(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158004
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】循環型排水処理ユニット、および循環型排水処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20230101AFI20231019BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136168
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2021193885の分割
【原出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】517039483
【氏名又は名称】WOTA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 育
(57)【要約】
【課題】メンテナンス性を確保することができる排水ユニットを提供する。
【解決手段】本発明の循環型排水処理ユニットは、供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽と、生物処理槽に複数の間隔で継続して有機物を供給する供給部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽と、
前記生物処理槽に複数の間隔で継続して有機物を供給する供給部と、を備える循環型排水処理ユニット。
【請求項2】
供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽と、
前記生物処理槽に変動する任意の量の有機物を供給する供給部と、を備える循環型排水処理ユニット。
【請求項3】
前記有機物は流動体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の循環型排水処理ユニット。
【請求項4】
前記有機物は、滴下により供給されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の循環型排水処理ユニット。
【請求項5】
供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽と、
前記生物処理槽に複数の間隔で継続して有機物を供給する供給部と、を備える循環型排水処理システム。
【請求項6】
供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽と、
前記生物処理槽に変動する任意の量の有機物を供給する供給部と、を備える循環型排水処理システム。
【請求項7】
前記有機物は流動体であることを特徴とする請求項5又は6に記載の循環型排水処理システム。
【請求項8】
前記有機物は、滴下により供給されることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の循環型排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、循環型排水処理ユニット、および循環型排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物により排水を処理する循環式トイレにおいて、生物処理槽に好適に微生物が生息している状態を維持するために、固定の有機物を槽内に配置し、溶解した後に新たな有機物を投入することが行われている。
例えば特許文献1には、溶液中で徐々に溶解する板状の生分解プラスティックを生物処理槽に投入することで、微生物が生息している状態を維持する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行文献1では、板状の生分解プラスティックを、生物処理槽へ定期的に投入するようにしているが、投入するタイミング、又は投入する枚数などを調整する必要があった。このため、定期的なメンテナンスが必要であり、例えば別荘などの使用頻度が著しく偏る循環式トイレでは、このようなメンテナンスを適切に行う作業が問題となった。
【0005】
