌し、溶解させる。
【0031】
酸性水溶液にはマグネシウムの沈殿物を形成しないものを使用することが好ましく、例えば、塩酸、硝酸及び酢酸等を使用することができる。ここで、後の焼成工程において発生したガスが燃焼し、有害なガスが生じないことから、酢酸を使用することがより好ましい。
【0032】
水和マグネシアスピネル耐火物への酸性溶液の添加量は、水和したマグネシア相当の水素イオン量を含むようにすればよく、過度の発熱を抑制し、後の分離及び焼成工程での処理が容易になる観点から、50wt%程度の水溶液とすることが好ましい。酢酸を用いる場合は、30~50wt%の水溶液が適している。
【0033】
(3)分離工程
分離工程は、溶解工程で得られた溶解液について、沈殿物と溶解液を分離する工程である。当該分離の方法は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の方法を用いることができ、例えば、遠心分離機を使用することができる。
【0034】
分離によって得られた沈殿物はスピネルの原料となり、溶解液はマグネシアの原料となる。ここで、スピネルの化学量論組成はMgAl2O4であるところ、沈殿物の化学成分を測定し、得られた結果が当該組成から外れている場合、アルミナ(Al2O3)を添加することで必要な化学成分に調整することができる。
【0035】
また、溶解液に対しては硫酸マグネシウムを添加し、溶解液に溶解しているカルシウムを硫酸カルシウム沈殿物とし、当該硫酸カルシウム沈殿物を溶解液から分離除去した後に、乾燥焼成を行うことが好ましい。溶解液からカルシウムを除去することで、高品位なマグネシアを得ることができる。
【0036】
(4)スピネル製造工程
分離工程で得られた沈殿物を乾燥及び焼成することで、スピネルを得ることができる。乾燥及び焼成の方法は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の方法を用いることができ、例えば、ロータリーキルンを用いることができる。
【0037】
(5)マグネシア製造工程
分離工程で得られた溶解液を乾燥及び焼成することで、マグネシアを得ることができる。乾燥及び焼成の方法は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の方法を用いることができ、例えば、ロータリーキルンを用いることができる。
【0038】
なお、スピネル製造工程とマグネシア製造工程はそれぞれ独立した工程であり、これらの工程を進める順番やタイミングは特に限定されない。
【0039】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0040】
≪実施例≫
使用済みマグネシアスピネル耐火物を水洗及び露天乾燥させた後、最大粒径が5mm以下となるように破砕し、鉄板を除去した。次に、オートクレーブを用い、得られたマグネシアスピネル耐火物に対して表1に実施例1~実施例8として示す条件で水和処理を施した。
【0041】
【0042】
水和処理を施して粉化したマグネシアスピネル耐火物から除鉄機を用いて鉄屑を除去した後、水洗してアルカリ塩を除去した。次に、水和マグネシアスピネル耐火物に50wt%酢酸水溶液を添加し、水和マグネシアスピネル耐火物を酢酸水溶液に溶解させると共に沈殿物を形成させた。ここで、水和マグネシアスピネル耐火物が溶解しなかった場合は×、溶解が認められた場合は△、良好な溶解性を示した場合は〇として、結果を表1に示した。
【0043】
表1の溶解性評価の結果より、水和処理の温度が140℃の場合は処理時間を36時間以上、150℃の場合は処理時間を24時間以上とすることで、良好な溶解性の担保が可能であることが分かる。
【0044】
次に、得られた各溶解液について、遠心分離機を用いて溶解液と沈殿物を分離した。ロータリーキルンを用いて分離後の沈殿物を乾燥焼成することで、スピネルを得た。焼成条件は1750℃とし、実施例1~8の全ての場合において、良好なスピネルを得ることができた。
【0045】
また、ロータリーキルンを用いて溶解液を乾燥焼成することで、マグネシアを得た。焼成条件は300℃、1000℃及び1750℃とした。実施例1~8の全ての場合において、1750℃で焼成した場合は高い結晶性のMgO(ペリクレース)、1000℃で焼成した場合はやや結晶性の劣るMgO(ペリクレース)、300℃で焼成した場合は結晶性の低いMgO(ペリクレース)が得られた。
【0046】
≪比較例≫
水和処理を施さなかったこと以外は実施例と同様にして、使用済みマグネシアスピネル耐火物からのスピネル及びマグネシアの製造を試みたが、酸性溶液に溶解させることができなかった(表1における溶解性の評価:×)。即ち、水和処理を施さない場合は、使用済みマグネシアスピネル耐火物からスピネル及びマグネシアを得ることができなかった。