(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157904
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】磁性流体を用いた表示装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20231019BHJP
G09F 19/02 20060101ALI20231019BHJP
G09F 27/00 20060101ALI20231019BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231019BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231019BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20231019BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20231019BHJP
G06F 3/16 20060101ALI20231019BHJP
G10L 25/63 20130101ALI20231019BHJP
G10L 13/00 20060101ALI20231019BHJP
G10L 13/10 20130101ALI20231019BHJP
G10L 13/08 20130101ALI20231019BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20231019BHJP
G02F 1/17 20190101ALN20231019BHJP
【FI】
A61B5/16 120
G09F19/02 K
G09F27/00 C
G09F9/30 370Z
G09F9/00 366Z
G09G5/00 510Q
G09G5/00 550C
G06F3/01 510
G06F3/16 620
G06F3/16 690
G06F3/16 650
G10L25/63
G10L13/00 100M
G10L13/10 114
G10L13/08 124
G06T7/20 300B
G02F1/17
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066938
(22)【出願日】2023-04-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2022067365
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】520006735
【氏名又は名称】株式会社三鷹ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 学
【テーマコード(参考)】
2K101
4C038
5C094
5C182
5E555
5G435
5L096
【Fターム(参考)】
2K101AA11
2K101CA21
2K101CB05
2K101CB17
2K101CB26
2K101CC01
2K101CC13
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2K101EB91
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2K101EG03
2K101EJ21
4C038PP03
4C038PP05
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4C038PS00
4C038PS05
4C038PS07
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5C182AB37
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5C182AC03
5C182BA14
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5C182BA35
5C182BA44
5C182BA55
5C182BA57
5C182BA75
5C182CA02
5C182CB11
5C182CB41
5C182DA41
5C182FA31
5E555AA48
5E555AA76
5E555BA38
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5E555DC30
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5G435AA01
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5G435CC09
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5G435HH18
5L096BA08
5L096CA02
5L096DA02
5L096HA09
(57)【要約】
【課題】磁性流体を用いた対話的な表示が可能な表示装置を提供する。
【解決手段】磁性流体を用いた表示装置2Aは、例えば室内の壁面Wに固定して使用され、コンセント4から電力を供給される。表示装置2Aは、磁力を発生する磁力発生部と、磁性流体及び非磁性流体が封入された表示体12と、対話者H側からの入力情報に基づいて磁力発生部を制御し、磁性流体の形状を変化させる制御部としての制御基板と、を有している。例えば対話者Hが「ただいま」と発声すると、表示体12に内蔵されたマイク30を介して音声認識手段により対話者Hの「ただいま」という発声に基づく音声データが入力され、これに基づいて作成された表示データにより磁力発生部が駆動されて磁性流体が変化し、「おかえり」等の応答表示がなされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力を発生する磁力発生部と、
磁性流体と非磁性流体とが封入された表示体と、
音声を発する音声発生部と、
対話者側からの入力情報に基づいて前記音声発生部及び前記磁力発生部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記対話者側からの入力情報に基づいて、前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定し、当該決定に基づいて、前記音声発生部を制御して前記対話者への感情を示す返答用の音声を出力すると共に、前記磁力発生部を制御して前記対話者に対する感情を示す形状となるように前記磁性流体を変化させる
ことを特徴とする磁性流体を用いた表示装置。
【請求項2】
前記制御部及び前記磁力発生部は、前記返答の際に表現する感情に応じて前記磁性体に印加する磁力の強さを変化させることで、前記対話者に対する感情を示す形状となるように前記磁性流体を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記音声発生部から音声を発すると同時に前記前記磁力発生部で前記磁性流体に印加する磁力の強さを変化させる制御を行うことで、
