(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157987
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】放送システム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/218 20110101AFI20231019BHJP
H04H 20/12 20080101ALI20231019BHJP
H04H 60/04 20080101ALI20231019BHJP
H04H 60/06 20080101ALI20231019BHJP
H04H 60/29 20080101ALI20231019BHJP
【FI】
H04N21/218
H04H20/12
H04H60/04
H04H60/06
H04H60/29
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135740
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2019205033の分割
【原出願日】2019-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信行
(57)【要約】
【課題】 低コストで効率的に業務を実施できるようにすること。
【解決手段】 実施形態の放送システムは、センターと各放送局がIP技術基盤で接続される放送システムであって、前記センターに配置され、前記各放送局の任意の放送サービスまたは放送サービスのバックアップがダイナミックにアサインされる共通マスター設備と、各放送局にそれぞれ配置され、前記センターの共通マスター設備にアサインした放送サービスまたは放送サービスのバックアップを用いて、主映像信号を送出する放送局マスター設備と、を具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターと各放送局がIP技術基盤で接続される放送システムであって、
前記センターに配置され、前記各放送局の任意の放送サービスまたは放送サービスのバックアップがダイナミックにアサインされる共通マスター設備と、
各放送局にそれぞれ配置され、前記センターの共通マスター設備にアサインした放送サービスまたは放送サービスのバックアップを用いて、主映像信号を送出する放送局マスター設備と、
を具備する放送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各放送局では、1つのマスターシステムを配置する構成(即ち、1局1マスターシステムの構成)が採られている。マスターシステムにおいては、設備を2重化または3重化する冗長構成が採られている。このような構成のもと、各放送局は、特に同じ系列内であれば、CM運用を除いてほぼ同じ業務を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、4Kやネット配信などのサービスが多様化し、インターネット広告が台頭していく中で、上述したような業務形態を続けていけば、これまでの広告収入モデルではサービスの多様化やそれに伴う設備コストの増大に対応しきれなくなり、ビジネスとして立ち行かなくなる可能性がある。
【0005】
発明が解決しようとする課題は、低コストで効率的に業務を実施することができる放送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の放送システムは、センターと各放送局がIP技術基盤で接続される放送システムであって、前記センターに配置され、前記各放送局の任意の放送サービスまたは放送サービスのバックアップがダイナミックにアサインされる共通マスター設備と、各放送局にそれぞれ配置され、前記センターの共通マスター設備にアサインした放送サービスまたは放送サービスのバックアップを用いて、主映像信号を送出する放送局マスター設備と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る放送システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1中に示したセンター1および放送局A等の内部構成の一例を詳細に示す図である。
【
図3】
図3は、ある放送局の内部における要部構成を示す図である。
【
図4】
図4は、同実施形態のダイナミックアサイン方式による基本的な動作の例を示す図である。
【
図5】
図5は、同実施形態の非常時の動作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0009】
以下に説明する実施形態では、例えば規格中のSMPTE ST2110(IPネットワーク上で通信するための幾つかの規格を発展的にまとめた標準規格)および仮想化・クラウドコンピューティングを利用することで、これまでの各放送局における業務の運用の独立性を担保しつつ、設備の多様性、設備の低コスト、業務・運用の効率化等を実現する。
【0010】
