IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイセルの特許一覧

<>
  • 特開-複合粒子及びその製造方法 図1
  • 特開-複合粒子及びその製造方法 図2
  • 特開-複合粒子及びその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157922
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】複合粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20231019BHJP
   C08L 1/08 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231019BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 8/40 20060101ALN20231019BHJP
   A61K 8/36 20060101ALN20231019BHJP
   A61K 8/81 20060101ALN20231019BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEP
C08L1/08
A61K8/73
A61Q1/00
A61K8/40
A61K8/36
A61K8/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129002
(22)【出願日】2023-08-08
(62)【分割の表示】P 2023529656の分割
【原出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021099568
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 慧子
(72)【発明者】
【氏名】高田 定樹
(72)【発明者】
【氏名】大村 雅也
(57)【要約】
【課題】良好な触感を有し、粒子分散性に優れた複合粒子及びその製造方法の提供。
【解決手段】複合粒子は、セルロース誘導体粒子と、この粒子表面を被覆する皮膜と、を有している。この皮膜は、水及び/又は有機溶媒に溶解する表面処理化合物から形成されている。化粧品組成物は、この複合粒子を含有する。この複合粒子の製造方法は、セルロース誘導体粒子及び表面処理化合物を、この表面処理化合物を溶解する溶媒中で撹拌混合する混合工程と、セルロース誘導体粒子を含む固形分を洗浄して乾燥させる乾燥工程と、を含む。好ましい溶媒は、水又はアルコール類である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース誘導体粒子と、この粒子表面を被覆する皮膜と、を有しており、
上記皮膜が、水及び/又は有機溶媒に溶解する表面処理化合物から形成されている、複合粒子。
【請求項2】
上記有機溶媒がアルコール類である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
上記表面処理化合物が、カチオン界面活性剤、脂肪酸石鹸及びカチオンポリマーからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の複合粒子。
【請求項4】
上記表面処理化合物が、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ポリオクタニウム-61及びポリオクタニウム-67からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1から3のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項5】
上記表面処理化合物の含有率が0.1重量%以上20重量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項6】
上記セルロース誘導体が、炭素数2~20のアルコキシ基又は炭素数2~40のアシル基を有している、請求項1から5のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項7】
上記セルロース誘導体がセルロースアシレートである、請求項1から6のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項8】
上記セルロース誘導体がセルロースアセテートである、請求項1から7のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項9】
上記セルロース誘導体の総置換度が0.7以上3.2以下である、請求項1から8のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項10】
上記セルロース誘導体粒子は、平均粒子径が0.08μm以上100μm以下、真球度が0.7以上1.0以下、及び、表面平滑度が80%以上100%以下である、請求項1から9のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の複合粒子を含む、化粧品組成物。
【請求項12】
セルロース誘導体粒子及び表面処理化合物を、この表面処理化合物を溶解する溶媒中で撹拌混合する混合工程と、
上記混合工程後、上記セルロース誘導体粒子を含む固形分を洗浄して乾燥させる乾燥工程を有している、請求項1から10のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項13】
上記溶媒が、水又はアルコール類である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
