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特開2023-1580発光分析装置及び発光分析装置の感度調整方法
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  • 特開-発光分析装置及び発光分析装置の感度調整方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001580
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】発光分析装置及び発光分析装置の感度調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/76 20060101AFI20221226BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
G01N21/76
C12M1/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102391
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】八幡 悟史
(72)【発明者】
【氏名】小田 侑
【テーマコード(参考)】
2G054
4B029
【Fターム(参考)】
2G054AA02
2G054CA20
2G054CE02
2G054CE10
2G054EA02
2G054FA12
2G054FA23
2G054FA33
2G054FA38
2G054FA44
2G054FB03
2G054GB10
2G054JA01
2G054JA02
2G054JA04
2G054JA05
2G054JA06
2G054JA08
2G054JA09
2G054JA10
4B029AA07
4B029BB16
4B029FA12
(57)【要約】
【課題】光検出器の感度変化をコストをかけずに正確に判断でき、かつ装置の小型化も可能な発光分析装置とその感度調整方法を提供する。
【解決手段】試料液と前記試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬を含む測定液4からの発光量と検量線に基づき、試料液中の測定対象成分濃度を求める発光分析装置であって、測定液4からの光を検出する光検出器20と、光検出器20で検出した発光量が入力される演算装置30とを備え、演算装置30は、測定液4における試料液として測定対象成分を含まないブランク液を用いた場合に光検出器20で検出した発光量を、検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量と対比して、光検出器20の感度を確認することを特徴とする、発光分析装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液と前記試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬を含む測定液からの発光量と、前記発光試薬の検量線に基づき、前記試料液中の測定対象成分濃度を求める発光分析装置であって、
前記測定液からの光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出した発光量が入力される演算装置とを備え、
前記演算装置は、前記測定液における前記試料液として前記測定対象成分を含まないブランク液を用いた場合に前記光検出器で検出した発光量を、前記検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量と対比して、前記光検出器の感度を確認することを特徴とする、発光分析装置。
【請求項2】
前記検量線が、前記発光試薬のロット毎に定められた検量線である、請求項1に記載の発光分析装置。
【請求項3】
試料液と前記試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬と発光物質を含む測定液からの発光量と、前記発光試薬及び前記発光物質の検量線により、前記試料液中の測定対象成分濃度を求める発光分析装置であって、
前記測定液からの光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出した発光量が入力される演算装置とを備え、
前記演算装置は、前記測定液における前記試料液として前記測定対象成分を含まないブランク液を用いた場合に前記光検出器で検出した発光量を、前記検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量と対比して、前記光検出器の感度変化を確認することを特徴とする、発光分析装置。
【請求項4】
前記検量線が、前記発光試薬及び前記発光物質のロット毎に定められた検量線である、請求項3に記載の発光分析装置。
【請求項5】
前記光検出器が光電子増倍管である、請求項1~4のいずれか一項に記載の発光分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光分析装置の感度調整方法であって、前記演算装置が、前記光検出器の感度が所定の許容範囲を超えて変動したと判断した際に、前記光検出器に印加する電圧を変更することにより、前記光検出器の感度を調整することを特徴とする、発光分析装置の感度調整方法。
【請求項7】
前記発光試薬として、生物発光現象で発光する試薬を用いる、請求項6に記載の発光分析装置の感度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光分析装置及び発光分析装置の感度調整方法に関する。さらに詳しくは、生物発光法や化学発光法による発光分析に適した発光分析装置とその感度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物発光法や化学発光法は、試料液中の微量な物質の定量を行うことが可能であるため、医学、生化学、臨床検査、農学、食品関係等の様々な分野で利用されている。