本開示は、メンテナンス性に優れた循環型排水処理ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の循環型排水処理ユニットは、供給される排水を、微生物を利用して処理する生物処理槽と、生物処理槽に複数の間隔で継続して有機物を供給する供給部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、循環型排水処理ユニットのメンテナンス性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の循環型排水処理ユニットの一例の全体の構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の排気管路の構成を示す図である。
【
図3】
図2に示す排気管路の変形例を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態の排気管路の構成を示す図である。
【
図5】
図4に示す排気管路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
<1.概要>
本実施形態に係る循環型排水処理ユニット1は、例えば循環式トイレ100において、便器2から排出される有機性排水(以下、単に排水という)を再利用するための装置である。すなわち、循環式トイレ100は、便器2と循環型排水処理ユニット1とを備える。
例えば循環式トイレ100は、上水・下水設備が行き届かない山間部等に建設される住居、別荘、山小屋、仮設住宅、又は移動型住宅などのトイレとして用いられる。
また例えば循環式トイレ100は、野外のイベント会場、工事現場、又は災害時の避難所などに一時的に仮設されるトイレとして用いられる。
循環式トイレ100を用いることで、排水が処理されて循環水として再利用することが可能となるため、上水・下水設備が整備されていなくとも、トイレを使用することができる。
本実施形態に係る循環型排水処理ユニット及び同システムは、循環式トイレに関わらず、台所や洗面台、風呂、シャワー、洗濯等の生活排水の循環型再利用に使用することができる。
【0011】
<2.全体構成>
本実施形態に係る循環型排水処理ユニット1の全体構成について説明する。
図1は循環型排水処理ユニット1の一例の全体の構成図である。
図1に示すように、循環型排水処理ユニット1は、トイレの便器2と複数の排水管により連結されている。循環型排水処理ユニット1は、排水調整槽10と、生物処理槽20と、処理水貯留槽30と、オゾン発生器40と、排気管路50(
図2参照)と、を備える。排水調整槽10、生物処理槽20、および処理水貯留槽30は、所定の槽間で水を送出可能なように、複数の排水管により連結されている。複数の排水管それぞれにはポンプが設けられ、ポンプの送り先となる槽における水位が所定の範囲内となるように、かつ可能な限り、定量連続運転となるように、それぞれのポンプの駆動が制御される。なお、
図1はあくまで一例であり、循環型排水処理ユニット1は他の構成であってもよい。
【0012】
<3.排水調整槽10>
排水調整槽10は、便器2の下流に配置され、便器2から排出された排水を一時的に貯留する。便器2には、例えば、粉砕圧送ポンプが設置されてもよい。粉砕圧送ポンプは、排水に含まれる汚物等を粉砕し、粉砕した汚物を排水と共に排水調整槽10へ送出する。排水調整槽10には、ブロワ11が設けられている。ブロワ11は、連続的又は間欠的に空気を排水調整槽10の内部に送出する。ブロワ11から送出される空気により、排水調整槽10の内部に貯留される排水が攪拌される。排水調整槽10と、生物処理槽20との間には、ポンプ66が設置されている。ポンプ66は、排水調整槽10に貯留される排水を生物処理槽20へ送出する。
【0013】
<4.生物処理槽20>
生物処理槽20の構成の一例について説明する。
生物処理槽20は、排水調整槽10から排出された排水に含まれる有機化合物に対して、微生物を利用して分解処理する。また、生物処理槽20では、微生物の働きで窒素化合物を除去する生物脱窒を行う場合もある。生物脱窒では、好気性微生物と通性嫌気性細菌とを組み合わせ、排水中の窒素化合物と炭素化合物とを分解する。この方法は主に、好気環境下で行われる硝化工程と、無酸素環境下で行われる脱窒工程と、に分割される。
【0014】