例えば、設備を複数局で共有し、冗長方式を刷新することで、設備の低コスト化を実現する。また、放送サービスをダイナミックにアサインできる方式(ダイナミックアサイン方式)を採用し、必要なときに必要なサービスを提供できる仕組みを構築することで、設備の多様性を実現する。また、複数局をシステム化し、重複した業務を集約することで、業務・運用の効率化を実現する。また、障害発生時の信号伝送経路を構築することで、BPC(Business Continuity Plan)対応(例えば震災した局の業務のリカバリー等)を可能にする。
【0011】
図1は、実施形態に係る放送システムの概略構成を示す図である。
【0012】
図1に示される放送システムは、複数の放送局(エッジ)A,B,Cと1つのセンター1とを含む。センター1は、放送局A,B,Cとは異なる別の場所に設けられ、WAN(Wide Area Network)等を通じて、放送局A,B,Cに接続される。放送局A,B,Cは、同じ系列に属する放送局であり、例えば東京に設けられたキー局のほか、各地に設けられた地方局を含む。
【0013】
放送局A,B,Cは、それぞれ、一般的なマスターシステムの冗長構成とは異なり、映像本線の部分を担うマスター設備(但し、符号化多重化設備を除く)が2重化されておらず、1系統のみ設けられる構成である。
【0014】
具体的には、各放送局は、符号化多重化設備については2重化されており、1系(現用系)の符号化多重化設備(ENC/MUX#1)31および2系(予備系)の符号化多重化設備(ENC/MUX#1)32が配置されるが、マスター設備については、1系(現用系)のマスター設備(マスター#1)21のみが配置される構成であり、2系(予備系)のマスター設備(マスター#2)に相当するものは配置されない。但し、2系(予備系)のマスター設備(マスター#2)に相当する機能の少なくとも一部は、センター1側に配置される。
【0015】
センター1には、共通マスター設備11が備えられる。共通マスター設備11は、各放送局の2系のマスター設備(マスター#2)に相当する機能の少なくとも一部を担保する。
【0016】
図2に、
図1中に示したセンター1および放送局A等の内部構成の一例を詳細に示す。
【0017】
この
図2の構成例では、例えば次のような工夫が施される。
【0018】
(1)一般に、各放送局のマスター設備は2重化または3重化の冗長構成をとるが、近年、マスター設備の機器類の信頼性が高くなり、不具合が殆ど生じないことを鑑み、本実施形態では、センター1と各放送局とをIP技術基盤で接続した上で、映像本線の部分を担う1系のマスター設備21のみ(1系統のみ)を各放送局に配置するとともに、バックアップ系をセンター1側に配置する。
【0019】
(2)センター1では、単純に3局分のマスター設備21の冗長化構成を用意するのではなく、放送の同時性を踏まえて、各放送局の主要なサービスを含め、自由に任意のサービスをまたはサービスのバックアップをIP技術基盤でアサインできる系統を用意し、必要なときに必要なだけサービス等をダイナミックにアサインできる構成とすることにより、効率的な冗長化を実現する。
【0020】
(3)各放送局側のマスター設備21内においても、主要なサービスを含めて自由に任意のサービスをまたはサービスのバックアップをIP技術基盤でアサインできる系統を用意し、必要なときに必要なだけサービス等をダイナミックにアサインできる構成とすることで、センター1の障害時にもローカルで冗長サービスを組めるようにする。
【0021】
(4)被災した放送局に対しては、クラウドサービス等により、その被災局のサポートを行えるようにする。
【0022】
図2の例では、放送局A,B,Cの各々に、前述したマスター設備21や2重化された符号化多重化設備31,32が設けられるほか、APC(自動番組送出制御設備)51、RTP(リアルタイムプロセッサ)52、2重化されたIPSW(IPスイッチャ)53、アラーム設備54等が設けられる。
【0023】
また、放送局A,B,Cは、それぞれ、インターネット上のクラウドA1,B1,C1から所定のクラウドサービスの提供を受けることができ、例えばクラウドA1,B1,C1上でそれぞれ管理される上位システム(例えば、EDPS(Equipment Data Processing System)の機能とDS(Data Server)の機能を含むシステム)を実現する機能から供給される放送局A,B,Cの放送進行データやCM・番組のデータを得ることができる。さらに、放送局A,B,Cは、それぞれ、中継車A2,B2,C2を所有し、各中継車には、SAT通信設備55および簡易符号化多重化設備56が備えられる。
【0024】
APC51は、例えば当該放送局の対応するクラウド上に設けられる上位システムに相当する機能から供給される放送進行データ等を基に、放送に係る各種の設備(マスター設備21、ISPW53、符号化多重化設備31,32等)を制御し、自動で放送を行うための設備である。なお、このAPC51に相当する機能も対応するクラウド上に設けられていてもよい。
RTP52は、APC51から供給されるデータを一時的に記憶しておくものである。
【0025】