例えば特許文献1には、エンドトキシンを高感度で検出する方法として、エンドトキシンによって活性化した試薬により合成基質から発光基質を遊離させ、遊離した発光基質を発光させる生物発光法が開示されている。
【0003】
発光分析に使用する発光試薬、特に生物発光法による発光分析に使用する発光試薬は、生物由来の試薬を使用することも多く、ロット毎に感度が異なる傾向にある。そのため、発光試薬のロット毎に、測定対象成分と発光量との関係を示す検量線を求めることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/063840号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発光分析装置に使用する光検出器については、経時により感度が変化し、発光量を正確に測定できない場合がある。
そこで、装置内に基準となる光源を備え、当該光源からの発光量を光検出器で検出することにより、光検出器の感度変化を確認し、測定した発光量を補正することが考えられる。
【0006】
しかしながら、その場合、装置内に基準となる光源を設けなればならないので、コスト高になると共に、光源用のスペースを設けなければならないので装置の小型化が難しい。さらに、基準となる光源自体の発光量が経時変化してしまった場合には、光検出器の感度について正確な判断を行うことができない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、光検出器の感度変化をコストをかけずに正確に判断でき、かつ装置の小型化も可能な発光分析装置とその感度調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]試料液と前記試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬を含む測定液からの発光量と、前記発光試薬の検量線に基づき、前記試料液中の測定対象成分濃度を求める発光分析装置であって、
前記測定液からの光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出した発光量が入力される演算装置とを備え、
前記演算装置は、前記測定液における前記試料液として前記測定対象成分を含まないブランク液を用いた場合に前記光検出器で検出した発光量を、前記検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量と対比して、前記光検出器の感度を確認することを特徴とする、発光分析装置。
[2]前記検量線が、前記発光試薬のロット毎に定められた検量線である、[1]に記載の発光分析装置。
[3]試料液と前記試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬と発光物質を含む測定液からの発光量と、前記発光試薬及び前記発光物質の検量線により、前記試料液中の測定対象成分濃度を求める発光分析装置であって、
前記測定液からの光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出した発光量が入力される演算装置とを備え、
前記演算装置は、前記測定液における前記試料液として前記測定対象成分を含まないブランク液を用いた場合に前記光検出器で検出した発光量を、前記検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量と対比して、前記光検出器の感度変化を確認することを特徴とする、発光分析装置。
[4]前記検量線が、前記発光試薬及び前記発光物質のロット毎に定められた検量線である、[3]に記載の発光分析装置。
[5]前記光検出器が光電子増倍管である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の発光分析装置。
[6][5]に記載の発光分析装置の感度調整方法であって、前記演算装置が、前記光検出器の感度が所定の許容範囲を超えて変動したと判断した際に、前記光検出器に印加する電圧を変更することにより、前記光検出器の感度を調整することを特徴とする、発光分析装置の感度調整方法。
[7]前記発光試薬として、生物発光現象で発光する試薬を用いる、[6]に記載の発光分析装置の感度調整方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発光分析装置とその感度調整方法によれば、光検出器の感度変化をコストをかけずに正確に判断でき、かつ装置の小型化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る発光分析装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る発光分析装置である。本実施形態の発光分析装置は、測定容器1を格納可能な測定室10と測定室10に収容された測定容器1内からの光を検出する光検出器20と光検出器20で検出した発光量が入力される演算装置30とを備えている。
【0011】
測定室10は、上端が開口部11aとされた有底筒状の測定室本体11と、開口部11aを開閉可能に覆う扉12とで構成されている。
測定室本体11は、側面に設けられた光透過性の検出窓11bの部分以外は遮光性とされている。また扉12も遮光性とされている。
【0012】