上記表面処理化合物の添加量が、上記セルロース誘導体粒子に対して、0.1重量%以上20重量%以下である、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合粒子及びその製造方法に関する。詳細には、本開示は、セルロース誘導体粒子を含む複合粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品には、化粧品ののびを向上する、触感に変化を与える、シワぼかし効果を付与する、また、ファンデーション等の滑り性を向上するとの目的で、種々の高分子微粒子が配合されている。このような化粧品に配合する微粒子として、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成ポリマーからなる微粒子が用いられてきた。しかしながら、近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題に起因して、これら合成ポリマーに代えて、必要な特性を有し、かつ、環境に優しい非合成系ポリマー材料からなる微粒子が求められている。
【0003】
非合成系ポリマーとして、天然物であるセルロースから誘導されるセルロース誘導体からなる微粒子の適用が検討されている。例えば、特許文献1には、平均粒子径が80nm以上100μm以下、真球度が0.7以上1.0以下及び表面平滑度が80%以上100%以下であり、アセチル総置換度が0.7以上2.9以下であるセルロースアセテート粒子が開示されている。
【0004】
特許文献2には、炭素数2以上のアルコキシ基、又は炭素数3以上のアシル基を有するセルロース誘導体粒子であって、平均粒子径が80nm以上100μm以下、及び真球度が70%以上100%以下、表面平滑度が80%以上100%以下であり、総置換度が0.7以上3以下である、セルロース誘導体粒子が開示されている。
【0005】
特許文献3には、平均粒子径が80nm以上100μm以下、真球度が0.7以上1.0以下、表面平滑度が80%以上100%以下、及び水に対する表面接触角が100°以上であり、アセチル総置換度が0.7以上2.9以下である、セルロースアセテートを含む粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6609726号
【特許文献2】特開2020-152851号公報
【特許文献3】特許第6694559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1-3に開示された微粒子によれば、化粧品組成物に適した良好な触感や、光散乱(ソフトフォーカス)効果が得られるとされている。しかし、それらの効果は、真球度、表面平滑度等の粒子形状に依拠するところが大きかった。また、化粧品組成物では、用途に応じて種々の溶剤が使用され、製剤の配合が変更されうる。化粧品組成物に配合する高分子微粒子には、主として疎水性の溶剤や製剤中における高い分散性が求められている。従来提案された微粒子による粒子分散性には、未だ改善の余地がある。
【0008】
本開示の目的は、粒子形状によらず、良好な触感を有し、かつ、粒子分散性に優れた複合粒子及びその製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る複合粒子は、セルロース誘導体粒子と、この粒子表面を被覆する皮膜と、を有している。皮膜は、水及び/又は有機溶媒に溶解する表面処理化合物から形成されている。
【0010】
有機溶媒は、アルコール類であってよい。
【0011】
表面処理化合物は、カチオン界面活性剤、脂肪酸石鹸及びカチオンポリマーからなる群から選択される1種又は2種以上である。表面処理化合物は、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ポリオクタニウム-61及びポリオクタニウム-67からなる群から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0012】
好ましくは、表面処理化合物の含有率は0.1重量%以上20重量%以下である。
【0013】
好ましくは、セルロース誘導体は、炭素数2~20のアルコキシ基又は炭素数2~40のアシル基を有している。このセルロース誘導体が、セルロースアシレートであってよい。このセルロース誘導体が、セルロースアセテートであってよい。
【0014】
好ましくは、セルロース誘導体の総置換度は0.7以上3.2以下である。
【0015】
セルロース誘導体粒子は、平均粒子径が0.08μm以上10μm以下であってよく、真球度が0.7以上1.0以下であってよく、表面平滑度が80%以上100%以下であってよい。
【0016】
本開示の化粧品組成物は、前述したいずれかに記載の複合粒子を含有する。
【0017】
本開示の複合粒子の製造方法は、
(1)セルロース誘導体粒子及び表面処理化合物を、この表面処理化合物を溶解する溶媒中で撹拌混合する混合工程
及び
(2)混合工程後、セルロース誘導体粒子を含む固形分を洗浄して乾燥させる乾燥工程を有している。この溶媒は水又はアルコール類であってよい。好ましくは、表面処理化合物の添加量は、セルロース誘導体粒子に対して0.1重量%以上20重量%以下である。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係る複合粒子によれば、表面処理化合物から形成された皮膜により、良好な触感が得られ、かつ、化粧品組成物に用いられる種々の溶剤及び製剤中において高い粒子分散性が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る複合粒子のSEM画像である。
図2】表面平滑度(%)の評価方法を説明する図面である。
図3】表面平滑度(%)の評価方法を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施形態の一例を具体的に説明する。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0021】
なお、本願明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」の意味である。特に注釈のない限り、試験温度は全て室温(20℃±5℃)である。
【0022】
[複合粒子]