前記対話者に対する返答の語の発声と前記磁性流体の形状の変化による感情の表現とを同時に行う
ことを特徴とする請求項2に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項4】
前記制御部及び前記磁力発生部は、前記返答の際に表現する感情が穏やかな場合は、当該感情が強い怒りや驚きなどである場合と比較して、前記磁性流体に印加する磁力を相対的に弱い磁力とする
ことを特徴とする請求項3に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項5】
前記制御部及び前記磁力発生部は、前記返答の際に表現する感情が強い怒りや驚きである場合は、当該感情が穏やかである場合と比較して、前記磁性流体に印加する磁力を相対的に強い磁力とする
ことを特徴とする請求項3に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項6】
前記対話者側からの入力情報として前記対話者の音声を入力する音声入力手段を備え、
前記制御部は、前記音声入力手段から入力された音声に基づいて前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項7】
前記対話者側からの入力情報として外部機器から送信される生体情報データを受信する受信装置を備え、
前記制御部は、前記受信装置を介して入力されたデータに基づいて前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項8】
前記生体情報データが、前記外部機器であるウェアラブルデバイスから送信された心拍データであることを特徴とする請求項7に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項9】
前記対話者側からの入力情報として前記対話者の体温を計測する非接触体温計を備え、
前記制御部は、前記非接触体温計によって計測された値に基づいて前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項10】
前記対話者側からの入力情報として前記対話者の画像を撮影可能なカメラを備え、
前記制御部は、前記カメラにより撮影された画像から前記対話者の表情の変化を解析する画像解析手段を有し、該画像解析手段によって解析された前記対話者の表情の変化に基づいて前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性流体を用いた表示装置に関し、詳しくは対話者とのコミュニケーションを可能とする対話的な表示や発話者の感情等の視覚的な表示が可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス等のケース内に封入された磁性流体に磁場を印加すると、特許文献1に記載されているように、磁性流体の界面に擾乱が生じるとともに、磁場の強さが変動する。磁力線は波面の頂上部分に集中しやすくなるため、頂上部の磁化の増大と谷部の磁化の減少が進行し、磁気圧力と重力、表面張力とが釣り合う位置まで変形が進み、最終的には規則正しく配列された、スパイクと呼ばれる複数の突起(錐体)を立体的に形成して安定する。この磁力によって維持される様々なスパイク形状は、見る者に対して通常の流体では感じ得ない特異的な美観を与えることから、特許文献1、2等に開示されているように、鑑賞用として捉えられ、鑑賞性の向上が技術トレンドとなっている。
【0003】
一方、特許文献3や特許文献4に開示されているように、電磁石をマトリクス状に配置し、磁場の印加位置を制御して文字や数字、図形等を表示することが可能な表示装置が提案されている。特許文献3では、磁性流体が貯留された貯留皿の背面から磁場を印加し、磁性流体を部分的に隆起させることにより文字や図形等を形成する内容となっている。特許文献4では、磁性微粒子が磁界の作用方向に沿って整列することにより光を透過させる性質を利用し、画像情報に応じた磁界を磁性流体に選択的に作用させることにより、光が透過する部分と透過しない部分(磁界が作用しない部分)とを併存せしめて透過光で文字や図形等を形成する内容となっている。また、磁性流体を用いたシール構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2016/027535号
【特許文献2】特開2018-155524号
【特許文献3】特開2005-91759号公報
【特許文献4】特開平7-146659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、磁性流体は色々な分野で応用されているが、その利用方法は単に磁場の印加位置や強さを変えて形状を変化させる内容にとどまっている。すなわち、磁場に反応する磁性流体の基本的特性をそのまま利用しているに過ぎない。さらに換言すれば、磁性流体の基本的特性による形状変化を人間が見て楽しんだり表示された内容を認識したりするだけの「一方向性」の利用内容となっている。特許文献3には、マイクなどから音声を入力してそれを文字変換して表示するようにしてもよいことが記載されており、利用方法の拡大が示唆されているようにも思えるが、この場合も表示データの入力が音声によって行われるというだけで、一方向性の利用に変わりはない。
【0006】
表示装置を見る人間側からの入力情報に応じて磁性流体を変化、さらに応答させることができれば、人間とのコミュニケーションツールとしての利用(双方向性)が期待でき、利用分野の拡大に寄与することとなる。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、利用分野の拡大に寄与すべく磁性流体を用いた対話的な表示や発話者の感情等の視覚的な表示が可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の磁性流体を用いた表示装置(2A)は、磁力を発生する磁力発生部(6)と、磁性流体(8)と非磁性流体(10)とが封入された表示体(12)と、対話者(H)側からの入力情報に基づいて磁力発生部(6)を制御し、磁性流体(8)の形状を変化させる制御部(14A)と、を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る磁性流体を用いた表示装置によれば、対話者側からの入力情報に基づいて応答表示を行うことができるので、対話者との間でコミュニケーションを構築することができ、利用分野の拡大を図ることができる。
【0010】
また、上記磁性流体を用いた表示装置(2A)では、制御部(14A)が音声認識手段(38)を備え、制御部(14A)は、音声認識手段(38)によって認識されたデータに基づいて磁性流体(8)の形状を変化させるようにしてもよい。これによれば、対話者の発声に対して応答表示がなされるので、コミュニケーションの構築が容易且つスムーズとなる。
【0011】
また、上記磁性流体を用いた表示装置(2B)では、制御部(14B)は、対話者(H)の生体情報に基づいて磁性流体(8)の形状を変化させるようにしてもよい。これによれば、対話者の健康状態を見守るグッズとしての利用が可能となる。
【0012】