硝化工程は、排水中のアンモニア(NH4)を亜硝酸(NO2)経由で硝酸(NO3)まで酸化する反応である。この反応に関わる硝化細菌は、槽内の十分な溶存酸素の存在が条件となる好気性細菌である。
【0015】
脱窒工程は亜硝酸、硝酸を窒素ガス(N2)に還元する反応である。すなわち、溶存酸素の代わりに亜硝酸や硝酸分子の酸素を使って、有機物を炭酸ガスと水に酸化分解し、その結果、亜硝酸や硝酸が窒素ガスに転換される。この工程には脱窒細菌と呼ばれる通性嫌気性細菌が関与し、溶存酸素のない無酸素状態で脱窒活性を発揮する。
【0016】
生物処理槽20は、無酸素槽21と好気槽22とを備えている。無酸素槽21は、好気槽22に対して上流側に配置されている。生物処理槽20には、槽内の混合液を無酸素槽21と好気槽22と行き来させる不図示の排水路が設けられている。
無酸素槽21内の混合液には通性嫌気性細菌が存在している。無酸素槽21では前述の脱窒工程が主に行われる。
無酸素槽21の内部には、攪拌機23が配置される。攪拌機23は、例えば、攪拌羽根を有するミキサーにより実現される。攪拌機23は、無酸素槽21内で攪拌羽根を回転させることで、混合液を攪拌し、混合液に含まれる微生物が沈殿しないようにする。なお、無酸素槽21内での攪拌は、攪拌機23によるものに限定されない。ポンプ、曝気等により攪拌してもよい。
【0017】
好気槽22内の混合液には好気性細菌が存在している。好気槽22にはブロワ27が設けられている。ブロワ27は、好気槽22内の混合液へ空気を供給する。ブロワ27から混合液内に空気が送出されることで、好気槽22内の好気環境が維持される。好気槽22では前述の硝化工程が主に行われる。
【0018】
好気槽22には、膜ろ過ユニット25が設けられている。膜ろ過ユニット25には、例えば、MF(精密ろ過膜)、UF(限外ろ過膜)、NF(ナノろ過膜)、セラミックフィルタ、金属膜のうち少なくともいずれかが用いられる。膜ろ過ユニット25は、ブロワ27から供給される空気の供給口の上方に配置され、膜ろ過ユニット25の洗浄に利用される。膜ろ過ユニット25は、生物処理された水をろ過し、処理水とする。生物処理槽20と、処理水貯留槽30との間には、ポンプ67が設置されている。ポンプ67は、膜ろ過ユニット25によりろ過された処理水を処理水貯留槽30へ送出する。
なお、生物処理槽20は、別の構成を備えてもよい。
【0019】
<5.供給部90>
生物処理槽20には、生物処理槽20の内部に連続して有機物を供給する供給部90が設けられている。供給部90は、生物処理槽20の無酸素槽21へ有機物を供給する。有機物とは、生物処理槽20内の微生物の基質として供給される化合物である。循環式トイレ100が長期間不使用となった場合には、有機物が含まれる排水の生物処理槽20への供給が滞るため、生物処理槽20内の微生物は基質不足となり死滅するおそれがある。これを防ぐために、有機物を生物処理槽20内に供給する必要がある。すなわち、無酸素槽21に有機物を連続して供給することにより、無酸素槽21に存在する通性嫌気性細菌へ基質を供給し続けることが可能となる。有機物は取扱性の観点から、流動体が望ましい。なお、流動体とは、液体に限られず、ジェル状態の物質も含まれる。また、流動体としては低分子構造が好ましく、例えば炭素数が3以下の有機化合物がより好ましい。炭素数が3以下の低分子構造を有する化合物の方が、生物分解性が高いためである。
【0020】
また、有機物は水素供与体であってもよい。水素供与体とは、生物処理槽20内の他物質に水素を与え還元させ、それ自体は脱水素されて酸化される物質である。
例えば、使用頻度が高い状態において、無酸素槽21における通性嫌気性細菌による脱窒反応を十分に進行させるためには、溶存酸素のない無酸素雰囲気と、亜硝酸、硝酸の酸素分子を還元させるのに必要な水素供与体の存在とが不可欠である。無酸素槽21に水素供与体を供給することにより、無酸素槽21内において、亜硝酸、硝酸の酸素分子の還元反応が促進される。このように水素供与体としても振る舞う流動体である有機物としては、例えばエタノールが挙げられる。
【0021】
供給部90は例えば、定量吐出滴下装置を有する。定量吐出滴下装置は、複数の間隔で継続して間欠的に無酸素槽21へ有機物を滴下することで供給する。
供給部90からの有機物の供給量は任意に設定することができる。この際、排水の量を基準に有機物の毎月の供給量を設定してもよい。