本開示の複合粒子は、セルロース誘導体粒子と、この粒子表面を被覆する皮膜と、を有している。この皮膜は、水及び/又はアルコール類に溶解する表面処理化合物から形成されている。表面処理化合物からなる皮膜を表面に有するセルロース誘導体粒子は、触感に優れている。この複合粒子では、皮膜により、化粧品組成物に用いられる溶剤及び製剤に適した表面物性を得ることができる。この複合粒子によれば、種々の溶剤及び製剤中で高い粒子分散性が達成される。
【0023】
ここで、「複合粒子」とは、コアと、このコアを被覆する皮膜とから構成されており、コアと皮膜とが異なる材料から形成されている粒子として定義される。即ち、本開示において、コアはセルロース誘導体粒子であり、皮膜は表面処理化合物から形成される。本開示の効果が得られる限り、コアであるセルロース誘導体粒子の形状は、特に限定されない。
【0024】
本開示の一実施形態に係る複合粒子が撮影された走査型電子顕微鏡写真(3000倍)が、図1に示されている。図1に示される通り、複合粒子の表面は均一である。この複合粒子では、セルロース誘導体粒子の表面に、略均一に、表面処理化合物からなる皮膜が形成されていることがわかる。本開示の効果が得られる限り、皮膜は、セルロース誘導体粒子の表面に物理的に付着した状態であってよく、また、皮膜をなす表面処理化合物とセルロース誘導体とが化学的に結合した状態であってよい。
【0025】
[表面処理化合物]
本開示の複合粒子において、皮膜をなす表面処理化合物は、水及び/又は有機溶媒に溶解する。有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類等が例示される。このアルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、アミノアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0026】
後述する複合粒子の製造方法において、水及び/又は有機溶媒は、湿式処理法による皮膜形成のための溶媒として用いられる。混合撹拌しやすく、皮膜形成後に除去しやすいとの観点から、水及び/又はアルコール類に溶解する表面処理化合物が好ましく、水又は炭素数1~8のアルコールに溶解する表面処理化合物が好ましい。
【0027】
ここで、「溶解する」とは、25℃において、100mlの溶媒に少なくとも0.1gの表面処理化合物を添加・混合する場合に、目視にて、白濁又は沈澱が観察されないことを意味する。本開示の複合粒子において、25℃の溶媒100ml当たりの表面処理化合物の溶解量としては、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1.0重量%以上がさらに好ましい。
【0028】
本開示において、水及び/又は有機溶媒に溶解する表面処理化合物の種類は特に限定されないが、化粧品組成物に使用される溶剤及び製剤中での分散性向上の観点から、カチオン界面活性剤、脂肪酸石鹸及びカチオンポリマーからなる群から選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0029】
カチオン界面活性剤としては、長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩及び/又はアミン塩が挙げられる。触感及び粒子分散性向上の観点から、下記一般式(1)で示される第4級アンモニウム塩が好ましい。
(1)
(式中、Xはハロゲンイオンであり、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~25のアルキル基であり、R、R、R及びRの少なくとも一つが炭素数12以上のアルキル基である。)
式(1)で示されるカチオン界面活性剤の具体例として、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジエチルアンモニウム、塩化デシルトリエチルアンモニウム、塩化デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ヤシ油トリメチルアンモニウム、塩化ヤシ油メチルジヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0030】
本開示において、脂肪酸石鹸は、高級脂肪酸のアルカリ金属塩として定義される。高級脂肪酸としては、炭素数12~25の脂肪酸が好ましく、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。このような脂肪酸石鹸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、エルカ酸等のナトリウム塩又はカリウム塩が例示される。また、カチオンポリマーとしては、ポリオクタニウム-61、ポリオクタニウム-67等のポリオクタニウム類が挙げられる。
【0031】
良好な触感と高い粒子分散性が得られやすいとの観点から、好ましい表面処理化合物は、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ポリオクタニウム-61及びポリオクタニウム-67からなる群から選択される1種又は2種以上である。
【0032】
化粧品組成物への配合に適した表面物性が得られるとの観点から、複合粒子における表面処理化合物の含有率は0.1重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。セルロース誘導体粒子の物性が阻害されないとの観点から、表面処理化合物の含有率は20重量%以下が好ましく、5.0重量%以下がより好ましく、2.0重量%以下が特に好ましい。複合粒子における表面処理化合物の含有率は、0.1重量%以上20重量%以下であってよく、0.1重量%以上5.0重量%以下であってよく、0.1重量%以上2.0重量%以下であってよく、1.0重量%以上20重量%以下であってよく、1.0重量%以上5.0重量%以下であってよく、1.0重量%以上2.0重量%以下であってよい。2種以上の表面処理化合物が併用される場合、その合計含有率が上記範囲を満たすことが好ましい。なお、表面処理化合物の含有率は、後述する製造方法の混合工程における添加量により調整することができる。
【0033】
[セルロース誘導体粒子]