また、上記磁性流体を用いた表示装置(2B)では、外部機器から送信される生体情報データを受信する受信装置(46)を備え、制御部(14B)は、受信装置(46)を介して入力されたデータに基づいて磁性流体(8)の形状を変化させるようにしてもよい。これによれば、対話者の健康状態のデータのやりとりが容易且つスムーズとなる。
【0013】
また、上記磁性流体を用いた表示装置(2B)では、生体情報データが、ウェアラブルデバイス(44)から送信された心拍データであってもよい。これによれば、身に着けている機器からデータ送信ができるので、対話者の健康状態のデータのやりとりが容易且つスムーズとなる。
【0014】
また、上記磁性流体を用いた表示装置(2C)では、表示体(12)が非接触体温計(50)を備え、制御部(14C)は、非接触体温計(50)によって計測された値に基づいて磁性流体(8)の形状を変化させるようにしてもよい。これによれば、対話者が額を近付けるだけで、生体情報を表示装置に入力でき、使用性の向上を図ることができる。
【0015】
また、上記磁性流体を用いた表示装置(2D)では、表示体(12)がパルスオキシメータ(52)を備え、制御部(14D)は、パルスオキシメータ(52)によって計測された値に基づいて磁性流体(8)の形状を変化させるようにしてもよい。これによれば、対話者の健康状態のデータのやりとりが容易且つスムーズとなる。
【0016】
また、上記磁性流体を用いた表示装置(2E)では、表示体(12)がカメラ(54)を備え、制御部(14E)は、該カメラ(54)により撮影された画像から表情の変化を解析する画像解析手段(56)を有し、該画像解析手段(56)によって解析された対話者(H)の表情の変化に基づいて磁性流体(8)の形状を変化させるようにしてもよい。これによれば、対話者の疲れ状態を把握できるので、励ましたりすることができ、感情的なコミュニケーション機能を高めることができる。
【0017】
また、上記磁性流体を用いた表示装置(2A~2E)では、制御部(14A~14E)は、磁性流体(8)の形状を文字に変化させるようにしてもよい。これによれば、対話者への応答内容を確実に伝達することができる。
【0018】
また、上記磁性流体を用いた表示装置(2A~2E)では、制御部(14A~14E)は、磁性流体(8)の形状を入力情報のデータに対応した形状に変化させるようにしてもよい。これによれば、文字では伝達しにくい表現を簡単な図形等で容易に表示することができる。
【0019】
また、本発明の磁性流体を用いた表示装置(2F)は、磁力を発生する磁力発生部(6)と、磁性流体(8)と非磁性流体(10)とが封入された表示体(12)と、音声を発する音声発生部(31)と、対話者(H)側からの入力情報に基づいて音声発生部(31)及び磁力発生部(6)を制御する制御部(14A)と、を備え、制御部(14A)は、対話者(H)側からの入力情報に基づいて、対話者(H)に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定し、当該決定に基づいて、音声発生部(31)を制御して対話者(H)への感情を示す返答用の音声を出力すると共に、磁力発生部(6)を制御して対話者(H)に対する感情を示す形状となるように磁性流体(8)を変化させることを特徴とする。
【0020】
この磁性流体を用いた表示装置によれば、対話者の発声した内容に応じて表示装置が音声発生部からの返答の音声と同時に磁性流体の形状や動きを変化させることによって疑似的な感情表現をすることが可能である。すなわち、対話者に話しかけられた表示装置が音声発生部からの返答の音声と共に磁性流体の形状や動きの変化によって感情表現をすることが可能となるので、対話者にとって、あたかも感情を有する人間やペットとコミュニケーションをしているかのような感覚を楽しむことが可能となる。
【0021】
また、上記の磁性流体を用いた表示装置(2F)では、制御部(14A)及び磁力発生部(6)は、返答の際に表現する感情に応じて磁性流体(8)に印加する磁力の強さを変化させることで、対話者(H)に対する感情を示す形状となるように磁性流体(8)を変化させるようにしてもよい。
【0022】
また、上記の磁性流体を用いた表示装置(2F)では、制御部(14A)は、音声発生部(31)から音声を発すると同時に磁力発生部(6)で磁性流体(8)に印加する磁力の強さを変化させる制御を行うことで、対話者(H)に対する返答の語の発声と磁性流体(8)の形状の変化による感情の表現とを同時に行うようにしてもよい。
【0023】
また、上記の磁性流体を用いた表示装置(2F)では、制御部(14A)及び磁力発生部(6)は、返答の際に表現する感情が穏やかな場合は、当該感情が強い怒りや驚きなどである場合と比較して、磁性流体(8)に印加する磁力を相対的に弱い磁力としてもよい。
【0024】
また、上記の磁性流体を用いた表示装置(2F)では、制御部(14A)及び磁力発生部(6)は、返答の際に表現する感情が強い怒りや驚きである場合は、当該感情が穏やかである場合と比較して、磁性流体(8)に印加する磁力を相対的に強い磁力としてもよい。
【0025】
また、上記の磁性流体を用いた表示装置(2F)では、対話者(H)側からの入力情報として対話者(H)の音声を入力する音声入力手段(30)を備え、制御部(14A)は、音声入力手段(30)から入力された音声に基づいて対話者(H)に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定するようにしてもよい。
【0026】
また、上記の磁性流体を用いた表示装置(2F)では、対話者(H)側からの入力情報として外部機器(44)から送信される生体情報データを受信する受信装置(46)を備え、制御部(14A)は、受信装置(46)を介して入力されたデータに基づいて対話者(H)に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定するようにしてもよい。
【0027】
また、上記の磁性流体を用いた表示装置(2F)では、生体情報データが、外部機器(44)であるウェアラブルデバイス(44)から送信された心拍データであってもよい。
【0028】
また、上記の磁性流体を用いた表示装置(2F)では、対話者(H)側からの入力情報として対話者(H)の体温を計測する非接触体温計(50)を備え、制御部(14A)は、非接触体温計(50)によって計測された値に基づいて対話者(H)に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定するようにしてもよい。
【0029】
また、上記の磁性流体を用いた表示装置(2F)では、対話者(H)側からの入力情報として対話者(H)の画像を撮影可能なカメラ(54)を備え、制御部(14A)は、カメラ(54)により撮影された画像から対話者(H)の表情の変化を解析する画像解析手段(56)を有し、該画像解析手段(56)によって解析された対話者(H)の表情の変化に基づいて対話者(H)に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定してもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、対話者とのコミュニケーションツールとしての利用(双方向性)が期待でき、利用分野の拡大に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る磁性流体を用いた表示装置の使用状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1で示した表示装置における電磁石アレイの平面図である。