供給部90が有するポンプは、定量吐出滴下装置に限定されない。供給部90は、常時所定の流量の有機物を供給可能なポンプであってもよい。すなわち、供給部90は、滴下量を任意の量に変動させ得る吐出滴下装置であってもよく、この場合は継続して無酸素槽21へ有機物を滴下することで供給する。
【0022】
<6.処理水貯留槽30>
処理水貯留槽30は、排水が生物処理されて得られた処理水を貯留する槽である。言い換えれば、処理水貯留槽30は、便器2に供給される処理水を貯留する槽である。すなわち、処理水貯留槽30は、排水が生物処理槽20で処理されて得られた処理水を貯留する。
処理水貯留槽30には、便器2に繋がる第1配管41が連結されている。
【0023】
第1配管41に設けられた第3ポンプ63は、便器2を洗浄するための処理水を、第1配管41を通して便器2に供給する。第3ポンプ63は、例えば、便器2が利用された際に駆動される。第3ポンプ63の駆動は、ユーザからの指示に応じてでもよいし、便器2の使用の検知に応じてでも構わない。或いは、第3ポンプ63の駆動は、循環式トイレ100が長期間不使用となった場合には、所定の間隔で駆動してもよい。
【0024】
<7.オゾン発生器40>
オゾン発生器40は、オゾンを発生させる。オゾン発生器40は、生成したオゾンガスを処理水貯留槽30に直接供給する。オゾン発生器40は、オゾンガスを、処理水貯留槽30内の処理水中、すなわち、処理水貯留槽30の液相に供給する。なお、オゾンガスを、処理水貯留槽30の気相、すなわち、気体が占める領域に供給してもよい。処理水貯留槽30内においてオゾンガスは、強力な酸化力により、処理水を脱色、殺菌し、消臭(以下、オゾン処理という)する。処理水に供給されたオゾンガスのうち、処理水中でのオゾン処理に使用されなかった余剰オゾンガス(槽内の気体)は、処理水貯留槽30の上部に形成される空間に充満する。
【0025】
本実施形態において処理水貯留槽30へ供給されるオゾンガスの濃度は、例えば、既存の浄水設備で設けられる脱色槽へ供給されるオゾンガスの濃度よりも低くすることが可能である。既存の浄水設備では、脱色槽(オゾン処理槽)に水が貯留される時間が短いため、短時間でオゾンガスと水とを接触させる必要がある。一方で、本実施形態では、処理水は処理水貯留槽30に長時間貯留されるため、オゾンガスと処理水とは長時間接触することになる。このような貯留時間の差から、処理水貯留槽30へ供給されるオゾンガスの濃度は、既存の浄水設備で設けられる脱色槽へ供給されるオゾンガスの濃度よりも低くてもよくなる。
【0026】
<8.排気管路50>
図2は、排気管路50の構成を示す図である。
排気管路50は、処理水貯留槽30に供給されたオゾンガスの一部であって、処理水貯留槽30に充満した余剰オゾンガスを他の槽に供給するための経路を形成する。
排気管路50は、処理水貯留槽30と生物処理槽20とを繋ぐ第1排気管51と、処理水貯留槽30と排水調整槽10と、をつなぐ第2排気管52と、を備えている。
【0027】
第1排気管51の生物処理槽20における排気口は、例えば、生物処理槽20の天井の端部に設けられる。第2排気管52の排水調整槽10における排気口は、例えば、排水調整槽10の天井の端部に設けられる。
図示の例では、余剰オゾンガスは、生物処理槽20および排水調整槽10それぞれの気相、すなわち、気体が占める領域に供給される。なお、このような例に限られず、余剰オゾンガスを、生物処理槽20および排水調整槽10それぞれの液相、すなわち、液体が占める領域に供給してもよい。この場合には、ブロワを第1排気管51および第2排気管52に設けることで、液体中に余剰オゾンガスを円滑に送出することができる。
【0028】
第1排気管51により、処理水貯留槽30から生物処理槽20に、例えば、常時、余剰オゾンガスが供給される。生物処理槽20に供給された余剰オゾンガスは、生物処理槽20で発生した臭気物質に対してオゾン処理を行う。これにより、生物処理槽20から生じる臭気が低減する。
【0029】
生物処理槽20は、内部の排気を行う第1排気ユニット81を備えている。第1排気ユニット81は、生物処理槽20内の空気を外部へ排出する。第1排気ユニット81は、例えば、生物処理槽20の上部のうち、第1排気管51の排気口から最も遠い位置に設置される。
【0030】