扉12を開状態(図1において、破線で示した扉12の状態)とした際には、開口部11aから測定室本体11内に測定容器1を出し入れできるようになっている。また、扉12を閉状態(図1において、実線で示した扉12の状態)とした際、測定室10は、測定室10内部への外光の侵入を遮断できるようになっている。
【0013】
光検出器20としては、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオードなどを適宜用いることができる。
本実施形態では、光検出器20は、扉12が閉状態のときのみ、光を検出するようになっている。例えば光検出器20が光電子増倍管の場合、扉12が閉状態のときのみ光検出器20に電圧がかかるようになっている。
【0014】
扉12が閉状態のときのみ光検出器20が光を検出するようにする方法に特に限定はないが、例えば、扉12自体をスイッチとし、測定室本体11の開口部11a周縁に扉12の先端が接触することにより、光検出器20に電圧を印加する回路を閉じるようにする方法が挙げられる。また、測定室本体11の開口部11a周縁に扉12の先端が接触したことを感知する接触センサ等を用いてもよい。
【0015】
測定室10に収容される測定容器1は、上端が開口する有底筒状の容器本体2と容器本体2の上端を液密に閉塞する蓋3とで構成されている。
容器本体2は、少なくとも光検出器20が検出すべき光の波長領域において、十分に光を透過するよう、ガラス等の透明素材で形成されている。
【0016】
第1実施形態において、測定容器1に収容される測定液4は、試料液及び試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬を含んでいる。
本発明において、発光試薬は、測定対象成分の濃度に応じた発光を生じさせるために必要な試薬又は試薬群全体を意味し、通常複数の試薬で構成された試薬群が発光試薬に該当する。
【0017】
例えば、測定対象成分がエンドトキシン、βグルカン等の微生物夾雑物であり、生物発光現象を利用して分析する場合、微生物夾雑物によって活性化する試薬、微生物夾雑物によって活性化した活性化試薬により発光基質を遊離させる発光合成基質、遊離した発光基質を発光させる発光酵素、及び発光反応に必要な他の化合物を含む発光試薬を使用する。
【0018】
以下、測定対象成分がエンドトキシンである場合の発光試薬について詳述する。
エンドトキシンによって活性化する試薬としては、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含む試薬が好ましく、C因子に加えて、活性型C因子により活性化されるB因子、および活性型B因子により活性化されて凝固酵素を生成する前凝固酵素を含有する試薬がより好ましい。C因子、B因子、および前凝固酵素を含有する試薬としては、カブトガニ血球抽出成分(ライセート試薬)を好適に使用できる。
【0019】
発光合成基質としては、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質を使用できる。測定対象成分がエンドトキシンである場合の発光合成基質としては、活性型C因子、活性型B因子、および凝固酵素の少なくともいずれか1種の作用(プロテアーゼ活性)により、発光基質とペプチドとの結合が切断される構造を有するものを使用できる。
【0020】
発光基質としては、アミノルシフェリンが好適に使用できる。発光基質と結合するペプチドとしては、該ペプチドのC末端におけるアミノルシフェリンとのアミド結合が、活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素の少なくともいずれか1種のプロテアーゼ活性により切断されるアミノ酸配列からなるものであればよい。
【0021】
発光酵素は、発光合成基質から遊離される発光基質の生物発光に対して触媒として機能し、光を発生させる酵素である。発光基質がアミノルシフェリンである場合の発光酵素はルシフェラーゼであり、発光反応に必要な他の化合物は、ATPおよび2価金属イオンである。
なお、試料液が塩分を含む場合、発光試薬は、塩分濃度に起因する誤差を解消するために、さらにNaClを含んでいてもよい。
【0022】
発光試薬は、測定容器1に試料液を注入する前に、予め測定容器1内に収容されていることが好ましい。例えば、容器本体2の底部に凍結乾燥状態で発光試薬を付着させておくことができる。
発光試薬が、予め測定容器1内に収容されていれば、測定容器1に試料液を注入するだけで本実施形態の発光分析装置による分析に供することができる。
【0023】
測定液4における試料液として、測定対象成分濃度が不明な未知試料を用いた場合、演算装置30は、光検出器20で検出した発光量に基づき、試料液中の測定対象成分濃度を求める。
具体的には、その測定液4を収容した測定容器1を測定室10に格納した際に光検出器20で検出した発光量を、予め記憶した検量線と照らし合わせることにより、試料液中の測定対象成分の濃度を求める。
【0024】
演算装置30には、予め発光量と測定対象成分濃度との関係を示す検量線が記憶されている。この検量線は発光試薬のロット毎に定められており、新たなロットの発光試薬を用いる場合は、メーカー等が提供する検量線の情報が入力されることにより更新される。
求めた測定対象成分の濃度は、本実施形態の発光分析装置に内蔵された又は別体とされた表示装置に表示されると共に、内蔵された又は別体とされたプリンターや、外部コンピュータに出力できるようになっていることが好ましい。
【0025】
演算装置30は、測定容器1が測定室10に格納されたと判断した場合に、上記試料液中の測定対象成分濃度を求める作業を行うことが好ましい。
これにより、測定容器1を測定室10に格納するだけで自動的に演算装置30に試料液中の測定対象成分濃度を求める作業を開始させることができる。
【0026】