セルロース誘導体粒子の平均粒子径は、0.08μm以上100μm以下であってよく、0.1μm以上であってよく、1μm以上であってよく、2μm以上であってよく、4μm以上であってよい。また、80μm以下であってよく、40μm以下であってよく、20μm以下であってよく、14μm以下であってよい。平均粒子径が100μm以下であれば、触感及び光散乱(ソフトフォーカス)効果がより向上する。平均粒子径が0.08μm以上のセルロース誘導体粒子は、製造容易である。なお、触感としては、セルロース誘導体粒子に直接触れる場合の他、例えば、化粧品組成物に配合した場合の肌触りや触感が挙げられる。
【0034】
平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。具体的には、以下の通りである。まず、100ppm濃度となるようにセルロース誘導体粒子を純水に添加し、超音波振動装置を用いて純水懸濁液とすることにより、試料を調製する。その後、レーザー回折法(株式会社堀場製作所「レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960」、超音波処理15分、屈折率1.500、媒体(水;1.333))により、体積頻度粒度分布を測定する。この体積頻度粒度分布において、散乱強度の積算50%に対応する粒子径を、平均粒子径として求める。即ち、本願明細書における平均粒子径(μm)は、体積基準のメジアン径である。
【0035】
セルロース誘導体粒子の粒子径変動係数は、0%以上60%以下であってよく、2%以上50%以下であってよい。粒子径変動係数(%)は、粒子径の標準偏差/平均粒子径×100によって算出できる。
【0036】
セルロース誘導体粒子の真球度は、0.7以上1.0以下が好ましく、0.8以上1.0以下がより好ましく、0.9以上1.0以下がさらに好ましい。真球度が0.7以上であれば、より良好な触感が得られ、例えば、化粧品組成物に配合した場合の肌触り及びソフトフォーカス効果がさらに向上する。
【0037】
真球度は、次の方法により測定できる。走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した粒子の画像を用いて、ランダムに選択した30個の粒子の長径及び短径を測定し、各粒子の短径/長径比を求め、その短径/長径比の平均値を真球度とする。なお、真球度が1に近いほど真球であると判断できる。
【0038】
セルロース誘導体粒子の表面平滑度は、80%以上100%以下が好ましく、85%以上100%以下がより好ましく、90%以上100%以下がさらに好ましい。表面平滑度が80%以上であれば、より良好な触感が得られる。100%に近いほど、好ましい触感が得られる。
【0039】
以下、表面平滑度の低いサンプル粒子を用いた図2及び図3を例示して、表面平滑度の測定方法を説明する。表面平滑度は、粒子の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、粒子表面の凹凸を観察して、凹部の面積に基づいて求めることができる。詳細には、粒子の2500~5000倍の走査型電子顕微鏡写真を撮り(粒子の顕微鏡写真の一例は、図2参照)、画像処理装置Winroof(三谷商事社製)を用いて、画像を二値化する(図2の顕微鏡写真を二値化した画像は図3参照)。そして、粒子1個の中心及び/又は中心付近を含む、粒子よりも小さい任意の領域(例えば、図3を参照すれば、n1及びn2で示す領域)領域における凹凸の凹に当たる部分(陰の部分)の面積率を算出し、以下の式によりその粒子1個の表面平滑度(%)を算出する。当該領域の大きさは、粒子径が15μmのとき5μm四方であってよい。
粒子1個の表面平滑度(%)=(1-凹の面積率)×100
凹の面積率=前記任意の領域における凹部の面積/前記任意の領域
なお、本開示における表面平滑度(%)はランダムに選択した10個の粒子サンプル、つまりn1~n10の表面平滑度の平均値である。この数値が高いほど表面平滑度が高いことを意味する。
【0040】
本開示のセルロース誘導体粒子をなすセルロース誘導体は、好ましくは、炭素数2~20のアルコキシ基又は炭素数2~40のアシル基を有している。セルロース誘導体が、炭素数2~20のアルコキシ基と、炭素数2~40のアシル基と、の両方を有していてもよい。
【0041】
セルロース誘導体が有するアルコキシ基の炭素数は、3以上であってよく、5以上であってよい。また、アルコキシ基の炭素数は、15以下であってよく、8以下が好ましい。セルロース誘導体が、炭素数の異なる2種以上のアルコキシ基を有してもよい。また、セルロース誘導体が、炭素数2~20のアルコキシ基と炭素数が1であるアルコキシ基(メトキシ基)の両方を有してもよい。
【0042】
炭素数2~20のアルコキシ基として、例えば、エトキシ基、プロトキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、ヘプトキシ基、及びオクトキシ基等が挙げられる。本開示の効果が得られる限り、これらアルコキシ基が、置換基を有していてもよい。
【0043】
セルロース誘導体が有するアシル基の炭素数は3以上であってよく、4以上であってよい。また、アシル基の炭素数は、30以下であってよく、18以下であってよく、16以下であってよい。セルロース誘導体が、炭素数の異なる2種以上のアシル基を有してもよい。
【0044】
炭素数2~40のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノィル(バレリル)基、へキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル(ミリストイル)基、ペンタデカノイル基、へキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基及びオクタデカノイル(ステアロイル)基等が挙げられる。本開示の効果が得られる限り、これらアシル基が、置換基を有していてもよい。
【0045】
良好な触感と、化粧品組成物に適した粒子分散性が得られるとの観点から、炭素数2~40のアシル基を有するセルロース誘導体(即ち、セルロースアシレート)が好ましい。好ましいアシル基は、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基から選択される1種又は2種以上であり、より好ましくは、アセチル基である。本開示のセルロース誘導体が、セルロースアセテートであってよい。