第1排気ユニット81の内部には、脱臭剤およびオゾン分解剤が配置されている。このため、第1排気ユニット81から廃棄される残留ガスに含まれる残留オゾンが分解される。また、脱臭剤が第1排気ユニット81の内部に配置されていることで、残留ガスの臭気がさらに低減される。
【0031】
第2排気管52により、処理水貯留槽30から排水調整槽10に、例えば、常時、余剰オゾンガスが供給される。排水調整槽10に供給された余剰オゾンガスは、排水調整槽10で発生した臭気物質に対してオゾン処理を行う。これにより、排水調整槽10から生じる臭気が低減する。
【0032】
排水調整槽10は、内部の排気を行う第2排気ユニット82を備えている。第2排気ユニット82は、排水調整槽10内の空気を外部へ排出する。第2排気ユニット82は、例えば、排水調整槽10の上部のうち、第2排気管52の排気口から最も遠い位置に設置される。
【0033】
第2排気ユニット82の内部には、脱臭剤およびオゾン分解剤が配置されている。このため、第2排気ユニット82から廃棄される残留ガスに含まれる残留オゾンが分解される。また、脱臭剤が第2排気ユニット82の内部に配置されていることで、残留ガスの臭気がさらに低減される。
【0034】
<9.小括>
以上説明したように、本実施形態に係る循環型排水処理ユニット1によれば、オゾン発生器40が、生成したオゾンガスを処理水貯留槽30に供給する。処理水は、オゾンガスと共に処理水貯留槽30内で長時間貯留される。このため、処理水貯留槽30の内部で処理水がオゾン処理されることになり、別途個別にオゾン処理槽を設ける必要がない。これにより、排気ユニット全体をコンパクトにすることができる。
【0035】
また、既存の浄水設備では、オゾンの酸化力を懸念して密閉性を高めた小容量のオゾン処理槽で、短時間でオゾン処理を行う必要があった。この場合には、小容量の空間内で短時間に十分なオゾン処理を行うために、オゾンガスの濃度を高くする必要があった。これに対して本発明の循環型排水処理ユニット1では、処理水を長時間貯留する処理水貯留槽30の内部でオゾン処理を行うため、オゾンガスの濃度が低い場合であっても、オゾンガスと処理水とが長時間接触することになり、充分なオゾン処理を行うことができる。
【0036】
また、第1排気管51を通して、処理水貯留槽30で生じた余剰オゾンガスを生物処理槽20に供給することができるので、生物処理槽20で生じた臭気物質(槽内の気体)に対してオゾン処理を行うことができる。これにより、生物処理槽20から生じる臭気を低減することができる。
また、余剰オゾンガスによる有機物の酸化分解、および生物分解を促進し、生物処理槽20内での生物処理サイクルの時間短縮と膜ろ過の負荷低減を図ることもできる。
また、臭気物質の臭気を低減することで、第1排気ユニット81の内部に設けられた脱臭剤の消費量を抑えることができる。
【0037】
また、余剰オゾンガスの活性力を低減し、余剰オゾンガスのその後の処理の負担を低減することができる。例えば、余剰オゾンガスの活性力が低減することで、第1排気ユニット81の内部に設けられたオゾン分解剤の消費量を抑えることができる。
【0038】
また、第2排気管52を通して、処理水貯留槽30で生じた余剰オゾンガスを排水調整槽10に供給することができるので、排水調整槽10で生じた臭気物質に対してオゾン処理を行うことができる。これにより、排水調整槽10から生じる臭気を低減することができるとともに、余剰オゾンガスの活性力を低減し、余剰オゾンガスのその後の処理の負担を低減することができる。
【0039】
また、供給部90が生物処理槽20に連続して有機物を供給するので、使用頻度が不定期であったり、長期間において不使用であったりする場合であっても、生物処理槽内の生物活性を維持することができる。有機物を投入するタイミングや量の調整が不要となり、使用頻度が著しく偏る循環式トイレ100においても、簡便かつ適切に有機物を投入することができる。これにより、循環型排水処理ユニット1のメンテナンスを簡易にし、メンテナンスコストを抑えることができる。
【0040】
<10.変形例>
次に、第1実施形態の変形例として、
図3を用いて、排気管路50の変形例を説明する。
図3は、
図2に示す排気管路50の変形例を示す図である。なお、この説明において、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