演算装置30は、例えば、扉12が開状態となり、次いで閉状態となった際に、光検出器20が発光試薬自体のバックグラウンド発光を検出できるか否かにより測定容器1が測定室10に格納されたか否かを判断することができる。
このバックグラウンド発光を検出できたか否かの判断は、具体的には、光検出器20が検出した発光量が、所定のしきい値以上であるか否かにより行う。
しきい値は、発光試薬自体のバックグラウンド発光が生じていると明確に判断できる発光量とする。
【0027】
なお、測定容器1自体からもごく僅かな自然発光が生じうるが、そのような自然発光の発光量、またはその発光量に近い発光量をしきい値とすることは行わない。測定容器1自体から発せられる自然発光のように、極僅かな発光量をしきい値とすると、極めて高い感度の光検出器20を用意せざるを得ず、かつ、バックグラウンド発光の有無の判断を精度良く行うことが困難となるからである。
【0028】
発光試薬自体のバックグラウンド発光の発光量は、ブランク液として、測定対象成分を含まない試料液を用い、このブランク液と発光試薬を含む測定液4の発光量を測定することにより確認することができる。
しきい値は、発光試薬自体のバックグラウンド発光の発光量の10~100%とすることが好ましく、30~70%とすることがより好ましく、例えば50%程度とすることができる。
【0029】
光検出器20の感度を確認する場合は、測定液4における試料液として測定対象成分を含まないブランク液を用いる。そして、操作者は、そのブランク液を含む測定液4を収容した測定容器1を測定室10に格納して、感度確認を指示する入力動作を行う。
すると、演算装置30は、光検出器20で検出した発光量を、予め記憶した検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量と対比して、光検出器20の感度変化を確認する。
【0030】
ここで、予め記憶した検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量(以下「ゼロ基準発光量」という場合がある。)は、発光試薬自体のバックグラウンド発光に相当する。発光試薬自体のバックグラウンド発光は、例えば、発光合成基質に含まれる遊離の発光基質が発光酵素により発光することにより生じる。
【0031】
演算装置30は、光検出器20で検出した発光量とゼロ基準発光量とを対比する。対比は、例えば、ゼロ基準発光量に対する光検出器20で検出した発光量の比を求めたり、両者の差を求めたりすることにより行う。
【0032】
演算装置30は、ゼロ基準発光量に対する光検出器20で検出した発光量の比を求める場合、求めた比が予め定めた所定範囲の比に満たない場合又は超えた場合、光検出器20の感度が所定の許容範囲を超えて変動したと判断する。
また、両者の差を求める場合は、求めた差が予め定めた所定範囲の差を超えた場合、光検出器20の感度が所定の許容範囲を超えて変動したと判断する。
所定の範囲は求められる測定精度等に応じて適宜設定して演算装置30に記憶させればよい。
【0033】
演算装置30が、光検出器20の感度が所定の許容範囲を超えて変動したことを確認した場合は、警報の出力等により、操作者に、光検出器20の感度調整や交換等の対処を行わせることができる。
光検出器20の感度調整は、光検出器20が光電子増倍管である場合、光検出器20に印加する電圧を変更することにより調整できる。
【0034】
[第2実施形態]
第2実施形態の発光分析装置は、装置構成自体は第1実施形態と同様に図1で示すように、測定容器1を格納可能な測定室10と測定室10に収容された測定容器1内からの光を検出する光検出器20と光検出器20で検出した発光量が入力される演算装置30とを備えている。
【0035】
第2実施形態の発光分析装置は、測定容器1に収容される測定液4が異なる。また、測定液4の相違に対応して、演算装置30の動作が異なる。その他の事項は、第1実施形態の発光分析装置と同じであるので、説明を省略する。
【0036】
第2実施形態において、測定容器1に収容される測定液4は、試料液と試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬と発光物質を含んでいる。
発光試薬は、第1実施形態で説明したのと同様で、測定対象成分の濃度に応じた発光を生じさせるために必要な試薬又は試薬群全体を意味し、通常複数の試薬で構成された試薬群が発光試薬に該当する。
【0037】
本発明において、発光物質は、測定対象成分が存在しない状況下において、発光試薬により発光する物質、又はそれ自体が発光する物質であり、複数の試薬で構成された試薬群であってもよい。
発光物質が発する光の波長領域は、測定対象成分が発光試薬に作用して発する光の波長領域と同等であることが好ましく、同じであることがより好ましい。これにより、試料液としてブランク液を用いた場合に光検出器20で検出する発光量を増すことができる。
【0038】
測定対象成分が存在しない状況下において、発光試薬により発光する物質としては、発光試薬中に含まれる発光酵素により発光する発光基質、例えば、発光酵素がホタルルシフェラーゼの場合はルシフェリン等が挙げられる。
それ自体が発光する物質としては、発光試薬中に含まれる発光酵素とは別の発光酵素とその別の発光酵素により発光する発光基質との組み合わせ、例えば、ヒカリコメツキムシルシフェラーゼとルシフェリンの組み合わせ、ウミシイタケルシフェラーゼとセレンテラジンとの組み合わせ等が挙げられる。
【0039】
発光物質が発光試薬中に含まれる発光酵素によって発光する発光基質である場合、発光試薬に含まれる発光合成基質から遊離される発光基質と同等の波長領域の光を発する発光基質が好ましく、発光試薬に含まれる発光合成基質から遊離される発光基質と同じ発光基質であることが特に好ましい。