【
図4】
図3で示した電磁石アレイの一つの電磁石を示す側面図である。
【
図5】
図1で示した表示装置における磁性流体による表示のメカニズムを説明するための要部拡大図である。
【
図6】
図1で示した表示装置の制御ブロック図である。
【
図7】第2実施形態に係る表示装置の制御ブロック図である。
【
図8】第2実施形態に係る表示装置の応答表示の一例を示す正面図である。
【
図9】第3実施形態に係る表示装置の正面図である。
【
図10】第3実施形態に係る表示装置の制御ブロック図である。
【
図11】第4実施形態に係る表示装置の正面図である。
【
図12】第4実施形態に係る表示装置の制御ブロック図である。
【
図13】第5実施形態に係る表示装置の正面図である。
【
図14】第5実施形態に係る表示装置の制御ブロック図である。
【
図15】第6実施形態に係る表示装置の正面図である。
【
図16】第6実施形態に係る表示装置の制御ブロック図である。
【
図17】磁性流体の形状変化の具体例を示す図である。
【
図18】スピーカーからの返答の音声と磁性流体に印加する磁力の変化及びそれに伴う磁性流体の形状変化の具体例を示すタイミングチャートである。
【
図19】スピーカーからの返答の音声と磁性流体に印加する磁力の変化及びそれに伴う磁性流体の形状変化の具体例を示すタイミングチャートである。
【
図20】スピーカーからの返答の音声と磁性流体に印加する磁力の変化及びそれに伴う磁性流体の形状変化の具体例を示すタイミングチャートである。
【
図21】スピーカーからの返答の音声と磁性流体に印加する磁力の変化及びそれに伴う磁性流体の形状変化の具体例を示すタイミングチャートである。
【
図22】スピーカーからの返答の音声と磁性流体に印加する磁力の変化及びそれに伴う磁性流体の形状変化の具体例を示すタイミングチャートである。
【
図23】スピーカーからの返答の音声と磁性流体に印加する磁力の変化及びそれに伴う磁性流体の形状変化の具体例を示すタイミングチャートである。
【
図24】第7実施形態に係る表示装置の正面図である。
【
図25】第7実施形態に係る表示装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図1乃至
図6を参照して、第1実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る磁性流体を用いた対話的な表示が可能な表示装置(以下、単に「表示装置」と称す。)2Aは、例えば室内の壁面Wに固定して使用され、コンセント4から電力(商用電源)を供給される。表示装置2Aは、
図2に示すように、磁力を発生する磁力発生部6と、磁性流体8及び非磁性流体10が封入された表示体12と、対話者H側からの入力情報に基づいて磁力発生部6を制御し、磁性流体8の形状を変化させる制御部としての制御基板14Aと、を有している。なお、ここでいう「磁性流体8の形状を変化させる」とは、文字に変化させる場合、図形に変化させる場合又はこれらが混在した状態に変化させる場合のいずれをも含むことを意味する。なお、ここでは表示装置2Aの電力供給源としてコンセント4を例示したが、これに限らず他の電力供給源を用いることもできる。例えば、磁性流体の駆動電力は比較的少なくて済むので、表示装置2Aの電力供給源としては、バッテリー内蔵方式、太陽電池方式、USB給電方式等を採用してもよい。このような給電方式によれば、表示装置2Aを宅内のコンセントが無い場所やコンセントからの配線が届きにくい場所でも容易に使用することができるうえ、表示装置2Aを携帯することも可能となるので使用場所の制約が無くなる。
【0034】
磁力発生部6は、電磁石アレイ16と、電磁石アレイ16の各電磁石36(
図3参照)に選択的に通電(励磁)する回路基板18とを有している。表示体12は、表示面をなす透明なガラス板20と、該ガラス板20と間隔をおいて対向配置されたガラス板22と、ガラス板20、22間の周囲をシールするゴム製のシール部材24と、これらを覆う枠体26等を有している。符号28はスペーサを示している。ガラス板20、22間の密閉空間内に磁性流体8及び非磁性流体10が封入され、ガラス板22の裏面側に電磁石アレイ16が配置されている。表示体12の上端中央部には対話者Hの音声を拾うマイク30が内蔵されている。表示面をなすガラス板20の下端部は、磁性流体8の沈殿、体積状態が外部から見えないようにカラーコート32でマスキングされている(ハッチングで表示)。ガラス板22の表面側は、黒色の磁性流体18による表示性(コントラスト)を高めるために磁力線を透過させる白色のコーティングがなされている。
【0035】
図3に示すように、電磁石アレイ16は、ベースプレート34に円筒状の外郭をなす電磁石36がマトリクス状に多数配置された構成を有している。各電磁石36は、
図4に示すように、空芯コイルとして形成されており、矢印iは電流の向きを、矢印Nは磁力線の向きを示している。電磁石36は有鉄心コイルとしてもよい。磁界の向きは、
図2に矢印Bで示すように、表示装置2Aの表面側から裏面側に向かう方向となる。図示しないが、回路基板18は、各電磁石36のそれぞれに対して動作(磁場印加)指示を行う信号を出力する信号ドライバや、電磁石36を動作させるのに必要な大きさの信号に増幅する増幅回路等を含む。
【0036】
磁性流体8は、フェライト系の磁性微粒子を界面活性溶液に適宜混合した液状体であるが、本発明で用いる磁性流体はこれに限定されない。非磁性流体10は油性の磁性流体8と混ざり合わずに分離する液体で、ここではその一例として水を使用している。
【0037】
図5は磁性流体8による表示のメカニズムを説明するための部分拡大図である。全ての電磁石36に通電されていない状態では、磁性流体8は表示面としてのガラス板20の下端部に沈殿して堆積している。これは磁性流体8の比重が非磁性流体10の水よりも大きいからであり、非磁性流体10の比重が磁性流体8の比重よりも大きい組み合わせでは磁性流体8は表示面の上端部に堆積することになる。
【0038】
上記のように、磁性流体8の堆積状態は例えばイエロー系のカラーコート32(
図1参照)でマスキングされて外部から見えない状態となっている。この状態で下端の電磁石36が励磁されると、その磁力で磁性流体8が重力に逆らってスポット的に吸い上げられ、最初の電磁石36の通電を遮断するとともにその上の電磁石36に通電することを繰り返すと、スポット状(液滴状)の磁性流体8aはリレーされるように上方に移動し、目的の画素位置で保持される。保持された位置で隣同士の磁性流体8aは表面張力が崩れて連なり、線8bとなる。実際には磁性流体8の微小ドットが表示データに基づいて連なったり、集合したりして目的の応答文字が形成される。スポット状の磁性流体8aの色はフェライト系の磁性微粒子由来の黒色であるが、
図5ではハッチングで略している(他の図においても同様)。
【0039】