この変形例に係る排気管路50では、余剰オゾンガスが各槽を順番に流れるように構成されている。すなわち、処理水貯留槽30で生じた余剰オゾンガスは、生物処理槽20に供給された後に、排水調整槽10に供給される。
排気管路50は、第1排気管51と、生物処理槽20と排水調整槽10を繋ぐ第3排気管53と、を備えている。第3排気管53の排水調整槽10における排気口は、例えば、排水調整槽10の天井の端部に設けられる。なお、このような例に限られず、生物処理槽20で生じた余剰オゾンガスを、排水調整槽10の液相、すなわち、液体が占める領域に供給してもよい。臭気ガスとオゾンガスを液中接触することで余剰オゾンガスの発生、流出を低減することができる。
【0042】
第3排気管53により、処理水貯留槽30から排水調整槽10に、例えば、常時、余剰オゾンガスが供給される。排水調整槽10に供給された余剰オゾンガスは、排水調整槽10で発生した臭気物質に対してオゾン処理を行う。これにより、排水調整槽10から生じる臭気が低減する。
【0043】
すなわち、第1排気管51および第3排気管53を介しては、処理水貯留槽30で生じた余剰オゾンガスが、排水の下流から上流に向けて流れる。
この変形例では、生物処理槽20に第1排気ユニット81は設けられておらず、排水調整槽10にのみ第2排気ユニット82が設けられている。この変形例では、第2排気ユニット82は、例えば、排水調整槽10の上部のうち、第3排気管53の排気口から最も遠い位置に設置される。これにより、余剰オゾンガスと臭気物質とが接触する機会を増やすことが可能になる。
【0044】
以上説明したように、本変形例に係る循環型排水処理ユニット1によれば、処理水貯留槽30で生じた余剰オゾンガスが、排気管路50を通して、生物処理槽20、及び排水調整槽10へ遡って送出される。このため、排水の処理工程に沿って、互いに前後の工程にあたる槽同士に排気管路50を繋げば足りるので、排気管路50の敷設を容易に行うことができる。また、余剰ガスの流れに対して中間に位置する生物処理槽20に換気ユニットを設ける必要がなく、より一層コンパクトな構成とすることができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4を用いて説明する。なお、この説明において、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図4は、本発明の第2実施形態の排気管路50の構成を示す図である。
【0046】
図4に示すように、第2実施形態では、排気管路50は、排水調整槽10および生物処理槽20で発生した臭気物質が、処理水貯留槽30に流れ込む流路を形成する。
排気管路50は、処理水貯留槽30と生物処理槽20とを繋ぐ第4排気管54と、処理水貯留槽30と排水調整槽10とをつなぐ第5排気管55と、を備えている。第4排気管54の生物処理槽20における吸気口は、例えば、生物処理槽20の天井の端部に設けられる。
第5排気管55の排水調整槽10における吸気口は、例えば、排水調整槽10の天井の端部に設けられる。
【0047】
第4排気管54により、生物処理槽20から処理水貯留槽30に、例えば、常時、臭気物質が供給される。生物処理槽20から処理水貯留槽30に供給された臭気物質は、処理水貯留槽30に充満する余剰オゾンガスによりオゾン処理をされる。これにより、処理水貯留槽30に供給された臭気物質の臭気が低減する。
【0048】
第4排気管54の排気口は、処理水貯留槽30の天井の端部に設けられている。このため、排気口から供給された臭気物質は、処理水貯留槽30の気相すなわち、気体が占める領域に供給される。
なお、このような例に限られず、生物処理槽20で生じた臭気物質を処理水貯留槽30の液相、すなわち、液体が占める領域に供給してもよい。臭気ガスとオゾンガスを液中接触することで余剰オゾンガスの発生、流出を低減することができる。
【0049】
第5排気管55により、排水調整槽10から処理水貯留槽30に、例えば、常時、臭気物質が供給される。排水調整槽10から処理水貯留槽30に供給された臭気物質は、処理水貯留槽30に充満する余剰オゾンガスによりオゾン処理をされる。これにより、処理水貯留槽30に供給された臭気物質の臭気が低減する。そして排水調整槽10の臭気が低減し、処理水貯留槽30の余剰オゾンを効果的に消費する。
【0050】