【0046】
セルロース誘導体粒子をなすセルロース誘導体は、総置換度が0.7以上3.2以下であってよく、1.0以上3.2以下であってよく、1.4以上3.1以下であってよく、2.0以上3.0以下であってよい。成形性に優れ、触感の良好な粒子の製造が容易なためである。
【0047】
セルロース誘導体の総置換度は、以下の方法により測定できる。まず、セルロース誘導体の総置換度とは、セルロース誘導体のグルコース環の2,3,6位の各置換度の和であり、セルロース誘導体のグルコース環の2,3,6位の各置換度は、手塚(Tezuka, Carbonydr. Res. 273, 83(1995))の方法に従いNMR法で測定できる。すなわち、セルロース誘導体の遊離水酸基をピリジン中でカルボン酸無水物によりアシル化する。ここで使用するカルボン酸無水物の種類は分析目的に応じて選択すべきであり、例えば、セルロースアセテートプロピオネートのプロピオニル置換度を分析する場合は無水酢酸が良く、アセチル置換度を分析する場合は無水プロピオン酸がよい。アシル化反応の溶媒及び酸無水物は分析対象のセルロース誘導体に応じて適宜選択すればよい。
【0048】
アシル化して得られた試料を重クロロホルムに溶解し、13C-NMRスペクトルを測定する。置換基がアセチル基、プロピオニル基又はブチリル基である場合を例に挙げれば、アセチル基の炭素シグナルは169ppmから171ppmの領域に高磁場から2位、3位、6位の順序で、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で、ブチリル基の炭素シグナルは、171ppmから173ppmの領域に同様に高磁場側から2位、3位、6位の順序で現れる。他の例を挙げれば、プロピオニル基を有するセルロース誘導体を分析する場合、又は、プロピオニル基を有しないセルロース誘導体を無水プロピオン酸で処理した後でプロピオニル置換度を分析する場合、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で現れる。
【0049】
手塚の方法やそれに準じる方法により、無水カルボン酸で処理したセルロース誘導体の総置換度は3.0なので、セルロース誘導体がもともと有するアシル基のカルボニル炭素シグナルと、無水カルボン酸処理で導入したアシル基のカルボニルシグナルの面積の総和を3.0と規格化し、それぞれ対応する位置でのアセチル基とプロピオニル基の存在比(各シグナルの面積比)を求めれば、元のセルロース誘導体におけるグルコース環の2,3,6位の各アシル置換度を求めることができる。なお、言うまでもなく、この方法で分析できるアシル基を含む置換基は、分析目的の処理に用いる無水カルボン酸に対応しない置換基のみである。
【0050】
ただし、試料であるセルロース誘導体のグルコース環の2位、3位及び6位の総置換度が3.0であり、かつその置換基が全てアセチル基及びプロピオニル基等の限定的な置換基であることが予め把握される場合には、アシル化の工程を除き、試料を直接重クロロホルムに溶解してNMRスペクトルを測定することもできる。置換基が全てアセチル基及びプロピオニル基であれば、アシル化の工程を含む場合と同様に、アセチル基の炭素シグナルは169ppmから171ppmの領域に高磁場から2位、3位、6位の順序で、プロピオニル基の炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で現れるので、それぞれ対応する位置でのアセチル基及びプロピオニル基の存在比(言い換えれば、各シグナルの面積比)から、セルロース誘導体におけるグルコース環の2位、3位、6位の各アセチル及びプロピオニル置換度等の置換度を求めることができる。
【0051】
セルロース誘導体粒子は可塑剤を含有してよく、含有しなくてもよい。本開示において可塑剤とは、セルロース誘導体の可塑性を増加させることができる化合物をいう。可塑剤は、特に限定されるものではなく、アジピン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、グルタル酸系可塑剤、ハク酸系可塑剤、セバシン酸系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、ネオペンチルグリコール、リン酸系可塑剤等が例示される。セルロース誘導体粒子が、2種以上の可塑剤を含んでもよい。クエン酸アセチルトリエチル、トリアセチン及びジアセチンからなる群より選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0052】
セルロース誘導体粒子が可塑剤を含有する場合、セルロース誘導体粒子に含まれる可塑剤の含有量は、特に限定されない。例えば、セルロース誘導体粒子の重量に対し、0重量%を超え40重量%以下であってよく、2重量%以上40重量%以下であってよく、10重量%以上30重量%以下であってよく、15重量%以上20重量%以下であってよい。
【0053】
セルロース誘導体粒子における可塑剤の含有量は、セルロース誘導体粒子を溶解できる溶媒にセルロース誘導体粒子を溶解して、その溶液をH-NMRで測定することにより求められる。
【0054】
[化粧品組成物]
本開示の複合粒子は、触感に優れ、かつ、種々の溶剤又は製剤中に良好に分散することから、化粧品組成物に好適に用いることができる。この複合粒子を含む化粧品組成物によれば、肌の凹凸を埋めて滑らかにし、光を様々な方向に散乱させることでしわなどを目立ちにくくする(ソフトフォーカス)効果が得られる。
【0055】
化粧品組成物としては、リキッドファンデーション、パウダーファンデーション等のファンデーション;コンシーラー;日焼け止め;化粧下地;ロ紅及び口紅用下地;ボデイバウダー、固形白粉及びフェイスパウダー等のおしろい;固形粉末アイシャドー;皺隠しクリーム;並びにスキンケアローション等の主に化粧を目的とした皮膚及び毛外用剤が含まれ、その剤型は限定されない。剤型としては、水溶液、乳液、懸濁液等の液剤;ゲル及びクリーム等の半固形剤;粉末、顆粒及び固形等の固形剤のいずれあってもよい。また、クリームや乳液等のエマルション剤型;口紅等のオイルゲル剤型;ファンデーション等のパウダー剤型;及びヘアスタイリング剤等の工アゾル剤型等であってもよい。