スポット状の磁性流体8aの移動は、見る者にまるでおたまじゃくしが泳いでいるような印象を与えるため、対話者Hに面白みや和みを感じさせる。対話者Hの発声(入力情報)に対して瞬時的に磁性流体8により応答文字が形成される訳ではない。応答文字が形成されるまでに時間がかかり、その間、対話者Hはスポット状の磁性流体8aのおたまじゃくし的挙動を楽しみながらどのような応答文字が形成されるのか興味深く待つことになる。磁性流体8による文字や図形の表示では、スパイクに比べて鑑賞性は低いものの、磁性流体8が持つ特異的な形状の珍しさは十分に感じることができる。また、スポット状の磁性流体8aの連なりによる文字は、活字のようなシャープさは無く立体的で丸みを帯びており、
図1に示すように親しみやすい字体となる。
【0040】
制御基板14Aは、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース、HDD等を備えた一般的なコンピュータである。
図6に示すように、制御基板14Aは、マイク30を介して音声データを入力する音声認識手段38と、入力された音声データを処理して表示体12に表示するための表示データを作成するデータ処理手段40と、作成された表示データを磁力発生部6へ出力するデータ出力手段42と、を備えている。音声認識手段38、データ処理手段40及びデータ出力手段42はコンピュータ内のコンピュータプログラムによって実現されている。これらのプログラムは例えばHDDに予め格納されており、HDDからRAMにロードされ、CPUによって実行される。データ処理手段40では、入力された音声データに対応した応答表現が不図示の表現パターンテーブルT1から抽出されて表示データ化され、また、入力された音声データから音質(高低)等が分析されてこれに対応した応答表現が不図示の表現パターンテーブルT2から抽出されて表示データ化される。すなわち、制御基板14は、音声認識手段38によって認識されたデータに基づいて磁性流体8の形状を変化させる。なお、データ処理手段40は、音声認識手段38で認識された声などの音声データから、当該音声の周波数を判断できるようにすることで、いわゆる周波数入力としてデータを取得することも可能である。このような周波数入力によって取得されたデータによれば、「ただいま」などの声を発声した発声者の体調や感情などの変化をより的確に(数値的あるいは定量的に)判断することができるので、体調や感情に即したより適切な判断を磁力発生部6への出力データに反映させることが可能となる。
【0041】
図1では、対話者Hが「ただいま」と発声し、これに対して表示装置2Aが「おかえり」という応答表示をした状態を示している。「ただいま」という発声が対話者H側からの入力情報である。「おかえり」という応答表示は、上記の表現パターンテーブルT1から抽出されたものに基づいている。さらにCPUは、「ただいま」の音質をチェックし、そのレベルが元気のないものに相当する場合には「げんきないね。どうしたの?」という応答表示を併せて行う。この応答表示は上記の表現パターンテーブルT2から抽出されたものに基づいている。表現パターンテーブルT1には対話者Hの発声に対する様々な応答表現が予め格納されており、表現パターンテーブルT2には対話者Hの発声の高低等の音質に対する様々な応答表現が予め格納されている。CPUは入力された音声データに応じて表現パターンテーブルT1、T2のいずれか一方又は双方から適宜に応答表現を抽出する。コンピュータとしての制御基板14Aがディープラーニングにより応答表現の精度(対話者Hの状態と表現パターンとのマッチング精度)を向上させるようにしてもよい。
【0042】
上記のように本実施形態に係る表示装置2Aによれば、外部からの入力や予め格納されているプログラムに基づく単なる表示、すなわち見る者に対するメッセージではなく、対話者H側からの入力情報(ここでは発声)に基づいて応答をすることができるので、双方向性のコミュニケーションツール(対話グッズ)として利用することができる。これにより利用分野の拡大に寄与する。このように、表示装置2Aによる人とのコミュニケーションが可能となることにより、表示装置2Aを使用する人にとって、あたかも飼育動物(ペット)を飼っている場合のようなアニマルセラピーによる効果に準じる効果が期待できる。犬などのペットを飼うとストレスが軽減されて精神的な健康回復ができると考えられており、ペットを飼っている人と飼っていない人とでは死亡率に大きな差が出るという医学的統計データもある。また、コミュニケーションツールとしての表示装置2Aでもこのような癒しと心理カウンセラー的な効果が期待でき、ひいては孤独死や自殺などのメンタルケアにも大いに役立つと考えられる。また、コミュニケーションを取ることは自信を持たせる効果があることも確認されており、本実施形態のような対話的機能を有する表示装置2Aによれば、引きこもり等の社会復帰への手助けの一助にもなり得る。
【0043】
[第2実施形態]
図1、
図7及び
図8を参照して、第2実施形態を説明する。上記の第1実施形態と同一部分又は同一と見做せる部分は同一符号で示し、既にした構成上及び機能上の説明は適宜省略する(以下の他の実施形態おいて同じ)。
【0044】
図1に示すように、対話者Hは左手にウェアラブルデバイスとしてのスマートウォッチ44を着けている。周知の通り、スマートウォッチ44は心拍数等の生体情報をモニタする機能を有しており、本実施形態ではスマートウォッチ44が計測した心拍数(生体情報)を対話者H側からの入力情報としている。
図7に示すように、表示装置2Bは、デジタル機器用の近距離無線通信規格(例えばBluetooth)を用いた一般的な受信装置46を備えており、同規格の送信装置を備えたスマートウォッチ44からの心拍データを受信する。制御基板14Bは受信装置46を介して心拍データを入力するデータ入力手段48と、入力された心拍データを処理して表示データを作成するデータ処理手段40と、作成された表示データを磁力発生部6へ出力するデータ出力手段42と、を備えている。データ処理手段40では、入力された心拍データに対応した応答表現(図形)が不図示の表現パターンテーブルT3から抽出されて表示データ化され、また、入力された心拍データに対応した応答表現が不図示の表現パターンテーブルT4から抽出されて表示データ化される。すなわち、表示装置2Bは外部機器(スマートウォッチ44)から送信される生体情報データを受信する受信装置46を備え、制御基板14Bは、受信装置46を介して入力されたデータに基づいて磁性流体8の形状を変化させる。
【0045】
心拍データ(心拍数)が適正範囲にある場合、例えば
図8に示すように、王冠の図形が表示されるとともに、併せて「good!」の文字が表示される。すなわち、制御基板14Bは対話者Hの心拍データ(生体情報)に基づいて磁性流体8を変化させ、図形や文字からなる応答表示を形成する。ここでは対話者H側からの入力情報として心拍数を例示したが、血圧や心電図情報等であってもよい。データが適正範囲の場合には、表示装置2Bによる応答表示を見て対話者Hは元気付けられることになる。
【0046】
[第3実施形態]
図9及び
図10を参照して、第3実施形態を説明する。
図9に示すように、本実施形態における表示装置2Cは枠体26の上端中央部に非接触体温計50を備えており、本実施形態では非接触体温計50で測定された体温を対話者H側からの入力情報としている。対話者Hが不図示のスイッチを入れて非接触体温計50をONにし、額を所定距離に近づけると、非接触体温計50が額から放出される赤外線を検出して体温(生体情報)を測定する。測定された体温が適正範囲の場合には、制御基板14Cは、非接触体温計50によって計測された値(体温)に基づいて磁性流体8の形状を変化させ、例えば