第5排気管55の排気口は、処理水貯留槽30の天井の端部に設けられている。このため、排気口から供給された臭気物質は、処理水貯留槽30の気相すなわち、気体が占める領域に供給される。
なお、このような例に限られず、排水調整槽10で生じた臭気物質を、処理水貯留槽30の液相、すなわち、液体が占める領域に供給してもよい。臭気ガスとオゾンガスを液中接触することで余剰オゾンガスの発生、流出を低減することができる。
【0051】
処理水貯留槽30は、内部の排気を行う第3排気ユニット83を備えている。第3排気ユニット83は、処理水貯留槽30内の空気を外部へ排出する。第3排気ユニット83は、例えば、処理水貯留槽30の上部のうち、第4排気管54の排気口、および第5排気管55の排気口から最も遠い位置に設置される。
【0052】
第3排気ユニット83の内部には、脱臭剤およびオゾン分解剤が配置されている。このため、第3排気ユニット83から廃棄される残留ガスに含まれる残留オゾンが分解される。また、脱臭剤が第3排気ユニット83の内部に配置されていることで、残留ガスの臭気がさらに低減される。
【0053】
<11.小括>
以上説明したように、第4排気管54を通して、生物処理槽20で生じた臭気物質を処理水貯留槽30に供給することができるので、生物処理槽20で生じた臭気物質に対してオゾン処理を行うことができる。これにより、生物処理槽20から生じた臭気を低減することができる。
また、生物処理槽20で生じた臭気ガスを処理水貯留槽30に供給することで、オゾン処理が行われる処理水貯留槽30外への余剰オゾンガスの流出、排出を低減し、設備・配管の劣化抑制をすることができる。
また、臭気物質との反応により余剰オゾンガスの活性力を低減し、余剰オゾンガスのその後の処理の負担を低減することができる。
【0054】
また、第5排気管55を通して、排水調整槽10で生じた臭気物質を処理水貯留槽30に供給することができるので、排水調整槽10で生じた臭気物質に対してオゾン処理を行うことができる。これにより、排水調整槽10から生じた臭気を低減することができるとともに、余剰オゾンガスの活性力を低減し、余剰オゾンガスのその後の処理の負担を低減することができる。
【0055】
<12.変形例>
次に、第2実施形態の変形例として、
図5を用いて、排気管路50の変形例を説明する。
図5は、
図4に示す排気管路50の変形例を示す図である。なお、この説明において、第2実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
この変形例に係る排気管路50では、臭気物質が各槽を順番に流れるように構成されている。すなわち、排水調整槽10で生じた臭気物質が生物処理槽20に供給され、生物処理槽20で生じた臭気物質とともに、処理水貯留槽30に供給される。
排気管路50は、第4排気管54と、排水調整槽10と生物処理槽20とを繋ぐ第6排気管56と、を備えている。第6排気管56の排水調整槽10における吸気口は、例えば、排水調整槽10の天井の端部に設けられる。
【0057】
第6排気管56の排気口は、生物処理槽20の天井の端部に設けられている。このため、排気口から供給された臭気物質は、生物処理槽20の気相すなわち、気体が占める領域に供給される。
なお、このような例に限られず、排水調整槽10で生じた臭気物質を、生物処理槽20の液相、すなわち、液体が占める領域に供給してもよい。臭気ガスとオゾンガスを液中接触することで余剰オゾンガスの発生、流出を低減することができる。
【0058】
第6排気管56により、排水調整槽10から生物処理槽20に、例えば、常時、臭気物質が供給される。
生物処理槽20に供給された臭気物質は、生物処理槽20で生じた臭気物質と混合し、第4排気管54を通して処理水貯留槽30に供給される。そして、処理水貯留槽30に充満する余剰オゾンガスは、処理水貯留槽30に供給された混合した臭気物質に対してオゾン処理を行う。これにより、排水調整槽10および生物処理槽20から生じる臭気が低減される。
【0059】
すなわち、第4排気管54および第6排気管56を介しては、排水調整槽10および生物処理槽20それぞれで生じた臭気物質が、排水の上流から下流に向けて流れる。
この変形例では、第3排気ユニット83は、例えば、処理水貯留槽30の上部のうち、第4排気管54の排気口から最も遠い位置に設置される。これにより、余剰オゾンガスと臭気物質とが接触する機会を増やすことが可能になる。