【0056】
[複合粒子の製造方法]
本開示の複合粒子の製造方法は、混合工程及び乾燥工程を有している。混合工程は、セルロース誘導体粒子及び表面処理化合物を、この表面処理化合物を溶解する溶媒中で撹拌混合して、セルロース誘導体粒子の表面に、表面処理化合物を付着させる工程である。この混合工程で使用される溶媒は、水及び/又は有機溶媒である。乾燥工程は、表面処理化合物が付着したセルロース誘導体粒子を固形分として採取した後、洗浄して乾燥させる工程である。
【0057】
この製造方法によれば、水及び/又は有機溶媒から選択される適正な溶媒中で、セルロース誘導体粒子と表面処理化合物とを混合することにより、粒子表面に略均一に表面処理化合物を付着させることができる。この粒子を乾燥させることにより、セルロース誘導体粒子の表面に、表面処理化合物からなる皮膜が形成される。
【0058】
水及び/又は有機溶媒から選択される溶媒としては、表面処理化合物を溶解することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、アミノアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、酢酸エチル等が挙げられる。2種以上の溶媒を併用してもよい。
【0059】
安全性及び後述する乾燥工程での除去が容易であるとの観点から、水及び/又はアルコール類が好ましく、水及び/又は水と混和しやすいアルコール類がより好ましく、水、ブタノール、オクタノールからなる群から選択される1種又は2種以上がさらに好ましい。
【0060】
本開示の製造方法に用いられる表面処理化合物としては、カチオン界面活性剤、脂肪酸石鹸及びカチオンポリマーからなる群から選択される1種又は2種以上が好ましい。カチオン界面活性剤、脂肪酸石鹸及びカチオンポリマーの具体例は、前述した通りである。塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ポリオクタニウム-61及びポリオクタニウム-67からなる群から選択される1種又は2種以上がより好ましい。
【0061】
本開示の製造方法において、表面処理化合物の添加量は特に限定されず、セルロース誘導体粒子の物性、表面処理化合物の種類等に応じて、適宜調整される。皮膜の形成が容易であるとの観点から、表面処理化合物の添加量は、セルロース誘導体粒子に対して、0.1重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。乾燥中の凝集が生じにくいとの観点から、表面処理化合物の添加量は20重量%以下が好ましく、5.0重量%以下がより好ましく、2.0重量%以下が特に好ましい。表面処理化合物の添加量は、0.1重量%以上20重量%以下であってよく、0.1重量%以上5.0重量%以下であってよく、0.1重量%以上2.0重量%以下であってよく、1.0重量%以上20重量%以下であってよく、1.0重量%以上5.0重量%以下であってよく、1.0重量%以上2.0重量%以下であってよい。2種以上の表面処理化合物が併用される場合、その合計添加量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0062】
混合工程において、セルロース誘導体粒子と表面処理化合物とを混合する方法としては特に限定されない。所定の比率で秤量したセルロース誘導体粒子と表面処理化合物とを同時に水及び/又は有機溶媒に投入してもよく、所定量の表面処理化合物を水及び/又は有機溶媒に溶解した溶液に、セルロース誘導体粒子を投入して混合してもよい。
【0063】
混合温度としては、表面処理化合物が溶解する温度であればよい。例えば、混合温度は50℃以下であってよく、40℃以下であってよく、30℃以下であってよい。省エネルギー及びコスト低減の観点から、室温での混合が好ましい。混合時間は、製造スケール、混合温度等により適宜調整されてよい。
【0064】
混合工程後、セルロース誘導体粒子を含む固形分を採取する方法は特に限定されず、ろ過、遠心分離等既知の方法が用いられてよい。前述した通り、採取されたセルロース誘導体粒子には、表面処理化合物が付着している。このセルロース誘導体粒子を乾燥して、溶媒を除去するとともに、表面処理化合物からなる皮膜を形成することにより、本開示の複合粒子が得られる。
【0065】
本開示の製造方法において、乾燥方法は特に限定されず、加熱乾燥、減圧乾燥、真空乾燥等既知の方法が用いられうる。乾燥効率が高いとの観点から、乾燥温度は室温以上が好ましく、50℃以上であってよく、60℃以上であってよい。表面処理化合物の熱劣化抑制の観点から、好ましい乾燥温度は120℃以下である。
【0066】
[セルロース誘導体粒子の製造方法]
セルロース誘導体粒子の製造方法は、特に限定されず、既知の方法を用いることができる。例えば、所望のセルロース誘導体と可塑剤とを混合して、可塑剤が含浸したセルロース誘導体を得る第一の工程、この可塑剤が含浸したセルロース誘導体と水溶性高分子とを混練して、可塑剤が含浸したセルロース誘導体を分散質とする分散体を得る第二の工程、及びこの分散体から水溶性高分子を除去してセルロース誘導体粒子を得る第三の工程を含む製造方法により、セルロース誘導体粒子が得られてもよい。この製造方法によれば、表面平滑度及び真球度が高い略球状の粒子が得られることから、本開示の複合粒子の触感がさらに向上する。
【0067】
第一の工程で使用する可塑剤としては、セルロース誘導体の溶融押出加工において可塑効果を有するものであれば特に限定はない。具体的には、セルロース誘導体粒子に含有される可塑剤として前述した可塑剤を、単独又は2種以上を組み合せて使用することができる。クエン酸アセチルトリエチル、トリアセチン及びジアセチンからなる群より選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0068】