図8で示したのと同様の図形と文字からなる応答表示を行う。
【0047】
[第4実施形態]
図11及び
図12を参照して、第4実施形態を説明する。
図11に示すように、本実施形態における表示装置2Dは枠体26の右側下端にパルスオキシメータ52を備えており、本実施形態ではパルスオキシメータ52で測定された血中酸素飽和度を対話者H側からの入力情報としている。対話者Hがパルスオキシメータ52に人指し指を挿入すると測定が開始される。制御基板14Dは、パルスオキシメータ52によって計測された値(血中酸素飽和度)に基づいて磁性流体8の形状を変化させる。測定された血中酸素飽和度が適正範囲の場合には、表示装置2Dは、測定値に基づいて磁性流体8の形状を変化させ、例えばバンザイの図形と「good!」の文字からなる応答表示を行う。なお、図示は省略するが、表示装置2Dが臭気センサとアラームを備えるようにしてもよく、その場合、臭気センサによってガス漏れが検知された場合、アラームを作動させるとともに、「ガスもれです」などの文字を表示して警告するようにしてもよい。
【0048】
[第5実施形態]
図13及び
図14を参照して、第5実施形態を説明する。
図13に示すように、本実施形態における表示装置2Eは枠体26の上端中央部にCCDやCMOS等の撮像素子を有するカメラ54を備えており、本実施形態ではカメラ54で撮影された顔の画像データを対話者H側からの入力情報としている。カメラ54で撮影された対話者Hの顔の画像は、予めHDD等に格納されているコンピュータプログラムである画像解析手段56で表情が解析されて表情データが入力される。制御基板14Eは、画像解析手段56によって解析された対話者Hの表情の変化に基づいて磁性流体8の形状を変化させる。データ処理手段40では、入力された表情データに対応した応答表現が不図示の表現パターンテーブルT5から抽出されて表示データ化される。ここでは「かおいろいいネ!!」の文字を応答表示している。表情データが良いパターンの場合、例えばニコニコ顔のマークと共に表示してもよい。また、表示装置2Eが不図示のスピーカーを備えた構成としてもよい。制御基板14Eは「かおいろいいネ!!」の表示の後に、例えば「このおんがくをきいてみて」と表示し、予め格納されている複数の音楽から気分が高揚する音楽を選択して流すなどすることができる。この場合、制御基板14Eは音楽に対応したアルゴリズムで磁性流体8を変化させる。このようにすれば、表示装置2Eは音情報を視覚化するビジュアライザーとして機能し、磁性流体8の持つ特異的挙動をさらに楽しめるようになる。
【0049】
[第6実施形態]
図15及び
図16を参照して、第6実施形態を説明する。
図15に示すように、本実施形態における表示装置2Fは、表示体12の上端中央部に設けた対話者Hの音声を拾うマイク30と、音声を出力可能なスピーカー(音声発生部)31とを備えている。また、本実施形態の表示装置2Fでは、第1実施形態の表示装置2Aが備えていたカラーコート32が省略されていることで、ガラス板20、22間の密閉空間の下端部に沈殿、堆積した磁性流体8(磁力が印加されていない磁性流体8)の状態も視認できるようになっている。
【0050】
図16に示すように、本実施形態の表示装置2Fでは、制御基板14Fは、マイク30を介して音声データを入力する音声認識手段38と、入力された音声データを処理して表示体12に表示するための表示データやスピーカー31から返答用の音声を出力するための返答音声データを作成するデータ処理手段40と、作成された表示データや返答音声データを磁力発生部6とスピーカー31それぞれへ出力するデータ出力手段42と、を備えている。そして、データ処理手段40では、音声認識手段38から入力された音声データに対応した応答用の返答内容が不図示の表現パターンテーブルT6から抽出されて返答音声データ化され、また、音声認識手段38から入力された音声データから音質(高低)等が分析されてこれに対応した感情表現(具体的には、返答の際に表現する感情の内容)が不図示の表現パターンテーブルT7から抽出されて表示データ化される。すなわち、制御基板14は、音声認識手段38によって認識されたデータに基づいて、対話者Hへの返答用の音声を生成すると共に、対話者Hに対する感情表現を示す形状となるように磁性流体8を変化させる。これにより、対話者Hに話しかけられた表示装置2Fがスピーカー31からの返答の音声と共に磁性流体8の形状や動きの変化によって感情表現をすることが可能となるので、対話者Hにとって、あたかも感情を有する人間やペットとコミュニケーションをしているかのような感覚を楽しむことが可能となる。以下では、本実施形態の表示装置2Fを用いた対話者Hに対する返答におけるスピーカー31から出力する音声と磁力の印加による磁性流体8の形状や動きの変化の具体例について説明する。
【0051】
図17は、磁性流体の形状変化の具体例を示す図である。同図に示すように、磁性流体8は電磁石アレイ16によって印加する磁力の大きさ(強さ)に応じて同図に示す磁性流体8a~8fそれぞれに示すような形状に変化することが可能である。磁性流体8aは、印加する磁力が実質的に0の状態である。そして、磁性流体8b~8eの順に印加する磁力が徐々に大きくなり、磁性流体8fは印加する磁力が最大の状態である。同図に示すように、磁性流体8に印加する磁力の大きさが0又は比較的に小さな状態では、磁性流体8はスパイクが殆ど無く丸みを帯びた感情的に優しく穏やかな印象を与える形状であるのに対して、印加する磁力が比較的に大きくなると、スパイクの先尖形状が次第に鋭利になってゆくと共に、スパイクの数も増えて微細化していくことで、磁性流体8の全体が刺々しく感情的に殺気立って荒れた印象の形状に変化してゆく。本実施形態の表示装置2Fでは、このような磁性流体8の形状変化の特性を利用して、表示装置2Fから対話者Hへの返答の際の感情表現を行うようにしたものである。すなわち、同図の磁性流体8aの形状は、気持ちが非常に穏やかな状態や、あまり気力が無い状態や、とても眠い状態、などの感情や体調を示すものである一方、磁性流体8fの形状は、非常に強い怒りや驚きを伴う状態を示すものである。そして、磁性流体8b~8eの形状は、それらの間の中間的な感情や体調を段階的に示すものである。このように、磁性流体8に印加する磁力が弱いほど、感情が穏やかであるか、気力が無いか、体調があまり優れないなどの状況を示す一方、磁性流体8に印加する磁力が強いほど、怒りや驚きなどの感情が顕著な状況を示すようになる。
【0052】
図18~
図23は、スピーカー31からの返答の内容と磁性流体8に印加する磁力の変化及びそれに伴う磁性流体の形状変化の具体例を示すタイミングチャートである。これらの図に示すタイミングチャートでは、横軸に経過時間tを取っている。まず、