【0060】
また、第3排気ユニット83が、臭気物質の処理水貯留槽30への供給に応じて駆動してもよい。この場合には、臭気物質と余剰オゾンガスが反応した後に、処理水貯留槽30に充満する残留ガスを円滑に処理水貯留槽30の外部に排気することができる。
【0061】
以上説明したように、本変形例に係る循環型排水処理ユニット1によれば、排水調整槽10および生物処理槽20それぞれで生じた臭気物質が、排気管路50を通して、処理水貯留槽30に送出される。このため、排水の処理工程に沿って、互いに前後の工程にあたる槽同士に排気管路50を繋げば足りるので、排気管路50の敷設を容易に行うことができる。
【0062】
<その他の変形例>
前述した各実施形態では、循環型排水処理ユニット1が、循環式トイレ100である構成を示したが、この態様に限られない。循環型排水処理ユニット1は、例えば台所や洗面台からの生活排水を処理して循環させるものであってもよい。この場合には、循環型排水処理ユニット1が備える槽の種類は前述の構成に限定されず、任意に変更することができる。
【0063】
また、循環型排水処理ユニット1は、各種のセンサによりセンシングを行い、その結果に基づきポンプを駆動させる制御部を備えた循環型排水処理システムの一部であってもよい。
【0064】
また、生物処理槽20が、無酸素槽21と好気槽22をそれぞれ一つずつ備えている構成を示したが、生物処理槽20の構成については任意に変更することができる。すなわち、無酸素槽21と好気槽22の数量を任意に組み合わせてもよいし、いずれか一方であってもよい。また、一つの槽で無酸素部と好気部を構成してもよい。
【0065】
前述した第1排気管51から第5排気管55それぞれには、気体を送出するブロワが設けられてもよい。
前述した第1排気ユニット81から第3排気ユニット83それぞれには、気体の排気を促す排気ファンが設けられてもよい。各排気ユニットに設けられた排気ファンは、余剰オゾン又は臭気物質の各槽への供給に応じて駆動してもよい。
【0066】
前述した第1実施形態およびその変形例では、排水調整槽10に余剰オゾンガスを供給する排気管を備えた構成を示したが、この限りではない。処理水貯留槽30で生じた余剰オゾンガスを生物処理槽20にのみ供給するように、排気管路50が構成されてもよい。
また、前述した第1実施形態およびその変形例では、生物処理槽20に余剰オゾンガスを供給する排気管を備えた構成を示したが、この限りではない。処理水貯留槽30で生じた余剰オゾンガスを排水調整槽10にのみ供給するように、排気管路50が構成されてもよい。
【0067】
前述した第2実施形態およびその変形例では、排水調整槽10で生じた臭気物質を処理水貯留槽30に供給する排気管を備えた構成を示したが、この限りではない。生物処理槽20で生じた臭気物質のみを、処理水貯留槽30に供給するように排気管路50が構成されてもよい。
また、前述した第2実施形態およびその変形例では、生物処理槽20で生じた臭気物質を処理水貯留槽30に供給する排気管を備えた構成を示したが、この限りではない。排水調整槽10で生じた臭気物質のみを、処理水貯留槽30に供給するように排気管路50が構成されてもよい。
【0068】
また、前述した各実施形態では、余剰オゾンガス又は臭気物質のいずれかを各槽に供給する構成を示したが、このような態様に限られない。余剰オゾンガスを生物処理槽20に供給した後に、生物処理槽20で生じた臭気物質と、余剰オゾンガスとを更に処理水貯留槽30に供給することで、各槽の内部に余剰オゾンガスおよび臭気物質を循環させてもよい。
【0069】
また、供給部90が供給する有機物としては、エタノールに限られず、還元作用を備えた液状の有機化合物から任意に選択することができる。
【0070】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。また、上記実施形態および変形例で説明した装置の構成は、技術的な矛盾が生じない限り、その一部を省略、または組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…循環型排水処理ユニット
10…排水調整槽
20…生物処理槽
30…処理水貯留槽
40…オゾン発生器
50…排気管路
90…供給部
100…循環式トイレ