可塑剤の配合量は、セルロース誘導体及び可塑剤の合計量100重量部に対して、0重量部を超え40重量部以下であってよく、2重量部以上40重量部以下であってよく、10重量部以上30重量部以下であってよく、15重量部以上20重量部以下であってよい。可塑剤の配合量がこの範囲であることにより、より高い真球度の粒子が得られうる。
【0069】
セルロース誘導体と可塑剤との混合は、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いて乾式又は湿式で行うことができる。ヘンシェルミキサー等の混合機を用いる場合、混合機内の温度は、セルロース誘導体が溶融しない温度、例えば、20℃以上200℃未満の範囲としてよい。
【0070】
セルロース誘導体と可塑剤との混合は、溶融混練によっておこなってもよい。溶融混練は、セルロース誘導体と可塑剤とを押出機で加熱混合することによりおこなうことができる。押出機の混練温度(シリンダー温度)は、200℃~230℃であってよい。この範囲の温度でも可塑化して均一な混練物を得ることができる。混練物はストランド状に押出し、ホットカットなどでペレット状の形状にすればよい。この場合のダイス温度としては220℃程度であってもよい。
【0071】
第二の工程で使用する水溶性高分子とは、25℃において、高分子1gを100gの水に溶解した際に、不溶分が50重量%未満の高分子をいう。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール及び熱可塑性デンプンが好ましく、ポリビニルアルコール及び熱可塑性デンプンがより好ましい。なお、熱可塑性デンプンは、公知の方法で得ることができる。具体的には、タピオカデンプンに可塑剤としてグリセリンを20%程度混合し、二軸押し出し機で混錬したものを利用することができる。
【0072】
水溶性高分子の配合量は、可塑剤が含浸したセルロース誘導体及び水溶性高分子の合計量100重量部に対し、55重量部以上99重量部以下であってよい。好ましくは60重量部以上90重量部以下であり、さらに好ましくは65重量部以上85重量部以下である。
【0073】
第二の工程において、可塑剤が含浸したセルロース誘導体と水溶性高分子との混練は、二軸押出機等の押出機でおこなうことができる。好ましい混練温度(シリンダー温度)は、200℃以上280℃以下である。二軸押出機等の押出機の先端に取り付けたダイスから分散体をひも状に押出した後、カットしてペレットにしてもよい。このときダイス温度は、220℃以上300℃以下であってよい。
【0074】
第二の工程で得られる分散体は、水溶性高分子を分散媒、可塑剤を含浸したセルロース誘導体を分散質とする分散体である。換言すれば、水溶性高分子を海成分、可塑剤を含浸したセルロース誘導体を島成分とする構成である。この分散体において、島成分を構成する混錬物は、セルロース誘導体及び可塑剤を含有し、主に球状である。
【0075】
第三の工程において、前述の分散体から水溶性高分子を除去することにより、セルロース誘導体粒子が得られる。分散体から水溶性高分子を除去する方法としては、水溶性高分子を溶解し当該粒子から除去することができれば、特に限定されない。例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;又はそれらの混合溶液等の溶媒を用いて、分散体中の水溶性高分子を溶解して除去する方法が挙げられる。具体的には、例えば、分散体と溶媒とを混合した後、ろ過等の固液分離等で、水溶性高分子が溶解した溶媒を分離することにより、分散体から水溶性高分子を除去する方法が挙げられる。分散体と溶媒との撹拌混合後にろ過する方法により、水溶性高分子を除去する場合、除去効率を高める目的で、撹拌混合とろ過とを、複数回繰り返してもよい。
【0076】
第三の工程において、可塑剤を、水溶性高分子とともに分散体から除去してもよく、除去しなくてもよい。従って、得られるセルロース誘導体粒子は可塑剤を含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0077】
分散体と溶媒との混合比率は、分散体及び溶媒の合計重量に対して、分散体が0.01重量%以上20重量%以下であってよく、2重量%以上15重量%以下であってよく、4重量%以上13重量%以下であってよい。分散体と溶媒との混合比率がこの範囲であることにより、効率的な洗浄が可能になり、洗浄後の固液分離が容易になる。
【0078】
分散体と溶媒との混合温度は、0℃以上200℃以下が好ましく、20℃以上110℃以下がより好ましく、40℃以上80℃以下がさらに好ましい。混合温度がこの範囲であることにより、水溶性高分子が効率的に除去されるとともに、加熱による粒子の変形や凝集が抑制される。分散体と溶媒との混合時間は、混合温度等に応じてく適宜調整される。
【0079】
[セルロース誘導体の製造方法]
セルロース誘導体をなすセルロース誘導体の製造方法は特に限定されず、既知の製造方法により製造できる。
【0080】
セルロース誘導体がセルロースエステルの場合、例えば、原料パルプ(セルロース)を活性化する工程;活性化されたセルロースをエステル化剤(アシル化剤)でアシル化する工程;アシル化反応の終了後、アシル化剤を失活させる工程;生成したセルロースアシレートを熟成(ケン化、加水分解)する工程を経て製造できる。また、活性化する工程の前に、原料パルプを、離解・解砕後、酢酸を散布混合する前処理工程を有してよい。熟成(ケン化、加水分解)する工程の後、沈澱分離、精製、安定化、乾燥する後処理工程を有してよい。
【0081】
セルロース誘導体がセルロースエーテルの場合、イソプロピルアルコール(IPA)や第3級ブタノール(TBA)等の低級脂肪族アルコール、水及び水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の混合液に、原料パルプ(セルロース)を浸漬して、セルロースエーテルの前駆体となるアルカリセルロースを得る工程;さらにエーテル化剤を添加して、スラリー化(沈澱化)する工程を経て製造できる。また、アルカリセルロースを得る工程の前に、原料パルプを、離解・解砕後、酢酸を散布混合する前処理工程を有してよい。スラリー化(沈澱化)する工程の後、沈澱分離、精製、安定化、乾燥する後処理工程を有してよい。