マスター設備21は、ビデオサーバ21aにより、少なくとも当該放送局の主映像の信号(例えばサービス「SV1」に対応する信号)を送出する。
図2の構成例では、ビデオサーバ21aは、当該放送局のクラウド等から提供されるCM・番組のデータ等を記憶するストレージ部および4サービス分の信号をマルチキャストで送出する4つのポートを有する。
【0026】
これら4つのポートは、主映像のサービス「SV1」が割り当てられるポートを含むほか、当該系列の放送局に特有なサービス「特SV」が割り当てられるポートや、任意のサービスの割り当てが可能な2つの予備ポートAUXを含む。但し、これは一例であり、この例に限定されるものではない。例えば、サービス「特SV」は必ずしも必要とされるものではない。また、ポートの数は4つに限らない。
【0027】
例えば、1つ目の予備ポートAUXには、必要に応じて、主映像のサービス「SV1」のバックアップ「SV1’」が割り当てられるようにしてもよい。また、2つ目の予備ポートAUXには、必要に応じて、副映像のサービス「SV2」または特定の放送局発の全国放送サービス「H1」が必要時に割り当てられるようにしてもよい。但し、これらの例に限定されるものではない。
【0028】
IPSW53は、IP(Internet Protocol)に準拠するデータ伝送のパス切替え処理もしくはアサイン処理を行うスイッチャであり、例えば、当該放送局のマスター設備21から送出される信号と、共通マスター設備11から当該放送局に対して送出される信号とを受け、任意の信号を選択して2つの符号化多重化設備31,32のいずれかへ送出する。当該IPSW53は、必要なときに必要なだけ所望のサービスをダイナミックにアサインすることを可能にする。
【0029】
符号化多重化設備31,32は、当該放送局のマスター設備21から送出されIPSW53を通じて送られてくる信号もしくはセンター1の共通マスター設備11から当該放送局に対して送出されIPSW53を通じて送られてくる信号の符号化及び多重化を行うものである。符号化多重化設備31,32は、IPSW53を通じて送られてくる信号を、IPGW(IPゲートウェイ)によりサービス「SV1」の信号、サービス「SV2」の信号、サービス「1Seg」(ワンセグ放送に対応するもの)に振り分け、それぞれを対応する符号化装置ENC(SV1)、ENC(SV2)、ENC(1Seg)により符号化し、多重化装置MUXにより多重化した上で、送信所へ送る。
【0030】
アラーム設備54は、当該放送局内の各機器が接続されるLAN(Local Area Network)等のネットワーク上で各機器の進行状況を監視し、障害が発生した場合に所定の機器類もしくは対応するクラウド上への警報通知を行い、IPSW53もしくは符号化多重化設備31,32等によるパス切替え処理を促す。
【0031】
各放送局に配置されるマスター設備21とIPSW53との間の信号伝送、センター1に配置される共通マスター設備11とIPSW43とIPSW53との間の信号伝送、及び、IPSW53と符号化多重化設備31,32との間の信号伝送は、IPに準拠するものである。
【0032】
一方、センター1には、共通マスター設備11が設けられるほか、APC(自動番組送出制御設備)41、RTP(リアルタイムプロセッサ)42、2重化されたIPSW(IPスイッチャ)43等が設けられる。
【0033】
また、センター1は、クラウド10から所定のクラウドサービスの提供を受けることができ、例えばクラウド10上で管理される上位システムに相当する機能から、クラウドA1,B1,C1上でそれぞれ管理される前述した放送局A,B,Cの放送進行データやCM・番組のデータと同一の情報を得ることができる。すなわち、センター1は、放送局A,B,Cがそれぞれ放送する情報と同一の情報をすべてクラウド10から得ることができる。さらに、センター1は、IPGW(IPゲートウェイ)44およびSAT通信設備45を有する。
【0034】
APC41は、例えばクラウド10上にある上位システムに相当する機能から供給される放送局A,B,Cの放送進行データ等を基に、各種の設備(共通マスター設備11、ISPW53等)を制御し、自動で放送を行うための設備である。なお、このAPC41に相当する機能もクラウド10上に設けられていてもよい。
【0035】
共通マスター設備11は、ビデオサーバ11aにより、少なくとも各放送局のそれぞれの主映像の信号(サービス「SV1」に対応する信号)と同一の信号をそれぞれバックアップ(「SV1_A」,「SV1_B」,「SV1_C」)としてそれぞれを放送局A,B,Cに対して送出する。
図2の構成例では、ビデオサーバ11aは、クラウド10等から提供される各放送局のCM・番組のデータ等を記憶するストレージ部および4サービス分の信号をマルチキャストで送出する4つのポートを有する。
【0036】
これら4つのポートは、主映像のサービス「SV1」のバックアップ「SV1_A」,「SV1_B」,「SV1_C」が割り当てられるポートを含むほか、任意のサービスの割り当てが可能な予備ポートAUXを含む。但し、これは一例であり、この例に限定されるものではない。また、ポートの数は4つに限らない。
【0037】