図18に示すタイミングチャートの例は、発話者Hが表示装置2Fに対して、相手を喜ばせるような内容の言葉や大きな期待を持たせるような内容の言葉をかけた場合において、それに対する返答の表現を行う場合の例である。この例では、スピーカー31から「ドキ」、「ドキ」・・・という心臓の鼓動を模した音声(言葉)を一定間隔で発すると共に、それと同じタイミングで磁性流体8に印加する磁力を増大させる一方、「ドキ」と「ドキ」の音声を発する間のタイミングには磁力を低減させることで、「ドキ」、「ドキ」の音声と合わせて磁性流体8の形状を周期的に変化させるようにする。これにより、表示装置2Fからの返答において、あたかも心臓の鼓動が早くなって感情が高ぶっている様子を音声と視覚の両方で表現することができる。すなわち、対話者Hは、スピーカー31から発せられる「ドキ」、「ドキ」・・・という音声を聴覚で認識すると共に、表示装置2Fにおける磁性流体8が丸みを帯びた形状と多数のスパイクを有する刺々しい形状との間で周期的に変化することを視覚で認識することで、表示装置2Fとのコミュニケーションにおいて、あたかも感情が高ぶっていたり動揺していたりする人と対話をしているような感覚を有することが可能となる。
【0053】
また、
図19に示すタイミングチャートの例は、対話者Hが表示装置2Fに対して、相手の意表を突くような内容の言葉をかけた場合において、それに対する返答の表現を行う場合の例である。この例では、スピーカー31から「ビクッ!」という驚きを示す擬態語や「えっ!」という驚いた時に発する音声を出力すると共に、それと同じタイミングで磁性流体8に印加する磁力を最大程度まで増大させ、その後は印加する磁力を維持するようにする。これにより、「ビクッ!」や「えっ!」の音声と合わせて磁性流体8の形状を強い驚きを示す形状に変化させることができる。したがって、表示装置2Fによる返答において、あたかも対話者Hに話しかけられた内容に対して強い驚きをもって動揺している様子を音声と視覚の両方で表現することができる。
【0054】
また、
図20に示すタイミングチャートの例は、対話者Hが表示装置2Fに対して、相手を怒らせるような内容の言葉をかけた場合において、それに対する返答の表現を行う場合の例である。この例では、スピーカー31から「おいっ!」又は「コラッ!」という怒りを示す語の音声を出力すると共に、それと同じタイミングで磁性流体8に印加する磁力を最大程度まで増大させ、その後は印加する磁力を中程度まで低減させるようにする。これにより「おいっ!」や「コラッ!」の音声と合わせて磁性流体8の形状を怒りの感情を示す形状に変化させることができる。したがって、表示装置2Fによる返答において、あたかも対話者Hに話しかけられた内容に対して怒りの感情を持って返答している様子を音声と視覚の両方で表現することができる。
【0055】
また、
図21に示すタイミングチャートの例は、発話者Hが表示装置2Fに対して、相手を落胆させるような内容の言葉をかけた場合において、それに対する返答の表現を行う場合の例である。この例では、スピーカー31から「がっかり・・・」という落胆を示す語の音声を出力すると共に、それと同じタイミングで、それまで中程度であった磁性流体8に印加する磁力を実質的に0とする。これにより、表示装置2Fによる返答において、あたかも対話者Hに話しかけられた内容に対して落胆の感情を持って返答している様子を音声と視覚の両方で表現することができる。
【0056】
また、
図22に示すタイミングチャートの例は、表示装置2Fから「もう、ねむい・・」という音声を発すると同時に、それまで中程度であった磁性流体8に印加する磁力を実質的に0とすることで、磁性流体8の形状をスパイクの無い丸みを帯びた形状に変化させるようにしている。これにより、眠くなって気力が低下している状態を対話者Hに対して音声と視覚の両方で効果的に示すことができる。
【0057】
また、
図23に示すタイミングチャートの例は、対話者Hが表示装置2Fに対して、相手を喜ばせるような内容の言葉をかけた場合において、それに対する返答の表現を行う場合の例である。この例では、スピーカー31から「わーい!」や「うれしー!」という喜びを示す音声を出力すると共に、磁性流体8に印加する磁力の強弱を小刻みに(素早く)変化させることで、磁性流体8があたかも喜んで踊っているような動きを表現することができる。これにより、表示装置2Fによる返答において、対話者Hに話しかけられた内容に対して喜びの感情を持って返答している様子を音声と視覚の両方で表現することができる。またこの場合、図示は省略するが、磁性流体8に印加する磁力の位置を上下や左右に変化させることで、磁性流体8が密閉空間を縦横無尽に飛び回っているような表現をすることも可能となり、それによって喜びの感情をより的確に表現することができるようになる。なお、上述の磁力の強弱を小刻みに変化させることと、磁力の位置を上下や左右に変化させることを同時に行うようにしてもよい。
【0058】
このように、本実施形態の表示装置2Fでは、制御部14Aは、対話者H側からの入力情報に基づいて、対話者Hに対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定し、当該決定に基づいて、スピーカー31を制御して対話者Hへの感情を示す返答用の音声を出力すると共に、磁力発生部6を制御して対話者Hに対する感情を示す形状となるように磁性流体8を変化させる。これにより、対話者Hの発声した内容に応じて表示装置2Fがスピーカー31からの返答の音声と同時に磁性流体8の形状や動きを変化させることによって疑似的な感情表現をすることが可能である。そして、強い怒りや大きな動揺や大きな喜びなど穏やかでない感情(強い感情)を示す手段としては、磁性流体8に印加する磁力を比較的に強くすることで磁性流体8の形状を多数のスパイクを有する刺々しい形状とする一方、平常心や眠い状態など穏やかな感情や気力が低下している状態を示す手段としては、磁性流体8に印加する磁力を比較的に弱くすることで、磁性流体8の形状をスパイクの殆ど無い丸みを帯びた形状とすることができる。
【0059】
[第7実施形態]
図24及び
図25を参照して、第7実施形態を説明する。
図24に示すように、本実施形態における表示装置2Gは、表示体12の上端中央部に対話者Hの音声を拾うマイク30を備えている。また、本実施形態の表示装置2Gでは、ガラス板20、22間の密閉空間を上下の二室に分離している。すなわち、上部密閉空間24aと下部密閉空間24bの二室を設け、それらの間に仕切壁27を配置している。そして、上部密閉空間24aと下部密閉空間24bのそれぞれに磁性流体8(8A,8B)を収容している。そして、本実施形態の表示装置2Gでは、第6実施形態においてスピーカー31から発していた音声による返答に代えて、上部密閉空間24a内の磁性流体8Aで形成する文字による返答を行うようにしている。また、第6実施形態において行っていた磁性流体8の形状の変化による感情表現を下部密閉空間24b内の磁性流体8Bによって行うようにしている。すなわち、本実施形態の表示装置2Gでは、対話者Hに話しかけられた表示装置2Gが上部密閉空間24a内の磁性流体8Aによって形成する文字による返答と同時に、下部密閉空間24b内の磁性流体8Bの形状や動きの変化によって感情表現を行うようにしている。
【0060】
すなわち、本実施形態の表示装置2Gでは、