例えば、発光試薬がアミノルシフェリンを遊離する発光合成基質を含み、発光酵素としてルシフェラーゼを含む場合の発光物質としては、アミノルシフェリンを使用することが好ましい。
【0040】
発光物質が発光試薬中に含まれる発光酵素とは別の発光酵素とその別の発光酵素により発光する発光基質との組み合わせである場合、この組み合わせによって、発光試薬に含まれる発光合成基質から遊離される発光基質と同等の波長領域の光を発することが好ましい。
例えば、発光試薬がアミノルシフェリンを遊離する発光合成基質を含み、発光酵素としてルシフェラーゼを使用する場合の発光物質としては、ヒカリコメツキムシルシフェラーゼとルシフェリンの組み合わせとすることが好ましい。
【0041】
発光物質は、発光試薬と共に、測定容器1に試料液を注入する前に、予め測定容器1内に収容されていることが好ましい。例えば、容器本体2の底部に凍結乾燥状態で発光試薬及び発光物質を付着させておくことができる。
発光試薬及び発光物質が、予め測定容器1内に収容されていれば、測定容器1に試料液を注入するだけで本実施形態の発光分析装置による分析に供することができる。
【0042】
本実施形態においても、測定液4における試料液として、測定対象成分濃度が不明な未知試料を用いた場合、演算装置30は、光検出器20で検出した発光量に基づき、試料液中の測定対象成分濃度を求める。
具体的には、その測定液4を収容した測定容器1を測定室10に格納した際に光検出器20で検出した発光量を、予め記憶した検量線と照らし合わせることにより、試料液中の測定対象成分の濃度を求める。
【0043】
演算装置30には、予め発光量と測定対象成分濃度との関係を示す検量線が記憶されている。この検量線は発光試薬及び発光物質のセットとしてのロット毎に定められており、新たなロットの発光試薬及び発光物質を用いる場合は、メーカー等が提供する検量線の情報が入力されることにより更新される。
求めた測定対象成分の濃度は、本実施形態の発光分析装置に内蔵された又は別体とされた表示装置に表示されると共に、内蔵された又は別体とされたプリンターや、外部コンピュータに出力できるようになっていることが好ましい。
【0044】
本実施形態においても、演算装置30は、測定容器1が測定室10に格納されたと判断した場合に、上記試料液中の測定対象成分濃度を求める作業を行うことが好ましい。
これにより、測定容器1を測定室10に格納するだけで自動的に演算装置30に試料液中の測定対象成分濃度を求める作業を開始させることができる。
【0045】
演算装置30は、例えば、扉12が開状態となり、次いで閉状態となった際に、光検出器20が発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光を検出できるか否かにより測定容器1が測定室10に格納されたか否かを判断することができる。
演算装置30が扉12の開閉状態を判別する方法は第1実施形態と同様である。
【0046】
発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光は、発光試薬自体のバックグラウンド発光のみの場合と比較して、発光量が大きくなる。そのため、測定容器1が測定室10に格納されたか否かの判断を、より行いやすくなる。
このバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光を検出できたか否かの判断は、具体的には、光検出器20が検出した発光量が、所定のしきい値以上であるか否かにより行う。
しきい値は、発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光が生じていると明確に判断できる発光量とする。
【0047】
なお、本実施形態でも、測定容器1から発せられる自然発光の発光量、またはその発光量に近い発光量をしきい値とすることは行わない。
【0048】
発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光の発光量は、ブランク液として、測定対象成分を含まない試料液を用い、このブランク液と発光試薬と発光物質を含む測定液4の発光量を測定することにより確認することができる。
しきい値は、発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光の発光量の10~100%とすることが好ましく、30~70%とすることがより好ましく、例えば50%程度とすることができる。
【0049】
光検出器20の感度を確認する場合は、測定液4における試料液として測定対象成分を含まないブランク液を用いる。そして、操作者は、そのブランク液を含む測定液4を収容した測定容器1を測定室10に格納して、感度確認を指示する入力動作を行う。
すると、演算装置30は、光検出器20で検出した発光量を、予め記憶した検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量と対比して、光検出器20の感度変化を確認する。
【0050】
ここで、予め記憶した検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量は、発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光に相当する。
対比の方法と対比結果の利用方法は第1実施形態と同様である。
【0051】
上記各実施形態の発光分析装置によれば、装置内に光源を設けることなく、光検出器20の感度変化を正確に判断できる。そのため、装置の小型化と低コスト化が可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 測定容器
2 容器本体
3 蓋
4 測定液
10 測定室
11 測定室本体
11a 開口部
11b 検出窓
12 扉
20 光検出器
30 演算装置
図1