また、共通マスター設備11には、さらにビデオサーバ11bが備えられてもよい。ビデオサーバ11bは、任意のデータを記憶するストレージ部および4サービス分の信号をマルチキャストで送出する4つのポートを有する。これら4つのポートは、空きポートとして任意のサービスの割り当てが可能な4つの予備ポートAUXからなる。但し、これは一例であり、この例に限定されるものではない。また、ポートの数は4つに限らない。
【0038】
また、共通マスター設備11は、各放送局に設けられる素材サーバに格納されているサブ映像のサービスに対応する放送素材をIPSW43経由で得ることができる。これにより、例えば、ある放送局の野球中継などの放送において、共通マスター設備11の予備のポートから、違う角度の映像を流すようなことも可能である。例えば、放送局B,Cの素材サーバの容量を8TBとし、放送局Aの素材サーバだけは放送局A,B,Cの3局分の素材を備えて容量を24TBとすれば、共通マスター設備11は、放送局Aの素材サーバを参照するだけで、放送局A,B,Cのいずれの素材をも得ることができる。但し、この例に限定されるものではない。例えば放送局A,B,Cの素材サーバの容量をそれぞれ8TBとし、共通マスター設備11が放送局A,B,Cのそれぞれの素材サーバを参照する形態としても構わない。
【0039】
IPSW43は、IPに準拠するデータ伝送のパス切替え処理を行うスイッチャであり、例えば、共通マスター設備11から送出される個々の信号をそれぞれ選択的に放送局A,B,CもしくはIPGW44側へ送出したり、あるいは放送局A,B,Cから送られてくる信号を共通マスター設備11側へ送出したりする。当該IPSW43は、必要なときに必要なだけ所望のサービスをダイナミックにアサインすることを可能にする。
【0040】
IPGW44は、IPSW43から中継車A2,B2,C2のいずれかに向けられた信号を受けた場合、その信号をSAT通信装置45に渡す。SAT通信装置45は、IPGW44から渡された信号を、衛星を介して目的の中継車のSAT通信装置55へ送る。SAT通信装置55は、衛星から信号を受けると、その信号を簡易符号化多重化設備56に渡す。簡易符号化多重化設備56は、SAT通信装置55から渡された信号について、符号化多重化設備31,32と同様な符号化及び多重化を行った後、信号を近隣の送信所へ送る。
【0041】
なお、上記構成では、場合によっては、各放送局を無人化し、各放送局の人材をセンター1に集めて、各放送局が共同運行を行い、殆どの職員がセンター1にて状態監視等を中心とする業務を行う形態とすることも可能である。これにより、設備の削減に加え、人件費の削減や、働き方改革の改善に寄与することができる。
【0042】
図3は、ある放送局(例えば放送局C)の内部における要部構成を示す図である。
【0043】
図3に示されるように、LAN等のネットワーク上には、前述した1つのマスター設備21、2重化されたISPW53、2重化された符号化多重化設備31,32、アラーム設備54が接続されるとともに、各機器の制御を司るCPU60などが接続され、クラウドC1への接続も可能となっている。
【0044】
なお、この
図3の構成は、適宜、
図2に示した構成と一部異なるように構成してもよい。
【0045】
例えば、マスター設備21は、前述したビデオサーバ21aのほか、例えばサブ映像などの素材を送出する素材送出機器21bが設けられていたり、別のIP回線センター21cからの映像を送出できる構成になっていたり、あるいは外部のネットもしくはスタジオからの映像を取り込んで送出できる構成になっていたりしてもよい。
【0046】
また、2重化されたISPW53は、1系のIPSW#1と2系のIPSW#2とからなり、サービス「SV1」または「1Seg」に対応する映像信号を送出するビデオサーバ53a、サービス「SV2」に対応する映像信号を送出するビデオサーバ53b、及び、サービス「H1」に対応する映像信号を送出するビデオサーバ53cを備えていてもよい。
【0047】
また、2重化された符号化多重化設備31,32は、HD信号、1Seg信号、SD信号をそれぞれ符号化する符号化装置HD_ENC、1Seg_ENC、SD_ENC、これらの信号を多重化するとともに、必要に応じて、適宜、SI(Service Information)送出信号、データ放送信号、緊急地震速報信号なども多重化する多重化装置MUX、多重化した信号にスクランブルをかけて送出するスクランブラSCRを備えていてもよい。
【0048】
ビデオサーバ21a、素材送出機器21b、ネット/スタジオ等の部分から後段に位置するIPGWまでの信号伝送は、例えばTS(Transport Stream)に準拠するものとする。また、そのIPGWから後段に位置するISPW53(IPSW#1、IPSW#2)までの信号伝送や、ISPW53(IPSW#1、IPSW#2)からビデオサーバ53a,53b,53cまでの信号伝送、ビデオサーバ53a,53b,53cからISPW53(IPSW#1、IPSW#2)までの信号伝送、ISPW53(IPSW#1、IPSW#2)から後段に位置するIPSWまでの信号伝送は、例えばMoIP(Mobile communication over Internet Protocol)に準拠するものとする。また、そのIPGWから後段の信号伝送は、SDI(Serial Digital Interface)及びTSに準拠するものとする。