【実施例0082】
以下、実施例によって本開示の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本開示が限定的に解釈されるべきではない。
【0083】
[実施例1]
表面処理化合物として塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(三洋化成社製の商品名「カチオンDSV」)を純水に添加して溶解した後、セルロース誘導体粒子としてセルロースアセテート粒子(株式会社ダイセル製、総置換度=2.4、平均粒子径7.1μm)を、濃度5重量%となるように投入して、空気雰囲気下、室温で1時間撹拌した。塩化ジステアリルジメチルアンモニウムの添加量は、セルロースアセテート粒子に対して、1.5重量%であった。
【0084】
撹拌終了後、加圧ろ過をおこない、得られたろ物(固形分)を純水に投入して30分間撹拌することにより、固形分を洗浄した。同様にして、ろ過-洗浄を3回繰り返し、得られた固形分を、80℃で24時間、真空乾燥させることにより、実施例1の複合粒子を得た。得られた複合粒子中の表面化合物の含有率は、1.3重量%であった。
【0085】
[実施例2-28]
セルロース誘導体粒子及び表面処理化合物の種類及び添加量を、下表1-4に示されるものとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2-28の複合粒子を得た。唯、実施例7、14及び21では、表面処理化合物であるポリオクタニウム-61を、純水に替えて、1-ブタノール(富士フイルム和光純薬社製)に溶解した。実施例4の複合粒子の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)が、図1に示されている。
【0086】
[比較例1-4]
表面処理化合物を使用せず、セルロース誘導体粒子を下表4に示されるものとした以外は、実施例1と同様にして、比較例1-4の複合粒子を得た。
【0087】
[触感(なめらかさ)]
実施例及び比較例の触感について、専門パネル5名による官能評価をおこなった。各複合粒子に触れさせて、なめらかさ及びしっとり感の両方を総合的に5点満点として評価させた。5人の平均点を算出して、以下の基準により評価した。評価結果が、触感(なめらかさ)として下表1-4に示されている。
良い:5、やや良い:4、普通:3、やや悪い:2、悪い:1
【0088】
[触感(さらさら感)]
実施例及び比較例の触感について、専門パネル5名による官能評価をおこなった。各複合粒子に触れさせて、さらさら感を総合的に5点満点として評価させた。5人の平均点を算出して、以下の基準により評価した。評価結果が、触感(さらさら感)として下表1-4に示されている。
良い:5、やや良い:4、普通:3、やや悪い:2、悪い:1
【0089】
[水中浮遊度]
実施例及び比較例の複合粒子について、水中浮遊度を測定した。具体的には、試料1gを精秤し、水50mLに添加して、回転速度100rpm以上及び時間30秒以上の条件にて混合撹拌した。その後、30秒以上静置して、水に浮いた粒子を採取して乾燥した後、その重量を測定した。水と混合撹拌する前の粒子の重量を100として、水に浮いた粒子の乾燥後の重量の比率が水中浮遊度(%)として下表1-4に示されている。数値が大きいほど評価が高い。
【0090】
[イソドデカン中浮遊度]
実施例及び比較例の複合粒子について、イソドデカン中浮遊度を測定した。具体的には、試料1gを精秤し、イソドデカン50mLに添加して、回転速度100rpm以上及び時間30秒以上の条件にて混合撹拌した。その後、30秒以上静置して、イソドデカンに浮いた粒子を採取して乾燥した後、その重量を測定した。イソドデカンと混合撹拌する前の粒子の重量を100として、イソドデカンに浮いた粒子の乾燥後の重量の比率がイソドデカン中浮遊度(%)として下表1-4に示されている。数値が小さいほど評価が高い。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
表1-4に示された化合物の詳細は、以下の通りである。
セルロースアセテート粒子:ダイセル社製、総置換度2.4、平均粒子径7.1μm、真球度0.97、表面平滑度100%、重量平均分子量173,000
セルロースアセテートプロピオネート粒子:ダイセル社製、アセチル置換度0.18、プロピオニル置換度2.40、平均粒子径9.5μm、真球度0.95、表面平滑度100%、重量平均分子量152,000
セルロースアセテートブチレート粒子:ダイセル社製、アセチル置換度2.130、ブチリル置換度0.71、平均粒子径8.2μm、真球度0.96、表面平滑度100%、重量平均分子量139,000
エチルセルロース粒子:ダイセル社製、総置換度2.5、平均粒子径7.7μm、真球度0.97、表面平滑度100%、重量平均分子量182,000
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム:三洋化成社製の商品名「カチオンDSV」
塩化アルキルトリメチルアンモニウム:日光ケミカル社製の商品名「CA-2580」
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム:日光ケミカル社製の商品名「CA-2450」
ステアリン酸K:日油社製のステアリン酸カリウム、商品名「ノンサールSK-1」
ステアリン酸Na:日油社製のステアリン酸ナトリウム、商品名「ノンサールSN-1」
ポリオクタニウム-67:ダウ社製のカチオンポリマー、商品名「SOFTCAT polymer SL-30」
ポリオクタニウム-61:日油社製のカチオンポリマー、商品名「Lipidure-S」
【0096】
表1-4に示されるように、実施例の複合粒子では、比較例の複合粒子に比べて触感の評価が高い。また、実施例の複合粒子は、全てが水に浮き、かつ、イソドデカン中で沈降したことから、疎水性溶剤との親和性に優れることが分かる。この評価結果から、本開示の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明された複合粒子は、種々の化粧品組成物の製造に適用されうる。
図1
図2
図3