図25に示すように、制御基板14Gは、音声認識手段38によって認識されたデータに基づいて、第1密閉空間24a用の磁力発生部6に印加する磁力を制御することで、対話者Hへの返答用の文字を生成するように磁性流体8Aを変化させると共に、第2密閉空間24b用の磁力発生部6に印加する磁力を制御することで、対話者Hに対する感情表現を示す形状となるように磁性流体8Bを変化させる。これにより、対話者Hに話しかけられた表示装置2Fが磁性流体8Aによって形成される文字と共に磁性流体8Bの形状や動きの変化によって感情表現をすることが可能となるので、本実施形態においても、対話者Hにとって、あたかも感情を有する人間やペットとコミュニケーションをしているかのような感覚を楽しむことが可能となる。
【0061】
本実施形態においては、第6実施形態と比較して、スピーカー31からの返答の音声を上部密閉空間24a内の磁性流体8Aで形成する文字による返答に代えた点のみが異なるものである。そのため、対話者Hに対する返答における上部密閉空間24a内の磁性流体8Aによる文字や下部密閉空間24b内の磁性流体8Bへの磁力の印加による形状や動きの変化についての詳細な説明は省略する。
【0062】
なお、上記の第6実施形態と第7実施形態では、対話者Hの発生した音声をマイク30で拾い、それに対する返答や感情表現を行う場合を示したが、これ以外にも、スマートウォッチ44、非接触体温計50、パルスオキシメータ52、カメラ54など各種入力手段を用いて入力された対話者Hの生体情報に基づいて、対話者Hへの返答及び感情表現を行うようにしてもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態では、磁性流体8の色は黒色であったが、特許文献1に記載されているように、ラメ材等の軟磁性遮光片を含有して黒以外の色としてもよい。このようにすれば、磁性流体8を着色表示することができるので、磁性流体8によって色々なカラー表現ができる。また、上記各実施形態では磁力で磁性流体8を移動させて文字や図形を形成する構成としたが、特許文献4に記載されているように、ガラス板20、22間の空間全体を磁性流体8で満たすとともに表示体12にバックライトを設け、電磁石36で磁場を印加した部分だけが磁界の作用方向に沿って整列することにより光透過性を示す性質を利用し、透過光で文字や図形を表示するようにしてもよい。また、表示体12に振動体を設け、表示体12を振動させながら文字や図形の表示効果を高めるようにしてもよい。また、上記各実施形態では個別の特徴構成を説明したが、各実施形態間において相互に特徴構成を追加適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G 磁性流体を用いた表示装置
6 磁力発生部
8 磁性流体
8a スポット状の磁性流体
10 非磁性流体
12 表示体
14A、14B、14C、14D、14E、14F、14G 制御基板(制御部)
16 電磁石アレイ
18 回路基板
20、22 ガラス板
30 マイク
31 スピーカー(音声発生部)
32 カラーコート
36 電磁石
38 音声認識手段
44 スマートウォッチ(ウェアラブルデバイス;外部機器)
46 受信装置
50 非接触体温計
52 パルスオキシメータ
54 カメラ
H 対話者
【手続補正書】
【提出日】2023-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力を発生する磁力発生部と、
磁性流体と非磁性流体とが封入された表示体と、
音声を発する音声発生部と、
対話者側からの入力情報に基づいて前記音声発生部及び前記磁力発生部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記対話者側からの入力情報に基づいて、前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定し、当該決定に基づいて、前記音声発生部を制御して前記対話者への感情を示す返答用の音声を出力すると共に、前記磁力発生部を制御して前記対話者に対する感情を示す形状となるように前記磁性流体を変化させ、
前記制御部及び前記磁力発生部は、前記返答の際に表現する感情が穏やかな場合は、当該感情が強い怒りや驚きである場合と比較して、前記磁性流体に印加する磁力を相対的に弱い磁力とする
ことを特徴とする磁性流体を用いた表示装置。
【請求項2】
磁力を発生する磁力発生部と、
磁性流体と非磁性流体とが封入された表示体と、
音声を発する音声発生部と、
対話者側からの入力情報に基づいて前記音声発生部及び前記磁力発生部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記対話者側からの入力情報に基づいて、前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定し、当該決定に基づいて、前記音声発生部を制御して前記対話者への感情を示す返答用の音声を出力すると共に、前記磁力発生部を制御して前記対話者に対する感情を示す形状となるように前記磁性流体を変化させ、
前記制御部及び前記磁力発生部は、前記返答の際に表現する感情が強い怒りや驚きである場合は、当該感情が穏やかである場合と比較して、前記磁性流体に印加する磁力を相対的に強い磁力とする
ことを特徴とする磁性流体を用いた表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記音声発生部から音声を発すると同時に前記磁力発生部で前記磁性流体に印加する磁力の強さを変化させる制御を行うことで、前記対話者に対する返答の語の発生と前記磁性流体の形状の変化による感情の表現とを同時に行う
ことを特徴とする請求項1に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項4】
前記対話者側からの入力情報として前記対話者の音声を入力する音声入力手段を備え、前記制御部は、前記音声入力手段から入力された音声に基づいて前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項5】
前記対話者側からの入力情報として外部機器から送信される生体情報データを受信する受信装置を備え、
前記制御部は、前記受信装置を介して入力されたデータに基づいて前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項6】
前記生体情報データが、前記外部機器であるウェアラブルデバイスから送信された心拍データである
ことを特徴とする請求項5に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項7】
前記対話者側からの入力情報として前記対話者の体温を計測する非接触体温計を備え、
前記制御部は、前記非接触体温計によって計測された値に基づいて前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性流体を用いた表示装置。
【請求項8】
前記対話者側からの入力情報として前記対話者の画像を撮影可能なカメラを備え、
前記制御部は、前記カメラにより撮影された画像から前記対話者の表情の変化を解析する画像解析手段を有し、該画像解析手段によって解析された前記対話者の表情の変化に基づいて前記対話者に対する返答の語及び返答の際に表現する感情を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性流体を用いた表示装置。