【0049】
次に、
図4のフローチャートを参照して、本実施形態のダイナミックアサイン方式による基本的な動作の例について説明する。
【0050】
まず、各放送局にマスター設備21を1系統だけ配置し、その予備系(バックアップ系)をそれぞれ集約する共通マスター設備11をセンター1に配置した状態で、各種のサービス(バックアップを含む)にそれぞれ対応する信号をマルチキャストして放送を行う(ステップS1)。
【0051】
ここで、いずれかの放送局のマスター設備21もしくは共通マスター設備11に対し、サービスの変更要求(サービスの追加変更等またはバックアップの要求)がなければ(ステップS2のNO)、ステップS1に記載の放送をそのまま続け、一方、サービスの追加変更等またはバックアップの要求があれば(ステップS2のYES)、当該要求に応じて、IPSW53等を通じてそのサービスのアサインの変更等を行った上で、放送を引き続き行う(ステップS3)。
【0052】
次に、
図5のフローチャートを参照して、非常時の動作の例について説明する。
【0053】
なお、マスター設備21内のサービス「SV1」に対応するポートに障害が発生した場合は、予備ポートAUXに同じ内容のサービス「SV1’」がアサインされていれば、その障害に対処することが可能である。以下では、これ以外の非常時の動作について説明する。
【0054】
前述した動作の例と同様に、まず、各放送局にマスター設備21を1系統だけ配置し、その予備系(バックアップ系)をそれぞれ集約する共通マスター設備11をセンター1に配置した状態で、各種のサービス(バックアップを含む)にそれぞれ対応する信号をマルチキャストして放送を行う(ステップS11)。
【0055】
ここで何らかの障害が発生したものとする。
【0056】
例えば、ある放送局のマスター設備21(ビデオサーバ21aなど)に障害が発生した場合(ステップS12のYES)、アラーム設備54によりその障害が検知され、警報通知が行われる。このとき、共通マスター設備11は、障害の発生したマスター設備21がマルチキャストしていた全てのサービスと同じサービスを、ビデオサーバ11a,11bのいずれかのポートから送出している状態にあるものとする。
【0057】
そのような障害が発生した場合、IPSW53によりデータ伝送のパス切替え処理が瞬時に行われ、センター1側の共通マスター設備11が供給するバックアップの信号を用いて、当該放送局からの放送が続けられる(ステップS13)。
【0058】
そのような障害ではなく(ステップS12のNO)、ある放送局全体に障害が発生した場合(ステップS14のYES)、センター1側の共通マスター設備11が供給するバックアップの信号を用いて、障害の発生した放送局を経由せずに、クラウドサービスや衛星・中継車等を活用し、例えば、IPSW43から、IPGW44、SAT通信装置45、衛星、目的の中継車のSAT通信装置55、簡易符号化多重化設備56を経由して、放送が続けられる(ステップS15)。
【0059】
また、上述したような障害ではなく(ステップS14のNO)、センター1に障害が発生した場合(ステップS16のYES)、各放送局はセンター1からのバックアップに頼らずに自局だけで冗長性を確保する必要があるため、当該冗長性が確保されていない状態にある放送局においては、マスター設備21内の予備ポートAUX等に必要なサービスをアサインして冗長性を維持する(ステップS17)。
【0060】
また、上述したような障害ではなく(ステップS16のNO)、それ以外の小さな障害であれば、適宜必要な措置をとる。
【0061】
本実施形態によれば、設備を複数局で共有し、冗長方式を刷新することで、設備の低コスト化を実現することができる。また、放送サービスをダイナミックにアサインできる方式(ダイナミックアサイン方式)を採用し、必要なときに必要なサービスを提供できる仕組みを構築することで、設備の多様性を実現することができる。また、複数局をシステム化し、重複した業務を集約することで、業務・運用の効率化を実現することができる。また、障害発生時の信号伝送経路を構築することで、BPC対応(例えば震災した局の業務のリカバリー等)を行うことができる。
【0062】
以上詳述したように実施形態によれば、低コストで効率的に業務を実施することができる放送システムおよび放送信号送出方法を提供できる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…センター、A,B,C…放送局、A1,B1,C1…クラウド、A2,B2,C2…移動局、10…クラウド、21…マスター設備、21a…ビデオサーバ、21b…素材送出機器、21c…IP回線センター、31,32…符号化多重化設備、41…APC、42…RTP、43…IPSW、44…IPGW、45…SAT通信設備、51…APC、52…RTP、53…IPSW、54…アラーム設備、55…SAT通信設備、56…簡易符号化多重化設備。